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◆3UO.XRpYJ2 [saga]:2016/07/25(月) 00:20:58.93 ID:ilyuscAp0
「Pさん、美術館興味ないですか? チケット……2枚あって……」
おずおずといった感じで差し出されたそれを受け取ったのは数日前の話だ。
現在、僕と彼女――――古澤頼子さんは、ちょっと気まずい感じで二人並んで歩いている。
例えるのなら、偶然帰り道が同じになった新しいクラスメイト、といったところか。チラチラとお互いの姿を確認しあっては何を言うのか考えて、結局何を言うわけでもなく美術館に歩を進める。
要するに、僕も彼女も口下手で、尚且つ僕は男女でお出かけをしているというシチュエーションに緊張しきっていた。
「あっ……」
何の気なしに彼女を見たら、丁度彼女も僕に目線を送っていたところだった。考えられる限り頭を働かせて、やっと「今日も暑いですね」と言うと、彼女も慌てたように「そうですね」と相槌を打った。
それきり彼女も僕も目線を逸らして、そのまま会話は終了してしまった。
何をやってるんだ、一体。僕は彼女に気付かれないように自分の頭を軽く掻いた。
古澤頼子さん。17歳で、眼鏡が特徴的な女の子。趣味は美術展や博物展の鑑賞だという。
そういえば、彼女をスカウトした時も美術館だったっけ。正確には美術館に入ろうとしていた彼女に声をかけたんだけど。
僕たちは出会ってから、まだ、数日しか経っていなかった。僕らはお互いのことを知らな過ぎていて、だからこの沈黙も仕方ないもののように思える。
……などと、ひとしきり言い訳を頭の中で作ってから、それにしたって、と僕は思った。折角気を遣って誘ってもらったんだから、きっと今度は僕が気を気の利いた話題の一つや二つ提供するべきなんだろう。
学生時代の女っ気のない生活を呪いつつ、綺麗に塗装された道を歩いた。静かな中、風に揺れる葉の音だけが耳に印象を残していた。
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