1 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 13:28:05.48 ID:hxBfHHY60
2 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 13:35:53.80 ID:hxBfHHY60
勇者「えっ、ホイ……えっ?」
僧侶「えっ、死……うそ、え?」
勇者「……」
僧侶「……死んだんですか?」
勇者「……うん、たぶん……」
僧侶「……」
勇者「……」
僧侶「……何で?」
勇者「……」
3 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 13:39:48.25 ID:hxBfHHY60
僧侶「さっき魔王言ったじゃないですか。『私が最も得意とする魔法で相手してやろう』って」
勇者「うん。言った」
僧侶「メラゾーマとか、ザラキーマとか飛んでくると思ったじゃないですか」
勇者「うん」
僧侶「……ホイミって」
勇者「……」
僧侶「しかも敵に向かってホイミって」
勇者「……」
4 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 13:44:35.51 ID:hxBfHHY60
僧侶「敵に向かって撃つにしてもさあ……せめてベホマラーとか、ベホマズンとか……ザオリクとか……すごいのあるじゃないですか」
勇者「……」
僧侶「……なんでホイミなの?」
勇者「……回復呪文苦手だったんじゃない?」
僧侶「なおさらそんな呪文撃たないでほしいですね」
勇者「俺も苦手だけど、応急処置に仕方なく使ってるし……」
僧侶「魔王に共感しないでくださいよ……」
勇者「……」
僧侶「……なんかちょっと元気になっちゃった自分に腹が立つんですけど」
5 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 13:49:13.61 ID:hxBfHHY60
勇者「わかったアレだ」
僧侶「はい?」
勇者「『良くぞここまで来た勇者!弱り切った貴様を倒しても仕方ない。どれ、回復してやろう!』ってやつ」
僧侶「……ホイミだと万全の状態にならないんですけど」
勇者「……」
僧侶「しかも治すタイミング遅いですよね」
勇者「……ゴメン」
僧侶「いや……勇者様に謝られましても」
6 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 13:54:25.28 ID:hxBfHHY60
僧侶「ていうか勇者様も……なんでいきなり倒しちゃうんですか」
勇者「だって、すげー強い呪文撃つと思ったから……止めるためにも一撃必殺で」
僧侶「息の根止めちゃいましたねえ……」
勇者「……首元がら空きだったよ」
僧侶「がら空きでも、ほら……もっと身を守る手段とか……ほら……ねえ?」
勇者「……」
僧侶「……はあ……」
勇者「……」
7 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 13:59:40.93 ID:hxBfHHY60
僧侶「……何でですか?」
勇者「?」
僧侶「な・ん・で!死んじゃったんですか!?」
勇者「わからん……自殺?」
僧侶「いや、自殺にももっとこう……あるじゃないですか」
勇者「……と言っても……なあ?」
僧侶「私はほら、こう……血で血を洗う激しい攻防とか、傷ついた勇者様を必死で治療する私とか、そういう……」
勇者「……」
僧侶「……ねえ本当に死んだの?」
勇者「……うん」
僧侶「……私達にホイミ撃って?」
勇者「うん……」
僧侶「……」
勇者「……」
8 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:04:46.10 ID:hxBfHHY60
僧侶「……故郷の小さな村を飛び出して、オークやらハーピーやらゾンビやらと戦って……」
勇者「……」
僧侶「何度も死にかけて、時には格上の魔物とも戦って……」
勇者「……」
僧侶「荒れ狂う海を超え、太陽の見えない暗黒の大陸を、命からがら魔王の城まで進み……」
勇者「……」
僧侶「城内の強いモンスターとも戦って、側近のイビルプリーストとも命がけで戦って……」
勇者「……」
僧侶「……最後の魔王が、なんでホイミ?」
勇者「俺に聞かないでくれよ……」
僧侶「……」
勇者「……」
9 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:09:29.50 ID:hxBfHHY60
僧侶「こんなのが本当に、魔物のトップなんですか?」
勇者「うん……たぶん」
僧侶「……本当のボスいるんじゃないですか?」
勇者「けど……魔王って名乗ったし」
僧侶「……五十年前、魔物を引き連れて人間相手に戦争をしかけて、勝利し今の混沌の世界を創りあげた……」
勇者「……」
僧侶「この世界最大の悪が……ホイミ?」
勇者「もうやめようマジで」
僧侶「だって……」
勇者「なんか意味があったんだって」
僧侶「……」
勇者「……いや、無いかも……しれないけど」
僧侶「……」
勇者「……」
10 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:14:25.27 ID:hxBfHHY60
勇者「とにかく、魔王は倒したんだ。これで世界に平和が訪れる!」
僧侶「……だといいんですけど」
勇者「さっそく王様に報告しに帰ろう。故郷に帰ったら英雄だ」
僧侶「いいんですかね、こんな倒し方で……」
勇者「いいんだよ。重要なのは結果だって。ほら、魔王を倒したことで、この大陸を包む暗雲も――」
ピカッ!
11 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:19:27.18 ID:hxBfHHY60
ゴロゴロゴロ……
勇者「……」
バシャアン!!
ザァァァァ――
僧侶「……晴れませんね、暗雲……」
勇者「……」
僧侶「ていうか……強くなってませんか?雨……」
勇者「もうヤダこの大陸」
僧侶「……どうしますか?」
勇者「どうするって……さすがにこの雨の中帰るんは危険だろ。夜営の道具ももう残り少ないし、魔物の生き残りに襲われでもしたら……」
僧侶「……魔王を倒した英雄が、魔王城で寝泊まりですか……」
勇者「俺もヤダよ。魔王の死体の横で寝るのは」
12 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:24:24.41 ID:hxBfHHY60
勇者「それじゃあ、おやすみ。僧侶」ゴロリッ
僧侶「うう……魔王城の中に魔物の生き残りがいたりしませんよね?」モゾモゾ
勇者「たぶん大丈夫だと思うけど……」
僧侶「ああ……早く村に帰りたいなあ」
勇者「俺も早く、平和になった城下町を歩きたいよ」
僧侶「……お姫様とですか?」
勇者「う……そりゃあ、そうだといいけど……」
僧侶「……」ジロリ
13 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:29:16.81 ID:hxBfHHY60
勇者「あ、いや、それはどうだろうなあ?俺とお姫様じゃ、身分がさ……」
僧侶「……王様は、魔王を倒した英雄にだったら、喜んでお姫様を差し出すと思いますよ?」
勇者「……」
僧侶「……」
14 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:34:03.59 ID:hxBfHHY60
勇者「……もう寝よう。僧侶」
僧侶「……つーん」
勇者「……僧侶、俺さ……」
僧侶「……」
勇者「…………いや、何でもない」
僧侶「……」
勇者「おやすみ……」
僧侶「……」
勇者「……」
15 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:39:14.49 ID:hxBfHHY60
ゴロゴロゴロ……
僧侶「……あがりませんね、雨」
勇者「城の中あさったら、夜営の道具ちょっとはあるんじゃないか?」
僧侶「私嫌ですよ、ずぶぬれになって歩くの」
勇者「といっても……いつ雨が上がるのかもわかんないし、早く王様に報告しないと……」
僧侶「数日遅れても問題無いですって。それに、あがらない雨なんてありませんよ」
勇者「……だといいけど」
僧侶「私、食料探してきますね」
勇者「俺も城内を散策してみるか……」
16 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:44:20.09 ID:hxBfHHY60
勇者「……といっても、魔王城はひと通り歩き回ったしなあ……」
スタスタ
勇者「すべての宝箱は開けたし、鍵で開けられる所は全部調べた」
スタスタ
勇者「ここにある宝箱は――」
ガチャッ
勇者「伝説の剣が入っていたんだよなあ。ボロボロに錆びた古臭い剣だったけど……」
カチャカチャ……
勇者「暇だから俺の剣でも入れとくか。勇者になったときにじいちゃんから貰った新品の剣だぜー。喜べよー宝箱」
ガチャン
勇者「さて、他は……」
僧侶「勇者様ー」タッタッタ
勇者「うん?」
僧侶「見つけましたよー。食料っ!」
勇者「本当かっ!?」
僧侶「これで今晩はひもじい思いしなくてよさそうですね、えへへ」
勇者「ああ、よかったあ」
カカッ!
17 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:49:03.80 ID:hxBfHHY60
ピシャアアアン!!
勇者「それにしても、僧侶が料理上手で良かったよ」ガツガツ
僧侶「家が農家ですからねえ、自分家の野菜でご飯作るのは毎日のことですよ」
勇者「こんな美味しいご飯が食えるんだったら、もう二、三日は魔王城で暮らしてもいいかなあ?」モグモグ
僧侶「そ、そうですか?えへへ……」
勇者「しかし……」
僧侶「……ええ……」
ザーザー……
勇者「……今日も魔王城で寝泊まりかあ」
僧侶「あ、明日は雨あがりますよっ!」
勇者「……はあ……」
僧侶「……」
18 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:52:07.48 ID:hxBfHHY60
ピシャアアアン!!
ザーザーザー……
19 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:54:46.67 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ――
勇者「……」モグモグ
僧侶「いやあ、肉や野菜がいっぱいあって良かったですね。肉は保存用ので腐る心配はないし」
勇者「……」パクパク
僧侶「野菜なんか、ちょっとしなびてるけど中庭にたくさんなってましたよ。手入れしたら自給自足でしばらくは生活出来そうですねえ」
勇者「……しばらく、か……」
僧侶「……」
勇者「……いつになったら雨、上がるんだろ」
僧侶「……」
20 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 14:57:11.61 ID:hxBfHHY60
勇者「……何日たったかな?」
僧侶「ええと……二週間、ですかねえ?」
勇者「……」
僧侶「……」
勇者「……あがんねえよ、雨」
僧侶「……」
勇者「もう我慢出来ないわ。帰ろう僧侶」
僧侶「えっ、けど雨が――」
勇者「十分体力は回復出来た。魔物の群れに囲まれでもしないかぎり大丈夫だって」
僧侶「……やだなあ、濡れるの」
勇者「村に帰れば温かいお風呂だってあるさ。さあ……」
21 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:00:01.63 ID:hxBfHHY60
カッ!!
ゴロゴロゴロゴロ!!
僧侶「ううう……さ、寒いです勇者様……」ガタガタ
勇者「すごい雨だな……前が見えない」
僧侶「こ、こんな事言うのもあれですけど……あったかい魔王城がちょっぴり恋しいです」
勇者「少しの辛抱だ。南に向かえば海が見えるはず……」
僧侶「この視界の悪さじゃ何処に向かえばいいのかわかりませんよお」
勇者「コンパスによると、南はこっちだ。ほら、しっかり……」
僧侶「うう……」
22 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:02:36.67 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ……
僧侶「ゆ……勇者様ぁ……私、もう……」
勇者「しっかりしろ。俺の記憶が正しければ、もう少し進んだ所に雨風を凌げる洞窟があったはず……」
僧侶「その台詞、数時間前に聞きましたよおっ」
勇者「お、おかしいな……そもそもこれだけ歩けば、もう岩礁地帯は抜けてるはず……」
僧侶「……?」
勇者「なんで……景色が変わらないんだ……?」
僧侶「……あれっ、勇者様」
勇者「うん?」
僧侶「あ、あれは……?」
勇者「……?」
23 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:04:54.25 ID:hxBfHHY60
僧侶「灯りが見えます……民家でもあるのでしょうか?」
勇者「馬鹿な、ここは魔の暗黒大陸だぞ。人なんて――」
僧侶「だ、だけど灯りが……」
勇者「魔王城に向かうまで、家はおろか人の姿さえ見なかっただろ?」
僧侶「……だったらあの灯りは?」
勇者「……オークか何かが松明を持っているのかも……」
僧侶「……」
勇者「……用心して進もう。面と向かってなら負けるはずないさ」
僧侶「……はい」
24 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:07:17.31 ID:hxBfHHY60
ザッザッザッザ……
勇者「……」
僧侶「……勇者様……」
勇者「……」
僧侶「……オークじゃ、なかったですね……」
勇者「……」
僧侶「……だけど、何でですか?」
勇者「……お前もわかってるだろ?俺たちは南にまっすぐ向かってた」
僧侶「だ、だったら何で?」
勇者「……」
25 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:10:05.70 ID:hxBfHHY60
ピカッ!
僧侶「なんで……目の前に魔王城があるんですか!?」
勇者「……」
ゴロゴロゴロゴロ!!
26 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:12:50.91 ID:hxBfHHY60
バタンッ
僧侶「……間違いなく、魔王城です。私達がさっきまでいた」
勇者「これは……結界か?魔王は最後に、俺達を結界に閉じ込めた……のか?」
僧侶「……」
勇者「だとしたら、その魔法の源が……どこかに魔法石があるはずだ。それを壊せば……」
僧侶「勇者様……」
勇者「しかし、この城にそんなものが?そんなエネルギーなんて感じない……そもそもこんな広範囲の結界なんて、聞いたこと……」
僧侶「勇者様……」
勇者「それともこれは呪いのたぐいか?魔王の最後の言葉に、そのような呪術が――」
僧侶「勇者様っ!!」
勇者「な、何だよ僧侶」
僧侶「……もう休みましょう。疲れてるんですよ……私達」
勇者「……」
僧侶「……」
勇者「……畜生……」
27 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:15:11.89 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ……
勇者「……何日たったんだ?」
僧侶「……」
勇者「……それとも何年?……何十年?」
僧侶「……」
勇者「時間の流れがわかんねえ……一日が一年のように、ひどくゆっくりに感じたり……一分が一瞬のように、またたく間に過ぎていったり……」
僧侶「……今日もすごい雨ですね……」
勇者「よくこんだけ尽きもせず降れるもんだよ。全く……」
僧侶「……」
勇者「……」
28 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:17:25.77 ID:hxBfHHY60
僧侶「……!勇者様っ!!」
勇者「何だ?」
僧侶「そ、外に……松明の光が!!」
勇者「何っ!?」ガバッ
僧侶「おそらく魔王軍の残党です……し、しかも……」
勇者「……なんて数だ……!」
29 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:19:13.14 ID:hxBfHHY60
勇者「この城に入るつもりか?」
僧侶「おそらく、魔王への謁見のため……」
勇者「おいおい冗談じゃねえ、魔王の間にいるのが魔王じゃなく勇者だとバレたら、俺達殺されてしまうぞ」
僧侶「し、しかし逃げても外は雨です。体力を奪われ、すぐに野垂れ死んでしまいますよおっ」
勇者「全員倒すっていうのも……現実味の無い提案だよなあ、あの数じゃ……!」
30 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:22:24.15 ID:hxBfHHY60
僧侶「そ、そうだ!!勇者様、服を――」
勇者「服ぅ?」
僧侶「魔王の着ていた装束を着てください。早く!」
勇者「いいけど……なんでそんな」
僧侶「いきますよー……モシャス!!」
ボンッ!
31 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:24:23.98 ID:hxBfHHY60
魔王「お、おお!魔王の姿になった!」
僧侶「これで何とか、魔王軍を欺いてください」
魔王「うう……魔王を倒した英雄が、魔王のふりかあ……」
僧侶「私は玉座の後ろに隠れておきます。何かあったらサポートしますので……」
魔王「っつっても、魔王のふりってどうすりゃいいんだ?悪者っぽく笑えばいいのかな……フッハッハッハッハ……とか?」
僧侶「いや、そこ重要ですか?それよりも他に――」
ゴンゴンッ
僧侶「!!……来た!?」
魔王「待って俺まだ心の準備が……」
僧侶「頑張ってください、それではっ!」ササッ
魔王「待ってくれ、おーい」
32 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:27:07.31 ID:hxBfHHY60
ギギイィィ……
魔王(入ってきたっ!)ササッ
ザワザワザワ……
魔王「……」
ゾロゾロ……
ゴブリン「ギュウウウ……」フラフラ
ゾンビ「ぐあああ……」ノロノロ
スケルトン「ぎしい……」ガチャガチャ
魔族「うう……」ヨロヨロ
魔王(……なんて数だ……そ、それに)
魔剣士「……魔王様、魔王様……」ヨロリ
魔王(こいつら……全員、深手を負っている……!?)
33 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:29:28.03 ID:hxBfHHY60
魔剣士「魔王様……奇跡ノお力ヲ、我らニ……」
魔王「……?」
魔剣士「何卒、我らニ……再度戦へと相まみエルよウ、奇跡ヲ……」
「奇跡ヲ」
「「キセキヲ」」
「「「奇跡おおおおおお……」」」
おおおおおおおおおおおおお…………
魔王「き、奇跡……?」
34 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:31:30.25 ID:hxBfHHY60
魔王「お、おい僧侶……奇跡って何だよ?」ヒソヒソ
僧侶「おそらくですが……あの傷を治す能力か何かなのでは、ないでしょうか……?」ヒソヒソ
魔王「い、いやもう無理だろ……あの傷じゃあ回復呪文なんて意味ないよ」ヒソヒソ
僧侶「しかし、何かしなければ、彼らはここから動きそうにありませんし……」ヒソヒソ
魔王「……ううん……」
魔剣士「……魔王様?」
魔王「うん?あ、ごめ……ご、ゴホンゴホン!」
魔剣士「ゴメ……?」
魔王「あー、すまぬな。すこし……その、めまいがしてな……私も続く勇者との戦いで、疲れておるのだ……」
魔剣士「……?」
35 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:33:07.26 ID:hxBfHHY60
魔王「うむ、奇跡の力……だったな」
魔剣士「戦イにヨッテ傷ツイた我らニ、癒やしヲ……ドウカ」
魔王「わかった。今……行おう」
スッ……
魔王(といっても、俺は僧侶みたいに回復呪文は得意じゃないし、こんな重症の魔物の治療なんか、出来るわけが……)
魔剣士「……」
魔王(それに……今まで散々殺してきた魔物を治療、だって?どうして俺がそんな事を……!)
魔剣士「……魔王様……?」
魔王(くっ……え、ええい!仕方ない!)
36 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:34:39.70 ID:hxBfHHY60
魔王「……ホイミ」ボソッ
パァァァァ……!
魔王「っ!」ビクッ!
魔剣士「オオ……アリガタイ……アリガタイ……!」
「ウオオオ……」
「魔王様ァ……」
「「「魔王様ァァァァァァ……」」」
魔王「…………クソッ」
パァァァァ……!
魔王「次はどいつだ?片っ端から治してやろう」
おおおおおおおおおおおおおおお……
37 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:36:21.86 ID:hxBfHHY60
カカッ!
ゴロゴロゴロゴロ!!……
勇者「……」
僧侶「……お疲れ様です」
勇者「……」
僧侶「……勇者様?」
勇者「……いや……」
僧侶「?」
勇者「……強くなってたんだな、俺……って、思ってさ」
僧侶「……はい。私が、及ばぬくらいに……」
勇者「……なんで治せちゃうかなあ……」
僧侶「……」
38 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:38:25.89 ID:hxBfHHY60
ザーザー…
勇者「俺達、今までどのくらい魔物を殺してきたのかな……」
僧侶「……」
勇者「最初は、村のすぐ近くに住み着いていたオークだっけ?」
僧侶「あの頃は私達、弱くって……大変でしたよねえ」
勇者「死にかけるたびに、僧侶にホイミ唱えてもらってな……ハハ」
僧侶「あれを覚えていますか?魔物が街の王様に化けていた事件」
勇者「あったあった。あいつ強かったなあ。倒してから街の人の誤解とくのも大変でさ……」
僧侶「様々な困難に立ち向かってきましたよね」
勇者「人々を苦しめる存在とな。……最後の最後にこの大陸行くのでも、ハーピーが海域を飛び回るせいで船を出せないって言われて、ハーピー退治に向かったり……な」
僧侶「退治したら、皆さん嬉しそうでしたねえ」
勇者「ハーピーのせいで何人も死んでたらしいからな。人々の幸せのため、勇者として頑張ったよ俺は……ハハ」
39 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:40:09.63 ID:hxBfHHY60
勇者「今日、治してやった魔物達は……どれだけの人々を苦しめるんだろうな」
僧侶「……」
ゴロゴロゴロゴロ……
勇者「どれだけの人が、死ぬんだろうな。……俺の治した魔物の手によって」
僧侶「……」
勇者「……自分の命可愛さに、世界中の人々を犠牲にしたんだ。ハハ……畜生」
ギリッ
勇者「……畜生……畜生っ!」
僧侶「……勇者、様……」
40 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:42:00.57 ID:hxBfHHY60
勇者「僧侶」
僧侶「はい」
勇者「絶対に、生きて帰ろう」
僧侶「……」
勇者「生きて、帰って……また勇者として戦うんだ。人々を苦しめる魔物達と、戦うんだ」
僧侶「ええ、必ず……」
ザァァァァァ……
41 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:43:37.07 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ……
僧侶「――者様――起きてください、勇者様……!」
勇者「う、うーん……?」
僧侶「勇者様、早く……準備を!」
勇者「じゅ、準備?」
僧侶「外に、松明の光が見えます」
勇者「…………は?」
42 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:44:51.10 ID:hxBfHHY60
勇者「……また魔王のまね事すんのかよ?」
僧侶「……」
勇者「また……汚らわしい魔物どもを治療しなきゃいけないのかよ?」
僧侶「……」
勇者「俺は……勇者だ!俺は、俺は――」
僧侶「……」
勇者「……」
僧侶「……準備を」
勇者「…………ああ」
43 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:45:54.53 ID:hxBfHHY60
ザッ
魔王「……」
「魔王様ァァ……」
「奇跡ヲ、我らニ……」
「痛イ、痛イヨオ……!」
「「「魔王様ァァァァァ……」」」
魔王「傷を見せろ。治してやろう……」
「「「おおおおおおおおおおおおお……」」」」
44 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:46:37.54 ID:hxBfHHY60
魔王「ホイミ」
パァァァァ
魔王「ホイミ」
パァァァァ
魔王「ホイミ!」
パァァァァ
魔王「ホイミ!!」
パァァァァ
45 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:47:13.67 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ
ザァァァァァ
ザァァァァァ
ザァァァァァ……
46 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:48:11.95 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ……
勇者「……毎日毎日、怪我人ばっかだな」
僧侶「はい」
勇者「もう……何日たったのか全然わからねえや。黒雲のせいで太陽も見えないしな」
僧侶「……はい」
勇者「ちょっとフケたかな?俺」
僧侶「やめてくださいよ……私、まだ若くいたいです」
勇者「ハハ……おっ、松明の光が見えたぞ」
僧侶「はい」
47 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:49:30.93 ID:hxBfHHY60
勇者「さあ……やるか」
僧侶「はい。……モシャス!」
ボンッ!
魔王「……フー。僧侶、水を汲んできてくれ。傷口を洗うための」
僧侶「はい」
魔王「……僧侶」
僧侶「はい?」
魔王「……すまない」
僧侶「?……何ですか、急に」
魔王「……いや」
48 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:50:39.71 ID:hxBfHHY60
ザーザー…
「「「おおおおおおおおおお」」」
魔王「ホイミ」
パァァァァ
魔王「ホイミ」
パァァァァ
魔王「ホイミ」
パァァァァ
魔王「ホイミ」
パァァァァ
49 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:52:07.62 ID:hxBfHHY60
パァァァァ……
オーク「魔王様……アリガトウゴザイマス……プギイッ」
魔王「……オーク、か」ピクッ
オーク「プギっ?」
魔王(まだ、いたんだな……皆殺しにしたと思ってたのに)
オーク「ナ、何デショウ?ギギイッ?」
魔王「いや……ああ、そうだ。一つ気になったのだが」
オーク「ヘイ」
魔王「貴様らは……毎日毎日傷だらけになってここまで来るが、何処で戦っているのだったかな?」
オーク「プ、プギ?」
魔王「ここまで大量の魔物が傷つくような争い、無かったと思うのだが……?」
50 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:53:36.46 ID:hxBfHHY60
オーク「何ヲ……今ハ人間共トノ戦争ノ、真ッ只中デゴザイマス」
魔王「……何?」
オーク「世界中ノ人間トノ争イデス……ソレハモウ激シイ戦イデシテ」
魔王「……人間と魔物との戦争は、五十年前に終結したはずだ」
オーク「ギ?」
魔王「今……外の世界では、戦争が起こっているのか……!?」
51 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:54:25.71 ID:hxBfHHY60
オーク「魔王様?何ヲ仰ラレテイルノカ……?」
魔王「私を連れて行け、オーク」
オーク「プギイ?」
魔王「私を、この大陸の外へ連れて行け。自由に出入り出来る貴様らに付いて行けば、私も抜けられるかもしれぬ」
オーク「ソレハ構イマセンガ……プギギ?」
魔王「なんとしても……外の世界に行かなくては……!」
52 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:55:14.19 ID:hxBfHHY60
ゴロゴロゴロゴロ……
「プ?プギ?」
「魔王様……?」
「何故俺ラノ軍ニ……プギギ?」
オーク「申シ訳ゴザイマセン……魔王様ヲオ運ビスル馬車ガ無ク、歩カセル事ニ……」
魔王「構わない。さっさと出発してくれ」
オーク「ヘ、ヘエ」
魔王(僧侶……外の世界が安全かどうか、見極めてすぐに迎えに来るからな……)
オーク「ソレデハ……行クゾ!!野郎共ォォォ!!」
「「「オオオオオオオ!!」」」
53 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:56:27.10 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ!!!
魔王「くっ……やはり、酷い雨だな」
ザッザッザッザ……
オーク「大丈夫デスカ?プギギ?」
魔王「私に構うな。さっさと進め」
オーク「プギ……」
ゴロゴロゴロゴロ……
54 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:57:48.05 ID:hxBfHHY60
バシャバシャバシャ……
魔王「むう……雨が激しすぎて、すぐ前を歩くオークの姿すら朧げだ」
ザッザッザッザ
魔王「離れると、大変な事になるな……」
ザァァァァァ……
魔王「しっかりと、ついていかなければ……」
ゴロゴロゴロゴロ……
55 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 15:58:53.10 ID:hxBfHHY60
カッ!!
魔王「うっ――!?」
ピシャアアアン!!
ゴロゴロゴロゴロ!!
魔王「くっ、雷か……一瞬、前が――」
ザァァァァァ……
魔王「……オーク?」
ザァァァァァ……
魔王「……オーク?何処へ行った?おい!」
ザァァァァァ……
56 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:00:01.55 ID:hxBfHHY60
魔王「馬鹿な……あの大軍だぞ。一瞬で姿を隠せる訳が無い……少々遠くへ行ったとしても、わかるはずだろ……」
ザァァァァァ……
魔王「おい……返事をしてくれ、オーク」
ザァァァァァ……
魔王「おい……オーク、オーク!」
タッ
57 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:01:00.40 ID:hxBfHHY60
魔王「真っ直ぐ進んだはずだ……俺は一瞬しか目をつむってない。真っ直ぐ進めば、オーク達に追いつけるはずなんだ……!」
タタタタッ
魔王「外に、出るんだ……俺は勇者なのだから、苦しんでる人々を、助けないといけないんだ……!」
ゴロゴロゴロゴロ……
魔王「今まで、治してしまった罪の分……俺は、戦わないといけないんだ……!!」
タタタタッ
魔王「……!!」
ピタッ!
58 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:02:05.72 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ……
魔王「……ハァ、ハァ……!」
ザァァァァァ……
魔王「……は、ハハ……ハハハハ……!」
ザァァァァァ……
魔王「アハハハハハハハハハハハハハハハ!ま、魔王城だ!!真っ直ぐオークの後を追ったのに!!魔王城が目の前にあるぜ!あは、アハハハハ!」
ザァァァァァ……
60 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:03:25.59 ID:hxBfHHY60
魔王「アは、ハハハ……はは」
ザァァァァァ……
魔王「……何でだよう、どうして……なんで、何故なんだ?」
ザァァァァァ……
魔王「戦うことも許されないのか……俺が、俺が……何をしたっていうんだよお」
ザァァァァァ……
魔王「誰でもいい!誰か、誰か……!!」
ザァァァァァ
魔王「誰か――俺を……俺を――!!」
カッ!
61 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:04:32.92 ID:hxBfHHY60
魔王「俺を……助けてくれえええええ!!!」
ゴロゴロゴロゴロ!!
62 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:05:07.19 ID:hxBfHHY60
ザーザー…
勇者「……」
僧侶「……」
勇者「……」
僧侶「……」
勇者「……時間だな」
僧侶「……はい」
勇者「……」
僧侶「……」
63 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:05:46.65 ID:hxBfHHY60
ゴロゴロゴロゴロ……
魔王「ホイミ」
パァァァァ
魔王「ホイミ」
パァァァァ
魔王「……ホイミ」
パァァァァ
魔王「……ホイ……」
…………
魔王「……ホイ、ミ」
パァァァァ
魔王「……ホイミ」
パァァァァ
64 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:06:22.74 ID:hxBfHHY60
パァァァァ
パァァァァ
パァァァァ
パァァァァ
65 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:06:58.37 ID:hxBfHHY60
魔王「ホイミ」
パァァァァ
ハーピー「ありがとうございます……キキキィッ」バサッ
バサバサッ……
魔王「フー……今ので、今日の分は終わりか」
僧侶「お疲れ様です」
魔王「……ふう」
ボンッ!
66 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:07:28.05 ID:hxBfHHY60
勇者「……疲れたな」
僧侶「はい……」
勇者「……何年たったのかな」
僧侶「……」
勇者「何年も何年も、休まずに魔物を治してきて……」
僧侶「……」
勇者「もう……この世界がどうなってるのかも、わかんねえや」
僧侶「……」
68 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:07:58.41 ID:hxBfHHY60
勇者「いつの間にか……この城も賑やかになったなあ」
僧侶「ええ……」
勇者「治した魔物が、この城に住み着いて……」
僧侶「……」
勇者「少々居心地が悪いが、気が紛れるよ」
僧侶「……」
69 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:08:41.91 ID:hxBfHHY60
勇者「……」
僧侶「……勇者様」
勇者「……うん?」
僧侶「最後の、魔物……」
勇者「……?」
僧侶「……ハーピー、でしたよね?」
勇者「……ああ」
僧侶「……」
勇者「……!」
70 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 16:08:46.95 ID:BaV3RWun0
つまりそういうことか
71 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:09:27.51 ID:hxBfHHY60
勇者「そういや……ハーピーって」
僧侶「ええ……」
勇者「……退治したと思ってたんだが」
僧侶「私も……そう思っておりました」
勇者「……生き残りが、いたのかな……?」
僧侶「さあ……」
勇者「……」
僧侶「……」
72 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:09:54.86 ID:hxBfHHY60
勇者「そういや、最近……」
僧侶「?」
勇者「怪我をした魔物の数……減った気がしないか?」
僧侶「……言われてみれば」
勇者「……何かが、変わってきているのか……?」
僧侶「……」
73 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:10:27.04 ID:hxBfHHY60
勇者「……」ポリポリ
僧侶「……」
勇者「……!」ピタッ
僧侶「……?」
勇者「……見てくれ、僧侶」プチッ
僧侶「はい?」
勇者「……白髪だ」
僧侶「……」
勇者「……はあ……」
74 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:10:52.18 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ
ザァァァァァ
ザァァァァァ
ザァァァァァ
75 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:11:22.32 ID:hxBfHHY60
魔王「ホイミ」
パァァァァ……
ドラゴン「オオ……アリガタイ……」
魔王「……今日の分は終わりか」
ギギイィィ!!
魔王「?」
オーク「マ……魔王様……ハァ、ハァ」
ヨロッ……
魔王「オーク!?」
76 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:11:58.08 ID:hxBfHHY60
魔王「どうしたのだ、オークよ……その傷は何だ!?」
オーク「ツ、ツイニ……現レマシタ……奴デス……プギ」
魔王「動くな!なんて非道い傷だ……今治すぞ」
オーク「魔王様……奴ガ、奴ガ現レタノデス……」
魔王「奴?奴とは……誰だ?」
77 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:12:24.94 ID:hxBfHHY60
オーク「……『勇者』デス」
魔王「……は?」
カカッ!
78 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:12:56.65 ID:hxBfHHY60
ゴロゴロゴロゴロ!!
魔王「……勇者、だと?そ、んな……馬鹿な」
オーク「我ガ同胞ハ……勇者ニ皆殺シニサレマシタ。生キ残ッタノハ、俺ダケ……グウッ」
魔王「そんな……馬鹿な話があるか。勇者は、勇者は……!」
オーク「奴ハ……コチラニ向カッテオリマス。ドウカ、魔王様。ゴ武運ヲ……」
魔王「待てオーク!もっと詳しい話を――」
オーク「……」
ガクッ
79 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:13:34.76 ID:hxBfHHY60
魔王「ホイミ!!」
パァァァァ……
オーク「……」
魔王「おい、目を覚ますんだ。傷なら治っただろう?目を覚まして……詳しい話を聞かせてくれ。オーク!」
オーク「……」
魔王「……畜生、どういう事なんだ!?勇者!勇者が現れただと!?……勇者がオークを皆殺しにした?勇者は……」
ザァァァァァ……
魔王「勇者は……俺じゃねえか」
80 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:14:00.87 ID:hxBfHHY60
ビュウウウウウウ
ウウウウウ
ザァァ――
――ァァァ――
81 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:14:29.29 ID:hxBfHHY60
魔王「……助けてくれ、僧侶」
僧侶「……」
魔王「オークが死んだ、あの日から――助けられない魔物の数が増えた。皆……俺の前で事切れていく」
僧侶「……」
魔王「勇者が、現れたからだ。……俺が、現れたからだ」
僧侶「……」
82 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:14:59.66 ID:hxBfHHY60
魔王「勇者は一歩一歩着実に、一日一日近付いてくる。俺を殺しにな。……勇者は――俺は、魔王を殺したが……今わかった」
僧侶「……」
魔王「……いや、本当はずっと前からわかってたんだ。目を背けていた。……魔王は、俺なんだ」
僧侶「……」
魔王「俺は魔王を殺した。その魔王は……俺だったんだ」
僧侶「……」
83 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:15:25.80 ID:hxBfHHY60
魔王「……死にたくないよ」
僧侶「……」
ザァァァァァ……
84 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:16:18.41 ID:hxBfHHY60
魔王「確かに俺は、数多くの魔物を殺してきた!根絶やしにするつもりで殺してきた!魔王を殺すのにも――何の罪悪感もなかったさ!!けれど、その分……今まで治してきただろう!?」
僧侶「……」
魔王「治したよ!何度も何度も治したよ!!今まで傷付けてきた魔物を、全部治してやったんだ!!女神にでもなった気分でな……俺は俺の幸せを手放して、治してやったんだ!!俺は!!」
僧侶「……」
魔王「何故!?その俺が、何故殺されないといけないんだ!!?俺の手によって!何故首を斬られて死ななきゃならないんだ!?何故!?どうして!!」
僧侶「……」
魔王「俺が――何をしたっていうんだよおおおお!!」
85 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:16:56.69 ID:hxBfHHY60
僧侶「貴方が治した一匹の魔物は、百人の民を殺します」
魔王「!……」
僧侶「勇者様が治した魔物は……私達が生まれる前の、五十年前の戦争で……人々を殺し、この世界に暗闇をもたらすでしょう」
魔王「……」
僧侶「勇者様……貴方は、私達は……我が身可愛さに、多くの人を殺しすぎたのです」
魔王「……」
僧侶「……」
86 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:17:24.44 ID:hxBfHHY60
魔王「…………死にたくないんだよ」
僧侶「私もです」
魔王「……死ななきゃならないのか」
僧侶「……はい」
魔王「……」
僧侶「……」
87 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:17:56.68 ID:hxBfHHY60
僧侶「……勇者様」
魔王「…………」
僧侶「私が、最後まで付き合いますので」
魔王「……」
僧侶「……」
魔王「……ありがとう」
僧侶「……いえ」
魔王「……本当に、すまない……!」
僧侶「…………」
88 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:18:25.80 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ
ザァァァァァ
ザァァァァァ
ザァァァァァ
89 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:19:10.10 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ
魔王「……」
ハーピー「申し訳……ございません……勇者を止められず……」
魔王「良い……ゆっくりと、休め」
ハーピー「……」
ガクッ
91 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:19:59.29 ID:hxBfHHY60
魔王「……勇者が来るぞ」
老女「……はい」
魔王「……ククッ、僧侶よ」
老女「はい」
魔王「お互い……年を、とったなあ」
老女「……」
92 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:20:35.72 ID:hxBfHHY60
魔王「まさか……老いた私が、魔王と瓜二つだったとは」
老女「……」
魔王「……当然か。魔王は……私なのだからな」
老女「……」
魔王「……」
93 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:21:18.79 ID:hxBfHHY60
老女「……魔王様」
魔王「何だ」
老女「最後に……一つだけ」
魔王「……」
老女「小さな村で出会い、平凡な毎日を過ごし、旅に出て、世界を回ったあの日々――」
魔王「……」
老女「本当に、本当に楽しかったです」
魔王「……」
94 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:21:51.90 ID:hxBfHHY60
老女「愛しております。魔王様」
魔王「……」
老女「今まで、ずーっと……お慕いしておりました」
魔王「……」
老女「城のお姫様という……貴方の想い人については、よく存じ上げております。けれど……」
魔王「……」
老女「愛しております。世界中の、誰よりも」
魔王「……」
95 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:22:25.62 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ
魔王「……」
老女「……」
魔王「……私も」
老女「……!」
魔王「私も……愛しているさ。僧侶……世界中の、誰よりも」
老女「……はい」
魔王「…………」
老女「…………」
96 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:22:57.15 ID:hxBfHHY60
魔王「……地獄で会おう。僧侶よ」
老女「その時は、キス……していただきますからね」
魔王「ああ……とろけるような、熱いやつをな」
老女「楽しみです」
魔王「……ああ、素晴らしい日だな」
老女「ええ……」
魔王「本当に。……死ぬには、良い日だ」
老女「……はい」
97 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:23:39.37 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ
ザァァァァァ
ザァァァァァ
ザァァァァァ
98 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:24:31.40 ID:hxBfHHY60
ァァァァァ――
魔王「……」
ギ……
ギギイィィ……ッッ!!
魔王「……来たか」
99 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:25:03.22 ID:hxBfHHY60
勇者「ついに……ハァ、ハァ」
僧侶「はぁはぁ……」
勇者「ついに、辿り着いたぞ!魔王!!」
魔王「待ち望んでおったぞ、勇者……フッハッハッハッハ」
ザァァァァァ
101 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:25:41.17 ID:hxBfHHY60
勇者「貴様の側近の、イビルプリーストは倒した!!あとはお前だけだ、魔王!!」
魔王「……そうか。奴を……倒したか」
勇者「心配するな、すぐに貴様も奴の元へと送ってやる……」
魔王「ほう……それは、楽しみだ」
ザァァァァァ……
魔王(すぐに、私も君の元へと向かうよ。僧侶――)
102 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:26:29.46 ID:hxBfHHY60
勇者「行くぞ、魔王……!苦しめられた民の怒り、思いしれ……!」
僧侶「ううっ……」ギリッ
魔王「フッハッハ……勇者よ」
勇者「!?……何だ」
ザァァァァァ……
103 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:27:20.04 ID:hxBfHHY60
魔王(私よ、お前はこれから先――終わることのない地獄へと囚われる)
ザァァァァァ
魔王(死んだほうがましだというような、終わることのない地獄だ。お前は今まで殺した分の、これから殺す分の罪を背負うのだ)
ザァァァァァ
魔王(せめて――強い心を持ってくれ。そして……出来ることならば、お前がこの地獄を終わらせてくれ……)
ザァァァァァ
104 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:27:51.49 ID:hxBfHHY60
魔王「勇者よ……私が最も得意とする魔法で相手してやろう」
勇者「何っ!?」
僧侶「ゆ、勇者様……!」
魔王(お前がこれから先、何度も何度も使う呪文だ。……忘れないでくれ)
勇者「くっ……!」カチャッ
僧侶「うう……!」チャキッ
魔王(この呪文の……暖かさを)
105 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:28:47.29 ID:hxBfHHY60
ザァァァァァ……
勇者「喰らえ魔王ッ!」
魔王「ホイミ!」
ズバァン!
106 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:29:24.14 ID:hxBfHHY60
つうこんの いちげき!
まおうは たおれた!▽
107 :
◆eUwxvhsdPM [saga]:2014/01/14(火) 16:30:17.02 ID:hxBfHHY60
終わりです。
ありがとうございました。
手塚治虫は本当、考えてることがおかしいと思う。
108 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 16:32:16.79 ID:eflBH5hMo
乙
110 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 16:39:25.84 ID:X0UjK97s0
乙
113 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 16:46:27.39 ID:NLaxPO0C0
色々考えさせられるな
乙!
115 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 16:57:44.11 ID:TbmtSeIEo
良い話だな乙
116 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 17:06:47.88 ID:IUUfHBXgo
無限るーぷ怖いけど面白かった
117 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 17:24:41.88 ID:x26anqsM0
乙
118 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 17:32:00.56 ID:+odQI5SEo
火の鳥の異形編か
乙
119 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 18:32:45.28 ID:l5auERfDO
キツいな…乙
120 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 18:38:42.95 ID:VCixrSnPo
綺麗に落ちたな乙
121 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 18:51:32.34 ID:7wBlc4wIo
面白かったがイマイチ釈然としないこの感じ
123 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 19:16:29.15 ID:/tyt4Y+20
ギャグと思ったらギャグじゃなかった
転載元
勇者「喰らえ魔王ッ!」魔王「ホイミ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389673685/
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火の鳥、敬遠してたけどいい加減借りてくるか・・・