1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/23(火) 21:08:32.78 ID:NT+JI8Cb0
世にも奇妙な物語×モバマスSSです
※ストーリーテラーはタモリです
※あくまで日常の中の物語とするため、良くも悪くもプロデューサーが出てきます
(※ちなみに、Pさん→名前呼び プロデューサーさん→プロデューサー呼び、です)
※ちひろさんも出るよ!
※時期として、本家より大幅にずれてますが……イヴイヴということで、ひとつ
では、どうぞ
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1419336502
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:10:42.20 ID:NT+JI8Cb0
タモリ「シンデレラ、という有名な童話があります。皆さんも一度は聞いたことがあるでしょう」
タモリ「継母らに虐げられていた少女が、ある夜、魔法の力によってお城の舞踏会へと出かけます」
タモリ「魔法のとける夜の12時、彼女はガラスの靴を落として去っていき…その靴を、城の王子が見つけます」
タモリ「舞踏会で彼女に惹かれていた王子は、靴の合う女性、シンデレラを見つけ出し……2人は結ばれ、最高の幸福をつかみます」
タモリ「あらすじはこんな感じでしょうか。何にせよこの童話もまた、立派な奇妙な物語であると言えます」
タモリ「ところで、この物語のタイトルを冠した、"シンデレラガールズ"、というアイドルたちをご存知でしょうか」
タモリ「噂によれば、誰もが頂点を夢見るシンデレラたち、ということからこの名前がついたんだとか」
タモリ「その話が本当かどうかは分かりませんが……彼女たちにはピッタリな、なんとも洒落た名前です」
タモリ「さて……今宵ここに用意された、6足のガラスの靴。これが今回の、物語への招待状です」
タモリ「舞踏会の曲は、5曲。6人の少女たちは、果たしてどのような踊りを見せてくれるのか。そして……」
タモリ「美しきシンデレラたちのうち誰が、今宵の奇妙な舞踏会へと招かれるのでしょう……」
---カタンッ カッ カッ カッ カッ…
タモリ「おや……さっそく誰か履いていったようです。それでは我々も、魔法の馬車へ乗って行きましょう……」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:11:35.00 ID:NT+JI8Cb0
ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ…
カチッ
卯月「……ぅにゅ。んー」チラ
[5:50]
卯月「……あとごふん」ゴソゴソ…
卯月「……!じゃないっ!」ババッ バタバタ…
卯月(おはようございます!島村卯月です!)
卯月(今日はなんと、私の初・ソロライブの日!いつもより、ちょっとだけ早起きです!)
卯月「いってきまーす!」ガチャ、バタン…
卯月(よし、この時間なら予定通り、間に合いそう)
卯月(あの時二度寝してたら、危なかった……)テヘヘ
卯月(……そういえば、夢を見てたような……)
卯月(すごく楽しい夢だった気がするけど……忘れちゃった。残念……)ウーン…
キィィ ガタンッ
卯月「ふー、到着っと。定期定期……」ゴソゴソ…
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:12:29.19 ID:NT+JI8Cb0
ー夢うつつー
島村 卯月
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:13:23.54 ID:NT+JI8Cb0
ガタンゴトン ガタンゴトン…
『次は○○、○○ですーーー』『××線は御乗換えですーーー』
卯月(うーん、それにしても眠いなぁ。疲れがたまってるのかなぁ……)
卯月(それとも、睡眠時間が足りないとか?電話、少し控えようかな……)
キィィイイ プシュゥゥ…
『○○、○○です。忘れ物には、ご注意くださいーーー』
・・・・・・・・・
卯月「ふぅ、いつもながら凄い人……」テクテク
卯月(ライブのお客さんも多いけど……同じくらい?もっと多いかな?)
卯月(……今日のライブ、お客さんいっぱい来るかなぁ?楽しみだなぁ……)エヘヘ…
モバP「おーい、卯月ー。こっちこっちー」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:14:04.72 ID:NT+JI8Cb0
卯月「あ、プロデューサーさん!おはようございます!」
モバP「おはよう。……随分ニヤけてたが、どうした?何か面白いことでも?」
卯月「違いますよ。今日のライブですよ、ライブ!」
モバP「あぁ、なるほど……。まぁ、初めてのソロライブだからな。絶対、成功させような?」
卯月「もちろんです!わたし、精一杯頑張りますから!」
モバP「よっしゃ!じゃあ早速車に乗ってくれ、まっすぐ会場に向かうぞ。朝は食べてきたか?」
卯月「いえ、おにぎり持ってきました。ここで食べても大丈夫ですか?」
モバP「ああ、こぼさないようにだけ注意な。よし、じゃあ出すぞ」
ブロロ…
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:14:59.78 ID:NT+JI8Cb0
卯月「わぁ……!大きい所ですね!」
モバP「あぁ、中々のもんだ。緊張は、大丈夫か?」
卯月「少しだけ……でもそれ以上に、ワクワクしてます!ステージもきれいだし……」
卯月「あの、ちょっとだけ、ステージ見て回ってきてもいいですか?」
モバP「はは、準備の邪魔にならないようにな……」
卯月「はい!うわぁ、凄い……」キョロキョロ
舞台監督「……ん?おぉ、Pさん。おはようございます」
モバP「おはようございます。どうですか、準備の方は?」
舞台監督「見ての通り、いい感じで進んでますよ……っと、卯月ちゃん。おはよう」
卯月「あ、おはようございます!今日はよろしくお願いします!」
舞台監督「ははは、よろしく。そういえばPさん、ちょっといいですか?ここなんですがね……」
モバP「えぇ……ああ、ここは……」フム・・・
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:15:50.32 ID:NT+JI8Cb0
モウチョットミギー コッチタリテナイヨー
卯月(……)キョロキョロ
卯月(……始めて来る会場だけど、なんだか、見慣れた気が……?)
卯月(いつもと同じようなステージだから、かな……でも)
卯月「すごく、広い。1人だと、こんなに違って感じるんだ……」
卯月(あの席いっぱいに、お客さんが……)ゴクッ…
ガタッ ゴンッ!!
卯月「!」ビクッ
アッブネ… キヲツケロヨー
卯月(……びっくりした……でも)
卯月(おかげで、緊張も吹っ切れたかな……よし!)
モバP「……っと、ごめんごめん、お待たせ卯月」
モバP「ちょっと話が長くなってな……とりあえず、楽屋に行こう。もう少ししたらリハーサルだ」
卯月「はい、分かりましたっ」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:16:34.44 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
ワァァアアア… ウヅキー ウヅキチャーン
モバP「お疲れ、卯月。……大成功だったな!」
卯月「あ、プロデューサーさん……はいっ。やりました!」
モバP「ホント、いいライブだったよ、よくやった。島村卯月、絶好調だな」
卯月「はい!……最初のころは、ここまで来れるなんて考えもしませんでした。なんだか、今も不思議な感じで……」
モバP「卯月……本当に、よく頑張ったよ。まるで夢を見てるようだ」
卯月「そうですね……ホントに、夢みたいですっ!」
…ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ
カチッ
卯月「……ぅにゅ。んー」チラ
[5:50]
卯月「……はれ?夢?」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:17:22.61 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
ガタンゴトン ガタンゴトン
卯月(まさか、ライブが楽しみすぎて夢に見るなんて……なんか恥ずかしいなぁ)
卯月(でも、夢でもうまくいったんだから……成功、するよねっ)
卯月(それにしても、リアルな夢だったなぁ……)
キィィイイ プシュゥゥ…
『○○、○○です。忘れ物には、ご注意くださいーーー』
卯月(あれ、アナウンスの人、夢と同じ声?……気のせいだよね。そもそも声色なんて、あまり変わらないか)アハハ…
モバP「おーい、卯月ー。こっちこっちー」
卯月「あ、プロデューサーさん!おはようございます……?」
卯月(ネクタイ……確か夢の中でも、赤色の……?)
モバP「おはよう。……随分ニヤけてたが、どうした?何か面白いことでも?」
卯月「……!いえ、今日のライブ、楽しみだなぁって……」
卯月(言葉まで、全く同じ……正夢?でも……)
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:18:03.97 ID:NT+JI8Cb0
モバP「……ったい、成功させような……?卯月、どうした?」
卯月「へっ?い、いえ、……私、精一杯頑張りますね!」
モバP「?お、おぅ。……よっしゃ、じゃあ早速車乗ってくれ。まっすぐ会場に向かうぞ。朝は食べてきたか?」
卯月「いえ、おにぎりを……。ここで食べても、いいですか……?」
モバP「ああ、こぼさないようにだけ、注意な。よし、じゃあ出すぞ」ブロロ…
卯月(……いくら正夢だからって、普通ここまで、一緒なものかな……)
卯月(……)
・・・・・・・・・
舞台監督「……いいですか?ここなんですがね……」
モバP「えぇ……ああ、ここは……」フム・・・
卯月(……やっぱり、同じ……ここまで来ると、ちょっと怖い、かな…)
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:18:41.96 ID:NT+JI8Cb0
卯月(あれ?でも、あれが正夢ってことは……今日のライブ、大成功間違いなし?)
卯月(うーん……でも、正夢のおかげで成功って言うのも、ちょっと複雑かな……)
ガタッ ゴゴンッ
…ガシャンッ!!
卯月「きゃっ!?」ビクッ
照明係「やっべ……大丈夫ですか?破片とか、あたりませんでしたか?」
卯月「は、はい……大丈夫、です……」
卯月(夢と、違う……やっぱり、思い過ごしなのかな?)
卯月(100%的中の正夢なんて……中々ない、よね)
モバP「おい、今の……大丈夫だったか?」タタッ…
卯月「あ、プロデューサーさん。その、照明の部品が落ちたみたいで……」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:19:22.35 ID:NT+JI8Cb0
モバP「ああ、それは見えたんだが……けがはなかったか?」
卯月「向こう側に落ちましたから。破片も、当たりませんでしたし……」
モバP「そうか、よかった……気を付けて下さいね、照明さん!」
照明係「は、はい!……すんませんでしたっ」
卯月「あ、そんなに頭を下げなくても……私は、大丈夫ですから」
照明係「それはよかったです……ライブ、頑張ってくださいね!ではっ」タタタッ…
モバP「ふぅ……よし。とりあえず、楽屋に行こう。もう少ししたらリハーサルだ」
卯月「……はい、分かりました」
卯月(夢では、成功してたライブ……これも、成功するよね……?)
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:19:58.09 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
ワァァアアア… ウヅキー ウヅキチャーン
卯月「ふぅ……!」
卯月(結局、何事もなく。"夢の通り"にライブは成功……)
卯月(……正夢、か……)
モバP「お疲れ、卯月。……大成功だったな!」
卯月「あ、プロデューサーさん……はいっ。やりました!」
モバP「ホント、いいライブだったよ、よくやった。島村卯月、絶好調だな」
卯月(あれ、どこかで聞いたような……?)
卯月「はい!……最初のころは、ここまで来れるなんて考えもしませんでした。なんだか、今も不思議な感じで……」
卯月(あ、そっか。夢の中で……)
モバP「卯月……本当に、よく頑張ったよ。まるで夢を見てるようだ」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:20:30.26 ID:NT+JI8Cb0
卯月(夢、か……プロデューサーさんは知らないだろうけど、私にとっては本当に……)
卯月「そうですね……ホントに、夢みたいですっ!」
卯月(本当に……夢みたい……)
…ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:21:07.56 ID:NT+JI8Cb0
卯月「……ぇ」カチッ
[5:50]
卯月「……うそ」
卯月(また、夢……?違う、いくら何でも……)
卯月(……夢じゃない、あれは現実としか思えない。でも、なんで……)
・・・・・・・・・
『○○、○○です。忘れ物には、ご注意くだーーー』
・・・・・・・・・
モバP「おはよう……?どうした、顔色が悪いようだけど……」
・・・・・・・・・
舞台監督「ここなんですがね……」
・・・・・・・・・
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:21:41.16 ID:NT+JI8Cb0
卯月(……やっぱり、まったく同じ中身……)
卯月(原因がなぜかは分からない、けど……同じ時間を、同じ場所で、繰り返してる……)
卯月(でも、だとしたら……この夢はいつから……?)
卯月(今日は……"今"は、一体何度目のライブなの……?)
モバP「っと、ごめんごめん、お待たせ……っ!危ない!」
卯月「えっ」
ヒュォッ ガッシャーン!!
卯月「い、っ……!?」
照明係「うわっ……す、すんません!大丈夫すか!」
卯月「っ、だ、大丈夫です……ちょっと、かすっただけで……」
モバP「……腕か。打撲はないようだが……君、救急箱を持ってきてくれ。すぐにだ!」
照明係「は、はい!」タッタッタッ…
モバP 「血は、とりあえずハンカチで……消毒したあとは、念のために医務室に行くぞ」
卯月「はい……」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:23:09.86 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
モバP「ふう……よかったな。切り傷で済んで」
卯月「ありがとう、ございました……」
モバP「しかし、危なかったな……あと数センチで、肩に直撃してたぞ。下手すれば……」
卯月(……あっ)
モバP「……ともあれ、大きなけがでないのは不幸中の幸いだな。よかったよ」
卯月(……もしかしてあの照明、落ちる場所が、近づいている……?)
モバP「……卯月?ホントに大丈夫か?」
卯月「!は、はい……なんとか、大丈夫です……」
モバP「……無理はするな。いざとなったら日程をずらすことも考える。だから……」
卯月「いえ……大丈夫です、やります。そのために、今まで頑張ってきたんです……!」
モバP「卯月……」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:24:01.76 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
ワァァアアア… ウヅキー ウヅキチャーン
卯月(終わった……これも、夢か……いや、夢になってしまうの……?)
モバP「お疲れ、卯月。…大成功だったな!」
卯月(あ、プロデューサーさん……)
卯月「あ、プロデューサーさん……はいっ。やりました!」
卯月(次は……ホント、いいライブだった……)
モバP「ホント、いいライブだったよ、よくやった。島村卯月、絶好調だな」
卯月(……全部、覚えてる。この会話も、もう何回目なんだろう……)
卯月「はい!……最初のころは、ここまで来れるなんて考えもしませんでした。なんだか、今も不思議な感じで……」
卯月(私の口から、言葉が自然とあふれてくる……まるで)
モバP「卯月……本当に、よく頑張ったよ。まるで夢のようだ」
卯月(台本を、なぞっているように……)
卯月「そうですね……ホントに、」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:24:35.12 ID:NT+JI8Cb0
卯月「"夢みたいですっ!"」
卯月(……!)
……ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ
カチッ
[5:50]
卯月「……見つけた。夢の、正体……!」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:25:23.39 ID:NT+JI8Cb0
『ーーー、○○です。忘れ物には、ご注意ーーー』
卯月("夢みたい"……あの言葉が、たぶんこの現実を"夢"にする原因……)
卯月(その時に、口を閉じてさえしまえば……それで戻れるか不安だけど、やるしかない……)
モバP「おーい、卯月ー。こっちこっちー」
卯月「あ、プロデューサーさん。おはようございます!……」
卯月(ただ、一つ。この夢で、気になっているアレ……)
卯月(ステージの照明……間違いなく、私に近づいている……)
卯月(次に当たれば、多分頭に……下手をすれば、死ぬ。それだけは、絶対にさけなきゃ……)
卯月(私は、生きて……この悪夢を、終わらせる……)
モバP「ーーーに注意な。よし、じゃあ出すぞ」
ブロロ…
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:26:08.46 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
卯月(ここで、ライブを……もう何回、やったんだろう……)
卯月(全部、一生懸命やって……全部、夢になった……)
卯月(だからこそ……今日で、終わりにする)
卯月(このライブは……夢では、終わらせない!)
舞台監督「Pさん、ちょっといいですか?ここなんですがね……」
モバP「えぇ……ああ、ここは……」
卯月(……)テク テク テク…
卯月(多分、次の照明はここに……なら)スッ
卯月(ここなら、大丈夫なはず……なのに)
卯月(なのに……なぜかまだ、嫌な予感がする……?ううん、きっとこれで……)
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:26:45.17 ID:NT+JI8Cb0
モバP「……っと、ごめんごめん、お待たせ卯月」
卯月「!プロデューサーさん…」
モバP「ちょっと話が長くなってな……とりあえず」
卯月(え……ダメ、そこは……!)
卯月「プロデューサーさん!よけて!」
モバP「楽屋に……え?」
ーーーヒュォッ
照明係「あ、危ない!」
ガッシャーン!! ガラン…
モバP「が……っ」ドサッ…
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:27:30.20 ID:NT+JI8Cb0
照明係「だ、大丈夫ですか!?大丈夫ですか……!?あ、あぁぁ……」
オイ、ダレカキュウキュウシャ! アタマニアタッタゾ…
卯月「う、そ……なん、で……」
ーーー「ちょっと話が長くなってな……」
卯月「……間違って、た……?まさか……」
ーーー「おい、今の……大丈夫だったか?」
卯月「私じゃ、なかった。あの照明に……死に、近づいていたのは……」
ーーー「っと、ごめんごめん、お待たせ……っ!危ない!」
卯月「ぷろ、でゅーさー、さん……」
卯月「あ、あぁ、ウソ、嘘……そんな……」
卯月「そ、そうだ、これも夢にしてしまえば……!」
卯月「夢、みたい……?う、うそ……なんで」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:28:21.23 ID:NT+JI8Cb0
卯月「夢みたい……夢みたい……夢、みたい……っ」
卯月「夢、夢、夢……」
卯月「夢……夢、みたい……」
卯月「こんな……こんなの、夢に決まってる……」
タッタッタッタ…
スタッフ「卯月さん、卯月さん!大丈夫、ですか……?」
舞台監督「……しばらく、そっとしといてやれ。ショックが大きすぎたんだ、夢だと思ってる……」
卯月「夢みたい……夢みたい……夢みたい……夢……」
卯月「ゆ、め……みたい……ゆめ……」
…デスカ? ダイジョウブデスカ!?
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:29:05.35 ID:NT+JI8Cb0
救急隊員「ーー大丈夫ですか!?大丈夫ですかっ……」
モバP(ん……頭が、痛む……ここは……?)
救急隊員「くっ……おい、まだ着かないのか!?」
運転手「これでも急いでるんですっ……もう少し、辛抱してください……!」
モバP(ああ、そうだ……確か、頭に何か当たって……)
救急隊員「くそ、出血がひどい……意識はあるようだが、このままでは……」
モバP(俺、死ぬのか……?あっけない、死に方だなぁ……はは)
モバP(……くそ……卯月のライブ、見たかった、なぁ……ちく、しょう……)
モバP(……やべ、眠くなってきた……意識が……)
モバP(はは、まるで悪夢を、見ているようだ……いや、いっそ悪夢なら……)
モバP(目が、覚めてしまえば、いいのに……っ)
救急隊員「……!だ、大丈夫ですか!?もう少しですっ、気をしっかり……」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:30:10.94 ID:NT+JI8Cb0
…ピッ
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:30:45.17 ID:NT+JI8Cb0
ピッピッ ピッピッ ピッピッ ピッピッ…
カチッ
モバP「……ん」モゾ…
[7:17]
モバP「夢、か……うえ、自分の死ぬ夢なんざいい気しないな……寝汗も、びっしょりだ」ウワ…
モバP「しっかし、すごくリアルだったな。まさか、こんなに夢に見入るとは……あれ、7時17分って……やば」
ブーッ ブーッ ブーッ…
モバP「げっ、卯月……も、もしもし」
『あっ、やっと出た……プロデューサーさん、今どこにいるんですかっ!?もう7時過ぎですよっ!』
モバP「す、すまんっ!今行くから、もうちょっと待っててくれ!」バタバタ
モバP「ったく……夢を見すぎるのも、考えもんだな……」ガチャ バタンッ…
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:31:29.60 ID:NT+JI8Cb0
タモリ「結局、これが一夜の夢だったのか、それとも現実を捻じ曲げられたものなのか」
タモリ「それは、私にも分かりません……なぜなら、この世界もまた、誰かの見る夢かもしれないからです」
タモリ「皆さんくれぐれも、夢を見る際にはご注意を……」
[世にも奇妙な物語]
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:32:18.43 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
タモリ「古来より人の声には、不思議な力が宿ると考えられてきました。いわゆる言霊、というものです」
タモリ「人の声が紡ぐ言葉が、現実に影響を与える。まあ迷信という方が多いでしょうが……どうでしょう」
タモリ「もしかしたらあなたの声にも、大きな力が宿っているかもしれません……」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:33:13.21 ID:NT+JI8Cb0
テク テク テク テク
小梅「ふぅ……や、やっとお仕事、終わった……」
小梅「プロデューサーさん、た、確かこの辺って……?」
ア……、コイ…
小梅(声……?)
…コウ…チャン…コウメチャン…
小梅(私の名前……この、路地から……?)
コウメチャン…コッチ、キテ…コッチ…
小梅「……」
小梅(ぼんやりとだけど……何か、いる……あまり、よくない霊……)
コッチ……コッチダヨ、コッチニキテ……コウメチャン……コッチニ、コイ…
小梅(近づかないほうが、いいかな……あっ)
「お、小梅!」
小梅「ぷ、プロデュ
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:34:01.51 ID:NT+JI8Cb0
ーサー……さん?」
モバP「やっと見つけたよ……こんな路地覗いて、どうしたんだ?」
小梅(……)
モバP「……?小梅?」
小梅「あ……ううん、な、何でも……ないよ」
モバP「まさか、また幽霊か……?俺、苦手なんだよなぁ……」
小梅「う、ううん、ほんとに、何でもない、よ。ちょっと、気になっただけ……」
モバP「そうか……?ならいいけど。よし、じゃあ帰ろうか。向こうに車、置いてるから」
小梅「う、うん……」
小梅(さっきの声……聞こえなくなってる……何だったのかな……)
小梅(……Pさんには、秘密にしてた方が、いいのかな……?)
フフッ…
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:34:44.21 ID:NT+JI8Cb0
ー声ー
白坂 小梅
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:35:20.10 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
小梅「今日も、遅くなっちゃった……」
小梅「迎えは……まだ、かな……」
…ウ、メ……キ…
小梅「……?」
小梅(また、声……?あ、ここ……昨日の路地の裏……?)
コウメ…コウメ…!
小梅「……」ジャリッ
ヒュッ ガタンッ ガラガラ…
小梅「!な、なにか……で、電灯?壊れて、落ちてきた……?」
小梅(もう少しで、ぶつかるとこだった……気を付けないと)
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:36:13.79 ID:NT+JI8Cb0
モバP「おーい、小梅ー。待ったかー?」
小梅「!ぴ、Pさん……ううん、そんなに、待ってはない、けど……」
モバP「けど……?あれ、なんだそれ。上から落ちてきたのか?」
小梅「う、うん……古くて、壊れたみたい……」
モバP「そいつは……けがは、なかったか?どっかに当たったり……」
小梅「うん、平気、だよ……ぎりぎり、後ろに、落ちたから……」
モバP「そっか、良かった。しかしちゃんと点検してるのかね、危ないったらありゃしない……」
モバP「ま、いっか。乗ってくれ、今日はまっすぐ寮に行くぞ」
小梅「うん……」
小梅(いつの間にか、声が消えてる……なんだったんだろう……?)
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:36:50.67 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
小梅(……)テク テク テク
コウ…メ、コウメ…
小梅「!」
小梅(また……?でも……)
小梅「路地から、遠いのに……なんで、」
ガッ ギリリ
小梅(!手……なにかが、掴んでる……!?)
小梅「は、離し、て……!」
ヒュッ ガシャーン
小梅「っ!?」
オイ ナンダイマノ ナニカフッテキタゾ?
小梅(……植木鉢……)
小梅「……あ、腕……自由に、なってる」
小梅(声も、消えてる……)
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:37:22.15 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
コウメ、コウメ…キテ…コウメチャン…
小梅(また……!)
小梅(今日で4日目……しかも、1日に聞こえる数、増えてる……?)
コウメ…、コウメ!!
小梅「!?」ビクッ
ゴォッ ブォォ…ン
小梅「わっ……、と、トラック……!」
小梅(これ……もしかして、あの声に、命を狙われて……?)
小梅(やっぱり、あの時の霊……悪霊、だった……?でも……)
小梅「昨日も、今日も……霊の姿が、見えなかった……それに……」
小梅(最初の、声と……違う、声?どういうこと……?)
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:37:54.94 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
小梅「……」
小梅(初めて声が聞こえて、1週間……まだ、声は聞こえてる。数も、増えてる……)
小梅(やっぱり、私を殺そうとしてる……?でも、いつもぎりぎり、助かってる……)
小梅(……分からないことばかりで、混乱する……あの声は、誰なの……?)
小梅(……)
モバP「難しい顔してどうした?なにか、考え事か?」
小梅「P、さん……ううん、なんでも、ないの……」
モバP「ここんとこ数日そんな感じで…なんか悩んでるなら、いつでも言えよ?」
小梅「うん……分かった……」
小梅(……Pさん……)
小梅(何だろう……何か、引っかかってる……?)
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:38:29.27 ID:NT+JI8Cb0
モバP「よし、そんじゃそろそろ行くぞ?今日の仕事は、まさに大一番だ。準備は?」
小梅「で、できてるよ……いつでも、オッケー……」
モバP「おし、それじゃ行こう。気合いれてな!」
小梅「うん……」
・・・・・・・・・
ブロロロロ…
小梅(……今は、お仕事が大事……だけど、どうしても、気になる……)
小梅(終わってからでも、いいけど……何だろう、嫌な予感がする……?)
コウメチャン!…コウメ!
小梅「!?と、止めて……!」
モバP「え?」
小梅「車、止めて、お願い……!」
モバP「ど、どうしたんだ……?とりあえず……」
キキー…ッ
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:39:52.98 ID:NT+JI8Cb0
小梅「!」バタンッ タッタッタッタ…
モバP「おい、どうしたんだ……って小梅!?」
小梅「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」タッタッタッタ…
小梅(あの声を、聞いて……思わず、逃げちゃった、けど……)
小梅(今確かに、声が、はっきりと聞こえた……今までとは、段違いに……)
小梅(そして、やっと分かった……あの声の、正体……)
小梅「でも、なんで……あの声は……」
小梅(いつも聞いてるはずの……あの、Pさんの、声……!)
小梅(気づかなかった……いや、気づけなかった……?なんで……)
小梅(それに、別の声……2人分、声が聞こえた、ような……?)
小梅「ハァッ、ハァッ……!ここ、は……」
小梅(最初の声の、場所……あの時の、路地……!)
小梅(さっきの場所……近くなんだ。分からなかった……)
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:41:38.51 ID:NT+JI8Cb0
小梅(Pさんは……いない。まいた、のかな……)
小梅(あの声が、Pさんなら……生霊?それも、悪霊の……)
小梅(……信じたくはない、けど……今は、とりあえず、逃げるしか……?)
小梅「あれ……?何か、立ってる……?」
小梅(……扉?見覚えのある、ような……)
小梅(これ……事務所の、扉……?そんなわけない、けど……そっくり)
小梅(……!)
コウメ、ハヤク……コウメ…
コウメチャン……キテ…ハヤク、コウメチャン……
小梅「声、扉の向こうから……でも、Pさんはいない……?」
小梅(扉の中に、何が……開ける?でも……)
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:42:19.62 ID:NT+JI8Cb0
モバP「小梅」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:43:45.38 ID:NT+JI8Cb0
小梅「!」ハッ
モバP「全く…どうした?急に飛び出して……また、この路地か?」
モバP「次の仕事は、この先あるかないかの大きな仕事なんだ、遅れたら大変なんだよ……。ほら、」
モバP「こっちにこい、行くぞ」
小梅(……!今、の……)
小梅「……P、さん……?」
モバP「なんだ?いいから早くこっちに……」
小梅(……!)
モバP「?……おい、いったいどうしたんだって……」
小梅「そう……そう、だったんだ。違ったんだ……あなたは、」
小梅「あなたは、Pさんじゃ、ない……」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:45:02.58 ID:NT+JI8Cb0
モバP「……小梅、ふざけてないで……」
小梅「とぼけても、ダメ……全部、分かったの。何もかも……」
小梅「あなたは……あなたこそが、最初の霊……この路地の、悪霊だった」
小梅「最初に、この路地に呼び寄せた……あの声は、あなたのもの……」
モバP「何を、言って……」
小梅「"こっちにこい"って……さっき、こぼれた言葉。声色は、Pさんでも、雰囲気が違う……」
小梅「それで、わかったの……あなたは、Pさんじゃない。その声は、あなたのものじゃない……!」
モバP「……」
小梅「……あなたは、ここで死んだ……でも、死を受け入れられず、孤独で……」
小梅「……誰か、仲間がほしかった。誰かに、自分の声を、聴いてほしかった……」
小梅「そして……それに気づいた、人がいた……それが、私……」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:45:52.56 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
「お、小梅!」
小梅「あ、プロデュ
ドンッ キキーッ
キャー オイ ヒトガハネラレタゾ キュウキュウシャヨベ!
コウメ、コウメーッ!!
フフッ…
・・・・・・・・・・・・・・・
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:46:30.41 ID:NT+JI8Cb0
小梅「私は、そこで撥ねられて……でも、生きていた。完全な霊じゃ、なかった」
小梅「だから、あなたはPさんに成りすまして……私の意識に、直接現れた……」
小梅「そして、確実に、死に導こうとした……!この世界のなかで、何度も、何度も……」
ーーー「……最後の最後で、うっかりしてしまったか。まさか、あの声だけで、バレるとはな……」
ーーー「君の推理は、大体あってる。お見事だよ、小梅ちゃん……」
小梅「……」
ーーー「……そうだ、確かに俺はコイツじゃない。君の記憶を、ちょっと借りているだけだ」
ーーー「この路地で俺は……死んだんだ。君と同じ、車に撥ねられて……即死、だった」
ーーー「だから、君も同じように……すまなかったな、痛い思いさせて……」
小梅「……」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:47:02.88 ID:NT+JI8Cb0
ーーー「……正直、君が通りかかって、こっちを見たときは驚いた。気づかれることすら、それが初めてだったからな」
ーーー「でも……だからこそ、君しかいなかった。焦っていたのかも、しれないな……」
ーーー「……小梅ちゃん、君は一つ間違ってる。最初は、君を殺すつもりなんてなかったんだ」
小梅「え……」
ーーー「確かに仲間が、……君が、欲しかった。でも、ほんの少しでも一緒に過ごせれば、それでよかったんだ……」
ーーー「最初のうちは、路地に近づかないように……ここを見つけてしまわないように、遠ざけようとしただけで……」
ーーー「でも、日に日に思いが募っていった。だから"襲った"んだ。今日の"大一番"ってのも、……」
小梅「……私を殺す、嘘。だったんだね……」
ーーー「あぁ……だが、ダメだった。ことごとく君は、死をさけていった…今日のような、完全な不意打ちすら、だ」
ーーー「あとちょっと……ギリギリまで近づくくせに、躱されていた。聞かせてくれないか、一体どうやって……」
小梅「……私の力じゃ、ない……声の、おかげ、だよ……」
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:48:05.30 ID:NT+JI8Cb0
ーーー「声……もしかして、コイツのか……」クイッ
小梅「……うん」コクッ
小梅「……この声は、Pさんの声……この声が、私を助けようと、してくれてたの……」
ーーー「なるほどな…皮肉なもんだ。もしその声が死に近づけまいとしていたのなら……」
小梅「そう……勘違い、してたの。声が、私を殺そうと、してるって……だから、声から、逃げようと、してた」
小梅「ギリギリ、だったのも、そのせい……でも、それでも声は……Pさんは、必死に私を、引き止めて、くれてたの……」
ーーー「……かなわないな。パートナーとの心の絆、ってやつか?今の俺には縁のない話だが、な……」
小梅「……」
ーーー「まぁいい……君の事はあきらめるさ。その扉は、元の世界につながってる……開ければ、君は目を覚ますはずだ」
小梅「う、うん……あの、ね」
ーーー「?なんだ、まだ何かあるのか?」
小梅「えっと、その……」
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:48:44.26 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
小梅「……じゃあ、そろそろ行く、ね……」ギィ…
ーーー「あぁ……今まで、楽しかったよ。ありがとう」
小梅「わ、私は……ちょっと、怖かった、かな……」
ーーー「はは、そうだよな。ごめんごめん……さようなら、小梅ちゃん」
小梅「うん……じゃあ、ね……」ギィィ…ッ バタ…ンッ
…キテ、コウメチャン……キロ、オキロコウメ!
モバP「小梅!起きろ小梅!」
ちひろ「起きて!小梅ちゃん!」
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:49:17.01 ID:NT+JI8Cb0
小梅「……あ、ぴ、P、さん……」
モバP「こ、小梅……良かった、小梅……っ!」
ちひろ「良かったわね、小梅ちゃん……!」ヒシッ
小梅「わっ、ち、ちひろ、さんも……ここは?」
モバP「病院だよ。車に撥ねられて、お前は1週間、寝たきりだったんだ」
小梅(1週間……向こうの世界と、同じ日数……)
ちひろ「不幸中の幸いで、けがは少なかったけど……意識だけが戻らなくて」
ちひろ「事務所の皆も、ずっと心配してたのよ?」
モバP「それに、1日毎に目に見えて衰弱しててな、医者がいうには今日が山だと言われてたんだ」
モバP「ただ声をかけたり、手を握ったりしかできないのは、すごく歯がゆかったよ……」
小梅(!あの時の、手……Pさん、だったんだ……)
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:49:59.68 ID:NT+JI8Cb0
ちひろ「でも、こうして目を覚ましてくれて……ホントによかった……!」ギュッ
小梅「う、うん……よかった……」
小梅(……)
・・・・・・・・・・・・・・・
モバP「ようやく退院か、といってもまだ仕事は厳しいな…」
モバP「とりあえず、仕事は空けてあるから、本調子になるまでゆっくり休んでくれ」
小梅「うん……迷惑かけて、ご、ごめんなさい……」
モバP「小梅のせいじゃないよ。それに、ここんとこ忙しかったし。丁度いい休暇だよ」
小梅「う、うん……ありがとう」
小梅「……あ、Pさん……」
モバP「ん、何だ?」
小梅「えっと……よ、寄ってほしい所が……」
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:52:01.96 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
小梅「……」トスッ
モバP「……小梅?自分が死にかけた場所に花束って……ブラックジョーク?」
小梅「ち、違う、私のじゃ、ないよ……!」ポカポカ
モバP「い、痛た、ゴメンゴメン。でも、じゃあ誰のだ?」
小梅「……よく、知らない人……?」
モバP「……知らない人……?知らないのになんで花束を……?」
小梅「あ、あはは……」
小梅「……」
・・・・・・・・・
小梅「あなたが寂しいのは、よくわかる……で、でも、だからって、人を道連れにしちゃ、ダメ……」
ーーー「!」
小梅「それじゃ、あなたと同じ、つらい思いを、させるだけ……自分が、つらいと思うなら……」
小梅「絶対に、他の人にその気持ちを、味わわせては、ダメ……」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:55:59.10 ID:NT+JI8Cb0
ーーー「……」
小梅「あなたは、寂しいから、そんなことをするって、言ってたよね……なら、私が、今日からあなたの友達に、なってあげる……」
ーーー「とも、だち?」
小梅「……向こうに、戻ったら、ここに花を、置いてあげる……それが、私がここにいた、証……」
小梅「私とあなたを、つなぐもの……友達の、しるし……」
小梅「だから、もう苦しまないで……あなたは、1人じゃない。もう、誰かの人生を、奪わないで……」
ーーー「……あぁ。そう、だな。俺が、間違っていたよ」
ーーー「……ありがとう、小梅ちゃん……」
・・・・・・・・・
小梅(今は、これぐらい……これぐらいしか、できない)
小梅(だけど、忘れない、から……あなたのこと……)
小梅(……本当のあなたは、顔も、名前も、分からない……けど)
小梅(声だけは、覚えてる……それが、私にとっての、あなたといた証……)
小梅(この花は……私にとっても、"あなた"を思い出す、目印になる……)
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 21:56:27.69 ID:NT+JI8Cb0
モバP「……そろそろ、いいか?」
小梅「あ、う、うん……」
小梅(……私の声は……あなたに、届いてる、かな……?)
小梅「……さよなら、寂しがり屋さん……」
[世にも奇妙な物語]
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:28:16.99 ID:NT+JI8Cb0
ペラ… ペラ…
タモリ「……おっと、失礼。つい、読みふけってしまいました」パタン
タモリ「時間や場所を問わず、読むだけで様々な世界を楽しめる…小説は、非常に便利なものです」
タモリ「また一口に小説と言っても、恋愛、SF、冒険にミステリーと色々ありますが、私は……」スッ
タモリ「『世にも奇妙な物語』……やはり、これですかねぇ」ペラ…
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:28:45.76 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
文香「……」
文香(久々の古本屋……初めて来たお店だけど、やっぱり落ち着く……)
文香(最近は忙しかったから、全然寄れなかった……)
文香(これからも休みは少ないって、プロデューサーさん言ってたし……)
文香(……今日はちょっと多めに、選んでいこうかな……)
文香(……?)
文香「これは……?」
『文香』
文香(私の名前……?偶然だと思うけど……)
文香「……」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:29:30.12 ID:NT+JI8Cb0
-My Story-
鷺澤 文香
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:30:00.56 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
文香(結局、昨日はこの一冊だけ買ってきてしまった……)
文香(思ったより値が張ったのもあるけれど……それ以上に、この本への興味が他よりも強かった)
文香(……真っ白な表紙に、黒字の題名、ただそれだけ……背も、同じ……)
文香(一番変わっているのは……作者名が書かれていないこと……)
文香(表紙にも、背にも……書かれているのは『文香』だけ……)
文香(……私と同じ名前の、珍しい本……今まで全く知らなかった……なぜ?)
文香(……これは)
モバP「奇妙だな」
文香「!?」ビクウッ
モバP「恐らく昨日買ったのであろう本を、読むことはおろか開きもせず、表面だけをじっと観察する文香…」
モバP「…なぁ、何やってんだ文香?」
文香「うぅ…そんな目で見ないでください……」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:30:26.76 ID:NT+JI8Cb0
モバP「さすがに、事務所来てからずっと、本の観察ばかりしてるのを見たらなぁ…」
文香「…実は、…」
・・・・・・・・・・・・・・・
モバP「うーん、作者不詳、題名が自分の名前の本、か…」
文香「つい買ってしまったんですが、興味があるのと同時に、少し怖くて……」
モバP「なるほどね…よし、じゃあ代わりに俺が中を見るってのはどうだ?」
文香「え、プロデューサーさんが……ですか?」
モバP「変なことはしないさ、ちらっと見るだけだ。特に変な中身じゃなきゃ文香にバトンタッチ、どうだ?」
文香「それは……ただでさえ、変な相談をしてご迷惑をかけているのにそんな……それに……」
モバP「それに?」
文香「……なんだか、自分自身を見られてるようで、ちょっと恥ずかしいような……」
モバP「うーん…じゃあ目次ならどうだ?目次ぐらいなら大したことも書いてないだろうし、平気だろ?」
文香「……」ウーン
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:30:58.89 ID:NT+JI8Cb0
モバP(悩んでる…まぁ、そりゃそうだ、俺だって悩む…自分の名前の本か。どんなだろう…)
モバP(もしかして文香の叔父さんがなんか書いてたり…?な、なんかいけない感じが…)
文香「……」
モバP(なんにせよ、ちょっと読んでみたいなぁ…数ページ、こっそり覗いてみようかな)
文香「……分かりました、その代わり……」
モバP「う、うん?その代わり?」
文香「……目次だけ、ですよ?他は覗かないでくださいね?」
モバP「ノ、ノゾクダナンテソンナー……はい、目次だけ見ます……」バレテラッシャル…
文香「……」ジッ…
モバP(めっちゃ見られてる…まあいい、とりあえず……)
モバP(表紙は言わずもがな。扉には…やっぱり『文香』だけか…)ペラ
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:32:03.25 ID:NT+JI8Cb0
モバP「え?」
文香「な、何か……?」
モバP「いや……目次がないんだ。扉の次のページに、大きく『0』と書いてあるだけで……」
文香「……本当ですね」
モバP「なんか物足りない気がするな……この『0』ってのは第0章ってことか……?」
文香「……ちょっと、見せて下さい」
モバP「ん、どうぞ」ホイ
文香「ありがとう、ございます……」
文香「……」ペラ
モバP(……さあ、何が書かれてるんだ?)ゴクッ
文香「……っ!」
モバP「!ど、どうした文香?」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:32:45.88 ID:NT+JI8Cb0
文香「……い、いえ……何でも……」
モバP「なんでもって……明らかに顔が引きつってたぞ、大丈夫か……?」
文香「……その、「プロデューサーさーん、文香ちゃーん」ビクッ
ちひろ「そろそろお仕事の時間ですよー?」
モバP「へ?っと、もうこんな時間か。文香、とりあえずその本はまた後だ」
文香「はい……」
文香(……あの本の内容、まだはっきりとは分からない、けど……)
文香(『0』の次のページ、そこに書かれていたのは、出生の様子……)
文香(大して詳細には書かれていない……ただ、1つだけ、目を引く単語があった……)
文香(あの赤ん坊の、母親の名前……あれは……)
文香「お母、さん……」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:34:01.36 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
モバP「ふぅ…今日はこのぐらいか。疲れたなー……」
文香「……」
モバP「……なぁ、さっきからあまり顔色がよくないが………大丈夫か?」
文香「!」ハッ
文香「す、すいません……その、……」
モバP「……あの、本の事か……一体何が書いてあったんだ?」
文香「……」
モバP「……ま、聞かないでおくよ。無理して聞くほどのことじゃないしな」
文香「すみません……」
モバP「謝ることはないさ。それより文香こそ、あまりあの本を気にしすぎないほうがいいんじゃないか?」
モバP「ちらっと覗いただけで顔色を悪くするようじゃ、あまりいい内容じゃないんだろ?何だったら、店に返しに……」
文香「!だ、ダメ、です……!あの本は、返したら……!」
モバP「お、おう、そうか……まぁ、ほどほどに、な」
文香「……はい……」
モバP(……)
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:34:32.37 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
文香(……)ペラ… ペラ…
文香(やっぱりそうだ……まだ6章までしか読んでないけど……)
文香(この本には、私の人生が、正確には私の『過去』が書かれてる……)
文香(章の数は、その出来事が起こった時の、私の年齢と同じ。だから、『0』で始まってたんだ……)
文香(すべての章は、いつも私の誕生日の場面から……次の年、その前日まで続いてる……)
文香(まるで、その辺に置いてある小説のよう……私が、主人公ということをのぞけば)
文香(さすがに、私の行動のすべてが描かれているわけではない……けど)
文香(……少なくともここに書いてある内容自体は、全部恐ろしく正確なはず……)
文香(現に、私の記憶と異なる点は全くない……むしろ、読むまで忘れていた事がほとんど……)
文香(懐かしいことも多いけど……それ以上に、薄気味が悪い……)
文香(……いったい、誰がこれを……)
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:35:00.21 ID:NT+JI8Cb0
文香(両親や叔父は……違う。家の外であった事も、所々書いてあった……あんなに正確に知っているはずがない。
文香(まして友人や知人でも……ない、はず。そもそも、私を常に観察できる人なんているわけ……)
文香(……これを書けるのは……)
文香「『私、自身?』」
文香(!)ハッ
文香「今、本から声が……?」
シィ…ン
文香「……気の、せい?」
文香(……とりあえず、今日はもう寝よう……)
文香(明日も、早い……)
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:35:29.76 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
オツカレシター オツカレー
文香(……)フゥ…
文香(仕事の合間をぬって、とりあえず7章まで読んでみたけど……こうしてみると、色々思い出す……)
文香(私……こんなにたくさんの事、忘れていたんだ……自分の、人生なのに……)
文香(19年……本当に、色んなことがあったんだな……最近が忙しくて、忘れていた……?)
文香(相変わらず、気味は悪いけど……この本のお蔭で、少し得したような気がする……)フフ…
パラパラパラ…
文香(……?何だろう……何か、胸騒ぎがする……今まで以上に……)
文香(……焦りを、感じてる?どうして……?)
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:36:10.09 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
文香(……)
文香(これで、9章も終わり……)ペラ
文香(何だろう、この感じ……これは、不安……?)
文香「……あ」
文香(これ……そんな、)
文香「9章までのページが……残りより、少し多い……」
文香「ちょうど、半分のはずじゃ……?まさか……」パラパラパラパラ…
ピタッ
文香「19章分のページ……1ページしか、ない……!?」
文香(……しかも、ここに書かれていること……つい、一昨日の……)
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:36:48.14 ID:NT+JI8Cb0
文香(いつ、どうして、書かれて……いや、それよりも……、)
文香(隙間が、ない……多くても、あと……1行分……)
文香(どうして……気づかなかったんだろう……)
文香(いくら何でも、私の人生全てがこの一冊に収まるわけない……まして、現在までの量さえカバーできない……)
文香(……どう、すれば)
モバP「よーし、今日も終わり……文香?」
文香「!ぴ、Pさん……」
モバP「まだ残ってたのか…それ、あの本か?」
文香「は、はい……」
モバP「……何か、分かったのか……?」
文香「……その、……」
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:38:23.44 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
モバP「……つまり、これは今までの文香の人生が書かれている本で……」
モバP「肝心の、現在のページのところで途切れている、と……」
文香「……」
モバP「字は全て、インクで印刷されている……書き足すことはできないはずだけど……」
文香(だとしたら……なぜ、つい数日前のことまで書かれていたのか……?)
モバP「しかし、色々と恐ろしい本だな……ここが、一昨日あたりのことか。だとしたら……」
モバP「もしこの先が書かれるとしたら……今日の分まで、書かれるかどうか……」
文香(……もし、最後まで文字で埋まったら……もし、文字を書くページが無くなったら……)
文香(私は、どうなるの……?)
ジワ…
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:39:45.33 ID:NT+JI8Cb0
文香「……っ!……ウソ……」
ジワ… ジワ…
モバP「こ、これは……黒い、点……インク?」
文香(!違う、ただの点じゃない……この形……文字に、なってる……)
文香「……まさか、続きが……書き足されて、いく……!?」
モバP「な……っ!」
ジワ…
文香「Pさん……私、私……」
ジワッ…
文香「どうなるんですか……!?」
モバP「……文香……」
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:40:40.07 ID:NT+JI8Cb0
ジワ… ジワァ…
文香(いや……いや……!)
文香「いや……っ!!」
ジワァ…ツツッ
モバP「端まで、行き着いた……うおわっ!?」バサバサバサ…!
文香(本が……ページが、逆順にめくれてく……)
バサバサバサバサバサバサバサバサッ! …パタッ
ズ、ズッ…
文香(……!)
文香「た、タイトルが……にじんで……」
スゥッ…
モバP「……」
『文香 二』
モバP 文香「「……」」
モバP 文香「「……えっ」」
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:41:55.86 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・・・・・・・
モバP「……まさか、あんな結末になるとはな……」
文香「……本当に、ご迷惑を……」
モバP「いやいや……文香が何ともなくて、よかったよ」
モバP「しかし、『文香』から『文香 二』……か。何というか……」
文香(安直な……)
モバP「文香の物語は、まだまだ続くってことかね……まったく、ややこしいんだよなぁ……」
モバP「まあとりあえず、今日も頑張りますか!」
文香「……」
モバP「……文香?」
文香「あ……いえ」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:42:25.30 ID:NT+JI8Cb0
文香(……あの本は『私』を書き記す。私が生きる限り、いつまでも書かれ続ける……)
文香(そういう意味では、あの本の作者は私、なのかな……なんか、不思議……)
文香(でも、だとしたら……ううん、だからこそ……)
文香(誰もが読みたいと思えるような人生を……書き上げて、みせる)
文香「プロデューサーさん……今日も、よろしくお願いしますね」フフッ
[世にも奇妙な物語]
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:43:26.23 ID:NT+JI8Cb0
幸子「……」カッ カッ カッ カッ
幸子(静かな冬の朝に、一人階段を昇るボク……さすが、絵になりますね)ガチャッ
幸子「おはようございます!カワイイボクが今日も出社ですっ」
モバP「ん……っと、早いな幸子。おはよう」
幸子「あ、おはようございます!Pさんには負けますけどねっ」
モバP「そりゃあ徹夜だし……中々終わんないんだよなぁ、この書類……」
幸子「む、ボクのプロデューサーたるもの、生活に乱れがあるのは許せませんね」
モバP「え、それ幸子と関係あるの……?」
幸子「大ありです!完璧なボクの隣に立つのは、完璧な人間だけですからね!ダメダメなPさんじゃまだまだですっ」
モバP「……へー……その完璧な幸子ちゃんは、確か今日オフだよねー、なんでここにいるのかなー」
幸子「えっ」
モバP「ほらここー、今日の欄に幸子の字はないねー。この時間に幸子がいるべきなのはー、明日でぇーす」
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:44:57.01 ID:NT+JI8Cb0
幸子「そ、そんな……完璧な、ボクが……せっかく、1時間も早起きしたのに……」
モバP「ま、誰にでも間違いはあるさ。完璧な人間なんてそういないよ、ねー幸子ちゃー」
幸子「……」ジワッ
モバP「ちょ、ちょっと冗談だって幸子。ほらコーヒー、コーヒーあげるから、これ飲んで落ち着いて。なっ?」
幸子「……ぁぃ」グスッ… ゴクッ
幸子「!」ガタンッ バシャッ
モバP「あっつ、あっつ!ちょ、幸子さんゴメンってば、謝るから!」
幸子「違います!そのコーヒーですよ、コーヒー!」
モバP「……コーヒー?砂糖は入れたはずだぞ?」
幸子「塩ですよそれ!ベタなことして、なんてもの飲ますんですか!?」
モバP「そんなはずは……ペロッ……!これは食塩!」
幸子「なに茶番やってるんですかっ。いいから淹れ直してきてください、すぐっ!」
モバP「へ、へいっ」バタバタバタ…
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:46:33.26 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・
幸子「まったく……ちょっと苦みのある醤油かと思いましたよ」
モバP「まさか塩とは思わなくてなぁ……。こう、いつも通り一気にざざっと」
幸子「睡眠不足に糖分の過剰摂取、生活習慣病まっしぐらですね。というかコーヒー飲まなきゃいいじゃないですか……」
モバP「なぜかやめられなくてなぁ……。でも確かに、ちょっと生活を見直したほうがいいか……?」
幸子「ぜひお願いしますよ。線香の匂い、あまり好きじゃないもんで」
モバP「ブラックな……流石に死にはしないだろ。気を付けるには気を付けるけど」
幸子「なによりです。ところでPさん、これボクの名前書いてますけど、新しい仕事ですか?」ガサ
モバP「ん、あぁ。折角だから、今のうちに確認しとくか。同じ日にオファーがかぶってるやつなんだ、それ」
幸子「なるほど。好きに決めちゃっていいんですか?」パサッ
モバP「まあそう急ぐな、オフだし時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり決めてこう」
幸子「嫌味ですか!もうっ!」
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:47:27.40 ID:NT+JI8Cb0
モバP「あはは……じゃ、早速。ここに陸、海、空、3つの仕事のオファーがある」パラパラパラ…
幸子「そんな軍隊みたいな……ホントに軍隊関係じゃないでしょうね?」
モバP「いやいや。まず陸だが……ほら、前にテレビで、芸人がコモドドラゴンに追いかけられるってのがあったろ?」
幸子「ああ、あれは凄かったですね……まさか、あれを?」
モバP「うん、あれをライオンでやろうって」
幸子「バカじゃないんですか!追いつかれたらホントにひとたまりもないんじゃ!?」
モバP「ば、バカとは失礼な……。安心しろ、野生は野生でも調教された野生だ」
幸子「結局野生が隠しきれてないじゃないですか!却下です!!」
モバP「そうか……残念だ」シュン…
幸子(落ち込んで……本気で仕事受けるとでも思ったんでしょうか……)
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:48:32.30 ID:NT+JI8Cb0
モバP「……めげずに海だ、これはだな」
幸子「一本釣りでもやるんですか……?」
モバP「いや、さっきのをサメでやろうって」
幸子「このバカ!!」
モバP「ま、またバカって……」
幸子「なんでそんなにボクを生き急がせようとするんですか!?そもそも勝ち目なさすぎでしょう!?」
モバP「一応レーザー・レーサーを」
幸子「却下ぁ!!」
モバP「そ、そんなぁ……似合うと思うんだけどなぁ」
幸子「そっちで断ったんじゃないんですよ!」ハァ…
※レーザー・レーサー:競泳水着。公式大会で使用禁止になる程速く泳げるようになるチートアイテム。超ピチピチ。
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:49:27.28 ID:NT+JI8Cb0
モバP「まぁ、この2つは冗談みたいなもんだ。最初から断るつもりだったしな、9割方」
幸子「なんの未練があって1割……ああいいです、多分わかりましたから」
モバP「レーザ」
幸子「いいですってばっ」
モバP「むー……。まぁいい、最後の1つだ……多分これはいけるだろう」
幸子「多分って……一応、言ってみてくださいよ」
モバP「前にも経験したやつだよ。ほら、アレだよアレ、アトラクション的な」
幸子「……ウォータースライダー」
モバP「それはオフの時だ」
幸子「プール」
モバP「季節外れ」
幸子「それを言えば海もでしょう……覚えてませんね、断じて」
モバP「往生際の悪い……ヒント:"空"だってば」
幸子「……ぅぁぁ」
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:50:50.26 ID:NT+JI8Cb0
モバP「新しいスカイダイビングクラブからの依頼だ。前のライブの時のを見てな、ぜひPRとして頼むって」
幸子「あれ一回しかやってないじゃないですかぁ……」
モバP「アイドルで経験者はお前ぐらいなもんだ、しょうがないじゃないか。な?」
幸子「無理やりやらせておいて何を……。そもそも冬に空って……」
モバP「寒いな、むちゃくちゃ」
幸子「他人事ですか!どうせならPさんも飛んでください!」
モバP「お、俺は下で見守ってなきゃ……あれだ、凍りはしないだろうから、多分」
幸子「凍ってたまりますかっ!バナナじゃあるまいし!」
モバP「釘が打てたりして……冗談だ、頼むからつま先を踏まないでくれ」イタタッ
幸子「ったく……もう、なんでこうロクな仕事がないんですか……」
モバP「まあ、有名税みたいなもんだ。人気が出れば、平たく言えば有象無象がよってくる。仕方ないさ」
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:52:14.28 ID:NT+JI8Cb0
モバP「でもな、少なくともこの仕事は幸子がカワイイからまわってきたんだ。並のアイドルじゃこなせないし」
幸子「後半が主ですよね……ハァ、分かりました。とりあえずこれは、引き受けますよ」
モバP「……ゴメンな幸子、これが終わったらもっといい仕事もらってくるから」
幸子「これがあまりいい仕事じゃないってのは自覚あるんですね……約束ですよ、絶対守ってくださいね!」
モバP「あぁ、もちろんだ。さて、じゃあこの仕事は…ちょうど1か月後だな。それまでは予定の通りだ、よろしく」
幸子「分かりました。フフーン、明日からの仕事とレッスンで力をつけて、色々見返してやりますからね!」
モバP「ああ、期待しているよ。……」
モバP「レーザー・レーサー幸子……見てみたかったなぁ……」
幸子「まだ言うかっ!」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:52:53.25 ID:NT+JI8Cb0
-Falling!-
輿水 幸子
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:53:41.42 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
幸子「寒い……コート羽織ってなお寒い……」ガタガタ
モバP「ああ、寒いな……」フカフカ
幸子「……」バサッ
モバP「ああっ、俺のあったかコート!返せ幸子!」
幸子「これから上空にいくボクはもっと寒い思いするんですっ!ちょっとは我慢してください!」
モバP「うっ……そ、そんなこと言ったって、そのコートは今俺の命同然であって……」
幸子「これ1枚が命なら、プロデューサーさんは3つも命があるでしょう!?そのコート2枚で十分です!」
モバP「1つ俺のマジライフじゃないか!このまま凍死したらどうすんだ、残機2つでゲームオーバーだぞ!!」
幸子「死ぬわけないでしょう!?どんだけ寒がりなんですか、末梢血管全滅でもしてるんですか!!」
パイロット「あ、あのーそろそろ……」
モバP 幸子「「何ですかっ!?」」
パイロット「ひっ!そ、その、準備が出来ましたので、搭乗してほしいなぁ、と……」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:54:44.42 ID:NT+JI8Cb0
幸子「ああ!そうですね、さっさと行ってさっさと飛びましょうっ」ガラッ バタンッ
モバP「あっ、幸子、幸子ぉっ!人の命をぉぉ……」ガクッ
パイロット「い、いいんでしょうか、あのままで……」
幸子「……かまいません。ちょっと罪悪感はありますが、飛ぶのはボクですので。当然の権利ですっ」
パイロット「はぁ……分かりました。では……」ガタンッ ブルル…ンン
サチコー…イクナサチコ-…ヒ、ヒトゴロシー…
幸子(……罰は当たりません、よね……念のため、合掌)チーン
・・・・・・・・・
幸子「……そろそろ、ですかね。機内が暖かいのは幸いでしたが……扉、開けたくないですね……」サムソウ…
カメラマン「まず幸子ちゃんから飛んでください、自分はそのあとから追っかけるかたちで……」
幸子「うー……あまりそういうレディファーストはいらないんですがね……そういうもんでもないですか」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:55:46.52 ID:NT+JI8Cb0
ガタン ビュォォ…ッ
幸子「さっむ……!ホントに、凍るかも……!」
カメラマン「飛んでしまえばあっという間ですから、早く飛びましょう、寒いっ」ガタガタ
幸子「その体格で寒いって……それにあなたプロですよね?寒さには慣れっこなんじゃ?」
カメラマン「冬にはあまり飛びませんし、今日は格段寒いですから……それに燃やせる脂肪にも限界が……」
幸子「……災難です。やっぱプロデューサーさんのコート全部引っぺがすべきでした……」
カメラマン「いいから早く、ホントに凍ってしまってもいいんですかっ」ガタガタガタ
幸子「わ、分かりましたよもう……!うぅ、もうどうにでも……っ」ブォッ
カメラマン「おぉ……い、言ってはみたものの、さすが幸子ちゃん、根性あるぅ……あ、電源ついてない」ゴソゴソ
パイロット「何をもたもたと……早く飛んでくださいよ、こっちも寒いんですからっ」
カメラマン「わ、分かってますって……えいっ」ブォッ
パイロット「ったく……しかし、本当に根性のある子だな、幸子ちゃん……」
パイロット「ああいう子に限って、空回りして変なことが起きなければいいが……考え過ぎか」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:56:38.74 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
ゴォォォ…
幸子「ひぃぃ寒いぃぃ……どうしてボクがこんな……あれ?寒くない……?」
幸子「風は感じるのに……なんか、不思議な感じですね。ラッキーですが」
幸子「しかし、まだ2回目なのにこの余裕……さすがボクですね!高所の恐怖なんて、もうなんともありません!」フフーン
幸子「さすがに寒さには打ち勝てませんでしたが……いや、今まさに打ち勝ってるのでは?おぉ!ボクって凄いですね!」
幸子「プロデューサーさんは……まぁ、大丈夫でしょう、あれで結構我慢強い人ですし……」
幸子「……ホントに死んでたり……だとしたら申し訳ないどころじゃありませんが……」
幸子「さすがに考え過ぎですね、というか全身カイロベタ貼りの上、コート2枚で寒いって……」
幸子「ホントに、健康に異常をきたしているとしか……あとで徹底的なライフスタイルの見直しが必要ですね」
幸子「っと、あまり悠長に喋ってはいられませんね、高度は……」チラッ
[9999m]
幸子「あれっ」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:57:38.82 ID:NT+JI8Cb0
幸子「こ、壊れてる!?思いっきりカンストしてるじゃないですか!旅客機並みの高さじゃないですか!!」
幸子「どうすれば……目視で高度を計る?いや、さすがに無茶だとは思いますが……」
幸子「いっその事もう開いて……それではPRになりませんね。少なくとも撮影が終わるまではこのまま……」
幸子「あれ、そういえばカメラマンの方はまだでしょうか……?」クルッ
幸子「い、いない?360度どこにも……ハッ、まさかあのまま飛び降りず、悠悠自適に空の旅を……」イラッ
幸子「ハァ……もういいです、パラシュートを……ん?」グッ グッ
幸子「ひ、開かない……なんで?まさかこっちも壊れてる!?うそぉ……」
幸子「……もうっ、なんでこうも装備ボロボロなんですか!嫌がらせですか!問題なく作動してるのボクだけじゃないですかっ」
幸子「……思えば短い人生でした。アイドルになって、苦労もあって、でもそれ以上に楽しくて……あぁ、走馬灯が……」
幸子「さようなら、Pさん、みんな……ボクは恐らくあと数秒の命です……ぅぅ」
・・・・・・・・・
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:58:52.53 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
モバP「……おっ、見えてきた見えてきた。1人目だし、あれが幸子かな?」
モバP「にしても随分と長く待機してたな……まあ、2回目とはいえ怖いっちゃ怖いか。前回は俺も、飛行機までは一緒だったしな……」
モバP「……俺のコートでぬくぬくしてたんだ、しっかり1回で成功させてくれよ……頼むぜ」
モバP「しかし今度はカメラマンが遅いな、いつまで……もう肉眼ではっきりと幸子が……」
モバP「……やけにがっしりした幸子だな。人は苦難を乗り越えて成長すると言うが……」
モバP「いくらなんでもこの数分で成長しすぎだろ、なんだあれ……違う、カメラさんだあれ!」
カメラマン「よ、っと……あれ、やっぱりいない……?」ズザザー…ッ
モバP「ちょっと、どうしたんですか?あなただけ降りてきて……もしかして幸子、飛んでないんですか?」
カメラマン「いや、幸子ちゃんは先に飛びましたよ、そう指示をだしましたから……ただ……」
モバP「……なにか、あったんですか?」
カメラマン「……消えたんです。ほんの数秒目を離してる間に、幸子ちゃんが視界から消えて……」
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 22:59:56.95 ID:NT+JI8Cb0
モバP「んなバカな……ロクに身動きのとれない空中で、いったいどこに行ったって言うんですか……」
カメラマン「私もそう思いますが、しかし現実に消えたんですよ。この4000m弱の空間、約4分間の一瞬で……」
モバP「……信じられない。神隠しにでもあったみたいじゃないですか……」
カメラマン「そう言われましても……」
モバP「……」
・・・・・・・・・
幸子「……かれこれ10分は落ちてませんか、これ。せっかく覚悟を決めたのに……」
幸子「それに、地上に近づいてるようで近づいてない……なんか気持ち悪いですね、これ……」
※参考動画:無限ループって怖くね?(3:08~)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5408753 幸子「絶対なんかの異次元ですよね、少なくとも地球上じゃあり得ない気が……」
幸子「それにしても……いつまで落ちればいいんですか。退屈だし、かといって気は抜けないし……」
幸子「このまま永遠に空を飛んでるんでしょうか。ありえませんが……寒くないのが、救いですね……」
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:01:03.74 ID:NT+JI8Cb0
幸子「あーあ、もう……せめてパラシュートが開いてくれれば、こんな暗いこと考えずに済むんですが……」グィッ
幸子「高度計は……まだカンストしてますね、9999……」チラッ
[9989m]
幸子「……あれ?動いてる?たった10mですが……あ、また1m……1分ぐらい、ですかね?」
幸子「分速1mって、カタツムリといい勝負なんじゃ……いや、さすがにカタツムリも、空中で落とせばもっと速いですね……」
幸子「……何を言ってるんでしょう、ボク……てか、この高度計が合ってるかどうかもわかりませんし……」ハァ…
・・・・・・・・・
パイロット「消えた?そんなはずは……」
モバP「ええ、私もそう思うんですが……カメラさんのいう事には、どうも……」
カメラマン「もっと、注意を払うべきでした……すいません……」
パイロット「いや、あなたの責任とは一概に言えないでしょうが……不思議なこともあるもんだ、こんなのは聞いたこともない」
スタッフ「あ、あのー……すいません、ちょっといいでしょうか」
モバP「何ですか?できれば手短にお願いを……」
スタッフ「あ、いえ……実は幸子ちゃんのことなんですが……」
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:02:18.01 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
モバP「……そう、ですか。高度計が……」
カメラマン「……その高度計が壊れたのは、いつのことなんですか?」
スタッフ「見つけたのはちょうど昨日なんです。機材のチェックをしているときに……」
スタッフ「よけておいたはずなんですが、今探したらどこにもなくて。恐らく幸子ちゃんがつけていったと……」
スタッフ「それと、どうせ使わないからと、他の機種の古い電池と交換していて……電池切れの可能性も……」
スタッフ「本当に、申し訳ありません……!」
パイロット「謝ったところで、ねぇ……どうなるものでも……」
モバP「まあ、幸子もそれは気づくでしょう。パラシュートを開けばいい話ですし……」
スタッフ「ええ……ただ、それも万が一ということもありますし、それに……」
パイロット「そもそも今、それらの装備が役にたつ状況なのかどうかすら怪しい、か……」
カメラマン「どちらにせよ……無事を、祈るしかありませんね……」
モバP「ええ……」
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:03:08.38 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
幸子「ふー、もう1時間もたったでしょうかね。地面がこんなに恋しく思えるとは……」
幸子「Pさん、心配してるんでしょうか……まあ、こんなにカワイイアイドルですから当然ですね……」
幸子「全く、いつになったら0mになるんでしょうかね、こののんびり屋さんは……」
幸子「1分で1mなら……1時間60分で……。い、1週間?1週間でようやく地上に……」
幸子「どんだけゆっくりなご臨終ですか……いや、まだボクが死ぬと決まった訳じゃないですけど……」
幸子「そもそも0mになったところで、降りれるかどうかも……ま、まさか、0mになったら、また9999mに戻ったり……」
幸子「いや、ないですよね。そんなまさか……そのうちちゃんと、地上に降りれるはず……」
幸子「……このまま、ホントに永久に飛び続けたら……だれにも見つからず、この空中で、死んじゃう……?」
幸子「……ぅ」ジワ
幸子「誰かー!ぴ、Pさーん!た、助けて……助けて下さいよー……!」
ビュォォ…ォォ
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:04:29.79 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
パイロット「……一向に、現れませんね……本当に、どこに行ったんでしょう」
モバP「……」
カメラマン「かれこれ、1時間ですか……本当に、神隠しにでもあったんじゃ……」
モバP「……!」
スタッフ「……信じられません。けど……そうだとすれば、このまま帰ってこないんじゃ……」
モバP「……ぁ」ジワ
スタッフ「あ、ぷ、プロデューサーさん!?ちょっと、泣かないでくださいよ!あくまで可能性の話で……」
カメラマン「そうですよ!も、もしかしたら別の場所に着地してるかも……ああ、鼻水まで……」
パイロット「探してみましょう、飛行機で探せばすぐわかります!さあ早く!あとこれティッシュです!」
モバP「……ぁ、ありがとう、ございます……」ズビーッ
モバP「幸子……無事でいてくれよ……」ズズッ…
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:06:42.01 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
幸子「ふぁ……あれ、寝ちゃってましたか。……我ながら、凄い適応力ですね。ダーウィンもびっくりです」
幸子「まあ、日々進化のボクなら当然ですか……はぁ、高度計はどうなりましたかね……」チラ
[9 16m]
幸子「……ん?916m?そ、そんなに寝てたはずは……せいぜい2時間程度じゃ……」
[9816m]ピッ
幸子「あ、……ですよね。そりゃそうですよね……ってことは、もう飛び始めて3時間……」
幸子「全然、1週間には足りませんね……おなかも減ってきたし、なんだか寒気もするし……ヤバいですね、いよいよ……」
幸子「ってあれ、また高度計……なんか心電図みたいな、いやな音ですね……」
[981 m]ピッ
[ 816m]ピッ
[9 6m]ピッ…
幸子「えっ、えっ?なんですか、表示が……まさか、これって……」
[ 6m]ピッ
[ ]ピーッ…
幸子「ああ、お亡くなりに……じゃないですよ!壊れかけが電池切れになったとこで何も……う、ますます寒気が……」
幸子「……いくら何でも寒すぎじゃ……あれ、まさか、ホントに、落ちて、うわあああああっ!?」
ビュォォォ…
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:10:15.01 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
パイロット「やっぱり、どこにもいないようですね……もう、打つ手なし、ですかね……」
カメラマン「普通なら、もうどこかに降りていてもおかしくないのに……」
モバP「……幸子……いま、一体どこにいるんだ……?」
---ウワアアアアッ…
モバP「!い、今幸子の声が……!あ、あれ……」
カメラマン「小さいですが……人の、形ですね」
パイロット「今日は、誰も飛んでない……利用者は、幸子ちゃんだけです……!」
モバP「やっと、降りてきた……降りてきてくれた……!おーい、幸子ー!おーい!」
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:10:42.89 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
幸子「さ、寒いっ、これ、降りる、前に、死ぬ、凍え死ぬっ!」ヒィィ
幸子「と、とりあえず、パラシュートを……な、直ってる、よかったぁ……」グィッ バサァッ
---オーイ、サチコー…
幸子「あ、プロ、デューサーさん……よかった、やっと、地上に……!」
幸子「プロデューサーさーん!ボクですよー!」
モバP「さ、幸子ー!大丈夫かー!けがはないかー!」
幸子「当然ですよー!ボクは、カワイイのでー!」
モバP「……そうかー!それはなによりだー!」
パイロット「……カワイさで、どうにかなるもんなんですね、神隠しって」
カメラマン「カワイイは正義ともいいますからね。正義はいつも悪に勝つもんです」
スタッフ「何の話してるんですか……」
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:12:54.01 ID:NT+JI8Cb0
幸子「ありがとうございますー!ところでプロデューサーさーん!」
モバP「?どーしたー幸子ー!」
幸子「か、体が凍えて、着地が……う、受け止めてもらえませんかー!?」
モバP「む、無茶なこと言うな!昔のアイドルじゃあるまいし、リンゴ3個分とはいかないんだぞ!?」
幸子「そ、そんなこと言ったって……!あ、あぁーー……」ザッザザァ…ッ
モバP「ちょ、直立不動で着地した……さ、幸子ー!大丈夫かー!?」タッタッタ…
幸子「う、うぅぅ……な、何とか、大丈夫です……て、手を貸して……」ブルブルブル…
モバP「……ホントに大丈夫か、幸子?なんか、生まれたてのこしみずみたいになって……」
幸子「それ、ただの、小っちゃいボクです!しかた、ないでしょう、寒くて、凍えそう、なんですっ!」ガタガタガタ…
モバP「あ、あぁ、そりゃそうだ……ほら、俺のコートだ。飛行機に置いてったやつ」ファサッ
幸子「いや、1着ボクのですから、何をちゃっかり……いえ、ありがとうございます。はぁ、死ぬかと思いましたよ本当に……」
モバP「お疲れ様だったなぁ……高度計、電池が切れたのか……」
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:14:52.94 ID:NT+JI8Cb0
幸子「えぇ……でも、おかげで何とか戻ってこれましたけどね。大変でしたよ……」
モバP「?電池切れで、戻って……?まさか、寒さで頭をやられて……ううっ、可哀相に」
幸子「違いますよ、こっちはこっちで大真面目なんですよ、絶対なんかバカにしてますよね」グリグリ…
モバP「ふはは、幸子の頭ぐりぐりなんて痛くもかゆくも……あっやめて、耳取れる、取れちゃうからっ」ギリリッ
幸子「全く……?あれ、涙の跡……泣くほど痛かったですか?」
モバP「お前が心配だったからに決まってるだろ!?そりゃ耳も痛いけど……」
幸子「な、泣くほどですか……まあ、カワイイボクなら、心配して当然ですけどねっ」フフンッ
モバP「……顔、真っ赤だぞ。ドキ○ちゃんみたいになってる」
幸子「それ周りが赤いだけじゃないですか!寒さのせいですよっ、もう……ありがとう、ございます」ボソ
モバP「ん?なんだって?耳が痛くてよく聞こえんな」ニヤニヤ
幸子「……いっそちぎってあげますよ、使い物にならないようなので」ギリギリギリ
モバP「いだだだ、ゴメンって、ほんとにあだだだだだっ!?」ゴショウダカラヤメテッ
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:15:44.39 ID:NT+JI8Cb0
スタッフ「お取込み中すいません……ちょっと、よろしいでしょうか」
幸子「……?あなたは?」ギリギリギリ
モバP「スタッフ、さんだ、その、高度計、用意した……ぐふ」チーン
幸子「あ、残機2になりましたか……もしかして、その事ですか?」
スタッフ「え?あぁ、そうですね……すいません、壊れていたものを渡してしまったようで……」
幸子「あ、ああ……そのことでしたら、もちろん許しますよ。ボクは寛大なので!全然、平気ですよ!」
幸子(……あれが今回の"原因"って言っても、信じてもらえないでしょうしね……)
スタッフ「はい……その、ありがとうございます」
幸子「?なにか歯切れが悪いですね……?なにか不満でも?」
パイロット「いえ、もちろんそれはそれでありがたいんですが、実はですね……」
モバP「……?」
カメラマン「その、実は……写真も映像も、撮れてないんですよ、1つも……」
幸子「あ」
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:18:16.81 ID:NT+JI8Cb0
スタッフ「すいません、ということで……」
幸子「あ……あぁ、あ……」
モバP「あらら……」
パイロット「日を改めると、さらに寒くなっていきますし……」
カメラマン「今日中にもう一回、飛んでいただこうかなー、と……」
幸子「……ぁぅ」バタッ
モバP「へ……?さ、幸子ぉー!!」
[世にも奇妙な物語]
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:20:10.57 ID:NT+JI8Cb0
タモリ「人は命の危険を感じると、実際よりも時間を長く感じると言いますが…ここまで長いのも、考え物です」
タモリ「さて、最後の物語のシンデレラは2人……どうやらまた長い物語になりそうです……」
タモリ「それでは、一夜の奇妙な舞踏会……最後の曲を、どうぞ……」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:22:01.09 ID:NT+JI8Cb0
拓海「なー……もう30分は歩いたぜ?もうそろそろ、着いてもいい頃なんじゃないか?」
夏樹「バイクと歩きじゃスピードも段違いだ、そうすぐには無理だって」
拓海「……車も走ってないみたいなんだ、やっぱりバイクに乗って……」
夏樹「バカ言え、ほんの1m先も見えないなかでバイクなんて……それこそ、自殺するみたいなもんだ」
拓海「ちっ……まったく、雲の中にでもいるみてぇだ。どこまで続いてんだ、この霧……」
夏樹「とにかく、歩くしかないだろ。いったって、そうそう距離はないはずだ。あと1時間も歩けば休憩所に着く」
拓海「分かってるけどよぉ……あー、腹へったなぁ。菓子でも持ってくりゃよかった」
夏樹「ん、飴ならあるな。なめるか?」ホレ
拓海「お、サンキュ……リンゴか」ウマイ
夏樹「……まあ、あれだ。たまには、Pさんのおせっかいもちゃんと聞くべきだったかね……」
拓海「……ちっ」
・・・・・・・・・
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:22:49.01 ID:NT+JI8Cb0
ーホワイト・ツーリングー
木村 夏樹 向井 拓海
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:23:44.05 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
夏樹「お、来た来た。拓海ー、こっちだこっち」
拓海「おー、待ったか?」
夏樹「いや、全然。まだ9時だし、十分早いって」
拓海「そいつはよかった。いつも遅れてばっかりだからな、こういう時に限って……」
夏樹「今日遅れたら、昼飯でもおごってもらおうと思ってたんだがなぁ。残念だ」ヘヘッ
拓海「ったく……しかし、こうしてツーリングするのも、久しぶりだな」
夏樹「ホントはもっと誘ったんだけどな、中々都合が合う奴がいなくてよ……」
拓海「しょうがねえだろ、もう23日だ。この時期は年末の番組だのなんだの、仕事が多くなるころだしな」
夏樹「だよな……。ま、二人楽しくいきますか。今年はこれで、走り納めだろうしな」ドル…ン
拓海「そうだな……ん?電話?」ピリリッ ピリリッ…
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:25:47.67 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「誰から?」
拓海「アイツだ……何だよ、いったい。仕事か?」ピッ
モバP『お、出た出た。拓海、お前確か、今日ツーリング行くとか言ってたよな?』
拓海「ああ、夏樹とな。それが?」
モバP『いや……。お前らの行き先あたりでひどい霧が出るらしいんだ、中止にしたらどうかと思ってな』
拓海「わざわざ調べたのかよ……?てか霧って言ったって、どうせすぐ晴れんだろ?」
モバP『今ニュースに出てるんだよ。結構ヤバくなるらしいし、晴れるかどうかも分からないんだ』
拓海「でも、中止って言ったってなぁ……。今年はもう走れないだろうしよ……」
夏樹「大丈夫だってPさん、事故には十分気を付けるって。もとより安全運転でいくさ」
モバP『まあ、そういうだろうとは思ってたけどな……。来年も走れるんだ、今日はやめた方が……』
拓海「しつけーって、ったく……。なんでそんなに気になんだ?」
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:28:02.38 ID:NT+JI8Cb0
モバP『……車やバイクの運転での注意ってのは、いくらしてもしすぎることはないし、それに……』
夏樹「それに?」
モバP『俺自身、昔同じような状況で、事故ったことがあってな……幸い、けがした人はいなかったけど……』
拓海「なるほどね……。へっ、まあ本当にヤバいなら引き返すさ。それでいいだろ?」
モバP『うーん……。でも、やっぱりなあ……せめて、バイクじゃなく歩きで行くとか……』
拓海「だーっ、もう!いい加減切るぞ、こんなんじゃ時間がどんどんすぎるだけだ、じゃ!」ピッ
モバP『ちょ、ま』ブツッ
拓海「これでよし、っと……。ほれ、さっさと行こうぜ?」ドル…ン
夏樹「さすがにブツ切りはカワイそうじゃないか?Pさんだって、悪気があった訳じゃ……」
拓海「そりゃそうだけどよ、こっちだって初心者じゃねぇんだ。あんなのは言われなくても分かってる」
夏樹「……ま、それもそうか。じゃあ行きますか、安全運転で」ブオォ…ン
拓海「分かってるって!」ブオォ…ン
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:30:09.97 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
拓海「おー……確かに、霧が出てきたな。まだ全然薄いけど」
夏樹「どうする、ちょっと早めにでるか?この休憩所、寄ったばっかだけど」
拓海「だーいじょぶだって。どうせそのうち晴れるだろうし、そうでなくとも十分走れる程度だろ」
夏樹「……そうだな。大丈夫、だよな」
拓海「おいおい……、もしかしてアイツの言ったこと、まだ気にしてんのか?」
夏樹「そういうわけじゃないけど……なんとなく、不安になってな」
拓海「心配し過ぎだろ、そうめったに事故ったりなんてしねぇって。アイツの考え過ぎだよ」
夏樹「……」
拓海「そもそも、大してスピード出してねぇんだ。ぶつかろうにも、ぶつかんねぇって!」カンッ
ヒュッ… カコーン!
夏樹「え」
拓海「げ」
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:32:10.48 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「お、お前……思いっきり蹴りすぎだろ、完全になんかに当たった音だぞ、今の」タタッ…
拓海「……空き缶ってあんなに曲がって飛ぶんだな、知らなかった」タタッ…
夏樹「なにバカ言ってんだ!そういう問題じゃないだろ!」
拓海「い、いやぁ……かるーく蹴ったつもりだったんだけどな……」
夏樹「……うわぁ、嫌なモンに当ててくれたな、拓海。小さいけど、祠だぜコレ」
拓海「……こう、ダイナミックなお供え物ってことでひとつ……」
夏樹「アホ。中身すらないドロドロの缶なんか誰が喜ぶか」
拓海「だよなぁ……。とりあえず、コイツ捨ててくるわ……うへ、ホントに泥だらけだ」タタッ…
夏樹「ったく……しっかし、まさかピンポイントでこんなとこに当たるなんてな」
夏樹「……アイツも悪気はなかったんだ。頼むから、天罰なんて下してくれるなよ……」
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:33:33.43 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
夏樹「てっぺんに到着したはいいが……これは……」
拓海「……まあ、そうだろうとは思ったけどよ。ここまで上ってきたってのに、まったく山の景色が見えねぇ……」
夏樹「Pさんの言った通り、予報が的中したな……。まあ、さっきの罰がこのぐらいで済んだと思えばいいだろ」
拓海「うっ、それを言うなって……。でも、せっかくの走り納めが、こんなんで終わりかよ……」
夏樹「来年また、いくらでも来ればいいって。それより早く下ろう、このままだと、本格的に霧がヤバくなってくる」
拓海「ん、そうだな……名残惜しいが、行きますかね、っと」
ブオォ…
夏樹(しかし、こうまで霧が濃くなるとは……正直、甘く見過ぎてたな)
夏樹(出来ればこの山ぐらいは、ふもとまで一気に下りたいが……)
夏樹(……本気で信じてるわけじゃないが、本当に天罰が下ったのかもしれねえな……)
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:34:58.52 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
夏樹(何とか中腹まで……このぐらいの濃さなら、まだ全然……!)
夏樹「拓海!止まれ!!」
キーッ!
拓海「うおわっ!?おい、どうしたんだよ、急に止まって……?なんだ、これ……」
夏樹「……見ての通りだ。こっから先の霧が、急に濃くなってやがる……このまま走るのは無理だ」
拓海「走るのは無理って……どうすんだよ?まだまだ山の中だぞ、このまま霧が晴れるまで待つのかよ?」
夏樹「それでもいいが……あるいは、バイクを引いて歩くか?それなら大丈夫だろうぜ」
拓海「げー……残り何kmあるかも分かんねぇのに、歩きかよ。しかもこいつ引いて……?」
夏樹「どうする?じっと待ってるか、少しでも進むか。拓海の好きな方でいい」
拓海「……わーったよ、歩いて下ろう。ちょっとでも進めるなら、そっちのほうがマシだ」
夏樹「だな、分かった。まあとりあえず、さっきの休憩所までで大丈夫だろ。あそこなら麓より全然近いだろ?」
拓海「あいよ……はあ、結局麓までは、何時間かかるのかね……」
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:35:27.52 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
夏樹「……まあ、あれだ。たまには、Pさんのおせっかいもちゃんと聞くべきだったかね……」
拓海「……ちっ」
夏樹「でも、確かにあとどのぐらいなのかぐらいは知りたいな。少なくとも、今いる場所さえ分かれば……」
拓海「ん?……あ、そうだよ。スマホで調べれば、現在地ぐらい出るんじゃねぇか?」
夏樹「おお、それだ!くそ、なんで気づかなかったのかね……これだ、現在地」ホレ
拓海「どれどれ、さっきの所までは……あと2kmくらい、か」
夏樹「あと20分くらいで着くな。やれやれ、ゴールが見えればきつさも半減……ん?」ブツッ
拓海「ん?どうした?」
夏樹「いや、勝手にスマホが……くそ、つかない。電池切れか?」
拓海「何やってんだよ、しっかり充電して来いって……ほれ、じゃあこっちのスマホで」ブツッ
夏樹「……瞬殺じゃねーか。ちょっといじった程度で消えたぞ」
拓海「あ、あれ……?っかしいな、そんなはずは……」
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:36:20.72 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「まあしょうがねえ、とりあえず距離は分かったんだ。あと2km戻れば昼飯だ、行こう」
拓海「ああ……変だな、さっきはまだ電池が……」ブツブツ
・・・・・・・・・
夏樹「……なあ、もう30分は歩いたよな。なんで着かないんだ……」
拓海「さっきのアタシと同じこと言ってんじゃねーか。なんだ、もう音をあげたのか?」
夏樹「へっ、全然。……腹の方は、思いっきり音をあげてるけどな」グー
拓海「……もしかして、通り過ぎたんじゃねぇか?さっきのとこ」
夏樹「そんなはずはねーよ、ずっと探して下ってきてんだ……なのに、ずっとガードレールが続いてる」
拓海「入口ならどこか途切れてるはずなのに、ってことか。じゃあ道を……間違えるはずねぇか、一本道だったし」
夏樹「そうだな。ったく、この霧がちょっとでも薄くなってくれれば……おっ」
ヒュオオ…ォォ
拓海「やっとか……けっ、晴れるならもっと早くに晴れろってんだ」
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:37:28.33 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「すげえな……まるでさっきの霧が嘘みたいだ、こんなにきれいに晴れるもんなんだな……」
拓海「それよりあれ、さっきの休憩所だろ?すぐ近くじゃんかよ」
夏樹「こんなとこでまだ着かないなんて言ってたとはな……何はともあれ、助かった」
拓海「全くだ、さすがにツーリングで行き倒れなんて、シャレになんねえからな……」
夏樹「まあ、拓海のせいでこうなったんだ。昼飯はおごり、な」
拓海「なっ……さっきアタシのせいじゃないって言ってたじゃんかよ!」
夏樹「へへっ、何のことかね。それより、はやく飯にしようぜ?腹の虫がカンカンだ」
拓海「ちょっ……おい、待てよ夏樹!」
・・・・・・・・・
夏樹「もっと混んでると思ったけど、そうでもないな……珍しいな、休日なのに」
拓海「なんでもいいよ、座れるんならそれで……さて、何食うかなっと」
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:38:28.43 ID:NT+JI8Cb0
オイ、アレッテ… ニテルダケカモシレナイゾ? イヤ、デモ…
夏樹「……おい、なんかアタシら、見られてないか?さっきから何人もこっちを……」
拓海「アイドルだからだろ?うーん、ラーメンかカレーか……いや、この定食も……」ブツブツ
夏樹「……お前のそういうところは、見習うべきなのかね」サモアタリマエノヨウニ…
拓海「ん?なにが?」
夏樹「なんでもねーよ。それよりはやく決めろよ、先に食券出してくるぞ?」
拓海「まあ待てって……よし、味噌ラーメンで」ピッ
夏樹「ったく、さっさと食券出しに行くぞ……すいませーん」
店員「あ、いらっしゃいませ……!こ、こちら2枚ですね、少々お待ちくださいっ……」タタッ…
拓海「?なんだ、いまの?」
夏樹「さあ……やっぱり、なんかおかしいんだよな。客もあんな感じだし……」
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:39:40.41 ID:NT+JI8Cb0
拓海「……もしかして、缶をぶつけたところ見られてたとか?あれで皆、アタシを怒ってるとか」
夏樹「まさか。店員ならまだしも、客もだぜ?たまたま寄った休憩所の祠ぐらいで、怒るなんざありえねえって……」
拓海「だよなぁ、じゃあなんで……」
「12番、13番のお客様ー」
拓海「お、できたみたいだな。とりあえず飯食べながら話そうぜ?腹がへってはなんとやら、だ」
夏樹「ああ……」
・・・・・・・・・
拓海「ごちそーさん。ふう、中々おいしかったな……なあ、まだ考えてんのか?」
夏樹「ん、ああ……ちょっとな」
拓海「気にすることねえって、どうせアタシらがアイドルって気づいただけだってば」
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:41:00.48 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「でもよ、お前も見ただろ?さっきの店員の態度。あれがどうも引っかかって……」
拓海「じゃあ直接聞いたらどうだ?なんでアタシらが気になってるのかってよ。それで一発だろ?」
夏樹「……ああ。すいませーん……」
店員「あ、はい……なんでしょうか?」
拓海「すんませんね、わざわざ。コイツがどうしても聞きたいことがあるって……」
夏樹「……さっき、アタシら見て動揺してましたよね?あれっていったい……」
店員「え、ええ……その前に一つ、確認したいんですが、お二人のお名前は?」
拓海「へ?なんで名前を?」
店員「すいません、確かめておいた方がいいかな、と……」
夏樹「まあ、いいですけど……アタシは夏樹、こっちは拓海っていいます」
店員「夏樹……き、木村夏樹さん、ですか?それと、向井拓海さん?」
夏樹「え、ええ……あの、いったい何を……?」
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:42:10.75 ID:NT+JI8Cb0
ザワッ
「おい、木村夏樹に向井拓海って……」
「やっぱり、あの写真の……」 「本物かよ、どうすんだ?」
拓海「な、なんだ?急に騒がしく……あ、おい、店員さん?」
店員「て、店長!やっぱり本人でしたよ!どうしますか?」
店長「ど、どうするも何も……と、とりあえず、警察に……」
夏樹「け、警察!?」
拓海「な……ちょっと待て、どういうことだよ!?アタシらは何もやって……!?」
店長「何も……?ま、まさか、記憶がないとでもいうんですか?そんな……」
夏樹「なにを……店員さん!どういうことか、きっちり説明してくださいよ!」
店員「説明って……そもそも、確かあなた方のプロデューサーがこの事を……」
拓海「アイツが!?……ちっ!」ダッ
夏樹「あっ、拓海……待てって、おい!」ダッ
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:43:20.66 ID:NT+JI8Cb0
ドルンッ ブオオ…ンン
夏樹「あいつ……くそっ」ドル・・・ン
店長「ちょ、ちょっとお客さん!待ってくださいよ、どこへ行くんですか!?今警察の方へ連絡を……」
夏樹「っ……あとで、きっちり話はします。もちろん警察の方にも。すいませんっ」ブォンッ ブオォ…
店長「あ、ちょっと!!待ってくださいって、お客さん!!お客さんってば!!……」
・・・・・・・・・
ドルル…
拓海「!……おお、夏樹か。悪いな、突然逃げ出しちまって……どうだった?」
夏樹「一応、誰にも見られてはいない……どういうことだよ?なんでアタシらが警察なんかに……」
拓海「……考えられるとしたら、やっぱあの祠だろ。器物損壊だっけか?」
夏樹「バカな……それだけで、あんな大事になるかよ?それに、Pさんがそれを知ってるかよ?」
拓海「とはいっても、他にないだろ……だからこそ、逃げてきたわけだし」
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:44:21.16 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「……それに、アタシの名前も確認してきただろ。それは多分、違うはずだ」
拓海「訳分かんねえ……じゃあ何だってんだよ?他に警察に世話になるようなことなんて、さっぱり思いつかねぇ」
夏樹「……あんとき、客の一人が、写真がどうのって言ってたんだ……まさかとは思うが、指名手配まで……」
拓海「嘘だろ!?……くそっ、霧の中で散々迷って、挙句警察に追われるって、厄日にもほどがあんだろ……!」
ウー… ウー…
夏樹「!違う場所か……とりあえず、ここから動こう。いつまでもこんな橋の下にいる訳には……」
拓海「つったってよ、行くあてなんてどこにも……事務所や女子寮だって、多分警察が……」
夏樹「げ、そうか……Pさんとなら、連絡くらいとれないか?電話かなんかで……あ、スマホは電池切れか」
拓海「あとは公衆電話か……その隙に取り押さえられたら、それこそアウトだけどな」
夏樹「……八方ふさがり、か。くそ、どうすれば……」
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:45:50.28 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「……それに、アタシの名前も確認してきただろ。それは多分、違うはずだ」
拓海「訳分かんねえ……じゃあ何だってんだよ?他に警察に世話になるようなことなんて、さっぱり思いつかねぇ」
夏樹「……あんとき、客の一人が、写真がどうのって言ってたんだ……まさかとは思うが、指名手配まで……」
拓海「嘘だろ!?……くそっ、霧の中で散々迷って、挙句警察に追われるって、厄日にもほどがあんだろ……!」
ウー… ウー…
夏樹「!違う場所か……とりあえず、ここから動こう。いつまでもこんな橋の下にいる訳には……」
拓海「つったってよ、行くあてなんてどこにも……事務所や女子寮だって、多分警察が……」
夏樹「げ、そうか……Pさんとなら、連絡くらいとれないか?電話かなんかで……あ、スマホは電池切れか」
拓海「あとは公衆電話か……その隙に取り押さえられたら、それこそアウトだけどな」
夏樹「……八方ふさがり、か。くそ、どうすれば……」
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:47:15.61 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
モバP「……それで、彼女たち……夏樹と拓海は、どうしたんです?」
刑事「どうも逃げてしまったようで……それに、そこの店長の話では、なにか様子が妙だったと……」
モバP「妙、とは?」
刑事「今現在、自分たちが置かれた状況をよく把握していないようで、警察を呼ぶとは何事だと、食って掛かってきたそうで……」
モバP「……それで、逃げ出してしまった、ということですか」
刑事「まさか、これほどのことを覚えていないとは思えませんが……しかしあるいは、本当に記憶喪失の可能性もあります」
モバP「様子を見ながら、慎重に追うしかないようですね……今、警察の方で探しているんですよね?」
刑事「ええ。どうやら、この町の近くで2人を見たと、新たな通報があったようで……ただ、依然見つかっては……」
モバP「……刑事さん。一つ、提案が……」
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:48:26.19 ID:NT+JI8Cb0
拓海「はぁ、しっかしさみぃな、今朝はこんなだったか……?なぁ、夏樹」
夏樹「……」
拓海「だんまりかよ……結局どうすんだ?こっから動くのか、動かねぇのか?」
夏樹「……ああ、そうだな。今は見つかっちゃいないが、多分ここはすぐに探される……場所は、移動した方がいい」
拓海「だから、どうすんだよって……動くにしても、行き場所がないって」
夏樹「走りながら探すしかないだろ……同じ場所で固まってるより……」
ウー… ウー…
拓海「!また、か……くそ、あの音が聞こえるだけでヒヤヒヤしやがる……」
夏樹「さっきのは結局、遠くで鳴ってるだけだったみたいだが、あれは……」
拓海「まだ場所の目星すらついてないんだろ、今はただ街ん中走り回って探して、」
夏樹「ストップ……おい、このサイレンの音、近づいてないか?」
拓海「え?」
ウー… ウー… ウー… ウー…
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:49:55.33 ID:NT+JI8Cb0
拓海「げ、マジかよ!?おい、早く逃げんぞ!」
夏樹「言われなくても!!」
ブォオオ…ン
『前のバイク、止まりなさい!これ以上、逃げないでください!』
拓海「止まれって言われて止まる奴がいるかよ!大体、なんで追われてるかも知らねえんだぞ!?」
夏樹「いいから逃げろ!この先、2手にわかれるぞ!いいか!?」
拓海「了解!」
ブォオ…
・・・・・・・・・
刑事「そうですか……ええ、どうも。あなたの言った通りに、進んでいるようですよ」
モバP「そうですか……無事に、終わってくれるといいんですが……」
刑事「大丈夫ですよ。では、我々も動きましょうか?」
モバP「ええ……」
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:51:16.44 ID:NT+JI8Cb0
ブォオ… ウー… ウー…
夏樹「くそ、こっちも塞がれてんのかよ……!」
夏樹「この分じゃ、拓海の方も……くそっ!なんで、こんなことになってんだよ……!」
夏樹「……こんな訳の分かんねぇことで、捕まってたまるか……!」グッ
キュキュッ ブォオオ…ン
夏樹「……追って、こない。撒いたか……?」
ウー… ウー…
夏樹「遠ざかってる……はぁ、よかったぁ……!」
夏樹「ここって……事務所の近くじゃねえか!?警察は……いない?」
夏樹「……もしかして、全部追跡で出払っちまってるのか?だとしたら好都合だが……」
フワッ…
夏樹「!……雪、だ。マジかよ……今日、降るなんて言ってたか……?」
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:52:36.62 ID:NT+JI8Cb0
ブォオ… ウー… ウー…
夏樹「くそ、こっちも塞がれてんのかよ……!」
夏樹「この分じゃ、拓海の方も……くそっ!なんで、こんなことになってんだよ……!」
夏樹「……こんな訳の分かんねぇことで、捕まってたまるか……!」グッ
キュキュッ ブォオオ…ン
夏樹「……追って、こない。撒いたか……?」
ウー… ウー…
夏樹「遠ざかってる……はぁ、よかったぁ……!」
夏樹「ここって……事務所の近くじゃねえか!?警察は……いない?」
夏樹「……もしかして、全部追跡で出払っちまってるのか?だとしたら好都合だが……」
フワッ…
夏樹「!……雪、だ。マジかよ……今日、降るなんて言ってたか……?」
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:54:14.48 ID:NT+JI8Cb0
キーッ!
夏樹「!拓海……」
拓海「ふぅ、なんとか逃げ切れたぜ……あれ、いつの間にかこんなとこまで来ちまってたのか」
夏樹「ああ……少なくとも事務所の周りには、誰もいないみたいだ」
拓海「そいつはよかった……けどよ、中に1人2人は残ってるんじゃねぇか?」
夏樹「行ってみるだけ、行ってみよう。数人なら、さっきより撒くのは楽だろ」
拓海「……そうだな。アイツには、確かめたいことも山ほどあるからな……」
カンッ カンッ カンッ カンッ…
拓海「しっかし危なかったぜ……行く先行く先パトカーだらけだ、もう少しで捕まるところだった……」
夏樹「何としても、捕まえようってことだろ。だからこそ、ここの警察も全員で追跡してるんじゃねーか?」
拓海「見張りがいなかったのはそういうことか……逆に助かったな、よかった」
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:56:14.67 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「ああ……それより見ろよ、ほら。雪だぜこれ」
拓海「ん?おお、初雪か?……ったく、人が必死で逃げ回ってるってのに、のんびりゆらゆら降りやがって……」
夏樹「雪にキレるなよ……さて、そろそろ準備しろ。警察がいたらすぐに降りる。いいな?」
拓海「……ああ」
夏樹「よしっ……!」バンッ
モバP「!……拓海、夏樹!やっぱり、来てくれたか……」
拓海「……」ツカツカツカ ドンッ
モバP「ぐふっ!?た、拓海……?」
拓海「なーにが来てくれたか、だ……お前が通報したんだろ!?聞いたぞコラ!!」
モバP「あ、ああ……通報はしたけど、それが……?」
拓海「とぼけやがって……こっちは全部わかってんだよ、お前が警察に話して、こうなってるんだってよ!!」
夏樹(……!まずい、この音、階段を人が……それも、かなりの数が昇ってきてる!)
夏樹「お、おい拓海!逃げるぞ、ヤバいって!!」
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:57:33.61 ID:NT+JI8Cb0
拓海「あの祠に缶をぶつけたのは、わざとじゃねえ!もし見てたんなら、分かるだろうがよ!」
夏樹(拓海……頭に、血が上ってやがる、このままじゃ……!)
モバP「祠?缶?拓海、お前いったい……」
拓海「第一、あの場にいたなら声ぐらいかけろよ……どうせずっとついてきてたんだろ!?アタシらのバイクの後ろをよ!!」
モバP「もしかして、あのツーリングのことか?バカいえ、俺はずっとここで仕事してたんだぞ!?」
夏樹「拓海!おい拓海!くそ、聞いちゃいねぇ……!」
拓海「ここで仕事だ……?じゃあなんで、通報なんてしてんだよ?アタシらが何したってんだよ!?」
モバP「今日は、もう23日だぞ!?本当にまだ気づいてないのか!?」
拓海「……は?今日が23日って、それがどうしたってんだ?んなこと知らない訳……」
モバP「俺が通報したのは、お前らの捜索願だ!お前らは一か月間、行方不明だったんだよ!!」
夏樹 拓海「「……は?」」
ガチャ
刑事「プロデューサーさん、うまくいきましたな……さすが、彼女たちのことをよく知っている」
夏樹「うまく、いった……?どういうことだ、Pさん……拓海、そろそろ離してやれよ。涙目じゃねーか」
拓海「あ、ああ……おい、どういうことか全部、話してくれるんだろうな?」ア?
モバP「げほっげほ……ど、どういうことかって、それは俺が聞きたいよぉ……」ウウッ…
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:58:16.43 ID:NT+JI8Cb0
・・・・・・・・・
夏樹「……つまり、あの山に行ったきり、アタシたちは帰ってこないで……」
拓海「やっと姿を現したと思ったら、捜索してる警察から逃げちまった、と」
モバP「やっとこの町まで来たのに、まだ逃げてるって刑事さんからその話を聞いてな……」
夏樹「それで、あの作戦を立てたわけだ……道をふさいで誘導し、事務所に来るように仕向ける」
モバP「状況を把握していないなら、まず何が起こっているのか確かめたくなる筈だし、それに……」
拓海「警察に確かめるのは論外、他人に会うのも避けているようなら、残るは家族か顔見知りの事務所の人間……」
モバP「だが電話もメールもかかってこない……だったら、直接会いに来るだろ?そういうことだ」
夏樹「はぁ……そいつはともかく、一か月か……あの霧の中に、一か月いたってことか?」
拓海「……あの、祠の天罰かよ?勘弁してくれよ……今日が12月ってのも、まだ信じらんねぇってのによ」
夏樹「スマホの電池切れ」
拓海「?」
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/23(火) 23:59:01.23 ID:NT+JI8Cb0
夏樹「あの霧の中でスマホをつけたとき、すぐに電池が切れた……あれは、あの霧の中でものすごく速く時間がながれていたからだとしたら?」
拓海「長く点けっぱなしにしたら、それだけで電池は減る……スマホの地図やなんかを使いっぱなしにすれば尚更、ってか?」
夏樹「だとしたら、一応は説明できる……だろ?」
拓海「……けっ」
モバP「???まあ、いいか。さ、こっちの話は終わったんだ。次はお前らの番だぞ?」
夏樹「……話せば長くなるし、アタシらだっていまだに信じられないけど……」
拓海「話に難癖つけないってんなら、話してやるよ……仕方ねえ」
モバP「分かった、素直に聞くさ。だから早く話してくれ、いったい何が……」
夏樹「まあそうせかすなよ、Pさん……何はともあれ、一か月のツーリングから帰ってきたんだ。とりあえず……ただいま、Pさん」
拓海「ふんっ……ただいま」ボソッ
モバP「……ああ。2人とも、お帰り」
[世にも奇妙な物語]
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2014/12/24(水) 00:00:00.65 ID:NT+JI8Cb0
ボーン ボーン ボーン…
タモリ「おや……どうやら舞踏会も、そろそろ終わりのようですね。いかがだったでしょうか?美しいシンデレラたちによる世にも奇妙な物語……」」
タモリ「12時の鐘が鳴ると、シンデレラは舞踏会から帰っていきます……まるで、今宵の舞踏会が夢であったかのように……」
タモリ「今宵の6人のシンデレラたち……果たして彼女たちは、この先どんな幸福を掴むことになるのでしょうか?それとも……」
カランッ…
タモリ「おや……誰か落としていったのでしょうか?いや、これは……どうやら、新しい靴のようですね」
タモリ「これを履く人は、果たして誰になるのでしょうか……もしかしたら、あなたもよく知る彼女かもしれません……」
タモリ「それでは、また。次の舞踏会で、お会いしましょう……」
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 00:13:38.08 ID:6SHd1nWRo
乙
雰囲気が出ててよかった
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 00:31:16.88 ID:lArud3w+o
幸子の話はたまにある死ぬ前の幻覚シリーズかと思って読んでてハラハラした
乙乙
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 01:29:34.12 ID:uBFW1RJh0
おお!丁度12時に終わらせるとは……面白かったよ
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 08:27:20.98 ID:GAqJAr7gO
乙
文香の話で何故か本家のカウントダウン思い出した
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 11:02:23.82 ID:IuL7Dn8SO
乙
面白い
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/25(木) 14:29:52.53 ID:oGgCKnqNo
乙です
転載元
世にも奇妙な物語 -’14 冬のモバマス編-
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419336502/ バンダイナムコゲームス 樫葉ハルキ
スクウェア・エニックス (2014-12-25)
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