芳佳「イージス護衛艦『みらい』……?」 【前編】 490 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 21:53:56.45 ID:X7x43HfGo
「……スレ内に機影なし」
「よし、メインタンク・ブロー!」
「アイアイサー! メインタンクブロー!」
というわけで、遅れに遅れた投下です
491 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/25(月) 21:54:17.23 ID:XomZ2RnGo
よっしゃ!
492 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 21:55:42.77 ID:X7x43HfGo
ゴオオオオ……
朝日が昇り始めた空、一人のウィッチが飛んでいた。
サーニャ「ふぁ……」
夜間哨戒の帰りであるサーニャ・V・リトヴャク中尉は少し小さなあくびをする。
その時ふと、頭の魔導針が反応する。
サーニャ「……ブリタニア国籍、Ju52」
サーニャ(ブリタニアからの定期便……)
若干寝ぼけはじめた頭で考え、さりげなく追い抜く。
サーニャ「……あ」
見えてきた司令部の軍港に鎮座している「みらい」
そのわきには、さっきとは別のJu52が今まさに着水していた。
493 :
>>491「発見された!ダイブ!ダイブ!」 [saga]:2013/03/25(月) 21:58:12.95 ID:X7x43HfGo
ォオオオオ……
艦橋員A「右舷30度、航空機視認!」
柳「あれは……Ju52です!」
尾栗「さっきも飛んできなかったか?」
艦橋員A「隣に着水しましたね」
柳「若干ペイントが違うところから、別の基地から来たのでしょう」
尾栗「また別のが一機来たわけか」
柳「生で見れるなんて……」
柳「すっげー!」
グオオオオ……ザッパアア
凄まじい水しぶきをあげながら着水するJu52。
柳「機体、無事に着水!」
494 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 21:59:21.22 ID:X7x43HfGo
基地内ブリーフィングルーム
坂本「……サーニャ以外、揃ったようだな」
エーリカ「うーい」
エイラ「夜間哨戒上がりで寝てるナ」
坂本「ではエイラ、後でお前が伝えておいてくれ」
エイラ「ワカッタ」
ミーナ「では、これより説明を始めます」
シャーリー「これまた急だな」
ゲルト「事態は刻々と変わっていくものだ」
芳佳「やっぱり大変なんですね……」
ペリーヌ「楽して平和が守れるのなら、世話ありませんわ」
495 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:01:38.24 ID:X7x43HfGo
ミーナ「こほん」
ミーナ「それでは、本題に入ります」
ミーナ「明日12:00より第二回目の「みらい」補給が行われます」
ミーナ「司令部に要請した補給が裁可され、今回は正式な補給となります」
ミーナ「また、ブリタニア本土より燃料輸送用の大型船が一隻来航予定です」
ミーナ「港付近は大変混雑が予想されますので、気を付けてください」
シャーリー「駅のアナウンスだな」
リーネ「お邪魔にならないようにしないと……」
坂本「……それと、もう一つ重要な話がある」
ゲルト「ん?」
496 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:05:40.18 ID:X7x43HfGo
坂本「扶桑の将校が二人、その船に同乗する」
芳佳「扶桑の将校さんがブリタニアにいるんですか?」
坂本「ああ、今の対ネウロイ戦線の司令部はブリタニアだ」
坂本「扶桑だけじゃない。あらゆる国の軍人がブリタニアにいるんだ」
坂本「お前の乗ってきた遣欧艦隊もその一環だ」
坂本「元々島国同士だけあってブリタニアと扶桑は交流もあるしな」
リーネ「私もブリタニアでたくさん扶桑の人見たことあるよ」
芳佳「へぇ~」
ゲルト「となると、宮藤たちと一緒に来た艦隊の将校か?」
坂本「少し違うな」
ミーナ「……最近、連合軍で『大反攻作戦』が計画されているんだけど」
坂本「先も言ったように、それに伴った各国軍司令部の一部がブリタニアに移動中だ」
497 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:08:08.60 ID:X7x43HfGo
芳佳「大反攻作戦……リーネちゃん知ってる?」
リーネ「うーん、聞いたことはあるけどよくは知らないなぁ」
ゲルト「今までの戦いのように小さなものでなく、近いうちに大攻勢に出ようというものだ」
ゲルト「だが、まだよく決まってないんだろう?」
ミーナ「ええ、大まかにしか決まってないのよ」
坂本「各国海軍の艦砲の飽和射撃を露払いとし、各国ウィッチの連携による総力戦だ」
エイラ「ずいぶんと豪勢ダナ……」
坂本「そうでもしないと倒せない敵、というわけだ」
ペリーヌ「でも、まだ骨組みの状態ですのね」
ミーナ「そう、各国の事情があるのよね……」
498 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:10:34.52 ID:X7x43HfGo
ミーナ「では、本題に戻りますが……」
その前にルッキーニが大きく手をあげ、話をさえぎる。
ルッキーニ「ねぇ中佐、その人たちは何の用があるのー?」
シャーリー「こらルッキーニ、本題にもどれないだろ」
坂本「いや、ちょうど本題にも関係あることだ。今言っておいた方がいいだろう」
エイラ「話まとめろヨナー……」
気を取り直し、ミーナが続ける。
ミーナ「本日の補給作業と同時に、「みらい」を視察されます」
エーリカ「「みらい」を視察? なんのために?」
坂本「ちょっと上の方で一悶着あってな……」
シャーリー「……なぁ中佐、私たちが知らないうちにいろいろ進みすぎやしないか?」
499 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/25(月) 22:11:27.71 ID:IkSxBqCAO
待ってたぞカイエダァァァァッ!!!
500 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:15:07.33 ID:X7x43HfGo
―――――――――――――――――
数日前 ブリタニア 某所
報告などの業務のため、ミーナはブリタニアへと赴いていた。
そして例のごとくチャーチルとマロニーに面会する。
チャーチル「ところで、「ミライ」への補給を要請したようだな、ミーナ中佐」
ミーナ「はい」
ミーナ「軍艦には特殊な、軽油燃料の大幅な補給」
ミーナ「並びに「みらい」乗員への各補給物資の要請を行いました」
マロニー「その要請だが……」
やはり一筋縄で閣議の通過は無理だったか……。
代案、もしくは説得を―――と考えていたミーナであったが、意外にも出された言葉は肯定の意であった。
マロニー「無事、審議を通過した後承認されたよ」
マロニー「かなり疑問の声が上がる議題ではあったがね」
ミーナ「………」
501 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:17:18.00 ID:X7x43HfGo
マロニー「よってその疑問点をなくすべく」
マロニー「補給と同時に、こちらが派遣した軍人による「ミライ」の立ち入り検査を行う」
ミーナ「!」
立ち入り検査……その言葉にミーナは不安を覚える。
マロニーがこれを提案したとすれば、その目的は……と、嫌なシナリオが脳裏をよぎる。
ミーナ「……臨検を行う、とおっしゃるのですか?」
マロニー「臆することはない、単なる視察だよ」
ミーナ「………」
チャーチル「あの艦の活躍は先の通りよく聞いている」
マロニー「だが全ての国が、君たちの様に簡単に彼らを信用し仲良くわけではないのだよ」
ミーナ「「みらい」側の承諾を得ずとも?」
チャーチル「もちろんこちらは視察をさせてもらう側だ。彼らの意向を尊重する」
ミーナ「………」
―――――――――――――――――――
502 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:20:52.02 ID:X7x43HfGo
ゲルト「それで、「みらい」側は?」
ミーナ「ええ、了承したわ」
ミーナ「燃料を主とした補給と引き換えになっている以上、仕方ないでしょうね」
断る理由もない……ではなく、断れないということ。
シャーリー「結構えげつないなぁ……」
ペリーヌ「ですが、それくらいは当たり前のことではありませんこと?」
坂本(やはり、未だ不信はぬぐいきれず……か)
やや暗い雰囲気。
見切りをつけたミーナは、話を続ける。
ミーナ「次に、視察員として同乗する技術士官を紹介します」
入ってきたのは、どこかでよく見た顔。
ミーナ「ウルスラ・ハルトマン中尉、どうぞ」
503 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:23:26.66 ID:X7x43HfGo
「みらい」CIC
光点に包まれたここでは、先ほど戻ってきた菊池に報告が行われていた。
青梅「先のJu52二機は予定通りに着水しました」
菊池「一機がロンドン、もう一機が南米……ノイエ・カールスラントからか」
菊池「欧州は大半を制圧され、カールスラントの中枢がそこに移転したと聞いた」
青梅「となると、こっちの航空機にいるのは」
菊池「派遣されるという技術顧問だろうな」
青梅「……あんまり乗り気じゃないみたいですね」
菊池「ああ、こういうのは苦手だ」
機器の丈夫な部分に体重をかけ楽にし、考えに浸る菊池。
菊池(出た案が案だけに……な)
504 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:26:17.16 ID:X7x43HfGo
――――――――――――――――――――――――――
数日前 「みらい」士官食堂
「みらい」士官数人は、ミーナから知らされた通達について考えていた。
それは連合軍総司令部からの、補給についての交換条件。
角松「海軍士官二名の乗艦、視察」
菊池「そして技術士官への情報提供」
梅津「……以上が、燃料補給との引き換えに連合軍より要請されたものだ」
尾栗「はーっ、思い切って来たもんだな」
ギシッ、と背もたれに体重を預ける尾栗。
尾栗「隙あらばじゃないが、やはり抜かりない」
菊池「使える手を打ってきた、ということか」
菊池「技術士官の派遣という面から、向こうの思惑は見え見えだ」
505 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:28:13.38 ID:X7x43HfGo
角松「だが断るわけにもいかないだろう」
角松「本艦の燃料も、残るところ僅かとなった」
梅津「これからの事を考えるに、いつまでも501を介しての補給というわけにはいくまい」
尾栗「ジョーカーは向こうか……」
梅津「皆はどう思う?」
角松「私は、あくまで視察のみ……」
角松「我々の自衛隊としての体制や指揮系統に何ら影響のないのなら、賛成します」
尾栗「自分も賛成です」
尾栗「本艦の生存権を確約するためにも、補給の手はずを整えておかなければなりませんや」
506 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:29:28.53 ID:X7x43HfGo
だがここで一人異を唱える者がいた。
菊池「俺は、もう少し厳しくするべきだと思う」
尾栗「……菊池?」
角松「それで、厳しくするとは?」
菊池「別に視察自体を断るわけではない」
梅津「視察の対象を厳しく制限する、ということか」
菊池「はい、その通りです」
菊池「向こうの目的はこちらの情報収集」
菊池「技術士官派遣ということを見る限り、本艦から少しでも何かを得ようという算段でしょう」
507 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:32:57.62 ID:X7x43HfGo
尾栗「いやいや、流石に俺らだってそのことは考えてるぜ?」
尾栗「一から十までペラペラしゃべるわけじゃない」
尾栗「せいぜい横須賀での軍艦の一般公開ぐらいに……」
だがそれを制する菊池。
菊池「それよりも、と言っているんだ」
菊池「魔法力という未知なる力があるとはいえ、この時代にとって我々は驚異的なものだ」
菊池「特に技術的な面で見れば、途方もなく進んでいる」
菊池「あまり信用ならない相手なのなら、こちらの優位性を保っておく必要もある」
角松「優位性?」
菊池「こちらのアドバンテージを向こうに知られないようにする」
菊池「対「みらい」用の作戦を少しでも練りにくいようにだ」
508 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:36:46.53 ID:X7x43HfGo
やや過激なようにも聞こえる菊池の主張。
だがこれも、冷静にこの世界との安全な距離を彼なりに考えての事だ。
角松「……ならばどこまで削る?」
副長角松が問う。
菊池「主要兵装の性能は公開しない」
菊池「迫られた場合、使用素材や機関などを公開し、射程や搭載数、威力は厳重に守るべきだ」
菊池「我々は所詮異世界人。敵対しない確たる保障などない」
厳しい口調で論ずる菊池。
尾栗「いずれバレるもんだとは思うがなぁ」
柔らかく反論する尾栗。
菊池「遅らせるだけでも意味はある」
角松(雅行はあくまでもこの世界と中立・一線を引くか……)
509 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:40:18.35 ID:X7x43HfGo
尾栗「だが、それもどうだかな」
尾栗「だいたいこれだけ近くて、すべてを隠し通すなんて無理なんだよ」
尾栗「遅かれ早かれバレる。場合に寄っちゃ、いっそのこと信用を得る手段として情報を開示すればいい」
尾栗「そして向こうからもこっちに使える情報を引き出して行けばいいんだよ」
あくまで開示の方向を強く主張する尾栗。
菊池「その安易さが危険だというんだ」
尾栗「だがな、菊池。こっちから腹を割らないと向こうは割ってくれないぜ」
角松(康平はこの世界との部分的な協調か)
二人の議論は、時に角松や梅津を混ぜながらしばらく平行線をたどった。
―――――――――――――――――――――――――
510 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:42:16.72 ID:X7x43HfGo
そして出された結論は、両者の間を取るという判断。
下した梅津艦長らしい決断だった。
菊池(適度なところで折り合いをつけるというのが、どれだけ難しいかということか)
菊池「こういうのは苦手だ」
ぼそっとつぶやいた菊池の言葉が、敏感な青梅の耳に入る。
青梅「え?」
菊池「いや、なんでもない」
菊池「それより、予定通りに頼むぞ」
菊池「来るのは別世界の見学者だからな」
青梅「了解」
511 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:48:25.11 ID:X7x43HfGo
同じ頃 ブリタニア
港町のタンカーの甲板の上で、二人の海軍将校が会話を交わしていた。
その船体に描かれている艦名は、「東進丸」。
「艦船に給油するため、本艦に満載されたのは全て軽油……」
「なるほど確かに、話通り奇妙な艦なようですね」
大尉の階級章を付けた将校が隣の少佐に話しかける。
「だから我々が派遣されるのだろう」
「これも、草加少佐の有能さゆえ抜擢されたのでしょう」
おだてられた、草加と呼ばれた若い将校が軽く笑い返す。
草加「ははっ」
512 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:50:37.46 ID:X7x43HfGo
草加「買いかぶり過ぎだよ、津田大尉」
草加「艦の乗員は扶桑人によく似ているらしい」
草加「彼らは「日ノ本の人」、日本人というようだ」
草加「少しでも警戒心をなくそうと、我々を選んだのだろう」
津田と呼ばれた、草加の部下が答える。
津田「警戒心を? 何のために……」
草加「津田、我々の任務はなんだ?」
津田「不明艦の査察であります」
草加「ではなぜ、上は不明艦を査察させたと思う?」
津田「協力的ではあるものの、信頼できる相手か見極めるためではないでしょうか?」
513 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:52:02.97 ID:X7x43HfGo
草加「はたしてそれだけだろうか?」
津田「は?」
草加「信頼するためには、相手の事を知らなければならない」
草加「相手の事を知る……つまり、情報だ」
津田「情報……」
草加「より情報を引き出すためには、少しでも警戒心というのは解かなければならない」
草加「情報を扱う参謀として、大切なことだよ」
津田「は……」
ボ―――――――!
汽笛を鳴らし、タンカー『東進丸』は501基地へと向け出港した。
514 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:54:34.38 ID:X7x43HfGo
翌日 501基地
その日、501メンバーは港に出て『東進丸』の入港を眺めていた。
シャーリー「おおー、あれが補給用の船かー」
エーリカ「宮藤ー、あの扶桑語なんて書いてるのー?」
芳佳「艦名のところですか? 『とうしんまる』ですね」
ルッキーニ「トーシンマル!」
芳佳「それにしても、ハルトマンさんって双子だったんですねー」
昨日のウルスラ・ハルトマンの紹介をされた時の事を思い出す。
あの時の、カールスラント出身者以外のみんなの驚き方と言えば……と一人ほくそ笑む宮藤。
リーネ「私も知らなかったなぁ」
ゲルト「いつもだらけてるコイツとちがって、ノイエ・カールスラントの技術局にいたんだ」
サーニャ「私が使っているフリーガハマーも、そこで作られたって聞いたわ」
エイラ「へー、そうなのカ」
515 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:56:12.09 ID:X7x43HfGo
坂本「……1万トン級のタンカーとは、またデカいものを寄越したな」
ミーナ「軽油が約3000トン、またその他食料などの補給品も積み込んでいるみたいよ」
坂本「「みらい」の給油量から見て約二回分か」
ペリーヌ「労働者の方も乗り込んでいますのね」
ミーナ「こちらの整備員に手間をかけさせないようにという配慮かしら?」
坂本「……だといいんだがな」
坂本(このチャンスを前にして、奴が何も考えていないとは思えん)
ぺリーヌ「少佐?」
坂本「いや、なんでもない」
坂本「それより下に降りるぞ。挨拶をせねばならんからな」
516 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 22:58:03.61 ID:X7x43HfGo
「みらい」 甲板
艦橋員A「左舷30°距離300、東進丸確認!」
艦橋員B「東進丸より手旗信号!」
尾栗「貴艦ノ左舷ニ接舷ス、許可ヲ求ム……だとォ?」
尾栗「舵効きの悪い輸送タンカーが、タグボートもなしになぁ……」
角松「可能か、航海長?」
尾栗「向こうがミスらなければ、こっちは行けます」
梅津「無謀なのか、よほど自信があるのか……」
梅津「まぁよかろう。接舷用意だ」
角松「了解!」
角松「航海長、接舷用意!」
517 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 23:01:01.90 ID:X7x43HfGo
尾栗「アイサー! 左舷、横付け用ー意!」
航海科員A「左舷横付け用意!」
航海科員B「航海科の担当科員は左舷に集合!」
ダッダッダッダッ!
前甲板や後甲板など、甲板という甲板に「みらい」の航海科員が集まる。
尾栗「接触面にクッションを展開!」
尾栗「距測を厳に!」
航海科員C「クッション展開急げ!」
防舷物が次々に「みらい」の左舷に吊るされる。
航海科員D「防舷物展開完了!」
尾栗「接舷要員、配置につけ!」
※防舷物:船が横につけ、艦艇に傷をつけないように、ぶら下げる緩衝材。
518 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 23:03:05.28 ID:X7x43HfGo
航海科員B「各部要員配置よし!」
東進丸船員A「サンドレッド送れ!」
ブンブンブン……バアッ!
砂袋の巻き付いたサンドレッドが「みらい」の左舷に投げ込まれる。
東進丸船員B「一番巻けーっ!」
「みらい」側の航海科員が飛んできたサンドレッドをボラードにひっかる。
そして先の合図とともに巻き上げる。
ギィッ、ギィッ、ギィッ、ギィッ……
ボスッ!という音とともに、東進丸と「みらい」の距離が埋まる。
その間は人が軽く超えれるほどに狭まった。
それを見て、「みらい」と東進丸両方の船員が一息つく。
航海科員A「全く、タグボートなしの接舷なんて初めてだぜ。よくやるなァ」
無意識に笑みを漏らしあう双方の船員であった。
※サンドレッド(細索):船同士や陸に接舷するために使うロープ、いわゆる舫(もやい)の前に渡すヒモ。
舫よりも細く投げやすく、これを通した後に巻き上げるとのこと。
※ボラード:港などにある舫を巻きつける、足を乗せたくなるアレ。
519 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 23:04:27.28 ID:X7x43HfGo
隣り合わせに軍艦とタンカーが停泊するなか、三方が顔を合わせる。
ミーナ「カールスラント空軍中佐 ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケです」
ウルスラ「ノイエカールスラント技術局一課、ウルスラ・ハルトマンです。よろしくお願いします」
梅津「日本国海上自衛隊海等一佐 梅津だ」
角松「同じく海等二佐 角松です」
草加「扶桑皇国海軍少佐、連合軍付参謀 草加拓海です」
津田「同じく皇国海軍大尉 津田一馬であります」
草加「今回連合軍総司令部からの指示により「みらい」の視察に参りました」
草加「これが、あなた方の艦ですね」
梅津「うむ」
角松「ご案内します、こちらへ」
520 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 23:07:42.28 ID:X7x43HfGo
「みらい」から降ろされたタラップに登る一行。
そしてその上には尾栗が待っていた。
尾栗「海上自衛隊三佐、航海長の尾栗です」
尾栗「今回、自分が「みらい」を案内させてもらいます」
草加「ああ、よろしく頼みたい」
尾栗「ではまず……」
案内を始めようとした時、下からの声に尾栗の耳が反応する。
ルッキーニ「いーなー」
ルッキーニ「あたしものりたいー!」
シャーリー「わがままを言うんじゃないぞ、ルッキーニ」
ルッキーニ「芳佳やバルクホルンも入ったのにー!」
521 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 23:09:25.68 ID:X7x43HfGo
尾栗「……どうです? 艦長」
梅津「なにかな?」
尾栗「興味のあるウィッチたちも艦内を見学させませんか?」
隣にいた菊池が即座に反論する
菊池「尾栗、何を考えている?」
尾栗「……菊池、いい機会だ」
尾栗「隊員たちは、いい刺激に飢えてたりもする」
尾栗「いつ帰れるかもわからず、死ぬかもしれない航海にな」
尾栗「だから新しい刺激を与えようってんだ」
菊池「それで彼女たちまでも艦に案内するのか?」
尾栗「これから同じ土俵で戦っていくんだ。知り合って損はしない相手だろ?」
菊池「………」
522 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 23:10:37.48 ID:X7x43HfGo
梅津「どうだろう、副長」
角松「………」
角松「それを決めるのは、我々でなく彼女たちでしょう」
タラップから見下ろした先には、先の提案について話すウィッチたち。
ルッキーニ「乗りたい!」
シャーリー「確かに、未来の技術って見てみたいなぁ!」
エーリカ「ウルスラ、どんなのかわかる?」
ウルスラ「お姉さま、それは中を見ないとわかりません」
ミーナ「困ったわね……」
坂本「まぁいいじゃないか、ミーナ」
ミーナ「美緒?」
坂本「せっかくの招待だ。無為にするのは失礼というもの」
ミーナ「だけど……」
523 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/03/25(月) 23:13:39.53 ID:X7x43HfGo
躊躇うミーナに、バルクホルンが声をかける。
ゲルト「私も少佐の意見に賛成だ」
ミーナ「トゥルーデ?」
ゲルト「私が「みらい」の艦内に運ばれたことがあっただろう?」
ゲルト「たまたまあの時は艦内に入る者がいたから出口が分かったが」
ゲルト「それが無ければ、艦内の通路がまるで分らなかった」
ゲルト「だが、これからも戦うということは、私のようになる可能性も否めない」
ゲルト「最悪、彼らの戦闘行動を乱してしまう可能性さえある」
説得にかかるバルクホルン。
坂本「ミーナ、仲間内なら適度な交流は必要さ」
ミーナ「………」
流石のミーナも押されたのか、承諾することとなった。
そしてウィッチたちは、「みらい」に続くラッタルへと足を進めた
526 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/25(月) 23:43:45.97 ID:0QGJjW2zo
乙です
まさか、ウルスラの登場が早くなるとは…
527 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/26(火) 08:26:58.61 ID:NKCxiITPo
乙!草加・津田キター
544 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 20:42:25.90 ID:mEpxNrzCo
ルッキーニ「うじゅあー! いこっ!シャーリー!」
シャーリー「落ち着けルッキーニ。船は逃げやしないさ」
リーネ「芳佳ちゃん、私男の人苦手で……」
芳佳「大丈夫だよリーネちゃん。きっとみんなやさしいよ」
「みらい」へ続くタラップを上るウィッチたち。
最初は3人だけであったはずの「みらい」艦内ツアーは、途中で起きたサーニャを含めすべてのウィッチが参加した。
尾栗「そうだ、柳。医務室に行って桃井一尉を呼んできてくれ」
柳「はっ」
尾栗「念を入れるにこしたことはないだろう?」
なるほどたしかに、彼女たちはまだ十代の少女である。
545 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 20:43:43.66 ID:mEpxNrzCo
艦首側のタラップを上り切った一行。
まず目に付くのが主砲のオットーメララ127mm速射砲である。
坂本「127mm……駆逐艦クラスの口径だな」
芳佳「赤城の高射砲くらいの大きさかなぁ」
尾栗「確かに火力はこの時代の戦艦にゃかなわんが……」
尾栗「命中精度と連射速度は折り紙付きだ」
ミーナ「たしかに、それらは過去の戦闘で十分に立証されてるわね」
ペリーヌ「ですが、連射は装填手の技量に左右されるんじゃありませんこと?」
尾栗「ああ、この中は無人なんだ」
芳佳「ええっ?」
ゲルト「つまり、これの動作はすべて機械がやっているのか……」
尾栗「まぁ、下の弾倉に装填するのだけは手動だが、戦闘中は基本無人になる」
546 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 20:46:35.28 ID:mEpxNrzCo
尾栗「そしてここがMk41VLSだ」
主砲の背後に広がる、網目のようなミサイル発射装置を指す。
尾栗「ここの蓋が開いて、ミサイルが飛ぶわけだ」
草加「ミサイル……とは?」
ウルスラ「おそらく、報告にあったロケット誘導弾のことを指すと思われます」
ウルスラ「ジェットを推進力として飛翔し、驚異的な命中率、追尾性能を持つとのことです」
尾栗「ま、簡単に言えばそういうこった」
ルッキーニ「ねーねー、開けていーい?」
シャーリー「いや、だめだろう」
尾栗「はっは、流石にそれは菊池に怒られるからな」
547 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 20:50:01.56 ID:mEpxNrzCo
続いて左舷側のドアから艦内に入る一行。
日差しが遮られ、少し涼しい。
坂本「これは……」
津田「かなり装甲が薄い……」
エーリカ「ところどころ光が漏れてるよ……」
エーリカ「がんばったらトゥルーデの魔法で破れるんじゃない?」
ゲルト「………」コンコン
すると前方から、柳と桃井一尉が現れた。
桃井「お呼びですか、尾栗三佐?」
尾栗「すまん、ちょっと案内につく合ってくれ」
桃井「私が…ですか?」
尾栗「一人じゃ足りないしな、女の子ばかりだから女性がいた方が心強い」
桃井「了解しました」
尾栗「それじゃあ次のところ行くか」
548 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 20:52:40.91 ID:mEpxNrzCo
エーリカ「なんかこの中すずしー!」
芳佳「ほんとですねー」
細いパイプが張り巡らされた艦内通路をゆっくり進む。
その通路を津田はきょろきょろしながら見ていた。
津田(……あれは、消火栓?)
ただの消火栓が気になったわけではない。
津田(……!)
『平成14年度検査済』
見たことのない年号。
そして同じく、坂本少佐もそれを見ていた。
坂本(疑っていたわけではないが)
坂本(なるほどたしかに、彼らは未来からやってきたのだな)
549 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 20:55:35.35 ID:mEpxNrzCo
時折、艦内作業を行っている隊員とすれ違う。
そして一行を見、全員の首にある階級章を見るや否や、こちらに敬礼をする。
船務科の柏原一尉もその一人であった。
柏原「!」サッ
同じくその場にいたほかの隊員も敬礼をする。
草加「………」サッ
そしてそれに敬礼を返す草加たち。
コツコツコツ……。
柏原「ふぅ……」
船務科員「驚きましたね」
柏原「三佐が連れてた将校サンだけじゃなく、あの子たちのほとんどが尉官以上だったとはな……」
船務科員「どうみてもまだ十代ですよ」
柏原「俺達からしてみたら、変な感じだな……」
550 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 20:59:37.51 ID:mEpxNrzCo
出会うのは当直の隊員だけではない。
男ばかりのこの艦に女性が来るとなれば、そりゃ一目見たいと誰もが思う。
杉本一曹もその一人で、持ち場の扉を開けっ放しにしておき、今か今かと待つ。
杉本「……お」
続々と通り過ぎる一団。
女の子だけというわけではなく、その姿に目を奪われついつい目で後を追い続けてしまう。
そのうち、宮藤とリーネが彼らの存在に気付き、頭を下げる。
つられて頭を下げてしまう一同。
船務科員「いいっすね、女の子」
杉本「ああ、まったくだな」
班長「おいコラッ! お前ら何やっとるか!」
杉本「ゲッ! やばいぞ!」
船務科員「見つかっちまいましたね」
551 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 21:03:20.35 ID:mEpxNrzCo
そしてついたのはCIC前の扉である。
ここは一般的に立ち入り禁止であり、入れることは少ない。
注 意
許可を受けないでこの中に立ち入ることを禁止する。
以上の通り、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法施行令第5条の規定により提示する。
平成XX年 3月12日 防衛省
芳佳「許可なしの立ち入りを禁ず……」
津田「重要な区画というところですか」
坂本「何かしらの法で適用されている以上、そういうことだろう」
シャーリー「なんかよくわかんないけど、物々しい雰囲気だな」
草加「ふむ……」
草加(日米相互防衛援助協定……か)
552 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 21:06:18.37 ID:mEpxNrzCo
尾栗「この通り、普通なら艦内の人間すら立ち入りを制限される区画だが……」
尾栗「今回は特別でな、ちゃんと菊池や艦長たちの許可が下りている」
尾栗「規定ラインを超えないというなら、中に入れるそうだが、どうする?」
津田「!?」
ルッキーニ「みたいみたい!」
エーリカ「確かに、こうやって隠されるときになるねぇ」
ゲルト「見られるものは見ておいて、損はないだろう」
ミーナ「……そうね」
扉の向こうにわくわくする一同―――ただし、佐官組を除く。
尾栗「それじゃあ、行くか」
ガチャ。
尾栗が扉を開けると、そこからひんやりとした空気が流れてきた。
553 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 21:10:37.00 ID:mEpxNrzCo
「みらい」 CIC
ルッキーニ「うひゃー! シャーリー、ここすずしー!」
ペリーヌ「風で髪が……」
シャーリー「こりゃ空調がガンガン効いてるな」
ゲルト「まったく贅沢じゃないのか!」
シャーリー「おいおい大尉殿、ここまできてそんな堅いこと言うなって」
シャーリー「きっと他に理由があるんだよ」
ウルスラ「……おそらく、機器の温度上昇を防いでいるのだと思われます」
ゲルト「そんなに熱を発する機器とは一体……」
数歩足を進めると、視界が開いた。
シャーリー「……うお! すっげー!」
扉を抜けたその先には、多数のモニターと光点に覆われたCICの姿が広がった。
554 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 21:18:47.63 ID:mEpxNrzCo
エイラ「なんか星空みたいダナ」
サーニャ「それにしてはまぶしいわ」
草加「これは……」
津田「すごい……」
シャーリー「壁面のでかいスクリーンに、見たこともない機械がいっぱいだ!」
ゲルト「少しは落ち着かんかイェーガー大尉。ここは軍艦だぞ」
シャーリー「んなこといったってよぉ、これ見ろよこれ」
珍しく興奮気味のシャーリーをなだめるバルクホルン。
ウルスラ「戦闘被害の少ないパートにあらゆる情報を集め、情報処理を一括にて行う」
ウルスラ「ブリタニアやリベリオンで構想されている最重要区画、CICですね」
菊池「その通りだ」
そのウルスラの解説に反応したかのように、奥から菊池がやってきた。
菊池「海上自衛隊三等海佐「みらい」砲雷長の菊池です」
555 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 21:24:30.63 ID:mEpxNrzCo
草加「菊池三佐、ここは見たところかなり重要なところだそうだが」
草加「入ってもよかったのかな?」
菊池「ここCICは本艦の中枢……大変重要な区画です」
菊池「普段なら本艦の隊員さえ立入が制限される場所ではあるが」
菊池「今回は特別です。そこのライン上からでなら自由に見ていただいて結構です」
菊池「……もちろん、写真撮影などの行為は禁じますが」
足元を見ると、確かにテープで引かれた簡易的なラインがあった。
ルッキーニ「ん~、ん~!」
そこにつま先立ちをし、一生懸命に先を見ようとするルッキーニ。
エーリカ「ウルスラ~、何か分かった?」
ウルスラ「今更なようですが……」
ウルスラ「確かにこの艦は、この世界に存在するのもではありません」
556 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/05/26(日) 21:32:13.46 ID:mEpxNrzCo
菊池「先の通り、我々の時代の軍艦は、ここCICが主な戦闘指揮を担っています」
菊池「前方スクリーンには、主としてレーダーを図式化したものを表示」
菊池「また電子的な情報による敵味方の識別や、コンピューターによる目標への自動攻撃を行わせることが可能です」
芳佳「シャーリーさん、こんぴゅーたーってなんですか?」ヒソヒソ
シャーリー「簡単に言えば、計算をする機械だ」
シャーリー「扶桑自慢のソロバンよりもすごく速い」
シャーリー「カールスラントでも進んだものを研究中って聞いたけど?」
ウルスラ「はい、違う部署なので私は詳しくは知りませんが……」
ウルスラ「空間座標を計算でき、誘導補助を行える電子計算機の開発を進めているようです」
シャーリー「へぇー?」
シャーリー(なんに使うんだろ)
ゲルト「あのミサイルとやらも、ここで制御しているわけだな」
シャーリー「おや、機械に弱いお前が興味を持つとは」
ゲルト「うっ、うるさいな!」
568 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:14:42.11 ID:/IEHWHSHo
菊池「ここにある機器の大半は、精密な電子部品によって作られており」
菊池「例えばこのレーダー画面にしても、裏側にはさまざまな技術が詰まっている」
菊池「そしてそれを制御するための機器にもです」
菊池「故に、『この時代よりもはるかに複雑』になっています」
菊池「もちろんこれを扱う人間はそれらの機器について精通していなければならない」
菊池「つまり―――」
草加「その機器を身近に触れているあなた方の中でもまた一部」
草加「かなり熟練した技術者でなければ扱えない、と」
菊池「……その通りです」
菊池「この時代で代えることのできない隊員のおかげで、この艦は動いているということです」
草加「 『この時代の人間には無理』 ということだな」
菊池「ええ」
芳佳「すごーい……」
569 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:16:42.38 ID:/IEHWHSHo
それからも少しずつだけではあったが、菊池によるCICのレクチャーが行われた。
特にウルスラ、シャーリーの2人は興味津々に耳を傾ける
そして一通りの話が終わった後、尾栗が呼びかける。
尾栗「さて、そろそろ次行くぞー」
尾栗にせかされ、CICを出る一同。
そしてふぅ、とため息を吐く菊池。
菊池「……なんとか、やり過ごせたな」
青梅「代えのきかない隊員……」
青梅「確かに嘘は言ってませんなァ」
珍しく回りくどいことを言った菊池に話す青梅。
菊池「……あの草加という少佐、かなりの切れ者だな」
青梅「ええ、勘もいいようで」
菊池「こちらの発言の意図を一瞬で理解した」
青梅「この発言が、効いてくれればいいんですがね」
菊池「………」
570 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:18:07.59 ID:/IEHWHSHo
長居も避けたいCICを退出し、再び通路を歩き始める。
そしてついた先は、後部格納庫だった。
現在、ここでは艦載機が点検中である。
ゲルト「ほう、ここか」
坂本「初めて「みらい」に来たところだな」
芳佳「……あっ、あのヘリコプターがありますよ!」
草加「ほう、これが……」
津田「報告にもあったオートジャイロですね」
エーリカ「あれ?プロペラが折りたたんでる……」
目の前には、点検中のシーホークが鎮座していた。
作業中の整備員がちらちらこちらを見る。
そんなことにかまわずシーホークに近づく機械好きと元気っ子。
シャーリー「すげー! こうしてみると不思議な形してんなー」
シャーリー「なぁなぁ、これなんだ?」
整備員「え、あ……これは吊り下げソナーで……」
突然の質問に戸惑いながらも答える整備員。
一方、ルッキーニの方はバルクホルンの制止する声を聞かずに走り回っていた。
ルッキーニ「うじゅ?」
何かに気付いてふと足を止める。
571 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:19:25.51 ID:/IEHWHSHo
ルッキーニ「シャーリー、シャーリー、こっちにも何かあるよ!」
シャーリー「ん?」
それはシャーリーのいるシーホークの向かい側。
芳佳「あ、ほんとですね」
そこにはシーホークとは似ても似つかない感じの航空機が鎮座していた。
ウルスラ「複座の艦載機に見えます」
ペリーヌ「これも、ヘリコプターとやらなのですの?」
「おう、そんなところだ」
その裏から出てきた、パイロットらしき男。
尾栗「お、佐竹一尉」
佐竹と呼ばれた「海鳥」のパイロットはヘルメットを脱ぎながら一団に敬礼を返した。
佐竹「どうも、航海長。しかしずいぶんにぎやかなお客さん方ですな」
尾栗「まぁな」
佐竹「んで、次はここの見学ですかい?」
尾栗「そんなところだ」
572 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:20:59.62 ID:/IEHWHSHo
エーリカ「ねぇねぇ、サタケもパイロットなの?」
ゲルト「おいハルトマン、失礼だぞ!」
佐竹「ああ、おれはこの「海鳥」の操縦士だ」
自分の愛機の側面を撫でながら言う佐竹。
佐竹「もう一人射撃手の森三尉がいるんだが、今は奥のブリーフィングルームで待機して……」
そして思い出したかのように時計を見、
佐竹「おっと、時間がねえんだった」
佐竹「それじゃ航海長、自分はこれで」
尾栗「おう、お疲れさん」
そうとだけ言うと佐竹は奥の方へとかけ出して行った。
尾栗「さて、ここも忙しいみたいだし、ほどほどに俺たちも行くか」
573 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:22:27.70 ID:/IEHWHSHo
尾栗「お次はここだ」
着いたのは先ほどの後部格納庫の上。
外だけあって日差しがよく当たる。
ゲルト「先ほどのVLSとやらがあるな」
ゲルト「それと……」
目の前にぽつんと立っているファランクス。
坂本「多銃身砲がついているところを見るに、対空火器か」
尾栗「ファランクスという、全自動近接防御火器だ」
尾栗「有効射程は1km、連射速度は毎秒60発!」
ゲルト「毎秒60発だと!?そんなんではいくら弾があっても足りんぞ!」
尾栗「だから普段はミサイルで対応する」
尾栗「コイツはミサイル防衛圏をくぐり抜けた敵を相手する、いわば最終防衛ラインだ」
尾栗「だから一度起動すると、レーダーは敵味方の区別なく近づくモノ正確無比に撃つ」
シャーリー「どんな中身してんだコイツ……」
574 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:22:58.38 ID:/IEHWHSHo
そして隣にあった探照灯や誘導パネルを見ながら艦内へ戻る。
ルッキーニ「つぎどこいくのー?」
尾栗「んー、そうだな」
尾栗「……そういや、みんなお昼はどうしてるんだ?」
芳佳「あ、これが終わったら基地に戻って作るつもりです」
リーネ「ちょうどお昼時だから、ご飯がまだ食べれてないんだもんね」
尾栗「そうか」
尾栗「だったら、ここで食っていくか?」
ルッキーニ「やたー!ごはん!」
芳佳「いいんですか?」
尾栗「まぁまぁ、「みらい」のメシを食っていけって」
リーネ「船の料理かあ……」
575 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:23:58.23 ID:/IEHWHSHo
科員食堂
ここでは普段、非番の隊員が話したり、食事をする場所である。
今はすでに人払いがされており、少し寂しい空間になっていた。
そこの二つのテーブルでは、見学会の一団が食事をしていた。
芳佳「すごい、おいしいですこれ!」
炊飯長「どうだ、「みらい」のメシは」
ペリーヌ「これも扶桑の料理ですのね」
ルッキーニ「おかわり!」
シャーリー「船の上でこんなにうまい飯が作れるとは驚きだなぁ」
芳佳「シャーリーさん、長い船旅の中でのおいしい食事というのはとっても重要なんですよ!」
シャーリー「へぇー?」
尾栗「長期の航海になると、仕事があるにしても娯楽の少ない船内生活はきつい」
尾栗「だからメシがその日の楽しみになるんだな」
坂本「例えば扶桑の軍艦では、週に一回カレーライスを食べるところもある」
芳佳「あ、私たちが乗って来た赤城もそうですね」
576 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:26:24.70 ID:/IEHWHSHo
炊飯長「来るのが金曜だったらうちでも出せたんですがね」
津田「この艦でも、カレーの習慣があるのか?」
尾栗「海上自衛隊の艦は、毎週金曜にカレーが出るんだ」
尾栗「先週はカツカレーだったな。洋介のヤローもうまそうに平らげやがって」
芳佳「残念です。食べたかったなー」
ペリーヌ「相変わらず食い意地が張ってますのね」
芳佳「船によって味が違うからおもしろいんですよ!」
エーリカ「あむあむ…… あ、これおいしー!」
ゲルト「なるほど、飽きがこない味だ」
エーリカ「う……でもこっちのは酢がききすぎだよぉ……」
ミーナ「え? おいしいとおもうけど……」
577 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:29:47.46 ID:/IEHWHSHo
角松「ここにいたか、航海長」
そこへ角松が現れる。
そのわきには珍しく、カメラマンの片桐もいた。
尾栗「あ、副長。片桐さんも。どうしたんです?」
角松「いや、実は片桐さんが写真を撮ろうといってな」
ゲルト「ほう、従軍記者か」
片桐「いえいえ……あ、でもこの世界じゃそういうことなんですかね」
角松「そういうわけで、あなた方の方で問題がなければぜひ取らせていただきたいのだが……」
ミーナ「写真ねぇ……」
坂本「いいじゃないかミーナ」
気付けば各々が好きなポジションに移動していた。
ルッキーニ「あたしシャーリーのまえー!」
ゲルト「さぁさぁミーナ、お前は隊長なんだ。真ん中に」
ミーナ「ちょ、ちょっと……」
流されるままに座らされるミーナ。
片桐「それじゃ、行きますよー」
パシャッ!とシャッターの音がした。
578 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:33:52.17 ID:/IEHWHSHo
―――――――――
食事が終わり、締めくくりにと、尾栗が全員を艦橋に案内する。
すっかり日も暮れ、海に夕日がきれいに反射している。
芳佳「うーみーはーひろいーな大きいーなー」
リーネ「あ、扶桑の童謡だね、芳佳ちゃん」
芳佳「うん、そうなんだー」
エイラ「どうした、サーニャ?」
サーニャ「エイラ、この子、私と同じ感じがするわ」
エイラ「あー、この下レーダーだっていってたナ」
ウィングから尾栗と梅津監督の元はしゃぐ一同。
その一方で、角松と草加は艦橋の中から海を見ていた。
草加「きれいな海だ……」
角松「………」
草加「角松……二佐。この度は粋な計らい、礼を言う」
角松「自分ではない。尾栗が言いだしたことです」
草加「尾栗三佐か、なかなか面白い方だ」
579 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:36:54.53 ID:/IEHWHSHo
草加「……あなた方は、不思議な方だ」
角松「?」
草加「この強大な力を、どうして自分たちのために活かさないのか」
草加「限りがあれども、使い方次第では……」
草加「この時代の軍として、一時的にでも正式な編入をすれば、あなた方はまさに官軍だ」
草加「この艦の戦力があればネウロイ打倒の日も遠くはない」
草加「そうすればあなた方はこの世界の英雄の一人だ」
なるほど最もな事でもある。
だが、角松は否定する。
角松「……我々は、救世主になるために自衛隊に入ったわけではない」
角松「ましてや英雄、官軍といった着飾りの名誉を狙うために艦を動かしてはいないのだ」
草加「………」
580 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:39:43.62 ID:/IEHWHSHo
草加「私は以前、自分の同乗していた駆逐艦がネウロイの攻撃を受けたことがあった」
しばしの沈黙の後、懐かしむように語り出す草加。
草加「前線から連絡将校の任を受けていた時だった」
草加「友人や同期もたくさんいたが、大半が爆発や瓦礫に巻き込まれてしまったよ」
草加「不幸なことに、攻撃を受けた個所が短艇格納庫で、4艘のうち3艘が吹き飛んだ」
草加「火を免れ残っていたゴムボートに乗ろうとしたその時、私は追撃の衝撃で海に投げ出されてしまったのだ」
草加「情けないことに、扶桑海軍の士官だというのに泳ぎが不得意でね……」
草加「捕まる漂流物もなく、着水の衝撃で意識も朦朧としはじめ、ここが私の死に場所と覚悟した」
草加「ネウロイの攻撃はやまないうえ、海は渦を巻き始めた。救助は絶望的」
草加「……だが、私は助けられた」
草加「気が付けば、一人の小さなウィッチに抱えられていたのだ」
草加「あの子達と変わらないくらいの子にな」
角松はつられてちらり、とウィングの方を見る。
581 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:40:49.19 ID:/IEHWHSHo
草加「話を聴くに、彼女は魔力切れを覚悟してまで、ここまでネウロイを追ってきたそうだ」
魔力が切れる。
それは飛べなくなること意味するというのを、角松も承知していた。
草加「そこまでしてなぜ助けるのか、と聞いたらこう答えたよ」
草加「『かつて自分を助けてくれた海軍の兵隊さん、次は自分が助ける番だ』とね」
草加「……私には扶桑を、同盟関係にある様々な国を守るという使命がある」
草加「そして彼女たちにもそれぞれが目的を持ってこの世界で戦っている」
草加「この祖国とは所縁もない異世界で、名誉や地位、ましてや利益すら顧みない」
草加「あなた方は一体、何のために、こうしてウィッチたちと共に戦っているのか?」
草加「あなた方は一体、何者なのだ?」
角松「………」
582 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/06/05(水) 21:45:39.58 ID:/IEHWHSHo
角松「我々は、なんのこともない……ただの海上自衛隊の自衛官だ」
何者か、その答えはわかっている。
だが何のためにこの世界に存在するのか、それはわからない。
角松「その一人である「みらい」の副長の俺がするべきことは」
角松「この艦のクルーを一人残らず現代へ帰還させること……」
角松「だがそれ以前に、我々は自衛官として成さねばならない事がある」
草加「……それは?」
角松「ただ一人でも多くの人々を助ける」
角松「異世界だろうが人は人に変わりはない」
角松「理由はそれだけで十分だ」
これがただ一つ、今分かること。
それを草加にだけでなく、まるで他の人にも語りかけるように話す角松。
その様子を梅津と尾栗が納得をした顔をして聞いていた。
そしてもう一人、CICから出てきた菊池だけは怪訝な、顔をしてみているのであった。
620 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:17:32.48 ID:Dy09FQmJo
東進丸 船室
津田「津田大尉、入ります」
草加「入れ」
津田「「みらい」の査察、無事終了しましたね」
草加「そうだな」
草加「大尉、君は「みらい」を見てどう思った?」
津田「は……。私から見てみれば、彼らはまだいろいろなことを隠しているようです」
津田「もちろん機密である以上は仕方ないのでしょうが」
津田「やはりここは探りを入れて手に入れてみるべきです」
津田「この船員には私の息のかかった特務機関員がいます。可能ならば諜報も……」
だがこの言葉をやんわりと取り下げる草加。
草加「まぁそう焦るな、津田大尉」
621 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:18:34.51 ID:Dy09FQmJo
津田「しかし!」
草加「残念だが、いくら優秀な特務機関員と言えども狭い軍艦では活動できることが限られる」
草加「むしろ相手の信用を下げることになりかねない」
津田「………」
草加「それに、まだ滞在期間はある」
津田「は?」
草加「まだ明日の「みらい」への補給、本国への連絡、本船の整備などに時間がかかる」
津田「しかし、その程度でしたら少なくとも明後日までには終わると思われますが」
草加「そこで君の特務機関員の出番だろう」
含み笑いを見せる草加を見て、何かを感じ取る津田。
津田「少佐、あなたはまさか……」
草加「時間は、まだある」
草加「機を待とうじゃないか」
622 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:21:15.02 ID:Dy09FQmJo
翌日
早朝より「みらい」への大量の補給品積み込みが行われた。
前回同様、かなりの隊員が働いている。
補給科員A「缶詰2トン!」
補給科員B「確認、後部甲板に運べ!」
補給科員C「さて、リストにあるものはこれで……」
ふと、軍人以外の人がうろうろしているのが目に入った。
補給科員C「記者さーん、そこ危ないですよー!」
記者というのは、一緒にこの航海に同行していた片桐のこと。
写真を撮っていたようだが、ぶっちゃけ作業員にしてみれば邪魔である。
片桐「あ、すいませーん!」
片桐「……しっかし、前よりも補給量が多いな」
片桐「これで、「みらい」も正式に認められた……」
片桐「ことなるといいんだけど」
623 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:23:09.16 ID:Dy09FQmJo
しばらくし、補給作業の大半が終わる。
人もまばらになり、日も暮れてきた。
片桐「もう撮るところはないかな」
デジカメのメモリ残量を確認し、一息つく。
片桐「艦にもどるには時間がまだあるしなぁ」
そこで暇つぶしに、持ってきていた雑誌を埠頭で読むことにした。
片桐「どれどれ……」
雑誌には世界の名車や高級車が並んでいる。
どれも有名な海外メーカのものばかりで、結構な値段であった。
片桐「やっぱ買うなら外車がいいよなぁ」
片桐(一か月の航海まとまった金を手に入れたら、買おうと思ってたけど……)
片桐「今じゃ帰れるかわからない状況だしなぁ……」
退屈な航海中に散々見尽くしたページをペラペラめくりながら、一人そんなことを考えていた。
624 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:24:27.61 ID:Dy09FQmJo
「少し見せてもらってもいいかな?」
片桐「?」
そんな片桐に声をかけたのは、あの時「みらい」で出会った草加少佐であった。
片桐「えーと……、草加少佐でしたっけ」
草加「覚えてくれてくれてるとはうれしい限りだ」
片桐「しかし、こんな雑誌を見せてほしいとは?」
草加「未来の車というものに興味があってね」
どうぞ、と片桐が雑誌を手渡す。
すると草加はのめりこむように読み込んだ。
草加「………」
片桐(そんなに興味深いのあったかな)
することがなくなった片桐は、その隣で空を見上げた。
625 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:26:27.09 ID:Dy09FQmJo
埠頭の端に座る二人に潮風が吹く。
やがて一通り読んだ後、草加が片桐に話かけた。
草加「とても興味深いものだったよ、ありがとう」
草加「ここで一つ頼みがあるのだが……」
片桐「頼み?」
草加「そうだ」
やけに真剣な表情で語りかけてくる草加に、片桐は戸惑う。
草加「どうかこの雑誌を私にくれないだろうか?」
片桐「この雑誌をって……」
片桐「ええーっ!?」
突然の話に驚く片桐。
草加「代わりに、私にできることならなんでもしよう」
草加「この時代のものなら大体融通は利く。それなりの金銭でもいいだろう」
626 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:28:52.62 ID:Dy09FQmJo
片桐「これにそんな価値があるものなんですかねぇ」
草加「本というものは知識の宝庫だよ」
草加「たとえこの娯楽向けの雑誌でもね」
片桐「はァ……」
軽く尋ねたことを大真面目に返されてしまった。
草加「それで、貴方は何をお望みかな?」
片桐「ええーっと……」
突然の話に片桐は答えられずにいた。
ただの雑誌といえど、自分の持ち物であるし、まだ読みたかった。
片桐「!」
片桐「そうですねぇ、私の独占インタビューに答えてくれるというのなら考えてもいいですよ」
ここでジャーナリスト魂に火がついた。
旧海軍少佐の独占インタビューなど、めったにめぐる機会ではない。
草加「私でよろしければお答えしよう」
この提案で片桐は一転、雑誌を譲ることにした。
627 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:30:37.94 ID:Dy09FQmJo
「みらい」艦橋
角松「艦長、報告します」
角松「17:35、全補給作業終了しました」
夕暮れ、作業を終えたことを報告しに角松が艦橋に現れた。
梅津「早かったな」
報告を終えた丁度その時、尾栗が顔をのぞかせた。
尾栗「艦長! 501より入電を預かりました!」
角松「上陸許可が下りたか」
尾栗「そうなんっスよ副長! やっとみんな陸に上がれます!」
梅津「それで、詳しい予定はどうなっておるのか?」
尾栗「はい、ここに……」
628 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:34:58.97 ID:Dy09FQmJo
「みらい」食堂
食事時間に、ここ食堂では多くの隊員たちが列を作っていた。
そして一つのテーブルには、柳と麻生の二人が座っていた。
柳「物資の再補給と燃料補給線の確保」
柳「それも連合軍正式な裁可の元のようです」
柳「とにかく、この艦が生き残る道だけは確保しましたね」
麻生「未だに心配なのは武器弾薬だけか……」
麻生「……柳一曹、この時代で「みらい」の兵装をコピーすることはやはり難しいのか?」
柳「はい、とんでもなく難しいでしょう」
柳「ミサイル兵装は言うまでもありません。主砲弾も、127mmというこの時代にも存在する口径ではありますが」
柳「似ているようで全く技術的な面で仕組みも違うところが多く、仮に生産できても今のようにはいかないでしょう」
柳「望みがあるのは、せいぜい小銃の弾とCIWSの20mm弾でしょうか」
麻生「………」
629 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:37:06.30 ID:Dy09FQmJo
麻生「……ん?」モクモク
麻生「炊飯長、米変えました?」
トレーの皿に盛られたご飯をつまんでいた麻生が尋ねた。
炊飯長「お、流石は麻生先任曹長」
炊飯長「昨日まではイギリスからのインド産米やタイ米が多かったが……」
炊飯長「今回の補給で、なんと扶桑米の定期補給が入りましてね!」
杉本「それじゃ、今週のカレーは!?」
横から聞いていた杉本一曹が口を挿む。
炊飯長「おう、期待しとけ!」
おおおっ、という声が食堂中から湧きあがった。
炊飯員「そういえば、ノイエ・カールスラントからもジャガイモが届いているとか……」
麻生「ますますカレーに期待が高まるな」
630 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:40:12.16 ID:Dy09FQmJo
『あ、達す』
突然の艦内放送に身構える隊員たち。
梅津『艦長の梅津だ。これより、この度決まった上陸日程について放送する』
隊員A「上陸!?」
隊員B「陸に上がれるのか!?」
先ほどまで静かだった食堂が騒がしくなり始める。
梅津『今週末、土日の二日に分けて、半舷上陸を行う』
杉本「半舷……」
柏原「上陸!」
「「おおおおおおおおおお!!」」
この言葉で、扶桑米以上の歓声が響いた。
角松『詳しい日程は後ほど分隊長に達する』
角松『なお航海科の柳一曹は、20:00に士官室へ来るように』
柳「……え?」
631 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:44:01.39 ID:Dy09FQmJo
士官室
柳「柳一曹、はいります!」
梅津「来たか」
艦長副長、そして砲雷長と航海長と、「みらい」トップがそろっていた。
その中に一曹が一人はなかなか気まずい。
梅津「実は、今回の上陸について一つ話がある」
角松「二日間の上陸は聞いての通りだ」
角松「本艦は軍艦であり、さらにこの世界が戦闘下にある以上艦を空けるわけにはいかない」
角松「ゆえに乗員を二つに分け戦闘可能な状態を維持するわけだが……」
角松「柳一曹、お前には二日間とも上陸してもらう」
柳「は……」
まさか特別休暇ではあるまい、何かあると勘付く柳。
梅津「初日は君いるの班が上陸する予定だが……」
梅津「柳一曹、君には二日目に501基地に付設されている資料室でこの時代について調べてもらいたい」
梅津「もちろん施設使用の許可は取ってある。その辺を心配する必要はない」
尾栗「この時代に詳しいという、俺の推薦だ」
航海長がにかっと笑う。
632 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:48:04.89 ID:Dy09FQmJo
菊池「調べる対象、まず一つ目に兵器・技術レベルだ」
菊池「この時代、例の飛行ユニットが活躍している分『魔法』という技術が発達しているようだ」
菊池「現代科学を超越するところがある分、もしかすると帰還への手掛かりがあるかもしれん」
柳「元の時代への……ですか」
角松「もちろんその通りだ」
梅津「……そして次に重要なのはネウロイについてだ」
菊池「我々は、今までネウロイというものを数回しか目撃・接敵していない」
菊池「種類はいずれも大型ネウロイのみ」
菊池「まだ見ぬ敵の多様性に対応するため、過去のデータが必要なのだ」
菊池「どのような種類だったか、攻撃方法、そして撃墜時の情報までを集計してほしい」
柳「そこまで詳しい記録が残っているでしょうか……」
尾栗「そこは、資料室次第ってところだな」
尾栗「ウィッチたちが情報を確認できるようある程度揃ってるって話だが……」
菊池「とにかく、我々の行き先を決める重要事項だ。頼むぞ」
柳「アイサー!」
633 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:49:39.34 ID:Dy09FQmJo
角松「また情報収集の際に必要と思われる私物、艦内備品の持ち出しも許可する」
角松「ただしパソコンなどの電子機器、艦内資料室の資料については検閲を行った後に、だ」
柳「……我々の時代のことを知らせないために、ですか」
菊池「そうだ。この世界と我々の歩んできた道は違う」
菊池「我々の技術を安易に渡しては……何が起こるか予想がつかない」
梅津「……ともかく、持ち出す情報にも気を付けねばならん」
梅津「検閲は副長らに任せてある」
角松「よって、金曜日迄には持ち出すものを決めておけ」
尾栗「この件はすでに分隊長に達してあるから報告の心配はないからな」
柳「了解!」
角松「よし、下がれ」
634 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:51:55.82 ID:Dy09FQmJo
バタン
柳が出たのを確認し、再び話を始める一同。
尾栗「菊池、本気で全部の資料を検閲するのか」
神経質な菊池に意見する尾栗。
菊池「用心に越したことはない」
尾栗「用心たってなぁ……そんな本の一冊二冊で」
菊池「現実に開発できてしまったものをアイデアとして取るだけでも危うい」
尾栗「………」
菊池「『核開発』は、ヨーロッパ物理学者の発見から始まった」
菊池「枢軸側が技術や資源不足などで完成出来なかったのに対し、ただ一国、大陸の向こうのアメリカだけが完成させた」
菊池「それにはナチスドイツの迫害から逃れたユダヤ人物理学者の功績もある」
菊池「ウィッチが対ネウロイの有効打とされているためか、幸い現時点でこの世界に核兵器は確認されていない」
菊池「……だが、この世界はあらゆる国の技術が集まっている」
菊池「各国の協調次第では、この世界にも核がもたらされる可能性も十分にある」
635 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 22:55:26.89 ID:Dy09FQmJo
尾栗「おいおい菊池、それは突飛すぎやしないか?」
菊池「余計な可能性は潰すものだ!」
再び強く反論する菊池。
菊池「都市一つ分を一発で破壊できる兵器……この時代に漏れてみろ」
菊池「量産、運用方法さえ確立すれば、ネウロイと言えども短期間で殲滅も可能と思われる」
菊池「そしてネウロイのいなくなったその後、その矛先が向くのは……」
尾栗「同じ人類、ってか?」
尾栗「俺は、ちょっと考え過ぎな気もするがねぇ」
角松「……人類全体が協力するのに必要な要素として、対立する第三の敵があげられる」
角松「それは決して間違いではないと、この世界を見て思う」
角松「人が死んで土地が追われている国もあるから一概には言えないが」
角松「それでも、人間同士が残虐な殺し合いをしていた時代よりは、ましな時代だと思う」
角松「そんな世界に、俺は核兵器なんか持ち込みたくはない」
角松「いいか、俺たちはこの時代に介入して改革しに来たわけじゃないんだ」
角松「考えることは、ただ一人でも多くの人を救うことだ」
菊池「………」
636 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 23:00:53.63 ID:Dy09FQmJo
柳一曹上陸日二日目
隊員A「久しぶりの陸だ!」
隊員B「店はイギリスの日本人町だっけか?」
杉本「厳密に言えば扶桑人街らしいがなー期待できっかなー」
隊員C「初日に行ったやつの話じゃ、期待できそうですぜ」
杉本「そりゃ楽しみだな!」
隊員A「あんまりはしゃぎ過ぎないでくださいよ杉本一曹、止めるのも大変なんですから」
ハハハハハ……
柏原「……ん?隣の東進丸、まだ出航していなかったのか」
隊員C「ホントですね」
隊員A「どうやらエンジントラブルで出航が遅れているようです」
杉本「査察に来た将校さんも暇なようでな、たまに話もしたぜ」
隊員B「マジですか、杉本一曹!?」
637 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 23:03:24.03 ID:Dy09FQmJo
柳「みんな元気だ」
尾栗「久しぶりの陸だからなぁ」
柳「あ、航海長」
尾栗「俺は今日このまま休暇を楽しむが……」
尾栗「お前は重要な任務だ。昨日楽しんだ分、任務を全うしてくれよ!」
尾栗「お前のもたらす情報は、「みらい」の先を左右するもんだ。いいな?」
柳「はっ!了解しました」
隊員B「航海長、お早くー!」
杉本「おいていきますよー!」
尾栗「おっと、それじゃ柳一曹、頑張れよ!」
そう言って送迎トラックに乗り込んだ尾栗は、一同と共に基地を離れて行った。
638 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 23:08:06.88 ID:Dy09FQmJo
501基地内部
柳「聞いてたより広いようだ……」
柳「もらった地図によれば図書室……もとい資料室は」
「あれ?」
柳「ん?」
突然後ろからかかった声に振り向く柳。
芳佳「あの、「みらい」の人ですよね? こんにちは!」
柳「あ、こんにちは……」
柳「宮藤芳佳軍曹……ですか?」
芳佳「はい! わぁ、覚えてくれてたんですね!」
柳「自分は海上自衛隊「みらい」航海科、柳一等海曹です」
芳佳「一等海曹っていうと……一等な曹だから曹長さんなのかな?」
柳「この時代の階級だと、軍曹に当たりますね」
芳佳「そうなんですかぁ、じゃあ私と同じですね!」
柳(この子元気だなぁ……)
639 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/19(月) 23:13:41.86 ID:Dy09FQmJo
芳佳「あ、ごめんなさい」
芳佳「初対面の年上なのにこんな口のきき方をしてしまって……」
はっと我に返ったように謝る宮藤。
柳「あ、自分は別にかまいませんが……」
芳佳「そういえば何か用事があったんですか?」
柳「ここの資料室で、いろいろ調べるようにとの指示がありまして」
芳佳「そういえばミーナ中佐が言っていました」
芳佳「私も時間がありますし、案内します!」
柳「はっ、助かります」
芳佳「ここ、お城みたいに広いですから」
651 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:27:58.78 ID:4tDKUv07o
資料室
芳佳「ここです」
大きい両扉のドアを開けると、薄暗い中大量の本棚が広がる部屋に出た。
柳「これは広い……」
柳(資料室というより図書室だ……)
芳佳「結構いろいろな本がありますよ。私もたまに料理の本を見に来たりするんです」
柳「なるほど……」
芳佳「何を調べるんですか?」
柳「主にネウロイの事についてです」
柳「今まで出現したウィッチや、その襲来などを細かいデータにして艦長に提出します」
芳佳「へぇー……」
芳佳「私も手伝います!」
柳「え、あ、じゃあお願いします」
柳(こんなに小さいとはいえ、この子もウィッチなんだなぁ)
652 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:30:33.15 ID:4tDKUv07o
とりあえず二手に分かれて資料を探す二人。
柳「戦史、報告書関係は……こっちか」
柳「『1940年欧州戦線記録』『ダイナモ作戦経過報告書』……」
柳「『1937扶桑海事変』……扶桑でもネウロイの被害はあったのか」
柳「だけどとりあえずは欧州近海のネウロイデータを集めた方が……」ブツブツ
柳「まぁ、手始めにこれから始めよう」ドサッ
持ってきたリュックからノートパソコンと筆記用具一式を取り出す。
芳佳「な……なんですかそれ……」
奥の書架から戻ってきた宮藤がパソコンを覗き込む。
柳「ノートパソコンと言います」
柳「これで、いろいろな作業ができるんですよ」
シャーリー「ほほう、それでそれで?」
ゲルト「なんだこれは……さっぱりわからん」
653 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:32:08.57 ID:4tDKUv07o
芳佳「しゃ……シャーリーさんにバルクホルンさん!?」
芳佳(なんだか珍しいコンビだ)
シャーリー「いやなに、なんか見慣れないのが入ってきたから怪しいもんじゃないかと」
ゲルト「嘘を付け嘘を」
ゲルト「『「みらい」の乗員だ、何か面白いことがあるぞ!』と私の手を引っ張ったのは誰だ」
シャーリー「実際そうだろ? 現にこうやって見れてるんだし」
シャーリー「でさでさ、これでどんなことができるんだ?」
柳「文書の編集やグラフなどの作成など……」カタカタカタ
シャーリー「こんなに薄いのに、映写機なしでどうやって写してんだ……」
芳佳「あはは……」
芳佳(シャーリーさんがとんでもなく輝いてる……)
654 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/25(日) 17:33:15.78 ID:D7hIf58AO
PCと言えばチューリングマシンって今頃には理論が出来てるんだっけか?
655 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:33:45.62 ID:4tDKUv07o
ゲルト「リベリアン、あまり邪魔をするな」
ゲルト「彼だってここには遊びに来たわけじゃない。任務で来ているんだ」
シャーリー「わかったわかった、そんなにカッカすんなって」
ゲルト「まったく……だいたいお前はいつもいつも」
柳「大尉の方々はいつもあのような感じなのですか?」
芳佳「ええと、まぁ……」
柳(結構自由な雰囲気なんだ、この部隊って)
ゲルト「……と思われているぞ! 恥を知れ恥を!」
シャーリー「わかったわかった落ち着けって」
656 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:35:24.24 ID:4tDKUv07o
・
・
・
柳(これが今大戦のきっかけになった大型ネウロイか)カタカタカタ
柳(しかしそれ以前から人類は『怪異』というネウロイの前身と呼ぶべきものとも戦ってきた)
柳(第一次大戦後、ネウロイの攻撃が顕著化してきたのが扶桑海事変)
柳(欧州戦線に及んだのが……)
柳(……しまった! これはドイツ語の資料!)
柳(一応単語レベルならわかる部分もある……だが文法無視の辞書だけで読めるだろうか)ガサゴソ
柳(インターネットが生きていれば翻訳サイトというものがあれど……)パラパラパラ
柳「これは……この単語の変化系で……」
ゲルト「そういえば、お前は何を調べているのだ?」
柳「はっ、今までに出現したネウロイやその戦闘記録などを第一に、この世界を調べに」
ゲルト「なるほど、確かにお前たちにとって未知の敵と戦うには情報が大切だ」
シャーリー「ちょうどいいじゃん、教えてあげなよ大尉殿」
シャーリー「読んでるのもカールスラントの資料らしいし」
657 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:39:15.64 ID:4tDKUv07o
ゲルト「ふん、どれ……」
柳が訳に手間取っていた報告書の一つを手に取るバルクホルン。
ゲルト「エルベ川防衛戦の記録か。激しい戦いだった」
ゲルト「この後、ベルリンが……」
柳(ベルリンの名と年代と思しき数字を見るに、陥落したのは1941年頃)
柳(史実のベルリン陥落は1945年の5月……)
柳(出現位置がカールスラント近郊だったせいもあるが、やはりはやい)
ゲルト「いいか、私が話してやるからしっかり聞いておけ」
ゲルト「事の始まりは、帝政カールスラント皇帝がノイエ・カールスラントへの遷都を決めたことだ……」
訳と解説を行いバルクホルンと、それに続いてまとめを始める柳。
柳「1941年6月に遷都を決定……」カタカタカタ
ゲルト「このとき戦闘要所に配備された兵器は、8.8cm砲が15門に……」
※8.8cm砲(8.8 cm FlaK):どこぞの少佐も大好きな、アハト・アハト(8.8)の名で知られるドイツ軍の代表的高射砲。
本来は対空運用が想定されていたものだったが、対地攻撃でも大きく活躍した。
658 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:40:52.65 ID:4tDKUv07o
ガチャ
ペリーヌ「あら、珍しく人がいますのね」
ペリーヌ「そして殿方まで……」
芳佳「あ、ペリーヌさん」
ペリーヌ「あなたまでここにいるなんて……こんなこともあるものですわね」
ゲルト「ちょうどいいクロステルマン中尉。中尉の経験したネウロイ戦闘を彼に教えてやってはくれないか?」
ペリーヌ「ネウロイとの戦闘……ですの? それでしたらこの書架に記録がありますでしょうに」
ゲルト「まぁそれもそうだが……」
ペリーヌ「申し訳ありませんがわたくしも少し忙しいですので、失礼させていただきますわ」
そういうとペリーヌはスタスタと奥へ行ってしまった。
ゲルト「まったく、少しぐらいは手伝ってやってくれてもよかろうものを」
シャーリー「まぁそういってやるなよ、お前の言い方がきつかったんじゃないのか?」
659 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:41:49.38 ID:4tDKUv07o
柳「クロステルマン中尉とは、あまり仲がよろしくないのですか?」
なかなかウィッチ同士の会話に入れなかった柳が口をはさむ。
ゲルト「協調性が足りないというのか、少々な」
シャーリー「実力はあるんだしさ、それくらい許してやりなよ」
ゲルト「軍という組織は常に規則と協調性が求められるものだ!」
ゲルト「一人の独断専行は全体を危機にさらすことだってある」
シャーリー「前に無我夢中で突っ込んだのは誰だったっけー」
ゲルト「ぐっ……」
シャーリー「だけどあいつ、少佐にはすっごいなついてるもんな」
柳「少佐というと……」
芳佳「坂本さんのことです。ペリーヌさん、私が朝練しているときによく会ったりするんです」
シャーリー(あれは影から覗いているのが見つかったのが多々らしいけどな)
660 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:46:13.34 ID:4tDKUv07o
・
・
・
ゲルト「さて、ひとまずこんなものか」パタン
日が暮れ、月がのぼっていた。
宮藤が夕食を差し入れをしてくれたりしたおかげで、かなりの量を終わらせることができた。
柳「はい、かなりまとまりました。ありがとうございます」
するといつの間にか外に出ていたらしい宮藤が入ってくる。
芳佳「あ、お疲れさまです」
芳佳「これ差し入れのおにぎりです。よかったら食べてください」
そこには2つのおにぎりが並んでいた。中身の具は鮭。
礼を言い、一つづつ食べるバルクホルンと柳。
ゲルト「ふむ、魚がいい味を出している……」
柳「自分も、鮭は好きです」
ゲルト「ところで宮藤、リベリアンはどこに行った?」
芳佳「シャーリーさんならルッキーニちゃんと向こうの椅子で眠ってます……」
バルクホルンが後ろを振り返ると、エンジン関係の本を立てたまま寝落ちしてしまったらしいシャーリーの姿があった。
そして夕食後にやってきたときについてきたらしいルッキーニも一緒であった。
ゲルト「全くあいつらは、こんなところで……」
661 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:48:13.29 ID:4tDKUv07o
そこへ思わぬ来客が訪れた。
尾栗「お、ここにいたか柳一曹」
柳「航海長!?」
そこに現れたのは航海長の尾栗だった。
芳佳「こ、こんばんは」
尾栗「おう、宮藤芳佳ちゃん……だな」
芳佳「はい!」
尾栗「全くかわいらしい嬢ちゃんたちに囲まれた中で仕事とは、羨ましいぜ」
柳「どうしてこちらへ?」
尾栗「いやなに、メシも早いうちに開きになってな。町探索ついでにこっちに寄ったんだ」
尾栗「それで、作業の方はどうだ?」
柳「はい、かなりまとまりました」
柳「主にネウロイの出現タイプと過去の戦闘における人類側の兵力等はすでにデータ化済みです」
柳「後は艦内で、各種情報の分類と細かい整理ですかね」
662 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:49:10.19 ID:4tDKUv07o
尾栗「すげぇ量の資料とデータだな……」
尾栗「これを一人でやってのけたのか」
柳「いえ、バルクホルン大尉や宮藤軍曹、イェーガ―大尉に手伝っていただきました」
尾栗「そうだったのか」
尾栗「部下の補助をしていただき、ありがとうございます」
ゲルト「我々はネウロイを倒すために手伝ったまでです。気にする必要はない」
尾栗が述べた謝辞に返事を返すバルクホルン。
尾栗「若いのに、しっかりしてるな」
柳「流石はカールスラント軍人ということでしょうか」
ガチャ
エーリカ「あれ?トゥルーデ?」
そこへ入ってきたのはシャツ一枚のエーリカ・ハルトマンだった
663 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:50:32.04 ID:4tDKUv07o
隠すところは隠しているとはいえ、本を片手にうろつくその姿はまさに警戒心ゼロ。
ゲルト「は……ハルトマン!? なんて格好でうろついてるんだお前は!?」
ゲルト「せめて上着を着れ上着を!」
芳佳「ハルトマンさん……」
エーリカ「だってあついし……」
エーリカ「ん、「ミライ」の? こんばんわー」
ゲルト「呑気に挨拶している場合か! さっさと着替えるぞ!」グイグイ
エーリカ「えー」
エーリカ(本戻したいんだけど……)
そう言って押されながら出ていくエーリカとバルクホルン。
まるで嵐が去ったかのように静まる一同。
尾栗「ま、まぁ個性があるってことだな……」
芳佳「あはは……」
664 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:51:18.98 ID:4tDKUv07o
やがて戻ってきた二人。
ゲルト「みっともない姿を見せて申し訳ない」
同僚の失態を恥じるバルクホルン。
当の本人といえば、当初の目的通り本の返却するするべき場所を探していた。
エーリカ「えーと、これはここだっけ?」
書架のうち高いところに本が抜き取られたスペースを見つけたエーリカ。
しかし背伸びをしても届かない。
エーリカ「うー、入らない……」
尾栗「どれ、俺が入れてやるよ」
と、エーリカが手に持っていた本を取り元の位置に入れる尾栗。
エーリカ「ありがとー! オグリー!」
ゲルト「はぁ……」
もはや注意する気も失せてしまったのか頭を抱えたバルクホルン。
665 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:55:25.20 ID:4tDKUv07o
しばらくおしゃべりの場と化した資料室。
やることも終わり、柳は片づけを始めていた。
柳「この資料の写しは取ったし、こっちがあの書架で……」コツン
柳「ん?」
目の前のテーブルの上に、何かの缶が置かれた。
尾栗「ほれ」
何時の間にやら尾栗が大量のコーラ缶を抱えてやってきていた。
目の前に置かれたのは、そのうちの一本だった
柳「航海長、これって「みらい」の自販機の……」
おそらく艦内自販機か売店で買ってきたものだろう。
この類は出港時に既に品薄になっていることが多いので、かき集めてきたとなれば結構なことである。
尾栗「みんなには内緒だ」
尾栗「ほら、みんなも飲め飲め」
尾栗「こっちはここにいない子に渡してやってくれ」
666 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:56:32.79 ID:4tDKUv07o
抱え込んでいたコーラをテーブルの上に広げる尾栗。
シャーリー「おーっ、コーラじゃん!」カシュッ!
ルッキーニ「つっめたーい!」
こちらもいつ起きたのかシャーリーとルッキーニが飛び出してきた。
芳佳「これがコーラなんですかー」
エーリカ「炭酸?」
ゲルト「おい、こういうのは上官より早く飲むものでは……」
尾栗「まぁまぁ」
尾栗「俺は博多の出身でね、あんまり堅苦しいのは好きじゃないんだ」
尾栗「今くらい軍人としてじゃなくて、気軽に話してみようじゃないか」
667 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 17:59:08.79 ID:4tDKUv07o
・
・
・
シャーリー「で、その時にルッキーニが寝ていた場所ってのが……」
シャーリー「あそこの塔のてっぺんだったんだ」
尾栗「スゲーなルッキーニちゃん。そんなところで寝ていたのか」
ルッキーニ「シャーリー! それ言わない約束ー!」
芳佳「ルッキーニちゃんはいろんなところで寝ているんですよー」
ゲルト「まったく。テーブルの上さえをも寝床にするとは……」
ゲルト「そんなところで寝られるのはあとハルトマンくらいだろう」
エーリカ「えっ! 私はベッドじゃないと寝れないよ」
ゲルト「上が散らかりすぎてベッドと呼べる代物ではないぞあれは!」
ゲルト「寝具は起きたら一度畳んでそろえることだ!」
エーリカ「じゃあ私一日寝てるからこのままでいいや」
ゲルト「いいわけあるかっ!」
「「「ハハハハ……」」」
668 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:00:50.13 ID:4tDKUv07o
尾栗「……こうしてみるとさ」
少女たちの談笑を聴いていた尾栗が小さな声でつぶやく。
柳「は?」
尾栗「魔法使って銃持って、デカい化けモンと戦ってる、あの子たちだって」
尾栗「こうやって笑いあっている姿を見ると、やっぱり年頃の女の子なんだよなって思える」
柳「ええ、まだ若い子供たちです」
尾栗「そんな子たちが人類の命運の一端を担ってるって、すげぇ話さ」
柳「守りたいものがある、あの子達はそういっていました」
尾栗「守りたいもの、か……」
ルッキーニ「コーヘー! 芳佳の持ってきたお菓子食べよー!」
尾栗「ん? おお、うまそうだな!」
この小さな宴会は、また通りかかったペリーヌに注意されるまで続いた。
669 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:02:31.03 ID:4tDKUv07o
東進丸 船室
尾栗たちが和気あいあいとしている一方で、こちらでは二人の将校が静かに話をしていた。
津田「草加少佐、そろそろ出航遅延工作も厳しくなってきました」
津田「日程が大幅に遅れています」
草加「そうだな。これくらいで十分だろう」
津田「……少佐は、今までに一体何を?」
草加「情報収集、だよ」ドサッ
テーブルに乗せられたのは、雑誌、写真類。
だが津田が違和感を覚えたのは、扶桑語で記述されているのに、文字の読み方が逆なのである。
さらに、ほとんどがカラーコピーである。
津田「これは……まさか」
草加「「みらい」乗員たちとの交渉で手に入れた、未来の資料だ」
670 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:04:54.02 ID:4tDKUv07o
津田「しかしこんなにどうやって……」
草加「おそらく「みらい」には、それなりの情報統制が敷かれてあると想像するのは容易だ」
草加「だがしかし、彼ら自身この世界への対応に追われている……」
草加「どうやら末端の隊員にまで厳格な情報統制の指示は未だ出ていないらしい」
草加「我々と接触があるというのは、あまり考えなかったのかもな」
津田「………」
草加「そうすればあとは簡単だ」
草加「補給作業後、あるいは船近くで休息を取っていたりする隊員に話しかけるだけだ」
草加「未来から来た彼らとて、いつまでも軍艦に籠っているということもできない」
草加「我々が一番よく知っているはずだ」
津田はただ、その話を聴いていた。
これが自分の尊敬する草加少佐であったのだと。
671 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:07:04.48 ID:4tDKUv07o
津田「……しかし、この雑誌から一体何がわかるというのですか?」
積まれているのはいずれも娯楽系の雑誌。
服や車などが半数を占めていた。
草加「情報というものは思わぬところに隠れているものだよ、大尉」
車関係の雑誌を手に取り、ぺらぺらとめくる。
草加「たとえば、この一文だ」
『この車の製作に携わった米国の大手企業ZM社は、今年で100周年を迎えました。
ZM社は1929年の世界恐慌を耐え米国一に、戦時中も戦車・軍用車を生産し、戦後には世界TOP3に入るという驚くべき経歴をもちます。
この新車は、その技術が結集した一台ともいうべきものです』
草加「戦時中・戦後という文字から、おそらくこの『米国』という国は戦争をしたのだろう」
草加「そして1929年のあとに戦時中という文字が来ることから、戦争の始まりは1930年以降……」
草加「ネウロイが存在しない世界、何かしらの争いが起きるとすれば人同士の戦争……」
草加「そして偶然か否か、第二次ネウロイ大戦の前触れともいえる扶桑海事変も、1937年だ」
草加「乗員の一人が言っていた」
草加「『この世界は我々の世界に似ていて、とても違う』と」
672 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:09:30.06 ID:4tDKUv07o
津田「つまり、我々がネウロイと戦っているこの時代……」
津田「彼らは人間同士で争いをしていた、と」
草加「もっとも、ネウロイという脅威が存在しない以上は人間同士が争うのは想像に難くないものだが」
草加「一文を紐解くだけで、これほどわかるということだ」
まるで探偵が推理を披露するように話す草加。
草加「そして彼らの時代を見て確信した」
草加「人は、歴史は、いつの時代も変わらない」
草加「例えネウロイがいなくなっても、人の世から争いはなくならない」
一つ小さな声でつぶやく。
草加「そして世界の主導権を握るのは、戦いの終止符を圧倒的な力で打った者が得る……」
津田「少佐……あなたは一体……」
その問いには答えず、ただ薄ら笑みを浮かべる草加であった。
673 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:13:10.92 ID:4tDKUv07o
翌日 「みらい」士官食堂
朝早くからこの士官食堂に士官が集められていた。
収集したデータをもとに、これからの事を話し合うためである。
菊池「これが、柳一曹の収集してくれたネウロイに関する資料だ」
菊池「もちろん今大戦全てのものとはいかなかったが、それなりのデータはある」
梅津「ここまでよく集まったものだ……」
前のホワイトボードにはグラフや資料が所狭しと貼り付けられている。
菊池「これを見るに、やはり小型のネウロイというものも存在していたようだ」
菊池「このタイプのネウロイは耐久性もなく、この時代の戦闘機で迎撃できるようだ」
菊池「よって、主砲・シースパロー一発でも破壊可能と思われる」
菊池「だがその反面移動速度も高いため、用心も必要だ」
674 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:18:44.77 ID:4tDKUv07o
菊池「次に中・大型ネウロイだ」
菊池「これは我々が体験したとおり、10m級から50m以上のものまである」
菊池「そしてこれら個体は回復力も高く、対空兵器では力不足だ」
菊池「と言えども、一部の個体は戦艦クラスの主砲を耐えるものもあるようだ」
菊池「本艦のシースパローやスタンダード、主砲での対処もむずかしい」
士官A「対艦ミサイルは?」
角松「たしかに対艦ミサイルなら有効かもしれないが、敵が浮遊体であり命中する可能性が不明だ」
角松「弾数の問題もある。安易な使用は控えるべきと考えている」
675 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:22:22.89 ID:4tDKUv07o
菊池「また敵の攻撃手段である光線についてだが……」
菊池「ここに、欧州上陸作戦時の航空機撮影映像がいくつか残されていた」
ここで一つの動画の再生が始まる。
画面の向き、背景が不自然なことから、これがパソコン付属のWebカメラで撮られた映写機の動画というのが分かる。
陸で応戦するシャーマンとティーガー。砲撃の向こうには、四足で歩くネウロイ。
奥の方で炸裂する地面。艦砲射撃で多数のネウロイがダメージを追うもすぐに回復してしまう。
一両のシャーマンにビームが直撃し、爆発する。隣のティーガーにも当たるが、こちらは履帯が吹っ飛んだのみ。
画面が暗くなる。カメラの視点が上に移ると、そこに巨大な飛行ネウロイの姿が浮かび上がる。
発射された数十のビームが地上部隊を襲う。巨大な爆発が一面で起こり、巨大なクレーターのみが残った。
やがて逆向きの艦隊の方にカメラが向く。主砲塔が旋回するも間に合わず、照射されたビームで次々と沈んでいく。
急速反転する航空機。まわりで僚機と思しきものが撃破される中、辛うじてこの機体は生き残ったようだ。
ここで映像は終わっている。
菊池「これを見るに、ネウロイの攻撃は概して一種の熱光線のようなもので」
菊池「大型の個体が使うものになると、この強力な光線を重ねて使用することもあるようだ」
先ほどの映像からキャプチャした、大型ネウロイの画像と、推定されたビーム幅が示される。
菊池「だが小型のものになればその威力・飛距離が小さくなることもわかる」
比較対象となった陸戦型ネウロイのビーム幅。
676 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:23:53.50 ID:4tDKUv07o
菊池「これらを考慮した結果、我々の取る戦闘行動を以下のようにした」
菊池「まず第一に、本艦は主に索敵・情報処理を主な任務とする」
菊池「イージスの広範囲レーダーを活かした敵の早期発見と、長距離射程を活かした敵の侵攻阻止だ」
菊池「しかし、メインの攻撃、撃破はウィッチによるものとする」
ここで聴いているもの達の顔色が変わる。
本格的な戦闘を避ける、とも取れる言葉であったからだ。
そのような反応が返ってくるのは、菊池をはじめ艦長以下もわかっている事であった。
角松「……我々には戦艦クラスの攻撃力もなければ装甲もない」
角松「この「みらい」は、ネウロイを正面から相手にできるものではないのだ」
角松「だからこそ、我々は我々の戦い方でこの世界の人々を守る」
角松「……これは、決して逃げではない!」
677 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:25:40.40 ID:4tDKUv07o
501基地 食堂
芳佳「お昼ごはんですよー」
リーネ「今日は扶桑の料理に挑戦してみました」
エーリカ「イモっ!?」
芳佳「お味噌汁に入ってますよ」
ルッキーニ「芳佳ー、あたしごはん大盛り!」
シャーリー「お、えらいなルッキーニ。食べる子は育つぞ」
エイラ「デ、育った結果がソレカ」ジトー
ペリーヌ「……あら? そういえば坂本少佐は?」
ゲルト「ミーナもいないな。昼食だというのに」
ゲルト「呼んでくる。皆は先に食べててくれ」
678 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/08/25(日) 18:27:18.18 ID:4tDKUv07o
ミーナ室前
ゲルト「ミーナ、昼食の用意が……」コンコ…
「……に……ロイ……」
「……そう……まさか……んな……」
何やら二人の話し声が聞こえる。
ゲルト(ん?しまった、少佐と話し中だったか?)
だがノックと声は聞こえていたのか、扉が開く。
ミーナ「あら、トゥルーデ。わざわざ呼びに来てくれたのね」
ゲルト「いや、こちらこそ話し中にすまなかった」
ゲルト「宮藤には冷めないよう取っておいてくれと伝えて……」
ミーナ「いえ、話はちょうど終わったところだけど……美緒は」
坂本「先に食べててくれ。私はやることができた」
ミーナ「分かったわ……」
部屋の奥で受話器を抱えていた坂本の表情は、どことなく険しいものであった。
739 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 11:59:29.10 ID:eISlwrggo
ブリタニア
マロニー「その「ミライ」は、単艦で空母機動部隊に匹敵する……と?」
草加「彼らには。我々よりもはるかに優れた索敵レーダーがあります」
草加「そして長射程の誘導兵器は、小型、あるいは中型ネウロイならば視認せずとも撃墜できるでしょう」
草加「また確認はできませんでしたが、戦艦クラスの威力を持つ誘導兵器を保有している模様です」
草加「彼らがその気になれば、大型ネウロイさえも撃破可能かと」
マロニー「ウィッチなしで、さらに一隻のみでここまでの能力を持つ軍艦とは……」
マロニー「少佐、彼らからの技術支援は受けられそうかな?」
草加「………」
草加「現時点では、あり得ないといってよいでしょう」
草加「同行した技術士官によれば、今の技術で再現可能な兵器はないとのことです」
740 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:00:42.31 ID:eISlwrggo
マロニー「くっ……」
マロニー「彼らは一体何者なのだ。戦闘支援はすれども技術は渡さんとは……」
なにやらイライラしている表情を見せるマロニー。
草加「……お言葉ですが、閣下」
草加「このように支援を受けているだけでも、まだ運がいいものであると思われます」
マロニー「少佐、それはどういう意味か」
草加「……彼らは、強大な力を持っています」
草加「ですが、その力はネウロイに対して作られたものではないのです」
マロニー「まさか……」
草加「そう、彼らは我々とは違い、人同士の争いのためにあのような力を手に入れました」
741 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:01:47.17 ID:eISlwrggo
草加「ですが、ここで不思議なことが一つあります」
マロニー「不思議なこと、とは」
草加「私は彼らの、『日本人』の異常なまでな献身的な態度を幾度となく目撃しました」
草加「彼らは自身を『自衛隊』と呼んでいました」
草加「自分たちが生き残るためではなく、ただ人を助けるためだけに行動する集団」
草加「人同士が争う世の中であるにもかかわらず、一の軍隊がどうしてここまで1つの人命に重きを置けるのか」
草加「それも見たこともない人間たちの命を、自分たちの命を賭してまでどうして救おうとできるのか」
草加「彼らを突き動かすその衝動は、おそらくまだ我々には理解できないのかもしれない」
草加「仮にこれが人同士の戦争であったならば、彼らはどの陣営にも協力しなかったのかもしれません」
草加「もしくは、単艦でひっそりと人の命を救っていたのかも……」
742 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:02:41.04 ID:eISlwrggo
一方、その外では津田大尉が待機していた。
そして話が終わり、草加が出てくる。
津田「報告はどうでしたか?」サッ
草加「ああ、無事に終了した」スッ
草加「事実を伝えつつ、私の想像を織り込んでおいた」
こういう報告をするとは事前に聞いていたが、やはり津田には分らなかった。
津田「少佐、なぜそのようなことをするのです?」ガチャ
門前に止めてあった軍用車のドアを開け、草加を乗せる。
草加「この話を信じたなら、マロニー大将は「みらい」に対する評価の方向を替えねばならんだろう」
津田「は?」
車が出、扶桑海軍の駐屯地へと向かう。
743 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:03:24.73 ID:eISlwrggo
草加「……君は、マロニー大将を知っているな?」
津田「ええ、ブリタニア空軍大将で501を統括する……」
草加「彼はその責任者であるにもかかわらず、何かと501部隊に口出しをしているようだ」
草加「はっきり言うなら、彼はウィッチを快く思っていない」
草加「501という、ある種の独立した指揮系統を持った組織ができてしまえばなおさらその不快さは増すだろう」
草加「ますます彼の手から離れていってしまう」
津田「しかし、ウィッチを快く思っていないとは……」
津田「彼女たちは、ネウロイに対して最も有効な手段のうちの一つです」
津田「それをなぜ……」
草加「個人的な思想なのか、それ以外なのかは我々にはわからんよ」
744 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:04:06.20 ID:eISlwrggo
草加「だが事実、ネウロイとの戦闘に置いて活躍しているのはウィッチだ」
草加「敵が敵である以上、現段階の通常兵器で対抗するには限界というものがある」
津田「だからこそ、ウィッチに重点が置かるのも当然です」
草加「大方ここだろう。彼が不快なのは」
草加「ともかく、ウィッチに対抗するならば『ウィッチ以外の戦力』を活躍させればいいことだ」
津田「しかし通常兵器では……」
ここで津田が気付く。
津田「現段階の通常兵器では……なら……!」
草加「未知の技術を持つ「みらい」に期待をしてもおかしくない」
草加「実際、彼は「みらい」の技術を早々にほしがっていた」
草加「まぁここまでは『人類のため』という言い訳でまかり通る」
草加「だが、これが彼個人の思惑とすれば話は別だ」
745 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:05:13.00 ID:eISlwrggo
津田「思惑……?」
草加「まだなにも確証はない」
草加「だが、今回の査察の権限がすべて大将が握っていたこと」
草加「また私の報告が大将のみに伝わるようにされていたこと……」
草加「まるで「みらい」の秘密は彼の手中だけに収めたいかのような動きだ」
津田「つまり、少佐は……」
津田「マロニー空軍大将自身が「みらい」を手に入れようとしていた、とお考えで?」
草加「私がそう思っているだけだよ」
草加「今のところ、これといった証拠もないし、ただの憶測でしかないのだ……」
746 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:06:09.11 ID:eISlwrggo
草加「ところで、私が頼んでおいた件はどうなっているか?」
津田「はっ、なんとかなりそうです」
津田「501基地に特務機関員数名を」
津田「ウルスラ・ハルトマン中尉の件も、現在作業を進ませています」
草加「流石大尉。無茶にもこたえてくれる」
津田「しかし、これは私以外に頼んだ方が効率が良かったのでは……」
草加「ブリタニアに扶桑士官はいくらでもいる」
草加「だが、君以上に信頼できる士官はいないと私は思っている」
津田「は、光栄であります」
キキッ、とブレーキ音。
「少佐、草加少佐!」
たどり着いた扶桑海軍の駐屯地より、一人の水兵が駆け寄る。
草加「何事か」
水兵「扶桑本国より、緊急電です!」
747 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:08:45.97 ID:eISlwrggo
501基地
昼食を終え、当番の二人は後片付けをしていた。
芳佳「坂本さん、お昼ご飯も食べに来なかったなぁ」
リーネ「なにか急用があったのかも」
芳佳「でも、坂本さんがご飯を抜くなんて……」
エーリカ「ミヤフジー、扶桑の新聞届いてるよー」
扶桑の新聞も、ロンドンの支部を通して501に配達されている。
芳佳「あっ、ハルトマンさんありがとうございます」
エーリカ「たしかに渡したよっ、じゃねー!」
芳佳「行っちゃった……なんか今日の新聞は遅いなぁ」
『怪奇!横須賀沖に出現した軍艦!
×日、陸海軍大本営部発表
△月○日、横須賀沖にて突如異様な物体が接近していると憲兵隊が通報を受け、
同日午後3時、リベリオン国籍と思しきの駆逐艦(キヤノン級)を海軍偵察機が発見せり
リベリオン政府承認の元、待機中であった第二水雷戦隊所属「五月雨」「春雨」により沖へ曳航、
同艦の砲雷撃により撃沈せり、翌日、該当するリベリオン艦は退役済みの「エルドリッジ」と発表
「大和」以下第一艦隊出航に伴い、我が皇国海軍のより赫々たる実力を垣間見れたり』
芳佳「なんでリベリオンの船が……?」
芳佳「流れてきたのかな?」
748 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:10:20.03 ID:eISlwrggo
シャーリー「おーい宮藤」
芳佳「あ、シャーリーさん」
シャーリー「みたか? 今日の新聞」
芳佳「やっぱりリベリオンの新聞でもこの記事があったんですか?」
シャーリー「そうそう、ウチの駆逐艦が流れちゃったみたいだけどさ」
シャーリー「ただどうも気になるんだよなぁ」
シャーリー「ってわけでさ、ちょっと記事を比べてみてくれないか?」
芳佳「いいですよー」
芳佳「……特に違いはないですね」
シャーリー「そっかー」
シャーリー「両国一致とあったら、信じるしかないなぁ」
749 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:12:25.55 ID:eISlwrggo
エーリカ「まるで幽霊船だね」
シャーリー「おっ、ハルトマン」
芳佳「あれ、ハルトマンさん戻ってきたんですか」
エーリカ「やることもないしねー」
エーリカ「でもでも、これなんかおもしろそうじゃん?」
芳佳「確かに変ですね」
エーリカ「あんな重い船が流されることなんてあるのかな? ねぇウルスラ?」
と、振り向いたエーリカにつづいて2人も振り向くと、そこにはなにやら大きな機械を抱えたウルスラがいた。
ウルスラ「確かに錨を下ろしていなければ、船も浮かんでいるものですから、波で少しずつ流される可能性はあります」
ウルスラ「ですがリベリオンや扶桑の哨戒網にかからず、それも短期間で両国の距離を流れるというのは……考えにくいです」
エーリカ「そっか……うおっ! なにそれ!」
興味を抱えている機械に奪われたエーリカが駆け寄る。
ウルスラ「「みらい」の副デジタル無線機だそうです」
ウルスラ「これをこの基地に設置、通信を中継することで、みなさんの無線機と通信ができます」
シャーリー「はーっ、これが未来の無線機かぁ」
750 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:13:16.32 ID:eISlwrggo
ゲルト「無線が共有できるとなれば、更に「みらい」と連携を密にすることができるな」
芳佳「バルクホルンさん!」
エーリカ「げ、トゥルーデ」
ゲルト「何が『げ』だ。さっさと戻って部屋の片づけをするぞ!」
ゲルト「全く逃げ足だけは早いやつめ」
エーリカ「やだやだー! めんどくさいー!」ダッ
ゲルト「こら、走るな!」
エーリカ「片付けやだもんね!」
ドタバタドタバタ
シャーリー「おーおー、大尉殿も頑張る」
ウルスラ「では、私はここで失礼します」
ウルスラ「……あ、それとイェーガー大尉、できればいくつかあなたの部品を使わせていただきたいのですが……」
シャーリー「使わないものだったら別にいいぞ? よし、手伝ってやろう」
芳佳「がんばってくださーい」
751 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:15:12.01 ID:eISlwrggo
「みらい」 CIC
梅津「準備はどうか?」
青梅「は、こちらの準備は完了しました」
菊池「あとは向こうか」
無線の問題を解決するために、501基地にある無線機とこちらの予備の無線機を同調させる作戦。
これにより、「みらい」から数人の人員が基地へと送られていた。
菊池「同行した荻島一曹からの連絡は?」
青梅「現在のところありません。順調に進んでるとみていいでしょう」
角松「この時代の無線にも詳しいアイツなら、なんとかできるとは思うが」
青梅「どうでしょうね、はたしてこの時代の無線機とどう互換性をとるか……」
菊池「通信テストまで、あと5分」
菊池「これが成功すれば、「みらい」はイージス艦としての能力をさらに発揮できる」
752 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:16:42.55 ID:eISlwrggo
ザザザー
青梅「同調する無線電波をキャッチ」
『通信テスト中、「みらい」応答願います』
「来たっ!」
菊池「こちら「みらい」CIC。貴官の所属を述べよ」
『こちら…第501統合戦闘航空団基地……』
立花『「みらい」通信士、立花二尉』ザザザ
ノイズ交じりの通信に、船務科の立花二尉の声が入る。
青梅「……とォ」カチカチカチ…
青梅「若干音質の劣化やノイズ等がありますが、通信状態はおおむね良好」
梅津「よし……まずはそちらの状況を報告せよ」
立花『はっ』
753 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:18:28.50 ID:eISlwrggo
立花『荻島一曹が地元技師協力の無線機移設作業を開始』
シャーリー『おー、ちゃんと聞こえる聞こえる』
突如入るシャーリーの声。
しばし空く間。
シャーリー『あ、失礼ー……』プチッ
立花『……技術的に困難な部分はイェーガー大尉、ハルトマン中尉の協力で乗り越えたようです』
菊池「実用できそうか?」
立花『この通り、通信機能的には問題がありませんが……』
立花『今あるものでしか組み合わせていないゆえの不安定さのため、万が一のための保守点検要員が必要です』
立花『やはり当初の予定通り、通信士もしくは電子整備士をここに派遣するのがいいと思われます』
菊池「「みらい」乗組員を派遣、か」
754 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:19:36.47 ID:eISlwrggo
ミーナ執務室
坂本「とうとうこの基地に駐留することになったか」
坂本「ウィッチと男の接触を好まないミーナが認めるとは珍しいな」
ミーナ「「みらい」の乗員といったって、今度は一通信士に過ぎないわ」
ミーナ「もちろん普段は他の男性整備士と同じように移動制限がつくし」
坂本「まぁミーナがいいならそれでいいが……」
坂本「ところで、「みらい」の大まかな予定ができたと聞いたが」
ミーナ「予定といっても、今までとあまり変わらないわ」
ミーナ「ドーバー海峡とその周辺海域の哨戒」
ミーナ「可能なら……軍艦や一部民間船のエスコート、くらいかしら」
坂本「最近はアフリカやガリア近海のネウロイ出没の報が後を絶たないからな」
ミーナ「……ねぇ美緒、先の連絡の件だけど」
坂本「やはりミーナも気になるか」
坂本「現在詳しい調査を行っている最中な以上、何とも言えん」
坂本「我々が気にするのは、その後だ」
ミーナ「………」
755 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:20:20.16 ID:eISlwrggo
格納庫
無線機の調整が終わった後、シャーリー達は格納庫で片付けをしていた。
シャーリー「いやー、楽しかったな」
ウルスラ「お手伝いをしていただいて、ありがとうございます」
シャーリー「いやいやいいって。むしろきっかけを作ってくれたお礼を言いたいくらいだよ」
そこへエーリカとバルクホルンが現れる。
エーリカ「あれ? おわった?」
ウルスラ「ええ、終わりました」
ウルスラ「……お姉様こそ、部屋の片づけは終わりましたか?」
エーリカ「えーっと……一応」
ゲルト「このままじゃ終わる気配がなくてな、一時的な戦略撤退をしてきた」
ゲルト「また明日攻撃を再開するぞ」
エーリカ「えー!」
756 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:21:48.55 ID:eISlwrggo
エーリカ「ねぇ、ウスルラも手伝ってよー」
ゲルト「無茶を言うな。彼女は任務でここに来ていたんだから忙しいだろう」
ゲルト「数日もすれば、ノイエ・カールスラントの技術省に戻るんじゃないか?」
ウルスラ「そのことなんですが……」
ウルスラ「先ほど異動辞令がありまして、しばらくはブリタニアにとどまることなりそうです」
エーリカ「あれ?そうなんだ」
ウルスラ「詳しいことは知らされていませんが、ロンドンやポーツマスなどで活動するようです」
エーリカ「うへー、転勤族だ。大変だね」
ウルスラ「おそらくこちらにも来ると思うので、その時に」
757 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:23:04.69 ID:eISlwrggo
「みらい」 資料室
柳(ネウロイが近代兵器の形をし始めたのはそう昔のことではなかった)
柳(彼らは金属を取り込み、外見をコピーする性質を持つ)
柳(ネウロイの巣が現れた時、迎撃に向かった二機のホーカー・ハリケーンは帰還せず)
柳(代わりに機体をつなげ合わせたようなネウロイが出現したことから、この可能性は高い……)
柳「だが、「みらい」が接敵したネウロイの中にはこの世界に実在しない兵器の形のネウロイがいた」
柳(不定な形なら納得できるが、知られていない兵器をコピーしたような外見のネウロイ)
柳(たまたま、だろうか?)
柳(杞憂なら……)
758 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:25:30.69 ID:eISlwrggo
「みらい」 士官食堂
菊池「本艦の副デジタル無線機の移設は無事終了しました」
菊池「またそれとは別に、予備の中継アンテナを尖塔に2か所ほど設置」
菊池「これで501部隊との連絡手段が確立されました」
尾栗「前みたいなはぐれ部隊員にもちゃんとリアルタイムで連絡できるわけだな」
梅津「だが同時に、本艦からの人員派遣の必要性も迫られておる」
菊池「扱いの異なる無線である以上は、仕方のない措置と言えるでしょう」
菊池「基地間の連絡ならば通常でも可能ですが、飛行部隊との音声通信のメリットは落とし難いものです」
梅津「仕方ない措置……」
梅津(我々はこの「みらい」の力なくして、この世界で生き残ることは無理だろう)
梅津(だが、その力を使う我々にはある種の大きな責任がのしかかっているのかもしれん)
梅津(自分たちの時代に影響がないと言えど、むやみな使い方をすればこの世界に影響を及ぼすのは確実だ)
梅津(この力がこの世界を救う剣となるのか、世界を狂わす悪魔となるのか)
梅津(はたして我々に、正しい使い方をしていくことはできるのだろうか……?)
ガチャ
隊員A「失礼します」
隊員A「総員配置完了、出航準備完了しました!」
角松「艦長、艦橋へ」
梅津「うむ」
こうして、再び「みらい」は海へと旅立っていった。
759 :
◆d9Q1x7iQso [saga]:2013/10/12(土) 12:28:21.16 ID:eISlwrggo
※ジパングの次巻予告風に
沈 み ゆ く 艦 の 運 命 は
ブリタニアの南、アフリカ戦線への海上補給路の哨戒圏内に入る「みらい」。
そこで見たのは、大破漂流した一隻の駆逐艦だった。
僚艦もなく、救助船はもう間に合わない。
ただ、「みらい」だけがそこにいた。
転載元
芳佳「イージス護衛艦『みらい』……?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1342702050/ 角川エンタテインメント (2008-09-26)
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http://strikess.jp/blog-entry-168.html
そりゃイージス艦は欲しいだろうな