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キョン「かまいたちの夜?」 part3

2010/10/07 18:50 | CM(0) | ハルヒ SS
キョン「かまいたちの夜?」 part1
キョン「かまいたちの夜?」 part2


189 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 12:28:35.07 ID:sDHzCwEM0
「キョン、大丈夫?」

 ハルヒの声で俺は我に返った。
 ここはペンション『シュプール』の談話室。
 俺は、そこでしばし茫然自失してしまっていたらしい。
 ……あんな喜緑さんの姿を見ては無理もあるまい。
 その喜緑さんは、今、会長が自室であるスタッフルームへと運んでいる。
 誰もそれを手伝おうとはしなかった。
 いや、鬼気迫る会長の雰囲気に、手伝うことが出来なかったのだ。

「ああ…すまん、ぼうっとしてた。大丈夫だ」

 ハルヒに返事してから俺は周りを見渡す。
 会長が戻ってきた。その顔にはある種の決意のような物が浮かんでいる。

「これで……全員がこの談話室に集まったことになるわけか」

 俺は全員の顔を見回して言った。
 フロントの前に佇んでいるのは新川さん、森さん、会長。
 ソファに腰掛けているのが谷口、阪中、鶴屋さん、朝比奈さん、朝倉、古泉。
 古泉は鎮静剤で眠っていた所を無理やり集合してもらった。
 そして階段に座る俺の右隣にハルヒ。
 これで全員。

 くい、くい、と左側の袖を引っ張られた。
 ん? 左側?


 俺の左隣に高校の制服姿で無表情でショートヘアの女の子がいた。


191 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 12:32:23.43 ID:sDHzCwEM0
「だれだあああああああああ!!!!!!」

 俺の叫び声に全員がぎょっとしてこっちを見た。
 当の女の子は無表情のまま、表情ひとつ変えずこちらを見つめている。

 おいおいおいおい!
 ここに来てまさかの新キャラ登場かよ!!
 犯人は結局隠れていた部外者でしたってオチかぁ!?

「ちょっとキョン、何言ってるの? 有希は最初からいたじゃない」

「ええ!? うそ!?」

「長門さんはミステリー小説家希望の高校生で、インスピレーションを求めてここに一人で泊まりに来てるって言ってたじゃないですかぁ~」

「そうなの!?」

 ハルヒと朝比奈さんが少女の存在を肯定した。
 そうなのか。間違ってるのは俺なのか。
 そうだ、言われてみれば彼女、長門有希さんは最初からこのペンションにいた気がしてきたぜ。
 立て続けに事件が起こったことで、俺は思いのほか混乱していたらしい。

「しかし、何て犯人にうってつけな設定だ……」

「あなたに」

「うん?」

 袖をつまんだままの長門さんが俺に話しかけてきた。

193 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 12:36:07.19 ID:sDHzCwEM0
「あなたに説明しなくてはならないことがある」

「なんて奇遇なんだ。俺も君から説明されなきゃならないことがある気がしていたぜ」

「『あちら』の世界で私の部屋にあのツールが存在していたこと。あれは私の意思ではない」

「……ほう」

「あなたが私に対し、『こちら』の世界に関する何らかのアクションを起こすこと。おそらくはそれがスイッチになっていた」

「………………ほう」

「携帯電話による接触を終えた直後、私の部屋であのツールの構成が始まっていたはず。即座にあなたの元へ向かったことで私はそのことに気付けなかった。……迂闊」

「………………………………………………」

「この件に関して、あなたから誤解を受けることを私という個体は望んでいない。……信じて」


 ぎゃ。

 ぎゃあああああ。


 電波ちゃんだ! この子電波ちゃんだああああああ!!!!!!


195 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 12:49:53.55 ID:af5Ret41O
おおー話が動いてきたー

197 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:00:38.71 ID:sDHzCwEM0
 『あちらの世界』って言った!
 『こちらの世界』とも言ってた!
 何それ! 何それ!?
 あれか?
 前世的な何かか!?
 俺が王子でお前が姫か!?
 あ! でも携帯電話って言ってたな!
 近いな俺の前世!

「誤解しないで」

 もう一度言葉を重ねる長門さん。
 ああ言われなくても大丈夫だ!
 誤解なんてとんでもない! 俺は長門さんをしっかり理解したぜ!

「その呼称も止めてほしい。『あちら』の世界では、あなたは私をそんな風には呼んでいなかった」

「わかったよ姫」

「違う」

 違った。
 正解は呼び捨てだった。普通だな前世の俺。


198 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:03:48.38 ID:sDHzCwEM0
「私は」

 おっと、長門の話はまだ終わっていなかったらしい。
 正直もうおなかいっぱいだが、彼女を無碍にして刺激するのも怖いのでちゃんと聞く。

「私はこちらの世界に介入するために能力の大半を行使してしまっているため、このままではシステムの解体に膨大な時間を要する。
 それでは、間に合わない。
 だから、このシステムを停止させるのは、あなた。あなたが、このシナリオをエンディングまで導かなければならない」

「……すまない。もう少しわかるように説明してくれ」

「この事件を解決するのは、あなた」

 つまり、俺に名探偵役をやれってことか。
 ミステリー小説家志望らしい発想だな。
 無理難題だ。分不相応だ。俺なんかじゃ役不足だ。
 おっと、役不足じゃ意味が違うんだったな。
 言い直すぜ。力不足だ。


 ―――努力はするけどよ。これ以上、誰も死なせたくないからな。


199 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:08:33.87 ID:sDHzCwEM0
 俺はひとつ大きく息を吸うと、全員の顔を見渡した。

「これで、この談話室にはこのペンションにいる人間が全て集まったことになります」

 俺の言葉に皆が頷く。

「……これから以後、絶対に一人だけで行動するようなことがないようにしてください。トイレはもちろん、どうしても二階の部屋に戻らなければならない事情が出来た時も、必ず二人以上で戻るようにしてください」

「……あの、一体何があったんですかぁ…?」

 俺のただならぬ様子に、朝比奈さんがおずおずと尋ねてきた。
 鶴屋さんと朝倉は気まずそうにそんな朝比奈さんを見遣っている。どうやらまだ何も説明していないようだ。

「喜緑さんが……ついさっき誰かに殴られて……」

 最後まで言う必要はなかった。
 朝比奈さんの顔が蒼白に染まる。その瞳からぽろぽろと涙がこぼれ出した。
 鶴屋さんがそんな朝比奈さんの肩を抱き寄せる。
 古泉が呆然としながら口を開いた。

「一体どうして…? まさか一人で外に出たんですか?」

 先程意識を取り戻したばかりだからだろう。
 古泉はまだ事態の変化に頭がついていっていない様子だった。

「いや、中にいた……でも……」

「……やっぱり、私たちは部屋に戻らせてもらうわ」

 朝倉が周りの人間を疑わしげに見つめながら言った。

200 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:12:37.95 ID:sDHzCwEM0
「駄目だ」

「どうして? 私たちは何も関係ないわ!」

 にべもなく却下した俺に朝倉が食って掛かる。
 ……こういうことは言いたくなかったのだが、しょうがない。

「そういうわけにはいかないんだよ、朝倉……さっき喜緑さんが殺されたと思われる時間、二階にいたのは古泉とお前たちだけだったんだ」

「何が…言いたいんだい?」

 鶴屋さんが俺を睨みつけてくる。
 その眼光にたじろぎながらも、俺は続きを口にした。

「つまり……あなた達が喜緑さんを殺した可能性もある、ということです」

 俺の言葉に驚いた顔をみせたのは、鶴屋さんたちや古泉だけではなかった。

「何言ってんのキョン! 鶴屋さんたちに喜緑さんを殺すなんてこと、出来るわけないでしょ!」

 ハルヒの責めるような口調が胸に刺さる。だが俺は続けた。

「……一人でだと難しいかもしれない。他の二人に気付かれる心配もあるしな。だが、三人一緒なら……」

 全員がぎょっとした顔で鶴屋さんたちを見た。

202 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:16:30.65 ID:sDHzCwEM0
「ち、違う! 違います! どうして私たちがそんな…! キョン君、なんで…! ひどい!」

 朝比奈さんが傷ついた様子で俺を非難する。いかん、弁明しなくては。

「彼は正論を言ったにすぎない」

 絶妙なタイミングで長門が口を挟む。
 違う。違うんだ長門。今そんなフォローはいらないんだ。

「私たちが犯人だというのが正論、ね……」

 ほら、鶴屋さんが凄い目で俺を睨んできたじゃんか。んも~。
 俺は慌てて鶴屋さんたちに弁明した。

「ちょっと待ってください。そういう可能性もあると言っているだけです。可能性だけの話で言えば、古泉にだって喜緑さん殺害の機会はあった」

 俺の指摘に古泉は疲れたような表情をみせる。

「僕はあなたに起こされるまで鎮静剤で眠っていたんですよ? 正直な所、今も頭痛でろくに頭も回ってくれませんし、歩くのすらままならない状態なんです」

「それは全部演技なのかもしれない。……反論はしないでくれ。俺が言いたいのは、これ以上犠牲者を出さないためには全員一緒にいることが、あらゆる意味でも、必要だということだけなんだ。
 俺たちの中に犯人がいるのかもしれない。ペンションのどこかに隠れているのかもしれない。吹雪の中でこちらの様子を伺っているのかもしれない……いずれにしても、俺たちが全員一緒にいれば、犯人は手出し出来ない」

 俺はあり得る可能性を思いつくままにまくしたててから、

「少なくとも、手を出しにくいはずだ」

 そう締めくくった。

203 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 13:19:26.12 ID:Y+t48LT/0
かまいたちの夜をやったことがない俺にとってはドキドキの展開ばかりだ

204 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:20:41.09 ID:sDHzCwEM0
 みんな黙り込み、お互いがお互いを探るような視線で見合っている。
 ……俺は、間違ったことは言っていないつもりだった。
 だが、俺の言葉が、今のお互いを疑わせる結果を生んでしまっている。
 俺は余計なことをしてしまったのだろうか。
 古泉や女の子三人組が喜緑さんを殺したなどということが、実際問題としてありうるのだろうか。
 可能性は、ゼロではない。
 ガラスの割れる音がした時にはみんな談話室にいたから、古泉にも女の子三人組にも田中さんを殺す機会はなかった。
 それに、機会のあるなしを別にしても、とても人をバラバラにするような時間はなかったはずだ。
 だから、古泉や女の子三人組には田中さんを殺せなかった。が、田中さんを殺さなかったからといって喜緑さんを殺さなかったということにはならない。
 しかし常識的に考えて、見ず知らずの古泉たちが、喜緑さんを殺す理由など考えられない。
 考えられることは……

「あ」

 俺は新川さんの言葉を思い出した。

「新川さん、喜緑さんは田中さんの部屋を見たいと言ってたんですよね? 正確になんと言ってたか、思い出せますか?」

 突然話しかけられて、新川さんは目をぱちくりさせてから、

「ああ、確か…『少し気になることがあるから』……いえ、違いますね。正確には、『ちょっと思いついたことがあるから田中さんの部屋を調べたいんです』と、そう言っていました」

 と、教えてくれた。
 『思いついたこと』。
 それは一体なんだろう?
 田中さんの部屋を調べる……そういうからには当然事件に関係のあることのはずだ。
 そこで彼女は何かに気付き、犯人の正体を知ったんじゃないだろうか?
 そして犯人を問い詰めたか、調べている所を見つかったかして、犯人に殺されてしまった。
 そう考えるのが一番自然な気がする。

206 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:25:41.94 ID:sDHzCwEM0
 俺たちの中で田中さんを殺せたのは会長だけだ。
 だが会長には喜緑さんを殺す機会はなかった。
 喜緑さんを殺せたのは古泉と女の子三人組だけだ。
 しかし古泉たちには田中さんを殺せない。

「さっきから何ぶつぶつ言ってるの?」

 ハルヒが怪訝そうに声をかけてきた。

「いや、事件を整理していたんだが……うおっ」

 俺の左隣にいる長門有希がぐりんとこちらに顔を向けた。
 そのまま無言で俺の顔をじっと見つめ続けている。

「そんな期待するような目で見つめられてもな……成果なしだよ。余計に頭が混乱してきた」

「そう」

「余計なことばっかり考えてるからよ。探偵でもあるまいし、事件を変に考えたりしないで、私達は自分の身を守ることだけ考えてればいいのよ」

 と、怒ったようにハルヒ。
 いつものキャラなら自らが名探偵を名乗って事件の解決に乗り出しそうなものだが、こいつは身近な人間の危険が絡むと途端にその積極性を失くす。
 自身の常識を総動員して、周りの皆を守ることを最優先に動くのだ。

「そうなのね」

 珍しく阪中が口を開いた。

207 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:29:23.35 ID:sDHzCwEM0
「お互いを疑いあったって、何にもいいことなんてないのね。今はみんなが信じあわなくちゃいけない時だと思うの」

「いーや、阪中。お前は甘いよ」

 そんな阪中を諫めるように言ったのは谷口だった。

「キョンの言う通りさ。どんなに嫌な可能性でも考えて、対応策を用意しとくに越したこたあねえ。
 それをなあなあの、お涙頂戴の、人情ごっこで怠って、それで命を失ったら目も当てれねえよ」

「で、でも谷口くん……」

「でもじゃねえよ。こういう時は女は黙って男に任せてればいいんだ」

 谷口はいつもこうやって阪中を黙らせているんだろうか。
 それとも人前で亭主関白を気取っているだけか?
 ……なんとなく後者のような気がした。

「さっき、あんなことを言っておいて、なんだが……俺だってここにいる皆を人殺しだなんて思いたくはない」

 何となく場に満ちた気まずさを打ち破るように、俺は口を開く。

「でも、このペンションは人の目が全く届かない死角が出来てしまうような巨大なホテルじゃない。加えて戸締りだってしっかりしていた。
 そんな所に、たとえプロの泥棒みたいな人間がいたとしても、誰にも気付かれずに自由に出入りできるなんて考えにくい。
 ……正直言って、俺にはどちらを信じたらいいかわからない。神出鬼没の殺人鬼がペンションのどこかにいるのか。
 それとも一見虫も殺さないように見える人が、実は人殺しなのか。俺には……わからない」

 俺はそう言って首を振った。

208 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:32:56.36 ID:sDHzCwEM0
「ククク……」

 心底人を馬鹿にしたような含み笑い。

「まるで自分だけは関係ない、って口ぶりだなKY野郎」

 会長が吐き捨てるように言った。

「……どういう意味です?」

「その通りの意味さ。お前だって容疑者の一人なんだぜ? 偉そうに物を語るのは控えろよ。虫唾が走る」

 会長のあまりの言い様に、俺は少しカチンときた。

「でも俺は夕食後に一度も二階に上がっていないんですよ? 田中さんを殺せるわけが無い! 喜緑さんにしてもそうだ!」

「そんなもの、お前が勝手に言ってるだけかもしれんだろうが。ああ、オーナーの姪が証言したって駄目だぞ? ガールフレンドの証言なんてなんの当てにもなりはしないからな」

「それなら俺も言わせてもらいますがね、会長」

 いいよ、あんたがそんなつもりなら俺だって容赦はしない。

「古泉を襲ったのはあんたじゃないんですか? 古泉は犯人を見ていない。つまり古泉の後ろにいたあんたが一番怪しいんじゃないか?」

210 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 13:34:16.73 ID:nNCRUG1CO
頑張ってくれ

212 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 13:35:53.13 ID:sDHzCwEM0
 俺の言葉に会長はせせら笑う。

「そんなわけがあるか。倒れている古泉の所に辿り着いたのはオーナーの方が先だったんだぜ? ですよね、オーナー」

「え? あ、ああ、うん。そうだったかな」

 新川さんは曖昧な返事をした。
 何? そうなのか?
 古泉と一緒に歩いていたのは会長だ。
 当然、会長の方が古泉を襲う機会は多かったと思っていたが……そうなると、新川さんの方こそ怪しいのか?
 当の古泉は探るような視線を会長と新川さんの両方に送っている。

「やめて……もうやめて!」

 叫んだのは、森さんだった。

「これ以上、そんな風にお互いを貶めあうのはもうやめて…! 見てられない…醜いわ、あなた達…!」

 森さんは唇を噛み締め、痛いくらい拳を握り締めている。気丈なはずのその瞳に涙が浮かんでいた。
 新川さんと会長の顔に後悔の色が浮かぶ。きっと俺の顔にも同じものが浮かんでいるだろう。
 ハルヒからむけられる軽蔑の眼差しが耐えがたい。

 ぽっぽ。

 場違いな鳩時計の音が一回。いつのまにか十一時半になっていた。
 外の吹雪は依然として収まる気配も無い。

「テレビ」

 唐突に長門が口を開いた。

213 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 13:38:25.01 ID:Iw2f23zI0
こういう山奥の宿なら、衛星電話とか完備してるもんだけどな。

216 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 13:49:00.10 ID:af5Ret41O
>>213
その辺は我孫子武丸に言ってやれ

218 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:04:14.08 ID:sDHzCwEM0
「なんだ長門。テレビが見たいのか?」

 俺が確認すると長門はこくりと頷いた。

「お前、こんな時に何も……いや、そうか。天気予報とか見れるしな」

 それに、今の険悪な空気を変えるのにもいいかもしれない。
 俺は長門の意見を採用し、テーブルの上にあったリモコンを取ってテレビをつける。
 チャンネルを次々と変えていくと、ちょうどニュースのヘッドラインをやっていた。

『全国的に降り続いている大雪で、各地で交通事故、雪崩などの被害が続出していますが、今の所死者は出ていない模様です』

 死者は出ていない。その言葉に、俺たちは自然、二階を見上げる。

『次にお届けするのは銀行強盗のニュースです。昨日、白昼堂々、三友銀行新宿支店を襲い、現金約二億円を強奪した犯人の行方は依然つかめておりません。
 目撃者の証言によれば、犯人は身長165cm前後、痩せ型の男だということです。
 逃走用に使ったと思われる黒のクーペを、警察は、各所に検問を設けて、捜索を続けています』

「そんなもん、一日も経ってたら検問したって意味ねえだろ。今頃は東南アジアかどっかに高飛びしてるんじゃねえか?」

 谷口が鼻を鳴らしながら言った。俺たちの気持ちをほぐそうとして、わざとそんな話をしているのかもしれない。
 俺もその話に乗ることにした。

「現金二億を持って飛行機には乗らないだろう。荷物のチェックの時に一発でばれるだろうし」

「そんなもん、なんとでもなるだろうよ」

「でも」

 ハルヒも乗ってきた。

219 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 14:07:07.48 ID:YXhPpbXLP
この辺が原作じゃ一番もりあがった

220 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:08:05.40 ID:sDHzCwEM0
「そもそも、日本に居続けようと思うからお金がいるんじゃないの? 外国に行くなら、物価の安い国なんていくらでもあるじゃない」

「まあ確かに、それはそうかもな」

「犯人はどこか田舎町に身を隠してるんじゃないかしら」

「浅い考えだな」

 会長も話に加わってきた。何か会話をしていたほうが気が紛れるのかもしれない。

「田舎町は人の出入りがすぐにわかる。日本に居続けるなら都会にいたほうがいい」

「でも、犯行現場の近くにいたくないのは人情ってもんでしょう」

「そこを堪えられないからみんなあっさり捕まるのさ」

 会長はふん、と鼻を鳴らしながら言った。

「都会でなくとも、人間が大勢出入りする場所はある」

 ぽつりと呟いたのは、長門だ。

「ふうん。それはどんな場所だ? 長門」

「観光地」

「ああ、なるほど。それはあるかもな。例えば……シーズン中の、スキー場…と…か……」

 言いながら、俺はぎくりとした。周りを見る。何人かは俺と似たような表情をしている。
 俺と同じ事を考えたのが、気配でわかった。

221 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:12:21.92 ID:sDHzCwEM0
「なんだキョン。どうした?」

 谷口が俺を見遣って言ってくる。

「いや…もしかしたら……ってな。俺の考え過ぎだとは思うが」

 俺は言いよどんだ。
 あまりに突飛な発想だったので、口に出すのが憚られたのだ。

「なんだよおい、言えって」

「笑うなよ? ……あの殺された田中さんって人、逃走中の銀行強盗だったりして」

 誰も笑わなかった。俺は意を強くして新川さんに尋ねた。

「田中さんの身長、どれくらいでした?」

「結構高かったように思います。175cm以上はあったでしょう」

 新川さんはちょっと考えてから、そう答えた。
 175cm……違うか。ニュースでは165cmくらいと言っていた。

「だが確かに、まともじゃない雰囲気はあったな。でかいスキー用のバッグは持っていたが、どう見てもスキーをしに来たという感じではなかった」

 会長がメガネを上げつつそう言った。

「ちょっと待って」

 ハルヒが口を開く。

222 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:19:39.77 ID:sDHzCwEM0
「普通、銀行強盗するときって、最低でも運転手は必要じゃない? 田中はきっと運転手の方だったのよ。そして仲間割れして、共犯者に殺された」

「それならあり得るな。ってことは犯人は、165cmくらいで痩せ型の男ってことになる」

 言って、俺はつい皆の体を見回していた。だが、俺たちの中にその体格に合致する人物は見当たらない。
 一番条件に近いのは俺か谷口だが、俺も谷口もギリギリで170cmは超えている。古泉や会長は背が高すぎるし、新川さんも条件には合致しない。
 まあ、元々が短絡的な思い付きだ。俺だってまさか本気でそうだと思っていたわけじゃない。
 しかしハルヒはなおも言った。

「でも、考える方向性はあってたと思うわ」

「方向性?」

「あの田中さんって人、どう見てもスキーをしに来たって感じじゃなかったわ。明らかに人目を避けてたし、何かヤバイ事情はあったのよ」

 銀行強盗じゃないにしろね、と締めくくるハルヒ。それはあの死体を発見した時から俺も考えていたことだ。
 あれは、あんな殺され方は、異常だ。
 あんな光景は、俺たちのような凡人の日常とかけ離れた世界での出来事に決まっていると、俺は信じたかったのだ。
 実際、正気の人間があんな風に死体をバラバラに切り刻もうと考えるか?
 少なくとも俺には無理だ。いくら金を積まれたってお断りだ。たとえ、どんな理由があったとしても……。
 ……ん!?
 俺はふと考え込んでしまった。
 犯人には、田中さんの死体をバラバラにしなければならない理由が、何かあったのだろうか?
 あるとすればそれは……。

1.身元を隠すため?

2.どこかへ運ぶため?

3.恨み?

223 ミーシャ姫 ◆VIP.PRNCS6 :2010/10/03(日) 14:21:11.56 ID:EH5YhrCT0
2選びたい・・・!

224 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:23:11.67 ID:sDHzCwEM0
 どこかへ運ぶため?
 普通はこれが一番の理由だろう。
 だが今回、田中さんは自分の泊まっている部屋で殺され、死体はそのまま放置されている。
 この理由は当てはまらない。
 ……しかし、何か気になる。
 いくつもの疑問が頭の中で渦巻き、得体の知れない形を取り始めていた。
 つかみとれそうでつかめず、もどかしさで頭がむずむずする。

「スキーなんか来るんじゃなかった……」

 朝比奈さんはまた泣き出している。
 その肩を抱く鶴屋さんの目にも涙が浮かんでいるようだった。

「帰りたい…私、なんにも悪いことしてないのに……帰りたい……」

 泣き声も、もはやすすり泣きにしかならない。
 森さんがふらふらと歩き出した。

「森さん、どこへ?」

 新川さんが驚いて聞く。

「……何か落ち着くようなものでも……ココアか何かを準備しようと思って」

「いやよ! 人殺しかもしれない人がいれた物なんて飲めるわけないじゃない!」

 声を荒げたのは朝倉だった。気丈に耐えているように見えていたが、やはり彼女も相当追い詰められているらしい。

225 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:26:25.52 ID:sDHzCwEM0
 森さんは傷ついた様子を見せなかった。

「森さんが犯人なわけないじゃないか。それに、俺たちは今まで散々彼女が作ってくれたものを口にしてるんだぜ?
 森さんが俺たちを殺す気だって言うなら、俺たちとっくに死んでなきゃおかしいだろ」

 俺は朝倉たちを落ち着かせるよう、できるだけ静かな声で言った。

「そうだ、キョンの言うことは筋が通ってる」

 谷口が俺の言葉に頷いてくれた。
 お前、そういう気遣いが出来るならもっと早くから……いや、何も言うまい。

「……すいません、取り乱しました」

 朝倉は渋々ではあったが、森さんに頭を下げた。

「じゃあ私が手伝うわ」

 ハルヒが立ち上がる。
 森さんを一人にしないためには確かに誰かがついていく必要があるのだが……少々不安だ。
 俺がそんな風にハルヒを見上げていると、ハルヒは笑顔を向けてきた。

227 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:30:02.02 ID:sDHzCwEM0
「心配要らないわよ。もし犯人が出たら私がふんじばってやるわ」

「何かあったら大声で呼べよ」

「あら、助けに来てくれるの?」

「ああ。白い馬に乗って行ってやるよ」

「ばか。似合わないこと言ってるんじゃないわよ。でも……待ってる」

「おう。期待しとけ」

「未来で、待ってる」

「オチをつけるな」

 貴様、俺に時をかけろというのか。
 ハルヒと森さんがキッチンへ行ってしまうと、しばらく不気味な沈黙が訪れた。

「……これから、朝までこうしているしかないのか」

 会長がぽつりと呟く。俺は頷いた。

「それが一番でしょう。もし犯人が俺たち以外に誰かいるとしたら、マジシャンみたいに神出鬼没な奴です。
 部屋に鍵をかけて閉じこもったって、そんな奴がいるんじゃあとても安心して眠るなんて出来っこない」

「確かに安心など出来ないさ。だが、考えてみろよ。もし犯人が誰にしろ、俺たち全員を殺すつもりだったら、こんなまどろっこしい方法を取ると思うか?
 もしそのつもりなら、まだこんな風に警戒されていないうちにもっとたくさん殺しておくだろう」

「それは……確かに」

229 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:36:06.41 ID:sDHzCwEM0
「こういうことも考えられるんじゃないでしょうか……」

 古泉が痛むらしい頭を押さえながら口を開いた。

「残った人間に恐怖を味わわせるのが目的…だと」

「恐怖を味わわせるのが目的?」

「ええ。つまり犯人は僕たち全員、あるいはこの中の誰かに、相当な恨みを抱いていた。
 ただ殺すだけでは飽き足らない。だから、周りの人間から始末していって、散々怯えさせた末に殺す。……そういうつもりでいるのではないかと」

 怯えさせた後で殺す。
 それが本当だとしたら、それは一体どれほどの恨みなのだろう。
 この中に、そんな恨みを買うような人間がいるのだろうか。
 あるいは。
 恨みではなく何か理由があるのか。
 目的の人物を最後に殺さざるを得ないような理由が。

「そんな…それじゃ、私たちみんな……?」

 朝比奈さんがもう見ていられないほど恐怖に顔を歪めている。

「ああ、いえ……どうでしょう」

 古泉は慌てたように言った。

「僕は頭を殴られたわけですが、不思議と殺意のようなものは感じなかったように思います。
 もちろん、他の人が来たからとどめをさせなかったというだけの話かもしれませんが……。
 もしかしたら、無関係な人間を殺すつもりはないのかもしれません」

230 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:43:08.26 ID:sDHzCwEM0
「ふざけたことをぬかすな。喜緑は既に殺されている。無関係な人間を殺すつもりはない? 貴様の記憶力は猿以下か」

 会長が古泉に食ってかかった。その声には明らかに怒りが滲んでいる。
 対する古泉は、静かな物だった。

「無関係かどうか、あなたに何故わかるんです?」

「なにぃ…?」

 会長が一歩前に歩み出る。俺は慌てて会長の前に立ち塞がった。

「落ち着いてください会長! 古泉! お前もそんなに刺激するようなことを言うな!」

「……申し訳ありませんでした」

 古泉は素直に頭を下げる。

「別に彼女のことを蔑ろにするわけではないのです。ですが、色々考え合わせると、犯人はどうしても殺さざるを得ない時だけ殺しているような気がしたものですから……」

「殺されなきゃならない理由? 喜緑に、殺されなきゃならないどんな理由があったというんだ」

 それは、自分に言い聞かせるような、呟くような声だった。
 極めて冷静沈着な人物に見える生徒会長。その彼が、喜緑さんが殺されてから、かなり感情的な、攻撃的な物言いになっている。
 会長は、喜緑さんに対して、何か特別な感情を持っていたのだろうか。
 二人をよく知らない俺にはわかりようもないことだった。
 ……そう、これらは全て、演技なのかもしれないのだ。
 彼は喜緑さんを殺しておきながら、疑いをそらすためにこんな態度をとっているのかもしれない。
 冷静沈着な、彼のキャラクターらしく。

231 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 14:47:02.09 ID:sDHzCwEM0
 くそ。最低だな、俺は。
 そんな風に考えた自分に心底嫌気がさした。
 だが全ては犯人の正体が分からないせいだ。
 俺たちの知らない誰かなのか。それとも俺たちの中の誰かなのか。
 それだけでもはっきりしないことには身動きがとれない。
 そういえば、さっきの古泉の言葉の中に気にかかる部分があった。

『犯人はどうしても殺さざるを得ない時だけ殺しているような気がしたものですから』

 どうしても殺さざるを得なかったから喜緑さんを殺した。
 さっきも一度は考えたことだ。
 喜緑さんは何故殺されたのか?
 何かを見たのか? たまたま犯人と出会ってしまったのか?
 俺は真っ先にしなければならないことに思い当たった。
 田中さんの部屋をくまなく調べることだ。
 喜緑さんはあの部屋に行くと言い、そして殺された。
 手がかりはあの部屋の中にあるはずだ。
 出来れば一人でじっくり調べてみたい。しかし、誰も一人にしてはいけないと言った手前、今更そうもいかないだろう。
 もちろん一人になるのが危険だということも分かっている。だが、犯人かもしれない人間を連れて入るのはもっと危険だ。
 では誰と?
 答えはすぐにでた。ハルヒだ。ハルヒとなら、安心して調べることが出来る。
 そのハルヒが森さんとともにたくさんのカップを乗せたお盆を持って戻ってきた。

「お待ちどおさま!」

 ハルヒは精一杯明るい声を出している。
 ついさっきは、同じ事を喜緑さんがしていたのだと思うと不思議な感じだった。
 熱々のココアが全員に配られる。
 朝比奈さんたちは、他の人が口をつけるのを見届けてから飲み始めた。
 暖かくて甘いココアは、ひどく心を落ち着かせる作用があるようだ。心の疲れも、体の疲れも何もかも溶けて流れていくようだった。

232 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 14:51:10.87 ID:9boLUyi90
いいね

233 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:02:14.52 ID:sDHzCwEM0
 そうして一息つき、みんな多少落ち着いたらしいのを見届けると、俺はハルヒに言った。

「今からちょっと俺についてきてくれないか?」

「どこ行くの?」

「田中さんの部屋を調べてみようと思うんだ」

 全員が、はっとこちらを向いた。

「何のために調べるんです?」

 新川さんが俺に尋ねる。

「喜緑さんは殺される前、あの部屋に行こうとしていた。そうですね?」

「ええ」

「彼女は多分、何か事件の真相について調べようとしたに違いありません。そして余りに真相に近づきすぎたために殺された。
 だったら俺たちがするべきことはあの部屋を徹底的に調べることだと思うんです」

「それを、お前が?」

 会長が目を細める。

「お前が犯人で、証拠を隠滅しないという保証がどこにある」

「だから、ハルヒを連れて行くんです」

「ガールフレンドが共犯じゃない、という保証もないだろうが」

234 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:07:39.81 ID:sDHzCwEM0
「……なら、もう一人連れて三人で行きます。それなら文句はないでしょう」

 俺はそう言って、皆の顔を見回す。さて、誰を連れて行くべきか。
 つんつん、と左袖を引っ張られる感覚。

「……」

 長門がこちらをじっと見つめていた。

「お前が一緒に行くっていうのか?」

 こくりと頷く長門。
 俺は少し迷ったが、結局了解することにした。
 長門有希は、世界がどーだとか言い出す電波な女の子だけど、不思議と信頼できる気がしたのだ。
 俺たち三人が行くことに対して、特に異論は出なかった。

「行くか」

 俺はココアを飲み干して立ち上がった。

「警察の捜査の邪魔になるようなことは控えろよ」

 会長が釘を刺してくる。
 もちろん、なるべくならそうしたい。だが、何を探すかもわかっていない以上、確約は出来ない。
 とりあえず頷いておいて、俺、ハルヒ、長門の三人は二階へと上がった。
 田中さんの部屋の前に立つと、それだけで足元がひんやりしてくる。

「一体何を調べるつもりなの?」

「さあな」

235 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:11:34.43 ID:sDHzCwEM0
 ハルヒの問いに曖昧に答えて、俺はドアを開けた。
 風が吹き込む音と、カーテンがばたつく音で部屋の中は騒々しい。
 窓際は相変わらず雪が乱舞していて、部屋の温度はさながら冷凍庫のようだった。

「寒い! こんな格好じゃあと5分といられないわ!」

 ハルヒが震えながら叫ぶ。
 避難するように、まず俺たちはバスルームへ入った。三人は入れないので、バスルームのドアは開けたままだ。
 少し広めのユニットバス。一見しておかしな所はない。
 まずは備え付けてあった石鹸を手にとってみる。石鹸はまだほとんど新品だった。
 洗面台は濡れている。どうやら石鹸は手を洗うのに使ったようだ。
 バスタオルは乾いたままで、使った様子は無い。バスタブにも濡れたあとは無く、使った痕跡は全く無かった。
 洗面台の下、洋式便器の中まで覗くが怪しい物は何も見当たらない。
 天井を見上げると四角い切れ目があった。天井裏があるのだ。
 当然、そこまで調べる必要があるのだろうが……さて、どうするか。
 迷っているとまた服の袖をつんつんと引っ張られた。
 長門有希がじっと俺の顔を見て、それから天井裏への入り口に目を移す。

「……お前が覗くっていうのか」

 こくりと頷く長門。

「……まさか、俺にお前を肩車しろと?」

 こくりと頷く長門。

「よし、じゃあ……」

 そう言って屈んだ所でハルヒに背中を蹴り飛ばされた。
 バスタブに顔面が直撃する。悶絶いてえ。

236 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:17:59.17 ID:sDHzCwEM0
「な、ななな、なにばかなことやってんのよ!」

 何故か声を荒げて俺を罵倒するハルヒ。
 どうでもいいがお前ちょっとは加減しろ。
 俺鼻血出てきちゃっただろ。

「なんだよ、何でお前怒ってるんだ」

 俺はシャワーでバスタブについた血を洗い流しながらハルヒに問う。

「アンタ本気で言ってんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

「むう、俺は馬鹿ではないし死ぬつもりも無いぞ」

「じゃあ、目が腐ってるのね。有希の格好をよく見なさいよ!」

 言われて気付いた。
 どこぞの高校の制服姿の長門有希。
 ばっちりスカートである。
 肩車なんてしたらとんでもないことになるのは間違いない。

「仕方ない。ならハルヒ、お前が覗いてくれるか?」

「私の太ももの感触を楽しもうってのね!? なんてマニアックな変態なのかしら!」

 どないせえっちゅーんじゃ。

237 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:23:48.75 ID:sDHzCwEM0
 長門がふるふると首を振った。

「あなたよりも私の方が体重は軽い。彼への負担はなるべく軽減するべき」

「なっ!? 何言うのよ! 私そんなに重くはないわよ!」

「私とあなたの生体重では4kgもの差が生じている。ちなみに私の体重は」

「うわぁ~!! ストップストップ!! ちょっと有希黙んなさい!!」

 狭いバスルームで押し合いへし合いする俺たち。

「だ、大体有希はスカートなんだから、駄目よ! 肩車なんてしたら、キョンの首元に生パンを押し付けることになっちゃうわよ!」

「私はかまわない」

「え、えっち! 有希ってえっちな女の子だわ!!」

「おい、どうでもいいから早くしようぜ」

「なによ! ならアンタがどっちにするか選びなさいよ!」

 マジか。マジだ。マジっぽい。
 ハルヒと長門がじっと俺を見つめてくる。
 どうする…?

1.ハルヒを肩車する。

2.長門を肩車する。

238 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:29:03.85 ID:sDHzCwEM0
 あくまで常識ある人間でいたい俺はハルヒを選ばざるをえなかった。
 俺がしゃがむと、ハルヒが俺にまたがった。
 ハルヒのほどよくむっちりした太ももの感触がジーンズ越しに伝わってくる。

「え、えっちなこと考えたら承知しないからね!」

「考えてない考えてない」

「ぼ、ぼっきしたら蹴り潰してやるから!」

「俺の股間の確認はいいから早く天井裏を確認しろ」

 ハルヒは頭上の四角い板を外して、天井裏に首を突き出した。

「何かあるか?」

「……なんにもない。なーんにも」

 これだけ苦労しておいて徒労に終わったわけだが、バスルームに何も無いことはわかった。
 俺はハルヒを下ろし、ずっと俺のそばで待機していた長門を伴い、バスルームを出る。
 次はクローゼットの中を調べることにする。
 人が隠れていないのは既に調査済みだが、荷物や服までは検分していない。
 カーテンを開け放ち、三人で中を覗き込んだ。
 ハンガーには、グレーのコートがかけられているだけだ。その下に、スキー用の大きなキャスター付きのバッグが置いてある。
 俺はしゃがんで手を伸ばし、バッグを引き寄せて中身を確認する。
 何も入っていない。脇のポケットなども調べるが、紙切れ一枚出てこない。

「犯人が盗んだのね」

「だろうな」

239 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:33:28.55 ID:sDHzCwEM0
 俺はハルヒの言葉に同意する。

「しかし何を盗んだんだろうな」

「二億円……かしら?」

 どうやらハルヒはさっきの銀行強盗の話がまだ頭に残っているようだ。

「着替えが無い」

 長門が口を開く。
 言われてみれば確かに、着替えが無いのはおかしい気がする。いくらスキーする気が無かったとしても、着替えくらいは持ってきそうなものだ。

「用意する暇も無かったんじゃない? よっぽど急いで逃亡したのね、きっと」

 ハルヒは言いながらつるされたコートのポケットを探っていた。

「財布なんかもないわ。それも盗っていったのかしら」

「身元がわからないようにしたのかもしれないな」

 次は部屋の中を調べてまわるが、特に異常は見つからない。ベッドの下まで覗き込んだが何も目新しい物は見当たらなかった。
 あとは、死体のある窓際だけだ。
 俺は目を閉じて、一度深呼吸してから窓際に向かう。
 窓際は降り込む雪がすっかり積もってしまっていた。バラバラ死体は雪に埋もれて見えなくなっている。
 ぐ……ここまで来た以上、死体を確認しないわけにもいくまい。
 俺はごくりと唾を飲み込んでから、恐る恐る雪を払いにかかる。
 死体に触るなんて絶対にごめんこうむりたかったが、思いっきり指先に凍りついた髪の毛が触れてしまった。
 ぐあ、と思わず声を漏らしてから、そこからさらに慎重に雪を払い落としていく。
 バラバラの死体が次第にその全容を現してきた。

242 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:37:17.35 ID:sDHzCwEM0
「ぐっ…!」

 俺は込み上げてくる吐き気を押さえ、バラバラ死体を観察する。
 何故かどこかで見たことがあるような気がする、その死体を。
 窓から降り込む雪が、少しずつ少しずつ死体に降り積もっていく。
 あれ、待てよ?
 俺はふと思う。
 あれだけ雪が積もっていたということは、喜緑さんはこの死体には手を触れてはいないってことにならないか?

「何かわかりましたか?」

 かけられた男の声に、俺はおや、と思いながら振り返る。
 部屋の入り口に、いつの間に上がってきたのだろう、古泉が立っていた。

「なんだ、お前も来たのか古泉」

「なんだとは随分な言いようですね……僕に同行するよう求めたのはあなたでしょう?」

 古泉はよくわからないことを言う。

「あれ?」

 俺は部屋を見回し、ハルヒに尋ねた。

「長門はどこ行った?」


243 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:41:14.48 ID:sDHzCwEM0
 ハルヒは困惑したような顔で俺を見る。

「キョン、何言ってるの?」

「おいおい、そりゃ俺のセリフだろう。長門だよ長門。さっきまでここにいたろ」

 「トイレか?」とハルヒの頭越しにバスルームに目を向ける俺。
 そんな俺をハルヒは困惑を通り越して怯えすら顔に浮かべて凝視している。

「な、なんだよ。どうしたんだよハルヒ」

 さすがに俺もそんなハルヒの様子にただならぬものを感じ始めた。

「ねえ、キョン……」

 ハルヒは恐る恐る、といった様子で口を開く。


「長門……って誰よ?」


244 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 15:43:49.57 ID:sDHzCwEM0
 ――瞬間、俺の中で時間が止まった。

 頭の中で、何かが弾けた。

 駆け出す。入り口にいた古泉を押しのけ、廊下に飛び出す。

 たったひとつだけあった、誰も泊まっていないはずの空き部屋。

 何故か俺の足は吸い込まれるようにそこへ向かい―――

 ドアを開ける。








 そこで、長門有希が床に転がっていた。




245 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 15:47:43.45 ID:hE9UA6mZI
チュンソフ党の仕業か!?

246 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 15:47:47.40 ID:/xv80wLl0
なんだと・・・

247 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 15:58:44.16 ID:p40kwHp8P
な、、に、、

248 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:01:14.71 ID:sDHzCwEM0
「長門ぉ!!」

 俺は長門のそばに駆け寄って、その体を抱き起こす。
 長門の顔は、その左側がぐしゃぐしゃに潰れていた。
 まるで、何度も何度も執拗にその部分を殴られたかのように。
 赤く染まった口から、ひゅうひゅうとか細い呼吸音が聞こえてくる。

「長門! 大丈夫か、長門!!」

 長門のかろうじて無事な右目がうっすらと開く。
 長門は俺の顔を見ながら、ぱくぱくと口を開いた。
 何も聞こえない。違う。もう声が出ていないんだ。

「喋るな長門! 今新川さんたちを呼んでくるから……!」

 俺が止めても、長門は口を動かすのをやめようとはしない。
 長門がだらりと下がっていた腕をゆっくりと持ち上げた。
 息も絶え絶えに。
 おそらくは全身全霊を振り絞って。
 そして、その震える指先が俺の頬に触れ―――



 バチン、と電流を流されたように、俺の体が震えた。



249 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 16:02:36.61 ID:EhwP5t+z0
ああああああああああああああああああ

250 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:02:53.02 ID:sDHzCwEM0


 頭の中で、全てが繋がった。



 何もかもを思い出した。



 何が有意義なキャンパスライフを送る大学生だ。





 ――――俺は、SOS団の、団員その1だ。



251 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:07:45.28 ID:sDHzCwEM0
 全てを思い出した俺は、全てを思い出したが故に、目の前の光景を認められずにいた。

「長門……」

 呆然と名を呼ぶことしか出来ない。
 そんな俺に、長門がほんの少しだけ微笑みかけたような気がした。
 それが、最後。
 俺の頬に触れていた長門の手がとさりと床に落ちる。
 それから長門はもう二度と目を開かなかった。

「長門……!」

 ぼろぼろと、俺の目から涙が零れ落ちる。

「うあ」

 胸に込み上げる激情を、抑えることが出来ない。

「うあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 叫んでいた。
 俺は形振り構わず声を上げていた。

253 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 16:10:59.90 ID:4VFcAwN80
ながもぉぉぉん!

256 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:16:54.64 ID:sDHzCwEM0
「ごめん…ごめんな…長門……!」

 口をついて出るのはただひたすらに謝罪の言葉。
 長門は俺を助けるために、この世界に介入してきてくれたのだ。
 そのために能力のほとんどを制限されて、ただの女の子になってまで、俺のところに駆けつけてきてくれた。
 それを、俺は、電波だなんだと馬鹿にして、ちっとも長門の言葉を信用しようともしないで。
 結果が、これだ。
 俺は、最低だ。
 長門の体が輝きだす。
 元の世界で長門が喜緑さんにそうしたように、長門の体が光の粒子となって消えていこうとしている。

「駄目だ。待て、長門。行くな。消えるな」

 足掻くように懇願してみても、何の能力も持たないただの一般人である俺にはどうすることもできない。
 光を留めようと手を伸ばしても、光の粒子は指の間をすり抜けていくばかり。
 ほどなくして、長門の体は完全に宙に溶けて消え失せた。

「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 ガツン、と床に思いっきり拳を叩きつける。
 拳に血が滲むが、知ったこっちゃない。
 沸騰した頭を静めようともせず俺は立ち上がり、部屋を飛び出した。


257 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:23:38.28 ID:sDHzCwEM0
 廊下にはハルヒと古泉も出てきていた。

「キョン……」

 心配そうに俺を覗きこんでくるハルヒに目もくれず、俺はさっさと階下に向かう。
 階段を駆け下りてくる俺を、何事かと談話室にいた皆が注視する。
 その中で、『ソイツ』も目を丸くして俺を見ていた。
 それが、ますます俺の脳みそに血を上らせる。
 そ知らぬ顔をしやがって。白々しいんだよこの野郎。

「朝倉ぁぁああああああああああ!!!!!!」

 俺は、怒りに任せ、朝倉の胸倉を思い切り掴み上げた。

「あう…!」

「今すぐ俺たちをこのくそったれなゲームから解放しろ!!」

 うめき声を上げる朝倉に構わず、俺はその目を強く睨みつけた。

259 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:30:40.55 ID:sDHzCwEM0
「は、はなして…! いたい……!」

「痛い? 笑わすなよ……長門をあんな風にしといてよぉ!!」

 カッとなった俺は思わず右手を振りかぶる。
 ―――瞬間、俺の右腕は後ろ手にねじ上げられていた。

「あぐ…!」

 痛みに思わず声を漏らしながら、俺は肩越しに背後を確認する。

「何のつもりだい?」

 鶴屋さんだった。
 かつて、ハルヒが消失したあの冬の日。
 朝比奈さんに迫った俺を撃退したあの時と同じ目で、鶴屋さんは俺を睨みつけていた。
 ついでに言うなら朝比奈さんもあの時と同じ、怯えきった目で俺を見つめている。

「りょーこちんから手を離すっさ」

「ぐっ…!」

 さらに強く右手をねじ上げられ、俺は左手で掴み上げていた朝倉を解放する。

「けほっ、けほっ……! ひどいわ……いきなり何するの、キョン君……」

 どすんとソファに尻餅をついた朝倉は目に涙を浮かべ、喉元を押さえながらそんなことをほざいた。
 その態度が、俺の理性を完全に吹っ飛ばした。

261 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:36:49.98 ID:sDHzCwEM0
「ふざけんなッ!! 白々しいんだよッ!! お前だろうが! 全部、全部、お前がやったんだろうがぁ!!」

 俺の言葉に全員が息を呑んで朝倉に目を向ける。
 全員の視線を受けた朝倉は目を見開き、絶句していた。

「そ、そんなはずありません! 朝倉さんは、朝倉さんはずっと私たちと一緒にいました! ちゃんとアリバイがあります!」

 朝比奈さんが顔を蒼白にして反論してきた。

「それに、それに、朝倉さんはそんな、人を殺したりできるような人間じゃありません!」

「そりゃあそうさ! 何しろコイツはマジで人間じゃないんだからな!!」

「え…?」

「なあ、そうだろう朝倉涼子。情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース!
 アリバイだなんだとくだらない。お前なら、どうにでも出来るもんなぁそんな些細なこと!!」

 朝比奈さんは、いや、この場にいる全員が言葉を失った。
 皆、完全に俺を狂ってしまった人間を見る目で見ている。
 構わない。構うものか。
 長門をあんな目にあわせてのうのうとしやがって。
 許さない。
 許せるわけが、ないだろう―――――!!

「おああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 鶴屋さんの拘束から逃れようと全力で身をよじる。

 パアン――! と頬に衝撃が走った。

262 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 16:39:11.83 ID:Y+t48LT/0
キョンがこええ

263 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:42:34.45 ID:sDHzCwEM0
「あ…?」

 ハルヒが俺と朝倉の間に割って入ってきていた。
 頬を張られた衝撃が、段々とヒリヒリした痛みに変わっていく。

「ハルヒ……? うおっ」

 呆然としていた俺の頭を、ハルヒがその胸にかき抱く。
 ハルヒの体は震えていた。

「しっかりしてよ……」

 その声は、涙交じりの声だった。

「あんたまでそんなになっちゃったら、私は誰を信じたらいいのよ……」

 ハルヒが、あのハルヒが、こんなにも弱々しい、懇願するような声を上げている。その事実が、沸騰していた俺の頭を急速に冷めさせた。
 ……何をやっているんだ俺は。
 白馬で迎えにいくなんて王子様を気取っておいて、この体たらくか。
 馬鹿が。冷静になれ。こんな力ずくで事態が解決していたんなら、長門がとっくにやっていただろう。
 そうだ。この世界から脱出するためにはちゃんとした手順が存在する。
 長門の言葉を思い出せ。

『このシステムを停止させるのは、あなた。あなたが、このシナリオをエンディングまで導かなければならない』

『この事件を解決するのは、あなた』

 そうさ。そのために、長門は最後の力を振り絞って俺を元の世界と繋げてくれたんじゃないか。
 それを無駄にするわけにはいかない。ああ、やってやる。やってやるとも。
 俺は、やる時はやる男なんだ。

264 ◆QKyDtVSKJoDf :2010/10/03(日) 16:48:30.78 ID:sDHzCwEM0
 そうして、ハルヒに抱きしめられたまま俺は決意を固めたわけなのだが……。
 冷静になると、この体勢、どうしても意識してしまうものがあった。
 俺は今、ハルヒの柔らかいおっぱいの感触を、顔全体で余す所なく味わってしまっているわけだ。
 それどころではないと知りつつも、生物としての生理的反応でよからぬことを考えてしまったりなんかしちゃったりして……。

 バガァン!! と顔面を床に叩きつけられた。

「今ちょっとえっちなこと考えてたでしょ! ばか! すけべ! エロキョン!!」

 俺の頭部を床に叩きつけ、あまつさえごりごりと押さえつけるハルヒ。
 突然荒っぽい真似をするんじゃないこんにゃろう。
 鶴屋さんの拘束が緩んでいたからよかったものの、下手すれば腕が折れていたぞこんにゃろう。
 というか、なんかこの世界のお前は貞操観念が強すぎないか?
 元の世界じゃ男子の前で平然と着替えを始めるような女だった癖に。
 こっちの設定じゃお前(俺もか)大学生だったな。それまでの数年でお前に一体何が起こったんだ。

「みんな、ごめんね。この平伏に免じて、さっきのコイツの奇行は許してやってくれないかしら」

 俺の頭をぐりぐりと床にこすり付けつつハルヒはそんなことを言う。
 俺はハルヒの手を振り払い、立ち上がった。
 皆の顔を見回す。やはり奇異の目で見られることは避けられない。
 俺はもう一度、今度は自分の意思で頭を下げた。

「すまなかった。あまりに凄惨な死体を目の当たりにして、パニックを起こしてしまったんだ」

「そんな脆弱な精神でよく部屋を調べに行くなんて言えたものだな」

「返す言葉もありません」

 吐き捨てられた会長の言葉にも、俺は素直に頷く。

265 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 16:50:23.28 ID:nNCRUG1CO
ながもん…

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