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芳佳「イージス護衛艦『みらい』……?」 【前編】

1 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:47:30.57 ID:YfWZgPbGo
・ストライクウィッチーズ×ジパングクロス
・数か月前にVIPで乗っ取ったスレの書き直し
・変更、原作崩壊してるところも多々あり
・超不定期更新

・あと>>1はにわかミリオタです


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342702050


2 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:48:23.02 ID:YfWZgPbGo
横須賀の海上自衛隊基地。
その港には、数隻の軍艦と、派遣反対の横断幕を持った人々がいた。


船員「出港用意!」

船員「舫放てー!」

ザバァ……


レポーター「南太平洋における、米軍との演習に向け、海上自衛隊の第一護衛艦隊が参加します」

レポーター「派遣艦は旗艦「ゆきなみ」以下「はるか」「みらい」、補給艦「あまぎ」の計四隻」

レポーター「ハワイ沖で米海軍と合流すべく、今出港しました!」



3 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:49:18.85 ID:YfWZgPbGo

出港二日目 南鳥島沖

護衛艦『みらい』 CIC

青梅「………」

「CICの主」と呼ばれる青梅一曹は、あらかじめ渡されていた訓練用の紙を確認していた。
そして時間になり、訓練通り操作を始める。


青梅「ESM探知、120度!」

梅津『教練、対空戦闘用意』

無線で艦橋から、艦長の梅津三郎一佐の指示が飛んでくる。
それに伴い、艦内があわただしくなる。


艦橋では、航海長の尾栗康平三佐が回避運動の指示をしていた。

尾栗「対空戦闘用意!取り舵20度、第二戦速!」

艦橋員B「とーりかーじ!」

艦橋員C「第二戦速!」



4 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:50:13.67 ID:YfWZgPbGo

CIC員A「敵ミサイル探知!距離10万!」

CIC員B「ミ……ミサイル・シーカー波、完全にロックされています!」

菊池「落ち着け。確実にやるんだ」

CIC員B「はっ……!」

緊張した隊員を見て鼓舞するのは、砲雷長の菊池雅行三佐。

CIC員A「シースパロー発射用意!」

CIC員A「後部VLS解放、イルミネーターリンク!インレンジ5秒前!」

CIC員A「……3,2,1,撃てーっ!」ピ



5 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:51:14.77 ID:YfWZgPbGo

撃墜したか?
そんな期待とは裏腹に、艦橋からの報告が飛んでくる。

麻生『第一目標撃墜、第二目標接近』

菊池「CIWS右舷攻撃はじめ、AAWオート!」

CIC員B「CIWS、右舷AAWオート、うちーかたはじめ」

艦前方、艦橋下に設置してあるCIWSが自動迎撃モードに入る。
さらに艦橋員の報告が続く。


艦橋員C「敵ミサイル、左90度で真っ直ぐ突っ込んでくる!」

麻生「敵ミサイル、本艦左舷に命中。柳一曹負傷、と」

掌帆長の麻生先任曹長が手元のフリップに負傷者として、隣にいた見張り員の名前を書く。

柳「えっ?」

そしてその本人は予想もしなかった言葉に驚いていた。



6 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:52:27.74 ID:YfWZgPbGo

ミサイル命中報告の後、応急班が被弾想定箇所に駆けつける。

応急員A「フレーム30に浸水!」

応急員B「急げ!ダメコンをして水を止めるんだ!」

応急員C「ぐずぐずしてたら海の底だぞ!」


応急員D「この木材を持ってくぞ」

応急員E「ちょっとま……」ガッ!

応急員E「アウチ!」



7 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:53:30.33 ID:YfWZgPbGo

艦橋

訓練終了を報告するため、艦橋に副長兼船務長の角松洋介二佐が入る。

角松「艦長、報告します。19:30、訓練終了しました」

角松「なお、ダメコン中に応急員が一人手を打撲したとのこと」

梅津「五分遅れか……」

梅津「一ヶ月前の十分に比べればよくできとるよ」

角松「は……」

梅津「何事も、気を張り過ぎちゃ身が持たんよ」

梅津「緊張もほどほどに、な」




8 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:55:08.49 ID:YfWZgPbGo


兵員室

柳「このイージス艦『みらい』は、『こんごう』型の発展型『ゆきなみ』型の三番艦です」

訓練が終わり、当直員以外の各々が各兵員室に戻った。
その時、戦史オタで有名な航海科の柳一曹が、同乗したジャーナリスト片桐のインタビューに答えていた。

柳「こんごう型と大きく違うところは、後部にヘリの格納庫がある点ですね」

柳「対潜哨戒ヘリ『シーホーク』、さらに変向翼機『うみどり』を搭載することで対潜行動がさらにとれるようになります」

片桐「なるほど……」

片桐「では次に……うおっと!」ドッ!

突然艦が大きく揺れ、思わず片桐は後ろによろめいてしまう。

片桐「結構揺れましたね」

柳「どうも天候がよくないみたいです」



9 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:55:55.76 ID:YfWZgPbGo

艦橋

ザアアアアアア……

尾栗「すんげぇ雨だな……」

角松「艦長、ミッドウェー島北西に低気圧有。気圧965hPa。なお勢いを増しているとのこと」

梅津「予報にはなかったな……。時化に備え、荒天準備となせ」

角松「了解!」

梅津「航海長、僚艦との距離を4kmに設定」

尾栗「はっ!」


10 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:56:44.29 ID:YfWZgPbGo

艦内各部に角松の放送が響く。

角松『荒天準備。移動物の固縛を厳となせ!」

隊員A「うん?」

突然の放送に身を固める隊員たち。

隊員B「艦がよく揺れてるしな。時化か」

隊員C「まぁいいさ。部隊長にどやされる前に、早く行こうぜ」

ダッダッダッダ……

隊員が駆け出し、配置につき始める。



11 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:57:28.19 ID:YfWZgPbGo

青梅『艦橋CIC、前方に巨大な積乱雲を確認』

尾栗「なんだぁ、あの雲は……」

柳「ここまで離れてても見えるほどですから、その大きさは……」

みらいの前方3km、そこには巨大な雲が立ちふさがっていた。
激しい雨と相まって、僚艦の姿は完全に見えない。


梅津「海にでて三十五年と数か月……」

梅津「こんな巨大な雲は見たことがない、な」


12 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:58:37.53 ID:YfWZgPbGo

ゴロゴロ……ビカア!

突然、激しい落雷がみらいを襲った。


尾栗「うおっ!」ドカッ!

柳「わっ!」

柳「い……今のは!?」

尾栗「落雷か!?」

艦内電話を素早く手に取る角松。

角松「応急指揮所!艦内の損傷を報告せよ!」チャッ!


応急員『電気・油圧・その他すべて正常』

応急員『艦内各部、異常なし!』

角松「了解!」ガチャン



13 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 21:59:32.22 ID:YfWZgPbGo

CIC

青梅「……!?」

青梅「ば……馬鹿な」

菊池「どうした?」

青梅「た……対水上レーダー、反射波をとらえられません!」

青梅「僚艦をロスト!」

菊池「なんだと!?」

菊池「レーダーが効かないわけがあるか!出力を最大にしろ!」

青梅「……ダメです。反射波確認できず!」



14 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:00:49.24 ID:YfWZgPbGo

菊池の報告を受け、艦橋とCICの間でせわしく通信が行われる。

角松『そんな馬鹿なことがあるか!』

梅津『僚艦との通信は?』

青梅「二番艦『はるか』との交信不能」

青梅「『ゆきなみ』『あまぎ』ともに返信ありません」

CIC員A「全交信可能周波数域、完全に沈黙!」

菊池「衛星は!?」

CIC員B「フリーサット、軌道上に確認できません!」

CIC員C「アンテナに異常なし、機能正常!」

菊池「衛星が……存在しない……?」



15 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:01:48.22 ID:YfWZgPbGo

艦橋

梅津「とにかく、失踪した僚艦を全力で探せ」

梅津「沈んだわけではあるまい」

角松「はっ……?」

艦橋の窓から見える光景に、角松は目を見張った。


柳「航海長、これって……」

尾栗「まさか、ここはハワイ沖だぞ」



柳「ですが、これはどうみても……オーロラ、です……」



16 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:02:20.83 ID:YfWZgPbGo

目の前一面に広がるオーロラ。
それはまるで別世界に入ったようだった。

尾栗「……コンパスが!」

柳「え?」

艦橋そばのウィングに備え付けてあるジャイロコンパスが、目まぐるしく回転している。

角松「どうなっているんだ?」


『各種計器に異常発生!』

『制御不能!』

艦内電話から、続々と異常の報告が入る。


梅津「オーロラとなると、強力な磁気嵐に入ったのかもしれん」

梅津「CICはどうなっている?」

角松「CIC、状況を報告せよ!」


17 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:04:20.88 ID:YfWZgPbGo

CIC

CIC員A「各種システムに異常発生!」

CIC員B「レーダースクリーン、ホワイトアウトしました!」

CIC員C「通信機器のノイズがひどく、艦内電話すら機能していません!」

事実、菊池のつけているインカムにもノイズが走っていた。
艦橋の角松の指示も届かない。

『ほ……ょう……う…せよ』ザザザザ

菊池「この艦は最新鋭艦だぞ」

菊池「こんなことがあって……たまるかっ!」ガッ!


18 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:05:05.26 ID:YfWZgPbGo

異常事態に巻き込まれながらも、ようやくオーロラを後にした。
嵐は過ぎ去り、曇った空の下をみらいは航行していた。

ノイズが走っていたCICのモニターも、徐々に回復していく。

CIC員A「各種計器、正常に戻ります!」

CIC員B「レーダー、モニター、復帰しました」

菊池「異常ないかチェックしろ」

CIC員C「通信機器も回復!」

角松『僚艦とのコンタクトを再開しろ』

CIC員C「了解!」



19 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:05:48.47 ID:YfWZgPbGo

青梅「うおっ!?」

菊池「ん?」

青梅「なんだ……これは……」

レーダーに光る、多数の光点。

青梅「全周に目標多数!艦隊のど真ん中です!」

菊池「艦隊だと!?」

青梅「駆逐艦クラスが艦数六隻、陣形を組んでいます」

梅津『真珠湾の米艦隊かもしれん。確認しろ』


青梅「……返信なし。SIF、応答ありません」



20 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:06:53.98 ID:YfWZgPbGo

艦橋

青梅『新たな反応1!』

青梅『……目標接近!大型――正規空母クラス!』

青梅『本艦艦首!2500!』

角松「空母!?」

霧の中から徐々に姿を見せ始める不明艦。

梅津「……面舵一杯!」

艦橋員A「面舵いっぱぁい!」


梅津「私の目が、狂ってしまったのだろうか」


21 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:07:33.44 ID:YfWZgPbGo

尾栗「おいおい、ありゃ一体……」

柳「航海長、あ……あれは……」




柳「太平洋戦争中の空母『赤城』です……」




つづく


25 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/19(木) 22:57:44.20 ID:YfWZgPbGo
ではちょっとした補足を


>>3
CIC:戦闘指揮所ともいう。近代軍艦の中枢で、艦の戦闘はここで操作する。

ESM:電子戦装置。ジャミングとか逆探知などを行う。

>>4
ミサイル・シーカー波:ミサイルを誘導するために発されるレーダー誘導電波。

シースパロー:中距離対空ミサイルの一種。

VLS:ミサイルを垂直に発射する装置。『みらい』には前甲板と後部格納庫上に設置してある。

>>5
CIWS:シウスともいう。近接防衛火器のことで、対ミサイルの最終防衛ライン。レーダーと射撃式装置が母艦とは別に内蔵されている。
    「みらい」に搭載されてるのは20mmのファランクで、スターウォーズのR2D2にガトリングがくっ付いたような姿。
    かわいい。

AAWオート:対空戦(Anti-aircraft warfare)の事。


>>19
SIF:敵味方識別装置の事。

なんかミスありましたら指摘してください……。



30 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (東京都) :2012/07/22(日) 15:11:41.64 ID:LwJwN+aCo

CIWSのフォルムをかわいいと言う>>1は訓練されたミリオタ


31 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/22(日) 15:33:45.04 ID:UrGY9RGbo
R2D2みたいでほんと可愛い


32 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/22(日) 22:22:12.38 ID:7qSIvN8Ro
まさに俺得なスレ


34 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:12:07.08 ID:1hnYlR8io

角松「赤城……だと!?」

柳「左舷後方に駆逐艦……陽炎型の浜風と思われます!」

柳「さらにその前方に天津風……」

柳「これはどうみても、旧海軍連合艦隊の艦艇です!」

尾栗「どうしてこんなものがここに?」


青梅『後方の駆逐艦2、回頭します』

角松「艦長……」

梅津「状況がわかるまで、逃げの一手でよかろう」

角松「了解」


35 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:13:23.04 ID:1hnYlR8io

角松(相手はどうみても旧式のボイラー艦)

角松(こっちの加速にはついてこれない……なら)


角松「機関最大戦速!舵そのまま!

角松「追尾駆逐艦を一気に振り切るぞ!」

「了解!」

「機関最大戦速!」

キイイイイイイ!

機関音独特の高い音共に、追尾してきた駆逐艦2隻がみるみるうちに遠ざかった。



青梅『……アンノン艦隊、そのまま離れます。後方40kmへ』

角松「………」




36 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:13:53.79 ID:1hnYlR8io

ほどなくして、艦橋に各士官が集められた。

角松「真夏のオーロラ」

菊池「電子機器の異常」

尾栗「21世紀に現れた空母『赤城』……」

尾栗「間違いないな、柳一曹」

柳「はっ!見間違えではありません」


柳「しかし……」

尾栗「どうした?」


37 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:15:07.21 ID:1hnYlR8io

柳「先ほど遭遇した艦隊の配列ですが……」

柳「『赤城』にあのような行動歴はなかったはずです」

角松「というと?」

柳「駆逐艦を前面に展開。しかも空母を最後尾に位置していました」

柳「対潜警戒を考えていない、もしくは前方から敵が来るのをわかっているかのような配列」

柳「さらに、太平洋での代表的な行動といえば真珠湾ないしミッドウェー」

柳「それらにしては艦隊の配列が違いますし……」

柳「これは余りにも歴史的事実と矛盾しています」


38 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:15:38.70 ID:1hnYlR8io

状況がつかめない中、騒ぎ始める士官たち。

「となると、どっかの金持ちが再建でも?」

「バカいえ、そんなのニュースになるぜ」

「映画でも撮ってんじゃないのか?」

「だったら無線封鎖するか?こっちの無電を聞いた時に返してくるだろ」


そんななか、CICから青梅一曹の放送が届く。

青梅『艦橋CIC。砲雷長、準備が整いました』

すかさず艦内インカムで返事をする菊池。

菊池「了解」

菊池「……艦長、CICにお越し願いますか?」



39 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:16:17.53 ID:1hnYlR8io

CIC

菊池「できたか、青梅一曹」

青梅「はっ、正面モニターに出します」

出されたのは、みらい周辺のレーダー図。

角松「これがどうかしたのか?」

菊池「これはさっきまでレーダーがとらえた周辺の地形をレコードしたものだ」

菊池「……見えるか?北の方にかすかな島影がある」

角松「!?」



40 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:17:03.46 ID:1hnYlR8io

菊池「俺達が航行していたミッドウェー沖……」

菊池「その航路上に、この大陸は存在するはずがないんだ」

梅津「………」

青梅「次のレコードに切り替えます」

レーダーの画面が少し変化し始める。

角松「これは……」

青梅「……海域データ、大陸地形データほぼ一致」



青梅「ここは、南アフリカ大陸南端、南大西洋です!」



41 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:17:56.70 ID:1hnYlR8io

梅津「何てことだ……」

尾栗「嵐を抜けた先に喜望峰とは……」

尾栗「俺たちは平成のバルトロメウ=ディアスかっての」

尾栗「しかし、これからどうする?」

角松「……今さら針路を太平洋に向けたところで、残っている燃料では戻れまい」


菊池「仮に戻れたところで、果たして無事に入港できるものかな?」

角松「どういうことだ?」

菊池「時計を見ろ」

そう言って、菊池がCICのデジタル時計をさした。


42 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:19:10.84 ID:1hnYlR8io



『1944年6月5日』



角松「1944年……!?」

「そんな……」

尾栗「タイムスリップって奴か」

柳「ただのタイムスリップではないでしょう」

柳「赤城は1942年に沈没……1944年に赤城は存在しないはずです」


角松「となると、俺達は全く別の世界に来たのか」

菊池「ああ、我々と全く接点のない世界に」


尾栗「というか、ウチのデジタル時計は1900年代のカレンダーも内蔵してんのな……」

柳「航海長……」



43 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:19:46.16 ID:1hnYlR8io

一挙に騒々しくなるCIC。

「じゃあ、俺達はずっと戻れないってのか!?」

「永遠に、この世界を漂流するんだ……」


尾栗「……なぁ、元来た針路を戻るってのはどうだ?」

角松「どういうことだ?」

尾栗「この世界に来たのは、どうみてもあの嵐、オーロラのせいだ」

尾栗「あれにもう一度巻き込まれれば元来た時代に戻れるんじゃないか?」

角松「……たしかに一理あるな」



44 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:20:52.03 ID:1hnYlR8io


菊池「何の望みもない以上、それに賭ける以外にはないか……」

角松「艦長……」

梅津「そうだな」

梅津「可能性があるなら、それに賭けてみるのもいいかもしれん」


梅津「面舵一杯!針路2-7-0、西へ針路をとれ!」

角松「了解!」

尾栗「面舵いっぱぁい!針路2-7-0!」



※針路・方位〇-〇-〇:北を0度としてあらわす。たとえば1-8-0なら南となる。

  しかしジパングでは艦首を0度と見たシーンが多々ある。作者のミス?


45 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:21:41.77 ID:1hnYlR8io

食堂

隊員A「しかし、これからどうなるんだろうな」

隊員B「あの海域に戻るつっても、100パーセントってわけじゃないだろうし……」


炊飯員「炊飯長、1944年って……」

炊飯長「昭和19年の事だ」

炊飯員「そんな……俺達どうなるんです!?」

炊飯長「どうなるかわからんがよ、腹は減るからよ、飯はたくんだよ!」

炊飯長「チキンが焦げてんぞ、バカヤロー!」

炊飯員「は、はいっ!」



46 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:22:49.12 ID:1hnYlR8io

翌日

菊池「………」

青梅「レーダー探知!」

菊池「!」チャ

目を閉じて半分仮眠状態に入っていた菊池がインカムを手にする。

青梅「方位3-2-0、距離200km!」

青梅「艦影計7隻を確認」

菊池「詳細はわかるか?」

青梅「駆逐艦クラスが6、大型艦が1……」



47 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:23:27.07 ID:1hnYlR8io


菊池「……以前の艦列と同じだな」

青梅「……! 艦隊前方に、巨大な反射波!」

レーダーに現れたのは、空母を覆いそうなサイズの光点。

青梅「空母よりも大きい……なんだこれは?」

菊池「雲か?」

青梅「いえ、それにしてははっきりとした反射波です」

青梅「このままですと、5分後には艦隊と接触します」


48 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:24:08.19 ID:1hnYlR8io

青梅「……巨大光点、艦隊と接触しました!」

青梅「駆逐艦群の陣形乱れます。回避運動を取ってる模様です」

菊池「巨大光点が空母と重なっている……空中を飛翔しているのか?」


青梅「空母から機影10以上!迎撃機のようです!」

青梅「……迎撃機光点、次々に消失。撃墜されつつある模様」

菊池「飛翔する巨大物体でありながら、空対空能力が恐ろしく高い兵器……」

菊池(そんなもの、果たしてこの時代に存在していたか?)



49 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/22(日) 23:24:46.48 ID:1hnYlR8io

艦橋

梅津「本艦の進路と重なりそうか?」

菊池『このままいきますと、約30分後に接触します』

角松「回避することも、できますが……」

梅津「………」


梅津「状況確認のため、接近しよう」

梅津「針路3-2-0にとれ。対空、対潜の警戒を厳にせよ!」

角松「はっ!」


56 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/23(月) 04:14:41.14 ID:9+eLFnxDO
乙。
この世界では、みらいの技術を分析させない理由が其処まで無いんだよなぁ。
どうすんのかな


63 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:38:28.33 ID:tTjs4vZyo

数分前

欧州派遣艦隊の空母『赤城』
その甲板の上で、扶桑皇国海軍軍人の坂本美緒は、正体不明の敵『ネウロイ』の接近を察知していた。


坂本「敵襲!12時方向!距離4000!」

杉田「全艦に下命!対空戦闘用意!」

船員A「対空戦闘用意!」

杉田「付近にウィッチーズの部隊は!?」

樽宮「いません!ブリタニアの501を呼ぼうにも、この距離では到底……」

杉田「奴め……それを狙ってきたな」



64 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:39:24.32 ID:tTjs4vZyo

エイのような姿をした巨大なネウロイは悠々と空を飛び、艦隊へと接近。

艦隊右前方に位置していた駆逐艦『浦風』では、すでに12.7センチ主砲弾の装填作業が終了していた。

艦長「第一射!てーっ!」

「うちかたはじめーっ!」

ドオンッ!ドオッ!……ゴオオオン!

爆音とともに、数発の主砲弾が雲の向こうへと消えていく。
ただし目視し距測した射撃ではないので、どれだけの確率で当たるかどうかはわからない。

船員A「やったか!?」


ゴオオッ!ズバアアアッ!

「うわああああっ!」

その瞬間、ネウロイの発したビームが浦風を直撃した。


65 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:40:51.30 ID:tTjs4vZyo

「浦風被弾!応答ありません!」

「艦橋後部より出火!大破炎上中!」

杉田「……針路を風上に!戦闘機を全機発艦させろ」

杉田「奴に窮鼠猫を噛むという意味を教えてやる!」

樽宮「了解!」

樽宮「戦闘機発艦準備急げ!」

樽宮「駆逐艦群は発艦支援に全力をあげよ!」



66 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:41:44.01 ID:tTjs4vZyo

赤城のエレベーターから続々と上がってくる九九式艦上戦闘機。

「対空砲火やめ!」

「回避運動中止!」

「甲板作業員退避せよ!」


「発艦準備完了!一番機発艦せよ!」


ずらずら甲板にならぶ戦闘機の先頭には、ストライカーユニットを付けた坂本の姿があった。

坂本「坂本美緒、発進する!」

グオオオオオオン……!


67 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:42:24.31 ID:tTjs4vZyo

みらい CIC

菊池「発艦から五分足らずにして……」

青梅「その半数が落ちています」

青梅「……?」

青梅「一機だけ、凄まじい運動をしている機体がいますね」

菊池「光点が小さいな。まるでまとわりつく鳥のようだ」


青梅「……! 駆逐艦の光点1、消失!」

菊池「これで2隻目だ……」



68 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:43:06.79 ID:tTjs4vZyo

そして一つの光点がスピードを上げ南下し始めた。

青梅「……小光点、本艦へ向け急速接近!」

菊池「なに!?」

青梅「その後ろを巨大光点が追尾中……」

菊池「艦隊から切り離すつもりか」

菊池「本艦との遭遇時刻は?」

青梅「現針路と速度が変わらなければ、約5分後に」


69 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:44:24.96 ID:tTjs4vZyo

艦橋

角松「見張り員、何か見えるか?」

尾栗「今のところは……」

備え付けの双眼鏡で監視していた柳一曹からの報告がきた。

柳「……航海長!艦前方に飛行物体!距離1000!」

柳「急速接近!」

すかさず手持ちの双眼鏡で見る尾栗。

尾栗「っ!」サッ!



70 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:45:29.74 ID:tTjs4vZyo

徐々に近づくエンジン音と、得体の知れない奇妙な音。

青梅『本艦上空通過……今!』

グオオオオオオオン!

尾栗「うおっ!」

柳「!?」

一瞬にして艦の上を通過した物体を見て、二人を含む見張り員全員が絶句していた。



尾栗「副長、女の子です!女の子が空を飛んでいます!」

角松「!?」



71 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:47:11.81 ID:tTjs4vZyo

角松「ふざけたことをぬかすな!正確に報告しろ!」

柳「旧海軍の……第二種軍装を着用し、眼帯した少女が一人……飛行していました」

尾栗「こっちは全員見たんだ」

尾栗「……旋回してまた戻って行った!」

角松「どうなっている……」

菊池『艦橋CIC、巨大物体も接近します!』

菊池『あと30秒で視認圏内に!』


72 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:49:14.64 ID:tTjs4vZyo

オオオオオ……

尾栗「おい、なんだありゃァ……」

柳「艦左前方20°!未確認巨大物体を確認!」

尾栗「……この大きさ、まるでSF映画の空中戦艦だな」

柳「形状から見ると、大型のステルス機にも見えます……」

尾栗「もっとも、レーダーにバッチリ映ってるようじゃステルスもくそもないが」


その時、ネウロイの巨体の一部が光った。


柳「!」

尾栗「――急速転舵!面舵一杯!」



73 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:52:06.36 ID:tTjs4vZyo

艦橋員A「面舵一杯!」

キュアアアッ!―――ドウッ!

舵を切った瞬間、みらいが元いた位置に凄まじい光線が着弾し、水柱をあげた。

見張り員A「敵味方不明弾、左後方50mに着弾!」

尾栗「くっそ!問答無用で攻撃か!」

柳「砲弾や爆弾にしては早すぎます!大戦後期のロケット弾だとしても……」

尾栗「ビームとか光線とか、ますますSFモンじゃねえか……」

尾栗「CIC艦橋!菊池、今のレーダーに映ったか!?」

菊池『いや、突然衝撃が襲っただけでわからなかった』

尾栗「となると、俺達艦橋員の目が便りなわけだな」



74 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:52:58.22 ID:tTjs4vZyo

CIC

青梅「大光点小光点、ともに本艦から遠ざかります」

青梅「針路3-4-2。艦隊へ戻る方向です」

菊池(あの物体は有無を言わずこちらへ攻撃してきた)

菊池(これは、敵とみなすべきなのか)

菊池(それとも干渉せず、遠ざかるべきなのか……)

レーダーの動く光点を見ながら、菊池はインカムを手に取った。

菊池「………」カチ


菊池「艦長、先ほどのアンノン物体の撃墜を進言します」


75 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:54:27.77 ID:tTjs4vZyo

艦橋

梅津「……砲雷長、その判断は早急すぎではないか?」

『昼行燈』のあだ名を持つ梅津一佐らしい解答。

菊池『しかし、こちらへの意図的な攻撃を仕掛けました。これは明らかな敵対行為です』

梅津「………」

尾栗「自分も賛成です!」

尾栗「艦と乗員を守るためにその武力を行使するのは、正当な自衛権です!」

梅津「……角松、どうか」

角松「はっ」

角松「尾栗の言うとおり、これは正当な自衛権の行使かと」


梅津「総員、対空戦闘用意!」


76 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:55:56.79 ID:tTjs4vZyo


角松「対空戦闘用意!」

梅津「機関全速!針路3-4-0!」

尾栗「了解!機関全速!針路3-4-0!」

梅津「航海長、敵の攻撃に対する回避運動は見張り員である航海科の判断に任せる」

尾栗「了解しました!」

梅津「角松、砲雷長と共に戦闘指揮を頼む」

角松「了解」


77 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:57:18.67 ID:tTjs4vZyo

CIC

角松『CIC艦橋、目標の位置は?』

菊池「艦から遠ざかったとはいえ、いまだスタンダードの射程圏内だ」

青梅「圏外脱出にはまだまだかかりますね」

菊池「大光点――目標αに対する対空ミサイルの使用を具申します」

角松『許可する。お前に任せよう』

菊池「了解」


菊池「前甲板VLS、スタンダードミサイル発射用意!」

※スタンダード:長距離対空ミサイル。シースパローよりも射程が長い。「みらい」搭載型はSM-2。
          北朝鮮のミサイル発射時によく言われた「SM-3」というのは、これの発展版。



78 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/07/30(月) 21:58:30.66 ID:tTjs4vZyo

菊池「目標αをマーク!」

CIC員A「射撃管制オールグリーン!」

CIC員B「前甲板VLS,スタンダード発射準備よし!」

CIC員C「砲雷長……」


菊池「………」

菊池「スタンダードミサイル、発射!!」


ガコン!ズバアアアアッ!

主砲後ろに設置されたVLSが開き、そこから一基のスタンダード対空ミサイルが放たれた。


80 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/30(月) 22:02:23.74 ID:3OcJxVjSO

沈黙の艦隊から、かわぐちワールドに入った俺が支援!


92 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:14:49.99 ID:ZUtWtNJeo

赤城上空

ガガガガガガ!

美緒の九九式機関銃がネウロイに向けて火を噴くが、大した効果は見られない。

坂本「くっ!なかなか硬い……」

サイトから視線を外して距離を取ったその瞬間、見慣れないものが目に映った。


ゴオオオオッ――――!

坂本「――あれは!?」



93 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:15:41.01 ID:ZUtWtNJeo

赤城 艦橋

艦橋員A「艦長!後方上空より何かが高速で接近してきます!」

杉田「なにっ!?」

樽宮「ウィッチの援軍でしょうか?」

杉田「だとしたらありがたいが……」

樽宮「最悪、ネウロイの増援ということも……」

杉田「考えたくはないが、ありえない事もない」



94 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:17:19.82 ID:ZUtWtNJeo

赤城の上空を、一発のスタンダードが駆け抜けた。
その正体を知らない乗組員はそろって目を見開いていた。

艦橋員B「何だありゃ!?」

艦橋員C「……! 真っ直ぐネウロイに突っ込む!」

杉田「―――!?」

ネウロイの黒い巨体に、白い矢が突き刺さる。

ドオオオン!


ネウロイ「キャアアアアアア!」

甲高い音と共に、その巨体の一部が崩れていく。


95 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:18:30.41 ID:ZUtWtNJeo

船員A「おおっ!」

船員B「やったか!?」


坂本「いいや!まだだ!」

落下し始めたと思ったネウロイであったが、すぐに態勢を立て直す。
被弾した個所も、徐々に回復してるようにも見えた。

樽宮「今のは一体……?」

杉田「わからん。わからんが……」

杉田「今は目の前の敵に集中するのだ!」

樽宮「はっ!」



96 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:19:25.48 ID:ZUtWtNJeo

みらい CIC

青梅「スタンダードの命中を確認」

レーダーからスタンダードの光点が消える。

菊池「……なぜだ」

だがしかし、いくら見てもネウロイの光点は依然として消えない。
速度、行動ともに変化も見られない。

菊池「いくらあれだけの巨体とはいえ、スタンダードを受ければそれなりのダメージがあるはずだ」

青梅「装甲が強固だったのでは?」

菊池「あれだけの巨体を浮かせているうえに、重装甲」

菊池「この時代にそんな技術があったとは思えん」



97 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:20:10.18 ID:ZUtWtNJeo

青梅「ですが、実際に今だ飛行中です」

菊池「こいつをどうやって落とすか……」

CIC員A「さらにミサイルを撃ち込むというのは?」

菊池「無駄にミサイルは使えん」

CIC員A「砲雷長……?」

CIC員B「イージス艦の主兵装はミサイルです。それを使わないというのは……」

菊池「だからこそ、だ」

菊池「使用をやめるわけではない、だが使うならば慎重に判断せねばならん」



98 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:21:32.43 ID:ZUtWtNJeo

菊池「我々は今、理解しがたい状況下にある」

菊池「帝国海軍の艦船が存在する世界、現在位置は大西洋」

菊池「さらに未知の飛行物体に空飛ぶ人間、だ……」

菊池「どれだけいるのか、帰り方もわからない」

菊池「それらから身を守るための力を易々と使い、消耗することは生存率の低下につながる」

青梅「先のことを考えて、ですか」


99 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:22:55.15 ID:ZUtWtNJeo

菊池「補給があるのならまだしも、効果があるかどうかわからない攻撃を続けたところでそれはただの無駄弾だ」

青梅「確かにミサイル系は弾数が限られてます」

菊池「……青梅、どうして彼らは駆逐艦を選んだ?」

青梅「理由、ですか?」

菊池「さらに艦橋からの報告では、目標の相手をしていた空飛ぶ人間はごく一般的な機関銃だそうだ」

青梅「それが?」


菊池「……破壊は可能なのだ。たとえ小火器であっても」


100 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:23:46.95 ID:ZUtWtNJeo

青梅「ですが現にスタンダードの直撃を受けても怯んでません」

青梅「小銃よりも威力が高いのは目に見えてます」

菊池(何かがあるはずだ)

菊池(敵の装甲は強力。にもかかわらず小銃の使用……)

菊池(連続的な攻撃か?なら……)

菊池「射程圏内に入り次第、後部VLSより短SAMを2基照準!」

CIC員A「了解!」


※短SAM:シースパローのこと。


101 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:24:44.75 ID:ZUtWtNJeo

青梅「……砲雷長、待ってください!」

青梅「目標αへ小光点二つが接近!戦闘状態に入ります!」

菊池「……!」

菊池(もはや光点同士が重なり合っている状態……)

菊池(これほど接近していると、ISFすら持たない状況では小光点の方を撃ち落としかねない)

菊池(どうすれば……)



CIC員A「あと90秒で主砲射程圏内に入ります!」

菊池「……これだ!」



102 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:25:14.10 ID:ZUtWtNJeo

艦橋

尾栗「……見えた!」

尾栗「水平線上に多数の黒煙視認!」

柳「前方に大型艦……正規空母クラス!」

尾栗「いるな、あのデカい奴も」

柳「その大きさだけに、ひときわ目立ってますね」

角松「艦橋員、敵の攻撃に注意せよ!」

尾栗「了解」



103 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:26:10.12 ID:ZUtWtNJeo

赤城上空

坂本「宮藤、これはお前が使え!」ポイ!

美緒が自分の持っていた九九式を芳佳に渡す。

坂本「私が陽動をし、敵の攻撃を逸らす」

坂本「その間にコアを撃ち抜け!」

芳佳「は……はい!」

坂本「いくぞ!」

芳佳「はいっ!」


104 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:26:49.87 ID:ZUtWtNJeo

ネウロイの周りをぐるぐる回りながら、攻撃をそらす美緒。

グオオオオオオ……

ネウロイ「キャアアアア!」バシュシュシュ!

だがネウロイは全方位攻撃に、その陽動はあまり効かないようだった。

芳佳「わっ!」バアッ!

とっさに展開したシールドでギリギリのところを防いだ。


芳佳(こ……これじゃ、まともに撃てない……)



105 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:27:57.73 ID:ZUtWtNJeo

CIC

梅津『左砲戦、用意!』

菊池「127mm砲、射撃準備!」

CIC員A「射撃管制装置、データリンク・オールグリーン!」

梅津『左対空戦闘、CIC指示の目標』

梅津『主砲、うちーかたはじめ』

菊池「127mm砲、うちーかたはじめ」

ドンッ!

その指示のもと、艦前方に設置されていた127mmの速射砲が火を噴いた。



106 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:29:22.87 ID:ZUtWtNJeo

赤城

艦橋員A「後方より接近する不明艦有!」

杉田「周辺国の増援か!?」

艦橋員A「いえ……見たことない艦影です!」

樽宮「新型艦でしょうか?」

艦橋員B「……不明艦、発砲!」


ドンッ!ドンッ!

芳佳「坂本さん!あれ!」

坂本「!?」


107 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:29:59.59 ID:ZUtWtNJeo

「みらい」の主砲弾が見事に命中する。

ゴウッ―――ドオオン!ドオオン!ドオオン!

この時代に比べて一発あたりの威力は低いものの、その正確さと連射で確実なダメージを与えた。

坂本(砲撃!?)

坂本(あの艦が、あの距離から撃ったのか?)

坂本(そんな正確な―――いや、今はそれよりも)

坂本「コアが見えた!今だ、宮藤!」

ガガガガガガガ!


バキャッ!



ネウロイ「ギャアアアアッ!」

バラバラバラ……




108 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:30:34.48 ID:ZUtWtNJeo

みらい 艦橋

尾栗「目標α、空中で四散!」

尾栗「主砲弾が致命傷ではなく、その後の応射が効いたようだな」

双眼鏡に、雪のようにふる破片が映る。

柳「すっげー!」


菊池『艦橋CIC、目標αの光点の消失を確認』

梅津「よし、対空戦闘用具収め―――」

青梅『待ってください!小光点1南下、本艦へ接近中!』

梅津「!」



109 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/11(土) 19:31:25.36 ID:ZUtWtNJeo

グオオオオオ……

坂本「……確かに見たことがない艦影だ」

坂本「側面に艦名はなく、『182』の数字」

坂本「上部にはアンテナと思われる部分が多数、兵装は主砲一門のみ……」

坂本「味方、なのか?」


角松「どうしますか?」

梅津「向こうは単機、敵意はないようだが……」

梅津「……航海長、発光信号を」

尾栗「はっ!」


112 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (チベット自治区) :2012/08/11(土) 19:42:57.16 ID:UcuH+kzvo


航空機載せずにウィッチ搭載で母艦化かジパングのように単艦行動か・・・
さてさて


124 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:27:25.12 ID:ViPlMs4Qo

尾栗「探照灯、発光信号用意!」

艦橋員A「発光信号……ですか?」

柳「時代が違うといえども、モールスで打てば通じるはずです」

柳「内容はどうしますか?」

尾栗「そうだな……」カチャ

尾栗が探照灯を構え、発光信号の態勢に入った。

チカチカ……


「こちら海上自衛隊護衛艦『みらい』」

「当方に敵意なし」


125 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:28:24.20 ID:ViPlMs4Qo

チカチカ……

坂本「発光信号?」

坂本「カイジョウ……ジエイタイ……?」

坂本「聞いたことがない隊だな」

坂本「………」

坂本「……攻撃の意志がないと言っている以上、大丈夫そうだが」

探照灯のあった「みらい」左舷側へ迂回しながら接近する美緒。


グオオオオ……

角松「銃器を収めています。向こうにも敵意はないようです」

梅津「よし、後部格納庫に誘導せよ」

尾栗「両舷減速!航空機着艦に備え!」

梅津「副長、同行してくれ」

角松「はっ!」



126 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:29:05.21 ID:ViPlMs4Qo

後部ヘリ格納庫

坂本「見るところ航空機格納庫のような気がするが……」

坂本「十分な長さの滑走路もなければ、カタパルトすらないが……あのシャッターの奥に収納しているのか?」

坂本「なんだろう、この艦は……」

ガチャ

坂本「!?」

坂本「この艦の艦長か?」

梅津「海上自衛隊護衛艦『みらい』艦長一等海佐、梅津だ」

角松「同じく副長二等海佐、角松です」

梅津「ようこそわが『みらい』へ」



127 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:29:42.30 ID:ViPlMs4Qo

坂本(一等海佐……?まぁ軍艦の艦長ということは大佐ないし中佐クラス……上官だろう)

坂本「連合軍第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』所属、扶桑皇国海軍少佐」

坂本「坂本美緒です」


梅津「連合軍……?」

梅津「この時代、日本はアメリカ側についているのだろうか?」


その質問に対し、美緒は怪訝な顔で聞き返した。

坂本「ニッポン、アメリカ……とは?」

角松「!?」



128 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:30:37.23 ID:ViPlMs4Qo

梅津「なんてことだ……」

角松(そういえばこの少佐、さっき『フソウ皇国』と……)

梅津「この世界に、日本、アメリカ、両国は存在しない……のかな?」

坂本「私は聞いたことない国です」

梅津「……これでまた、一つ追い詰められたな」

角松「燃料も食料も、この漂流状態ではあとどれだけもつか……」


坂本(……漂流?これほどの軍艦がか?)

坂本「なにか、事情があるようですね」

坂本「見るところあなた方も扶桑の方だと思ったのですが」


129 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:31:33.08 ID:ViPlMs4Qo

梅津「……言っても信じがたいかもしれないが」



梅津「我々はこの時代ではない、六十年後の未来からやってきたのだ」

坂本「六十……年……?」

坂本「あなた方はタイムトラベルをしてきたとでもいうのか!?」

角松「理解しがたいであろうが、そういうことになる」

坂本「………」

あり得ないであろう事実を聴いた美緒。
それからしばらくの沈黙の間、目を瞑って考えをまとめていた。


130 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:33:12.92 ID:ViPlMs4Qo

坂本(タイムスリップとは、またとんだ話だ)

坂本(しかしあの主砲弾の命中精度、ロケット弾のようなモノ)

坂本(そしてこの艦……今の時代のものでないことは明白だ)

坂本(……信じてみるか)


坂本「……話し込むようでしたら、一度陸の方でどうでしょう?」

角松「我々を受け入れてくれるところが、あると?」

坂本「ここから先、ブリタニアという地に我々の基地があります」

坂本「どこまで、とは明確に申し上げられませんが、多少のお力にはなれるでしょう」


131 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:35:04.55 ID:ViPlMs4Qo

坂本「代わりと言ってはなんですが、基地に着くまで本艦隊の護衛を願いたい」

坂本「ネウロイ―――あの化け物が再び来るとも限らないので」

梅津「我々でよければ、同行しよう」

坂本「感謝します」

坂本「では私は本隊に報告、伝達をしに戻りますので―――」

そう言って戻ろうとした時だった。


坂本(しまった!この距離では離陸ができない!)

坂本(着陸はギリギリで減速させることで何とかなったとはいえ、カタパルトがない以上は……)


132 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:36:15.91 ID:ViPlMs4Qo

坂本「この艦に射出機はないのでしょうか?」

角松「本艦には装備されていないが……」

坂本「むぅ、どうしたものか……」

梅津「何か不都合でもあったかな?」

坂本「実は、ストライカーユニットが離陸するにはこの甲板では距離が足らないので」

角松「ストライカーユニットというと……」

坂本「これです。魔法で動かす飛行装置といったところでしょうか」

と、美緒が一組のストライカーユニットを示す。
先ほどまで履いていて、甲板に着地するときに脱いだものだ。



133 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:36:52.24 ID:ViPlMs4Qo

角松(エンジンをつけられそうなスペースもない……)

角松(ましてやこれで空を飛ぶなど……やはりここは違う世界か)

梅津「ふむ……」

梅津「ならば、貴官を本艦の艦載機で届けようではないか」

坂本「よろしいのですか?」

梅津「客人は丁重にもてなさなければな」

梅津「副長、航空科にシーホーク発艦準備を通達」

角松「了解しました」


134 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:37:44.08 ID:ViPlMs4Qo

『シーホーク発艦用意!』

後部格納庫のシャッターが開かれ、中から艦載機のSH-60Jシーホークが姿を現す。
折りたたまれていたメインローターが広げられ、飛行する準備が進められた。

坂本「これは……」

呆然とする美緒をよそに、ローターの回転が始まった。

キュンキュンキュンキュン……

柿崎「発艦準備が完了しました! 搭乗員を載せてください!」

副操縦士の柿崎一曹がドアを開いて受け入れの準備をする。

梅津「『赤城』の艦長に、よろしく伝えてもらいたい」


※SH-60J シーホーク:対潜哨戒ヘリコプター。搭乗員は三名~五名まで。
              http://ja.wikipedia.org/wiki/SH-60J_%28%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F%29




135 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:39:07.61 ID:ViPlMs4Qo

赤城 艦橋

ネウロイが去り、艦隊は速度を落としてはいるもののゆっくりとブリタニア方面へ航行していた。

杉田「坂本少佐が不明艦の偵察に行って三十分……」

樽宮「一定の距離を保ちながら追尾してますが、攻撃する素振りも見せませんね」


その時、一人の伝令が艦橋へやってきた。

船員「不明艦より入電です!」

杉田「何っ!?」

船員「読み上げます。宛 遣欧艦隊空母『赤城』」

船員「本艦は貴艦隊と敵対するものでなく、攻撃する意思もないことをここに宣言する」

船員「またこれより、貴艦の乗組員である坂本美緒少佐を本艦艦載機にて輸送する。受け入れられたし」

船員「発 海上自衛隊護衛艦『みらい』艦長 梅津三郎一佐」



136 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:41:25.36 ID:ViPlMs4Qo

その報告を受けながら、艦長らが双眼鏡を使って後方に小さく見える「みらい」を眺めていた。

艦橋員A「……! 不明艦より艦載機発艦!」

艦橋員B「なんだあれは……見たこともない機影です」


バババババババババ……

美緒を乗せたシーホークが徐々に近づいてくる。
甲板に出ていた、あるいは艦橋付近から外を見ていた乗組員たちは、見たこともない航空機にくぎ付けだった。

樽宮「あの航空機は一体……」

杉田「………」

杉田艦長の双眼鏡に、シーホークの右舷ドアから若干体を出した美緒の姿が映る。
そして機内から拡声器でこう告げた。

坂本『あ~、こちらは坂本美緒少佐だ。これより当機はこれより赤城に着艦する!』


樽宮「どうしますか?」

杉田「受け入れないわけにはいかないだろう。甲板員に伝達せよ!」


137 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:43:23.36 ID:ViPlMs4Qo

シーホーク機内

坂本(しかし、このヘリコプターという航空機は凄まじいな……)

未だかつて体験したことのない乗り物を味わう美緒。

同じく操縦士の林原一曹も、経験したことのない場所への着艦行動に緊張していた。

林原「速度、調節完了」

林原「オートローテーションに入ります」

坂本「空中線に注意だ」

林原「了解」

キュンキュンキュン……

徐々に車輪と甲板の差が小さくなっていく。


林原「着艦!」

こうして浮いていたシーホークの機体は完全に赤城へと着地したのであった。


138 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/08/21(火) 19:44:39.69 ID:ViPlMs4Qo

みらい 艦橋

林原『シーホークより「みらい」へ。坂本少佐の「赤城」移乗に成功』

林原『これより離陸、帰投します』

角松「こちら「みらい」、了解」

そこに通信士が入ってくる。

通信士「空母「赤城」より入電!」

艦橋員A「これからの艦隊行動についての通信です!」


梅津「さて、一仕事だな」

梅津「面舵20度!針路3-4-0へ!」

梅津「航海長、艦隊の後方40kmに。これより艦隊の護衛を行う」

尾栗「了解しました!」



それから数日が経ち、扶桑海軍の欧州派遣艦隊並びに「みらい」はブリタニアへと到着する。

航行中は極めて穏やかな天気が続き、巨大な低気圧に会うことも、オーロラを見ることもなかった……。



141 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 20:09:52.24 ID:ueVUk6fDO
乙、ストライカーは一応VTOL可能だぞ、二期3話とかでやってたしな。

ただ垂直離陸は魔法力の消耗が激しいから緊急時のみだが。



142 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (鳥取県) :2012/08/21(火) 20:19:29.39 ID:EdVMn14j0
SW世界はオートジャイロ無いのかな?


143 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (長屋) :2012/08/22(水) 00:59:03.57 ID:ovLv8rqyo
ストライカーユニットでオートジャイロは無理臭くないか?


144 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/22(水) 01:00:48.45 ID:p2oPJNZuo
乙!

オートジャイロは陸軍が保有してたけど海軍じゃマイナーだったんじゃ?
カ号観測機も配備は1941年以降と記憶してたんだが


163 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:40:54.73 ID:c8iD112Po

イギリス海峡 とある無人島

みらいの甲板にて、同期三人が骨を休めていた。


尾栗「よくこんな都合のいい場所があったな」

尾栗「船の往来も少なく、航空機もこないと来た」

角松「ああ、隠れるには絶好の場所だ」

菊池「しかし、坂本少佐が報告、説得するためにここで待機して三日目」

菊池「そろそろ反応があってもいいはずだが……」

尾栗「一杯喰わされたんじゃねぇの?」



164 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:42:14.13 ID:c8iD112Po

菊池「もしそうなら、事態は深刻だ」

菊池「結局元来た針路を戻っても現代に帰ることはできなかった……」

菊池「こんな世界に放り込まれ、精神の状態が限界に近い隊員もいる」

菊池「仮にこのまま一人旅という状態になれば……」

だが、その菊池の予想を打ち消すように扉を開く音がその先を遮った。


ガチャ

梅津「おお、角松。二人もここにいたか」

角松「どうしましたか、艦長」

梅津「坂本少佐……彼女の所属する501統合航空団から連絡がきた」

尾栗「やっとか」



165 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:44:10.01 ID:c8iD112Po

梅津「本日14:00より、501の基地での補給の許可が下りた」

梅津「またそれに先駆け、『みらい』入渠前に双方の幹部同士で会談を行いたいとのことだ」

菊池「それについてはどうするおつもりで?」

梅津「うむ。わたしと角松の二人で行こうと思う」

角松「分かりました」

梅津「航空科には私から伝達しておく」

梅津「航海長と砲雷長、入渠するまでの船の指揮を頼んだぞ」

尾栗「了解しました」

菊池「了解」

敬礼を終えた後、梅津は艦内へと入って行った。



166 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:45:07.87 ID:c8iD112Po

ウィッチーズ基地

いい匂いの漂う食堂では、数人のウィッチーズが食事の用意をしていた。

ゲルト「そういえば、今日は扶桑から軍人が来るそうだな」

エーリカ「ん?宮藤なら一昨日くらいに来たけど?」

ゲルト「あの新人ではない。何でも坂本少佐が出会った艦の乗組員らしいが……」

シャーリー「なんだそりゃ」

ゲルト「昨日から少佐とミーナが話し込んでるのを聞いてな」

芳佳「私、その艦見ました!」

芳佳「遠くから主砲で何回も命中させて……」

芳佳「それとなんか見たこともない物も飛ばしてました!」

リーネ「なんだろう……?」



167 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:46:11.61 ID:c8iD112Po

そんな風にそれぞれが話していると、ミーナ中佐が部屋へと入ってくる。
とはいってもその場の雰囲気はあまり変わらない。

ミーナ「あら、まだ食べてないの?」

ペリーヌ「皆さんがそろうのをお待ちしていたのですわ」

ミーナ「あら、美緒と私は用事があるから先に食べてていい、といってたはずだけど……」

シャーリー「中佐、まだルッキーニが来てない」

ゲルト「全く……食事に遅刻するとは!」

ミーナ「あらあらまぁまぁ」


サーニャ「はぅ……」

エイラ「サーニャ、だいじょうぶカ?」



168 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:47:43.04 ID:c8iD112Po

ドタバタドタバタ

外の廊下からなにやら騒がしい音が聞こえる。
バァン!と扉を勢いよく開けるルッキーニ。

ルッキーニ「みんなみんな! 外!外!」

ゲルト「フランチェスカ少尉! 静かに!」

シャーリー「落ち着けルッキーニ。どうしたどうした」

ルッキーニ「シャーリー!見たこともないヒコーキが飛んでる!」

シャーリー「うん?」

ゲルト「軍用機か?」

ルッキーニ「わかんなーい!」

ババババババ…

ルッキーニ「ほらきた!」



169 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:48:48.06 ID:c8iD112Po

気になったのか、ウィッチたちが続々窓の外を覗く。
そこへシーホークが着陸し、その隣に美緒が降り立つ。

ババババババ……

シャーリー「おお、あれオートジャイロじゃん!」

ルッキーニ「なにそれ?」

シャーリー「短い滑走路でも離陸できるヒコーキだ」

シャーリー「たしかカールスラントで開発中って言ってなかったっけ?」

エーリカ(そういえばウルスラがいってたような……)


サーニャ「エイラ……この音なに?」

エイラ「ああ、サーニャが起きちゃったじゃナイカ」


170 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:50:18.14 ID:c8iD112Po

基地の外

彼女たちが見ていた窓の外。
そこではちょうど、林原一曹が着陸作業を終えて、角松が機のドアを開けているところだった。

梅津「どこかでみたことあると思えば……」

角松「世界遺産のモン・サン・ミシェルによく似てます……」

すると正面脇にあったドアが開き、ミーナが出てくる。

ミーナ「美緒、その方たちが?」

坂本「ああ。そうだ」


ミーナ「ストライクウィッチーズ隊長、カールスラント空軍中佐 ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケです」

梅津「日本国海上自衛隊海等一佐 梅津だ」

角松「同じく海等二佐 角松です」

ミーナ「それでは私の部屋までお願いします」


171 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:53:38.00 ID:c8iD112Po

ミーナの部屋

坂本少佐同席のもと、ミーナ中佐と「みらい」幹部による話し合いが行われていた。

ミーナ「貴艦の活躍により、欧州派遣艦隊が到着できました。感謝します」


ミーナ「美緒――坂本少佐から受けた報告では、いろいろ事情があるとの事ですが……」

梅津「誠にすまないが、いろいろ確認したいことがあるのだが」

ミーナ「なんでしょう?」

梅津「我々の祖国が存在しないこの世界」

梅津「この時代は、一体どんな時代なのだろうか?」

ミーナ「……わかりました。ご説明致します」


172 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:54:40.79 ID:c8iD112Po

話を始めるミーナ。

この世界の事、ネウロイの事、ウィッチの事……。

梅津「怪異――ネウロイ……」

ミーナ「それに対抗するための、ストライクウィッチーズです」

梅津「我々は全く違う世界に来たというわけだな」

角松「………」

ミーナ「それはどういう……」

坂本「……信じられないかもしれないが」


坂本「彼らは、未来……それも異世界の未来から来た住人だ」



173 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:56:47.64 ID:c8iD112Po




みらい CIC

多数のモニターに囲まれたCICで、菊池は順調に予定を消化していた。

菊池「異常はないか?」

青梅の眼前に映るレーダーには、イギリスとヨーロッパの大陸以外の反応はない。

青梅「対空、対水上レーダー、ともに異常ありません」

菊池「この調子で行けば、一時間後には着くな」

青梅「ええ」

菊池「燃料も、ギリギリというわけでもないが心許なくなってきている」

青梅「発電量が規制されてしまえば、さらに厳しくなりますね」

菊池「無事に補給を受けられるように、祈るだけ……」


174 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 20:59:20.13 ID:c8iD112Po

再び ミーナの部屋

こちらの部屋では、引き続き会談が行われていた。

ミーナ「……以上が、今回行うことのできる当方の補給です」

梅津「真水、生鮮食料、燃料……かたじけない」

ミーナ「あと、燃料の補給についてですが……」

坂本「あなた方の燃料は軽油だとのことだったな」

角松「ええ」

ミーナ「この時代は基本重油……艦へ補給する程の軽油はここに備蓄しておりませんでしたので」

ミーナ「申し訳ないのですが、現在、燃料については十分といえる量を補給はありません」

梅津「む……それは仕方ないか……」


175 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 21:02:07.26 ID:c8iD112Po

坂本「それで、あなた方はこれからどうするつもりで?」

梅津「どう、とは?」

坂本「あなた方の目的は知らないが、これからどうしていくのかと思いまして……」

角松「我々は、自分たちの意志でこの時代に来たのではありません」

坂本「……! なら……」

ミーナ「もしかして、帰り方も……」

角松「ずっと彷徨っているのです。目的もわからずに……」

坂本(それであの時『漂流』と……)



176 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 21:04:22.88 ID:c8iD112Po

坂本(………)


坂本「……なぁミーナ、「みらい」と協力するというのはどうだ?」

その途方もない発言に、ミーナが目を丸くした。

ミーナ「美緒!?あなた何を言いだすの?」

坂本「ウィッチと違うとはいえ、科学技術に関してはこの時代を大きく逸脱している」

坂本「現に、先の戦闘ではネウロイをあと一歩のところまで追い詰めた」

坂本「対ネウロイ戦闘に対して、これは大きな戦力になると思わないか?」

坂本「そしてその見返りに、我々は補給物資を、帰還の方法に関する情報を提供する」

角松「………」



177 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 21:06:05.06 ID:c8iD112Po

ミーナ「たしかに、双方ともに有利な条件ではあるけれども……」

ミーナ「上の許可もなくそんなことは……」

坂本「ミーナなら説得できるさ」

坂本「戦力は多いに越したことはないだろう?」

ミーナ「確かにそうだけれども……」

坂本「さて、どうだろう?

坂本「大……いや、梅津一佐殿」

角松「艦長……」

しばらく間をおいて、梅津は口を開けようとした




178 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/01(土) 21:07:27.25 ID:c8iD112Po

その時だった。
廊下を急いでかける音がした。

ダッダッダッダ! バッ!

「失礼します!」

大急ぎで入ってきたのは、基地の衛兵を伴った柿崎一曹。

梅津「何事か!?」

柿崎「11:45、「みらい」より入電!」



柿崎「欧州大陸より、本島に向けて侵攻する未確認物体を確認したとの事!」

角松「!!」

坂本「……ネウロイだ!」



187 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (沖縄県) :2012/09/01(土) 22:12:20.76 ID:8Vk/y5D4o

一期の基地のモデルはイギリスのモン・サン=ミシェルこと、セント・マイケルズ・マウントじゃねえかなーと


192 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (長崎県) :2012/09/03(月) 15:40:48.62 ID:QLnytMhco
おもしろい
ジパングでは歴史介入すべきか否かという大きな問題があったけど
異世界であるこれでは角松たちはどんな選択をするんだろうな


219 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:12:16.41 ID:bcxmDIEao

数分前 みらい CIC

順調に航行していると思われた「みらい」。
が、CICの青梅一曹は欧州大陸に一つの妙な光点が移動しているのを見つけた。

青梅「砲雷長、レーダーに光点が」

菊池「ん?」

レーダーモニターに目を移す菊池。
たしかにそこには、海岸線付近をを移動する何かの機影が。

菊池「およそ北緯51度0分 東経2度20分のあたりか」

菊池「時々反射波が途切れるのによく見つけたな」

青梅「ええ。ヘンな反射波ですし、速度も早いですから」

菊池「航空機ではないな」

菊池「小型ではないから、まず飛行少女でもないだろう」


220 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:13:02.25 ID:bcxmDIEao

青梅「となると、これもネウロイという奴でしょうか?」

菊池「かもな」

菊池「目標の針路は?」

青梅「現状のままですと2-5-0といったところです」

菊池「……! シーホークの現在位置へ向かっている!」

青梅「やはり……」

青梅「攻撃しますか?十分にスタンダードの射程圏内ですよ?」

菊池「待て。まずは状況を報告だ」

菊池「シーホークを通して会談中の艦長に伝えろ」

青梅「アイサー!」



221 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:14:33.65 ID:bcxmDIEao

再び ミーナ私室

敵襲の警報が鳴り響く。

角松「目標の現在位置は?」

柿崎「方位0-8-5、距離86km!」

ミーナ(対岸側の、障害物も多い陸の敵を探知したというの……?)

角松「ここから直線上に伸ばして……フランスの北部か」

ミーナ「フランス……ええと、ガリアの事ね」

坂本「この方位から来るとなると、やはりネウロイか」

角松「航空機……という可能性は?」

坂本「まずないな」

ミーナ「そうね」

梅津「なぜ、そこまで断言できるのだろうか?」



222 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:15:52.14 ID:bcxmDIEao

ミーナ「……ガリアを含め、現在欧州大陸の大部分がネウロイによって制圧されています」

ミーナ「当然その地域は危険、航空機は当然ながらウィッチすらその近くを飛ぶのを控える場所……」

坂本「単機で行くなんて言うのは自殺行為だからな」

角松「なるほど……」


梅津「それで、どのように対抗なされるのだろうか?」

ミーナ「ウィッチーズをすぐに向かわせます」

ミーナ「少佐、宮藤さんとリーネさん、夜間哨戒組を残して迎撃に」

坂本「わかった」

そういって美緒は部屋を出て行った。
あらためて別の警報が鳴り響き、下の階があわただしくなる。



223 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:17:14.72 ID:bcxmDIEao

角松「艦長、我々も」

梅津「うむ」

角松「林原一曹に、シーホークの離陸を伝達」

柿崎「了解!」

敬礼を返してヘリへと急ぐ柿崎。


梅津「それと、これを」

ミーナ「これは……?」

差し出したのは、梅津が携行していた無線機。

角松「我々の無線機です」

角松「シーホークを通じて「みらい」とも通信ができます」



224 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:18:24.01 ID:bcxmDIEao

数分後 みらい CIC

角松『こちらシーホーク角松。聞こえるか?』

菊池「こちら「みらい」CIC、聞こえてます」

角松『目標の現在位置は?』

青梅「すでに大陸を脱しています」

青梅「針路、速度変わらず南西へ移動中」

角松『わかった。シーホークが離陸次第、指示を出す』

菊池「了解」



225 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:19:35.72 ID:bcxmDIEao

みらい 艦橋

ウィングでは相変わらずの二人が見張りをしていた。

尾栗「待機命令か……」

柳「そのようです」

尾栗「もう十二分にスタンダードの射程圏内だってのにな」

柳「少し早いとはいえ、音速を超える目標も撃墜可能なスタンダードなら十分……」

柳「艦長副長と“この世界”の打ち合わせが十分でないから手出しができない、とか?」

艦橋員A「あるいは弾薬の節約を最優先に考えてるとか?」

尾栗「……どうだかな」

尾栗(化け物相手とはいえ、やっぱ気が進まねえのか……?)


226 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:21:21.07 ID:bcxmDIEao

ドーバー海峡上空:シーホーク機内

林原「雲量5、視界が少々不鮮明ですが、航行に異常はありません」

柿崎「先ほど、本機のレーダーもネウロイの反射波をキャッチしました」

柿崎「また、501基地より機影多数。先のウィッチーズと思われます」

林原「……左90度、編隊接近」

窓から見下ろすと、きれいに編隊を組むウィッチーズが見えた。
だがそれも一瞬、すぐに別の雲へ消えてしまった。

角松「あれが……ウィッチ……」

林原「艦長……やはり自分は、いまだに信じられません……」

梅津「私とて、夢だと思っていたい」

梅津「こうして見ると認めざるを得ないだろう……」


柿崎「……! ウィッチーズとネウロイが接触!」

柿崎「数秒後にはドッグファイトに入ります!」

梅津「………」


227 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:22:24.65 ID:bcxmDIEao

同じくドーバー海峡北上空:ネウロイ遭遇地点

坂本「……見つけた!」

坂本「11:53、ネウロイ発見!」

坂本「12時方向、距離1000!」

ゲルト「あれか、行くぞハルトマン!」

エーリカ「うん!」

先鋒にバルクホルン、エーリカが飛び出した。
そしてそれに続くシャーリーとルッキーニ。

ゲルト「はっ!」ガガガガガガガ!

エーリカ「おりゃあ!」ガガガガガ!

二人のMG42が火を噴くも、なかなかネウロイのコアは見えない。



228 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:23:18.22 ID:bcxmDIEao

シャーリー「よっ!」カカカカ!

ルッキーニ「かたい~!」ドドドドドド!

ペリーヌ「……?」

すると、ペリーヌがネウロイの進路が少しずつ変わっているのに気付いた。

ペリーヌ「少佐、ネウロイの進路が変わってますわ!」

坂本「……北へ逃げる気か」

坂本「シャーリー、ルッキーニで頭を押さえろ。挟み撃ちだ!」

シャーリー「りょーかい!」グオオオン!


229 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:25:11.85 ID:bcxmDIEao

みらい CIC

青梅「ネウロイ針路変更、3-4-0へ」

菊池「目的地がずれたか……」

青梅「スタンダードの射程圏外に出ますが、追いかけますか?」

菊池「……いや、この様子だとこちらから手を出す必要もなさそうだ」


青梅「……お」

青梅「ネウロイの速度・高度ともに低下します」

CIC員A「やったのでしょうか?」

菊池「いや、まだだろう」

菊池「先の戦闘と変わらないのなら、大破すれば四散するはず」

菊池「まだダメージを与えただけだ」


230 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:26:26.50 ID:bcxmDIEao

青梅「いずれにせよイギリス――ブリタニア本土には届かないでしょう」

青梅「この調子ならもう援護する必要もないかと」

菊池「シーホークから艦長の指示がない以上、な」

青梅「自分としては何事もなくてよかったですが」

菊池「………」


ひと段落できる、とCICの空気が軽くなったその直後だった。

CIC員B「……青梅一曹!」

青梅「!」



231 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:27:09.54 ID:bcxmDIEao






「レーダーに感! アンノン機、方位1-4-0より高速接近中!」








232 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:28:10.79 ID:bcxmDIEao

シーホーク機内

角松「たしかか!?」

柿崎「はい! 北緯49度0分 東経0度8分にて感知!」

柿崎「700km/hで高速接近中!」

突如大陸から現れたその光点は、急速に北上をしていた。

角松「700km/h!?」

梅津「針路は?」

柿崎「0-1-0です! このままですとイギリス本土へ!」


233 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:30:06.74 ID:bcxmDIEao

梅津「……「みらい」の現在位置は?」

林原「シーホークより南西、距離35km」

梅津「角松、さっきの無線でヴィルケ中佐にネウロイの襲来を報告だ」

角松「了解」

梅津「柿崎一曹、「みらい」に通信を」

柿崎「はっ!」


回線を開き、無線機の向こう側で菊池の応答が聞こえるのを確認すると、ただ一言。

梅津「……砲雷長、対空戦闘用意だ」


234 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:32:18.66 ID:bcxmDIEao

ドーバー海峡北上空

ゲルト「おりゃああああ!」バコォッ!

エーリカ「ナイス、トゥルーデ!」

一か所に攻撃を集中されたためか、耐えきれなくなったネウロイの右側で爆発が起きる。

シャーリー「おお、落ち始めたな」

ルッキーニ「やたっ!」

しかし迎撃組の歓声とは裏腹に


坂本「……囮!?」

ミーナ『ええ、もう一つのネウロイが現在も高速で北上中よ』

ペリーヌ「やはり北に行ったのは私たちを引き離すため……」

ミーナ『私たちで迎撃に上がるけど、できるだけ早くお願い』

坂本「わかった」


235 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:33:09.01 ID:bcxmDIEao

基地 ブリーフィングルーム

ミーナ「目標は700km/h程で進行しているとのことです」

エイラ「早すぎダロ……」

ミーナ「すでに100km圏内を突破しています。急がないと……」

ミーナ(この速さだと、美緒たちじゃ間に合わない……)

地図に張り付けた、敵に見立てたコマを忙しく動かすミーナ。

ミーナ「サーニャさんは出れるかしら?」

エイラ「夜間哨戒で魔力を使い果たしてる」


エイラ「ムリダナ(・×・)」


236 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:34:03.08 ID:bcxmDIEao

ミーナ「……仕方ないわ」

ミーナ「私とエイラさんで出ましょう。すぐに用意を」

エイラ「ワカッタ……」



「待ってください!」



エイラが返事をするのと同時に、勢いよく扉が開いた。
そこには息切れの二人。

芳佳「私達にもいかせてください!」

ミーナ「でもまだあなたたちは……」

リーネ「二人なら、一人分くらいにはなります!」

ミーナ「……わかりました。すぐに支度をしてください」



237 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:35:02.20 ID:bcxmDIEao

みらい 艦橋

尾栗「取り舵20°! 針路0-6-0」

尾栗「機関最大戦速!」

艦橋員A「とーりかーじ」

艦橋員B「最大戦速!」

ザザザザザ……

柳「艦長からの対空戦闘指示……」

柳「いよいよ、ですね」

尾栗「……ああ」

尾栗(雅行、正念場だ!)



238 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:36:48.48 ID:bcxmDIEao

みらい CIC

青梅「目標ネウロイβ、針路・速度変わらずブリタニア本土へ接近中」

CIC員A「本土到達まで、あと約10分!」

CIC員B「ブリタニアより光点4、待機していたウィッチーズが出撃したようです!」

菊池(やはり迎撃には向かった)

菊池(だが敵機の速度が700km/hに対してウィッチはせいぜい500km/h前後)

菊池(目標はすでにスタンダード圏内だ。確実に当てられる、が……)

菊池(どうする?)


青梅「先鋒のウィッチ2、目標と接触します!」


239 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:37:57.26 ID:bcxmDIEao

イギリス海峡上空

ミーナ「あれね……」

エイラ「どうスル?」

ミーナ「後ろに回って速度を合わせるわよ」

エイラ「わかった」

ネウロイの後ろに回り込む二人。

ミーナ「今よ!」ガガガガガガ

エイラ「オラッ!」ドドドドドド!

二人の銃から放たれた弾がネウロイに命中する。
頑丈そうに見えたネウロイであったが、撃ち続けているうちにそこへヒビが入り始めた。

パキパキッ……

エイラ「ンな!?」


240 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:39:08.63 ID:bcxmDIEao

みらい CIC

青梅「ん?」

青梅「こ……これは……」

青梅「目標β後部より光点1を確認!」

菊池「なに!?」

急ぎレーダーのモニターへ駆け寄る菊池。

菊池「分離したのか?」

青梅「本体の反射波も小さくなんてますし、そうかと」



241 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:40:33.00 ID:bcxmDIEao

だがしかし、その光点は一瞬にして消えてしまった。

青梅「……新目標、消失」

菊池「消えた?」

今さっきあらわれていたはずの光点が、もう一度目を向けたときには消え去っていた。

CIC員A「元々の飛行高度が低かったので、そのまま海面に突っ込んだかと思われます」

菊池(……いや、これは)

ネウロイの不自然な行動に違和感を感じる菊池。

青梅「海に落ちるなんぞ、バカな奴だ」

そしてその予想は当たった。


青梅「……!」

青梅「目標β増速! 1000km/hを超えます!」

菊池「な!?」



242 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:44:25.82 ID:bcxmDIEao

青梅「正確な速度でます……1035km/h!」

青梅「先方のウィッチーズ2を引き離して行きます!」

菊池「残り時間は!?」

CIC員B「このままですと……」

CIC員B「到達まで約5分!」

菊池(迷っている暇は……ない!)


菊池「対空戦闘用意! 後部VLSから2セル、諸言入力開始!」

菊池「目標、高速飛行中のネウロイβ!」


243 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:45:27.56 ID:bcxmDIEao

CIC員A「イルミネータースタンバイ!」

CIC員B「諸元入力完了!」


菊池「……シースパロー、発射はじめ!」

CIC員A「後部VLS解放!」

CIC員A「シースパロー発射はじめ! サルボー!」


ガコッ! バシャアアアアアアッ!

発射ボタンが押され、後部格納庫上のVLSが開く。
そして2つのシースパローがネウロイに向けて飛び出して行った。



※サルボー:『撃て』の意。特に複数同時発射の事を指す。


244 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:46:22.88 ID:bcxmDIEao

再びイギリス海峡上空

エイラ「ダメだ中佐、全速飛ばしても追いつかないゾ!」

ミーナ「このままじゃ……」


ミーナ「……? 何かが来るわ!」

エイラ「え?」

ネウロイの横から、その速度を上回るシースパローが2発、ネウロイに突き刺さった。

ドドォン!

エイラ「ウワ!」



245 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:47:37.77 ID:bcxmDIEao



ミーナ「大丈夫? エイラさん!」

エイラ「にゃろ~! あぶないダロー!」

エイラ「……ネウロイは!?」

煙が晴れ、遠くにネウロイの姿が再び現れる。


ミーナ「……ダメージは大きいようだけど、依然として飛行してるわ」

ミーナ「このまま追って間に合うか……」

その心配をよそに、エイラは落ち着いた顔でこう答えた。

エイラ「……いや、その必要はないようダ」

ミーナ「え?」


246 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:48:33.40 ID:bcxmDIEao

みらい CIC

青梅「……シースパロー、着弾!」

菊池「どうだ?」

青梅「目標β、依然健在」

青梅「しかし速度は低下しました。現在150km/hへ」

菊池「生きてるか」

菊池「シースパロー、次弾発射用意―――」


その時突然、ヘッドセットに無線の音声が届いた。


『後は任せてください!』

菊池「!?」



247 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:50:34.51 ID:bcxmDIEao

ドーバー海峡上空 基地寄り

芳佳「私がこうやって支えているから」

芳佳「どうかな?」

リーネ「は……はい、ボロボロでコアもはっきりと見えます」

リーネ(速度も遅いし、回避できないようだからここからでも!)

ドオン!ドオン!ドオン!

ズガァアッ!

リーネのボーイズライフルから放たれた銃弾が見事命中した。

ネウロイ「ギャアアアアア……!」


パリンッ! バアアアン!

リーネ「やったぁ!」


248 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:52:38.20 ID:bcxmDIEao

みらい 艦橋

柳「お……、航海長」

柳「ネウロイが四散しました!」

尾栗「すげぇ、あの向こうにいるの女の子だろ?」

艦橋員A「あの子が撃ち落としたようですね……」

柳「すっげー!」

尾栗「……CIC艦橋、ネウロイの撃墜を目視にて確認!」

菊池『こちらCIC、こっちもレーダーで確認した』

尾栗「了解」


249 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:54:17.48 ID:bcxmDIEao

リーネ「……芳佳ちゃん、あれ!」

芳佳「軍艦……かな?」

リーネ「見たことある?」

芳佳「扶桑もいろいろな軍艦作ってるけど、見たことないなぁ」

芳佳(みっちゃんに聞いたらわかるかな?)


ミーナ「宮藤さん、リーネさん」

エイラ「無事カ?」

芳佳「ミーナ中佐、あれ!」

ミーナ「……来たようね」

エイラ「じゃあ、あれが……」



坂本「そうだ」


250 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:55:26.26 ID:bcxmDIEao

芳佳「あ、坂本さん!」

坂本「ギリギリ、追いつけなかったようだな」

その後ろから次々とウィッチーズが続いてくる。

ゲルト「あれが少佐の言っていた艦か」

シャーリー「武装が……主砲一門だけ?」

ペリーヌ「少し貧弱すぎる武装じゃありませんこと?」

エーリカ「へぇー、あれか」

ルッキーニ「なになにあれー?」


251 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 12:57:35.64 ID:bcxmDIEao

みらい 艦橋

柳「前方1km、機影?が多数接近中!」

尾栗「女の子の編隊だ……」

菊池『艦橋CIC、501より入港の許可が出た』

尾栗「了解」

尾栗「よし、予定航路に復帰だ」

艦橋員A「予定航路に復帰!」

艦橋員B「ヨーソロー」


かくしてその後、「みらい」は第501統合戦闘航空団の軍港へと入港するのだった。


252 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/15(土) 13:01:49.93 ID:bcxmDIEao
サーニャ「続く……」zzz...

こだわり過ぎると時間もかかるし、ボロがでるわでアレですね


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253 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (新潟・東北) :2012/09/15(土) 13:10:59.57 ID:GFPSIocAO
乙!次回も期待

ウィッチ界にミサイル万能説くるかなこりゃ



254 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (関西・北陸) :2012/09/15(土) 13:14:42.72 ID:cAW3RApAO


大変なのはこれからだよな……


275 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:27:16.83 ID:hU6Vl2LDo

ブリタニア

「扶桑からの補給、無事に届いたそうだな」

ミーナ「はい、予定通りに宮藤軍曹並び坂本少佐、そして各種補給品を受け取りました」

「予定通りではないだろう」

「国籍不明の巡洋艦を一隻連れているとの報告があるが……」

ミーナ「………」

ミーナ「報告に間違いはありません」

ミーナ「坂本少佐の証言によれば、ネウロイの襲撃中に援護を受けたとのことで」

ミーナ「現在は本基地の軍港にて停泊中です」

「ふむ……」

「戦力としては申し分ない、か」



276 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:28:05.03 ID:hU6Vl2LDo

「それで、分かったことは?」

ミーナ「彼らはこの世界のどこの国にも属していないということです」

「……どういうことかね?」

ミーナ「こちらも現在、正確に事情を把握できていないため詳しいことは申し上げられません」

「敵対する意思は?」

ミーナ「今のところこちらに対しての敵意はないようです」


「……その艦に、我々に協力する意思は?」

ミーナ「不明です」

ミーナ「ですが、後日要請を行うつもりであります」


277 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:30:00.86 ID:hU6Vl2LDo

ミーナ「つきましては、本件を私たちに一任していただきたいのですが」

「そういう事務的なことはこちらの方がいいのではないかな?」

「キミたちにはネウロイの襲撃にいつでも対処できるようにいてもらわなければならん」

ミーナ「だからこそです」

ミーナ「前線に近い基地の方がいつでも出撃可能」

ミーナ「それに、本土の軍港よりも人目に付きにくいために無用な混乱を避けることもできます」

「む……」

「……まぁよかろう。この艦の件は君に一任する。下がってよい」

ミーナ「はっ!では失礼します」



278 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:30:50.77 ID:hU6Vl2LDo

「未確認の兵器をもつ国籍不明艦か……」

「よいのですか?あのまま任せてしまって」

「結果が出せればそれでよい。戦力増強になるなら使うまでだ」

「全ては人類のため……と」

「ウィッチーズには大きく期待を寄せている」



チャーチル「それはもちろん君にもだ、マロニー空軍大将」

マロニー「はっ……」

チャーチル「人類をネウロイから解放するため、我々は戦わねばならんのだ」



279 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:32:10.17 ID:hU6Vl2LDo

その後 基地内ブリーフィングルーム

ここにいるのは501のウィッチ全員と、艦に残った菊池と当直員を除いた「みらい」の主要幹部。
「みらい」の係留作業終了後、一同はこの部屋に集まり顔合わせをしていた。


ミーナ「……以上、これが双方の事情をまとめた説明です」

シャーリー「待て待て中佐、つまり彼らは未来人……いや、異世界人ということに……」

ミーナ「………」

尾栗「そういうことになるな」

エーリカ「こりゃ驚いた」

ゲルト「驚いたで済む問題か?」


ミーナ「先ほどの戦闘、美緒と宮藤さんは2回……」

ミーナ「「みらい」はネウロイに対するかなりの戦力になりうる、と私は考えるわ」



280 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:33:02.73 ID:hU6Vl2LDo

ペリーヌ「つまり、協力関係を結ぶ……と?」

ミーナ「ええ、察しが早くて助かるわ」

ミーナ(上層部があんなにあっさり承諾してくれたのは予想外だったけど……)

坂本「そんなわけだ。どうだろうか?」

ミーナ「この中で異論のある人はいますか?」

「「「………」」」

ミーナの問いに答えるものは誰もいなかった。

ミーナ「……では、満場一致ということで」

ミーナ「私たちと「みらい」は協力関係を結ぶことにします」



281 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:33:48.45 ID:hU6Vl2LDo

みらい

艦にもどり、艦長室のマイクを取った梅津は、静かにこう告げた。

梅津『艦長の梅津だ』

梅津『本日の会談で決まったことを総員に達そうとおもう』


梅津『まずは501との協力関係を結び、本艦の最低限の生存が確保されたのを喜びたい』

隊員A「おお、ついにか」

隊員B「やっと食料のめどが立ったな」

艦のあちこちから乗員の歓声が上がる。

梅津『よって明朝07:00より補給物資の積み込みを行う』

梅津『各員しっかりと自分の任務をこなしてもらいたい』



282 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:34:59.22 ID:hU6Vl2LDo

梅津『また、上陸についても現在交渉中である』

梅津『時間はかかるものの、城下町であればある程度の自由行動ができるということだ』

隊員C「よっしゃあ!」

隊員D「陸地に上がれるぞお!」

梅津『また、上陸時の一部の軍事施設の共用、資料の閲覧なども検討中だ』

隊員A「この世界の、魔法とやらについても知れるのかね?」

隊員C「だったら元の世界に帰る方法も見つかるかもしれないぞ」

この世界における自分たちの立ち位置を確保し、ある程度の安心を得た隊員たち。
それを見透かしたかのように、改まった口調で続ける艦長。


283 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:36:46.93 ID:hU6Vl2LDo

梅津『……我々は、この世界にいきなり連れてこられてきた』

梅津『誰から命令されたわけでもなく、その理由を知らないままにだ』

梅津『我々の母国と遠く離れてしまったこの場所で、我々は何をすべきなのか』

おそらく「みらい」全員が思っているであろうことを代弁するかのように。


梅津『おそらく、これからも数々の困難が待ち受けていると思われる』

梅津『だがどうか、我々が日本という国の自衛隊であることを絶対に忘れないでもらいたい』

梅津『各員一人一人がそれを自覚することで、たとえ如何なることがあろうとも』

梅津『我々はきっと、日本の海上自衛隊として胸を張って行動することができるだろう』

梅津『以上』


284 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:39:02.56 ID:hU6Vl2LDo

艦長室

放送を終え、マイクのスイッチをオフにする。

梅津「……さて、ここからが大変だな」

角松「ええ」

梅津「世界が違うのは、ただ時代が違うのとまたわけが違う」

梅津「分隊長からの報告で、一部の隊員は事態を飲み込めず不安定なものもいるらしい」

角松「当然なのかもしれません……」

角松「士官会議でも、皆とりあえずは賛成という感じでしたから」

それはウィッチーズと会談を行う前の士官会議の事だった。
本来なら幹部士官のみであるはずだが、今回は特別に非番の隊員の参加も許されたりもした。

だがその決まり方は、少しばかり消化不良な終わり方であった。

梅津「皆、やはり不安なのだろう」



285 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:40:55.55 ID:hU6Vl2LDo

「みらい」甲板

たまの休憩時間に、尾栗は甲板を歩いていた。

尾栗「海鳴りが声を消し去って~」

尾栗「……ん?」


菊池「………」

尾栗「よぉ雅行。お前が甲板にいるなんて珍しいじゃないか」

菊池「康平……」

手すりに肘をかけている菊池。
尾栗はその隣に立った。

尾栗「よっと……」


286 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:42:17.54 ID:hU6Vl2LDo

尾栗「で、どうしたんだ?」

菊池「どうした、とは?」

尾栗「なんか悩んでんじゃないのか?」

菊池「………」

尾栗「何年同期やってきたと思ってる。それくらいわかるんだ」

菊池「……ま、いろいろな」


菊池「ところで、隊員たちは今回のことどう思っている?」

菊池「皆お前になら本音を話すだろう?」

それは、下士官からの人望も厚い尾栗であるからこそ聞けるものでもあった。

尾栗「……ま、あっちこっちで雁首揃えてるってところだな」


287 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:43:05.58 ID:hU6Vl2LDo

「みらい」 CIC

変化のないモニターを眺め続け、ため息をつく青梅。

青梅「入渠中はやること少なくて暇だな」

CIC員A「ですね」


CIC員A「……青梅一曹」

青梅「ん?」

CIC員A「俺達、これでこの時代に介入することになるんですよね?」

青梅「……ま、そういうことだろうよ」

CIC員A「なんか変な感じですよね」


288 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:44:17.16 ID:hU6Vl2LDo

CIC員A「俺達、自分たちの国を守るための軍隊なのに」

CIC員A「巻き込まれたからと言って、知りもしない世界を守る手助けだなんて」

青梅「人助けは悪いもんじゃないだろう?」

青梅「それに、以前だってイラクとかに行もしたじゃねえか」

CIC員A「それはそうですけど……」

CIC員A「本当に守りたかった自分たちの国を守れずに死んでしまったら、それこそやりきれないというか」

青梅「……だいたい、今さらなんだってんだ」

CIC員A「え?」

青梅「俺たちは自衛隊だ」


289 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:45:09.88 ID:hU6Vl2LDo


青梅「日本のためのものなのか、でっけえ同盟国の手ゴマなのか……」

青梅「そんなこともよくわからんまま上の言うままに動いてきたんだ」

青梅「今さら考え事をしろったってな」

CIC員A「………」

青梅「これからどうするだとか、何のために戦うだとか」

青梅「そこらへんは砲雷長や上に任せるさ」

青梅「俺たちは言われたことをやればいい」

CIC員A「そう、割り切れるもんなんですかね……?」

その問いに答えないまま、青梅はモニターへと向き直った。


290 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:46:45.06 ID:hU6Vl2LDo

「みらい」食堂

柳「補給の目途が立ったとはいえ、実際に補給するまではこの味気ない食事ですね」

麻生「そうだな」

柳「イギリスと言えばあまり味がよくないということで有名ですが……」

麻生「それは料理の話だろう」

麻生「「みらい」の炊飯員にかかればアッと言う間にうまいメシの出来上がりだ」

柳「ですね」


麻生「……これから、どうなると思う?」

柳「1944年の欧州と言えば、枢軸国の敗退の兆しが強い頃ですが」

柳「根本的に違うこの時代では何とも……」

麻生「そうじゃない。俺たちがだ」


291 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:47:41.18 ID:hU6Vl2LDo

柳「ネウロイ、敵と戦うんですよね」

柳「この間も「みらい」の能力で倒せるということはわかりましたが……」

麻生「現代兵器の弾薬の問題もある、と」

柳「ええ」

柳「食料、燃料、寄港する場所は確保できましたが」

麻生「……港、か」

柳「え?」


麻生「仮にネウロイを全部倒したとして、俺たちに帰る場所はあるのかね?」


292 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:49:22.45 ID:hU6Vl2LDo

翌朝

「みらい」の脇にある桟橋には、大量の補給品が積み上げていた。
そこでは「みらい」の補給科員と501の作業員が手分けして積み込みを行っていた。

補給員A「生鮮食料6トン!」

補給員B「各種缶詰届きました、約8トン」

補給員C「ミザ一月分、積み込み終了しました」

501水兵「米を積み込みます!」

尾栗「よし、後部ヘリ甲板を開けろ」

補給員B「アイサ―!」

クレーンの機械油と男たちの汗臭さが潮風と混じっていた。

尾栗「………」


293 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:51:33.51 ID:hU6Vl2LDo

基地 ベランダ

ゲルト「基準排水量9000tといったところでしょうか?」

坂本「それは少し大げさすぎる、せいぜい8000tぐらいだな」

ミーナ「でも、変わった船ね」

シャーリー「アンテナ多いなー。電子機器たっぷり積んでんのかなー?」

ルッキーニ(あそこに新しい寝場所つくろっかな~?)

シャーリー「……あそこで寝ちゃだめだぞ、ルッキーニ」

ルッキーニ「うじゅ!?」

ペリーヌ「朝から騒がしいと思ったら、この音でしたのね」


芳佳「おまたせしました!」

リーネ「みなさん、朝ごはんできました~」


※基準排水量:燃料や積載物などを抜いた状態で、船を水上に浮かべた際に押しのけられる水の重量(=船の重量)
         海水の比重を使って計算される。
         逆に燃料、水、積載物を満載した状態でのことを満載排水量という。


294 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/09/30(日) 12:52:32.09 ID:hU6Vl2LDo

食堂

坂本「突然だが、昼から「みらい」との合同演習を行おうと思う」

シャーリー「また急だな、少佐」

坂本「最近は予報も当てにできなくなっている、油断はできん」

ゲルト「常に戦えるように万全の連携を作り上げておくことこそが大切なのだ」

ゲルト「分かったか、リベリアン」

シャーリー「おーおー、これだからカールスラントの堅物軍人は」

坂本「……ゴホン」

坂本「よって本日14:00、ハンガーに集合だ。遅れることのないように」


「「「了解」」」



297 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/30(日) 13:33:03.04 ID:2saX7b470
乙であります!
原作「ジパング」と違って、過去の世界への影響が無いぶん、帰還する事が艦員達の最大の関心事となっている様子
まぁ、異世界だと思えば、その世界への影響を考えないでもないけど、歴史を歪める可能性に比べれば遥かに小さい問題ですしね

ともかく乙


355 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:13:20.27 ID:It1FQKMTo

翌日 ドーバー海峡


「みらい」 CIC

青梅「……レーダー探知!」

青梅「方位1-3-0、高度400mを600km/hで飛行中」

菊池「艦長、識別判断を」

梅津「うむ、ヴィルケ中佐に確認を打電せよ」


ミーナ『……該当空域に飛行中の航空機はありません』

ミーナ『よってネウロイと断定いたします』

梅津「教練、対空戦闘用意」


356 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:14:39.23 ID:It1FQKMTo

『対空戦闘よーい!』

しばらくして、レーダーに多数の荒天が現れる。

CIC員A「501基地より機影6」

CIC員B「迎撃に向かったウィッチーズと思われます」

梅津「………」

菊池「確認した機影をイージス上に味方機としてマークせよ」

CIC員A「了解!」

CIC員B「先頭よりa,b,c,とマークします」

梅津「ふむ……」



357 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:17:12.26 ID:It1FQKMTo

同じくドーバー海峡上空

部隊のインカムを通して「みらい」との無線を聞いていたシャーリー。

シャーリー「……ひぇーっ、もう気付かれたのか」

シャーリー「でも、うっかりネウロイ役引いちゃうなんて運悪いなー」

ハンガーにて行われたネウロイ役を決めるくじ引きで見事に外れを引いてしまったのだった。

シャーリー「どんな方法使ったのかは知らないけど、もう逃げてもいいよなぁ?」

シャーリー「おっかない堅物軍人だけには捕まらないようにしないと」ヒョイッ

ヴォオオオオ……

軽い身のこなしの動作を決め、素早く位置を離れた。



358 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:18:52.44 ID:It1FQKMTo

再び 「みらい」 CIC

ふと光点が移動し始める。
だが「みらい」は仮想標的―――シャーリーが移動するのを見逃さなかった。

青梅「仮想標的α、移動開始」

青梅「700km/hで北西へ移動中」

CIC員A「グリッド東07に侵入しました」

菊池「よし、迎撃にでたウィッチに報告せよ」

CIC員A「了解」

梅津「………」



359 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:19:40.26 ID:It1FQKMTo

ミーナ「目標が動きました」

ミーナ「針路を4時方向に!回り込みます」

エーリカ「へー、もうわかったんだ?」

坂本「サーニャがいないときはある程度近づいてミーナの魔法で探知していたが……」

芳佳「すごい……」

ゲルト「早く探知できる分、迅速な行動が可能になったか」

坂本「よし、ロッテを組み直して針路を修正する」

坂本「バルクホルンと宮藤、リーネとペリーヌでロッテを組め!」

坂本「全員突入!」


「「「了解!」」」




360 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:20:45.94 ID:It1FQKMTo


シャーリー「ふ~んふふ~ん……」

シャーリー!

シャーリー「ん?」


ルッキーニ「シャーリー見つけた!」

ゲルト「見つけたぞ、リベリアン!」

シャーリー「げ! うっそぉ!?」

シャーリー(結構予想進路の裏をかいたと思ったんだけどなぁ……)

シャーリー「こうなったら一旦逃げるぞ!」

グオオオオオオン……

ゲルト「先行するぞ、新人。ついて来い!」

芳佳「えっ? わっ……はい!」


坂本(………)

ミーナ「……トゥルーデ」


361 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:22:24.17 ID:It1FQKMTo





「みらい」 艦橋

艦橋員A「報告します!」

艦橋員A「15:30、501との合同訓練終了しました」

梅津「うむ、ごくろう」

菊池「時間通りですね」

角松「指揮官はかなり優秀のようです」

尾栗「一部の嬢ちゃんたちはまだ飛行練習を続けてるみたいだ」

尾栗がウィングの双眼鏡を覗きながら返す。

尾栗「上手に飛んでるこって」


362 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:23:53.73 ID:It1FQKMTo

艦橋員B「しかし、なんたってあんな恰好をしてるんでしょうね?」

艦橋員C「丸見えってのがまた……」

角松「それが彼らの文化だろう」

艦橋員A「は?」

角松「小さいころ、親父に東南アジアへ連れて行ってもらったことがあるが」

角松「日本と全く違うところもあった」

角松「どうやら女性は下着姿でいることが、この世界特有の文化らしい」

角松「意識してしまうのもわかるが、ほどほどにしておけ」

艦橋員B「は……」

尾栗(んな事言われたってよぉ、簡単に割り切れるもんかよ……)

尾栗(99%が男のこの艦内じゃ無茶だっての)


363 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:25:01.69 ID:It1FQKMTo





ハンガー前

日も落ちかけた頃、訓練を終えた二人は倒れこんでいた。

芳佳「ふぅ、ふぅ……」

リーネ「疲れたね、芳佳ちゃん……」

ゲルト「この程度でくたばるとはだらしがない」

芳佳「バルクホルンさん早すぎです~……」

ゲルト「全く……」

ゲルト「明日も合同訓練がある。せめて足を引っ張らないようにな」

リーネ芳佳「「はぁ~い……」」

二人を片目に基地へと戻った。



364 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:26:42.60 ID:It1FQKMTo

501基地

坂本「今日の訓練、どうだ?」

ミーナ「そうね。今までより断然効率のいい作戦行動がとれるわ」

ミーナ「敵の早期発見は時間の余裕を作ってくれるし」

ミーナ「……だけど問題は、「みらい」との通信手段よね」

坂本「今現在通信可能な方法と言えば、渡されたこの無線機だけ」

未来からもたらされた電話サイズの無線機。
だがそれでも、いくつかの欠点があった。

坂本「小型であるため、一定距離に中継するオートジャイロもしくは「みらい」本体の支援が必須」

坂本「さらに個数が一個だけのために基本的にまとまった行動を余儀なくされる……か」


365 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:28:22.42 ID:It1FQKMTo

ミーナ「後者に関しては、無線機所持者が私たちの共用無線で伝達すればいい話だけど」

ミーナ「それでもやはりタイムロスがね……」

坂本「それに、全員で情報を共有できてこそ、最適な行動がとれるということだ」

坂本「あの艦の情報処理能力を生かせば、さらなる戦略の向上につなげられる」

ミーナ「………」

ミーナ「後日予定している第二回合同訓練のあと、報告会があるわ」

ミーナ「その時にもう一度「みらい」の方々と掛け合ってみましょう」

坂本「ああ、よりよくあの艦と共同戦線が張れるようにな」


ミーナ「それと美緒、もうひとつ気になっていることがあるんだけど……」


366 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:30:38.94 ID:It1FQKMTo

その時、ミーナの部屋のドアが開いた。

ガチャ

ゲルト「ミーナ、訓練終了の報告だ」

ミーナ「あっ……お疲れ様、トゥルーデ」

坂本「バルクホルン、お前にとって今回の訓練はどうだった?」

ゲルト「やはり二人とも新人でどうも動きが……」

ミーナ「宮藤さんとリーネさんではなくて、「みらい」との訓練よ」

ゲルト「ああ……」

ゲルト「たしかにあの艦の索敵能力は感心せざるを得ない」

ゲルト「かなり広範囲をカバーでき、正確な情報を処理できるようだ」

ゲルト「さらに弾数は限られているものの、ネウロイに通じる強力な兵器を持っていることもまた一つ」



367 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:31:35.05 ID:It1FQKMTo

ミーナ「……流石、よく見ているわね」

ゲルト「というと?」

坂本「いやなに、実は私たちもそう考えていたところだ」

坂本「なにか他に気になったところはあるか?」

ゲルト「……いや、特には」

ミーナ「そう……」

ミーナ「報告ご苦労様、今日はもう休んでいいわ」

ゲルト「……では、失礼する」

バタン


坂本「……大事なところを見落とすとは、らしくないな」

ミーナ「………」


368 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:32:54.98 ID:It1FQKMTo

「みらい」 CIC

菊池「どうだ?」

青梅「………」

先の訓練直後より、なにやら計器とにらめっこばっかりしている二人。

青梅「やはり無理ですね」

菊池「そうか」

青梅「反射波だけでウィッチそれぞれの個体を判別するというのは結構困難です」

青梅「時に判別できる時もありますが、高速機動時にはとても……」

菊池「そうか……」


369 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:33:46.83 ID:It1FQKMTo

ガチャ

角松「……やはり難しいか?」

青梅「あ、副長」

菊池「先ほどからやってみてはいるが、想像通りだ」

青梅「あれほど小型ですとさらに困難になりますから……」

CIC員A「出撃時に編成を報告してもらうというのは?」

青梅「バカ、手間がかかり過ぎだ」

CIC員B「IFFでもついてればいいんですがね」

青梅「あったら苦労しねぇんだが……」


370 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:34:42.44 ID:It1FQKMTo

翌日 ドーバー海峡

第二回目の合同演習。
今回仮想敵役を引いてしまったのはバルクホルンだった。

ゲルト「………」

ゲルト「私がネウロイ役をすることになるとはな」

ゲルト「まぁくじで決まった以上仕方ない」

ゲルト「部隊の練度向上につながるなら、それでいいさ」

ふと視線をあげる。
天候が良いためか、目の前にはかすかに欧州大陸が見えていた。


ゲルト(カールスラント、いつか必ず……)


371 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:36:13.28 ID:It1FQKMTo

「みらい」 CIC

青梅「レーダー探知、方位1-3-2、距離50km!」

梅津「教練、対空戦闘用意」

青梅「反応を仮想標的αとマーク」


青梅「501より、ウィッチーズの出撃を確認」

菊池「判別可能か?」

青梅「待ってください……」

隊列を組む光点を見ながら青梅の返事が返る。

青梅「やはりダメですね。どれも似たようなもんです」

菊池「そうか……」

菊池(個体の識別が難しいとなると、情報処理を行う方としては少し厳しいな)


372 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:37:24.35 ID:It1FQKMTo


ピコ…

青梅「……ん?」

突如として現れた不自然に大きな光点。

青梅「レーダー探知、アンノン1! 400km/hで接近!」

菊池「なに!?」

青梅「方位1-3-5より接近中! 距離約70km!」

青梅「このままでは仮想標的と交差します!」

梅津「訓練予定にある項目ではない……な」

青梅「反射波より、大きさは50mを超える大きさと推定されます!」

角松「見るからに人ではない……な」

レーダーに映った反射波は、比べるまでもなくウィッチの反射よりも大きい。



373 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:39:03.75 ID:It1FQKMTo

梅津「副長、訓練中止だ」

素早く艦内インカムを取る角松。

角松「……CICより総員に達す。状況中止!」

角松「対空戦闘用意!総員配置につけ!」


梅津「しかしまずいな……」

菊池「あの近くの海域には、仮想標的役のウィッチが単機……」

角松「連絡は!?」

菊池「ヴィルケ中佐に先ほど敵発見の連絡はしたが……」

菊池「出撃したウィッチが該当地域に到着するまで約10分ほどはかかる」


※状況中止:訓練を中止すること。他にも『状況開始』『状況終了』がある。
      これらは訓練開始終了を指す意であり、実戦では用いない。



374 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/10/15(月) 20:41:02.01 ID:It1FQKMTo

角松「……本艦のシースパロー射程圏内に入るまでの時間は?」

青梅「本艦が針路を変更し全速で向かえば20分で入ります」

角松「艦長、針路を」

梅津「うむ。全速にて向かえ」

角松「了解!」

角松「面舵一杯! 機関最大戦速!」


キイイイイイイ……

「みらい」が大きく揺れ、独特の機関音とともにネウロイ出現地点へと向かって行った。



380 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/15(月) 21:45:51.15 ID:qykGgfGDO
魔法無線(インカム)が有りなら、魔法IFFが有っても良い筈



388 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:13:56.55 ID:hyCLmIaCo

ドーバー海峡上空


ミーナ「まずいわね……」

ペリーヌ「こんな時に来るなんて……」

エーリカ「はやくトゥルーデに教えないと!」

ミーナ「そうね」

ミーナ「バルクホルン大尉、聞こえますか?」

ゲルト『ああ、状況は把握している』

ミーナ「ネウロイはあなたの航路上にいるわ。至急こちらに戻って」

ミーナ「訓練装備から実戦装備に切り替えて再度出撃します」



389 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:15:26.48 ID:hyCLmIaCo

ゲルト『いや、その必要はない』

ゲルト『私がここで足止めをするから、他は装備を整えてきてくれ』

ミーナ「でもいくらあなたでも一人では……」

ゲルト『このまま全員下がっていてはネウロイの侵攻を放置するのと同義』

ゲルト『ブリタニア本土を危険にさらしてしまう』

坂本「確かに一理あるが……」

ミーナ「………」

ミーナ「わかりました。大尉は敵の侵攻を阻止してください」

ミーナ「ですが身の危険を感じたらすぐに離脱、援軍の到着を待つこと」

ゲルト『……了解』ピッ



390 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:16:12.00 ID:hyCLmIaCo

芳佳「バルクホルンさん、一人で大丈夫なんですか?」

エーリカ「大丈夫だよ、トゥルーデだもん」

ミーナ「もちろんあの子ひとりにしておくわけにはいかないわ」

坂本「万が一に備えて、私とミーナは訓練中にも予備の実弾銃を持っている」

訓練用に塗装されていたマガジンを、いつもの黒いマガジンに入れ替える。

ミーナ「今回は単独行動ということでトゥルーデも持ってるわ」

坂本「そこで武器回収組と、今ある戦力で向かう即応部隊に分ける」

坂本「向かうのは私と宮藤、お前だ」

芳佳「えっ!?私ですか?」

坂本「そうだ。お前のシールドは見るところがある」

坂本「増援到着まで援護してくれ」

芳佳「わかりました!」


391 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:17:31.87 ID:hyCLmIaCo

坂本「他は各自全速で武器を取りにいくこと!」

ペリーヌ「了解ですわ!」

坂本「ミーナ、宮藤に貸してやってくれ」

ミーナ「気を付けてね、宮藤さん」

ミーナのMG42が芳佳に渡される。

芳佳「わっ……重い……」


ミーナ「……美緒、トゥルーデを頼むわ」

ミーナ「最近のあの子、どうも焦ってるみたいだから……」

坂本「ああ、わかっている」


坂本「では、各員散開だ!」


392 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:19:01.77 ID:hyCLmIaCo

「みらい」 CIC

青梅「無線からの報告を合わせるに」

青梅「反転したのはヴィルケ中佐以下のウィッチ」

青梅「向かっているのが坂本少佐と宮藤軍曹の模様」

青梅「ただネウロイ針路上のウィッチ……」

青梅「バルクホルン大尉は離脱しない模様です」

青梅「両者接触まであと5分!」

停止している光点と、それに向かっている光点を見比べる青梅。


CIC員A「どうします? 接触する前にスタンダードを撃ちこむ手も……」

角松「いいや、それはあまり意味がないだろう」



393 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:20:42.34 ID:hyCLmIaCo

角松「レーダーの反射波から見て、目標は50m以上という大きさ」

角松「緒戦の様に、あの型の目標に対して、スタンダード一発で与えられるメージはたかが知れている」

角松「弾数の少ないスタンダードの使用は控えるべきだ」

菊池(過去の二戦でここまで……)

梅津「では、どうする?」

菊池「……主砲並びにシースパローのサルボー射撃による連続的な攻撃を進言します」

梅津「副長、どうか」

角松「私も同じ意見です」

梅津「よろしい」

梅津「現場海域までは?」

尾栗『あと1分でシースパロー射程圏内に入ります!』



394 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:22:45.56 ID:hyCLmIaCo

青梅「目標、針路高度変わらず」

角松「よし、砲雷長」

菊池「……後部VLS 3から5セル、諸元入力!」

CIC員A「諸元入力完了!」

CIC員B「イルミネーターリンク!」

菊池「シースパロー発射はじめ!」

CIC員B「後部VLS解放!」

CIC員A「シースパロー発射はじめ!」

CIC員A「サルボー!」

バババアアァッ――――!

後部VLSより、計三発のシースパローが放たれた。



395 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:23:26.91 ID:hyCLmIaCo

ドーバー海峡 ネウロイ合流予測地点

ゲルト(予測によれば、敵はここら辺のようだが)

ゲルト(どこだ……)

雲が多い空の中、一筋の航跡を引く何かを発見したバルクホルン。

ゲルト「あれは……!」

やがて光は3つに増え、そして小規模な爆発を起こした。

ドドドドド……


ゲルト「誘導弾……「みらい」のロケット兵装か!」

ゲルト「ならばネウロイもあそこに……」

グオオオオオオ……


396 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:24:44.00 ID:hyCLmIaCo

やがて、バルクホルンの視界に黒いネウロイの姿が浮かび上がってくる。
ロケット状の形をし、胴体から周りに三本の足が出ており、それがくるくる回転していた。

先ほどのシースパローの効果があったのか、どうやら一部を修復中らしい。
緩やかながらも元に戻っている。

ゲルト「目標約50m級……」

ゲルト「近寄らずとも当たる距離だが、これほど離れていては威力が減退してしまう」

ゲルト「やはりここは一撃離脱を取るべきだな」

ゴオオオオン……

ぽつりつぶやくと、バルクホルンは向きを変え一気に上昇をする。
そしてかなりの高度まで上昇したのち、急降下をかけた。

ゲルト「いっけええええええ!」

MG42独特の凄まじい連射音が鳴り響く。

ダラララララララララ!



397 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:25:10.50 ID:hyCLmIaCo

ガガガガガガッ!

ネウロイ「ギャアアアア!?」

突然の奇襲に驚いたのか、全方位にビームを放つネウロイ。

ゲルト「なんだ、気づいていないのか」ヴォン!

シールドでビームを受け止めるバルクホルン。
だがそれだけではなく、ビームを受けたときの反動を利用して後退、下降。

ゲルト「そこだ!」

ダララララララ!

続いて下方からの攻撃。

断続的な攻撃を続けながらバルクホルンはネウロイの侵攻を止めようとしていた。


398 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:25:58.51 ID:hyCLmIaCo

だが、いくら攻撃をしてもネウロイは怯むそぶりも見せない。

バルクホルン(マズイ……)

バルクホルン(これほど当ててもダメージが通らないとは)

バルクホルン(このままではいずれ……)

ネウロイ「キャアアアッ!」

バアアッ!

バルクホルン「はっ!」ヴォン!

ガン!ガン!

反動を活かし再び上昇、急降下。

バルクホルン「くらえっ!」


399 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:27:09.20 ID:hyCLmIaCo

ダラララララララ!

ゲルト「いっけえええええ!」

ガガガッガガッガガ!



ガチッ!

ゲルト「……!?」

ふと、続いていたMG42の連射音が止んだ。

ゲルト(弾が!)

残弾の確認を怠る。
ウィッチ――軍人として致命的すぎるミスだった。


400 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:29:09.35 ID:hyCLmIaCo

ネウロイ「キャアアアアアアッ!」

バババババッ!

ゲルト「しまっ……!」ヴォ

急降下からの急接近の最中。急ブレーキは効かない。
シールドを張るも、すでに間に合わなかった。

バキャッ!

持っていたMG42が溶ける。
それらのうち、シールドで塞がれて溶けずじまいの部品は激しく飛び散る。

そして大きな破片の一つがバルクホルンに直撃した。

ガンッ!

ゲルト「っああああああ!」



401 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:30:23.64 ID:hyCLmIaCo

「みらい」 CIC

青梅「……!」

青梅「バルクホルン大尉機、失速!」

青梅「高度下がります!現在高度1000!」

菊池「なにっ!」

角松「被弾か!?」

青梅「相手の攻撃手段がレーダーに反射しない以上は状況が……」


隊員A「……ヘリを偵察に出せば確認できます!」

菊池「馬鹿者、この状況下で艦載機を出せるはずが無かろう」

菊池「シーホークより機動性の高い「海鳥」ならまだしも、それでも空対空戦闘を念頭に置かれてるわけではない」

菊池「非常に危険だ」

隊員B「ですが負傷者ありの場合は……」

うかつに手が出せない状況の中、無線が響いた。

尾栗『CIC艦橋!』

尾栗『方位1-3-0、ネウロイ視認!』



402 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:31:50.32 ID:hyCLmIaCo

「みらい」 艦橋


ウィングで監視していた艦橋員が見つけた。
付設の双眼鏡で見ても点にしか見えないが、明らかにネウロイだった。

尾栗「やっと見えるところに出てきやがったぜ……」

尾栗「いいか!いつヤローが光線を撃ってくるかわからんから、全員目を見開いて監視しろ!」

艦橋員「「「アイサー!」」」


多数の監視員が返事する中、柳一曹だけは双眼鏡を覗いたままだった。

尾栗「柳、どうした?」

柳「……ウィッチです!二人のウィッチが落ちていく一人を追っています!」

柳「左舷30度、現在高度約500ッ!」

尾栗「……あれかっ!」バッ



403 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:32:55.29 ID:hyCLmIaCo

ドーバー海峡 上空

グオオオオオオオオ!

坂本「―――バルクホルン!」

芳佳「バルクホルンさん!」

ちょうど応援に駆け付けた二人が、落ちていくバルクホルンを追う。
急降下に伴い、独特の風切音が響いた。

芳佳「……えいっ!」

下から芳佳が支えるように、上から美緒が引っ張るように受け止めた。

芳佳「わっ……ひどい怪我をしています!」

坂本「馬鹿者、一人で突っ込み過ぎだ」


ネウロイ「キュアアアアア!」

ババババババ!




404 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:33:54.56 ID:hyCLmIaCo

芳佳「わっ!」ヴォン

とっさの攻撃に反応した芳佳がシールドで応戦する。

坂本「ぐっ……!」

美緒の方はバルクホルンを背負うので手いっぱいであり、応戦ができずにいた。


坂本(マズイな、私はバルクホルンを支えるので手一杯)

坂本(下は海、最寄りの陸地も遠く見えない)

坂本(何よりも宮藤を一人で戦わせるのはキツイ。慣れないMG42に手間取っているようだ)

坂本(かといって宮藤にバルクホルンを渡し、担当を交代する隙もない)

坂本(ヤツは完全に我々を捕えた。背中を見せた瞬間容赦なく撃ってくる)

坂本(このままでは防戦すら……離脱を視野に入れても難しいぞ)


405 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:35:00.15 ID:hyCLmIaCo

「みらい」 CIC

尾栗『CIC艦橋!目視にてウィッチの負傷者を確認!』

尾栗『現在他のウィッチが負傷者を抱え、もう一人が防戦中』

尾栗『詳細は不明なれど、容態は意識不明の模様!』

ざわっ……!

青梅「やはりあれは……」

角松「被弾していたのか」


梅津「……他のウィッチの応援は?」

CIC員A「先ほど501基地を発ちました!このままの速度で約8分!」

菊池「ダメだ、遅すぎる!」

菊池「負傷者を抱えたまま長く戦えるはずはない」


406 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:36:44.92 ID:hyCLmIaCo

菊池「無線に割り込んで、撤退を促すことができれば……」

青梅「ヘリなどの中継がなく、現在はヴィルケ中佐を介しての連絡もできません」

梅津「対空ミサイルはどうか?」

菊池「十分射程圏内ですが、彼女たちを巻き込む危険が十分にある以上……」


青梅「……発光信号はどうです?」

何気なくはなった青梅一曹の言葉に角松が反応した。

角松「……航海長、発光信号が伝わるギリギリの距離は?」

尾栗『よく見れば互いが見える距離です』

尾栗『今でも十分いけます!』



407 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:37:31.91 ID:hyCLmIaCo

ドーバー海峡 上空


ダララララララララ!

芳佳「はぁっ……はぁっ……」

芳佳(だめだ、やっぱり私一人じゃ火力が足りない……)

ネウロイ「キャアアアアア!」

ババババババッ!

芳佳「くうっ……」ヴォン!

芳佳(坂本さんはバルクホルンさんを抱えるから撃てない)

芳佳(それにさっきの傷、結構深くて危ない傷……)

芳佳(どうしたら……!)



チカッ!

芳佳「!」

懸命にシールドを張る片隅に、かすかに光るものを見つけた



408 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:38:55.52 ID:hyCLmIaCo

チカッ!チカッ!チカッ!

芳佳(あれって確か……)

芳佳「坂本さん!あそこ見てください!」

坂本「なに?」

チカッ!チカッ!チカッ!

坂本「艦か……!?」カッ

眼帯をめくり、魔眼を発動させて遠くを見る美緒。

チカッ!チカッ!チカッ!



坂本「……「みらい」だ!」



409 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします (福岡県) [saga]:2012/11/12(月) 20:39:53.40 ID:hyCLmIaCo

芳佳「なんて言ってるんですか?」

坂本「負傷者を回収するといっているが……」

坂本「なるほど、そういうことか」

坂本「宮藤、シールドを張りながら後退するぞ!」

芳佳「でも、ネウロイが……」

坂本「そいつは「みらい」に任せろ!」

芳佳「わ……わかりました」

ネウロイを警戒しながら、ビームを塞ぎながら、二人は少しずつ離れて行った。



424 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:02:28.94 ID:eke+S5DCo

「みらい」 CIC

青梅「ウィッチーズ3、ネウロイより離れます!」

梅津「左対空戦闘、CIC指示の目標」

菊池「主砲発射管制変更、光学照準機にリンク」

CIC員A「発射管制、手動に変更!」

菊池「目標の先端部を狙え。集中的な着弾の衝撃で針路をずらす!」

CIC員B「主砲、FCS-2リンクオールグリーン!」


梅津「主砲、うちーかたはじめ」

CIC員A「うちーかたはじめ!」カチッ!



※射撃管制装置の光学照準機:通常の射撃であれば、自動で射撃管制装置(FCS-2など)によって計算・調整→発砲という手順であるが
                    意図的に外す、警告射撃などを行う場合は外付けの光学機器による手動照準の射撃も行える。



425 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 19:03:21.41 ID:eke+S5DCo

ドンッ!ドンッ!

短い間隔で発射される127mmの主砲。

ゴアッ!ドゴッ!

ネウロイ「ギャアアアアアアッ!」

この時代にしては小さい部類の砲弾とはいえ、機銃弾ははるかに強力な127mm。


尾栗「いいぞ、撃ち続けろ!」

尾栗「回避運動開始、少しずつ遠ざかれ!」

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

ネウロイ「ギャアアア!」

ゴンッ!ドォン!


芳佳「すごい、圧倒してる……」

坂本「いや、これはあくまでも牽制射撃だ」



426 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 19:04:11.84 ID:eke+S5DCo

やがて「みらい」の上空に達するウィッチ。
そのころにはすでにネウロイとの距離も開いており、減速状態に入っていた。

また、後部甲板にはすでに飛行科の隊員や衛生科の隊員が待機していた。

飛行科員A「CIC発着艦指揮所、負傷者を抱えたウィッチが到着しました」

飛行科員A「着陸許可願います」

梅津『この状態での着陸は可能か?』

飛行科員A「はい、強行する模様です」

梅津『よし、許可する』

飛行科員B「航空機着艦用意!」

飛行科員C「とはいってもヘリじゃなくて人間だけどな……」


※発着艦指揮所:飛行甲板の右舷前方に設けられている、ヘリの離着陸などの指揮をする場所。
           いわば護衛艦の小さな航空管制室。



427 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 19:04:57.43 ID:eke+S5DCo

坂本「宮藤、おまえは艦への着地に慣れてないだろうからよく聞くんだ」

坂本「基地と似たような線があるだろう、あそこに降りろ」

芳佳「あ、あんな狭いんですか!?」

坂本「臆することはない。ギリギリのところでホバリングをした後、ゆっくり足を下すだけだ」

坂本「ただ艦は前に進んでいるから艦に合わせて微速前進、そして足につける前に後ろの余裕を確認だ。いいな?」

坂本「私はこのままネウロイを食い止める」

坂本「バルクホルンを、頼むぞ」

芳佳「……はい!」



428 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:06:05.57 ID:eke+S5DCo

その頃、「みらい」唯一の女性隊員にして衛生士である桃井一尉は、後部甲板の上で負傷者収容の待機をしていた。

桃井(あんな子が、あのネウロイと戦ってるなんて……)

ウィッチをこの目で見るのは初めてであり、驚きを隠せない。


航空科員A「甲板作業員、配置よし」

航空科員B「誘導開始!」

格納庫上部の電光板が光り、隊員が手旗信号を送る。

とは言いつつも、どれくらいが有効で通用するのか未だに確認が取れていない。
よって拡声器による音声誘導を行っていた。

航空科員A「そのまま水平に、艦左舷側へ!」


429 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:07:24.33 ID:eke+S5DCo

芳佳(前に進みながら、バランスを崩さないように……)

グオオオオオオォォ……

スタッ

徐々に高度を下げ、甲板に降り立つ。

芳佳「ふぅ……」

芳佳「……わっ!」

気を抜いたせいか、肩に背負っていたバルクホルンの体重が一気にかかってしまった。
よろける芳佳を支える桃井一尉。

桃井「早く担架で、医務室に運んで!」

芳佳「あ、私も行きます!」


430 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:09:15.65 ID:eke+S5DCo

「みらい」 医務室

バタンッ!

桃井「血圧は?」

衛生士A「徐々に低下中、出血も続いています!」

桃井「胸部より出血多量……すぐに処置を!」

桃井「これほどひどい怪我だと、すぐに設備の整ったところに移送した方がいいけど……」

桃井(果たして間に合うか……)

棚を漁り、必要な薬品等を出す桃井一尉。

芳佳「……私も手伝います!」

桃井「経験はあるの?」


431 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:10:17.25 ID:eke+S5DCo

芳佳「ちょっとした治療の経験もありますし……」

芳佳「治癒魔法も使えます!」

桃井「治癒……?」

その言葉に一瞬戸惑う隊員たち。
それを気にせず、ベッドに寝かされているバルクホルンに触れる芳佳。

ヒュイーン……

衛生士A「わっ!」

衛生士B「魔法…陣……?」

部屋にあふれる青い光と魔法陣に驚く一同。

桃井(まるで昔見た漫画のような光景……)

桃井(傷口が塞がっていく)


傷が少し収まり、バルクホルンの意識が戻る。

ゲルト「宮藤……」


432 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:11:03.30 ID:eke+S5DCo

芳佳「バルクホルンさん、もうすこしです……」

ゲルト「私に構うな、その魔力をネウロイに使うんだ……」

芳佳「いやです、絶対にバルクホルンさんを見捨てたりしません!」

ゲルト「馬鹿を言うな……この怪我の治癒にどれだけかかると……」

芳佳「絶対に…救ってみせます……!」ハァハァ

大量の魔力を消耗しているせいか、芳佳の呼吸が荒くなる。

芳佳「たとえ、みんなが無理だとしても……」

芳佳「目の前にいるバルクホルンさんだけでも、ぜったいに……」


ドサッ

衛生士A「あっ!」

桃井「……大丈夫、気を失ってるだけ見たい」

桃井「すこし寝かせてあげて」

ゲルト「魔力を使い過ぎたんだ。無茶なことを……」


433 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:12:26.10 ID:eke+S5DCo

ゲルト「そういえば基地でも話したことが……」

ゲルト「やっぱり無理なんだよ、全員を救うなんて……」

バルクホルンが悔しそうにシーツを握るのを見る桃井一尉。

桃井「……たしかに全員は救えないかもしれないけどね」

桃井「そこであきらめてちゃそもそも話にならないでしょ?」

桃井「この子だってそう、目の前に見える人の事だけは絶対に救ってやるってのよ」

桃井「あなたも、若いけど立派な軍人。もっとシャキッとしなきゃ!」

ゲルト「………」

突然かけられた言葉に目を丸くするバルクホルン。


ゲルト「……未来の女性は、強いんだな」

桃井「少なくとも、この艦の男よりはね」


434 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:13:48.87 ID:eke+S5DCo

「みらい」 艦橋

柳「………」

柳(まるであれは、ナチスドイツの秘密兵器、トリープフリューゲル)

柳(そういえば、あのエイの敵も見てみればナチスのステルスモドキに似ているような……)

柳(確かホルテン……いや、でも形が……)


同じく艦橋にてネウロイの方向を見張る麻生先任曹長。

麻生「……!」

麻生「艦橋一番、敵ネウロイ回頭を確認!」

尾栗「ちっ、気の早い奴だ」

カッ!

尾栗「……っ!」


※トリープフリューゲル:ナチスドイツが設計したジェット戦闘機。
              後のVTOL研究のベースになったらしい。
              http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%83%E3%82%B1%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%95_%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB
 
※ホルテンHo229:ナチスドイツが設計した全翼型戦闘爆撃機。
            ステルス機のような外見をもったジェット機でもあった。
            http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%B3_Ho229


435 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:15:25.40 ID:eke+S5DCo

「みらい」 医務室

ドオオンッ! グラグラグラッ!

突然の衝撃によろめく医務室員一同。

衛生士A「あぶなっ……!」

衛生士B「攻撃!?」


『艦橋CIC、ネウロイより攻撃を確認!』

『左舷100mに着弾!』


衛生士A「また始まったか……」

桃井「そこ、モタモタすんじゃないよ!」

桃井「傷は塞がったから、次は……」


436 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:16:30.68 ID:eke+S5DCo

「みらい」 CIC

ドオオオ……

艦の中心であるCICにも、ネウロイビームの着弾の振動が伝わる。

青梅「敵弾左舷15度、距離100mに着弾!」

青梅「……目標変針します! 3-1-0へ!」

菊池「まずい……」

菊池「敵の先端部分はすでに主砲の死角へと入った」

角松「砲撃による針路変更は無理か……」


梅津「……しかし奇妙だな」

青梅「何がです?」

菊池「敵の着弾率、ですね?」


437 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:17:20.93 ID:eke+S5DCo

角松「あれほど安定した弾道と威力を持つビーム」

角松「であるのにもかかわらず、この四発全て左舷側の海に着弾している」

菊池「敵にも射程距離がある……ということ」

青梅「直線弾道ならそのまま飛ばせばいいでしょうに……」

青梅「イマイチわからないですね、ネウロイという奴は」


菊池「ともかく、この推測が正しいのなら敵の射程距離は」

菊池「約10km」

角松「主砲の射程時の距離も約10km。先の砲撃時に攻撃されなかったのが幸運だな」


青梅「……とォ」

青梅「増援ウィッチーズ、間もなく到達します!」


438 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:18:24.39 ID:eke+S5DCo

海域上空


グオオオオオオ……

エーリカ「みえた!」

ミーナ「……あれね」

シャーリー「「みらい」に攻撃を仕掛けてるみたいだ」

ペリーヌ「幸い距離が遠いようですけれど……」

ミーナ「でもこのまま進めば攻撃圏内に入るわ」


ミーナ「シャーリーさんとルッキーニさんで先行、ネウロイをかく乱させて」

シャーリー「了解、待ってましたぁっ!」

ルッキーニ「いっくよーっ!」

足の速い二人が編隊から別れ、先に行く。

ウォオオオオオン……



439 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:19:10.23 ID:eke+S5DCo

「みらい」 艦橋

ドオッ!

麻生「敵弾、左舷20度90mに着弾!」

尾栗「くそ、どんどん近づいていやがる」


柳「お……」

柳「航海長、ウィッチーズの増援を確認!」

柳「先頭2つ編隊から離脱、接近します!」

尾栗「ようやく来たか」

尾栗「頼むぜ、魔法使いさんよ」


440 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:20:07.11 ID:eke+S5DCo

シャーリー「よーしルッキーニ、このまま突っ込むぞ!」

ルッキーニ「らじゃー!」

ルッキーニ「いっけー!!」

ダダダダダダダ!

ネウロイの周りをぐるぐる回る二人。
ルッキーニのブレダ、シャーリーのBAR機関銃が火を噴く。

ミーナ『二人はそのまま高速機動による攻撃を』

ミーナ『私たちは坂本少佐と合流してコアを探します』

シャーリー「了解っと!」

ドドドドドド!


441 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:21:07.92 ID:eke+S5DCo

坂本「ミーナ!」

ペリーヌ「少佐、ご無事で!」

ミーナ「美緒、あの子は?」

坂本「現在「みらい」の中で治療中だ」

坂本「宮藤もそこにいる」

リーネ「ほっ……」


坂本「ともかくここは、ウィッチによる戦闘に切り替えて「みらい」を離脱させるべきだろう」

後方でネウロイとの距離を取り始めた「みらい」を見て美緒が呟く。

ミーナ「そうね。コースがずれた分、距離は案外余裕があるし」

ミーナ「ここまで時間を稼げてよかったわ」


442 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:21:53.89 ID:eke+S5DCo

ガガガガガガ!

シャーリー「了解、「みらい」の離脱を支援だな」

シャーリー「ルッキーニ、ネウロイの右舷だけを攻撃だ」

シャーリー「「みらい」に当てるなよー」

ルッキーニ「合点承知ぃー!」

ネウロイの右側に攻撃が集中し、「みらい」側への攻撃がやむ。


坂本「リーネ、私がコアを見つけるから、そしたらすかさずに狙い撃て」

リーネ「はい!」チャッ!

そう言って美緒は眼帯をめくり、魔眼でネウロイのコアを探す。


443 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:22:45.42 ID:eke+S5DCo

坂本「……見つけた!」

坂本「リーネ、中心部の回転してるところだ!」

リーネ「はいっ!」

ドウッ! バキャアッ!

リーネの弾丸が見事に命中し、コアが現れる。
その時、ネウロイが先端部を上に向け上昇を始めた。

エーリカ「……ネウロイが!」

ペリーヌ「立った……?」

ミーナ「離脱する気かしら……」

やがて上昇は止まった後、胴周りが一周赤くなり、下向きにビームを発射した。

ババババババ!

ルッキーニ「うじゅっ!?」ヴォン!

シャーリー「っぶな!」ヴォン!

リーネ「きゃっ!」ヴォ!


444 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:26:59.40 ID:eke+S5DCo

ビームをとっさのシールドで受け止めるウィッチーズ。
めげずにシャーリーとルッキーニが攻撃を再開する。

シャーリー「お前の相手はこっちだー!」

シャーリー「なんで回ってるところにコアがあんだよー!」

ガガガガガガ!

だがネウロイは気にとめず全方位射撃を続けていた。

ネウロイ「キャアアアアア!」

ババババババババッ!


そのうちの一発が「みらい」の近くにも着弾、それもかなり近い位置に。

ドオッ!

尾栗「うおッ!」

柳「敵弾左舷30度、40mに着弾!」

尾栗「くそっ、頭働かせやがって」

尾栗「ウィッチの包囲網を破ってどうしても本土に行きたいのか、奴は!」



445 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:28:46.75 ID:eke+S5DCo

「みらい」 後部ヘリ甲板

航空科員A「至近弾が来るらしいぞ、気を付け……」

ドオッ! ザッバアアアッ!

航空科員A「うおっ!」

『左舷30度、40mに着弾!』

航空科員B「ぺっぺっ! 鼻に海水が入りやがった!」

ドオオッ!

その時、ひときわ大きな衝撃が甲板をゆすった。
うっかりバランスを崩した隊員が格納庫内へ飛ばされる。

航空科員C「おわっ!」

ガンッ!

航空科員A「っおい!」



446 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:29:48.40 ID:eke+S5DCo

「みらい」 医務室

プルルルル

桃井「はい医務室」

『後部甲板より、負傷者あり!』

『頭部打撲が一名、意識……不明!』

桃井「了解、至急向かいます」

桃井「後部甲板に意識不明の重症者、至急向かうわ」

衛生士A「了解!」

桃井「あなたも、安静にしておくのよ」

ゲルト「………」


447 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:30:36.10 ID:eke+S5DCo

ガチャ、バタン


ゲルト「行ったか……」

ゲルト(どうやらミーナ達が戦っているようだな)

ゲルト(窓が無くて戦況が確認できないのが残念だが)


ドオッ……ガタガタ……

芳佳「すぅ……すぅ……」


ゲルト(……どことなくクリスに似ているな)

ゲルト(あの時の私は、クリスを守れなかった)


ゲルト(……こんなところで何をしているんだ、私は)


448 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:31:40.32 ID:eke+S5DCo

ゲルト(こんなところにいていいのか、バルクホルン!)


ガタッ! バアン!

何を思ったか、ストライカーと芳佳に渡されていたMG42を抱えて外に出るバルクホルン。

ゲルト(海の匂いだ……)

ガラガラガラ……

前方より、担架を連れてくる桃井一尉とすれ違う。

ゲルト(さっき後部甲板に出向いたはずだから、こっちか!)

桃井「……あ、ちょっと!?」

そのまま横を通り過ぎるバルクホルン。
丁度解放されていた水密壁を通り過ぎ、後部甲板へと向かった。


449 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:34:19.12 ID:eke+S5DCo

「みらい」 後部甲板

ドタドタドタ

ゲルト「すまない、退いてくれ!」

航空科員A「うおっと!」

航空科員B「……あれ、さっき運ばれた子じゃないか!?」


ゲルト(滑走路は短い、垂直離陸で行くしかないか)

ドゥルッ!ドドドドドドド……

ストライカーのエンジンを始動、下にシールドを展開させ、魔力を集中させる。

ゲルト(今度こそ、守って見せる!)


ゲルト「いっけええええええ!」

込めていたパワーをに下向きにシールドに叩きつける。
凄まじい衝撃と共に、バルクホルンは飛び立った。

ドンッ!



450 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:34:54.82 ID:eke+S5DCo

「みらい」 CIC

ドオン!

突然起きた強い衝撃に驚く一同。

菊池「後部に衝撃!?」

CIC員A「被弾!?」

角松「各員、状況を報告せよ!」

『CIC発着指揮所、ウィッチが発艦しました!』

角松「なにっ!?」

青梅「……本艦後部に機影1を確認! 飛翔中!」


青梅「反射波は……ウィッチです!」


451 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:36:04.03 ID:eke+S5DCo

坂本「くそっ、コアが回転しているせいでタイミングがつかめない」

ダダダダダダ

ミーナ「……!」

ミーナ「後ろからウィッチ!?」

目を向けると、猛スピードで突っ込んでくるバルクホルンの姿が目に移った。



ゲルト「ハルトマンァァァアン! そいつを寄越せえええ!」

エーリカ「ほいきた!」ブンッ!

そう言って肩に背負っていたもう一つのMG42を投げ渡す。

エーリカ「結構重かったんだからねー!」



452 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:36:52.25 ID:eke+S5DCo

ダダダダダダダダ!

バルクホルン得意の2丁重機関銃が炸裂する。
弾薬量2倍のその攻撃は、回転でコアが隠れる隙を与えない。

ネウロイ「ギャアアアア!」

ガキガキガキキキキキ!

パキンッ! パアアアアアン!


やがてネウロイのコアが粉々に砕かれ、その巨体も空中に四散した。

ルッキーニ「やたーっ!」

シャーリー「おお、決めたなー」

エーリカ「いえーい! ナイストゥルーデ!」


ゲルト「はぁ、はぁ……」


453 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:38:02.68 ID:eke+S5DCo

ミーナ「トゥルーデ!」

ゲルト「ミーナ……」

パン!

平手を一撃食らわした後に抱き着くミーナ。

ミーナ「あれほど無茶はしないでって言ったのに……」

ゲルト「すまない……」


ミーナ「……お帰りなさい」

ゲルト「ああ」

ゲルト(みんなを救う……か)

ゲルト(それを思い出させてくれたことを、いつかお礼を言っておかなきゃな……)


454 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:39:22.35 ID:eke+S5DCo

「みらい」 CIC

青梅「目標光点、消失しました」

梅津「ふぅ……」

菊池「乗り切ったか……」

角松「………」

やけに静まる「みらい」のCIC。
各々、何を考えているのか……。


青梅「……お」

青梅「ウィッチーズ、編隊を再編、変針。帰投します」

梅津「よし、本艦も帰投針路をとれ」

角松「……了解」

角松「艦回頭180度! 針路3-1-0!」

そして「みらい」とウィッチーズは自分たちの守った場所へと帰って行った。


455 ◆d9Q1x7iQso [saga]:2012/12/03(月) 19:40:57.65 ID:eke+S5DCo

♪ストライクウィッチーズ予告BGM

芳佳「基地の港に「みらい」への補給する一隻の輸送船が来ました」

芳佳「男の人たちがみんな一生懸命働いています。ご苦労様です」

芳佳「……あ! あの白い海軍服、扶桑の士官服だ!」

芳佳「よく見えないけど、佐官かな……? 一体何なんだろう?」


芳佳「次回、『交流』」



457 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/03(月) 19:48:10.78 ID:DKdNUG3jo

ついに出るのか


458 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/03(月) 22:45:02.15 ID:+OBJitkp0
乙乙!


459 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/03(月) 22:53:47.66 ID:R0vdaay0o
まさか、彼来るのか
どう動くのか楽しみ


460 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/03(月) 23:52:39.55 ID:nLsDZ8Iqo
乙ー!




転載元

芳佳「イージス護衛艦『みらい』……?」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1342702050/








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    コメント一覧
  1. 774@いんばりあん [ 2014/04/01 18:34 ]
  2. 前もこのクロスは見たがそっちより大分作りこんでるな
    後編はよ
  3. 774@いんばりあん [ 2014/04/02 00:36 ]
  4. 航空科の活躍に期待
  5. 774@いんばりあん [ 2014/04/02 04:16 ]
  6. まだ完結してないのね
  7. 774@いんばりあん [ 2014/04/02 06:03 ]
  8. ヒュンヒュン飛んでる奴撃ち落とす精度のビームうってくる奴が相手だから相性悪いだろjk

    装甲も耐える為のものじゃないし機動力も船としてはってだけだしな…

    でもコアさえ捕捉できたら先手とってボコボコに出来そうなんだな
  9. 774@いんばりあん [ 2014/04/02 10:53 ]
  10. むしろ一気に纏めてほしい・・・

    どうでもいいがこのサイト
    スクロールバーを↓や↑いかすの
    スゲー重いんだが・・
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