1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 09:52:26.77 ID:iSdzGiGo0
律「あー……学校行きたくねー」
澪「へ?」
律「だから、学校いきたくねーんだよ」
澪「そりゃまた唐突だな……何でだよ? 何か面白くないことでもあったのか?」
律「ないよ、全然。だけど、面白いことも全然ない」
澪「まーな。学校って楽しみに行くようなところでもないしさ……割り切るしかないのかもな」
律「とか言ってる澪は毎日楽しそうじゃん」
澪「そう見えるか? まぁ、楽しくないと言えば嘘になるかな」
律「文芸部だろ。お前最近文芸部の話ばっかしてくるから」
澪「まぁな。文芸的な活動はあんまししてないんだけど……
あいつらと放課後の時間を過ごすのが、すっごく楽しいんだ」
律「あんな根暗そうなやつらと?」
澪「そりゃ偏見だ。色んな個性の奴らが居て、一言では括れないんだぞ」
律「へーへー、そうですかい」
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 09:55:32.63 ID:iSdzGiGo0
澪「そういや、律ってなんで部活入ってないんだ?」
律「御存知の通り、りっちゃん隊員は、集団行動が苦手なんですわ。
あの女子高特有の面倒くさい人間関係調節だけでさえうんざりするっつうのに、
それを何故に放課後まで引きずらあかんのですかい」
澪「んー……でも、私は部活入った方がいいと思うけどな。それが私の学校に行く一つの目的になってるし。
みんな口揃えて部活楽しいって言うよ」
律「みんなはみんな、あたしはあたし」
澪「何なら文芸部に来ないか? 今なら私含めて部員4人だから、律が途中で入ったとしても、すぐ馴染めると思うし」
律「お気づかいあざーす、澪先輩。御心配なさらずとも、私は文芸部なんかには行かないんで」
澪「な、なんか、とはなんだ!」
律「はは、冗談冗談。そいじゃ、今日も1日頑張れよ」
澪「…………」
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:00:15.31 ID:iSdzGiGo0
律(何も最初から部活に入りたくなかった訳じゃない。
でも、軽音部の再設立を失敗してから、次の一手が何故か打てずにいた。
まさか私以外入りたい奴が誰もいないなんて、あの時は考えられもしなかったな。
んで、ジャズ研とかもいいかなー、って思ったけど、その当時私がやりたかったのはロックで。ジャズにドラムは要らないし。
そうこうしてる内に、1年の夏休みになり、2学期が来て、冬が来て、春が来て、私は2年生になってしまった訳だ。
考えてく内に、本当に自分が音楽やりたいのかっつうことさえ疑問に思えてきて、何かしら動くのも面倒になった。
そのたびに部活生を嫉妬したりもした。今でも澪を多少嫉妬したりもしてるけど。
律(でも、いい加減このままじゃ何もせずに高校生活終わっちまうぞ)
律(しかし、1から人間関係作るの面倒臭い、っていうのはあながち嘘じゃない)
律(……畜生、でも、このまま漫然と生きてくと、いつか絶対に不登校になる。毎日がつまらなすぎる!)
律(ん………どうしよう…)
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:03:52.86 ID:iSdzGiGo0
律(こんなはずじゃなかったんだけどな……)
律(本当は軽音部に入って、みんなでダラダラしながらも練習して、時には喧嘩して、でもまた仲直りして、毎日が青春って言葉を体現してる。
そんな生活を送る予定だったんだけどな……)
律(……今となっては、何するにも面倒臭くなるよ…何かしたいけど、何もしたくない)
律(……どうしてこうなった)
―――
――
―
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:06:49.14 ID:iSdzGiGo0
?「りっちゃん! りっちゃん!」
?「りっちゃん起きて!」
律「……ん、な、なんだ…」
?「何だじゃありませんよ、律先輩! 何でそんなに爆睡してたんですか?」
律「へ……ここ、どこ……?」
澪「何言ってるんだよ律、ここは軽音部の部室に決まってるじゃないか!」
律「え、何いってんの澪ちゃん?」
?「それはこっちの台詞ですよ先輩……まぁ、試験前で現実逃避したくなる気持ちもわかりますが」
?「りっちゃんったら、おもしろーい」
律「え? てことは何? ここ軽音部だってこと?」
澪「当たり前だ! さ、早く練習しようぜ! お前のドラムがないと始まらないんだ!」
律「お……おぅ!」
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:07:37.06 ID:tz85C4n20
ほほう、それでそれで?
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:09:33.20 ID:iSdzGiGo0
律(またあの夢を見てしまった)
律(どれだけ部活……てか軽音部に未練があるんだ、私)
律(………クソっ、もし昨年の4月に軽音部に部員が入っていれば…)
律(今何もないこの茫漠とした生活から抜け出せたんじゃないか?)
律(あの、夢みたいに。あの夢の中の軽音部みたいに……)
律(それにしても……あの夢の中の面子、いつも同じだな)
律(何も考えてなさそうな茶髪と、ツインテールで可愛い黒髪と、おっとり金髪……あと澪)
律(決まってあの面子だ。キャラも口調も外見も、それぞれの夢で同じ)
律(……何なんだろうな)
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:12:34.16 ID:iSdzGiGo0
澪「え、私が? 夢の中で軽音部に?」
律「そうなんよ。しかもそれが毎回だから」
澪「ん……偶然、じゃないのか? お前友人少ないし、律が頭の中で描ける登場人物って、私くらいのもんだろ」
律「ひどい言われようですが、敢えて突っ込んだりはしないわよ」
澪「でも、他の出てくる子も共通ってのは、不思議だな……」
律「でしょ? でしょでしょでしょ? 何かの予言みたいでしょ?」
澪「予言かどうかはさておき、微妙に気になるところではあるな。お前、その人達と会ったことはおろか、喋ったことさえないんだろ?」
律「はい、ないと思われます」
澪「………不思議だな。前世での親友たちがお前の夢の中にあらわれてる、とか……これ次の小説のネタになるかも」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:17:36.37 ID:iSdzGiGo0
律「そだ、おい澪」
澪「ん?」
律「その子たち、探してみようぜ」
澪「……え? 今何て言った?」
律「だから、あたしの夢の中に出てくるお前以外の3人を探してみるっつってんの」
澪「…………お前、何言ってんだ? とうとう鬱病の初期症状が始まったか?」
律「誰が鬱病じゃい! いや、根拠はないんだけど、あまりにもリアルだから、実在するんじゃないかなー、
って思って……って、おい何だ澪、その顔は」
澪「ん……何というか、馬鹿にするというか、お前がそういうこと言うのが意外でさ」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:23:16.05 ID:iSdzGiGo0
律「あー、あたしでも何でこんなこと言ってんのかわかんないよ。ただ、面白そうだからさ。他にすることもないし」
澪(律がいつになく輝いてる、かも)
澪「でも、どうやって探すんだ?」
律「まぁそれは、今日の放課後じっくり話し合おうぜ」
放課後
澪「じゃまとめると、
一人目は茶髪で馬鹿っぽいけど一緒に居たら和みそうな奴、身長は私よりちょい下
二人目は金髪でおっとりしてる、金持ちっぽい。眉毛が特徴的
三人目は黒髪ツインテールの後輩、可愛い、けどしっかり者っぽい」
律「うん、だいたいそんな感じ」
澪「……これだけの情報で探すの、多少無理ないか?」
律「そうだね、無理ありありだね!!」
澪(……あー、なんで私こんなのに付き合ってるんだろ)
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:28:12.78 ID:iSdzGiGo0
律「あ、でも大丈夫! みんな桜高の制服は着てたから!」
澪「そういう問題じゃない! 学校の中でも、この3人の条件に当てはまる人だったら、一杯いるだろう!」
律「てへ☆ あ、でもあたしが見たら分かると思うから、無問題だぜ」
澪「だからそこに至るまでのプロセスがだな……」
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:31:07.16 ID:aWl2noDA0
律が友人少ないっていうのが気になったが続けて
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:31:32.75 ID:iSdzGiGo0
和「あら澪、教室に残ってるなんて珍しいわね」
澪「あ、和。生徒会は休みか?」
和「今日直の仕事が終わったとこ。これから生徒会よ。学祭も近いしね」
澪「そうなのか。あ、律。この子は和。私のクラスメイトだ」
律「……ど、ども。田井中律です(あー、生徒会長か)」
和「いっつも澪と一緒に学校来てるの見てるから、知ってるわ。仲がいいのね」
澪「小中高と一緒だと、嫌でも仲好くなるよ」
律「おい何かあたしに不服なことでも」
和「そんなことより、二人で教室に残って何やってるの?」
澪「あー……それはだな」
澪(駄目だ、こいつの夢に出てくる人間を探すだなんて、和に言ったら鼻で笑われるに違いない)
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:36:11.76 ID:iSdzGiGo0
澪「ち、ちょっと、人探しをしてるんだよね。こいつの小学校時代の友人が、桜高に居るらしくて。」
律(嘘ってバレバレじゃねぇか澪ちゃん)
和「何々……(概要を書いたノートを見る)……、え?」
澪「いや、こんな抽象的すぎる概要で人探しなんて出来る訳ないんだけどさ。でも、小学時代の記憶ってさ、ほら、曖昧じゃん?」
律「………(もう澪喋らないでくれ)」
和「私、この子知ってるかも」
律・澪「へ?」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:39:12.66 ID:1P3LcKjf0
こういうifは面白いな
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:41:08.73 ID:iSdzGiGo0
澪「和の話によれば、彼女の名前は平沢唯。桜高2年3組、だそうだ」
律「2年3組……って、あたしと同じクラスじゃん! こんなの居たっけっか……」
澪「お前、無気力学生でも自分のクラスメイトの名前くらいは覚えとくもんだぞ」
律「ん……聞いたことあるっちゃあるかも……あ、そうだ! この子……道理で覚えてない訳だ…」
澪「ど、どうしたんだ律?」
律「この子、不登校児だよ! 始業式の日から一回も学校来てない!
だからウチのクラスには、いっつも空いてる席が一つあるんだ」
澪「そうなんだ……不登校してる子が和の友人って…
まぁ、あいつは世話焼きだから、あながち間違ってもいないか…」
律「じゃ、早速会いに行こう!」
澪「おいちょい待て」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:47:05.25 ID:iSdzGiGo0
律「どーしたよ? 折角誰か分かったんだから、この機を逃してどーすんだよ」
澪「よく考えろ律。まず、あってどうすんだよ。相手は不登校の子だぞ。
普通じゃないんだ。ただでさえ人間関係不器用なお前が、そんな子とコミュニケーションとれるのか?」
律「ノリでなんとかする!」
澪「………それに、その子に何て言って会いに行くんだ?
夢の中でいっつもあなたが出てくるんです! って言うのか?
私が平沢さんなら、お前を痛い子認定してお引き取り願うな」
律「……うぐ…」
澪「しかも、そいつがお前の言ってる夢に出てくる子とは限らないし」
律「うるさい! んなもん会ってから確認すりゃいいだろ!!
さぁそうと決まったら担任に住所貰いにいくぞ!」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:52:00.45 ID:iSdzGiGo0
和(……本当かしら、唯と田井中さんが小学時代の知り合いっていうの。だとしたら、私も田井中さんを知ってることになるけど…)
和(まぁ良いわ。あの子に友人が増えるなら、それに越したことはないしね)
*
さわ子「え、平沢さんの住所?」
律「はい、山中先生。もう平沢さん長いこと学校来てないじゃないですか。だから、大丈夫かなって思って。
平沢さんだって、毎日一人で居たら寂しいと思うんです。だから、平沢さんの家に会いに行きたいんです!」
澪(怪しすぎる……)
さ「うーん………知ってると思うけど、平沢さんはちょっと今大変な状況なのよね……、すっごくいい子なんだけど」
律「そんなの関係ありません! だって私と平沢さんは、クラスメイトですから!」
澪(あー何かいたたまれなくなってきた…)
さ「まぁ、田井中さんが平沢さんに会いたい、って言ってくれるのは私としても凄く嬉しいんだけど。あの子、今は誰に対しても怯えちゃうから。
ほら、1年生の時のいじめのせいで。ちょっとした問題になったでしょう?」
澪「あ……あの事件ですか」
律「え、いじめ? 何それ?」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:54:04.71 ID:1P3LcKjf0
wktk
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 10:58:41.11 ID:iSdzGiGo0
澪「何でお前知らないんだよ!」
律「えー、何でって言われても……」
さ「まぁ兎に角、平沢さんは1年生の時にひどいいじめを受けて……自殺未遂までしてしまったの。
それから、1度も、ただの1度も学校へ来てないわ」
律「あー、何かそんな話あったようななかったような」
澪「隣のクラスの子に聞いた話では、。机の上に落書き、弁当に埃を混ぜられる、椅子と机を隠される、教科書を水で濡らされる、殴られる、蹴られる、
お金を巻き上げられる……その他色々えげつないことされたとか」
律(なんで澪こんなに詳しく知ってんだろ……)
さ「……そうよ。そして自殺未遂。妹さんに止められて何とか致命傷には至らなかったんだけど。
けどそれから、妹さんとさえ口を利かなくなってしまったらしいの。
私も週に1度家庭訪問に行ってるんだけど、顔を見たことはおろか、喋ったことさえないわ」
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:04:30.32 ID:iSdzGiGo0
律「わお……こいつぁ、強敵ですなぁ、澪ちゃん」
澪「だから私はやめといた方がいいって」
律「でもあたしは会いたいです! 平沢さんに! 妹さんや先生で駄目でも、
新しいクラスメイトである私には心を開いてくれるかも知れない!」
さ「…………わかったわ。明日、平沢さんの家に行く日だから、放課後私のところに来なさい。
一緒に乗せてってあげるわ」
律「あー、まさか1日でここまで行くとは思わんかったなー」
澪「おいちょっと待て律! 本当に平沢さんに会うのかよ!」
律「ここまで来たら会うしかないっしょ。それに何かほら、いじめで心に傷を受けた子が、
私たちの手によって徐々に立ち直ってくって、何か青春ドラマみたいでかっこいいじゃん?」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:09:51.62 ID:iSdzGiGo0
澪「そんな簡単な問題じゃないんだよ! 相手は生身の人間だぞ?」
律「はーいはいはい。ま、正直私も、最初は澪との話のネタ程度にしか思ってなかった夢の話が、ここまで発展してることに驚いてるよ」
澪「だったら、もう冗談は止めにして、明日からまた普通の生活に戻ろう? な?」
律「……まぁまぁ。普通の生活に戻る前に、もうちょっと遊んだっていいじゃん。別に死ぬわけじゃないんだし。
もうちょっと付き合ってくれよ、澪ちゃん」
澪「…………もう、私は知らないからな」
律(……馬鹿野郎)
律(普通の生活に戻っても、私には何もねぇんだよ)
律(ただ朝起きて、学校行って、適当に授業受けて、帰って、ネットやって、テレビ見て、寝る。この繰り返しだ)
律(だからたまに、ちょいとばかり遊んだって、いいじゃねーか)
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:15:23.17 ID:iSdzGiGo0
―――
――
―
律「ういっす」
?「りっちゃん、遅いよ!」
律「あ、ごめんごめん 。今日生物の追試でさ」
?「流石りっちゃんだね!」
律「……おい、お前も明日数学の追試だってこと、わかってるんだぞあたしは」
?「げ? 流石りっちゃん隊員抜かりないで御座いますね」
?「そんなことより、りっちゃんもお茶飲みましょ」
律「お、サンキュ、 。今日のお菓子は何なんだ?」
?「ショートケーキよ」
律「おー、ラッキー! 元祖にして最強のショートケーキ!」
?「いっただっきまーす」
律「おいちょっと待て ! それあたしの苺!」
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:21:09.02 ID:iSdzGiGo0
?「へへへ……油断するほうが悪いんだよりっちゃん…」
律「このやろー!!」
?「こんにちはー、………って先輩方、また練習しないでお茶なんて飲んで……練習しましょうよ」
?「あ、 ! 今日のお菓子はショートケーキだよ!」
?「え、そ、そうなんですか! で、でもそれと練習は関係ないです……」
律「そんなこと言ってたら、 のケーキ食べちまうぞー!」
?「だ、駄目です! 律先輩、いじきたないですー!!」
律「なんだとー! 部長をいじきたないとはなんだーこのーこの口が悪いのかー」
―
――
―――
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:27:51.95 ID:iSdzGiGo0
律(はいはい、毎朝恒例のほどよいこの鬱加減)
律(何故に夢の中の軽音部は、あんなに楽しそうなんだろ……)
律(私のあんな部活に入れたらな……こんなつまらない生活とはオサラバなのに)
律(……ま、自分が能動的に動かなかったのが悪いんだけどね)
律(……………何だこの違和感)
さ「ここよ、平沢さんの家」
澪「結局付いてきてしまった……」
律「ありがとうございます、山中先生」
さ「いいのよ。もしかしたら、平沢さんも新しい友人になら次第に心を開いていってくれるかも知れないしね」
澪「心配だな……絶対迷惑だと思うんだけどな」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:29:52.63 ID:iSdzGiGo0
>>53
訂正:「私のあんな部活に入れたらな…」→「私もあんな部活に入れたらな…」
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:31:11.27 ID:aWl2noDA0
シャンゼリオンの最終回思い出した
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:33:08.19 ID:iSdzGiGo0
さ「憂ちゃーん」
?「あ、山中先生。毎週本当にありがとうございます」
さ「とんでもない。担任たるものとしての務めだわ。で、調子はどう?」
?「お姉ちゃんなら、相変わらずです。声も聞こえないし、会ってもくれません。
部屋の前に置いておいたご飯と水は無くなってますし、夜中にトイレに行く足音も聞こえるんで、居ることはわかるんですけど……」
さ「そうなの……わかったわ。憂ちゃんは、元気かしら?」
?「ありがとうございます、私なら大丈夫です」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:37:38.01 ID:iSdzGiGo0
律「あの子が平沢さん……かな?」
澪「いや、違うだろ。平沢さんは部屋から出てこれないって、山中先生が言ってただろ」
律「それにしても、あの子、めっちゃ顔色悪いなー。眼の下に、ほら、でっかい隈」
澪「そうだな……姉が引きこもりだと、妹も大変なんじゃないか……?」
?「で、そちらの方は」
さ「あぁ、紹介が遅れたわね。この子たちは、唯ちゃんのクラスメイトよ」
律「ども、田井中律です」
澪「……秋山澪です」
?「あ、こんにちは……………平沢唯の姉の、平沢憂です」
律「ういちゃん、ね。初めまして」ニッコリ
憂「は、初めまして。ところで、どういった御用件ですか」
律「あぁ、ちょっとお姉ちゃんがずっと学校に来ないから、心配でさ」
憂「………本当ですか? お姉ちゃんの、友達なんですか?」
律「そうさ。平沢さんとは小中高と同じクラスだったからな!
メールしても何しても音信不通だから、心配で心配で」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:38:42.96 ID:iSdzGiGo0
>>59
訂正:憂「平沢唯の姉の…」→憂「平沢唯の妹の……」
スマソ
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:38:48.31 ID:tMGeraHsO
メンバーの悩みを聞いた律が解決するために奮闘する→メンバー「どうして私をry」→スレタイ
こうなっちゃうん?
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:44:34.21 ID:iSdzGiGo0
澪(……じゃ、苗字じゃなくて名前で呼んどけよそこは……)
律「じゃ、ちょっとお姉ちゃんに会わせてもらっていいかな?」
憂「そ、それはちょっと……」
澪「そうだぞ律。駄目に決まってるじゃないか」
さ「田井中さん。いきなりはちょっと駄目だと思うわ。唯ちゃんは憂ちゃんにさえ口をきいてくれないのよ。
いきなり他の人に会うのは、刺激が強すぎるんじゃないかしら」
律「で、でも……」
律(そりゃそうだよな。何故こんな会ったことないような奴に会う為に必死になってんだ?)
律(不登校児だぞ。いじめられて、色々と面倒臭そうな奴だぞ。話せる訳ないじゃん)
律(……)
律(…………訳わかんないけど、ほんと訳わかんないけど、これは私がやんなきゃいけない気がするんだよね)
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:47:54.59 ID:iSdzGiGo0
律「そんなの、やってみないとわかんないじゃないですか」
憂「!?」
律「それに、唯はあたしの友人です。だから、会って話がしてみたいんです。
結果として話せなかったとしても、唯に話しかけたいんです」
澪(今こいつ「唯」って言った?)
澪「……ちょっと律」
憂「わかりました。お姉ちゃんに話してみます」
律「………ありがとうございます」
律(え? なんで私こんなに熱くなってるんだろ? ………流れ的にか? 訳わからん)
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:51:03.00 ID:iSdzGiGo0
憂「おねーちゃーん、おなかすいたー?」
唯「…………」
憂「よるごはん今作るから、もうちょっと待ってね」
唯「…………」
憂「それと、今日はお姉ちゃんのお友達が来てるよ」
唯「…………」
憂「お姉ちゃんと話したいんだって」
唯「…………」
憂「田井中さん、秋山さん、あそこがお姉ちゃんの部屋のドアです。ドアは絶対に開けないであげて下さい」
律「わかった、ありがとう」
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 11:55:25.72 ID:PTJ1lU5z0
何か消失みたいな展開だな
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:00:02.93 ID:iSdzGiGo0
澪「…………何か怖いな」
律「だいじょーぶだって、澪ちゃん。ほら、相手が何もしゃべらないなら、何も気に病むことはないさ」
澪「だって………」
律「いいからいいから、行くぞ澪」
律「こんにちはー、平沢さん」
唯「…………」
律「あたし同じクラスの田井中律って言うんだ! よろしくな!」
澪「わ、私は秋山澪……です」
唯「…………」
律「唐突に来てごめん。いや、何だか会わなきゃいけないような気がして」
唯「…………」
律「平沢さんって、茶髪で、ちょっと馬鹿っぽいんだけど、ぽえっとしてるんだよな?」
唯「…………」
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:06:04.90 ID:iSdzGiGo0
律「そんでもって、あとは……ギター上手いんだよな?」
澪「え?」
唯「……」
律「……あ、ごめん。何かそんな気がして」
律「めっちゃ怪しいよな、あたし達。いきなり押しかけてごめんな」
澪「達って私も入ってるんかい」
唯「…………」
律「いやー、変な話。何も話すことなんてないんだ。学校で特に何が起こるわけでもないし、転校生が来たわけでもない」
律「そういやもうそろそろ学祭だけど、その準備で内輪でわいわい盛り上がってるって感じで」
律「私みたいな奴は、クソも面白くないわけ。まーあんまクラス馴染めてないしな。当然っちゃ当然かもだけど」
律「平沢さんも、そう思わない? 学祭なんて消えちまえばいいのになーって。授業受けてた方がまだマシだって」
唯「……」
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:11:04.74 ID:iSdzGiGo0
律「でも……なんつーか、こう、たまにさ。期待とかしちゃうんだよね。わかるかなー、この気持ち」
律「ジャズ研とか演劇部とか吹奏学部とかがさ、ステージの上でやるわけじゃん、演奏とか演劇とか、まぁ色々」
律「それ見たり、そのことを思ってみると、何というか………こう、嫉妬というか、切なさというか、不思議な気持ちに囚われるんだ」
律「あー、何であそこに立ってるのがあたしじゃないんだろうなー、って」
律「あたし、軽音部に入りたかったんだ。けど、部員が誰も居なくて」
律「最初あたしが立て直そうかなーって思ったけど、結局誰も来なかった。ははは」
唯「……」
律「あ、変な話してごめんな。ちょい色々思い出しちゃって」
澪(律……何かいつもと違う。何が違うのかは言えないけれど……何なんだろう)
律「あぁ、今日は帰るわ。妹ちゃんに迷惑かけてもマズイし。また来て良いかな?」
唯「………」
澪「……」
律「……ありがとな」
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:16:12.13 ID:WsNEk+Mo0
イイヨイイヨー(・∀・)
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:17:08.76 ID:iSdzGiGo0
―――
――
―
唯「りっちゃん」
律「ん、何だ唯?」
唯「何かたまにさ、今すっごい幸せだなー、って思う時ってない?」
律「あー、そりゃたまにじゃなくて頻繁にあるけどもさ。それがどうかしたか?」
唯「あたし、軽音部に入ってから、すっごい楽しいし、幸せ!」
律「何をいまさらぁ! 恥ずかしい奴だなぁ」
唯「へへへ、でも、本当のことだから、しかたないよ!
みんなと会えて、すっごく幸せ!」
律「……確かに。このメンバーで会えたのも、ちょっとした巡りあわせみたいなもんだもんな」
?「何の話してるんですか?」
唯「あ、 ! いや、このメンバーで居れて、すっごい幸せだってことだよ!」
?「な……まぁ、そうですね。私なんてジャズ研行ってた確率もありますし、外バン組んでたかもしれませんしね」
律( の場合、言葉に現実味があって怖いな)
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:23:03.76 ID:iSdzGiGo0
唯「 、本当に軽音部に来てくれて、ありがとーう!」
?「だ、抱きつかないで下さい、暑苦しい! 学祭近いんですから、早く練習しましょうよ!」
律「へーへー。練習いたしまちょーねー。その前に、 の紅茶とお菓子食べてからな」
?「どうやってまた脇道にそれる……」
唯「え、 食べたくないの?」
?「…………食べたい…ですけど……」
律「えー、 は練習するんだろー」
?「そ、そうですよ! でも……あぁもう、律先輩も唯先輩も、いじわるです!」
唯「 かわいー!」
?「うう………」
―
――
―――
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:26:46.78 ID:iSdzGiGo0
律「よう、平沢さん。今日も来ちゃった」
唯「…………」
律「てか、昨日平沢さんが来て良いって言ったよな? 来てよかったんだよな?」
唯「…………」
律「あ、因みに今日は澪は居ないんだ。澪ってのは、昨日一緒に来てた子のこと。あいつ全然喋ってなかったからわかんなかっただろうけど」
唯「…………」
律「澪の奴、ひどいよな。今日は文芸部があるからーって。部活とあたし、どっちが大事なんだっつうの」
唯「…………」
律「まぁ、あいつとも中学までは結構親しかったんだけどもさ。高校入ってから、ちょっと壁を感じるというか……あいつが冷たくなったのかな…」
唯「…………」
律「わかんないけどね。一緒に学校は行ってるんだけどね。それは家近いから、あっちに断る理由がないからなのか、それとも何も考えてないのか」
唯「…………」
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:29:33.25 ID:iSdzGiGo0
律「まー、あたしは今でも澪のこと好きだから、良いんだけどさ。
でも、自分の部活の話ばっかすんのは、やめて欲しいんだけどね」
唯「…………」
律「何がいいんだろ、あんな根暗な奴らが最後に行きつくような、吹き溜まりみたな部活」
唯「…………」
律「ま、あたしはその吹き溜まりにも行きつくことが出来なかったんだけどね」
律「あたしのせいってわかってんだけど。それはしゃーないか。だから、ちょっと澪が羨ましいんだ」
律「俳句甲子園とか、高文連とか、文芸キャンプとか、何が楽しいのかは今一つわからないけど」
律「けど、あいつが部活について喋ってるの見てるとさ、あー、澪本当に部活の奴らが好きなんだなー、って思っちゃって」
律「………嫉妬しちまうんだよな」
唯「……」
律「あ、ごめんな。何話せばいーかわかんなくて」
唯「…………」
律「本当のことを言うとさ、ここに来た理由なんだけど」
唯「……」
律「平沢さんが毎日夢の中に出てくるんだ」
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:31:17.39 ID:iSdzGiGo0
唯「…………」
律「夢の中で、私たちは軽音部で、まぁあんまし練習はしないんだけど、兎に角楽しくダベってるんだ。
あたしと澪と平沢さんと、あと2人居るんだ。一人はおっとりしてて、まぁ平沢さんとは違う方向のおっとりで、
もう一人はしっかりした後輩! ツインテールですっごい可愛い! けどまぁ練習練習うるさいんだけどね」
唯「……」
律「まぁ、そんな馬鹿みたいな理由でここに押しかけちゃったわけです」
唯「………」
律「じゃ、今日は帰るわ。また来ていいかな?」
唯「………………うん」
律「ありがと。んじゃまた来るわ」
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:33:59.85 ID:As5PjkI0P
支援
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:35:30.29 ID:iSdzGiGo0
―――
――
―
律「おぉ、何だ今日は唯一人か」
唯「あ、りっちゃん。今日は紬ちゃんは学校おやすみしてるんだ」
律「へー紬が。またスウェーデンとか行ってんのかねー」
唯「そーかもね。あたしも行きたいなー、すうぇーでん」
律「唯さん、スウェーデンって何かわかってらっしゃいます?」
唯「だから、今日はお菓子もお茶もナシだねー」
律「だなーちくしょー、あぢー、あたしもロシアとか行って涼まりてー」
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:37:16.38 ID:iSdzGiGo0
唯「………ねぇりっちゃん」
律「ん-なにー」
唯「もしあたしたちがいなくなったら、どうする?」
律「何だよ突然。いなくなるわけねーじゃん」
唯「そうなんだけど……そうだよね!」
律「いなくなっても、あたしがみんな探してやるから、大丈夫だって!」
唯「ありがとう! じゃ、手始めに紬ちゃんを捜しに行こう!」
律「おおともよ! 行くぜ唯隊員!」
唯「ラジャ、りっちゃん隊員!」
―
――
―――
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:40:37.63 ID:iSdzGiGo0
律「こんばんは、憂ちゃん」
憂「田井中さん、今晩は。いつも、有難うございます」
律「いやいや-。こっちこそ勝手に毎日来て、申し訳ない」
憂「とんでもない! お姉ちゃんもきっと喜んでると思います」
律「まぁ、そうだといいけどさ」
憂「ところで、宜しければ、今日夜ごはんとか食べて行きませんか?」
律「え、いいの? ありがとう憂ちゃん! あんたは出来た子やー」
憂「いえいえ、こちらこそ。私も誰かと一緒にご飯食べたかったんです。一人じゃ気が滅入ってくるんで」
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:46:20.88 ID:iSdzGiGo0
律「なぁ唯、憂ちゃんのご飯とか、めっちゃ美味しいんだろうなー。いかにも家庭的って感じだもんな!」
唯「……」
律「てか、唯って呼んでいいよな? 何かそう呼びたい気分なんだな、唯!」
唯「……」
律「そんでさー。まぁ今日も相変わらず話すことなんてないんだけど」
唯「…………」
律「今日も澪は一緒に来てくれなかったぜ……冷たいというか、都合良い時だけ来てくれるというか」
唯「…………」
律「いや、私が変だってのわかってるから別に良いんだけどさ」
唯「…………」
律「あー唯ー。たまに憂ちゃんとご飯食べてやれよー。憂ちゃん苦労人なんだぜ」
唯「……」
律「まぁ、知ってると思うけど、いやなんかごめん」
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:51:18.02 ID:iSdzGiGo0
唯「……」
律「そういや、夢の中のお前、結構楽しい奴なんだぜー。
まぁお勉強は出来ないんだけど、ギターすっごく上手くてさ。
軽音部のマスコット的存在なんだ!」
唯「………」
律「こないだ練習した曲も、結構うまかったぜ……ほら、なんて言ったかな…」
唯「……」
律「ごめん、夢だからあんまし覚えてないんだ。あ、いや何かあたし馬鹿みたいだな。
夢のことなのにな。しかも夢の中の平沢唯と、ここに居る唯が同一人物なんて確証もないのにな」
唯「……」
律「ほら、あたしにばっか話させてると、だんだん鬱話になってくるだろ! 何か唯も話せよー」
唯「………」
律「わかってるって。そこに居るのは何となくわかるから、何も話さなくていいよ」
唯「……たいなか…さん?」
律「え?」
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 12:54:34.07 ID:iSdzGiGo0
唯「…………たいなかさん…であってる…かな?」
律「う……うん」
唯「……………私は、平沢唯」
律「そ、そうかそうか。すりゃーよかった」
唯「……ありがとう、……いつも来てくれて」
律「あ……あぁ、全然大丈夫! ほら、あたし、暇だし? 全然何もすることないし!
だから、24時間年中無休のりっちゃん隊員、いつでもどこでもあなたの要請があらば!!」
唯「………ふふっ」
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:00:25.78 ID:iSdzGiGo0
憂「田井中さーん、夕飯できましたよー」
律「あ、はーい、ありがとう!」
律「てな訳で、ちょっと憂ちゃんと夕飯食べてくるわ、今日はここでさよならだ」
唯「…………」
律「まだ来ていい…かな?」
唯「………うん」
律「サンキュ」
憂「お姉ちゃん喋ったんですか!」
律「あぁ、あれはあたしもちょいとばっかしビビったわ」
憂「それが本当なら……あぁ…今日は何て嬉しい日なんでしょう…」
律「憂ちゃん? ちょっと憂ちゃん? 目が明後日の方向を向いてますけれども?」
憂「は! すみません。この半年の間、一度も口をきいてくれなかったので」
律「そうなんだ……憂ちゃんも苦労してるんだな…」
憂「苦しくないと言えば嘘になります。けれど、田井中さんが来てくれてから、精神的に大分楽になりました」
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:06:58.64 ID:iSdzGiGo0
律「そうかい? あたしは憂ちゃんに逆に気を遣わせてないか、心配だったんだけどもさ」
憂「滅相もないです。いつもありがとうございます」
憂「お姉ちゃん、周囲のみんなに合わせるのが苦手で」
憂「何をするにも、ちょっとテンポが遅いんです」
憂「一つのことに熱中しだしたら、誰にも負けないんですけれど……興味がないことに対しては、てんで駄目と言いますか」
律(アスペルガー……ではないよな、多分)
憂「だから、高校ではいじめのターゲットになっちゃって……」
律「ほぉ。そうなんだ」
憂「私はその時まだ中学生ですから、詳しくはわからないんですけど。
高校入ってから、お姉ちゃん口数が減っていって。何かあったのって聞いても、
大丈夫だよ、うい、心配しないで、の一点張りで」
律(まぁ、家族にいじめられてることを知られたくはないからな。心理的に)
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:08:31.33 ID:iSdzGiGo0
律「ま、そんなことより、このカレーめっちゃ美味しい! 信じられないくらい!」
憂「有難う御座います! 料理には、多少ながら自信があるんです!」
律「いや、お世辞とかじゃなくて本当にうまいわ、これ。毎日食べられる唯の奴が羨ましいぜ!」
憂「田井中さん、もし宜しければ、これから食べにいらっしゃいますか?」
律「いやー、流石にそれは悪いから遠慮しとく。ウチの親に説明すんのも面倒だからさ」
ピンポーン
憂「あ、お客さんみたいです。ちょっと出てきますね」
律「はいはーい」
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:13:35.00 ID:iSdzGiGo0
律(あー本当に良い妹さんやなー)
律(唯には外見は似てるけど、内面はなんま似てない……のかな)
律(ま、あって二週間弱の人を似てる似てない判断出来る訳もないんだけどね)
律(……あれ、唯の外見って、どんなだっけか?)
律(まぁいいや。とにかく、いい妹さんってことで)
律(んで、唯も喋ってくれたことだし、今日は良い日だなー!)
律(え、でも私の最終目標って何なんだろ?)
憂「あ、梓ちゃん! どしたの?」
?「いや、ちょっと近く通ったから、ちょっと寄ってみたんだ」
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:16:28.53 ID:iSdzGiGo0
憂「ありがとう! 梓ちゃんもご飯食べてく!」
?「それはパス。憂って、お母さんみたいだな」
憂「へへへ、あながち間違ってもいないかも」
?「ところで憂、明日は学祭の準備これそうなの?
憂「ごめん梓ちゃん。明日は何とか行けると思う」
?「そっか。あと学祭まで1週間だから、なるたけ出ておいた方がいいかな、と思って」
憂「本当ごめんね、心配かけて」
?「うんうん、全然大丈夫。憂は憂で大変ってこと、わかってるから」
律(……え、この声……もしかして)
律(………………もしかすると、もしかしたりして)
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:19:53.24 ID:iSdzGiGo0
?「でさ、この先輩がさ、すっごく面白い人なんだ」
憂「へー、私も会ってみたいな……、あ、田井中さん」
律「おっす憂ちゃん………………あ、」
律(やっぱり……黒髪、ツインテール、桜高制服、気が強そうな目、低めの背、そして声。
何から何まで夢と同じだ。まさかこんなところで会えるとは…………)
律(てかこれマジで現実なのかな……現実とかけ離れすぎてる気がしないでもない)
律(……痛い、ほっぺ痛っ! やっぱし現実か)
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:22:12.09 ID:iSdzGiGo0
?「誰? この人」
憂「あぁ、この人は田井中律さん。お姉ちゃんのお友達だよ」
?「お姉ちゃんのお友達って……、憂のお姉さんは今、」
律「あー、まー、そこは何と言いますか、複雑な事情がありましてな。ねー、憂ちゃん?」
憂「? まぁ、えぇ、そうなんです」
?「………初めまして、憂の友人の中野梓です」
律(なかの……あずさ。あずさ……なかの…)
律「おぉ……やっぱし」
梓「? な、何がですか?」
律「いや、……何でもない。何でもないんだけど……」
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:26:30.47 ID:iSdzGiGo0
梓「……じゃ、憂。もう遅いから帰るね」
憂「わかった。気をつけてね!」
律「じゃーねー」
バタン
律「って、じゃーねー、じゃねぇっつうの!!」
憂「!? 田井中さん?」
律「ごめん、憂ちゃん! ちょっと用事思い出した! カレー御馳走さま!!」
律(と、勢いよく外に出たは良いものの………)
律(いない……まるで幻のように消えてやがる…)
律(トホホ………ま、いっか。桜高の制服だったし、1年の教室探せば居るだろ)
律(私………なにやってんだろ)
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:29:24.98 ID:iSdzGiGo0
―――
――
―
澪「きみをみてると、いつもハートどきどきー」
澪「ゆれる思いはマシュマロみたいにふーわふわ」
澪「いーつもがんーばるー」
澪「きーみのよこーがおー」
澪「…………」
澪「我ながらよく出来てるかも」
律「何書いてるんだー澪ー!」
澪「うわっ! ちょっと律! いきなり出てくんよ!」
律「へー何々、君を見てるといつもハードどきどき……」
澪「うわ、音読すんな!」
律「……うひょー、こりゃまた、背中痒くなって参りましたぜ」
?「澪ちゃんりっちゃん、こんにちは」
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 13:32:40.27 ID:iSdzGiGo0
律「お、紬! ちょっと見てくれよ、この歌詞!」
紬「え、何ですか?」
澪「わー律のばかやろー! 紬見ないでくれぇ……」
紬「ふむふむ…………これ誰書いたんですか?」
律「我らがアイドル、秋山澪たんさ!」
紬「……もう埋めてくれ…」
紬「すっごく良いじゃないですか!」
澪「!?」
律「なん……だと…」
紬「特に『とっておきのくまちゃん出したし、今夜は大丈夫かな』ってとこが、何かこう、胸がキュンとします」
律(違う意味でな)
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:04:29.50 ID:iSdzGiGo0
さるさん入りましたー
>>>112
澪ですね……スマソ
澪「そうだよね? あー、分かってくれる人はいるんだ……よかった…」
律「そこでどや顔しないで頂けませんかな」
紬「私、これに曲つけます! そして、もし私の曲を皆さんが気に入ってくれたら、学祭のステージでやりませんか?」
律・澪「え、本当に?」
律・澪「いいの?」 律(多分澪と私の言葉は、ニュアンスが全然違うと思うけどな)
紬「ええ、こんな良い歌詞だもの、みんなに発表しないと勿体ないわ!」
澪「有難う紬!!」
紬「いいえ、私、頑張る!」
律(……あー…予想だにしなかった事態だ…)
―
――
―――
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:05:20.48 ID:iSdzGiGo0
律「君を見てると、いつもハートどきどき」
澪「!?」
律「なーんちって。え、どした澪、顔色悪いぞ?」
澪「……律お前………私の秘密ノート…見た?」
律「ひみつのーと? 何それ?」
澪「とぼけんな! お前がそれ知ってるってことは、他のやつも見たのか?」
律「? え、いや、本当にわからないから! 本当に! てか他のやつもあんのかよお前!」
律(現実の澪も、恥ずかしい詞書いてたんだ……いや詞というか詩というかわからないけどさ…)
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:08:33.96 ID:iSdzGiGo0
律「てなわけで、中野梓さんを探しに行こうと思う」
澪「………あー、私はパス」
律「澪、お前最近冷たいぜ」
澪「……あのな律、これは友人としてのアドバイスだが。
夢と現実の区別くらいちゃんとつけといた方が良いぞ。
いくらお前が毎日がつまらないとか言っても、他人に迷惑かけるのはどうかと思うし。
それに、お前自分から毎日変えようとしてるか? いくら文句ばっか言ったって……」
律「うっさいよ! いいっていつもの説教は!」
澪「…………」
律「いーのいーの。ほっといてくれよ。これはただの遊びなんだから、ほっといてくださいまし」
澪「……遊びって言っても」
律「ほっといてくれって言ってんだろ!」
澪「!?」
律「………ごめん」
澪「…………こちらこそごめん。部活行ってくる」
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:13:21.54 ID:iSdzGiGo0
さるさん怖いから、見てる人居たらなるたけ支援頼んます
律(わかってるんだって。自分がおかしいことしてるってことくらい)
律(けど……何て言うんだろ…夢の中の私に近づきたいから?)
律(こういう風に動いて、何かが変わるのかな?)
律(……中野梓さんに会ってから、その後どうすんだ?)
律(唯の件もそうだ。だんだん喋るようになってきたと言っても、まだ顔も見せてくれない。けど……)
律(……今は、やれるとこまでやってみよう。どこまで行っても、死にはしないだろうから)
律「……お、案外簡単に見つかるもんだな…てか憂ちゃんにクラス聞いとけばもっと早かったかも知れない」
律「中野さーん!」
梓「!? あ、昨日の…何の用ですか」
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:15:54.44 ID:iSdzGiGo0
律「ちょっと話したいことがあるのですが……お時間よろしくて?」
梓「……大丈夫ですけど」
律「じゃ、立話も何だし、ちょっと談話室にでも行きましょっか」
梓「何ですか一体。手短にお願いします」
律(うわ……嫌そうな顔してる。当然か。私が逆の立場なら、絶対こんな奴についてかないよ)
律(しかも、何話せばいいのかわかんね……どうするりっちゃん…)
律「な、中野さんは、ギターとか弾くの?」
梓「ギターですか? ギターなら弾けますけど…」
律「お、本当に? なら、軽音部とかに興味ない?」
律(いや、何言ってんだ私……脳で考えて喋ってないヨ…口で考えて口で喋ってる感じだヨ…)
梓「軽音部ですか……すみません。私、もう外バン組んでるので」
律「そ、そうなんだ、そりゃそうだよな-、中野さんギター上手いって有名だもんねー」
梓「!?」
律「え、何かあたし、変なこと言った?」
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:20:16.84 ID:iSdzGiGo0
梓「桜高の人には誰も、私が外バン組んでることは言ってないはずなのですが……田井中さん…でしたっけ?
ライブハウスとかよく来る人なんですか?」
律「う、う、うん! まぁ、毎日は行かなくても3日に一回は行くね!」
律(駄目駄目だ! 何言ってんだ! 怪しすぎだろ! 色々終わってるよ私!)
梓「……まぁとにかく、私は軽音部には関われません。
この学校に軽音部はなかったはずですから、今から立ちあげるんだと思いますが、
頑張って下さいね。それでは、失礼します」
律「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って! あとちょっとだけ待って!」
梓「もう! 何ですか! しつこいですよ!!」
律「中野さんのギターの名前はムスタング!」
梓「!」
律「中野さんはジャズ研に入ろうと思ったけど、見学の時しっくりこなくてやめた!」
梓「………」
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:23:26.48 ID:/cnWyfn+0
高速支援
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:24:13.58 ID:aWl2noDA0
追尾支援
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:25:46.01 ID:ep0KTjjV0
しえん
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:26:27.92 ID:iSdzGiGo0
律「中野さんは、両親の影響でギター始めた! 小中高と弾いてきてる!」
梓「……」
律「中野さんは、」
梓「もういいです」
律「あたしは、中野さんを知ってるんだ!」
梓「私は知りませんし、あなたの関わりたくもありません! 失礼します!!」
律「ちょっと待って! …………はぁ…」
律「………疲れた…」
律「こんな感じだったんだけどさ」
唯「……」
律「やっぱし無理があるよな……夢で見たから、あなたのことを知ってますよー、なんて。言えないよなー」
唯「………」
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:28:07.26 ID:iSdzGiGo0
律「まぁ、唯には言ったけどね。何か唯だと信じてくれそうな気がしたんで」
唯「………うん」
律「あー、もう澪も冷たいしよ。夢の中だったら、もっと優しいんだぜ? 澪のやつ。
そんなに文芸部が良いのかよ。な? あたしが嫌いなんだったら、だったら一緒に学校行ってくれなくても良いんだぜ、ってな」
唯「………」
律「……今のは言い過ぎた」
律「けど、中野さんも澪も、勿論唯ともあと一人の子とも、夢の中ならすっごい仲良いんだぜ!」
律「まぁ、中野さんとは限りなく初対面に近いから、仕方ないんだけどさ……」
律「あーあ。ゆめのなかーなら、ふたりのきょーりー ちぢーめらーれるのになー」
唯「………ああ かーみさまおねーがい ふたりだーけーの どりーむーたいむ くだーさいー」
律「そうそう。お気に入りのうさちゃん抱いて、今夜もお休みしたくなる……って、え?」
唯「……」
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:31:43.34 ID:iSdzGiGo0
律「なんで知ってるの、それ?」
唯「…………ふふ」
唯「……わたしも、りっちゃんと、おんなじ夢みるんだ」
唯「………夢の中のわたしは、もっとかがやいてて」
唯「…………まいにち学校に行くのが楽しみで」
唯「……りっちゃんや、みおちゃんや、むぎちゃんや、あずにゃんと一緒に、ケーキ食べたり、おしゃべりしたり、たまに練習したりして」
唯「………すっごく、すっごく楽しいんだ」
唯「……………すっごく、すっごく」
唯「……すっごく、楽しいんだよ、っえぐ、……うわあああああああああん!!!」
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:34:37.14 ID:iSdzGiGo0
唯は泣いていた。
すすり泣きなんてものではない。わんわんと、声をあげて泣いていた。
唯は泣いた。
唯は、ひたすら泣いた。
唯は、ただひたすらに泣いた。
ドアを挟んでも、彼女の泣き声は、しっかりと私の耳に響く。
そして、それは私の涙腺さえも刺激する。
唯「…………どうして、こんなことになっちゃったんだろうね」
律「……わたしたち、もしかしたら、去年の4月に、会えたかも知れないんだよな」
唯「…………何で、会えなかったんだろ……何で………
……苦しいよ……苦しいよ、りっちゃん……っえぐ……」
律「……唯」
唯「…………っ……」
律「………」
唯「……」
律「……今日は帰るわ。また来る」
唯「…………」
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:36:35.21 ID:iSdzGiGo0
律(…………)
律(……わけわからん)
律(……自分が何をすべきなのかも)
律(…………状況がどうなってるのかも)
律(………唯は私と同じ夢を見てるけど、澪は見てない。おそらく中野さんも)
律(そして、もう一人の彼女……名前なんつったっけか……は、まだ会えてさえいない)
律(……どうしろっつうんだよ、誰か教えてくれよ)
―――
――
―
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:37:30.13 ID:WIjammsq0
律「仏頂面の部長!」
澪「寒っ」
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:38:40.61 ID:iSdzGiGo0
澪「おはよう、律!」
律「……おっす」
澪「どうした律、今日は元気ないな」
律「まーな……ちょい色々あってな」
澪「どうしたんだ。私でよければ、話を聞くぞ」
律「み……み…みおちゃーん!」
澪「な、なんだよやめろ!」
律「いてててて……いや、澪がいつもよりあまりにも優しいから、つい」
澪「お前……私はいつも通りだぞ」
律「……うーん、そうなのかな……そう言われてみればそんな気もする」
梓「律先輩、澪先輩、おはようございます!」
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:43:07.30 ID:iSdzGiGo0
澪「おぉ梓、おはよう」
律「………梓もいつにも増して明るく、いい子に見える」
梓「何言ってるんですか律先輩、私はいつも通りじゃないですか」
律「……いつも通りって何だ、いつも通りって」
律「…………ごめん、最近ちょっと悩み事があって」
澪・梓「どうしたんだ」「どうしたんですか?」
―
――
―――
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:44:46.21 ID:iSdzGiGo0
律(……ん…朝か…)
律(……最近夢の中で、現実での悩みを引きずってる気がするな…)
律(それにしても、夢の中の澪と中野さんは優しいよなー)
律(羨ましいなー、夢の中の私)
律(ん、でも、夢の中の私は、夢を見ている私であって……)
律(だとしたら、ずっと夢を見ていればいいんじゃないか?)
律(そしたら、現実を見なくて済む、いや、夢が現実になる)
律(………なんちって。いくらなんでもそりゃないっしょ)
律(………学校行くか)
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:45:53.52 ID:97T6Cusn0
律!早まるな!
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:47:07.17 ID:aWl2noDA0
これはタモリがモブ出演したら不幸な結末になる
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:47:42.21 ID:iSdzGiGo0
律「おはよー澪」
澪「あぁ、律、おはよ」
律「なぁ澪、もしあたしが居なくなったら、どうする?」
澪「ん? ……なんだいきなり。また何か変なこと考えてるのか」
律「いやいやー、仮の話仮の話」
澪「そうだな………、悲しいだろうな」
律「そんで?」
澪「……すっごい悲しいと思う」
律「………それから?」
澪「うん、悲しいんじゃなかな」
律「……そんだけ?」
澪「そんだけって何だよ。お前が死んだら悲しいよ」
律「…………ま、そうだよな! 悲しいっすよねー、悲しいっちゃ悲しいっすよねー」
澪「? 変な奴……」
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:53:32.63 ID:iSdzGiGo0
律(そして今日も授業が終わった……)
律(……さて、帰るか…)
律(……あー、学祭まであと3日か…全然関われてないな…)
律(…………学祭なんてなくなっちまえばいいのに…)
律(……全てが面倒臭いな)
律(あ、そういや)
律(元々あった軽音部の部室って、今どうなってるんだろ)
律(うわー、懐かしいな、音楽室。ここで4月一杯は一人で部員待ってたなー」
律(誰もこなかったけれどもさ)
律(まぁ、それは良い。で、この中って、どっか部活使ってるのかな…)
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 14:57:54.42 ID:iSdzGiGo0
ギィ
律(誰も居ない。学祭期間中なのに)
律(……何か誰も居ない教室って、不気味だな)
律(黒板に、隅に寄せられた机……他は何もない)
律(…………去年の4月と何も変わってない)
律(お、この部屋、もうひとつ部屋があるんだ)
律(なになに……音楽準備室、か)
律(……何か気になったら止められない性格は、損ですよねー)
律(まぁ、何もないだろうけど、お約束ということで、開けちゃいますか)
律(………うわ、埃臭っ)
律(……………レコード、楽器……うわー、色々詰まってるなー)
律(足の踏み場もねぇや)
律(ん………奥の方に何か、ある。……何これ?)
律(え……、え? てか人? しゃがんでるけど、人……だよな?)
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:02:53.81 ID:iSdzGiGo0
?「……!?」
律「!!」
?「り……っちゃん?」
律「え?」
?「りっちゃん……じゃない。どうしてここに。そうだ、あなたも気づいて、」
律「いや、別にこれと言った理由はないといいますか、てかあたしの名前を御存知で」
?「………そっか。こっちのりっちゃんは、私のこと知らないんだもんね」
律「……夢?」
?「とにかく、準備室の外に出ましょう」
律「…………あ、あなたは」
?「あ、初めまして、というのも変だけど……、私は紬。琴吹紬よ」
律「見たことある。てか、夢の中で会ったことがある。あなたが、琴吹紬さん、ですか」
律(……ほぉ、改めてみると、すごい可愛い……いや、高貴だ…
ほっぺたとか微妙に触りたい気分…いや冗談)
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:08:40.70 ID:iSdzGiGo0
律「まぁ色々聞きたいことは山ほどあるんだけど、まずどうしてこの部屋の中に居たの?」
紬「……居たかったから、かな」
律「そうかー、いたかったからかー」
紬「そうなのー、いたかったからなのよー」
律「はははは、って展開にはなりませんよね、琴吹さん」
紬「……ごめんなさい」
律「で、本当のところは」
紬「…………………」
律(お、ものっそい目がうるうるしてる。え、私女の子泣かしてる? でも質問してるだけだし……
なんだこの罪悪感……)
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:13:31.12 ID:iSdzGiGo0
紬「……信じてくれないとおもうけど…」
律「もう信じるも信じないもないから大丈夫、最近」
紬「私は、この世界じゃないところに住んでるの」
律「…………はい?」
紬「音楽準備室の隅の穴から抜けた先には、もう一つの世界があるの」
律「………………突っ込んだら負け?」
紬「りっちゃん、これは事実なの。事実なのよ。私も最初は信じられなかったけど」
律「ちょっと待ってストップ!!」
紬「!?」
律「………何か頭おかしくなりそうなんだけど。何? 異世界? 何それ、おいしいの?
もう何か最近訳分かんないんだよね。同じ夢ばっかみたり、夢と現実が微妙にリンクするけど完全にリンクしてなかったり。夢のせいで現実がカスみたいに見えたり
あげくの果てには、誰かと共通の夢を見てたりさ」
紬「………」
律「もう沢山。もう沢山だよ。もうそういうのはイイ。退屈な世界も悪くない。退屈だけど、誰も傷つかない。
ただ劣等感と無能感に堪えてれば、それで毎日が過ぎてく。けど、ここ1・2週間、何かを知る度にあたしは傷ついていく」
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:18:23.23 ID:JJhM/hhBP
なんなんだこの気持ち
すげえ気になる
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:19:21.69 ID:iSdzGiGo0
律「………」
結論から言うと、琴吹さんの言うことは
準備室の隅っこにある人が一人やっと通れる程度の穴を抜けた先には、左右対称のもう一つの準備室があった。
そして、その準備室を抜けた先には……
紬「今部屋を出ちゃだめ」
律「おぅ!」
琴吹さんに思いっきり体を掴まれる。正直、結構痛い。
紬「みんなが来るわ」
律「みんな?」
紬「静かにして」
律「…………」
紬「……………」
律「…………………」
律「………………! え?」
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:22:02.35 ID:iSdzGiGo0
>>160 ごめん投稿ミス
紬「……………」
律「なんか、もう、疲れた、かな」
紬「……りっちゃん待って。あと少しだけ耐えて」
紬「百聞は一見に如かずだと思う。ちょっとだけ行きましょう、あっちの世界に」
律「………」
結論から言うと、琴吹さんの言うことは
準備室の隅っこにある人が一人やっと通れる程度の穴を抜けた先には、左右対称のもう一つの準備室があった。
そして、その準備室を抜けた先には……
紬「今部屋を出ちゃだめ」
律「おぅ!」
琴吹さんに思いっきり体を掴まれる。正直、結構痛い。
紬「みんなが来るわ」
律「みんな?」
紬「静かにして」
律「…………」
紬「……………」
律「…………………」
律「………………! え?」
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:25:03.22 ID:iSdzGiGo0
「みおちゃーん、りっちゃーん、あずにゃーん」
「お、唯。何だよ今日も遅いじゃん」
「はぁ……はぁ…………やっと追試が終わりまして…今日からあたしは自由です!!」
「おぉ、良かったな!これでやっと学祭に向けて練習できるな!」
「おめでとうございます!」
「うっしゃあ、ボーカル兼ギター復活だ! あ、でもまだ紬は来てないみたいだな」
扉の向こうから、声がする。
聞いたことのある、声がする。
紬「驚きたい気持ちはわかるけど、お願い、今は声出さないで」
琴吹さんに、口さえも塞がれる。いや、そこまでしなくても……
そこまでされないと、私は大声で叫びだしていたに違いない。
澪の声。唯の声。中野さんの声。そこまではわかる。
何故接点のない3人がこんなに親しそうに戯れているのかとか、
唯が何故学校に来ているのかとか、
澪が練習できるとか言ってるのは、文芸部のことなのかどうなのかとか、
一番重要なのは、壁の向こう側から、ひとつ、耳慣れない声がすること。
嫌な予感がした。体中から汗が噴き出る。
嫌な予感がした。嫌な予感がした。
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:27:53.57 ID:iSdzGiGo0
わかっていた。
そこに居るのは、私だ。
田井中律が、そこに居る。
律「……もう聞きたくない」
紬「…………そう」
律「…………苦しい」
本当に苦しかった。
胸が前後からきりきりと万力でしめられていくような感覚。
紬「……りっちゃんも音楽準備室に来たってことは、気付いてきた訳じゃないの?」
律「………気づくって、何にだよ…」
紬「……………いや、良いわ」
「そこに誰かいるのか?」
紬「…大変、りっちゃんが気付いちゃったみたい! りっちゃん、あっちに戻って早く!」
律「戻るって、どうやって……うぉ」
琴吹さんに尻を蹴られ、私は隅にある穴の方向へ飛ばされる。
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:30:24.81 ID:iSdzGiGo0
「わっ!」
「うわ、びっくりした!」
「わーい、紬ちゃんだ!」
「ごめんなさい。みんなを驚かせようと思ったんだけど、出るタイミングを失っちゃって」
「あー、でも十分効果的だと思うぜ。なー、澪……って、おい澪?」
「……………」
「駄目だ、気絶してるみたいだ」
「澪せんぱーい、起きてくださーい!」
律「…………………」
これ以上聞きたくはなかった。
一刻も早く穴を抜け、元の誰も居ない音楽室へと急ぐ。
息が切れている。動悸がする。吐き気もする。
何だ、これは。
何なんだ、これは。
世界が、もうひとつ存在する。
澪が、唯が、中野さんが、もう一人ずつそこには存在する。
いや、まだ確証はない。ただ、声は同じだったというだけだ。確証はないんだ。
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:33:28.24 ID:iSdzGiGo0
だがしかし。
突き飛ばされる刹那、視界の隅に移ったのは………
鏡と写真以外では見たことのない、あの顔。自分の、顔だった。
律「うぉ……えええええええええ………」
猛烈な吐き気。耐えきれずに、吐いてしまう。
どうなってるんだ。これは、本当にどうなってるんだ。
知らない世界があって、私がもう一人いるって。
信じられない。誰でも信じられないに違いない。一番信じていないのは、当の私だ。
律「どうしよう……これから、どうすればいいんだろう」
頭の中がぐるぐると回りだす。ぐるぐるぐるぐるぐるぐると。
律「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……………どうすればいいんだよ…」
夢。唯。もう一人の自分。澪。冷たい澪。同じ夢。
穴。準備室。リンク。声。学祭。軽音部。ふわふわ時間。
律「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:40:19.19 ID:iSdzGiGo0
―――
――
―
律「その悩みっていうのがさー」
澪・梓「うん」「はい」
律「最近、同じ夢ばっかり見るんだよね」
梓「同じ夢、っと言いますと?」
律「同じ夢は同じ夢さ。それもひっどい夢でさ。
私はすっごい淡泊な生活を送ってるの」
澪「淡泊? 律が淡泊な生活? 信じられないな」
律「一番信じられないのは私!
でも、夢の中の私は、軽音部にも、何部にも入ってなくて、
それで澪も冷たくて、梓とは知りあいでさえないんだ」
梓「うわ……何か嫌な夢ですね」
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:47:25.67 ID:iSdzGiGo0
律「モンスターに追いかけられるとか、ナイフを突きつけられるとか、
そういうアメリカホラー映画系怖さじゃないんだけど、じわじわくる怖さというか……
梓はおろか、唯や紬もいないからな……」
澪「心配ごとでもあるのか? 意識的にせよ無意識的にせよ、心になにか抱えてる時は、
それが夢に反映されるって言うぞ」
律「それが、これと言って思い当たらないのが悩みって言いたいくらいで。
もうそろそろ唯の追試も終わるだろ? 学祭に向けても、比較的順風満帆だし」
梓「おかしいこともあるもんですね」
律「だな。まーたかが夢だし、気にするのも野暮だけど、流石に毎日はきついんだよな……」
―――
――
―
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:54:12.82 ID:iSdzGiGo0
次の日。
学祭の2日前。
私は学校を休んだ。
滅多に学校を休まない私が調子が悪いというので、両親と弟は過剰に気づかってくれた。
その気遣いが、今は嬉しい。熱もなく、風邪をひいている訳でもないのだが、兎に角誰とも会いたくなかった。
そして、頭の中を整理したかった。
あの後、よたよたと保健室へ行き、3時間程寝てから家へ帰った。唯に会いにも行かなかった。
その時は、ただひたすら寝たかった。夢を見たくもなかった。何も考えず、頭を空にしたかった(結果として夢を見てしまうことにはなったが)。
一つの仮説を立てた。
私の夢は、あちらの世界の自分が見ている世界なのではないだろうか。
私が寝ている時に、断片的にあちらの世界の自分が見ている日常、
例えばどうでもいい会話とか、軽音部でドラム叩いてるとことか、唯と澪からかってるとことか、等々が夢として自分の脳裏に入り込む。
その仮説が正しいとすれば。
いや、そんな非現実的な仮説を認めたくはなかったが、やむを得ない。
最近の訳分からない事柄に説明をつけるには、非現実的な仮説で対応するしかないのだ。
律(……これって、私が狂ってきてるってことなのかな? 私には周囲の世界が狂って見えるっていうアレ……)
狂人にとっては、周囲の世界は狂って見えているらしい。
狂人は、自分が正しいと思い込もうとする。世界が狂っていると思い込む。
律(……だとしても)
だとしても、私は、自分が与えられている情報を信じるしかないのだ。
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 15:59:13.26 ID:iSdzGiGo0
今の「同じ夢」を見始めたのは、つい3週間前くらいからだ。
最初は偶然かと思ったが、今まで途切れることなく、その夢を見続けている。
律(……その周辺にあったことはと言えば…)
律(………いや、特に何もないな。)
律(でも…その夢が微妙にこっちの世界にリンクしてるってことに気付き始めたのは…)
律(唯に会おう、って私が澪に提案して、実際に唯に会ってからだ…)
律(そこから、何だか自分にも歯止めが利かなくなって…)
知らなくても良いこと、というものは確実に存在する。
それを身をもって知らされた。
律「んで、こういう風にあたしは考えてるんだけどさ、唯」
唯「………」
律「ま、あほらしいって笑ってくれても良いぜ。自分でもあほらしいと思うし」
唯「…………」
律「でもあたしの仮説はさておき、あたしが経験してきたことは全て本当。
もう一人の自分がそこに居たってのも本当。あ、そこにお前も居たぜ」
唯「………………」
律「すまん、誰かに話してないと、やってられなくてさ。こんな馬鹿らしいこと」
唯「………ねぇ、りっちゃん」
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:04:41.13 ID:iSdzGiGo0
律「ん、何だ?」
唯「……なんで…なんで、紬ちゃんは居なかったんだろう?」
律「なんでって……そりゃ、琴吹さんは穴を通ってこっちの世界に来てたからだろ?」
唯「………ごめん。私が言いたいのは、………紬ちゃんは「どっちの世界の」紬ちゃんかってことは、わからないってことだよ」
そういえば。
世界が二つあるならば、人物も二人居るはずだ。
こっちの世界の琴吹さんと、あっちの世界の琴吹さん。
律「……まぁ、そりゃまだわからないわな」
唯「………」
律「でも、いきなり何でそんなことを言い出すんだ?」
唯「………」
律「………でも、それは問題じゃない気がするぞ。
あたしが会った紬があっちの世界の紬だったとすれば、こっちの世界の紬とあたしはまだ知りあって居ない。
あたしがあった紬がこっちの世界の紬だったとしたら、あっちの世界の紬は、多分まだ音楽室に来ていなかった
そういうことじゃないのか?」
唯「……………これ見て」
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:12:37.42 ID:iSdzGiGo0
ドアの隙間から差し出される、A4用紙。
文字と写真が印刷されている。YAHOOとかgoogleとかで普通に見れる、ニュースサイトのレイアウト。
これを読めということだろうか。
律「なになに…………」
女子高生殺害 他殺の可能性高し
○月×日( )、桜ケ丘高校グラウンド脇にて、生徒である琴吹紬さん(17)が遺体で発見された。
死因は絞殺で、首にひものようなもので絞められた跡が見られた。
○○警察は、詳しい死因と犯人の行方を調査している。
その記事の横には、昨日目にした琴吹さんの写真。
妙に神妙な彼女の面持ちが、昨日の彼女の印象と一致する。
しかし。夢の中の彼女は、もっと柔らかい印象だった………。
律「ってえ? うそ、ちょ、何、何コレ? 何なの、ちょっと唯!」
唯「………………」
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:13:29.73 ID:97T6Cusn0
まさか…
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:14:58.65 ID:otCJ7I/50
紬の野郎…
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:17:50.39 ID:iSdzGiGo0
○月×日は、昨日。
死亡時刻は記事に書かれて居ないものの、少なくとも、私が会っていた時に、琴吹さんは死亡していたことになる。
律「………………もうやめてよ、こういうの」
唯「……りっちゃん、落ち着いて」
律「もう嫌だ。もう嫌なんだって。もうやめよう。もう普通の生活に戻してよ。気持ち悪いよ。もうやめてやめてやめて」
唯「りっちゃん!!」
律「!?」
唯の鋭い声で、我に帰る。
唯「……今は、落ち着こうよ。ね、りっちゃん。
疲れてるのは分かるよ。りっちゃん今まで頑張ってきたもんね。
けど、今はちょっと我慢して」
律「…………ごめん」
唯「……いや、正直あたしも、いっぱい話すの慣れてなくて、疲れるんだけどね。ははは」
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:19:48.70 ID:aWl2noDA0
まさかやつが…
190 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:20:13.03 ID:k47sgNG+0
犯人はだれなん
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:20:56.93 ID:UTLSAL/N0
みおの野郎!!!!
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:25:38.78 ID:iSdzGiGo0
唯「この記事と、りっちゃんの紬ちゃんに会ったっていう話は、一見矛盾してて変だけど……だけど、」
律「………」
唯「ふたつの世界が存在してる、っていう紬ちゃんの話が仮に正しければ、りっちゃんの話も紬ちゃんが死んでるっていうこの記事も、何の矛盾もなくなるよね」
律「……つまり、」
唯「『どっちかの世界の紬ちゃんは死んでるけど、どっちかの世界の紬ちゃんは生きてる』ってこと。意味わかる?」
律「………なるほど。って、全然現実感も何もないんだけど、取り敢えず理論の上では合ってる、気もする。
あたしも澪も唯も中野さんも、あっちとこっちの世界に一人ずつ居るんだから、仮にこっちの世界で一人死んでも、あっちの世界から一人来れば……」
唯「そういうこと………………つかれちゃった」
律「あー、お疲れ唯。唯がいきなり話すから、多少びっくりしちゃったよ」
唯「…………りっちゃん」
律「なんだ、まだ何かわかるのか、探偵ゆい」
唯「……明日、音楽準備室に行こう」
律「……………え?」
197 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:28:02.03 ID:k47sgNG+0
鈴木か
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:33:09.49 ID:iSdzGiGo0
―――
――
―
律「大分イイ感じになってきた! この分だと学祭まで遊んでもいいくらいだぜ!」
澪「唯、お前追試勉強であんま練習できなかったのに、腕が全然落ちてないな」
唯「へへー、実は家で勉強しないで練習してたんだ」
梓「って先輩! 試験の方は大丈夫なんですか?」
唯「わかんない、けど何か、ギー太弾きたくてたまらなくなって」
律「……恐るべし天才肌、ギター中毒」
紬「私もスウェーデンまでピアノ持って行って、弾いてたよ、唯ちゃん」
律「……もう何も言うまい」
澪「でも何はともあれ、あとはさわ子先生の衣装が完成すれば……完成…しなければいいのに…」
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:34:57.58 ID:iSdzGiGo0
唯「へへー、衣装楽しみだねー」
律「てか、いよいよ明後日なのに、まだ完成してなくて大丈夫なのか?」
梓「あの人なら何とかするでしょう……だって、さわ子先生ですもの…」
唯「さわちゃんなら、きっと何とかしてくれるよ! だってさわちゃんだもん」
律「まぁさわちゃんだしな!」
澪「……………そうだな…」
律「ちょっと澪ちゃん! 暗くならんといて! さ、次いくぞ、ふわふわ時間やろうぜ!!」
唯・梓・紬「おー!!」
―――
――
―
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:43:08.24 ID:iSdzGiGo0
律(あっちの世界も学祭が近いみたいだな……)
律(時間までリンクしてるのか? まぁ今まで注意払ってなかったからわからないけど)
律(私も学祭ライブやりたいな……)
律(てか、あっちの世界に移住したい……もうこんな訳わかんないのに構ってたくない…)
律(いや……でも、行かなくちゃな。あとちょっと、頑張りますか)
律「え、今日学校休み?」
澪「知らなかったのか律? ほら、隣のクラスの琴吹さん、殺されたって言うだろ。だから、今日は学校休みだ」
律「あたしは昨日学校休んだから……いや、でもメールの1通くれたっていいじゃない」
澪「ごめん、つい知ってると思ってさ」
律(昨日一緒に学校行ってないもん、私が学校休んでるの知ってるだろ、こいつ)
律「じゃ、帰るわ。まぁどっちにしてもラッキーだしな」
澪「なぁ律」
律「んだよ」
澪「この頃お前、やっぱりおかしいよ」
203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:51:09.72 ID:iSdzGiGo0
律「ん、何が?」
澪「夢の話した時辺りから、突飛なこと言いだしたり、何かいつもイラついてたり……怖い。
目つきがさらに悪くなってるしさ。何か悩みあるなら、共有しようよ」
律「……どの口がそんなこと言ってんだ」
澪「!?」
律「………今まで全然親身でもなく、ただ一人で学校行きたくないから私をお伴にしてただけの癖に。
全然私に構ってもくれないしさ。変わったのはお前の方だろ、中学の頃からさ。
文芸部文芸部言ってさ。挙句の果てに、昨日はメールもくれないし。一体何考えてるんだ、お前?」
澪「…………ごめん」
律(……何か言い返せよ、やりづらいから…)
律「……帰るから」
澪「…………」
律「ゆいー! 来たぞ! お前学校行きたいんだろ!」
唯「…………りっちゃん…ちょっと待って」
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:52:35.87 ID:iSdzGiGo0
ドアが音を立てて開く。
埃が舞う。形容の出来ない、思わず鼻をつまみ顔をしかめてしまう程の臭いが、鼻をつく。
そして、暗闇から、出てきたのは、紛れもなく、平沢唯だった。
白い肌はさらに白くなり、髪は腰のあたりまで伸びている。清潔感のかけらもない。
前髪が伸びているので、目を見ることはできない。けれど、その口元と輪郭から、私にはわかった。
ピンク色のパジャマの上下を着た、とても細身の少女。
彼女は、平沢唯だと。
唯「……お待たせ」
律「おぉ………久しぶり」
唯「………りっちゃんに会うの、初めてなんだけどね」
律「まぁ何と言うか……私もあんまし久しぶりって感じではないな」
唯「……いっつも夢で会ってるからね」
律「ですよねー!」
唯・律「はははは!!」
律「でも、流石にその格好じゃ、外に出ちゃいけないわ。
ちょっと憂ちゃんにも頼んで、身づくろいしてから行こう」
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 16:59:18.58 ID:iSdzGiGo0
憂ちゃんは、はしゃぎまわりながら唯の身だしなみを整えるのを手伝ってくれた。
一緒に風呂場に入って体洗ったり、自分の服の中からおしゃれな服をチョイスしてくれたり……
てか、学校行くんだから、服チョイスしてもらってもあんまし意味ないよ!
律「うっし、あとは学校行く途中に美容院に行けば、一丁上がりってところかな」
唯「……りっちゃん、実はまだあんま外に出る心の準備が、……そこまで出来てなかったりして」
そういえば、半年引きこもって口の聞いてなかったのに、ここ2週間でいきなり外に出るのは、
唯にとっても大変だろう。
それほどまでに唯を駆り立てるものって、一体何なんだろう?
美容室に行った後(夢の中の唯と全く同じ髪型になった)、私たちは学校へ向かった。
唯は、とてもゆっくりと歩いた。私はそれに歩調を合わせる。
一歩一歩踏みしめるように歩き、桜高に着いたのは、午後1時をちょっと過ぎたくらいの時間。
唯「……誰も居ないね」
律「…………そりゃ今日学校休みだからな」
唯「でも、パトカーが居るね」
律「……見つからないように入れってことか」
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 17:08:36.97 ID:iSdzGiGo0
しかし、案外忍び込むのは簡単だった。
琴吹さんの遺体はグラウンドで見つかったらしく、校舎の中まで警察は入ってきて居なかったのだ。
それは詰めが甘いとしか言えない、と私たちは彼らに詰め寄りたくなる気分になるのだが……。
私たちは今、音楽室の中の、音楽準備室に居る。
一昨日と、何も変わっていない。
私の吐瀉物までそこにあった……
唯「なんかゲロ臭いね」
律「だって、そこにゲロあるもん、しゃーないじゃん」
唯「まー、そうなんだけど」
唯は肩で息をしている。音楽室に至るまでの階段を昇るのが苦しかったらしい。
人が沢山居たら来れたかさえもわからない、と言う。
唯「……人自体が、怖いんだ。憂とりっちゃんとかは大丈夫なんだけど」
律「そういや、お前の不登校に至る経緯とか……聞いてなかったな…」
唯「……………ごめん、きいてほしくないんだ」
律「わかってるって! で、何でここに来たかったんだ、唯?」
唯「それは……」
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/08/30(月) 17:09:38.69 ID:GhHyyMri0
…ゴクリ
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