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P「パステルイエロージューンブライド」

2013/06/11 06:56 | CM(3) | アイドルマスター SS
2 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:42:16.07 ID:/DywZQie0
ある梅雨の夜、右手に傘を、左手に鞄とコンビニの袋を下げて、自宅のアパートへ帰るところだった。
とてもカラフルな傘を回しながらご機嫌な鼻歌を歌い、
薄い黄色のワンピースの裾を汚す女の子に目を奪われたのは。


その彼女に奪われた目から流れているのは涙だったのか。
それとも傘を離してしまった故の、雨だったのか。
こんな天気のこんな時間に出歩くには不釣り合いなほど、彼女は幸せそうだった。



3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:45:21.25 ID:/DywZQie0
就職や課題で同じような事を繰り返し、時々友人と飲みにいく。
最初のうちは友人と外食へいく事が非日常だったのに、
今となってはそれすらルーチンワークの一つとなってしまった。

時々「いい大人が…」などと零しながら布団にうずくまり、枕に顔を埋めて泣いたりもした。
自分ですら、泣いている理由が分からずひたすら泣いた。
泣いていると、幼い頃父親に「泣いて何になるんだ」と怒鳴られた事を思い出して、
「泣いたらスッキリするだろ」と胸の内で反論した。

そんな毎日を過ごしていた僕には、
ご機嫌なパステルイエローのワンピースの少女がひたすらに羨ましく、
梅雨の中で待ち望んだ晴れ間の様に思えた。


4 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:47:04.64 ID:/DywZQie0
僕の存在に気づいた彼女は
テレビの中のアイドルのような笑顔でこちらを向くと、
アイドルは絶対にしない様な表情を浮かべた。


彼女の表情をの原因を察するに
どうやら僕は泣いていたようだ。
雨だと思っていたのだが。


5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:48:53.93 ID:/DywZQie0
傘を落としたお陰で空いた両手で拍手しながら尋ねた。
「なんでそんな、不安そうな表情をしているの?さっきまではアイドル顔負けの笑顔だったのに。」


彼女は照れた様な頬と、悩んでいる様な眉で
「私の歌が、あなたを泣かせてしまったのかと心配になって…」
と見当違いな返答をした。


その誤解を解き、再びあの笑顔を見るために慎重に言葉を選んだ。
「嬉し泣きってやつだよ。」
彼女は疑問符を浮かべながらはにかみ
「それなら」
と傘をくるくると回しながらまた歌い始めた。


6 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:51:16.86 ID:/DywZQie0
薄暗くて先ほどまでよくわからなかったが
言葉遣いや、表情からしてどうやら少女ではなかったようだ。

同じ位の年齢だろうか。
あまりにも無邪気だったから、少女に思えたのか。

傘を拾い上げ、歌に合わせてくるくると回しながら
なぜ、こんな雨の中で幸せそうに歌っていたのかきいた。


7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:53:57.75 ID:/DywZQie0
「いま、同じ職場の子たちが、努力と、成功と、あとは…運の事で悩んでて、
その事で。だから、私が幸せを分けてあげたいなって。」
残された人生をただ消費するように生きていた僕は彼女に幸せをわけてもらえる
見ず知らずの人達が、羨ましかった。


話を聞くと、彼女はある芸能プロダクションで働いていて、
デビュー前のアイドルたちについて悩んでいるとの事だった。
なにしろとてつもない人手不足だとか。


8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:54:55.13 ID:/DywZQie0
数日後、僕はその芸能プロダクションの前に、
パステルイエローの彼女につれられて来ていた。

パステルイエローの彼女の名前は音無小鳥。
近所のマンションに住んでいたそうで、内定のない僕を社長に紹介してくれるそうだ。
今まで芸能プロダクションというものにいいイメージを持っていなかったが、
僕は、一目惚れした彼女の悩みの一つになりたい。という下心で了解した。


9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:56:53.06 ID:/DywZQie0
履歴書は出した。
面接もあった。
結果、即日採用決定はいくらなんでも恐い。
横で音無さんが綺麗に笑っている。
社長曰く、「ティンと来た」らしい。
音無さん曰く「お給料はきちんとでますから。」だそうだ。
結果、卒業まではアルバイトとして働くという事で話はまとまった。

アルバイトではアイドル候補の子たちの名前を覚える事と、事務から始まった。
幸せで仕方なかった。
なにしろ音無さんと仕事ができるのだから。
ひとしきり事務仕事を覚えると、社長に連れられて挨拶まわりをこなした。
最初はつまらなかったが、
外回りの際の「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」を聞いて、外回りが好きになった。


10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/10(月) 23:59:05.68 ID:/DywZQie0
ある晩、社長に誘われお酒を飲みにいくと、スポットライトの先には音無さんがいた。
社長は零した。「私は音無くんを、幸せにしてあげられなかった。」
言葉が出なかった。
僕の下心は社長に分かるほどに露骨だったか。
音無さんと社長の年齢差はいくつだったか。
そもそも音無さんと社長の関係は。
それらの質問を飲み込み、目眩を堪えて尋ねた。


11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/11(火) 00:01:19.20 ID:MDn+0Jwv0
「僕は音無さんに惚れています。
僕が見た音無さんは幸せそうでした。
まるでアイドルの様な笑顔をうかべていました。
社長のいう幸せはなんですか。」
社長はなぜ知っているのかという様な顔で、ゆっくりと語り始めた。
「僕は以前プロデューサーとして働いていたんだよ。音無くんのプロデューサーとしてね。
しかし彼女と共に、アイドルとしての、プロデューサーとしての幸せを掴むことができなかった。
ただ、君の言葉を聞いて安心したよ。そうか。彼女は幸せそうだったか。」


音無さんがアイドルであったことの驚きと、社長との関係に安堵した僕は
しばらく言葉を発することが出来なかった。


ようやくのことで雨の中の無邪気な彼女を思い出し、力強くうなづいた。
「アイドルとしての幸せは無理だったのかもしれませんが、
今の音無さんは僕が幸せにします。悔しいことに既に幸せそうでしたけどね。」


12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/11(火) 00:04:14.78 ID:MDn+0Jwv0
「それに音無さんとの長い付き合い、羨ましいです。」と付け加えると
社長は苦笑いしながら
「彼女は私の中ではずっとアイドルなんだよ。娘の様なものでもあるんだ。
それに、今の彼女の幸せな表情には君のことも含まれてるだろう。
君になら彼女を任せられる。」
つぶやくとグラスに残った酒を飲み干し、再びステージへ目をやった。
ある秋の事だった。


14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/11(火) 00:07:00.61 ID:/DywZQie0
春大学を無事卒業し、765プロに入社した。
すでに「結婚を前提にお付き合いしてください」と告白した後だった。
その告白を初めて出会ったときの僕の様な表情で受け入れてくれた。
尋ねると、「嬉し泣きってやつだよ」と下手なものまねで答えてくれた。


その後、アパートから音無さんのマンションへ引っ越した。


15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/11(火) 00:08:41.69 ID:MDn+0Jwv0
ある朝、目を覚ますと不安そうな顔の小鳥さんがこちらを見つめていたので理由をきくと、
「寝言でアイドルの子達の名前をつぶやいていた」と。
それは各人の今日の予定を昨夜復習したからだと言うと、難癖をつけて抱きついてきた。

小鳥さんには素直に甘えると言う事が出来ないらしい。
何かしら不満を訴えながら甘えてくる。
これはこれで可愛らしいが、あまりにも理不尽な不満の後に甘えられる時が何度かあったので
その旨を伝えると、「私の方が年上なのに甘えるなんて…」と正直になった。
好きな相手に甘えるのに理由なんて。とぼやくと、満面の笑みで抱きついてきた。


16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/11(火) 00:10:33.08 ID:MDn+0Jwv0
2人で作った夕飯の美味しさや他愛ない口論。
互いの存在が互いの幸せとなる様な、こんな幸せな毎日すら退屈な日々になるのだろうか。
朝起きると1番に小鳥さんがいて、おはようと言う。いってらっしゃい、ただいまと言う。
やがて何も感じなくなるのだろうか。

そんな不安に時々襲われることがあると小鳥さんに打ち明けると
「私と一緒に雨の中へ裾を汚しに行きましょう。
一緒に洗濯をして、お風呂に入ってぐっすり寝ましょう。
そしたらきっと、きっと幸せです。私はとっても幸せ。」


17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/11(火) 00:12:02.40 ID:MDn+0Jwv0
彼女となら幸せに溺れても
無邪気な彼女と傘をもって裾も気にせず街へ繰り出せば退屈な日々は新しい日々に変わるだろう。


もうすぐ、パステルイエローの裾を汚したの花嫁を迎えに行くつもりだ。


18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/11(火) 00:13:26.80 ID:MDn+0Jwv0
以上。初めて地の文書いた。
小鳥さんはすてきな女性です!ピヨ...


19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/11(火) 00:14:21.65 ID:tkm5gA5p0



転載元

P「パステルイエロージューンブライド」

http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1370875277/






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2013/06/11 06:56 | CM(3) | アイドルマスター SS
    コメント一覧
  1. 774@いんばりあん [ 2013/06/11 09:05 ]
  2. ちくしょう!ピヨの自演か!
    また好きになっちまったじゃねぇか!!
  3. 774@いんばりあん [ 2013/06/11 09:42 ]
  4. そうか最近いやに天使な小鳥さんを見かけると思ったら事務員の自演か…
    まったく仕事もせずにssばかり…最低だな大好きです
  5. 774@いんばりあん [ 2013/06/12 17:38 ]
  6. 嫁にするならぴよちゃんが一番ぴよ
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