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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/05(月) 12:38:08.41 ID:XEdR9lYn0
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/05(月) 12:38:59.65 ID:XEdR9lYn0
とある日の午後、未那が部屋にやってきた。
「ねえお母さま、お願いがあるのだけど」
私の隣にちょこんと座ると、小さな胸に抱えた本を差し出してきた。
「このお話を読んだことはある?」
どうやら絵本のようだけれど、見覚えは全くない。いいえ、と首を横に振ると、未那は身を乗り出してきた。
「あのね、この本は、パパのお部屋の本棚にあったの。
パパが、これはいい本だから、未那も読んでみるといいよって言って貸してくれて。
それで読んでみたら、パパの言う通り、ほんとに素敵なお話だったの」
良かったから私も読んでみろと言うのだろうか。
そう思っていたら――――未那は意外なことを口にした。
「それでね、この本がとても面白かったってパパに言ったら、
パパが、この本を書いた人がこの街に住んでるって教えてくれたの。
その話を詳しく聞いてたら、すごく素敵な偶然があって――――」
……なんだか、嫌な予感がする。
けれど、私の思いなどお構いなしに、娘は言葉を続けた。
「それでパパから聞いたんだけど、両儀家が所有しているフドウサンの中で、ものすごく古いビルがあるんでしょう?
ええと、ガランの……ドウ、だったかしら。
なんと、その絵本作家さんが、そこに住んでいるんですって。
わたし、ぜひお会いしてみたいの!」
「…………」
――――ったく、幹也のやつときたら。
人の良さそうな笑顔を浮かべ、その背後から尖った黒い尻尾がひらひら踊る――――そんな姿を思い描きつつ、私は思わずこめかみを押さえた。
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