前編162 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:19:10 ID:4MKEPFoY
後輩「それで、収録はいつなんですか!?」
M「ハハハ、まだちょっと先だよ」
M「先方(せんぽう)の話じゃ来月下旬くらいになるって」
…………
後輩「他のキャラの配役は決まっているんですか!?」
M「主要キャラはね」
後輩「有名な人とか、居るんだろうなぁ……」
……どうして
163 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:20:06 ID:4MKEPFoY
後輩「うう~、い、今から緊張してきました……」
M「まあまあ。 とりあえず、目の前の仕事に集中してくれよ?」
後輩「もちろんです!」
どうして、なの……?
M「それじゃあ、詳しいスケジュールが分かり次第、連絡するから」
後輩「はい!」
アタシは――
アタシのしてた、努力は――
164 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:20:59 ID:4MKEPFoY
後輩「……?」
後輩「先輩?」
声優「…………」
後輩「どうしたんですか? 先輩?」
声優「…………」
後輩「先輩!」
声優「!!」
声優「あ、う、うん、ごめんなさい、後輩ちゃん……」
声優「ちょっと……寝不足で、ボーっとしちゃってた」
後輩「そうなんですか」
声優「う、うん……そう、なの」
165 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:21:44 ID:4MKEPFoY
声優「じゃ、仕事に行かないと……」
ソソクサ…
後輩「あ……」
後輩「…………」
後輩「どうしちゃったんだろう……先輩」
―――――――――――
銀行
ピ……ピピ……ピ
デブ「…………」
デブ(まだ入金されてない)
166 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:22:30 ID:4MKEPFoY
デブ(B出版……先月も3日遅れてたし)
デブ(今月もなのか……?)
デブ(しっかりしてくれよ……ったく)
アリガトウ ゴザイマシタ
デブ(さて……どうするかな)
デブ(…………)
デブ(暑ぅ……)
デブ(とりあえず、喫茶店にでも入って考えよう)
テク テク テク…
167 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:23:34 ID:4MKEPFoY
歌手「……う」
歌手「ふああああああっ……」
歌手「…………」 ボー…
店員「おはよー」
歌手「……!?」
歌手「え!? て、店員!?」
店員「何で驚くー?」
歌手「……」
歌手「あ……そ、そうだった……俺達、昨夜……」///
店員「……」///
168 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:24:24 ID:4MKEPFoY
歌手「って!? もう10時じゃねーか!?」
店員「そうだねー」
歌手「なんで起こしてくれなかったんだよ!? 完全に遅刻だ、遅刻!」
店員「そうだねー」
歌手「そうだねって……お前も遅刻なんじゃね?」
店員「……昨夜」
店員「誰かさんのハッスルで私の一部分が悲鳴を上げておりますー」
歌手「す、すまん」///
店員「そんな訳で、さっき電話して、私は今日休みを取ったー」
歌手「ああ……」
店員「…………」
169 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:25:34 ID:4MKEPFoY
店員「そういえば、聞きたい事、あるー」
歌手「おう?」
店員「昨日の……その、えっちぃ漫画ー」
店員「あれ、コピーだったけど、無修正だったー」
歌手「ああ……」
店員「あんなの、どうやって手に入れたのー?」
歌手「手に入れた訳じゃねーよ。 借りたんだ」
歌手「お隣のデブさんに」
店員「へー」
店員「やっぱり、そういう雑誌に描いている人ー?」
歌手「まあ、はっきり言わなかったけど……たぶん」
店員「そっかー」
170 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:26:26 ID:4MKEPFoY
店員「お礼、言うべきかなー?」
歌手「……どうして?」
店員「私と歌手のキューピッドになったー」
歌手「心情的に受け入れたくない事実だ……」
店員「事実は小説よりも奇なりー」
歌手「まあ、真面目な話……デブさん、お礼言われても困ると思う」
店員「……やっぱりそうかなー」
歌手「って、そんな話ししている場合じゃない!」
歌手「電話! 電話入れとかないと!」
店員「歌手も休んだらー?」
171 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:27:16 ID:4MKEPFoY
歌手「そうしたいのは山々だが……」
店員「?」
歌手「絶対、お前に手を出す……つーか、空手技食らってもヤリ倒そうとする」
歌手「情けないが……我慢できる自信がねえ」///
店員「……歌手のスケベー」///
歌手「う、うるせー」///
歌手「ど、童貞には、過剰すぎる快感だったんだよっ」///
店員「バ、バカ……そ、それ以上言うなー」///
歌手「だあもう! 思い出しちまったじゃねーか!」///
歌手「静まれっ! 俺の情熱マイクッ!」///
店員(……男って、ちょっと可哀想な生き物ー)///
172 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:28:21 ID:4MKEPFoY
収録スタジオ
声優「ああんっ、あんっあんっ……」
声優「もっとぉ……もっとかき回してぇ……」
声優「子宮の奥ぅ……いいのぉ……あひぃぃぃっ」
スタッフ「…………」
スタッフ「すみません、もう一度お願いします」
声優「……はい」
声優「ああんっ、あんあん……」
声優「もっと……もっとかきき回し……」
声優「……すみません」
スタッフ「……はい」
173 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:29:54 ID:4MKEPFoY
声優(……ダメ)
声優(もっと……もっと集中しなさいっ!)
声優(こんなの……いつもやっている事でしょ!?)
声優(こんなのっ……!)
――やった! やりましたよ! 先輩!――
声優「ああんっ、あん、あんっ……」
声優「もっとぉ……もっと、かき、回して……」
声優「子宮、の、お…く…………っ」
――それで、収録はいつなんですか!?――
声優「……っ……うっ……」 ポロッ
声優「うくっ……うっ……ううっ」 ポロポロ……
スタッフ「…………」
―――――――――――
174 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:31:05 ID:4MKEPFoY
午後
M「……どうしたの、声優さん」
声優「…………」
M「後輩ちゃんくらいの新人ならともかく、君みたいなベテランが……」
声優「……すみません」
M「…………」
M「……まあ、先方(せんぽう)さんにも まだ余裕があったから良かったものの」
M「こういう事が続くと、こっちとしても、ね……」
声優「…………」
175 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:31:54 ID:4MKEPFoY
M「…………」
M「スケジュールの調整はしておくから、2~3日休んだ方がいい」
声優「!?」
声優「ま、待ってください!」
声優「アタシは……アタシはやれます!」
M「ダメだよ……今の君は使えない」
声優「……っ」
M「……僕としても、心苦しいけど」
M「今は、休む事を考えなさい」
M「わかったかい?」
声優「………………はい」
176 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:32:48 ID:4MKEPFoY
夕方
コン コン
デブ「? は~い、どなたですか?」
歌手「あ、どうも……隣の歌手です」
デブ「ああ……今 開けます」
ガチャ
歌手「昨日は突然すみませんでした」
デブ「いえ……」
歌手「これ……漫画です」
デブ「あ、はい」
デブ「じゃ……」
歌手「凄いですね……デブさんは」
177 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:33:54 ID:4MKEPFoY
デブ「……は?」
歌手「怒るかもしれませんけど……」
歌手「俺……ちょっと、馬鹿にしてたっス」
歌手「デブさんも……エロ漫画の事も」
デブ「…………」
歌手「情けない事に……自分の無くしたやる気を取り戻したくて」
歌手「俺は、この人よりマシなんだって、思い込みたくて漫画を借りたっス……」
デブ「…………」
歌手「でも」
歌手「全然違った」
178 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:35:01 ID:4MKEPFoY
デブ「……違わないよ。 その通りさ」
歌手「いいえ」
歌手「俺、羨ましいっス」
歌手「デブさんは、立派に『漫画』で食って行けてるじゃないですか」
デブ「…………」
歌手「……俺、今だにスーパーの惣菜売り場でバイトしてるっス」
歌手「もし……ミュージックに『エロ』ってジャンルがあったら」
歌手「是非それで稼いで、少しでも音楽のそばにいたいっス」
デブ「……!」
歌手「それに、このエロ漫画だって凄いっスよ」
歌手「めちゃくちゃムラムラしましたし」
デブ(……それは知ってる)
179 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:36:30 ID:4MKEPFoY
歌手「ぜひ……大事にしてやってください」
デブ「は?」
歌手「俺は……自分が作った曲は、全部大事にとっているっス」
歌手「中には、こんなダセー曲って言われたものもあります」
歌手「でも……自分で生み出した……言ってみれば子供みたいなものなんです」
歌手「俺、捨てられないっス」
デブ「…………」
歌手「そんな訳で、いろいろ言っちゃったスけど」
歌手「全部ひっくるめて、ありがとうございましたっス!」
歌手「それじゃ!」
デブ「……はあ」
パタン…
180 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:37:15 ID:4MKEPFoY
デブ「…………」
デブ(……ったく)
デブ(相変わらず、無駄に熱い人だ)
デブ(…………)
デブ(子供……か)
デブ(悪いなぁ……こんな情けない親で)
デブ(…………)
デブ(……でも)
デブ(やる気は出てきたな)
デブ(………ふふ)
デブ(さ、仕事を続けるか)
181 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:37:59 ID:4MKEPFoY
翌日
店員「いらっしゃいませー」
店員「……あ」
イケメン「やあ、店員ちゃん」
店員「待っていたぞよー」
イケメン「嬉しい事言ってくれるね」
店員「覚悟しておけー」
店員「特大の引導を渡してやるー」
イケメン「お、お手柔らかに頼むよ……」
182 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:39:00 ID:4MKEPFoY
喫茶店
イラッシャイマセー
イケメン「コーヒーを……あ」
イケメン「やっぱり、アイスコーヒーを2つ」
イケメン「それでいいかい?」
店員「何でもいいー」
カシコマリマシタ
イケメン「さて……聞かせてもらえるかい?」
店員「わかってるー」
店員「…………」
店員「……そうねー」
店員「二人だけだったー」
店員「私の喋り方をバカにしなかったのはー」
183 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:39:52 ID:4MKEPFoY
イケメン「…………」
店員「もっとも、馬鹿にした奴は片っ端から叩きのめしたけどー」
イケメン「男が相手でも容赦なかったよね……」
店員「でも、そのせいもあってー」
店員「私に話しかけてくる人は、稀だったー」
イケメン「……うん」
店員「……楽しかったよねー」
イケメン「ああ……俺と君と歌手の三人で、よくつるんだもんだ」
店員「…………」
店員「決定的だったのは、学祭の時だったー」
イケメン「…………」
184 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:41:02 ID:4MKEPFoY
店員「クラス別の出し物で」
店員「初めて、あなたと歌手が対立したー」
イケメン「…………」
店員「あなたは堅実に喫茶店」
店員「歌手は、リクエスト・コンサート」
店員「歌手が、客のリクエストで一曲歌う、という誰が見ても無謀な企画だったー」
イケメン「…………」
店員「結局」
店員「クラスの取り決めで、あなたの案が採用されたー」
イケメン「……そこから、あいつは凄かったね」
イケメン「じゃあ自分だけでもやる!って言い出して」
イケメン「たった一人で実行委員会に企画エントリーした」
185 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:42:24 ID:4MKEPFoY
店員「……私も無謀だと思ったー」
店員「意地を張らずにみんなで頑張ろう、と、説得もしてみたりもしたー」
イケメン「…………」
イケメン「たかだか高校の文化祭に、自腹を切ってまでステージを作っていたっけ……」
店員「そう」
店員「私もついて行けないって思ったー」
店員「しかも校舎裏……いったい誰が近寄るの?っていう場所ー」
イケメン「……そして当日」
イケメン「追い討ちをかけるような無常の雨が降ってきた」
店員「…………」
イケメン「…………」
186 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:43:32 ID:4MKEPFoY
オマタセシマシター
イケメン「ありがとう」
店員「ありがとうー」
ズズッ…
店員「……私は、心配になって様子を見に行ったー」
店員「案の定、歌手はたった一人で歌っていたー」
イケメン「…………」
店員「歌手はずぶ濡れで、ギター持って……」
店員「でも……ずっと笑いながら歌ってたー」
イケメン「…………」
店員「私……どうしてかわからないけど」
店員「『明るい曲』をエントリーしたー」
187 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:44:59 ID:4MKEPFoY
イケメン「…………」
店員「……本当にバカだよねー」
店員「だけど……」
イケメン「…………」
店員「私は、文化祭が終わって、片付けを手伝いながら」
店員「いろいろ最悪だったねって言ったー」
店員「そしたら……歌手はなんて言ったと思うー?」
イケメン「……疲れた、とか?」
店員「…………」
店員「笑いながら『そんな中なのに3人も客が来てくれたぞ!』だった……」
イケメン「……あいつらしいな」
188 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:46:42 ID:4MKEPFoY
店員「その時、私……」
店員「歌手に恋をしたー」
イケメン「…………」
店員「この人は、どんな失敗も苦境も『楽しむ事』ができるー」
店員「どんなに馬鹿にされようとも、どんなに愚かだと言われても」
店員「笑い飛ばして、楽しんでしまえる人なんだって……」
イケメン「…………」
店員「今もそう……」
店員「歌手といると、それだけで私は楽しいー」
店員「経済的には苦しいけど、それを笑い飛ばしてるー」
店員「きっと……これからも」
イケメン「…………」
イケメン「……そうか」
189 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:47:55 ID:4MKEPFoY
店員「イケメン」
イケメン「ん?」
店員「私は、イケメンの生き方を否定したいわけじゃないー」
店員「多分、私の選択の方が、世間から見たらおかしいと思われるー」
店員「でも」
店員「それでも、合う合わないは、人それぞれー」
イケメン「…………」
イケメン「……もし」
イケメン「もし、歌手がいなかっ――」
店員「…………」
190 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:48:59 ID:4MKEPFoY
イケメン「……いや」
イケメン「何でも無い」
店員「……そう」
店員「最後に」
イケメン「ん?」
店員「最大にして最強の止めを刺すー」
イケメン「うん」
店員「私は」
店員「歌手に『女』にしてもらったー」
イケメン「ぶふぉっ!?」
店員「まいったかー」 ドヤッ!
イケメン「ハ、ハハハ……」
イケメン「そ、そう……かい。 二重に驚いたよ」
191 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:50:11 ID:4MKEPFoY
店員「二重ー?」
イケメン「一つは君の思う通り」
イケメン「もう一つは、まだ”シテ”なかったのか、と思ってな」
店員「悪かったなー」
イケメン「ハハハ……」
イケメン「…………」
イケメン「ありがとう、店員ちゃん」
イケメン「おかげで……いい踏ん切りがついたよ」
店員「…………」
イケメン「じゃ、俺はこれで……伝票、持っていくね?」
店員「うん」
―――――――――――
192 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:51:03 ID:4MKEPFoY
イケメン(…………)
イケメン(……予想はしてた)
イケメン(彼女の心に入り込むのは難しいって)
イケメン(…………)
イケメン(……だけど)
イケメン(結構くるものだな……)
イケメン(…………)
イケメン(世の中の半分は女なのに)
イケメン(どうして、君なんだろうね……)
イケメン(…………)
193 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:52:03 ID:4MKEPFoY
イケメン(…………)
イケメン(俺は、君を支えたいって、ずっと思ってきた)
イケメン(その為に、堅実に生きてきた)
イケメン(将来を……ずっとずっと先を考えて、見据えて)
イケメン(頑張ってきた……)
――私は、イケメンの生き方を否定したいわけじゃない――
イケメン(…………)
イケメン(……君が俺の傍に居ないだけで)
イケメン(十分否定されてるよ……)
イケメン(…………)
イケメン(俺は……)
イケメン(店員ちゃん以外の誰かを)
イケメン(好きになれるのだろうか……)
194 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:53:08 ID:4MKEPFoY
イケメン「…………」
イケメン「…………」 ピッ
イケメン「ああ、母さん? ……うん、そう」
イケメン「突然なんだけど、お見合いの話、進めておいてくれる?」
イケメン「…………」
イケメン「うん……うん……」
イケメン「うーん……それは約束できないな」
イケメン「何しろ初めての事だし……それに」
イケメン「その人が俺に合うか、合わないか、は、解らないからね……」
195 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:53:44 ID:4MKEPFoY
数日後
銀行
デブ(……おかしい)
デブ(まだ入金されていない)
デブ(もう5日目だ……)
デブ(…………)
デブ(仕方ない)
デブ(B出版に電話してみよう)
テク テク テク
196 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:54:34 ID:4MKEPFoY
デブ「…………」 ピッポッパッ
お掛けになった電話番号は、現在使われておりません
もう一度……
デブ「……いけね、間違えたか」 ブッ…
デブ「…………」 ピッポッパッ
お掛けになった電話番号は、現在使われておりません
デブ「……あれ?」
デブ「…………」 ブッ
デブ「ええと……○■○ー●○△■と」
デブ「…………」 ピッポッパッ
お掛けになった電話番号は、現在使われておりません
デブ「…………」
197 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:55:34 ID:4MKEPFoY
デブ(…………)
デブ(……まさか)
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……プルルルルル……
ガチャ
デブ「あ……A出版さんですか?」
デブ「すみませんが、A編集者さんをお願いします」
デブ「はい……」
デブ「…………」
デブ「……あ、A編集者さん、すみません」
198 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:56:11 ID:4MKEPFoY
デブ「……は?」
デブ「ああ……そ、それは確かにお願いしたいですが……別件で」
デブ「……ええ、そうです」
デブ「A編集者さんは、B出版ってご存知ですか?」
デブ「…………」
デブ「ええ、それです」
デブ「その出版社の……」
デブ「え?」
デブ「…………」
199 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/22(月) 21:57:08 ID:4MKEPFoY
デブ「2週間くらい前に不渡りを出した……?」
208 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:06:29 ID:Awf6qytI
カラオケボックス
店員「…………」
店員「テンチョー」
テンチョー「ん?」
店員「売れてない女優さん、ここんとこ見ませんねー?」
テンチョー「……そうだね」
テンチョー「風邪でもひいたのかな……?」
店員「なるほどー」
店員「ちょっと心配ですねー」
テンチョー「だね」
209 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:07:24 ID:Awf6qytI
事務所
後輩「……マネージャーさん、先輩、今日もお休みなんですか?」
M「うん……」
M「体の方は問題ないんだけどね」
M「念のため、もう少し休むってさ」
後輩「そう……ですか」
M「じゃ、今日も収録、頑張ってね」
M「場所、いつもと違うから、気をつけてね」
後輩「はい……わかりました」
テク テク テク…
M「…………」
210 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:08:34 ID:Awf6qytI
収録スタジオ
後輩「ああんっ! しゅごいっ……! しゅごいのぉぉっ!」
後輩「あたしの子宮ぅっ……! 全部っ……ギモヂいいのぉほぉっ……!!」
後輩「んはぁっ……! らめぇぇぇっ! れんぶっ……れんぶギモヂ……いいのほぉっ!!」
後輩「らしてぇっ……! 触手ち○ぽミルクぅ、らしてぇっ!」
後輩「触手ち○ぽミルク、いっぱい子宮にらしてぇぇぇぇっ!!」
後輩「ンはぁっ! きたぁ……! 触手ち○ぽっ、どくどくらしてぇ……」
後輩「ンあヒィィィィィィィッ!!」
後輩「あらしのひきゅう、イグぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
スタッフ「……はい、いただきました(OKの意)」
スタッフ「お疲れ様です」
後輩「お疲れ様でした」
211 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:09:33 ID:Awf6qytI
後輩「ふう……」
後輩「…………」
後輩(先輩、どうしちゃったのかな……)
スタッフ「…………声優さん、まだダメなのかな」
後輩「……?」
後輩(……スタッフマイク、入ったままだ)
スタッフ「こっちとしては、そろそろ録りたいんだけどね~」
すたっふ「声優って……この前、収録中泣いちゃった娘?」
後輩「!?」
212 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:10:43 ID:Awf6qytI
スタッフ「そうなんだよ……」
スタッフ「長い事やってるし、そのへんは割り切ってると思ってたんだけどね~」
すたっふ「まあ……逆に、今まで溜まってたものが一気に吹き出したのかもな」
すたっふ「俺、あの娘がエロ以外で(声を)当ててるの、ガヤ以外で見た事ねえし」
スタッフ「あー……そりゃいろいろクルわなー」
スタッフ「俺がその立場なら……とっとと辞めて他の仕事するわ」
すたっふ「アイドル声優がもてはやされて、その夢を捨てきれないのかもな」
すたっふ「実際、成れるのは ほんのひと握りなのに……」
スタッフ「それはさすがに理解してると思うが……どうなんだろうな」
すたっふ「……まあ、俺たちがボヤいたってしょうがないんだけど」
すたっふ「おっと……マイク、入れっぱなしだった」
ブツンッ
後輩「…………」
213 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:11:45 ID:Awf6qytI
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……
デブ「あ、C出版さんですか?」
デブ「私、以前そちらで漫画を描かかせてもらっていたデブ、という者なんですが……」
デブ「C編集者さんは居られますでしょうか?」
デブ「…………」
デブ「あ、C編集者さん、お久しぶりです」
デブ「はい……はい……」
デブ「そうですね、懐かしいですね」
デブ「それで、ですね……」
214 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:14:53 ID:Awf6qytI
デブ「できたら、そちらでまた、漫画を描かせてもらえな……」
デブ「い、いえ、仕事ができるなら、イラストのカットでも何でもいいんです」
デブ「…………」
デブ「は、はい……無理は承知しています」
デブ「ですが……」
デブ「はい……はい……」
デブ「…………そう……ですか」
デブ「…………」
デブ「わかりました……お手間を取らせて申し訳ありません」
デブ「でも御用があれば、いつでも……」
ブッ……
デブ「…………」
デブ「ええと……次は……」
215 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:15:44 ID:Awf6qytI
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……
デブ「あ、D出版さんですか?」
デブ「私、以前そちらで漫画を描かせてもらっていたデブ、という者なんですが……」
デブ「D編集者さんは居られるでしょうか?」
デブ「…………」
デブ「……え? 辞めた?」
デブ「そ、そうですか……」
デブ「あ、あの……でしたら、ですね」
デブ「そちらで是非、仕事を……」
ブッ……
デブ「…………」
216 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:16:44 ID:Awf6qytI
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……
デブ「あ、E出版さんですか?」
デブ「私、以前そちらで漫画を描かかせてもらっていたデブ、という者なんですが……」
―――――――――――
デブ「…………」
デブ(……全滅、か)
デブ(…………)
デブ(…………)
デブ(……どうしたら)
デブ(…………)
218 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:18:04 ID:Awf6qytI
デブ(……今やってる仕事が終わったら)
デブ(俺……完全に無職……)
デブ(原稿料は3ヶ月遅れで入ってくるけど……お先真っ暗だ)
デブ(B出版の仕事で何とかなると思ってたのに)
デブ(ここは既に倒産してて、3ヶ月分の原稿料は、丸まるおシャカ……)
デブ(かつてのツテを当たってみたけど……結果は全滅)
デブ(…………)
デブ(……詰んだ……かも、な)
デブ(…………)
デブ(まいった……)
―――――――――――
219 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:19:21 ID:Awf6qytI
声優「…………」
声優「……あれ?」
声優「もう無い……ヒック」
声優「…………」
声優「ちょっと、買ってくるか……ヒック」
声優「…………」
声優「んー……んはははは……ヒック」
声優「いーきもちー」
声優「……ヒック」
フラ フラ…
―――――――――――
220 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:20:24 ID:Awf6qytI
声優「んへへへー」
声優「コンビニって便利ぃー……ヒック」
声優「んはははは、声優様のお帰りー」
声優「ヒック」
ガチャガチャ…
声優「……んあ?」
―――――――――――
デブ「……!?」
デブ(誰?)
コラァー ダレダァー アタシノ部屋ノカギシメタノー!
デブ「」
デブ「え? 声優さん?」
221 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:21:41 ID:Awf6qytI
ガチャ…
デブ「あのー……あなたの部屋は隣なんですけ」
ドササッ
声優「んはー……」
デブ「酒臭っ!?」
デブ「って! こんな昼間からどうしたんですか!?」
声優「……うっせー!」
声優「なに人の部屋に入ってんだよ、キモヲタ!」
デブ「」
声優「出て行くのはあんただっつーの……キャハハハハッ!」
デブ(アカン……そうとう酔ってる……)
222 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:22:43 ID:Awf6qytI
声優「はははは……はあー……」
デブ(……どうしよう)
声優「……ぐすっ」
デブ「」
声優「なによう……アタシの何がいけないのよう……ヒック」
声優「後輩ちゃんが……えぐっ……どうして……えらばれりゅのよぉ……」
声優「なにが違うってのよぉ……! ぐすっ……えぐっ……」
デブ(…………)
デブ(恋愛のもつれ……かな……?)
声優「……それもこれも」
声優「全部あんたのせいよ! ……ヒック」
デブ「…………」
223 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:24:06 ID:Awf6qytI
声優「あんたみたいなキモヲタのブタ野郎が居るから」
声優「アタシが成るのよ!!」
デブ「…………」
声優「訴えてやるんだからぁ……ぐすっ……」
声優「全部……全部……」
声優「恨んでやるんだからぁっ!」
デブ「…………」
声優「う……あああああああああああっ……」
声優「えぐっ……ひぐっ……もう……やだああああああああっ……」
声優「ああああああああっ……」
デブ(……泣きたいのはこっちです) クスン…
224 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:25:22 ID:Awf6qytI
夕方
事務所
後輩「お疲れ様でした」
M「ああ、お疲れ様、後輩ちゃん」
後輩「…………」
後輩「あの、マネージャーさん」
M「ん?」
後輩「声優先輩、収録で泣いたって……本当ですか?」
M「…………」
M「君が気にする事じゃないよ」
225 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:26:35 ID:Awf6qytI
M「彼女もこの業界、長いんだ……割り切って仕事するのがプロだと」
M「わかっている」
後輩「…………」
M「……でも、人間なんだもの」
M「時々、立ち止まったり、転んだりしちゃうものだよ」
後輩「…………」
後輩「先輩……慣れるのが怖いって、言ってました」
M「…………」
後輩「割り切るって、何なんですか?」
後輩「先輩は、ずっとずっと……我慢してただけなんじゃないですか!?」
M「こ、後輩ちゃん……」
後輩「……私だって、我慢している状態です」
後輩「だからこそ、エロじゃない仕事が入って、嬉しかった!」
226 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:27:37 ID:Awf6qytI
M「…………」
M「わかっているよ……そんな事」
後輩「…………」
M「でもね……マネジメントしてる側から言わせてもらうけど」
M「彼女が頑張れば頑張るほど、エロ関連の仕事が増えるんだ……」
後輩「……!」
M「皮肉だよね……」
M「彼女の努力は、確かに認められているんだよ」
M「でも……それが表舞台の仕事を遠ざけていたりするんだ」
後輩「……っ」
227 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:30:39 ID:Awf6qytI
M「…………」
M「こっちとしても……できるだけ偏らないようにしたいんだけど」
M「結局……」
後輩「…………」
後輩「……帰ります」
テク テク テク…
M「あ……」
M「…………」
M(彼女も……)
M(……ヤバイかもしれないな)
M「はあ……」
―――――――――――
228 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:32:15 ID:Awf6qytI
後輩「…………」
後輩(……どうして)
後輩(こんな事になったの……?)
後輩(…………)
後輩(私は、この業界の事を調べて、覚悟を決めて入ってきた)
後輩(有名な声の人も アイドル声優で活躍している人も)
後輩(エロをやった事が無い人は皆無……)
後輩(中には、エロができない奴は二流以下、なんて言ってる人も居る)
後輩(…………)
後輩(……私は、このチャンスを無駄にしたくない)
後輩(でも………でも……!)
―――――――――――
229 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:33:08 ID:Awf6qytI
夜
声優「…………」zzz
声優「……ん」
声優「ふあああっ……」
ズキズキッ!
声優「ぐっ……!」
声優「……ったま痛ぁ」
声優「…………」
声優「……さすがに、飲みすぎたみたいね」
声優「…………」
230 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:34:06 ID:Awf6qytI
声優(……あれ?)
声優(なに? この汚い部屋……それにあれって)
声優(描きかけの漫画……?)
ガチャ
デブ「ふう……」
声優「」
デブ「あ」
デブ「目が覚めましたか、声優さん」
声優「…………」 唖然…
デブ「……その、とりあえず話を聞いてください」
デブ「やましい事はしてないし、玄関の鍵は空いてますから……」
声優「……はい」
231 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:35:14 ID:Awf6qytI
デブ「――という訳です」
声優「」
声優「す、すみませんでした!!」
デブ「いえ……」
デブ(心に何発かクリティカルヒットもらいましたけどね……)
デブ「ご気分が治られたのなら、どうぞ帰ってください」
声優「はい……重ねてすみません」
声優「すぐにでも……」 ヨロ……
デブ「ああ、無理はしないで……これ、二日酔いの薬です。 どうぞ」
声優「…………」
声優「……本当にすみません」
232 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:36:21 ID:Awf6qytI
デブ「じゃ……俺、仕事しますんで……」
声優「あ、はい……」
デブ「…………」
声優「…………」
声優「……あの」
デブ「はい?」
声優「漫画家さん……なんですか?」
デブ「……ええ」
デブ「エロ漫画ですけどね」
声優「! そ、そうなんですか……」
デブ「はは……お恥ずかしい事ですが」
声優「そんな事は……」
233 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:37:23 ID:Awf6qytI
デブ「……どうあがいたって、おおっぴらに言えるジャンルじゃないですよ」
声優「…………」
声優「そんな言い方は良くないと思います」
デブ「…………」
デブ「いいんです」
デブ「もうすぐ廃業するかもしれませんし」
声優「え……?」
デブ「……いろいろあって、今書いている原稿仕上げたら」
デブ「次の仕事がないんですよ」
声優「……!」
声優「そう……なんですか」
デブ「愚痴ってしまってすみません……」
声優「……いえ」
234 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:38:52 ID:Awf6qytI
デブ「…………」
デブ「皮肉なもんです」
デブ「変な話なんですが、ちょっとやる気になっていたところだったのに……」
デブ「とたんにこのザマです……笑ってしまいますよ」
声優「…………」
声優(……複雑な気分)
声優(この人は……今、どんな気持ちで仕事をしているんだろう)
声優(…………)
声優(アタシは……まだ幸せな方なんだろうか……)
声優(……けど)
235 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:39:43 ID:Awf6qytI
声優(…………)
声優(……あれ?)
声優(でも待って……どうしてこの人は……?)
声優(…………)
デブ「…………」
声優(何か、訳があるのかな……?)
声優(…………)
声優(……かもしれない)
声優(聞いたら失礼なんだろうか……)
声優(…………)
236 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:40:40 ID:Awf6qytI
声優「……あの」
デブ「はい?」
声優「もしかしたら、何か理由があるのかもしれませんが」
声優「質問してもいいですか?」
デブ「どうぞ」
声優「答えたくなかったら、答えなくてもいいです」
デブ「はあ……」
声優「…………」
声優「デブさんは」
声優「普通の漫画は描かないんですか?」
デブ「……!!」
237 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:41:41 ID:Awf6qytI
デブ「…………」
声優「…………」
デブ「…………」
デブ「……進撃の○人、って、知っていますか?」
声優「え? は、はい」
声優「今、深夜帯でアニメもやっていますよね」
デブ「そうですね……」
デブ「…………」
デブ「あの作品、連載開始当時、十代のデビュー仕立ての新人が描いてるんですよ」
声優「……!」
デブ「…………」
デブ「俺……」
デブ「普通の作品も書いていました」
238 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:43:09 ID:Awf6qytI
声優「…………」
デブ「高校卒業後すぐ、何本も書いて」
デブ「週刊少年・飛翔に投稿し続けてました」
声優「…………」
デブ「結局……佳作にすら選ばれず」
デブ「ずっと無職のまま……」
デブ「親から就職しろ、就職しろ、と、うるさく言われて」
デブ「金を稼げば問題ないだろうと、エロ漫画雑誌に投稿したら」
デブ「割とすぐにデビューできました」
声優「…………」
239 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:44:51 ID:Awf6qytI
デブ「でも……」
デブ「親はそんな俺を……」
デブ「……って、どうでもいいですね、こんな話」
声優「……いえ」
デブ「話を戻しますけど」
デブ「俺は家を飛び出して、ここに入居してエロ漫画を描きながらも」
デブ「普通の漫画も描いて投稿していました」
声優「…………」
デブ「そして……3~4年くらい前に進撃の○人を知ります」
声優「…………」
240 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:46:04 ID:Awf6qytI
デブ「その頃は、人気が出始めていた程度の作品扱いでした」
デブ「手にとって見た時、絵もそんなに上手くないし、なんだこれ?と思いました」
声優「…………」
デブ「……でも」
デブ「気がついたら、あっという間に読み終えていたんです」
声優「…………」
デブ「…………」
デブ「どう……言えばいいんでしょうね……」
デブ「なんて言うか……生まれて初めて『才能』というものに衝撃を受けた」
デブ「と、でも言うんですかね……」
声優「…………」
デブ「エロ漫画の仕事が忙しくなっていた事もあって」
デブ「だんだんと普通の漫画の事は、考えなくなって……」
デブ「いつの間にか……描かなくなりました」
241 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:47:15 ID:Awf6qytI
声優「…………」
デブ「…………」
デブ「……情けないですよね」
デブ「会った事もない人に勝手に負けたと思って、逃げ出しているんですから」
声優「…………」
声優(……なんなの)
声優(この胸のモヤモヤは……)
声優(…………)
声優(……アタシは)
声優(この人と同じなの?)
声優(こんな――)
242 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:48:13 ID:Awf6qytI
声優「…………」
声優「……デブさん、アタシ帰ります」
デブ「もう大丈夫ですか?」
声優「ええ」
デブ「そうですか」
デブ「お気を付けて」
声優「どうも……」
……パタン
デブ「…………」
デブ「……さ、頑張ろう」
デブ「締切は待ってくれないからな」
デブ「…………」
243 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:49:10 ID:Awf6qytI
声優「…………」
デブ「なんて言うか……生まれて初めて『才能』というものに衝撃を受けた」
声優(……違う)
声優(そうじゃない)
デブ「……情けないですよね」
デブ「会った事もない人に勝手に負けたと思って、逃げ出しているんですから」
声優(それもちょっと違う……)
声優(…………)
244 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:50:06 ID:Awf6qytI
声優(……ただ)
声優(諦めてしまったのよ……)
声優(もう”無駄”なんだって)
声優(どうやったって、こうなれないんだって……)
声優(…………)
声優(アタシは……?)
声優(アタシはあの娘に……後輩ちゃんに何か負けているの?)
声優(…………)
声優(違う)
声優(アタシも逃げているだけ……)
声優(ベクトルは違うけど……現状から目をそらしたいだけ)
声優(…………)
245 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:51:13 ID:Awf6qytI
声優(アタシは――)
声優(――負けない)
声優(負けたくない……!)
声優(こんな現状にも、後輩ちゃんにも)
声優(そして……自分にも!!)
―――――――――――
翌日
あ~あ~あ~あ~あ~♪
デブ「……ん」
デブ「8時……か」
デブ「……ふう、一息入れるか」
246 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:52:05 ID:Awf6qytI
コポ コポ コポ…
デブ「…………」 ズズッ
デブ「うん……コーヒー美味い」
デブ「インスタントだけど」
デブ「…………」
デブ(……さて、ベタが乾いたら修正して、トーン貼って)
デブ(最終チェック終えたら)
デブ(投函しておしまい……だな)
デブ(…………)
コン コン
デブ「ん?」
247 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:54:00 ID:Awf6qytI
デブ(誰だろう……こんな時間に)
デブ「は~い」
ガチャ
デブ「! ……声優さん」
声優「おはようございます、デブさん」
声優「これ……ご迷惑をおかけした、せめてものお詫びです」
声優「急ごしらえですけど、サンドイッチを作ってみました」
声優「良かったら、お昼にでも食べてください」
デブ「これはどうも……ありがたくいただきます」
声優「…………」
声優「あの……」
デブ「はい?」
248 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:55:06 ID:Awf6qytI
声優「差し出がましい事を言いますが……」
声優「今、チャンスなんじゃないですか?」
デブ「……え」
声優「時間……少し出来るんですし」
声優「やってみても、いいんじゃないですか?」
声優「普通の漫画、描くのを」
デブ「……!」
声優「…………」
声優「もし、作品が出来たら」
声優「アタシ、是非読んでみたいです」
デブ「…………」
声優「じゃ……」
249 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:56:08 ID:Awf6qytI
パタン……
デブ「…………」
デブ「……チャンス」
デブ「…………」
―――――――――――
事務所
声優「おはようございます」
M「……!」
M「お、おはよう、声優さん」
250 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:57:22 ID:Awf6qytI
声優「ご迷惑をおかけしました……」 ペコリ
声優「仕事……また貰えるでしょうか?」
M「…………」
後輩「!!」
後輩「せ、先輩!」
声優「後輩ちゃん……久しぶりね」
後輩「い、いえ……それより、あのっ……!」
声優「後輩ちゃん」
後輩「は、はい」
声優「…………」
声優「おめでとう、表舞台に立てて」
後輩「!!」
後輩「先輩……」
251 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:58:24 ID:Awf6qytI
声優「ふふふ……この一言言うのに」
声優「だいぶかかっちゃったな……」
後輩「…………」
後輩「先輩、わ、私……!」
声優「気にする必用は無いわよ」
声優「それに、後輩ちゃんが居るところはアタシ未経験だから」
声優「もう教えられる事が無いわ……」
後輩「…………」
声優「だから」
声優「これからは、アタシにいろいろ教えてくれると嬉しいな♪」
後輩「!!」
252 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 00:59:20 ID:Awf6qytI
後輩「は、はい!」
後輩「私でいいのならっ!」
声優「お願いね、後輩先輩」
後輩「ふ、普通に呼んでください……」///
声優「あはは、ごめん」
後輩「あはは」
M「…………」
M「……さぁ~て」
M「それじゃ声優さん」
声優「はい」
M「サボった分、厳しくなるよ~?」
声優「覚悟してます」
253 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 01:01:34 ID:Awf6qytI
M「それだけ聞けば十分だ」
M「じゃ、今日は、Aスタジオへ行ってくれ」
M「当分、帰りが遅くなると思うから、そのつもりで、ね」
声優「はい!」
後輩「私も頑張ります!」
M「うん。 期待してるよ」
M「今日も一日頑張ろう!」
声優・後輩「はい!」
ハハハ……
―――――――――――
254 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 01:02:51 ID:Awf6qytI
デブ(…………)
声優「今、チャンスなんじゃないですか?」
デブ(…………)
デブ(63番……63番……)
デブ(…………)
声優「もし、作品が出来たら」
声優「アタシ、ぜひ、読んでみたいです」
デブ(…………)
デブ(……次は、62番……と)
255 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/07/30(火) 01:04:12 ID:Awf6qytI
早く仕事を終わらせたい……そして――
俺は、そんな気持ちで一杯だった
転載元
声優「んギモッヂイィ~///」(アタシ…何やってんだろ…)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1371733426/
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けっこう面白かった
どうしよう、転載元、見ようかな……。
でも、楽しみはとっておきたい気もするし。