芳佳「イージス護衛艦『みらい』……?」 【前編】芳佳「イージス護衛艦『みらい』……?」 【中編】787 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:16:12.24 ID:He1pIZrOo
ルッキーニ「く~」
エーリカ「おー……」
滑走路脇に寝転んでいる二人。
陽気が心地いいのかルッキーニは眠っている。
エーリカ「………」
エーリカ「まるで、平和みたいだ……」
エーリカ(世界中が、みんなこんな景色だったらいいのに)
そこにバルクホルンの影ができる。
ゲルト「何が平和だ」
エーリカ「あ、トゥルーデ」
ゲルト「まったく何をしているのかと思ったらこんなところで……」
788 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:16:53.67 ID:He1pIZrOo
ゲルト「最近予報が当たらず、ネウロイの襲撃がないからと気が抜けてないか?」
エーリカ「でも、ここに敵がこないと私たちの出番ないよ」
ゲルト「だからと言ってこんなところで寝る者がいるか!」
ゲルト「カールスラント軍人たるもの、1に規則、2に規則……」
エーリカ「うー……わかったよ戻るよー」
ゲルト「ルッキーニ少尉もだ!」
ルッキーニ「んー……うじゅ?」
バルクホルンについてハンガーに向かいながら、もう一度振り返るエーリカ。
エーリカ「んー、ほんといい天気だ」
789 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:18:11.40 ID:He1pIZrOo
501基地 ミーナ執務室
ミーナ「ええ、はい……了解しました」ガチャン
書類整理の中、ミーナはなり続ける電話に悩まされていた。
坂本「……またネウロイか?」
ミーナ「ええ、ブリタニア発アフリカ行の輸送船が接敵の通信を最後に音信不通……」
ミーナ「これで6隻目よ」
坂本「確かにここ数日のネウロイの活動は異常だ」
坂本「ブリタニアに現れなくなったと思ったら、今度はどういうわけか大西洋方面に出るときた」
坂本「そして、まるで補給路を断つように狙って輸送船を攻撃している」
ミーナ「欧州戦線等で連携行動をとるネウロイが確認されてはいるけど」
ミーナ「確かに、ここまで大規模な戦略的行動を行うのは考えにくいわね……」
坂本「やはり、何かが変わってきている……」
790 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:19:55.26 ID:He1pIZrOo
「みらい」 CIC
青梅「フム……」カチカチ
青梅「レーダーに感なし、静かな海です」
尾栗「波も荒れず、穏やかな海だ」
尾栗「ソナーCIC、なにか聞こえるか?」
ソナー員『CICソナー、かすかに前方に感あり』
ソナー員『方位2-1-0、距離は不明』
尾栗「よしきた! 両舷減速!」
尾栗「手空きの者は甲板へ向かえ! これより『F作業』を許可する!」
艦橋から後ろを見ると、次々と乗員が後部甲板へと出ていくのが見えた。
その手には何やら小道具を抱えていた。
杉本「おっしゃー!釣るぞー!」
こうして「みらい」におけるF作業が始まった。
※F作業
Fishing作業、つまりは釣り。
非公式業務ながらも実際にこのような作業、放送は存在するようで、乗員としては楽しみの一環らしい。
ただし実際に艦載ソナーが魚探の代わりになるのかは不明(できたとしてもそんな使い方はしなさそう)
791 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:21:40.95 ID:He1pIZrOo
菊池「隊員にリラックスをさせるのもいいが」
菊池「あまりCICの機能を無駄に使わないでくれるか」
尾栗「いやいや、無駄にはならないぜ雅行」
尾栗「うまくいけば取れたての魚が夕食になるんだ。これは逃せないぜ」
菊池「あくまで任務中だ。それもいつ敵が来るかわからない中の、だ」
尾栗「それはわかってるさ」
尾栗「だがそんな中にいるからこそ、こんな時間も必要なんじゃないか?」
尾栗「今の俺達には、逃げ道がこの艦しかねえんだ」
792 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:22:59.68 ID:He1pIZrOo
「みらい」艦長室
コンコン
角松「船務長、角松二佐入ります」
梅津「おう、入れ」
角松「失礼します」ガチャ
角松「10:43、501からの通達通りに予定航路を南へ変更」
角松「13:00、尾栗航海長の元 F作業を許可」
角松「その他以上なし、報告は異常です」
梅津「F作業か、尾栗らしいな」
角松から受け取った報告書に軽く目を通す。
梅津「……うん、まぁ座れ」
角松「は」ガタ
梅津「航海予定は、なんとかなったな」
角松「ええ、航海長によれば問題はないと」
梅津「問題はない、か」
793 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:25:41.51 ID:He1pIZrOo
あれから数日、「みらい」は順調に予定を消化していた。
ブリタニア周辺の海域を添うようにして哨戒を継続。
だがここで、ミーナより哨戒区域の変更が下された。
角松「ブリタニアとアフリカ前線を繋ぐ補給路……」
角松「しかしなぜ、ウィッチーズは我々をここに向かわせたのでしょう?」
梅津「シーレーン防衛が目的なのは間違いなかろう」
梅津「『予報』に反して501基地周辺にネウロイが出現していないようだが、周辺海域での目撃例は多発しているらしい」
梅津「実際にこの海域で攻撃を受けた船もいるようだ」
梅津「我々のレーダーをもってすれば、敵が護衛対象の船に接触する前に反応することも可能だろう」
角松「我々に適した任務であると」
梅津「……なぁ角松、我々はどこまで戦えると思う?」
角松「は?」
梅津「本当に成すべきことも、行く先さえもわからず、まだ見ぬ海への航路を設定し、船出する」
梅津「『軍艦』の我々にとって、とても過酷な航海になるぞ」
※シーレーン防衛
海上の主要な輸送路・交通路を維持防衛すること。
太平洋戦争中の日本はこれをあまり重視しなかったために、占領地・前線への輸出入を幾度となく米軍に妨害されていた。
この経験からも、島国の日本はこのシーレーン防衛に重視を置いている
794 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:26:35.25 ID:He1pIZrOo
「みらい」後部甲板
隊員たちがぞろぞろと列をなして糸を垂らしていた。
隊員A「おーい、そろそろ時間だぞ」
隊員B「ハハハ、オレは3匹釣ったぞ!」
隊員C「うわ、マジか! これじゃボウズだぜ」
佐竹「落ち着け、ここで焦ったら魚が逃げちまう」
その時、佐竹一尉の竿に反応が来る。
佐竹「おっ、これは来たか!?」
佐竹「とりゃっ!」ザパッ!
勢いよく引き上げた釣竿には、ぼろぼろの軍手が引っかかっていただけであった。
佐竹「畜生!軍手かーッ!」バシッ
甲板に軍手をたたきつける佐竹。
笑いが起こる一方、離れたところにいた杉本一曹の竿にも引きが来る。
杉本「ウオ!きたァ!」ザバッ!
795 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:28:04.34 ID:He1pIZrOo
「みらい」 食堂
『釣果報告! 航海科杉本一曹、サバ 41cm!』
艦内放送で大々的に放送された釣果に、参加していない隊員から驚きの声が上がる。
麻生「ほう、なかなかの大きさだな」
柳「よく釣れるもんですね」
麻生「こりゃ、今日の夕飯に期待だな」
『飛行科佐竹一尉、軍手!』
この発表に驚きが笑いに変わる。
『二曹、サバ 30cm……』
次々に発表がなされるなか、突然放送が止まった。
カーンカーンカーンカーン!
「「「!!」」」ガタッ!
『総員、対空戦闘用意!』
突然鳴り響く警報。
戦闘配置に、艦内がすべて慌ただしくなった。
796 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:29:57.42 ID:He1pIZrOo
「みらい」CIC
青梅「レーダーに感! 11時方向!」
CIC員A「アンノン機、172度、80マイル!」
菊池「対空見張り、厳となせ!」
ガチャ
角松「状況は?」
青梅「第一目標、600km/hで飛行中、針路1-0-5」
青梅「これはガリア方面へ向かっていますね。本艦との針路交差はありません」
青梅「該当空域の飛行予定なし、反射波も航空機のそれと異なります」
モニターに、欧州大陸へ向かう小さな光点が表示されている。
菊池「大陸に戻る……妙な針路だ。ネウロイの可能性が高い」
菊池「まだこちらを見つけてはいないのか」
青梅「ええ、それらしい動きも見えません」
青梅「このままですと、30分後にSPY探知圏外へ出ます」
菊池「何事もなく過ぎ去ってくれるとありがたいが」
角松「どうかな……」
797 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:31:36.33 ID:He1pIZrOo
「みらい」艦橋
尾栗「下手に逃げたらこっちが見つかるかもしれんからな」
尾栗「針路変更の要はなし、か」
尾栗「舵そのまま、目標の急激な変針に備え!」
柳「このまま過ぎ去ってくれますかね?」
尾栗「奴さんがなんの目的でうろついてるかは知らんが……」
尾栗「こっちとしてはあまり戦いたくないもんだな」
尾栗「ウィッチの嬢ちゃんたちの援護なしで、どこまでこの「みらい」が戦えるか……」
柳「それでも、もし向かってきたら……」
尾栗「そんときゃ、やるしかないな」
艦橋でも、CICでも、艦中が息を呑みながらそのネウロイの行方を見守っていた。
798 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:33:23.21 ID:He1pIZrOo
・
・
・
「みらい」CIC
青梅「………」
あれから30分経った。
光点が欧州大陸に差し掛かり、レーダー上から消えた。
青梅「第一目標、SPY圏外へ離脱」
青梅「他周囲に反応なし」
菊池「なんとか気付かれないで済んだようだな」
角松「対空戦闘用具収め」
『対空戦闘用具おさめーっ』
角松「砲雷長、引き続き警戒は続けろ」
角松「戻ってこないとも限らん」
菊池「了解」
角松がCICを出ようとドアに手をかける。
799 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:41:26.72 ID:He1pIZrOo
青梅「……!」
青梅「ESM探知! 微弱な通信電波をキャッチしました!」
角松「!」
菊池「周囲に機影、艦影は!?」
青梅「対空対水上ともに反応なし」
菊池「ESMによる発信元位置の特定、急げ」
CIC員A「座標特定しました、ポイントα!」
CIC員B「本艦10時方向、距離200km!」
菊池「対水上レーダーの圏外か、となると艦船か?」
角松「通信内容は?」
青梅「出力が弱く、はっきりとは……」カチカチ
青梅「いや、これはモールスか!」
青梅「そしてこの周波数は……」カチ
ツツツ ツーツーツー ツツツ……
801 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:43:55.51 ID:He1pIZrOo
角松「SOS信号!」
菊池「間違いないか」
青梅「はい、確かに」
青梅「しかしそれ以外の情報がはっきりとせず……」
菊池「民間の船か、軍艦か……」
角松「……艦橋CIC」カチ
角松「艦長、艦載機の発艦許可を願います」
菊池「救助に向かう気ですか、副長?」
角松「助けを求めている者を見過ごすことはできん」
菊池「……なら「海鳥」ですね」
梅津『救助ならばシーホークの方がよいのではないか?』
菊池「いえ、まずは対象の調査」
菊池「そして周辺海域の偵察を行ってからでなければ、シーホークの飛行は危険です」
>>800 800 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:43:10.83 ID:He1pIZrOo
菊池「もし、この艦が先のネウロイと接触していたとしたら……」
菊池「そしてほかの個体がうろついていないとも言えません」
梅津『よかろう、海鳥の発艦を許可する』
角松「航空科に伝達! 海鳥発進用意!」
角松「同時にシーホークも即時発艦可能にせよ!」
角松「航海長、海鳥発艦後は速やかに両舷全速、該当地域へ針路をとれ!」
尾栗『アイサー!』
菊池「モールス、無電の探知は続けろ。どんなメッセージも聞き逃すな!」
青梅「ハッ!」
角松「総員各部署に戻れ!再び対空見張りを厳となせ!」
802 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:46:16.48 ID:He1pIZrOo
「みらい」後部甲板
搭乗員である佐竹一尉と森二尉が海鳥へ乗り込む。
ヘッドセットを介して、CICにいる角松の声が入った。
佐竹「佐竹一尉他一名! 14:40、ポイントαへ向け出発します!」
角松『任務はポイントの状況と、その周辺海域の偵察だ』
角松『艦の国籍、被害状況を判別。可能ならば映像を送ること』
佐竹「了解!」
「哨戒機、発艦用意!」
「ベアトラップ、展開! 甲板作業員は総員退避!」
海鳥が格納庫から甲板へ出てくる。
折りたたまれていた主翼が広がり、プロペラが回転し始める。
佐竹「主翼展開! 発動機運転開始!」
佐竹「回転確認……テイクオフ!」
後部甲板から海鳥が飛び立つ。
みるみる「みらい」から遠ざかるその機影。
※「海鳥」
正式には「MV/SA-32J 多目的哨戒偏向翼機」
珍しく、この機は実在しない架空機。
オスプレイを輸送ヘリとするならば、海鳥は攻撃ヘリというべき存在。
設定上は対空ミサイルから対艦ミサイルまで(!)搭載が可能だが、母港が「みらい」のみの本編では生かされていない。
803 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:46:55.82 ID:He1pIZrOo
「みらい」CIC
佐竹『海鳥発艦、飛行に異常なし。視界クリア』
佐竹『これよりポイントαへ移動します』
佐竹『約30分後にはポイントへ到達予定』
角松「こちら「みらい」CIC、了解」
青梅「海鳥とのデータリンク確認」
青梅「対水上レーダーをリンクします……」
青梅「オッ…!」
森『レーダーに感、本機より11時の方向』
佐竹『依然目視による確認はできず』
佐竹『これより向かいます』
804 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:47:55.78 ID:He1pIZrOo
・
・
・
ケルト海上空
佐竹「現在高度850mにて航行中」
佐竹「ポイントαまであと120km」
森「……佐竹一尉、2時方向に漂流物!」
佐竹「あれは……ボート?」
佐竹「いや、それにしては大きすぎるな」
佐竹「森二尉、機首のガンカメラで映像を使え」
森「了解!」
パネルを操作し、搭載されているカメラをズームする。
佐竹「コイツは……」
佐竹「こちら海鳥、国籍不明の軍艦1隻を確認」
佐竹「周囲に多数の乗組員と思しき人影とボートを確認。現在大破沈降中!」
佐竹「映像は届いていますね?」
菊池『ああ、映像はクリアに届いている』
805 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 18:48:32.61 ID:He1pIZrOo
菊池『周辺海域と上空の様子を映してくれ』
佐竹「ラジャー! これより旋回機動に入ります」
海鳥がポイント上空を旋回する。
佐竹「周囲に機影、艦影はなし」
森「佐竹一尉、彼らを見てください」
ボートの上に浮かぶ彼らの中には、海鳥をみて様々な反応を見せていた。
不安げな表情を見せる者、手を大きく振っている者。
森「一刻も早く彼らを助けるべきです」
佐竹「落ち着け。それを決めらるのは、俺達じゃない」
佐竹「海鳥よりCIC、ポイントに要救助者を多数確認」
佐竹「速やかなる救助を進言します」
角松『……わかった、すぐシーホークを発艦させる』
角松『海鳥は現在位置にて待機。防空支援に当たれ』
佐竹「ラジャー!」
806 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:25:00.95 ID:He1pIZrOo
「みらい」CIC
柳「失礼します!」
艦橋から呼び出された柳一曹が入室する。
角松「柳一曹、あの軍艦の詳細がわかるか?」
柳「は……」
モニターに近寄り、じっくり眺める柳。
柳「破損状況や沈没部分の様子がわからないことには何とも言えませんが……」
柳「おそらく、英海軍のE級駆逐艦あたりかと思われます」
角松「ブリタニア海軍に連絡は?」
CIC員A「すでに艦長が501を通じて打電済みです」
CIC員A「現在、ブリタニア南部プリマス沖を警備中のブリタニア駆逐艦2隻が救援のため出航しました」
角松「到着予定時刻は?」
青梅「飛ばして……約4時間半以上!」
※E級駆逐艦:イギリス駆逐艦のクラスの一種
艦名がEから始まるのが特徴
807 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:29:01.39 ID:He1pIZrOo
菊池「4時間半……」
角松「シーホーク、状況はどうだ!?」
柿崎『こちらシーホーク、現在救助要員が搭乗中』
角松「ゴムボートはギリギリまで積み込め! ボートに乗り切れていない者もいる!」
柿崎『了解!』
角松「SOS通信は続いているか?」
青梅「いえ、先ほど途切れました」
菊池「無線機が水没したか、打電を止めたか」
角松「……同一の周波数で、救援信号受諾の打電を繰り返し発信せよ」
青梅「はっ!」
柿崎『こちらシーホーク、これより発艦します』
林原と柿崎、補助要員の航空科、そして衛生員を乗せたシーホークが飛び立った。
808 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:30:44.87 ID:He1pIZrOo
501基地 ミーティングルーム
ミーナ「ええ、わかりました。あとはこちらで……」
「みらい」からのネウロイ、駆逐艦発見報告後、501では警戒のため隊員が待機状態に入っていた。
ミーナ「ガリア西側、ビスケー湾一帯に警戒態勢が言い渡されたわ」
ミーナ「航行予定表から見るに、該当するのはブリタニア艦の「エンカウンター」ね」
リーネ「………」
シャーリー「私たちも「みらい」のポイントに出るんですか?」
ミーナ「いえ、私たちはあくまでもここの防衛ラインよ」
エーリカ「そっか」
芳佳「大丈夫かな……?」
ルッキーニ「芳佳ぁ、どうしたの……?」
芳佳「すごい船って言っても、やっぱり「みらい」一隻で大丈夫なのかなって……」
ペリーヌ「……余計な心配は無用ではございませんでして?」
芳佳「ペリーヌさん?」
ペリーヌ「世界は違えど、扶桑と同じ軍人でしょう? それにあのミサイルでしたっけ……そんな兵器も持ってる」
ペリーヌ「あなたの国の諺の『鬼に金棒』といったところでしょうに」
エイラ「大丈夫だって……ホラ、戦車の正位置――勝利の可能性だ」ペラ
エイラのタロットには、たしかに戦車の絵が描かれていた。
809 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:32:00.74 ID:He1pIZrOo
・
・
・
ポイントα上空
「みらい」から発艦したシーホークがポイント上空へ到達する。
柿崎「こちらシーホーク、ポイント上空へ到達」
柿崎「左前方200m先に要救助者を確認」
林原「……海鳥を目視で確認」
上空を旋回する海鳥。
角松『英語での呼びかけの後、救助活動に入れ』
林原「了解。シーホーク、これよりホバリングに入る」
シーホークが高度を下げる。
はっきりと救助対象の姿が見えた。
菊池『向こうの通信機器はすでに使用不能のようだ』
菊池『またヘリで救助できるのは数人が限界だろう。本艦の到着まで、重傷者からの救助を行え』
柿崎「こちらシーホーク、了解」
810 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:34:18.23 ID:He1pIZrOo
柿崎「まずは救命用のゴムボートの投下します!」
放送機器を使い、英語で呼びかける柿崎。
ボートの上にいた指揮官らしい人物が、腕を使い大きく丸を描く。
柿崎「投下!」
ザバン!
パラシュートにつながれたカプセル型が投下され、近くの海に落ちる。
中には膨張式の救命ボートが入っているため、それで少しは何とかなるだろう。
柿崎「一番重症の方を艦に運びます! 降下した隊員に教えてください!」
ここで、彼らの表情が少し躊躇ったような表情に変わったのが、柿崎には見えた。
だが周囲の士官らしき男と話した後、再び丸の合図を送った。
柿崎(まだ完全に「みらい」のことは知れ渡っていはいない……当たり前か)
柿崎「救護員は右から降下!」
林原「北風がやや強い。突風、風向きの変更に注意」
811 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:38:15.16 ID:He1pIZrOo
「みらい」CIC
ヘリからの救助報告が上がる中、「みらい」もその地点へ到達しつつあった。
そして収容数に達したシーホークは「みらい」へ戻る。
尾栗『対象視認、右30度!』
航空科員『シーホーク着艦作業終了。重傷者を艦内医務室へ搬送開始』
角松「こちらCIC。シーホーク、ポイントの状況は?」
柿崎『重傷者、特にすぐにでも治療が必要な者もいます』
柿崎『この後すぐに再発艦します』
角松「了解」
角松「……よし、右舷内火艇下ろし方用意!」
角松「このまま接近、内火艇による救助活動を行う」
菊池「よろしいのですか? このままいけば本艦の姿を晒すことに……」
角松「いずれは見られる。そう秘匿しておくものでもあるまい」
菊池「………」
角松「内火艇の使用可能圏内に入り次第―――」
812 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:39:53.41 ID:He1pIZrOo
青梅「レーダーに感!」
「「!?」」
青梅「第一目標 240度、距離300km!」
青梅「針路1-6-0、600km/hにて接近中!」
青梅「反射波一致、先ほど接近してきたネウロイと同一と思われます」
菊池「気づかれたか、気まぐれなのか……」
梅津『内火艇下ろし方やめ! シーホークも発艦中止』
梅津『針路0-4-0、機関全速!』
青梅「本艦直上通過まで……約30分!」
角松「ウィッチは早くても1時間……到底間に合わん」
菊池「だが陽動で引き付け続けるのも無理がある」
青梅「……やるんですか? ウィッチの援護がないまま」
角松「彼らを助けるなら、それしかない」
813 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:41:56.65 ID:He1pIZrOo
菊池「目標の大きさは?」
青梅「反射波からみて、30m前後と推定されます」
菊池(以前よりは小さいが……)
その時、艦橋から梅津がCICへ戻ってきた。
梅津「状況は、芳しくないな」
角松「艦長」
梅津「この状況下で取ることのできる選択肢は一つしかあるまい」
梅津「砲雷長、いけるか?」
菊池「はっ」
菊池「……対空ミサイルによる目標の迎撃を進言します」
梅津「よかろう、任せる」
梅津「対空戦闘用意!」
「対空戦闘用ー意!」カーンカーンカーンカーン
菊池(このままの速度で来ると、スタンダードの射程圏内に入るまで後15分……)
菊池「前甲板VLSを2セル、スタンダード発射用意!」
菊池「目標のスタンダード攻撃圏内にインレンジと同時に開放」
CIC員A「アイサー!」
814 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:42:48.84 ID:He1pIZrOo
レーダー上の光点が「みらい」に近づいてくる。
CIC員A「目標、インレンジ5秒前!」
CIC員A「5,4,3,2,1……」
菊池「前部VLS開放!」
菊池「スタンダード発射、サルボー!」
バシュゥッ!バシュゥッ!
前甲板VLSから2つのスタンダードが発射される。
それは遠くのボートからでも確認ができた。
青梅「前甲板VLS開放、スタンダード飛翔中」
青梅「目標到達まで、あと30秒!」
815 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:45:45.33 ID:He1pIZrOo
レーダー上のネウロイ光点にスタンダードの光点がぶつかる。
青梅「スタンダード、着弾」
菊池「目標はどうなっている?」
青梅「……反射波に大きな変化なし」
菊池「FCS、カメラを最大望遠で目標を捜索!」
レーダーではダメージが正確にわからないため、菊池としてはその状態をしっかり把握しておきたかった。
「コア」の存在を資料で発見した今、可能なら確実にコアを狙い、消耗を避けたい。
菊池「そのほか変化は?」
青梅「速度が少々低下、あと……!」
青梅「新たな目標探知!」
青梅「第一目標と同位置……ネウロイが分裂したのか!」
青梅「大きさは約10m!」
CIC員A「第一第二目標、ともに50km圏内に侵入します!」
816 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:47:44.98 ID:He1pIZrOo
角松「これ以上近づかれれば視認可能圏内に入る」
角松「そして、敵が沈没中のブリタニア艦に向け攻撃してくる可能性も……」
菊池「……後部VLSより4セル、シースパロー諸元入力開始!」
菊池「第一目標に2セル、第二目標に残り2セルをセット」
菊池「射程圏内に入り次第、発射」
菊池「その後は127mm砲を自動発射管制で攻撃を行う!」
CIC員A「アイサー、シースパロー諸元入力開始!」
CIC員B「127mm砲、発射管制を自動に変更!」
菊池(シースパローの防空圏は約25km……)
菊池(この攻撃で決めなければ、本艦かブリタニア艦、どちらかが攻撃を受けるだろう)
尾栗『艦橋1番! 目標視認!』
817 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:48:43.55 ID:He1pIZrOo
「みらい」艦橋
露天艦橋から艦内に下がった尾栗が窓越しに双眼鏡を構える。
尾栗「目標を肉眼で確認……!」
尾栗「来た!」
「みらい」の右前方を高速で移動する物体が見えた。
『目標インレンジ!』
『後部VLS、CIC指示の目標!』
『後部VLS開放、シースパロー発射!』
シュバアアアアッ!バアアアッ!
轟音とともに「みらい」からシースパローが放たれる。
凄まじい発射炎と煙に、思わず前方の艦橋にいる尾栗も目をつぶってしまう。
マッハ4で飛行するシースパローが、20km先のネウロイに当たるのに約15秒。
818 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:50:00.60 ID:He1pIZrOo
吸い込まれるようにネウロイへ向かう2つのシースパロー。
シャアアアアアア―――
ネウロイA「!!」
ドゴオッ!ドォッ……バキャアアッ!
小さいネウロイに2つのシースパローが直撃し、ネウロイは爆散した。
続けて大型ネウロイに向けて2発、しかしこちらは生きてる。
尾栗「くっそ、シースパローじゃ威力は足りないか……」
尾栗「CIC艦橋、第二目標撃破を確認!」
尾栗「第一目標の撃破は未だ確認できず、ダメージのみ!」
菊池『艦橋CIC、了解!』
菊池『ネウロイに赤い発光部分は見えるか!?』
露天艦橋に出て、設置されている大型の双眼鏡で見る尾栗。
尾栗「あれが……コアか!」
尾栗「CIC艦橋、目標のコアを確認!」
819 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:50:44.23 ID:He1pIZrOo
「みらい」CIC
菊池「スタンダードにシースパローの連続ダメージは重かったようだな」
菊池「FCS、カメラ最大望遠!」
菊池「映像を正面モニターに投影」
FCSから送られる映像には、赤いコアをさらけ出したネウロイの姿が見えた。
しかし、徐々に回復を始めている。
菊池「主砲、射撃準備!」
CIC員A「127mm砲、第一目標に対し射撃準備」
CIC員B「FCSとのデータリンクを確認!」
菊池「射撃目標、ネウロイのコア!」
菊池「CIC指示の目標、うちーかたはじめ!」
820 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:51:58.74 ID:He1pIZrOo
『うちーかたはじめ!』
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
艦内放送に響く号令ののち、主砲塔が素早く旋回、127mmの砲弾を放った。
毎分45発の速度で打ち出される砲弾が、寸分の狂いもなく当たる。
ドワッ!ドワッ!ドワッ!
ネウロイ「キイィィィィィィ!」
至近距離で破裂する砲弾がネウロイを傷つけ、コアに迫る。
尾栗「当たれーッ!」
そのうちの一発が、むき出しになったコアの正面で爆発した。
バキッ! パアアアンッ!
コアを失ったネウロイは爆散し、白い破片になった。
柳「あ、当たった……」
艦橋員A「みろ! 敵が!!」
艦橋員B「や……やったァ!」
「「「オオオオオオオッ!!」」」
艦橋、そして艦内の一部でしばしばの歓声が上がった。
821 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:53:53.57 ID:He1pIZrOo
「みらい」CIC
尾栗『CIC艦橋! 目標の撃墜を確認!』
まもなくして、対空レーダーから一つの光点が消えた。
青梅「レーダー目標をロスト、第一目標撃墜!」
「オォ……」
「………」
誰もが信じられないという状態でこの結果を聞いていた。
菊池「………」カタカタカタ
角松「各種レーダーに、その他の反応はないか?」
青梅「……は! 艦影機影なし」
梅津「対空戦闘用具納め!」
梅津「本艦は引き続き、ブリタニア艦乗員の救助に当たる」
822 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 19:56:51.33 ID:He1pIZrOo
・
・
・
数時間後 501基地
ミーナ「……ええ、その件はこちらで処理を」
ミーナ「各国海軍との連絡は……ええ、お願いします」
エーリカ「ほんとに勝っちゃった」
ゲルト「たった1隻で、ネウロイを2つも破壊したか」
エイラ「ほらな? 私の言った通りだったろ宮藤?」
ペリーヌ「ちょっとエイラさん! 初めに言ったのは私でしてよ!」
エイラ「私だって占いで当てたんだゾー」
エイラ「ナ、サーニャ?」
サーニャ「そうね、エイラ」
823 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 20:00:37.02 ID:He1pIZrOo
「みらい」艦橋
尾栗「左舷70°、ブリタニア艦変針」
尾栗「0-2-0、プリマス軍港へ舵を取ります!」
負傷者を回収した2隻のブリタニア駆逐艦が、同行していた「みらい」より離れていく。
その時、その甲板で何かが動いているのを見つけた。
柳「……!」
尾栗「あれは……」
尾栗「艦長! あれを!」
「All crew, salute!(総員、敬礼!)」ザッ!
それは「みらい」に向けての敬礼だった。
助けた乗員のうち動けるものは皆、怪我を負っている者さえ参加していた。
梅津「……総員に達す。手空きの者は左舷側に集合せよ」
梅津「総員、返礼用意!」
824 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/12/01(日) 20:05:01.11 ID:He1pIZrOo
ザザザザザザ!
「みらい」の乗員が次々に集まる。
角松「総員、ブリタニア兵に敬礼!」
尾栗「………」ザッ!
菊池「………」ザッ!
柳「………」ザッ!
隊員A「あそこにいる、あの船に乗っている人間、みんな生きている……」
隊員A「俺達が、やれたんですよね」
隊員B「ああ、あの場にいた俺たちにしかできなかったことだ」
隊員C「この世界で、ネウロイを倒して、人を救った……」
隊員D「俺たちは、この世界でやっていける力がある……!」
この敬礼は、互いが小島に遮られて見えなくなるまで続いた。
864 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/21(火) 14:31:42.86 ID:xPZ1tn/f0
英海軍駆逐艦のエンカウンターといえば史実では日本の駆逐艦が乗員を救助したエピソードで有名だな
だいぶ前にアンビリーバボーでやってた話は感慨深かった
865 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/01/21(火) 14:41:40.21 ID:4g/W5uMIo
雷の話か
890 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/03(月) 18:43:40.06 ID:19/S54qC0
この世界だと、直接歴史改変に
手をつけてないせいか、角松の精神安定度が
原作より高いなww
904 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:45:47.59 ID:5WoQCohvo
ミーナ執務室
角松「艦隊護衛の任、ですか」
坂本「実は、扶桑より別の艦隊がこちらへ向かっている」
坂本「本来なら別のウィッチーズが護衛につくはずだったのだが、いろいろあって到着時期が遅れてな」
坂本「内陸方面の防衛事情の変化により、予定していた護衛がつけられなくなってしまった」
梅津「そこを我々で補いたい、と」
坂本「あなた方はこれまで何度もネウロイと戦闘し、単艦で切り抜けた例もある」
ミーナ「現在大反攻作戦準備中のために、むやみにウィッチや艦隊を動かすことができません」
ミーナ「ですので、こうしてお願いをしたいのです」
梅津(大反攻作戦……)
坂本「計画としては……」パラッ
坂本「出航の後に大西洋を南下、こちらのポイントにて艦隊と合流していただきたい」
905 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:47:00.43 ID:5WoQCohvo
「みらい」 士官食堂
角松「そういうわけで、3日後には合流地点へ出航する」
角松「航海長、よろしく頼む」
尾栗「了解しました」
そう返事をした後、なにやらほくそ笑む尾栗。
角松「なんだ、その笑みは」
尾栗「いえ、なんかもう当たり前のように受け入れてるもんで」
角松「当たり前に?」
尾栗「この世界に来て早くも一月以上が経とうとしている……」
尾栗「違和感ってもんがなくなってる感じがしませんか?」
角松「………」
尾栗「まぁ、この世界に来てこれだけ経てば無理もないですかね」
906 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:49:24.13 ID:5WoQCohvo
『対空戦闘用意!』カーンカーンカーンカーン
角松「!」
突然鳴り響く対空戦闘の警報。
青梅『501より敵発見の緊急電を受信!』
青梅『アンノン目標1、方位1-4-0、450km/hにて接近中!』
角松「CIC艦橋、了解! SPYレーダ起動、走査開始!」
角松「作業員は艦内へ退避!」
梅津「本艦の戦闘準備までにかかる時間は?」
角松「エンジン始動自体は一分かからずにできます」
角松「しかし、補給作業中である故、満足に戦えるかどうか」
菊池「現状でもミサイルによる攻撃は可能ですが……」
戦力に不安を覚えていると、続報が入る。
青梅『哨戒中のウィッチが接敵、交戦状態に入りました!』
907 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:49:56.71 ID:5WoQCohvo
ドーバー海峡上空
ガガガガガガガ!
基地を出撃したウィッチたちが出会ったのは50m級のネウロイ。
すでに接触開始直後より激しい戦闘が行われていた。
ゲルト「今だ!リネット軍曹!」
リーネ「えいっ!」ダァン!
バルクホルン指示のもと、リーネの狙撃がコアをさらけ出す。
ペリーヌ「今ですわ宮藤さん!コアを!」
芳佳「いっけえええええ!」ガガガガ!
宮藤の銃弾がコアに当る。
ネウロイはそのまま崩壊し、4人の任務は完了した。
芳佳「はっ…はっ……」
908 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:51:17.69 ID:5WoQCohvo
ゲルト「よくやった、2人とも」
ゲルト「動きといい射撃といい、以前よりも動きがよくなっている」
ゲルト「そう思わないか、クロステルマン中尉?」
ペリーヌ「まぁ、これも坂本少佐の訓練の賜物ですわね」
ペリーヌ「それに、最近は出撃の頻度が多いわけですし」
ペリーヌ「本当に、異常なほど……」
リーネ「そういえば、最近出撃が多いですね」
ゲルト「ああ、確かにこの頃のネウロイ出現のスパンはおかしい」
ゲルト「規模こそ大きくないものの、連日の襲撃が当たり前になりつつある」
ゲルト(……なにか、異変が起きつつあるのか?)
909 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:52:19.14 ID:5WoQCohvo
「みらい」艦橋
中断していた補給作業を再開し、終了した「みらい」。
菊池「わざわざ緊急発進の用意をすることもなかったな」
各種処理を終え、CICから戻った菊池が呟く。
尾栗「全く、停泊中の襲撃は肝を冷やすぜ」
角松「ここは戦場だ。いつ襲撃があってもおかしくない」
角松「停泊中も気を緩めないように徹底だ」
菊池「了解」
尾栗「敵さんも、少しはこっちのこと考えてくれたらいいんだがねぇ」スッ
角松「どこか行くのか?」
尾栗「目的地までの航路の様子を調べるついでに、下の奴らの様子を見にな」
角松「下?」
910 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:53:26.11 ID:5WoQCohvo
尾栗が艦橋から退出する。
気になって露天露天に出てみる菊池と角松。
菊池「……?」
なるほどどうも騒がしい。
どうやら非番の隊員達がウィッチ達と話しているようだ。
そこに、エイラの姿があった。
ひと儲けしようとしてるのか、お得意のタロットカードで運勢占いをしている。
エイラ「お前の今日は……力の逆位置ダナ」
エイラ「賭け事とか挑戦に失敗するゾ。あまり無茶はしないようにナ」
杉本「うっそ!マジかー!」
柏原「これで、今回は杉本一曹以外の誰かがアイスを手にするってわけだ」
「「「ハハハハ!」」」
911 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:56:42.50 ID:5WoQCohvo
ペリーヌ「ちょっとエイラさん、あなたまさかお金とってやっていますの!?」
つられてやってきていたペリーヌが問いかけるが、それをあしらうエイラ。
エイラ「固い事言うなって。この世界じゃ使えないお金だから軍規に抵触するわけじゃないゾ」
エイラ「なんならツンツン眼鏡も占ってやるよ」
ペリーヌ「私は遊びに来たわけではありませんでしてよ!」
エイラ「じゃあ仕事終わらせずにここにいるわけダナ」フゥ
ペリーヌ「ムキーッ!」
角松「最近は、ウィッチと隊員の交流が増えているようです」
菊池「一応ほどほどにとは言い渡してありますが……」
梅津「ミーナ中佐も、はじめは快く思ってなかったようだが……」
梅津「今ではそうでもないようだな」
912 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 17:58:24.24 ID:5WoQCohvo
梅津「皆、狭い艦内生活で疲れていることもあるのだろう」
梅津「始めは不安を抱えておった者も、今ではこうして立ち直っている」
梅津「この世界で目的を見出し、そしてそれが実現できると実証したからだ」
角松「たしかにここ数日、隊員たちは達成感にあふれているようです」
梅津「それもいい……だが、この世界で目的を持つことに少なからず不安があるのも事実だ」
菊池「不安、ですか」
梅津「目的を据えるのはいい。だがこの世界にかかわっていく以上、その関係は深いものになるのは間違いなかろう」
梅津「いつの日か、我々が海上自衛隊であること、日本人であることが薄れてしまうかもしれない」
角松「まさか、そんなことは」
梅津「私は、今日まで戦い抜いてきたこの「みらい」全員、立派な海上自衛隊員だと思っている」
梅津「しかしその優秀さゆえ、自分たちの事をこの世界に置き去りにしてしまうやもしれんのだ」
角松「元の世界に戻らず……戦い続けるものも出てくると?」
梅津「いずれ、我々は辛い選択を迫られることになるぞ」
梅津「絶えず戦い続けながらも、帰還の希望を捨ててはならん」
菊池「………」
913 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:04:35.69 ID:5WoQCohvo
菊池(艦長が心配しているのは、後戻りができなくなるということだろう)
菊池(仮に元に戻る方法が見つかっても、世界は戦いの最中だ)
菊池(我々だけ逃げるという、ある種の強迫観念に駆られ、帰還を躊躇ってしまう可能性もある)
菊池(戦いを終わらせるか、つながりが甘いうちに見つけ出すか……」
角松「ん?」
菊池「いや、なんでもない」
隊員「失礼します!」ガチャ
隊員「艦長、クロステルマン中尉より、航行海域の情報を受け取りました」
梅津「向こうから届けにきたか」
菊池「尾栗は……ちょうどすれ違ったようですね」
914 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:05:59.21 ID:5WoQCohvo
501桟橋
尾栗「えっとぉ、基地に入るにはまず……?」
手書きしておいた基地への入り方を見ながら歩く尾栗。
気をとられていたため、その時左から人が来るのに気付かなかった。
尾栗「おっと!」ドッ
「うわっ!」ドッ
激しくぶつかる二人。
尾栗「いてて……すまん、けがはないか?」
「いえ、こちらもよそ見をしていましたので」
見たところ、扶桑の整備員らしい男であった。
「……! それでは失礼します」
しかし何を急いでいるのか、尾栗を見るや否や、帽を深くかぶり直した後にすぐ去ってしまった。
尾栗「……?」
915 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:07:20.69 ID:5WoQCohvo
3日後 「みらい」艦橋
「みらい」出港のため、係留していた桟橋がいつも以上に慌ただしくなる。
梅津「両舷前進微速」
尾栗「両舷前進びそーく!」
角松「本艦はこれより、大西洋沖にて扶桑艦隊と合流を目指すべくランデブーポイントへ向かう」
角松「周辺海域では、未だに多数のネウロイ目撃情報も確認されているようだ」
角松「総員、対空及び対水上警戒を厳となせ!」
隊員A『右桟橋、水空き800!』
隊員B『水深変わらず、異常なし』
梅津「該当海域到着まで、およそ3日ほどだ」
梅津「皆、頼むぞ」
916 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:08:49.45 ID:5WoQCohvo
大西洋 アフリカ大陸沖
ネウロイの活動圏外である、普段は静かなこの海域に、扶桑の海軍艦艇が展開していた。
欧州における大反攻作戦の扶桑皇国参加。
第二次派遣による戦力増強は、一次派遣後、早々に大本営にて可決され、すぐさま艦隊が編成された。
見て取れるだけでも、駆逐艦7、重巡5、軽巡4、戦艦1、油槽船3、計20隻。
うち一つ、前面に位置する駆逐艦「島風」の甲板に、あの男がいた。
土方「………」
坂本美緒少佐の従兵を務めていた土方である。
立石「急な召集で大変だったな。兵曹」
土方「……! これは立石少佐」
そこへやってきたのは「島風」艦長、立石良則少佐であった。
土方「いえ、なんとか間に合いましたのでそれほどでも」
立石「あの士官にこの従者あり、か」
立石「話には聞いていたが、なるほどなかなかな人物なようだ」
917 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:14:37.10 ID:5WoQCohvo
立石「しかし残念だったな」
立石「もう少し早ければ、君もこんな小さな駆逐艦ではなく、戦艦あたりには乗れただろうに」
立石「大型格納庫をもつ「大淀」以外はすでに艦載機格納庫はいっぱいだったようだ」
ここに土方がいるのは、坂本少佐の急な呼び出しである。
派遣は早々に許可され、水上機で飛び立った。
そして艦隊に合流したのち、「大淀」回収され、空きのある「島風」に移乗したのだった。
土方「いえ、とんでもありません」
土方「たしかに海の男は戦艦や空母に憧れるものではありますが」
土方「新型高圧ボイラー搭載により40ノットの速度を実現したこの「島風」に乗れるとは思いませんでした」
それを聞いた立石は少し嬉しそうに表情を緩めた。
立石「裏を返せば、敵に近づく可能性のあるということだ」
土方「ネウロイが怖くて、皇国海軍軍人は務まりません」
立石「……いい答えだ」
※駆逐艦「島風」:某界隈で人気の日本海軍の駆逐艦。
特徴的なのは最高40ノットに及ぶその速力である。
しかし、高コストと実用の疑問性により、姉妹艦が作られることはなかった。
※軽巡洋艦「大淀」:日本海軍の軽巡。最後の連合艦隊旗艦になった艦艇でもある。
後部に大型格納庫を持つ。
918 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:15:41.06 ID:5WoQCohvo
大西洋 「みらい」艦橋
出港して一日、「みらい」は予定に誤差なく進んでいた。
柳「現在我々は、ガリア西のケルト海を南西へ下っています」
麻生「前にブリタニア艦が攻撃を受けているあたり、気を付けるポイントだ」
麻生「「みらい」に広範囲のレーダーがあるといえど、どう攻めてくるかはわからん」
露天艦橋にて、何気ない会話を交わす二人。
その視界に端に、何かが見えた気がした。
柳「……!」
柳「航海長! 右30度、距離6500!」
尾栗「ん?」チャッ
尾栗「あれは……!」
919 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:16:40.87 ID:5WoQCohvo
「みらい」CIC
その時、CICに報告が入った。
青梅「……ソナー探知! アンノン1!」
菊池「!?」
ソナー員『CICソナー!水中二軸推進音探知!』
ソナー員『方位2-1-0! 距離6500!』
角松「潜水艦だと!?」
角松「目標の詳細は?」
青梅「α目標、推定針路0-4-0、毎時4ノットにて接近」
青梅「針路交差の可能性あり!」
角松「面舵一杯!」
『おーもかーじ!』
菊池(この戦争で潜水艦……)
菊池(ネウロイが水を嫌う以上、目標がネウロイと言う可能性も低い)
梅津「事前に報告は受けていないな……」
920 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:17:48.47 ID:5WoQCohvo
尾栗『CIC艦橋、目標の潜望鏡らしきものを視認!」
青梅「正面モニター、最大望遠で出します」
モニターが切り替わり、前方カメラの映像が現れる。
青梅「目標の潜望鏡を視認!」
青梅「……ン?」
角松「なんだァ、艦橋も見えて……」
海面に見えていたのは潜望鏡だけではなかった。
艦橋の上部分も見えている。
そしてそれは少しずつ上がってきた。
ソナー員『CICソナー! 目標より排水音を探知!!』
ソナー員『浮上する模様です! 推定深度20m!』
角松「何を考えている……」
菊池「艦長、対潜戦闘の用意を具申します」
角松「砲雷長、その判断は早急すぎないか?」
菊池「万が一敵であった場合、その時になっては間に合わん!」
921 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:20:33.78 ID:5WoQCohvo
梅津「……対潜戦闘用意!」
角松「!」
菊池「対潜戦闘、アイサー」
菊池「前甲板VLS19番、アスロック諸元入力開始」
梅津「砲雷長、これはあくまでも予防だ」
梅津「むやみな刺激は与えたくない。他の武装は動かすな」
菊池「は……」
菊池「主砲、魚雷発射管はそのまま!」
水雷長は米倉一尉。
自分の出番に戸惑りながらも通常通りに操作をこなす。
米倉「方位210°、距離6400」
米倉「アスロック、諸元入力完了!」
尾栗『CIC艦橋! 目標、完全に浮上します!』
※アスロック:対潜ミサイル。
ロケットの先に魚雷を装備し、遠距離への素早い対潜攻撃を可能にする。
そしてアスロックと言えば米倉である。
922 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:22:25.60 ID:5WoQCohvo
「みらい」 艦橋
ザッパアアアア!
麻生「潜水艦浮上確認! 距離6000!」
尾栗「しかしこいつはデカイ……」
遠目にあらわになる潜水艦。
しかしそれはかなりの大きさ。
柳「……!!」
双眼鏡で確認した柳の顔が変わる。
尾栗「柳、あの潜水艦の型はわかるか?」
柳「わかるも何も、原潜が登場するまで類を見ないあの大きさ」
柳「艦橋付近の航空機格納庫、カタパルト」
柳「どういうわけか側面の番号が消されていますが、あれは……」
柳「日本海軍最大の潜水艦、伊四〇〇です!」
※伊四〇〇型潜水艦:日本海軍の潜水艦。
当時としては最大の全長122m(米軍のガトー級が95m、ドイツのUボートが60-70m程度)。
航続距離も、浮上時ならば37500海里(地球の約1.5周分)を誇る。
艦載機による米本土爆撃を想定していたが、本型では実行されることなく終戦を迎えた。
923 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:23:49.80 ID:5WoQCohvo
尾栗「伊四〇〇……」
尾栗「航空機を搭載した、あの潜水艦……」
柳「……ん?」
柳「航海長、艦橋に人影が!」
尾栗「人影!?」
改めて双眼鏡を構えなおすと、浮上したての潜水艦に数人の見張りが展開する
そしてその中に、士官らしき人物。
尾栗「士官……まさか艦長か?」
柳「階級章……」
柳「海軍中佐! 艦長で間違いないと思われます!」
尾栗「オイオイ……」
その艦長らしき人物は、ただ「みらい」を眺めていた。
924 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:24:45.82 ID:5WoQCohvo
しばらく、ただすれ違いを待つかのように進み続ける2隻。
そこへ、CICで映像を見ていた角松がやってくる。
柳「あ、副長」
角松「……あれが、浮上した潜水艦か」
尾栗「みてみろよ、かなりデカいぜ」
角松「流石、世界最大の大きさとは言われているわけだ」
角松「……あの艦橋の上にいるのが」
柳「ええ、おそらく潜水艦の艦長かと」
こちらの視線に気づいたのか、潜水艦艦長もこちらへ向く。
そして、艦橋へ向かって敬礼をした。
角松「………」
あっけにとられる見張り員をよそに、角松は敬礼を返した。
925 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:27:22.71 ID:5WoQCohvo
「みらい」 CIC
そのまま「みらい」と伊号はすれ違っていった。
やがて互いの見える大きさが小さくなる程の距離まで離れる。
ソナー員「前方より注水音」
ソナー員「扶桑潜水艦、潜航します」
ソナー員「現在、艦後方120°距離1200」
梅津「対潜戦闘用具収め」
米倉「……ふぅ」
ボタンを押すことなく役割を終えたことに一息つく米倉。
そこを菊池は見過ごさない。
菊池「油断はするな。引き続き警戒は続けろ」
米倉「はっ!」
梅津「……不明艦を前に浮上する、あの堂々たる仕草」
梅津「誰かに似ておると思わんかね?」
菊池「は?」
926 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:28:35.04 ID:5WoQCohvo
伊四〇〇 艦内
副長「潜航用意!」
船員「潜航ー用意!」
船員「見張り員は艦内へ!」
慌ただしく入る中、一際慣れた手つきで滑り降りてくる艦長がいた。
船員「ハッチよし!」
艦長「よし、このまま潜れー!」
副長「潜航! 深度30につけ!」
船員「メインタンク注水、ベント開け!」
船員「深度30!」
副長「おかえりなさい。ずいぶん楽しんできたようですネ」
艦長「バカいえ、偵察だ偵察」
副長「ただの興味本位の好奇心、でしょ」
927 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:31:22.39 ID:5WoQCohvo
行動の塊である艦長を見て、副長が皮肉る。
副長「未確認艦を見るだなんて、何をトチ狂ったかと思いましたよ」
艦長「噂のトンデモ艦を見れるチャンスを逃す手はないだろう」
副長「撃たれるかもしれないリスクを抱えて、ですか?」
艦長「奴は撃たない、実際そうだったろ?」
自信満々に発言する艦長。
まぁ、この潜水艦ではいつものことだ。
副長「はァ……確かにそうでしたが」
副長「こっちは沈められて任務失敗するかとヒヤヒヤしていたというのに、この人は……」
艦長「たまの浮上になっていいじゃねえか」
艦長「いい音も聞けただろう、水測長?」
投げかけた質問に、脇で聴音機を弄っていた水測長が答える。
水測長「ええ、そりゃァ聞いたことない推進音のオンパレードでしたよ」
水測長「後生聞けることのない艦の音ですぜ、ありゃあ」
928 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:33:22.90 ID:5WoQCohvo
副長「未確認艦もいいですけど、この輸送任務も忘れないでくださいよ」
艦橋の下層へ降りる二人。
この下は「本来なら」艦載機格納庫であるはずの場所である。
艦長「本来の任務、ね……」
艦長「コイツばかりはどうもいけ好かん」ギィッ
水密扉を開けたそこには、水上機の姿はない。
代わりに、がっしりと固定されたコンテナがあった。
副長「荷物運びは潜水艦の特許ではなかったんですか?」
艦長「バカヤロー、任務がじゃねえ。この荷物だよ」コンコン
副長「ノイエ・カールスラントからの直送便、ネウロイを避けての長期間配送」
副長「期限こそいざ知れず、よくあることでしょう」
艦長「フン! どうもイヤな勘が騒ぐ!」コンコン
イラつくようにコンテナを叩く艦長。
たしかにそのコンテナは、妙な音が聞こえるという噂もある。
副長(艦長の勘、たまにバカにならないからなぁ)
だが今さら捨てることなんてできるわけもない。
よくわからない物を載せたその伊号は、そのまま目的地のブリタニアへと向かった。
929 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:34:42.65 ID:5WoQCohvo
数日後 「島風」 艦橋
順調に航行を続ける扶桑艦隊。
しかしここ数日、霧と雲に覆われる天候不良が続いていた。
立石「視界もほとんど確保できていない」
立石「そろそろ合流予定時刻だが……」
船員A「ここまでネウロイと出会わなかったのは幸運でしたね」
船員B「全くだ」
立石「警戒を怠るな」
立石「むしろネウロイに遭遇しやすいのはこの先だ。気を引き締めろ」
『艦長!旗艦より入電!』
『ネウロイ探知! 方位0-8-5! 距離60000!』
『対空戦闘の指示が出されました!』
立石「さっそく来たか……」
立石「総員、対空戦闘用意!」
『対空戦闘用意!』
930 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:36:32.44 ID:5WoQCohvo
ヴーッヴーッヴーッ! ドォッ! ドガアンッ!
土方「……! ネウロイ!?」
仮眠をとっていた土方が警報と爆音に気付き飛び起きる。
「「高雄」被弾! 主砲塔爆発!」
「「足柄」減速します!」
さらにそこへ、聞いたこともない巨大な砲声が追い打ちをかけた。
ガアアァンッ!ガアアァンッ!ガアアァンッ!
土方「この砲声は……!」
甲板に飛び出すと、接近する大型のネウロイに対して行う艦隊の全力射撃が目に入った。
この「島風」も例外ではない。
ドカドカドカドカ! ドドドドドド!
『主砲射撃用意!』
『全主砲、方位0-8-5、仰角40°!』
『目標、大型ネウロイ! 撃ち方始め!』
ドンッ!ドンッ!
土方(駄目だ。12.7cmではとても叶わない……)
土方(だが、あの艦の46cm砲なら……)
931 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/10(月) 18:38:50.35 ID:Cx2MNF26o
真っ当に戦闘してる大和って珍しいな
932 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:39:27.00 ID:5WoQCohvo
一方、旗艦の戦艦では、艦長の大野大佐が指揮を執っていた。
大野「主砲第二射、射撃用意!」
砲術長「方位0-8-5、距離20000!」
大野「撃ち方始め!」
『撃ち方はじめーッ!』
この艦自慢の46cm砲全門が時間差で放たれる。
適切に合わせられたその時限調整は、ネウロイの目の前で爆発、散弾を撒き散らした。
大野「どうだ、この新型の三式弾の威力は!」
砲煙が晴れた先には、回復中のネウロイの姿。
しかしその回復力はかなり早い。
大野「やはり単体では効果が薄いな」
大野「砲術長、二段戦術だ」
砲術長「はっ! 了解しました!」
砲術長「一番砲塔、弾種三式通常弾! 二番砲塔、弾種一式徹甲弾!」
砲術長「撃ち方始め!」
※三式通常弾:対空用の砲弾。内部に996個のゴム弾が入っており、時限装置にてそれを空中にばら撒く。
史実では航空機の編隊に対して多少の効果を上げたようであるが、すぐに対策を取られたようだ。
※一式徹甲弾:徹甲弾の一種。大鑑用に開発された九一式徹甲弾の改良型。
933 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:40:38.21 ID:5WoQCohvo
グワァッ!
まず一番砲塔が火を噴く。
『弾着3秒前!』
砲術長「続いて二番砲塔、撃ち方始め!」
グワァッ! ドオォッ!
そして次に二番砲塔が火を噴いた。
同時に第一射がネウロイに対して着弾する。
ネウロイ「キャアアアア!」
最初の三式弾の着弾により表面に大穴が空く。
そこへ次の一式徹甲弾が追い打ちをかける。
ドゴオォッ!
ネウロイ「ギャアアアッ!」
それが決定打になったのか、ネウロイで大爆発が起きた。
ネウロイの左半分が吹き飛ぶ。
船員「おおおっ!」
船員「やったか!?」
934 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:43:28.96 ID:5WoQCohvo
土方(まだだ! コアに届いていない!)
「島風」の甲板から見上げていた土方。
その通りで、コアには届いていないせいか再び回復を始めるネウロイ。
大野「これでもダメか!」
砲術長「艦長、第三砲塔にも砲撃させましょう」
大野「頼む」
見張り員「報告! ネウロイより小型機が分離!」
大野「なんだと!?」
双眼鏡を手に覗く大野艦長。
先の崩れた部分の反対側から、小さなミサイル状のネウロイが分離した。
見張り員「小型機2機、右90度!」
見張り員「距離6000! 真っ直ぐ突っ込んでくる!」
大野「右舷対空砲火にて迎撃せよ!」
ダダダダダダダダダダダダダダ!
この艦自慢の、ハリネズミとも言われる対空火器が火を噴く。
しかし普通の航空機よりも速く、小さいネウロイにはなかなか当たらない。
対空射撃員「当たれ!当たれ!」ガガガガガガ
見張り員「さらに近づく、距離3000!」
見張り員「ダメだ! 接触するぞ!」
935 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:44:53.83 ID:5WoQCohvo
その時だった。
観測員「電探に感! 前方より接近する物体あり!」
大野「何!? 新手か!?」
見張り員「右10°、距離―――はやい!」
それは一瞬にして見張り員の脇を通り過ぎた。
見張り員「うわっ!」
ドオオオッ! ドオッ!
やがてまっすぐ飛んできたそれは、危うく船体に当たるところのネウロイ子機を撃破した。
さらにそれはもう一つ飛んできて、もう一つのネウロイの子機を破壊した。
船員「おおおっ!」
船員「助かった……」
大野「気を抜くな!」
「「「!!」」」
大野「まだ本体は生きている。主砲、斉射準備!」
砲術長「一番砲―――」
936 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:46:37.66 ID:5WoQCohvo
ピカアッ!ズドオオオオッ!
子機に気を取られている間に、ほとんどを回復したネウロイのビームが艦隊を襲う。
そしてこの艦にもビームが当たる。
船員「艦後方部に被弾!」
大野「っぐ!」
大野「被害は!?」
伝声管を通じて、ありとあらゆるところから被害報告が届く。
船員「「大淀」に直撃! 後部格納庫より出火!」
船員「本艦右舷上甲板に敵光線接触!」
船員「第三、第四対空機銃座、蒸発! 火災箇所の消火急げ!」
船員「……報告! 主砲射撃盤、正常に作動しません!」
砲術長「なんだと!?」
船員「おそらく、先の被弾の衝撃が原因かと」
砲術長「後部距測儀で手動照準だ!」
砲術長「……しかし艦長、これでは正確な射撃による同時加重攻撃は不可能です」
大野「くっ……」
観測員「報告、前方より接近する艦艇あり!」
937 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:47:35.12 ID:5WoQCohvo
一方、艦隊前面に出ていた「島風」。
「修正、旋回プラス5°、仰角プラス2°!」
「旋回プラス5°、仰角プラス2°!」
「撃ち方始め!」
持ち前の足の速さを活かし、回避運動を行いながら艦隊を支援していた。
そしてちょうど、未確認艦の艦影を見つけていた。
見張り員「前方に艦影見ゆ!」
見張り員「左10°、距離25000!」
砲撃の最中、双眼鏡をのぞく立石。
立石(なんだ、あの艦は?)
立石(今の攻撃はあの艦から撃たれたものに間違いなかろう)
立石(まさか、あれが……)
見張り員「未確認艦、発砲!」
938 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:48:26.03 ID:5WoQCohvo
「みらい」 CIC
青梅「シースパロー命中、トラックナンバー2675、2676撃墜」
青梅「護衛対象に被弾なし」
CIC員A「目標ネウロイ、依然として進行中」
CIC員B「主砲射程圏内インレンジまで、あと10秒!」
青梅「ネウロイと護衛対象群αの距離、約5000!」
CIC員B「目標インレンジ5秒前!」
CIC員B「目標、インレンジ!」
菊池「主砲、撃ち方始め!」
CIC員C「撃ちー方はじめ!」グッ
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
939 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:50:22.95 ID:5WoQCohvo
「島風」艦橋
吸い込まれるように命中する砲弾。
立石「………」
立石だけではなく乗員全員が目を疑っていた。
装填速度、命中精度、どの国の軍艦にもない性能だった。
連続で発射された砲弾が全て命中し、コアを抉り出し、破壊する。
パキイィィィン!
船員「おお……」
船員「やった! 今度こそ……!」
艦内が完成であふれる。
甲板上で、いつの間にか手伝いをしていた土方も一息つき、前を見た。
土方(見たこともない艦、常識を逸する攻撃力……)
土方(これが坂本少佐の言われていた「みらい」……!)
940 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:51:58.58 ID:5WoQCohvo
「みらい」 艦橋
尾栗「ヒュー……」
尾栗「ギリギリで間に合ったな」
遠目に見ていた尾栗が口笛を軽く吹く。
麻生「前方に艦影多数。扶桑艦隊です」
柳「戦艦をはじめとした日本――扶桑海軍の代表艦が勢ぞろい」
柳「史実の太平洋戦争よりは少ないですが、それでも、まるで扶桑海軍の威信をかけているように見えます」
尾栗「大反攻作戦、とやらの招集だろう」
尾栗「ここまで集まるとは、やはり人類の命運をかけてると見える」
尾栗「特に、あの旗艦を見れば一目瞭然だな」
尾栗「巨大な攻撃力を誇る46センチ砲を搭載した、世界最大の戦艦……」
尾栗「まさかこの目で見られるとは思わなかったぜ、「大和」」
巨大艦を前にして、そう呟く尾栗。
扶桑艦隊の旗艦。
その艦は、被弾しながらも堂々たる姿を見せる「大和」であった。
941 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:53:21.32 ID:5WoQCohvo
以下、アニメジパング風予告
係留される大和と、その傍に並ぶ「みらい」。
杉田「大反攻作戦には、ぜひ「みらい」にも参加していただきたいものです」
不敵な笑みを浮かべるマロニー。
草加「彼はこのネウロイすらも利用する」
VLSより引き上げられるミサイル。
菊池「この一発が革新をもたらすのか、たかが知れる程度の影響なのか……」
次々に「みらい」に積み込まれる物資と、それを眺める一人の男。
草加「あなた方は常に狙われている特異な存在であることを、お忘れなきよう」
次回『合流しだした河』
貼り付けられたロケットの設計図の数々と、その前に立つウルスラ。
ウルスラ「カールスラントの科学力は世界一ィィィィ!」
※この予告は変更される場合があります
942 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/10(月) 18:55:18.02 ID:2jg41UgDo
乙ー待ってた!!
伊号がすごく…たつなみに見えます…
943 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/02/10(月) 18:55:47.89 ID:5WoQCohvo
以上投下を終わります
この時間にしてやっと役者がそろった、という感じです
ちなみに伊四〇〇の乗員はゲスト出演です
947 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/10(月) 20:15:55.03 ID:dNQ7VLTio
乙ー。立石艦長キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
けど潜水艦いないなら活躍出来るか不安
948 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/10(月) 20:33:53.22 ID:s8RcsM2f0
ストパンとのクロスしてるのを忘れてしまいそうになる程の男臭さww
952 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/11(火) 19:04:36.89 ID:/Mr40wH8o
紺碧の艦隊も来そうだね
953 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/12(水) 01:28:35.72 ID:50dFMBJp0
ていうか扶桑に漂流したリベリオン艦はどういう伏線なんだろ?
954 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/12(水) 08:08:33.24 ID:AkSJl3Izo
「ジパング」の米側キャラが、如何なる形で登場するかが気になる。
955 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/13(木) 08:39:19.32 ID:/nWkE6HJO
伊400きたー
てか大和出撃早くね?
976 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:12:27.02 ID:EyYP71KSo
ああスレの残量も時間もヤバい
埋め用の小話を挟んで次スレ立てます
977 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:13:12.40 ID:EyYP71KSo
ゲルト「ルッキーニ、フランチェスカ・ルッキーニ少尉はいるか!」
ルッキーニを探し、基地をウロウロしているバルクホルン。
やがてその声は、回転中のエンジンを止めた格納庫にいるシャーリーの耳に入った。
シャーリー「あれ? バルクホルンがルッキーニ探すって珍しいな」
ゲルト「む、リベリアンか」
ゲルト「ちょうどいい、ルッキーニを知らないか?」
シャーリー「ん~、またどこかで寝てるんじゃないか?」
シャーリー「で、どうしたんだ?」
ゲルト「いや、宮藤から昼食の時間のために招集を頼まれたんだが……」
ゲルト「どこに行ってもルッキーニがいなくてな」
ゲルト「しかしお前でも知らないとなると……」
ゲルト「基地中を山狩りのごとくに探すしかないか」
978 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:15:17.53 ID:EyYP71KSo
あきらめたようにため息をつき、外へ向け歩き出すバルクホルン。
シャーリー「放送で呼び掛けたらいいんじゃないのか?」
ゲルト「すでにかけた」
シャーリー「あれ?あたしは聞こえなかったけどな」
ゲルト「さっきまでストライカーを回していたからだろう」
シャーリー「あー、その時かー」
ここでようやく、バルクホルンはいつの間にかシャーリーがついてきているのに気付いた。
ゲルト「……何故ついてくる」
シャーリー「だって、ルッキーニが行きそうなところなんてお前知らないだろ?」
ゲルト「たしかにそうだが……」
シャーリー「あれ? なんだありゃ?」
979 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:16:24.97 ID:EyYP71KSo
「みらい」を係留している桟橋で、なにやら人だかりができていた。
その中で、ルッキーニの大声が響いた。
ルッキーニ「あーっ!」
慣れない手つきで遊んでいたゲーム機に向かって愕然とする。
杉本「今の惜しかったなー」
米倉「さっきのコンボが決まったら、ルッキーニちゃんにもチャンスがあったんだろうけどなぁ」
柏原「見事なコンボキャンセルだったからな」
大人げねーぞ、など冷やかされているのは、「みらい」きってのゲーマー、桜井二曹。
持ってきていた2つのゲーム機で、格闘ゲームの対戦をしていたようだ。
桜井「いやでも、今の俺も危なかったですよ」
桜井「全く触ったことないのに、少尉の飲み込みの速さがすごいです」
ルッキーニ「えっへへーん、もっと褒めてもいいよ?」
「規則正しい生活も飲み込んでくれたら助かるんだがな、少尉?」
ルッキーニ「に゙ゃっ!?」
980 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:19:35.77 ID:EyYP71KSo
ルッキーニが振り向くと、そこには仁王立ちで睨むバルクホルンの姿。
その後ろにはシャーリーもいる。
ゲルト「昼食の時間だ。はやくもどれ」
ルッキーニ「えー、あともういっかいー!」
ゲルト「駄々をこねるな。遊びで食事を損なえば、いざというときに戦えんぞ」
ルッキーニ「えーっ」
シャーリー「まぁまぁ、落ち着けって」
シャーリー「ルッキーニも、今日でお別れじゃないんだからまた頼もうな?」
ルッキーニ「うじゅ……わかった」
ルッキーニ「サクライ! 次は負けないからね!!」
桜井「楽しみにしていますよ、少尉」
981 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:20:58.33 ID:EyYP71KSo
隊員A「しかしこう見てると、まるで親子だなぁ」
米倉「あっ、確かにそんな感じがする」
米倉「イェーガー大尉の接し方って、お母さんっぽいもんな」
シャーリー「そういわれるとなんか恥ずかしいな。あたしまだ16なんだし……」
ゲルト「基本甘やかしてばっかりの気がするがな」
杉本「そういうバルクホルン大尉は厳しめ、と……なんか相性がいいですな」
ゲルト「バカをいえ! どこをどうみれば私とリベリアンが相性がよく見えるのか!」
顔を真っ赤にして否定するバルクホルンをシャーリーや皆が笑う。
そこに、パシャッ!っとシャッター音が響いた。
片桐「桟橋が賑やかなんで何事かと思いましたが、いい絵が取れました」
982 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:22:41.37 ID:EyYP71KSo
カメラを構えて満足げな顔を見せる片桐。
片桐「ちょうどよかったです大尉。皆にこれを渡してくれませんか?」
ゲルト「ん? これは……」
片桐「「みらい」見学の時の写真です。どうぞ」
ゲルト「ああ、あの時の……!」
「みらい」の食堂で撮った集合写真が人数分渡される。
だがその写真を見て、バルクホルンは驚いた。
ゲルト「カラー写真……それもここまで鮮明なものは見たことない」
ゲルト「これをこんなにもらってもいいのか?」
片桐「いやぁ、俺たちの時代じゃカラーが当たり前ですからね」
ゲルト「流石は未来の技術……カラーが安価に手に入る時代か」
片桐「艦内で印刷が限られてるとはいえ、まだ手持ちに余裕はありますし」
ゲルト「余裕が、あるのか?」
片桐「へ? まぁ、インクも見た感じは」
片桐(ただ資料室のだから堂々とは使えないんだけど)
ゲルト「……なら、少し頼みがある」
983 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:26:34.59 ID:EyYP71KSo
基地食堂
芳佳「あ、バルクホルンさんおかえりなさい」
調理後の片づけを終え、割烹着姿のままの宮藤が出迎える。
芳佳「ルッキーニちゃん見つかりました?」
ゲルト「まぁ、なんとかな。今頃テーブルで待っているだろう」
ゲルト「時に宮藤、少し、いいか?」
芳佳「どうしたんですか?」
ゲルト「ちょっと写真を撮りたいと思ってな」
手に持っていたのは、この時代では見慣れない小さなカメラ。
片桐から借りた、デジタルカメラだ。
芳佳「写真ですか? いいですよー」
984 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:28:00.97 ID:EyYP71KSo
芳佳「あ、割烹着脱ぐんでちょっと待っててください」
手を後ろに回し、紐をほどこうとする宮藤をバルクホルンが制止する。
ゲルト「いや、そのままでいい」
芳佳「えー、このままですか!?」
ゲルト「何気ない1シーンを撮りたいんだ」ピッピッピ
教えられた手順を思い出しながら、カメラを操作する。
ゲルト「さぁ行くぞ!」
芳佳「え、ひゃー!ちょっと待ってください~!」
恥ずかしがる宮藤に構わず、バルクホルンがシャッターを切った。
パシャッ!
985 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:29:55.10 ID:EyYP71KSo
・
・
・
しばらくして ミーナ執務室
ゲルト「ミーナ、少し相談があるんだが」
ミーナ「どうしたの?トゥルーデ」
ゲルト「実は、2日の休みが欲しい」
その休暇の申し出に、ミーナは少し驚いた。
ミーナ「あらあら、あなたが休暇って珍しいわね」
ミーナ「またクリスさんのお見舞いに行くの?」
ミーナ(最近みんな頑張ってるもの、休暇くらいは許可してあげないとね)
ゲルト「いや、それもあるんだが……もう一つ頼みがある」
ゲルト「休暇のうちの1日に、私情でストライカーを使わせてほしい」
ミーナ「そう、ストライカーを……」
ミーナ「えっ?」
986 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:31:37.34 ID:EyYP71KSo
後日 格納庫
ドゥルン…… ドドドドドドドド!
エイラ「ン?」
エイラ「あれ? 大尉今日非番じゃなかったのカ?」
ゲルト「ああ、非番だ」
エイラ「なんでストライカー付けてんだ?」
エイラ「しかも銃じゃなくてカメラ持って」
いつものMG42は背負っておらず、
ゲルト「ちゃんとミーナに許可は貰っている。気にすることじゃない」
エイラ「……ソウカ」
ヴォオオオオオオオ!
エンジンの回転数がさらに増し、声が聞こえ辛くなる。
エイラ「あっ、あまり基地の周り飛ぶなヨ! 今サーニャ寝てるんだからナー!」
ゲルト「善処はする!」
そう言って、バルクホルンは飛んで行った。
987 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:32:42.33 ID:EyYP71KSo
大空を翔るストライカー。
幸いにもその日は晴れていて、なおかつ程よく雲がある天気だった。
ゲルト「よし、撮るか」
上昇し、手慣れたホバリングで揺れの少ない安定した姿勢を確保。
ある程度のブレはカメラで自動補正をしてくれるから、問題ない。
カメラを構え、水平線に向かって一枚。
ブリタニアに寄り、遠くに小さく見える都市部を一枚。
山間部に接近し、森の木々や小さく写る動物を一枚。
基地を俯瞰し、滑走路で坂本少佐のトレーニングを受けている3人組を一枚。
暮れてきた眩しい夕日も一枚。
月をバックに、哨戒に出てきたエイラとサーニャの横顔も一枚。
ゲルト「さて、戻って選ぶ作業に入るか」
・
・
・
988 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:34:35.64 ID:EyYP71KSo
ゲルト「行くぞ、ハルトマン!」
エーリカ「そんなに急がなくても病院は逃げないよ」
ゲルト「面会時間が無くなってしまうではないか!」
エーリカ「今出てもだいたい2時間前には着く予定なんだけどなぁ」
ゲルト「その間にお菓子でも何でも買ってやる! 急げ!」
エーリカ「あ、今の忘れないでよねー!」
芳佳「バルクホルンさん、なんか張り切ってますね」
エイラ「確かに、ここんとこ様子がおかしかったナ」
坂本「妹の見舞いに行くそうだ」
芳佳「あ、坂本さん」
989 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 21:36:58.99 ID:EyYP71KSo
ミーナ「ずっと病室にいるクリスさんに、外やみんなを撮った写真を見せてあげるそうよ」
ミーナ「ウィッチの彼女が見てる空の景色も見せたくて、だからストライカーを使いたかったのね」
ペリーヌ「休暇中に大尉が飛んでいたのはそのためでしたのね」
坂本「特に宮藤、どうやらお前のことはお気に入りになったそうだ」
芳佳「私がですか?」
坂本「ああ、お前のことを話したら、ぜひ会いたいと言っていたそうだ」
坂本「近々、会えるかもしれないな」
芳佳「バルクホルンさんの妹かぁ……どんな人なんだろう」
ミーナ「あの子が溺愛するのもわかるくらい可愛い妹よ」
ミーナ「宮藤さんに、ちょっと似てるのかもしれないわね」
芳佳「そうなんですかぁ……会ってみたいなぁ」
ミーナ「それにしても、カラー写真ってずいぶん鮮明になったものね」
渡された集合写真を見て、微笑むミーナであった。
995 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2014/03/26(水) 22:00:07.68 ID:EyYP71KSo
997 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/26(水) 22:26:26.11 ID:6DKVI1AMo
乙です
998 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/27(木) 00:20:06.94 ID:6FAx/q+1O
乙でしたwww
ギリセーフ!!
1000 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/27(木) 00:48:53.40 ID:1qyFL0yco
うめ
1001 :
1001 :Over 1000 Thread
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http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ 転載元
芳佳「イージス護衛艦『みらい』……?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1342702050/ 島田 フミカネ
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