インバリアント -SSまとめサイト- 澪「神国（かみくに）」

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澪「神国（かみくに）」

2010/07/15 02:25 | CM(7) | けいおん！ SS

1 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 15:30:47.50 ID:iZlv+YX40

『あひょぼ』

澪「　　」

『ね、あひょぼ』

澪「　　」

たれみずの　くちはにくだる　わらべうた
おととならずに　くるうてきえる

3 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 15:34:11.95 ID:iZlv+YX40

『あひょぼ』

澪「　　」

『ね、あひょぼ』

澪「来」

『あひょぼ』

澪「ないで」

4 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 15:38:46.87 ID:lRtoHK2V0

たれみず　→　たれみず　→　しずく　→　澪　？？

5 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 15:39:14.34 ID:iZlv+YX40

くらくもあり
かがやいてもあり
かげひなたもあるところ

わらべのかたちした
ひとにあらざる

あそびをせがむ

澪「来ないで」

『あひょぼ』

わらしの　ころまで　かみだとて
このこの　かたちの
おそろしき
かみと　おもわず
おにか　あくたがみか　と

6 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 15:44:58.76 ID:iZlv+YX40

はるか　むかし
まよわのおおきみ　という童あり
おやのかたきと
あなほのみこ　弑す　

大逆のために
やきころさるる

まよわしがみ
ただれがみ
このわらし
まよわのおおきみ

7 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 15:48:06.86 ID:iZlv+YX40

ただれたからだを
きにもせず
くろかみのむすめに
あそびを　せがむ

おのれは
かみだとて
ただれて　かみも　なくに

『あひょぼ』

澪「来ないで」

『あひょぼ』

澪「来な」

『あねさま』

8 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 15:49:14.73 ID:iZlv+YX40

律「禁足」

9 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 15:54:50.81 ID:iZlv+YX40

澪が行方知れずとなって１０日。
軽音部の面々は、手をわけて彼女の行方をほうぼう捜す。
しかし　音信はまったくつかめず。

そして、律が足を止めたのは
さる『禁足地』の前。

その立て札にはこうある。

『一度入れば二度と出てこれない所
　入れば必ず祟りがある』

10 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:01:39.88 ID:iZlv+YX40

澪の家のすぐ裏手にある
この場所。
いつの頃からかは知られていないが
進入は許されず、祟りとして報いがあるとの故。

この場所だけは、小さい頃から、遊びの場所にしなかった。
高校に入り、新しく遊びの場所を見つけた後には
記憶からも遠ざかっていたのだが。

11 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:06:33.35 ID:z6nmD4DX0

期待

12 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:11:00.69 ID:iZlv+YX40

「ここ…」

律「！」

律「ムギか？」

紬「いやな、所…」

１７時をわずかにまわったあたり。

紬「『一度入れば二度と出てこれない所
　　　入れば必ず祟りがある』」

紬「『入れずの所
　　　帰れずの所』」

立て札を読み上げる紬。

13 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:16:28.70 ID:iZlv+YX40

紬「禁足地ね。」

律「ああ。」

二人の影は夕日を受けて
まっすぐに伸び
目の前の小怪を、わずかに犯す。

律「昔から、近づくな、決して入るなって、」

律「大人やじいちゃんばあちゃんから、言われてきたとこ、だ。」

15 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:21:41.30 ID:wovoMOOB0

こういう怪談ってなんか素敵やん

16 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:24:49.11 ID:iZlv+YX40

律「そんなとこが近くにあって、」

律「澪は特にこわがってたんだ。」

律「ここと、ここに関する話を。」

二人の目の前の禁足地は
四方２０ｍ程度の、小さな木立。

紬「そう…」

そして、澪の失踪。

17 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:30:01.44 ID:iZlv+YX40

律「この林は、別の世界の入り口、」

律「"かみのくに"の入り口だって。」

律「ずっと昔から、そのくにの神さまたちが」

律「気に入った、綺麗な娘を、昔から喰ってきた場所だって。」

紬「神かくし、ね。」

律「そんな上等な、もんじゃない。」

18 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:36:08.52 ID:iZlv+YX40

律「…」

律「そろそろ他のみんなと合流しないと。」

紬「そうね、そんな時間、ね。」

律「…」

さそうかみは
まよわのみこ
きにいたものを　
まどわし
まよわす。

"目弱き"ゆえに。

19 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:37:59.20 ID:h7RKC+S+O

これは期待

20 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:42:27.31 ID:iZlv+YX40

田井中家の食卓は今日も暗い。
姉弟二人だけで食卓を囲む。
母親は、澪の家のほうに行っている。

瀬戸物と箸の、かちゃ、かちゃ、という音だけ。

律「…」

聡「…」

聡「ねえちゃん。」

21 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 16:50:20.63 ID:iZlv+YX40

聡「…」

律「…」

聡「おれさ、澪姉が居なくなった日、」

聡「澪姉、見たんだ。」

律「…」

聡「入らずの林で。」

律「…」

聡「澪ねえが、あそこの、入り口ん、とこに居るのを。」

22 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:05:11.58 ID:iZlv+YX40

聡「おれ…おれさ、」

律「…」

律「飯食ったら早く寝ろ。」

聡「…」

聡「うん…」

そして、日が変わるころ。
律は、あの木立の前。

23 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:06:55.30 ID:iZlv+YX40

立て札に唾吐きつける。

あらはき。
まよわざれ。

馬止めをまたぎ、禁足地のうちへと、
入る。

24 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:07:36.95 ID:iZlv+YX40

梓「目開（まあけ）」

25 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:12:56.88 ID:iZlv+YX40

昏い林のなかを、歩くだけ。
五歩、六歩あとに、焼け爛れた子供のようなものが、娘達のあとにつづく。

終わりの見えぬ林は林ではなく。
五歩、六歩後より聞こえる
子供の、うれしそうなわらべ歌。

その子は焼けた爛れ、脂肪が所々白く肌に浮かぶ。

四人の娘達はただ歩む。

27 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:22:25.72 ID:iZlv+YX40

紬「聞いたことのない歌…」

澪「ずっと歌ってるんだ。」

梓「あの子が？」

澪「ああ…」

律「歌って、わたしらの後付いて来るだけ、か？」

澪「それと、遊んで、欲しいって。」

紬「古い古い、ずっとずっと昔の歌のよう…」

紬「私達がずっとずっと昔に、忘れてしまった…」

28 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:27:22.17 ID:5vkC400k0

何これ怖い

29 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:30:28.43 ID:iZlv+YX40

律は立ち止まり、王（おほきみ）の方を向く。

律「お前は楽しそうに。楽しいのか？」

『うん。あひょぼ。』

童の瞳の無い白が律に向き、笑む。

『あひょぼ』

紬「…」

紬「この子と遊んであげれば、もしかしたら…」

帰れる？

30 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:31:01.79 ID:iZlv+YX40

紬「不帰（かえらず）」

32 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:41:22.66 ID:iZlv+YX40

紬「遊んで、あげようか？」

紬が王に答える。

『うん、あひょぼ！』

そう言うと、紬の方へ球のようなものを投げてよこす。
両手で受ける紬。
まじまじと球を見る。
球ではなかった。

人の首級（しるし）。
ざんばら髪で髭面の、五十路男の首級。

33 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:50:20.94 ID:iZlv+YX40

紬「ひっ…」

紬がそう呻くと、生首は目を見開く。

『あそぼ。』

童の姿が、ゆっくりと、かたちを変える。
少女のかたちへ。
よく知った少女のかたちへと。
首級は琵琶へと。

34 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:50:52.03 ID:iZlv+YX40

唯「葬送」

35 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 17:56:56.75 ID:iZlv+YX40

唯は琵琶をかき鳴らし歌いはじめる。
童が歌っていたものと同じうた。

唯はうたう。

36 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 18:03:15.78 ID:iZlv+YX40

友のために、人のために歌をうたう。
葬送の歌を。

すがたかえ　かたちかえども
終わりは　かならずあり。

ひとにも　くににも　しゅ（種）にすら。
終わりは　かならずある。
ならばこそ　天の川の　乳の流れへと
皆人の思いを流し　消え行け

皆人よ　消え行け

37 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 18:14:22.08 ID:iZlv+YX40

そこには唯の姿だけがあった。
琵琶を奏で、腐臭と屍が埋める大地を歩む唯が。

皆人よ　消え行け。

おわり

38 ：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2010/07/07(水) 18:16:31.32 ID:lRtoHK2V0

こえぇよ

乙

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2010/07/15 02:25 | CM(7) | けいおん！ SS

コメント一覧

名無しさん [ 2010/07/15 10:13 ]

唯以外全員林に入って帰って来なかったってこと？

[ 編集 ]

774@いんばりあん [ 2010/07/16 06:54 ]

古事記に書かれてる眉輪王が安康天皇を殺す話と関係があるのか

[ 編集 ]

774@いんばりあん [ 2010/07/16 06:56 ]

古事記の眉輪王が安康天皇を殺す話?

[ 編集 ]

名無しさん [ 2010/07/21 12:36 ]

・目が悪いから歌の上手なミオが最初に、どんどん連れてかれた？
・五十代の首は琵琶の演奏者の魂か？→魂が軽音部と共鳴して琵琶になった？
・これ以上犠牲者が出ないように唯が琵琶の演奏者の持ち物である琵琶で、死んだ人々(勿論軽音部も)の魂を鎮める為？　
・何故唯なのかは１、次の標的にされかねない、２、犠牲者の魂と共鳴しやすいから？
長文スマソ。補足説明欲しい。

[ 編集 ]

たぶん [ 2010/07/28 13:16 ]

まよわのおおきみ→眉輪王
あなほのみこ→穴穂皇子、いわゆる安康天皇
古事記に出てくる話じゃない？
安康天皇が自分の叔父（つまり眉輪王の父親）を謀殺して、
この敵を討つためにまだ幼児の眉輪王が安康天皇を殺した話。
（もちろん眉輪王もこのあと殺された）
日本古代史の中でも特に不気味な故実のうちの一つだな。
五十代の首は安康天皇の首？

[ 編集 ]

774@いんばりあん [ 2010/08/21 17:35 ]

駄目だ
どうしてもグーフィーを想像しちまう

[ 編集 ]

774@いんばりあん [ 2014/04/19 22:02 ]

眉輪王を焼き殺したのは、安康天皇の弟の雄略天皇。
雄略天皇といえば大悪天皇と渾名されながら、
大和朝廷の中央集権と支配地域を推し進めた天皇。
歴代天皇の中でもっとも統治者らしき天皇。

[ 編集 ]

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