前編中編271 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:28:35 ID:fJT9azyg
数日後
スーパー 惣菜売り場
歌手「えー本日は、北海道産じゃがいもコロッケが」
歌手「2割引になっています!」
歌手「お買い得ですよー!」
マダム「あら、威勢のいいお兄さん。 いい声ね」
マダム「5つもらえるかしら?」
歌手「ありがとうございます!」
歌手「じゃがいもコロッケ5つですね……」 セッセッ セッセッ
歌手「おまたせしました。 お会計は、レジでお願いします」
マダム「ありがとう」
テク テク テク…
歌手「本日は、北海道産じゃがいもコロッケが、2割引でお買い得ですよー!」
272 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:29:53 ID:fJT9azyg
歌手「ふう……」
部門長「ああ、歌手くん。 お疲れさん」
歌手「お疲れっス、部門長」
部門長「今日もご苦労様。 明日も頼むよ」
歌手「はい」
部門長「さて……明日は、と……」
歌手「……?」
歌手「なんスか? そのラジカセ?」
部門長「はは……上からの指示で、明日から流せって音楽だよ」
歌手「! ……どんな曲っスか?」
部門長「聞いてみるかい?」
―――――――――――
274 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:30:59 ID:fJT9azyg
歌手「…………」
部門長「どうかな?」
歌手「……偉そうな事、言えないっスけど」
歌手「何だかテンポの悪い曲っスね……」
部門長「ははは……私もそう思う」
歌手「いつも有線から引っ張ってきてるのに……どうして?」
部門長「……さあ」
部門長「私も雇われている身だからね」
部門長「従わない訳には、いかない、としか言えないな」
歌手「…………」
―――――――――――
275 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:31:50 ID:fJT9azyg
歌手「…………」
歌手(惣菜コーナーで流す曲か……)
歌手(…………)
歌手(俺だったら……アップテンポで)
歌手(……いや)
歌手(あそこの客層は主婦がメインだし……)
歌手(アップテンポだけど、少し緩めに……だけど、遅すぎない)
歌手(そんな感じで……もし、歌詞を付けるなら……)
歌手(うーん……)
歌手(…………)
276 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:32:56 ID:fJT9azyg
ガチャ
歌手「ただいま」
店員「お帰りー」
店員「?」
店員「どうしたー? 何か嬉しそうだけどー?」
歌手「いや、少し思いついた事があってな」
店員「インスピレーションってやつー?」
歌手「そう、それ」
歌手「少し書き留めておきたいから、飯、ちょっと待っててくれるか?」
店員「了解ー」
店員「と言っても、そうめんだけどねー」
歌手「暑いし、ぴったりだな」
277 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:34:01 ID:fJT9azyg
デブ「…………」
デブ「お」
デブ「終わった……」
デブ(思ったよりかかってしまったな……)
デブ(……色々あったからしょうがないか)
デブ(さて)
デブ(いつも通りコピーして投函しないと)
デブ(…………)
デブ(……もう、こんな時間か)
デブ(この前みたいにコピーだけとってくるか)
デブ(ついでにビニ弁も買ってこよう)
ガチャ
278 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:35:08 ID:fJT9azyg
デブ「あ……」
声優「あ……」
デブ「今晩は、です」
声優「今晩は、デブさん」
デブ「この前の……サンドイッチ旨かったです。 ありがとうございました」
声優「いえ……アタシこそ、ご迷惑をおかけしたんですし」
声優「お礼なんていいですよ」
デブ「はは……それじゃ」
声優「はい」
テク テク テク…
デブ「…………」
279 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:36:04 ID:fJT9azyg
デブ(…………)
デブ(……身だしなみ)
デブ(少しは気を付けた方がいいな)
デブ(せめて無精髭くらいは、何とかするよう心がけよう……)
―――――――――――
声優「ふう……」
声優「あー……疲れた」
声優(身から出たサビ、とはいえ……)
声優(さすがに一日で三本録りは……キツかった)
声優(…………)
280 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:36:57 ID:fJT9azyg
声優(取り敢えず)
声優(シャワーを浴びて……何か軽く食事を取って)
声優(早く寝よう……)
声優(…………)
声優(……ふふ)
声優(でも……この疲労感、嫌いじゃない)
声優(全力で仕事ができるって……)
声優(幸せな事なのかもしれないわね)
声優(…………)
声優(さ、シャワーを浴びよう!)
281 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:37:50 ID:fJT9azyg
翌日の朝
あ~あ~あ~あ~あ~♪
声優「8時か……」
声優「そろそろ起きないと……う~ん」
声優「……ふう」
声優「ちょっと疲れが取れてない感じね……」
声優(温泉とか行きたいなぁ……)
声優(…………)
声優(ま、愚痴ってもしょうがないわね)
声優(さ、朝の支度を済ませて)
声優(今日も頑張ろう!)
282 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:38:40 ID:fJT9azyg
事務所
声優「おはようございます」
M「おはよう、声優さん」
後輩「おはようございます! 先輩!」
声優「おはよう、後輩ちゃん。 今日も元気ね」
後輩「はい! それが取り柄ですから!」
声優「あはは」
M「それじゃ、声優さん。 今日はBスタジオでお願いします」
声優「はい」
M「それと……」
声優「はい?」
283 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:39:40 ID:fJT9azyg
M「締切は来週になるけど、またアニメ選考オーディション募集してるから」
M「配役に目を通して、応募したいキャラを決めておいてくれ」
声優「はい、わかりました」
M「そうそう、今回はメインキャラも含めての募集だから」
声優「!」
後輩「!」
M「ふふ、二人共、受かるといいね」
声優「そうですね……頑張らないと!」
後輩「私も頑張ります!」
M「それじゃ、今日も頑張ってくれ」
声優・後輩「はい!」
284 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:40:41 ID:fJT9azyg
デブ「…………」
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……プルルルルル……
ガチャ…
デブ「あ、もしもし」
デブ「A出版さんですか? 私、デブ、という者ですけど」
デブ「A編集者さんをお願いします」
デブ「…………」
デブ「ああ、A編集者さん。 おはようございます」
デブ「……いえ、締切の延長じゃありませんよ」
デブ「さっき、完成した原稿、速達便で投函しましたので……」
デブ「…………」
285 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:41:28 ID:fJT9azyg
デブ「そうですね……」
デブ「正直、その気持ちはあります」
デブ「でも今日は、一言お礼を言っておこうと思って」
デブ「……ええ」
デブ「俺……そちらで仕事が出来て良かったです」
デブ「今まで、ありがとうございました」
デブ「…………」
デブ「……はい、それだけです」
デブ「はい……はい……」
デブ「それでは……」
チンッ
286 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:42:22 ID:fJT9azyg
デブ「…………」
デブ「……これで」
デブ「無職、か……」
デブ「ふふ……」
デブ(…………)
デブ(不思議と……なってみれば)
デブ(なんて事ないな)
デブ(…………)
デブ(さて)
デブ(普通の漫画……)
デブ(描いてみるか!)
287 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:43:07 ID:fJT9azyg
スーパー
惣菜売り場
歌手「…………」
♪ー♪・・・♪~☆
歌手(い……いまいち……)
歌手(いや、いま3くらい、イけてねえ……この曲)
歌手「きょ、今日はエビフライ……エビフライがお得ですよ~」
♪ー♪・・・♪~☆
歌手「揚げたて、アツア、ツで美味しいです……よー」
歌手(やべぇ……この曲の妙なテンポで調子狂う……)
―――――――――――
288 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:43:57 ID:fJT9azyg
パート「部門長さん……」
パート「あの曲、何とかなりませんか?」
パート「耳障りでしょうがないんですけど……」
部門長「す、すまんね……上からの指示なんで」
パート「…………」
パート「心なしか、お客さんも寄ってきませんし……」
パート「どうなっても知りませよ?」
部門長「……あ、ああ」
歌手「…………」
―――――――――――
289 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:44:48 ID:fJT9azyg
夕方
歌手「ただいま……」
店員「おかえりー」
店員「……? どうかしたー?」
歌手「いや……ちょっと疲れて……」
店員「そうなのー? 力仕事が多かった、とかー?」
歌手「そうじゃない……明日から耳栓がいるかも」
店員「????」
―――――――――――
店員「なるほどー」
店員「そういう事かー」
290 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:45:43 ID:fJT9azyg
歌手「まあ、誰が作った曲か知らねえけど」
歌手「さすがに受け付けない曲だった……」
店員(事、音楽に関しては、悪口を言わない歌手が)
店員(ここまで言うなんて……)
歌手「ふう……ようやっとマシになってきた」
店員「ご飯食べるー?」
歌手「おう!」
歌手「……で、その後」
歌手「一緒に風呂に入らね?」///
店員「……うん」///
291 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:47:04 ID:fJT9azyg
デブ「…………」
デブ(……やべぇ)
デブ(全然まとまらない……)
デブ(…………)
デブ(エロが長かったせい、か……)
デブ(…………)
デブ(昔は……ファンタジー物しか描いてなかったな)
デブ(いわゆる剣と魔法の世界……)
デブ(ダイ大やウィズ、ドラ○ンボールの影響受けまくってたな)
デブ(小説もロー○ス島戦記やフォー○ュン・クエストみたいなのしか)
デブ(読んでなかったっけ……)
292 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:47:47 ID:fJT9azyg
デブ(うーん……)
デブ(でも、声優さんに見せるつもりだしなぁ)
デブ(ほのぼの日常系が流行りみたいだし……そっちの方が無難か)
デブ(…………)
デブ(そうだ)
デブ(ここに……このアパートに来て描いたやつ……)
デブ(久しぶりに読み返してみよう)
デブ(……えーっと)
デブ(どこにやったっかな……)
ゴソゴソ…
デブ(あった)
デブ(1……2……3………)
293 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:49:13 ID:fJT9azyg
デブ(ありゃ? 全部で7本か……思ったより描いてなかったんだな)
デブ(……高校卒業後に描いてたやつは、両親の元に置いてきたし)
デブ(その辺でごっちゃになってたか)
デブ(……たぶん、捨てられただろうな、あれ……)
デブ(…………)
デブ(…………) パラ……
デブ(…………)
デブ(…………) パラ……
デブ(…………)
デブ(…………) パラ……
―――――――――――
294 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:50:04 ID:fJT9azyg
夜
事務所
後輩「お疲れ様です、先輩」
声優「お疲れ様、後輩ちゃん」
後輩「お腹すきました……」
声優「ふふ、じゃあいつもの、行っとく?」
後輩「はい! こういう時は……」
声優・後輩「ヨシギュー!」
アハハハ…
―――――――――――
295 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:50:54 ID:fJT9azyg
後輩「美味しい~!」
後輩「やっぱり、ヨシギューは最強です!」
声優「ホントよね~」
声優「値段が安く、ボリューム満点」
声優「おまけに注文したら、すぐ出てくるし!」
後輩「全くです!」
アハハハ…
声優「…………」
声優「ところで、後輩ちゃん」
後輩「はい?」
296 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:51:49 ID:fJT9azyg
声優「例の仕事の台本……そろそろ来たんじゃないの?」
後輩「!!」
声優「良かったら、アタシに見せて欲しいんだけどな」
後輩「は、はあ……」
声優「……?」
声優「どうかしたの?」
後輩「う~……その」
後輩「文句を言いたい、という訳じゃないんですが」
後輩「考えてたのとは少し違っていて……」
声優「??」
後輩「……どうぞ」
声優「ありがとう」
声優「…………」 パラパラ
297 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:52:41 ID:fJT9azyg
声優「……ああ」
後輩「…………」
後輩「マネージャーさん、『準主役級』なんて言うから」
後輩「敵方の役か、ライバル的な女の子の役だと思っていました……」
声優「要所、要所で入る、『語り部』みたいな役ね」
後輩「おかげで頭の中にあるイメージを、全部、変えなきゃいけません」
声優「あはは……」
声優「でもこの役、毎回必ず登場するみたいだし」
声優「確かに『準主役級』と言ってもいいと思うな」
後輩「それは……まあ……」
298 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:53:50 ID:fJT9azyg
声優「ふわぁ……やっぱりメインは豪華ね」
声優「日笠○子さんに 小清○亜美さん」
声優「下○麻美さんに 沢城○ゆきさん……」
声優「沢城さん……いつ寝てるの?ってくらい最近よく見るわよね……」
声優「わ! ゲストに ゆ○なさんが来てる!」
声優「いいなぁ……後輩ちゃん……」
後輩「先輩、ファンなんですか?」
声優「うん……アタシ、この世界に入ったのは
声優「彼女の演技を目の当たりにしたからなの」
後輩「そうなんですか」
声優「すごい人なんだよ? この人」
声優「声の質を変えたり、口調を変えたりするのが上手くて」
声優「アタシが知る限り、(声を)当ててきたキャラにどれもマッチしてるんだ」
後輩「へえ~」
299 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:55:14 ID:fJT9azyg
声優「後輩ちゃんもそういう人、居るんでしょ?」
後輩「林原○ぐみさんは、神ですね!」
声優(……年代的にあってないような)
声優「そ、そうなんだ……」
声優「でも、確かにすごい人よね」
後輩「私の永遠の目標です!」
声優(でっかい目標だなぁ……)
声優「……そうだ。 後輩ちゃん」
後輩「はい?」
声優「わかってたら謝るけど……現場でサインとか、求めたりしない様にね?」
後輩「せ、先輩! ……酷いです」
300 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 19:55:53 ID:fJT9azyg
声優「ごめんごめん……分かってるなら、いいの」
後輩「いくら私でも、それが失礼な事だってわかりますよー」
声優「だからごめんって……ふふ」
後輩「あはは」
声優「…………」
後輩「…………」
声優「後輩ちゃん」
後輩「はい」
声優「頑張ってね」
後輩「はい!」
301 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:00:07 ID:fJT9azyg
デブ「…………」
デブ「はは……ひでぇ……」
デブ「ヘッタクソな絵だな……」
デブ「…………」
デブ「…………」
デブ「……でも」
デブ「すげぇ熱いな……」
デブ「…………」
デブ「俺……」
デブ「こんなの描いてたんだ……」
デブ「…………」
302 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:01:04 ID:fJT9azyg
デブ(…………)
デブ(そうだよ……)
デブ(俺は……こういう漫画が読みたくて、描きたくて)
デブ(ずっとやってきたんじゃないか)
デブ(…………)
デブ(この漫画……進撃の○人に負けてるのか?)
デブ(…………)
デブ(いや……勝ってる部分だってあるし)
デブ(総合的に負けててもいいじゃないか)
デブ(…………)
デブ(俺は……俺の漫画は)
デブ(”これ”なんだから……!)
303 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:02:17 ID:fJT9azyg
翌日の朝
あ~あ~あ~あ~あ~♪
声優「ふう……もう朝8時かぁ。 歌手さん、今日も元気ね」
声優(今日は久しぶりの休日……)
声優(正直、もう少し寝ていたいけど)
声優(例のカラオケボックスに行って、発声練習しないとね)
声優(最近、これもサボってたからなぁ……)
声優(…………)
声優「よし! 起きるぞっと!」 ガバッ!
―――――――――――
304 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:03:56 ID:fJT9azyg
カラオケボックス
店員「いらっしゃいませー」
声優「どうもー」
店員「あ……お久しぶりですねー」
声優「あはは……ちょっと体調を崩してまして」
店員「それは災難でしたー」
店員「では、これにご記入をお願いしますー」
声優「はい」
サラサラ…
店員「ドリンクは、何になさいますかー?」
声優「烏龍茶で」
店員「わかりましたー」
305 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:05:09 ID:fJT9azyg
店員「それでは、23番のお部屋へどうぞー」
声優「はい」
店員「それでは、ごゆっくりー」
スタ スタ スタ
店員「…………」 テキパキ
テンチョー「店員ちゃん、今のお客って……」
店員「テンチョー。 はい、売れない女優さん、来ましたー」
テンチョー「そうか……」
店員「ちょっと、体調を崩してたそうですー」
テンチョー「そうだったんだ。 元気になってよかった」
店員「大事なお得意様ですしねーテンチョー」
テンチョー「おいおい……酷いな、店員ちゃん」
店員「冗談ですー」 クスッ
306 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:06:03 ID:fJT9azyg
店員「…………」
コン コン ガチャ
店員「失礼しますー。 ドリンク、お持ちしましたー」
声優「どうも」
店員(……?)
店員(台本?)
店員「それでは、ごゆっくりー」
声優「はい」
パタン
店員「…………」
店員(何か、役をもらえたのかなー?)
店員(頑張ってください)
307 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:07:15 ID:fJT9azyg
声優「さて……今度のオーディション」
声優「どの役に応募しようかしら……」
声優「…………」
声優「ふふん! このアタシに勝とうなんて、200年早いのよ!」
声優「べ、別に、あんたの事なんて、好きじゃないんだから!」
声優(コッテコテのツンデレキャラね)
声優「…………」
声優「ご、ごめんなさい……頑張ります」
声優「私だって、や、やる時はやるんです!」
声優(弱虫タイプ? こんな感じ……かなぁ)
声優「…………」
308 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:08:10 ID:fJT9azyg
音楽スタジオ
歌手「♪~♪~♪~」
歌手「…………」
歌手「……ふう」
歌手「こんな感じだな」
歌手「…………」
歌手(まだ少し、時間があるな)
歌手(あれもついでにレコーディングしておこう)
歌手「…………」
歌手「そ、そ、そ、惣菜~、惣菜売り場の売り子さん~」
歌手「今日はコロッケ、明日(あす)は春巻き、特売日~」
309 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:09:17 ID:fJT9azyg
午後
テク テク テク
声優「う、う~ん……」 セノビー
声優「ふう……」
声優(なんか、久しぶりにテンション上がっちゃったな)
声優(普通にカラオケで2時間も歌ってしまった……)
声優(…………)
声優(でも、すっきりしたかも)
声優(ふふふ)
声優(後で、うがいをしておかないと)
310 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:10:59 ID:fJT9azyg
声優「さて、鍵、鍵、っと」
ガチャ ガチャ… カチリ☆
声優「ただいまー」
声優「……と、言っても誰もいないけど」
声優「てか、居たら怖い」
声優「あはは」
声優「…………」
声優「夕御飯作るには、ちょっと早いかな」
声優「…………」
声優「とりあえず、うがいして、テレビでも見よう」
コン コン
声優「あら? はーい、どなたですか?」
311 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:12:21 ID:fJT9azyg
デブ「あ、どうも……隣のデブです」
声優「デブさん?」
声優(漫画……もう描きあがったのかしら?)
声優「今、開けますね」
ガチャ
声優「どうしたんですか?」
デブ「そ、その……漫画、なんですが」
声優「はい」
デブ「ここに来てから、描いたやつ……あるんですけど」
デブ「良かったら読んでみますか?」
312 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:13:29 ID:fJT9azyg
声優「あ、そういえば……ええ、読んでみたいです!」
デブ「そうですか」 ホッ
デブ「じゃ、これがそうです」
声優「わ、ずいぶん描いてたんですね」
デブ「と言っても、7本ですし……」
デブ「正直、今見ると、どれも拙いところが多いんですけど……」
??「あれ? デブさん?」
デブ「あ……歌手さん」
歌手「!? それ、エロ漫画っスか!?」
デブ・声優「ち、違います!!」///
―――――――――――
歌手「へえ! それなら、俺も読んでみたいっス!」
デブ「いいですよ」 クス
313 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:14:29 ID:fJT9azyg
歌手「うわぁ、楽しみだな!」
デブ「き、期待しすぎると、がっかりも多いかと思いますが……」
歌手「謙遜は無しっス!」
歌手「超、楽しみにしてますから!」
デブ(相変わらず無駄に熱い人だ……)
声優「じゃあ、アタシが読み終わったら」
声優「そっちに持っていきますね?」
歌手「はい! 待ってるっス!」
デブ「ぞれじゃ、俺はこれで……」
声優「新作も期待してますから」
デブ「は、はい……」///
―――――――――――
314 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:15:19 ID:fJT9azyg
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優(こういうの……なんて言うのかな?)
声優(勧善懲悪……少年漫画?)
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
315 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:16:08 ID:fJT9azyg
声優(あはは……この主人公、面白い)
声優(……でも、熱血で、今時珍しい感じがするわね)
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優(えー……結局ヒロインとくっついちゃうのか)
声優(この主人公に惚れる女の子って、そんなに居ないと思うけどなぁ)
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
―――――――――――
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
316 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:17:06 ID:fJT9azyg
声優「ふう……読み終わった」
声優(…………)
声優(正直、わかりやすいんだけど)
声優(くどい感じがする……説明ゼリフが余計かな……)
声優(7本全部、同じ様なストーリーだし)
声優(…………)
声優(こういうのが好きなんだろうな、デブさん)
声優(でも、アタシにもわかるくらい、後の作品ほど絵は上手くなってたわね)
声優(特に女の子が)
声優(…………)
声優(……う~ん)
声優(正直に言うべき、なんだろうか……)
317 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:18:06 ID:fJT9azyg
声優「…………」
コン コン
デブ「はい?」
ガチャ
デブ「あ……声優さん」
声優「どうも」
声優「漫画、全部、拝見させてもらいました」
声優「ええと、今、歌手さんに渡してきたところです」
デブ「そ、そうですか」
声優「…………」
声優「その、感想、なんですけど」
デブ「は、はい」
318 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:19:20 ID:fJT9azyg
声優「アタシ、ど素人ですし……あんまり気にしないで欲しいんですけど」
デブ「……ごくっ」
声優「その……正直、面白い、と、言える程ではありませんでした……」
デブ「そ、そうですか……」
声優「説明文とかが、ちょっと邪魔してる印象があって」
声優「読みやすいんですけど、それがくどくしてると思います」
デブ「…………」
声優「主人公はいいんですけど……ヒロインと、いきなりくっついちゃってるみたいで」
声優「今ひとつリアリティがありませんでした」
デブ「……そう、ですか」
319 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:20:29 ID:fJT9azyg
声優「だけど」
デブ「……え」
声優「戦闘シーンは、とっても臨場感がありました!」
デブ「!」
声優「そこだけは、自信を持っていいと思います!」
声優「それに、女の子、とっても上手に描ける様になっていますよ?」
デブ「はは……それは、まあ。 仕事で描いていましたし」
声優「…………」
声優「えと……こんな感じです」
デブ「ありがとうございます」
デブ「すごく参考になりました」
320 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:21:18 ID:fJT9azyg
声優「そう言ってもらえると、ありがたいです」
声優「……失礼かな、と、思ったんですけど」
デブ「いえ」
デブ「正直な意見は、ありがたいです」
デブ「自分でもそうだと思っていたところや」
デブ「なる程、と思えるところがあって、いろいろ気づかせてもらえました」
声優「そうですか」
デブ「…………」
デブ「ありがとうございました」
声優「そんな……こちらこそ、ありがとうございます」
声優「新作、頑張ってください」
デブ「もちろんです」
321 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:22:13 ID:fJT9azyg
歌手「…………」
歌手「…………」 パラ…
ガチャ ガチャ… キィ
店員「ただいまー」
店員「んー?」
歌手「お、店員。 来たか」
店員「またエロ漫画借りたのー?」
歌手「違うよ」
歌手「普通の漫画。 デブさんが昔、描いてたやつらしい」
店員「へー」
歌手「店員も読んでみるか?」
店員「もちろんー」
322 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:23:15 ID:fJT9azyg
歌手「くうっ……!」
歌手「熱い、熱すぎるぜ! この主人公!」
店員「…………」
店員(……まるで、歌手みたい)
歌手「こういう漫画、久しぶりに見た!」
歌手「悪役もいい味出してるし、こう……漢と漢の戦いって感じで」
歌手「すげぇ好きだ!」
店員「……そのへん、私にはわからないー」
店員「でも、確かに最近こういう漫画、見なくなったねー」
歌手「そうそう! 無駄に女の子出してハーレムにしたり」
歌手「パンチラ……というより、パンモロばかりで媚び媚びだしな!」
323 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:24:21 ID:fJT9azyg
店員「でもー」
店員「ストーリーは、良く言えば王道」
店員「悪く言えば、短調な感じがするー」
歌手「そうか?」
歌手「俺は丁寧にまとめてある感じがして、好感もてるけどな」
歌手「下手に伏線張るより、いいと思う」
店員「一理あるー」
歌手「それに、話とは関係ないけど」
歌手「どんどん上手くなっているよな?」
店員「そうだねー。 特に女の子ー」
歌手「あはは! 俺も思った!」
―――――――――――
324 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:25:42 ID:fJT9azyg
歌手「――って感じっス!」
歌手「いやもう、ホント、面白かったっスよ!」
デブ「そ、そうですか……」
デブ(嬉しいんだけど……相変わらず無駄に熱い人だ)
デブ「そんなに言ってもらえるなんて、正直、嬉しいです」
歌手「そういや、聞いた話っスけど、進撃の○人っていう漫画の作者さん」
デブ「……!」
歌手「少年・飛翔に投稿してたけど、音沙汰ないから少年・弾倉に送り先変えて」
歌手「今の大成功につながったって噂があるっス」
デブ「そ、そうなんですか?」
歌手「本当かどうか、知らないですけどね」
325 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:26:54 ID:fJT9azyg
歌手「デブさんのいちファンとしては」
歌手「フットワークを軽くして、いろんな出版社を試してみるのも」
歌手「一つの手じゃないかと思うっスよ!」
デブ「…………」
歌手「俺、デブさんの漫画」
歌手「もっとたくさんの人に読んで欲しいっス!」
デブ「…………」
デブ「は、はは……」
歌手「ははは!」
歌手「それじゃ、俺はこれで!」
歌手「次回作も出来たら、絶対読ませてください!」
パタン
326 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:28:04 ID:fJT9azyg
デブ「…………」
デブ「……本当に」
デブ「無駄に熱い人、だな……」
デブ「…………」
デブ「……っ」
デブ「うく……ぐっ……く……」
デブ「良かったなぁ……お前ら……ちゃんと読んでもらえて……」
デブ「ひぐっ……親にだって……ちゃんと……手にとってもらえなかったのに……」
デブ「ぐっ……くっ……俺の……漫画…………ひぎっ……」
デブ「やっと……誰かに……あぐっ……読んでもらったよ……ぐっ……」
デブ「うあっ……ぐっ……く……ひぐっ…………くっ……」
327 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/07(水) 20:30:04 ID:fJT9azyg
今、俺はたぶん、経済的に どん底に居ると思う。
だけど……今だかつてなかった喜びを、噛み締めていた――
344 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:27:35 ID:ey3fzNqs
数日後
スーパー 惣菜売り場
歌手「おはようございまーす」
歌手「あれ?」
歌手「部門長、ラジカセ、片付けるんですか?」
部門長「ん? ああ、そうなんだよ歌手くん」
部門長「例の曲……他の店舗でも評判悪くてね」
部門長「ようやく使用中止になったんだ」
歌手「そうなんスか……」
部門長「え? あの曲、気に入ってたのかい?」
歌手「まさか!」
歌手「実は……俺、音楽やってて」
歌手「良かったら、俺の曲も流したら少しはマシかな……なんて思ったんで」
345 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:28:33 ID:ey3fzNqs
部門長「へえ。 歌手くん、音楽が作れるのか」
歌手「はは……」
歌手(鳴かず飛ばずの貧乏ミュージシャンだとは言えねえ……)
部門長「曲は持ってきたの?」
歌手「ええ、このCDがそうっス」
部門長「聞いてもいいかい?」
歌手「どうぞ」
部門長「どれどれ……」
―――――――――――
部門長「……ちょっと子供っぽい歌詞だね」
歌手「あえてそうしたっス」
346 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:29:34 ID:ey3fzNqs
歌手「来てくれたお客さんが、楽しくなる様に」
歌手「子供でもわかる様な、わかりやすい歌詞の曲にしたっスよ」
部門長「なるほどねぇ」
パート「……部門長?」
部門長「おや、パートさん」
パート「今日は、いつものあの曲じゃないんですか?」
部門長「ああ。 これは歌手くんが作ってくれた曲だよ」
パート「へえ! すごいわねぇ、歌手くん」
歌手「ははは、結構テキトーっス!」
パート「私は悪くないと思うわよ?」
パート「ウチの子とか、喜びそうだわ~」
部門長「…………」
347 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:30:23 ID:ey3fzNqs
部門長「ふむ。 じゃあ、試しに流してみるかな?」
歌手「すんません」
部門長「今日一日だけなら、上も文句は言わないだろう」
部門長「じゃ、仕事を始めようか?」
歌手「うーっス!」
パート「はーい」
―――――――――――
声優「マネージャーさん」
M「はい?」
声優「例のオーディションなんですが」
M「ああ……応募したい役、決まったのかな?」
348 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:31:07 ID:ey3fzNqs
声優「はい」
声優「ライバルキャラと ツンデレキャラで 迷ったんですが……」
声優「ライバルキャラの女の子でお願いします」
M「はいはい……声優さんはライバルキャラね」
後輩「おはようございます」
声優「おはよう、後輩ちゃん」
M「おはよう」
後輩「あ、先輩も応募キャラ、決めたんですか?」
声優「うん。 ライバルキャラの女の子で……」
後輩「え?」
声優「ん?」
349 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:32:15 ID:ey3fzNqs
声優「何か……おかしいかな?」
声優「あ! もしかして、かぶっちゃったとか?」
後輩「いえ、そうじゃないです」
後輩「ただ……」
声優「ただ?」
後輩「私、先輩は、このメインヒロインの役にぴったりかな、と思っていたので」
声優「そう? アタシの声、こういう弱虫キャラに合ってないと思うんだけど」
後輩「うーん……うまく言えませんが」
後輩「時々、力強いモノの言い方をしてるし、そういったギャップを」
後輩「先輩の声は、力強く表現できると思ったんです」
声優「…………」
M「一理あるね」
350 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:33:04 ID:ey3fzNqs
M「どうする? 声優さん?」
M「もう少し考えてみる?」
声優「…………」
声優「そうですね……もう少し考えてみます」
M「わかった。 なるべく早く頼むよ」
声優「はい」
後輩「じゃあ、マネージャーさん」
後輩「私は、このツインテールのロリっ子でお願いします」
M「うん。 わかった」
M「それじゃ、今日も一日頑張ろう」
声優・後輩「はい」
351 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:33:42 ID:ey3fzNqs
スーパー 惣菜コーナー
♪~♪~♪~
子供「そーざい、そーざい ういばの ういこさーん♪」
歌手「はい、ありがとうございます!」
歌手「え? はい、トンカツと チキンカツっスね!」
部門長「お待たせしました、えび天5つになります」
部門長「お支払いはレジで……はい! トンカツを3つですね?」
歌手「パートさん! トンカツ、無くなりそうっスよ!」
パート「はーい、ちょっと待ってねー!」
歌手・部門長・パート(な、なんか、めちゃくちゃ忙しい……)
352 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:34:39 ID:ey3fzNqs
デブ「…………」
デブ「……よし」
デブ「ストーリーはこんな感じで……いつも通りだけど」
デブ(まあ……あの漫画見せた後だから、『またか』と思われるかもしれないが)
デブ(今回は、描きたい物を描く)
デブ(…………)
デブ(でも、声優さんの言う通り)
デブ(主人公とヒロイン、いきなりくっつきすぎだよなぁ……)
デブ(恋愛経験放棄してたから、その辺りが影響してるのは間違いない)
デブ(どうしたものか、な……)
デブ(う~ん……)
353 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:35:34 ID:ey3fzNqs
収録スタジオ
声優「イクっ……!イっちゃう……!んんっ!」
声優「くっさいチ○ポ汁、んっ、中に出されて、んはっ……!イっちゃうっ……ああっ!」
声優「もう、イクっ……! イクのっ……! イっちゃうのっ! ああんっ!あんっ!んんっ……!」
声優「ひゃあ!? 出てるっ出てるよぉ……!」
声優「くっさいチ○ポ汁、中にっ!んはっ!」
声優「熱いっ熱いのぉ……くっさいチ○ポ汁、熱いのぉ……どくどく来るのぉ……」
声優「!? 来る、来ちゃう……! ひあっ……!」
声優「熱くて、くっさいチ○ポ汁で……! 種付けされて……あああっ!」
声優「あたしっ……! イグウウウウウウウウウウウウウウウッ!!」
スタッフ「……はい、いただきました(OKの意)」
スタッフ「お疲れ様です」
声優「お疲れ様でした」
354 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:36:08 ID:ey3fzNqs
声優「ふう……」
声優「…………」
声優(弱虫キャラか……)
声優(アタシに出来るのかな……?)
声優(…………)
声優(ゆ○なさんだったら……)
声優(きっと苦もなくやるんだろうな……すごい人だし)
声優(……アタシなんて)
声優(…………)
声優(……!)
355 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:36:59 ID:ey3fzNqs
声優(ちょっと待って……)
声優(アタシ……何、勝手に決め付けてるの?)
声優(どうして……最初から『出来無い』って思ってるの?)
声優(…………)
声優(同じだ……)
声優(あの時のデブさんと同じ……)
声優(やる前から、何、諦めてるの!?)
声優(…………)
声優(……そうよ)
声優(ゆ○なさんだって……同じ人間じゃない)
声優(そりゃ出来る事と、やれる事は、差があるかもしれない……)
声優(でも、アタシにだって、アタシにしか無いモノが)
声優(ある!)
356 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:37:45 ID:ey3fzNqs
事務所
声優「お疲れ様です、マネージャーさん」
M「ああ、声優さん。 お疲れ様」
声優「……後輩ちゃんは、まだですか?」
M「うん? もうそろそろだと思うけど……」
ガチャ
後輩「ただいま戻りました~」
M「はは、噂をすれば影、だね」
M「お疲れ様、後輩ちゃん」
後輩「お疲れ様です、マネージャーさん、先輩」
声優「お疲れ様、後輩ちゃん」 クス
357 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:38:26 ID:ey3fzNqs
声優「マネージャーさん」
M「ん?」
声優「例のオーディションの件ですが……」
M「うん」
声優「アタシ……メインヒロインの役に、応募したいと思います」
後輩「!」
M「そうかい。 わかった」
M「じゃ、その応募で出しておくから」
声優「はい」
―――――――――――
358 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:39:30 ID:ey3fzNqs
テク テク テク…
声優「後輩ちゃん」
後輩「はい?」
声優「この後……予定あるかな?」
後輩「すみません……バイトに行かないと」
声優「そっか。 ああ、気にしないで」
声優「実は、ちょっと頼みたい事があって」
後輩「ええ!? 私に、ですか!?」
声優「うん」
声優「アタシ、休日はいつも発声練習で、カラオケに行ってるんだけど……」
声優「良かったら、練習に付き合ってくれないかな?と思って」
後輩「!!」
359 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:40:19 ID:ey3fzNqs
後輩「は、はい! もちろん、いいですよ!」
声優「ふふ、良かった」
声優「じゃあ今度の休みにでも、どうかな?」
後輩「はい! 全然オッケーです!」
声優「ありがとう、後輩ちゃん」
声優「じゃあ、今度の休み……朝の9時くらいに」
声優「駅前の噴水の所で待ち合わせ、で、いいかな?」
後輩「わかりました!」
後輩「楽しみにしてます!」
声優「……遊びじゃないんだけど?」
後輩「あ……そうでした」
アハハハ……
360 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:41:05 ID:ey3fzNqs
夜
ガチャ
歌手「……ただいま」
店員「歌手ーお帰りー」
店員「遅かったねー?」
歌手「おう……めちゃくちゃ忙しかった……」
店員「?」
店員「今日、何かイベントでもあったのー?」
歌手「いや……」
歌手「普段通りだった……はず」
店員「???」
361 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:42:15 ID:ey3fzNqs
歌手「ともかく……さっぱりした物が食いたい」
歌手「そういうメニューかな?」
店員「……奮発してステーキー」
歌手「すまん……無理だ」
歌手「お茶漬けか何かにしてくれ……梅干付きの」
店員「了解したー」
店員(……今夜も頑張ってもらおうと思ったのにー)
店員(ちょっと欲求不満ー)
歌手「……風呂、入ってくるわ」
店員「わかったー」
店員(でも、歌手の体調が一番大事ー)
362 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:43:16 ID:ey3fzNqs
デブ「…………」
デブ「……うん」
デブ「これ、行けるかも」
デブ(…………)
デブ(けど……少し重い展開かな)
デブ(…………)
デブ(描く方としても、キツイ内容だし……)
デブ(……いや)
デブ(現実の神様も理不尽が大好きだし)
デブ(俺も、このくらい残酷にならないと……)
デブ(いつもハッピーエンドばかりだったしな)
363 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:44:00 ID:ey3fzNqs
デブ(…………)
デブ(どんな反応してくれるだろう……声優さん達)
デブ(…………)
デブ(怒ってくれると、嬉しいな)
デブ(それだけ感情移入してくれたって、事だから)
デブ(…………)
デブ(よし)
デブ(ストーリーは、だいたいこんな感じ)
デブ(40ページくらいで……と)
デブ(ネームを描くかな)
―――――――――――
364 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:44:57 ID:ey3fzNqs
数日後 駅前
声優「…………」
タッ タッ タッ
後輩「先輩~! すみません、遅れちゃいました……」
声優「ううん、後輩ちゃん。 アタシもそんなに待ってないから」
後輩「それじゃ、行きますか?」
声優「うん!」
アハハハ……
―――――――――――
365 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:45:46 ID:ey3fzNqs
カラオケボックス
店員「いらっしゃいませー」
声優「どうもー」
店員「あ、いつもご利用、ありがとうございますー」
店員「それでは、ご記入をー」
声優「はい」
後輩(……何か変わった喋り方の人)
店員「サービスのドリンクは、何になさいますかー?」
声優「烏龍茶で」
後輩「私も烏龍茶で」
店員「はい、わかりましたー」
店員「では、23番のお部屋へどうぞー」
声優「はい」
366 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:46:38 ID:ey3fzNqs
テンチョー「……珍しいね」
店員「そうですねー」
テンチョー「っていうか、売れない女優さん」
テンチョー「初めてじゃない? 誰か連れてきたの」
店員「私も少し驚きましたー」
店員「でも、詮索は止めましょう、テンチョー?」
テンチョー「わ、わかってるよ……」
テンチョー「……店員ちゃん、最近、僕の扱い酷くない?」
店員「気のせいですよー」
テンチョー(そうなのかなー……)
367 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:47:38 ID:ey3fzNqs
コン コン
店員「失礼しますー」
ガチャ
店員「お飲み物、お持ちしましたー」
声優「ありがとう」
後輩「ありがとうございます」
店員(……姉妹?って似てない)
店員「それでは、どうぞごゆっくりー」
パタン
店員(…………)
店員(友達って言うには、年が離れてるし……先輩後輩?かな?)
店員(雰囲気は、よさげだったなー)
店員(女優さん仲間かもねー) クス
368 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:48:25 ID:ey3fzNqs
声優「さて……と」 ゴソゴソ…
後輩「何ですか?」
声優「はいこれ」
後輩「漫画……あ」
後輩「例のオーディションアニメの原作漫画ですね?」
声優「うん、そう」
声優「今日は、これを使って練習しようと思って」
後輩「…………」 パラパラ…
後輩「そういえば……私、今度の仕事の原作漫画、知らないです……」
声優「後輩ちゃん。 それはそれでいいと思うよ?」
後輩「え?」
369 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:49:18 ID:ey3fzNqs
声優「先入観のない方が、かえって演じる役に馴染みやすかったりするし」
後輩「じゃあ……どうしてですか?」
声優「あはは……単純に台本の代わりとして使いたいだけなの」
後輩「あ、そういう事ですか」
後輩「納得しました」
声優「本当は、普通の台本みたいに」
声優「セリフだけ抜粋しようとも思ったんだけど……」
声優「10ページで心が折れたわ」
後輩「あはは」
声優「もう、酷いな。 後輩ちゃん」
後輩「す、すみません」
声優「冗談よ」 クス
370 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:50:00 ID:ey3fzNqs
声優「それじゃ……アタシ、メインヒロインをやるから」
声優「後輩ちゃん、悪いけど、それ以外をやってくれるかな?」
後輩「はい。 分かりました」
声優「後でアタシも逆をやるから」
―――――――――――
後輩「お、思ったより大変ですね……」
声優「メインヒロイン以外、全部やらせちゃてるしね……」
後輩「でも、こうやって漫画を参考にすると、わかりやすくていいかも」
声優「まあ、アフレコで演出家の思う通りにしないといけないから」
声優「結局は無駄かもしれないけどね」
371 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:50:47 ID:ey3fzNqs
声優「で、どうかな? アタシのメインヒロイン」
後輩「はい。 思ってたイメージとは違ってました」
声優「あら……」
後輩「もっとずっと、良かったです!」
声優「あはは、ありがとう。 お世辞でも嬉しい」
後輩「お世辞なんかじゃないですよ!」
後輩「きっとハマリ役になると思います!」
声優(それはそれで複雑だなぁ……キャラ的には、あんまり好きじゃないし)
声優「そ、そう。 ……じゃ、次はアタシが他のキャラ全部やるね?」
後輩「はい! お願いします!」
声優「肩の力は抜いてね?」 クス
372 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:51:38 ID:ey3fzNqs
スーパー 惣菜売り場
♪~♪~♪~
歌手「今日はお寿司フェアですよー!」
歌手「とってもお買い得ですよー!」
ガヤ ガヤ
部門長「はい、サラダ巻き3人前ですね?」
部門長「お待たせしました」
歌手「お得パック2つに、いなり寿司を2人前っスね?」
歌手「ありがとうございます!」
ガヤ ガヤ
―――――――――――
373 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:52:41 ID:ey3fzNqs
部門長「みなさん、今日もご苦労様」
歌手「お疲れ様っス」
パート「お疲れ様」
部門長「ああ、歌手くん」
歌手「はい?」
部門長「悪いんだけど……あのCD」
部門長「もう少し借りててもいいかな?」
歌手「いいっスよ」
部門長「ありがとう」
部門長「気のせいかと思ったけど」
部門長「あの曲を流してから売上が良くてね」
374 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:53:12 ID:ey3fzNqs
歌手「そうなんスか」
部門長「信じられないけど、数字に現れてるんだ……」
歌手「へえ……それはこっちも嬉しくなるっス!」
部門長「ああ、引き止めてごめん」
部門長「明日もよろしく頼むよ」
歌手「はい。 それじゃまた明日っス!」
スタ スタ スタ…
部門長「…………」
部門長(……思い切って)
部門長(上に言ってみようかな?)
375 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:54:12 ID:ey3fzNqs
歌手「ただいまー」
店員「お帰りー」
店員「ここのところ、遅いねー?」
歌手「ああ」
歌手「なんか、売上が伸びてるんだって」
店員「へえー」
歌手「どうも、俺が作った曲を流してかららしい」
店員「それって……惣菜ソングー?」
歌手「そう」
店員「今度、あれを音楽会社に持っていったらー?」
歌手「いや……他の曲と一緒に持っていったんだけど」
歌手「『幼稚すぎる』って散々な評価だった……」
店員「……ごめんー」
376 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:54:56 ID:ey3fzNqs
歌手「いいって……元々そんなに期待してたわけじゃないし」
歌手(他のもボロクソ言われたけど……)
歌手「ああー腹減った。 今日のメニューは?」
店員「お肉ー」
歌手「うし! そういうのガッツリ食いたかった!」
店員「それは良かったー」
歌手「…………」
店員「歌手ー?」
歌手「店員、明日休みだっけ?」
店員「うん」
歌手「そっか! 俺もなんだ」
377 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 19:55:42 ID:ey3fzNqs
歌手「明日さ、二人で遊びに行かね?」
店員「おおー」
店員「ゼー○ガン○ムで踊りたい気分ー」
歌手「お前はジュ○ーかよ……てか、何でそんなネタ知ってんの?」
店員「明日、何着て行こうかなー♪」
歌手「…………」
歌手(……まあ、いっか)
歌手「今日、どうする? 泊まっていくか?」
店員「もちろんー」
歌手「はは、それじゃメシ作るの手伝うぜ!」
店員「良い心がけー。 じゃ、きゅうりの皮を剥いてー」
歌手「おう!」
378 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:01:08 ID:ey3fzNqs
デブ「……ふう」
デブ「あ……もうこんな時間か」
デブ(いかんなぁ……不摂生な生活してるから太るんだし……)
デブ(とは言え、腹減った)
アン……アン……歌手……ヤ……
デブ「……」
アアッ……店員……キョウモ……イイゼ……
スゲェ……シメツケテ……ウアッ…………
バカァ……イキナリ……ハゲシスギ……アッ……
店員ッ……店員ッ……トマンネェ……ッ……
デブ(コンビニ行こ)
―――――――――――
379 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:02:05 ID:ey3fzNqs
デブ(まだやってるし……)
歌手ゥ……歌手ゥ……ヤッ……アン……
店員ッ……オレ、マタ……アアッ……ウッ!……
ハアッ……ハアッ……ハアッ…………
デブ(……ようやく終わりましたか)
歌手ノバカ……ワタシ……コワレルカトオモッタ……
スマネェ……ナンカ、ヒサシブリダッタカラ……ツイ……
店員モ、カワイカッタシ…………
……ダカラッテ、3レンゾクハ……ヤリスギ……
デブ「」
ハアッ……ハアッ……店員ッ……
ヤッ……バカ……歌手のバカッ……スコシ、ヤスマセ……アアッ……
デブ(一発抜こう……)
380 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:03:11 ID:ey3fzNqs
――1ヶ月後
オーディション会場
選定員「ありがとうございました」
選定員「では……次の方、お願いします」
声優「はい。5番、声優です」
選定員「それでは、お渡ししたセリフを言ってみてください」
声優「はい」
声優「……ううっ、怖い……怖いよう……」
声優「こんな事……どうして起こるの……?」
選定員「…………」
声優「いいえ! それでも私は……私は!」
声優「あの人を信じる!!」
選定員「…………」
381 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:04:00 ID:ey3fzNqs
選定員「声優さん」
声優「こんなこt……!?」
声優「は、はい?」
選定員「ああ、すみません。 途中だったのに」
声優「いえ……」
選定員「ええと……気弱なセリフを アドリブで言ってもらえますか?」
声優「! はい」
声優「…………」
声優「私に……何ができるの……?」
声優「普通の人間なのよ……? 私は……!」
選定員「…………」
―――――――――――
382 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:04:56 ID:ey3fzNqs
選定員「……はい、声優さん、ありがとうございました」
声優「ありがとうございました」
選定員「では、次の方。 お願いします」
モブ美「はい。 6番、モブ美です」
声優「…………」
声優(……びっくりした)
声優(今まで、アドリブを要求された事なんて無かったのに)
声優(…………)
声優(いい事……なのかな?)
声優(そうだったら嬉しいんだけど)
―――――――――――
383 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:06:08 ID:ey3fzNqs
後輩「先輩」
声優「あ、後輩ちゃん」
後輩「手応えはどうでした?」
声優「うん! 何て言うか……出し切った!って思うな♪」
後輩「そうですか、良かったです!」
声優「うふふ」
声優「後輩ちゃんは?」
後輩「私も出し切ったと思います!」
声優「そっか♪」
声優「二人共、受かるといいなぁ」
後輩「そうですね……」
384 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:07:04 ID:ey3fzNqs
声優「例の収録は、どんな感じかな?」
後輩「うう~もの凄く緊張してます……」
後輩「恥ずかしながら、NG出してるの」
後輩「今のところ私だけです……」
声優「あらら」
後輩「エロと違って、数人で収録するし……」
後輩「なんか、雰囲気そのものが違いすぎです」
声優「なるほどなるほど」
後輩「……真面目に聞いてます?」
声優「もちろん!」
声優「それじゃ……そろそろ事務所に戻ろっか?」
後輩「はい!」
385 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:07:58 ID:ey3fzNqs
デブ「…………」
デブ「お」
デブ「終わった……」
デブ「ふううう……」
デブ「…………」
デブ「コピーをとってこよう」
―――――――――――
デブ「…………」
デブ「……久しぶりにやり遂げたって気がするな」
デブ(……でも、漫画の神様、手塚○虫さんは)
デブ(月に100ページを超える連載を抱えてたって聞くけど……)
デブ(案外、本当に(人間じゃないという意味で)神様だったのかもなぁ)
386 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:08:40 ID:ey3fzNqs
デブ(…………)
デブ(自分は、まだまだ甘いのかな……)
デブ(…………)
デブ(……ったく)
デブ(悪い癖だ……)
デブ(俺は、やれる事を全部、この漫画に入れたんだ)
デブ(もっと、自分に自信を持てよ)
デブ(…………)
デブ(声優さん、今日は遅いのかな?)
387 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:09:29 ID:ey3fzNqs
ガチャ ガチャ……カチリ☆
歌手「たーだいまー」
歌手「今日は俺が早かったか」
歌手「…………」
歌手「今日のメシ、何かな?」
コン コン
歌手「ん? はーい」
デブ「あ……どうも。 デブです」
歌手「デブさん? 今開けますね」
ガチャ
歌手「どうしたんスか?」
388 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:10:20 ID:ey3fzNqs
デブ「ははは……漫画、やっと出来上がりました」
歌手「おお!」
歌手「そうなんスか、待ってたっス!」
デブ「これがそうです」
歌手「楽しみだな~!」
デブ「はは……面白いといいんですけど」
歌手「それじゃ、さっそく読ませていただきます!」
デブ「それじゃこれで……」
パタン
歌手「どれどれ~?」
389 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:11:05 ID:ey3fzNqs
ガチャ
店員「ただいまー」
店員「んー? 歌手、また漫画借りたのー?」
歌手「…………」
店員「……? 歌手ー?」
歌手「うっ……うっうっ……うっ……」 ボロボロ…
店員「」
―――――――――――
店員「……うわー」
店員「これは……切ないストーリー」
歌手「こんなの、あんまりだ!」
390 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:12:02 ID:ey3fzNqs
歌手「どうしたんだよ、デブさん!……こんな救いのないストーリー、酷すぎる!」
店員「…………」
店員「でも……私、このヒロインの気持ち」
店員「わからなくは無いー」
店員「もし……私がこのヒロインの立場だったら……」
店員「同じこと、するかもー」
歌手「冗談じゃねぇ!!」
店員「!?」
歌手「例え、世界が救えても……店員が居ないんじゃ全然足りねえ!!」
歌手「それなら俺は、店員と一緒に世界の滅びを迎える!!」
店員「」///
店員「バ、バカ……感情移入しすぎー」///
店員「……嬉しいけど」///
392 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:12:50 ID:ey3fzNqs
歌手「――という訳で」
歌手「正直、がっかりっスよ!」
デブ「は、はあ……」
歌手「あんなに惹かれあってた二人なのに……」
歌手「世界が救えても、納得できないっス!」
デブ「す、すみません」
声優「……どうしたんですか?」
歌手「あ、声優さん」
デブ「今晩は、です」
歌手「聞いてくださいよ~声優さん」
声優「?」
393 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:13:42 ID:ey3fzNqs
歌手「……ってネタバレになるっスね」
声優「ああ、デブさん、漫画が出来たんですか」
デブ「はい」
歌手「これがそうっス」
声優「ありがとう、歌手さん」
歌手「…………」
歌手「……なんか、冷静に考えたら」
歌手「俺、文句言える立場じゃないっスね」
歌手「すんませんした、デブさん」
デブ「いえ……正直な意見を聞けて良かったです」
歌手「はは、そう言われると、余計恐縮するっスね」
歌手「ありがとうございましたっス!」
スタ スタ スタ…
394 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:14:58 ID:ey3fzNqs
デブ(やっぱり無駄に熱い人だ……)
声優「それじゃデブさん」
声優「さっそく読ませてもらいますね?」
デブ「ええ、どうぞ」
―――――――――――
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
395 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:16:00 ID:ey3fzNqs
声優「はあ……」
声優「…………」
声優「悲しい話……でも」
声優(すごく引き込まれた)
声優(…………)
声優(主人公は、これまでのデブさんの作品には無かった)
声優(クールキャラ)
声優(…………)
声優(これまで通り主人公とヒロイン、くっつく感じだけど……)
声優(その過程がしっかり描かれていて、それだけに)
声優(ラストの別れが悲しく思える……思わされる)
声優(歌手さん、これを怒ってたのかな?)
声優(確かに、少し理不尽よね) クス
396 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:16:56 ID:ey3fzNqs
声優「…………」
声優(アタシ……結構好きかも)
声優(この漫画)
声優(…………)
声優(だって――)
―――――――――――
デブ「ああ、声優さん」
声優「漫画、読ませていただきました」
デブ「ず、ずいぶん早いですね」
声優「なんか……この漫画好きみたいで」
声優「早く感想、言いたくて」
デブ「ははは……ちょっと照れますね」///
397 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:18:03 ID:ey3fzNqs
声優「ストーリーは、これまで通り……と思いきや」
声優「最後の別れは、不意打ちでした」
デブ「…………」
声優「それは、前半で描かれている、主人公とヒロインの交流がとても丁寧で」
声優「きっとこの二人は幸せになる……ううん」
声優「幸せになって欲しい、と思わせるキャラだからでした」
デブ「…………」
声優「……アタシ」
声優「実は、俗に言う、”中の人”をやっているんです」
デブ「え? ……と言うと、CVってやつですか?」
声優「そうです」
398 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:18:45 ID:ey3fzNqs
声優「しかも……ほとんどエロ関係の仕事ばかりを」
デブ「……!」
声優「軽蔑……しました?」
デブ「まさか」 ニコ
声優「ありがとうございます」 クス
声優「……そんなアタシが言うと、失礼かもしれませんが」
声優「もし、このマンガがアニメ化されたら」
声優「ぜひ、このヒロイン役をやりたいです!」
デブ「!!」
声優「それくらい……この作品、いいと思いました」
デブ「…………」
399 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:19:45 ID:ey3fzNqs
デブ「そんなに言ってもらえるなんて……嬉しいです」
声優「ふふ、お世辞じゃないですからね?」
デブ「ははは」
声優「…………」
デブ「…………」
デブ「明日、さっそくどこかの出版社に投稿したいと思います」
声優「そうですか」
声優「入選……ううん」
声優「大賞とか、取れるといいですね」
デブ「賞金も出ますしね」
アハハハ……
―――――――――――
400 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:20:54 ID:ey3fzNqs
……その後すぐ、デブさんはアルバイトを始めていた。
送った漫画が何かの賞を取るとしても、ずっと先だし
先立つモノは、どうしてもいるから、と……ちょっと切ない。
けど、デブさん本人は、少しも苦にしてない感じだった。
漫画を描く時間は減ってしまったが、これからも描き続けるつもりだと
笑いながら言っていた。 アタシも次回作を楽しみにしている。
401 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:22:15 ID:ey3fzNqs
そういえば、思わぬ出世をした人がいる。 それは歌手さん。
本人は、割と適当に作った『惣菜ソング』が
歌手さんの勤めているスーパーのテーマソング?として採用したい、と
正式に依頼があった、というのだ。
そしてこれが思わぬヒットとなり、音楽会社が数社
ぜひ、ウチからCDを出してくれ、と、頼み込んできたという。
歌手さんは戸惑いつつも その内の一社からCDデビューした。
ふふ、そういえばジャケ絵、歌手さんが頼んでデブさんが描いたんだっけ。
402 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:23:09 ID:ey3fzNqs
どのくらいか知らないけど……結構売れたみたいで
著作権料に驚いたそうだ。 ……いくら位なのかなぁ。
403 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:24:09 ID:ey3fzNqs
いちやく時の人、となった歌手さんだけど
何故か、スーパーのアルバイトは辞めなかった。
本人言わく、スーパーで働く事も重要なリズムらしい……。
でも、不安定な職業だし、それもありかな?とも思う。
そうそう! 歌手さんに彼女が居たんだけど
行きつけのカラオケボックスの受付の人で、びっくりしたっけ。
とっても幸せそうで、かなり羨ましく思った……いいなぁ。
404 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:25:09 ID:ey3fzNqs
アタシの方は……と言えば、オーディションの結果は
またしても落選……。
今回も後輩ちゃんと二人揃って残念な結果に終わっていた。
だけど……気持ちとしては、そんなに落ち込んでいない。
アタシは、この仕事が好きだと改めて認識したから。
役に成りきる事、演じる事が、楽しいと知っているから。
405 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:25:57 ID:ey3fzNqs
数ヵ月後――
事務所
M「おはよう、声優さん」
声優「おはようございます、マネージャーさん」
後輩「おはようございます! 先輩、マネージャーさん」
M「今日も一日頑張ってね」
声優「はい」
後輩「はい!」
M「後輩ちゃんは、レッスンも忘れずにね」
後輩「わかってます!」
406 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:26:50 ID:ey3fzNqs
声優「そっか、今日レッスンの日だったっけ」
後輩「はい……遅くなるので、先輩と一緒に帰れませんね」
M(この娘は本当に声優さんが好きだなぁ……)
声優「待っててあげよっか?」
後輩「い、いいえ! そこまで図々しくなれませんよ!」
声優「あはは」
声優「冗談はさておき、大事な歌唱力のレッスンだから頑張ってね」
後輩「もちろんです!」
後輩「絶対にアイドル声優になってみせますとも!」
声優「それじゃ、行ってきます。 マネージャーさん」
M「ああ、道中気をつけてね」
―――――――――――
407 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:27:47 ID:ey3fzNqs
収録スタジオ
スタッフ「それじゃ声優さん。 今日もお願いします」
声優「はい」
――今日も仕事が始まる――
スタッフ「それでは……5秒前……4……3……」
声優「…………」
――これからも悩む事があると思う――
声優「んはぁっ!!」
408 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:28:42 ID:ey3fzNqs
声優「いいのおっ……! オチ○ポ、いいのおっ!!」
――でも、きっと――
――アタシは、やれるだけ続けていく――
声優「んギモッヂイィ~!!」
――自分の選んだ道だから――
409 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:31:13 ID:ey3fzNqs
―――――――――――
数年後
410 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:32:10 ID:ey3fzNqs
デブ「…………」
プルルルルル… プルルルルル…
デブ「……お、電話だ」
ガチャ…
デブ「はい、もしもし」
デブ「……ああ、Z編集者さん」
デブ「締切はまだ先ですけど……?」
デブ「……はい……はい」
デブ「…………」
デブ「……え?」
411 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:33:19 ID:ey3fzNqs
デブ「アニメ化……ですか?」
デブ「しかし……まだ単行本二冊しか出てないし」
デブ「こんな日常漫画のアニメに需要があるんですか?」
デブ「…………」
デブ「そ、そうですか……」
デブ「それならいいんですけど……」
デブ「…………」
デブ「はい……はい……」
デブ「……希望する中の人?」
デブ「俺が選んでいいんですか?」
412 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:34:19 ID:ey3fzNqs
デブ「…………」
デブ「そうですか……それなら」
デブ「ヒロインは、声優って人をお願いします」
デブ「それ以外はそちらに……は?」
デブ「ああ、その人、その……エロ関係では有名なんですが」
デブ「……ええ、俺は気にしませんので」
デブ「…………」
デブ「はは……実は個人的な付き合いがあって……」
デブ「こういうのはダメですか?」
デブ「…………」
デブ「良かった。 では、ぜひ、ヒロインは彼女でお願いします」
デブ「そうだ、OPとかはもう決まっているんですか?」
デブ「…………」
413 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:35:08 ID:ey3fzNqs
デブ「なら、歌手って人をお願いしたいんですが」
デブ「…………」
デブ「ああ……『惣菜ソング』って知ってますか?」
デブ「…………」
デブ「そうです、その人です」
デブ「これも個人的な付き合いで……はい」
デブ「…………」
デブ「そうですか……それなら選考に入れてもらえれば」
デブ「……はい……はい」
デブ「お願いします」
デブ「では……」
チン…
414 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:36:21 ID:ey3fzNqs
デブ「…………」
デブ(余計な事……かな?)
デブ(…………)
デブ(……いや)
デブ(そりゃ……全く えこひいきじゃない、と言えば嘘になる)
デブ(でも……)
デブ(彼女たちが、俺の作品に関わってくれたら)
デブ(すごく嬉しい)
デブ(それが……正直な気持ちだ)
デブ(…………)
デブ(さ、仕事を続けるか!)
おしまい
416 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:44:44 ID:ey3fzNqs
皆さん、投下遅れてすみませんでした……これで終了です。
お付き合いありがとうございました。
最後、なんか巻が入っちゃった感、否めませんけど
こんな感じにまとめました。 気に入っていただけたら、幸いです。
イケメンは、経済的に幸せなので、それでバランスをとっていると思ってくださいw
レス、ものすごく励みになりました。 ありがとうございます。
417 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:46:35 ID:EkCUZHYg
乙です
連休明けたら自分も頑張ろうと思いました
面白かったです!
418 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:49:03 ID:ZmX3WOtk
乙!物凄くよかった
415 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:44:01 ID:rK8hx.IA
おおお終わりか!
盛大に乙なんだけど
その後輩ちゃんと店員ちゃんは?
まさか番外編があるの?
419 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:49:41 ID:ey3fzNqs
420 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:50:12 ID:JVzKvtEw
乙!
まさかここまでいい話になるとは…
421 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:51:56 ID:sc5wL/rQ
良い意味でタイトル詐欺だったよ!
超乙!!
422 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 20:52:37 ID:NYzI5uxo
スレタイからでは想像もつかないような素晴らしい話だった!
盛大に乙!!
カンケツ
オメデトウ
イワイオドリ
♪ /| /| /|
♪ ∠_ノ ∠_ノ ∠_ノ
〈(・∀・)ノ・∀・)ノ・∀・)ノ
`└|==|┘|==|┘|==|┘
〈 〈 〈 〈 〈 〈
 ̄  ̄  ̄
423 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 21:25:18 ID:r4eCdu92
乙~! 久しぶりに良いスレだった
424 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 21:33:49 ID:1s6BjVCM
いい感じにバランスがとれてて良かった!!
乙乙乙!!!
次回作にも期待!!
425 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 21:37:22 ID:S2yMCE1Y
楽しかった!
でも…
エピローグを…
もう少し…
みんなで、リビングに集まって一緒にオンエア見るとかも読みたかったなぁ…
426 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 21:38:44 ID:K7.u50Sk
乙!すごいよかった!
427 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/14(水) 23:28:06 ID:Mh1ome2c
大変乙である
名作と言わざるを得ない
428 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/15(木) 01:11:23 ID:9bgJb9kk
おっつおっつ
429 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/15(木) 01:50:48 ID:pvv716jY
まじでよかった
430 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/15(木) 02:02:17 ID:JIeZWsQg
乙…!
俺も頑張ろうって思えたよ
432 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/15(木) 03:20:07 ID:x.5CzF0.
面白かった!
乙です!
433 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/15(木) 03:32:55 ID:L1./LTGU
いやーすごいよかった
乙です
434 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/15(木) 04:01:32 ID:UuoVk71.
乙
なんというかうまくいきすぎないところが良いよね、こういうの好き
転載元
声優「んギモッヂイィ~///」(アタシ…何やってんだろ…)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1371733426/
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お金とか名誉とか、もちろん大事だけど
頑張ってきたのはそれの為だけじゃない。
みんな、それぞれで頑張ってる姿に感動した。
>>1と書いてくれた人、そしてまとめてくれた管理人さん、ありがとう。
待ってたかいがあった。ラストのオチは賛否あるかもしれないけど
頑張った人に対する、ささやかなご褒美だと思ってる。
声優がこのまま有名になってハッピーエンドがいいな~!