関連:
打ち止め「あなたのYシャツ貸して欲しいな!ってミサカはミサカは…」一方「あァ?」 #1
打ち止め「あなたのYシャツ貸して欲しいな!ってミサカはミサカは…」一方「あァ?」 #2
347 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 00:26:59.83 ID:Y/BSz0Io
黒子が美琴病を発病することなく普通に頼れる良いお姉さんしてくれるような話とかみてみたい
359 :
>>1 あるいはシャツの人 :2010/12/12(日) 20:24:16.39 ID:xgz85eY0
昨日は更新ができず申し訳ありませんでした。
母に都会のイルミネーションが見たいと言われて連れて行ったのはいいのですが……
周りはカップルだらけ、僕の隣にいる女の子は齢50歳、渋滞に巻き込まれSSは書けず、夕食はもうすぐ誕生日だから奢れと言われ、
――――散々な一日でした。
そんなこんなでクリスマスネタが未だ書けていません。本当に申し訳ありません。
今日も諸事情によりあまり書く時間が取れなかったので取り敢えず金曜に書いたネタを投下します。
360 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:25:32.44 ID:xgz85eY0
とある休日の午後。
打ち止めは、葛藤していた。
休みだからと昼まで寝過ごした打ち止めと一方通行は
ブランチというには遅すぎる食事を摂ったあと話の成り行きでなんとなく散歩に出かけることになった。
麗らかな午後の陽射しを浴びながら近くの公園までやって来た二人は
しかし思いがけないことにそこで倒れ伏している女性を発見する。
飲みかけの缶コーヒーを押し付けながら打ち止めに救急車を手配するよう指示した一方通行は、
女性の異常箇所を能力を使って調べていった。
最初は心配そうにそれを眺めていた打ち止めだが、
直に救急隊員が駆け付けてくると今度は別のことが気になりだしてしまった。
―――このコーヒー、飲んでいいのかな?
あの人の飲みかけコーヒー。
今これを飲めば間接キッスの完成だ。あわよくば唾液だって………
いやいやいや、そこまで疚しい気持ちでなくトキメキ乙女心的な意味で、ねぇ?
あの人は今救急隊員さんに自分がどのような処置をしたか教えている。
飲むなら今しかチャンスはない。
でももし途中で戻ってきたら………
「うぅ~…どうしよう、ってミサカはミサカは~」
そして、冒頭に戻る。
361 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:26:03.83 ID:xgz85eY0
「や、やっぱり飲んじゃおうかな……いいよね?ウン、喉乾いちゃったから仕方ないよウン。
ってミサカはミサカは自分と周囲を納得させる言い訳を披露してみたり――――」
「みぃ~ちゃった☆」
「ふにゃああああああ!!!!!!!!!」
ようやく決心し缶コーヒーへと口をつけようとした打ち止めだが、
急に後ろから耳元へふっ、と息を吹きかけられたことで缶コーヒーを落とし零してしまう。
「なななななな何するの番外個体!!ってミサカはミサカはっ……」
「やだなー、ミサカ達の司令塔が実は男の飲み物に涎入れるような変態さんだったなんて」
「よ、涎入れようとなんかしてないもん!!あの人の唾液が入ってればいいなぁ、なんて思ってみてはしたけど!
ってミサカはミサカは断固抗議してみる!!」
近づいてきたのはどうやら病院での『調整』帰りらしい番外個体だった。
ちくしょうアイツの所為でコーヒー零しちまったじゃねえか。
「くっそぉぉおおおおお!!ってミサカはミサカは怒り心頭でアホ毛をバチバチさせてみたり~~~!!!!」
「お、やる気?能力ならミサカの方が上なんだけどね!!」
いくらレベルが上だろうがボディラインが上等だろうが、女には身体を張って拮抗しなくちゃならないときがあるのだ。
だからこそ。女なら、
「「いざ尋常に、勝bっ………」」
「風紀委員ですの!!これ以上公共の場で暴れると言うのでしたらこちらの権限でひっ捕らえ……あら?」
オイ何だ人の勝負を邪魔すん――――アレ?
「いつぞやの、お姉さま方?」
362 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:26:31.35 ID:xgz85eY0
「まあまあ小さなお姉様に大きなお姉様ではございませんか、お久しぶりですわね」
「てゆーかミサカ達あなたのお姉様じゃないんだけど」
「あら御免遊ばせ。私お姉様方のお名前を存じ上げませんもので……」
ああ……どんどん人も集まってくるコーヒー零しちゃったし。
あ。あの人もこっち戻ってきた。
はあ……間接ちゅー……
「はぁ……ってミサカはミサカはリストラされたサラリーマンの様な溜息を……はぁ……」
「もし、小さなお姉様は何をその様に落ち込んでらっしゃるのですの?」
「ああ。実はかくかくしかじかでね」
「まあ。かくかくしかじかですの」
ちくしょう、このアマ共楽しそうにしやがって。――――SSは便利ですね。
「私も昔は良くお姉様相手にやったものですわ♪」
ナチュラルに変態発言か。
もっと恥じらい持ってやるべきが乙女だろう、ミサカのように。
「そのような事でしたら、この白井黒子がワンランク上の『ドキ☆愛しのあの方の夜の姿!?映像入手法』を伝授して差し上げますわ」
その言葉にピクリ、と耳を震わせた打ち止めと番外個体。
彼女達はそしてゆっくりと顔を見合わせ―――――――――――――
「「お、お師匠様ァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」」
此処に、変態淑女とその見習いによる一つの師弟関係が完成した。
363 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:27:01.70 ID:xgz85eY0
キャッキャウフフな乙女オーラ全開のその場所へと戻ってきた一方通行は珍しい組み合わせに首を捻らせた。
「こんなところで何してやがるンだ、変態ツインテール風紀委員」
「あら第一位さん、お久しぶりですわね。覚えていて下さったようで嬉しいですわ」
さすが風紀委員として柄の悪い不良共を幾人も相手にしてきた実績を持つ故か、
一方通行の嫌味な例え(しかし事実)を前に屈するどころか軽く受け流した白井黒子は
学園都市最強の男に向かい呑気にこう申し出た。
「私久方ぶりにお会いしたお姉様方と少しゆっくりとお話ししたく思いますの。
よろしければ皆様でお茶会でも致しません?そこに丁度ファミレスもございますし」
「行きたきゃ女共で勝手に行きゃいいだろォが。俺ァピンクな空気に晒され続けンのは御免だぜ」
女同士の会話が繰り広げられる中一人ポツンと同伴させられたときの居づらさといったらない。
以前御坂美琴の『近況報告が聞きたい』という申し出に打ち止めと番外個体を連れて昼食を共にした時に苦痛は十分味わった。
だが、一方通行が当然断ることなど白井黒子にはお見通しであった。
(本当はもっと違う形でカマをかけてみようかと思ったのですが……小さなお姉様の為、仕方ありませんわね)
「最近小さなお姉様の学校に通っている殿方で通り魔から酷い暴行を受けた方がいらっしゃったでしょう?
一方通行さんは被害者が通う学校の臨時と言えど講師であるわけですし、そのお話も聞きたくて………」
364 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:27:27.83 ID:xgz85eY0
途端、断り文句を言おうとした一方通行の口がピタリと止まった。
「被害者の方は下半身を複雑骨折なさった挙句に局部的に潰されたりいたしたのでしょう?
………お可哀そうに、さぞや痛かったことでしょうね………」
一方通行からしてみれば自業自得どころか殺されなかっただけマシと思え、なのだが
やはり第三者の目からみれば手酷いものがある。
(追い詰めるにはあと少し、ですわね……)
「ああ。ところでこれは最初に通報を受けた風紀委員が聞いた、一部にしか出回っていない情報なのですが………」
そこで白井黒子は一方通行の肩をそっと掴みキスでも送るかのような近距離で
その続きを彼に向って囁き伝えた。
「通り魔の女は、白髪・細身・高身長でドスの効いた声の主だったそうですわよ―――――?」
学園都市第一位の頭脳を持った男は、そこで静かに陥落した。
365 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:27:55.57 ID:xgz85eY0
公園近くのファミリーレストラン、その一角。
(ちくしょう……結標のヤツ、俺のガキの頃の写真なんてレア物流してやったのに情報操作失敗しやがって……
いや、一部くらい出回るのは仕方ねェ。風紀委員内の噂に留めたのは褒めてやるべき、か)
「ンでェ?要は俺に何が聞きたいワケなんですかァ、仕事熱心な変態風紀委員さンよォ」
「あ、ドリンクバー4つでお願いしますわ。あとはこのケーキを―――一方通行さんはケーキの方いかがなさいますの?」
「あァ俺はいらね……聞けよ話ィイイイ!!!!」
「ケーキも4つでお願いいたしますわ」
「かしこまりました~」
「いらねェっつってんだろォオオオオオ!!!!!」
一方通行は、白井黒子に押されていた。
「他のお客様にご迷惑ですわよ。風紀委員としてはそれ以上煩くなさると拘束しなければなりませんの」
「オマエ理不尽過ぎンだろソレ」
そんな光景を見て打ち止めと番外個体は感心せざるを得ない。
(さすがお師匠様、ってミサカはミサカは称賛を送ってみる)
(で?お師匠様はここで飲みかけコーヒーを狙おうって腹なのかね?)
彼女達はミサカネットワークを通じて会話をしながら師匠が何を企んでいるのか逐一洩らさないよう観察していく。
366 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:28:24.62 ID:xgz85eY0
「では、ドリンクバーでも持って参りましょうか。一方通行さんはコーヒーで宜しくて?
お姉様方は?何になさいます?」
廊下側に座った白井がおもむろに立ちあがりドリンクバーの注文をとってくる。
どうやら皆の分を持ってきてくれるらしいが、此処で何かアクションを起こすのだろうか?
「あァ。俺はそれでいい」
「あ!ミサカはオレンジジュースがいいな、ってミサカはミサカはお願いしてみる」
「ならミサカはジンジャーエールで。氷無しね、薄まるから」
「心得ましたわ」
白井と同じく廊下側の、一方通行の隣に座った打ち止めは万一白井が飲み物に何か細工をしていてもいいように
彼にドリンクバーが見えないよう座り直し注目を集めた。
「折角頼んだんだしあなたもケーキ食べようね、ってミサカはミサカは先手を打ってみる。
偶にはあなたとお茶したいもん」
「俺が甘いモン苦手なの知ってんだろォがクソガキ」
「甘いもの苦手とか何カッコ付けてんの中二病患者(黒い翼が出る)」
便乗した番外個体も一方通行を挑発することで彼にケーキを食べさせることを了承させた。
これで白井が何を計画していたとしてもフォローは完璧である。
暫くするとドリンクバーから白井が帰って来た。
人数分のドリンクがそれぞれへと回る。
そこへ丁度ケーキも運ばれてきて一方通行はそれを嫌々した顔で黙々と食べていた。
367 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:30:51.27 ID:xgz85eY0
コーヒーで流し込みながらなんとかそれに手を付けていた一方通行だがそんなことをしていては直ぐにコーヒーが無くなる。
彼がコーヒーを再び接ぎに行こうとしたところで自身の紅茶を飲み終えた白井が立ちあがり、
ドリンクバーに向かうには打ち止めに席を退いてもらわなければならない一方通行は
彼女に自分のコーヒーもついでに持ってくるよう頼んだ。
表面上平和なお茶会を続けていた4人だがなにやら雲行きが怪しくなってきた。
――――なンだ、何か気分が悪ィ。
一方通行は体調の変化を感じ風邪でも引いたかと自身の額へと手を当てる。
――――なンか身体が熱ィな。
そんな一方通行の様子に気付いた打ち止めは「大丈夫……?」と心配そうに彼を見遣る。
気にしなくていいと一方通行は言うものの、様子がおかしいのは目に見えて解った。
「気分が優れないのでしたら私がテレポートで送って差し上げましょうか?」
白井黒子は腐っても風紀委員だ。
そして、この状態の一方通行が空間移動能力者というこの場において最も役に立つ能力を持つ彼女に頼らない理由は無かった。
だが、一方通行は失念していた。
彼が当初から言う通り
白井黒子は、変態だったのだ。
368 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:32:23.82 ID:xgz85eY0
「さて、準備は整いましたわね」
一方通行達が暮らすマンションのリビングで白井黒子は高々と言った。
彼は今自室のベッドの中だ。
「ねぇお師匠様、あの人に何をしたの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
打ち止めの素朴な疑問に白井黒子という名の変態淑女は恥じらいもせず答える。
「ずばり、媚薬ですわ」
「びやく?」
「勘の鋭い一方通行さんの事ですもの。
一気に使っては直ぐにバレると思いまして少量ずつ、ケーキを一緒に食べさせることで何杯も飲ませましたの。
それに関してはお姉様方のフォローもGJでしたわ」
あまりにも堂々と言う白井に目を白黒させる打ち止めと番外個体であったが、
『媚薬』という言葉を聞くと何故かドキドキしてしまうのも乙女なのだから仕方ない。
「一方通行さんはもうすぐ切なげなお声を上げながら自身の右手でその興奮をぶち殺す状態に入る事でしょう。
それを決して邪魔はせず、ビデオと録音機を片手に静かに見守るのが淑女の嗜み。乙女の務め!!
お姉様に頼まれてあの殿方に何度も同じ手を尽くしてきたこの私に、間違いなどございませんわ!!!」
打ち止めと番外個体には、このとき白井黒子が神のように輝いて見えたという。
あの人は今自室でどんな状態に陥っていると言うのだろうか。
「ミ、ミサカはミサカは先手必勝を叫びながらビデオを片手にベストポジションに向かって走り出してみたり!!!」
「あ!!ズルイ待ちなよ最終信号そこはミサカの定位置って決まって………!!!」
それを認識した瞬間、二人は互いを牽制しながら走りだした。
アイツを出し抜いて自分こそが最高の痴態を写し撮るのだ………!!!
二人はそんな思いでいっぱいだった。
しかし。
369 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:33:59.28 ID:xgz85eY0
パァアアン―――――!!!
そんな二人を、白井黒子はビンタによって嗜めた。
「お、お師匠様何するのってミサカはミサカは…………っ!!!」
「お姉様方……黒子は、黒子は悲しゅうございます。
何故姉妹であられるお姉様方がこのように醜い争いを繰り広げなくてはならないのでございましょう。
確かに殿方との恋を仲良く分けあうことなど出来ないかもしれません。
それでも、それでも、お姉様方が争われることなど何一つないではございませんか……!!!」
白井はレースのハンカチで目頭を押さえながら、
そっと二人に高画質ビデオカメラと超高音質・精密録音機を二人へと差し出し―――――
「画質を優先すれば音質が落ちる、逆もまた然り。
素人であらせられるお二人がこれらを同時に使いこなせるとは思いません。
――――好きな殿方との未来は1つでも、痴態は分けることができますのよ…………?」
迷い子を導く聖者の様な慈愛に満ちた表情で、白井は二人を諭した。
そんな白井の言葉に二人は互いに顔を見合わせる。
先に折れたのは、意外なことに番外個体であった。
「………ごめん、ミサカが悪かったよ。ズルイなんて言って………」
「そんなことないっ!!そもそもミサカが抜け駆けしようとしたのがいけないんだし、ってミサカはミサカはっ―――――!!
…………番外個体、怒ってない?」
「怒ってたら、ミサカから謝ったりしないよ………」
そう言って番外個体は打ち止めの顎にその細い指をそっとかけると
真摯な瞳で打ち止めを真っ直ぐ見つめ、彼女に向かって力強い声で言った。
「二人で、協力しよう?ミサカ達は姉妹なんだからさ!!」
「~~~~うんっ!!ってミサカはミサカは抱きついてみる!!番外個体大好き!!」
370 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:35:10.81 ID:xgz85eY0
姉妹愛を堪能している二人を白井は相変わらず慈愛に満ちた瞳で眺めながら、
彼女は二人に渡したよりも超小型のビデオと録音機で
彼女の愛するお姉様と同じ顔をした二人を撮影していた。
(ああっ……!!お姉様方に頼られ、そのお姉様方を導き、お姉様方が姉妹で絡み合う様子を堪能する………!!
白井黒子、齢19歳にして我が生涯に一片の悔い無し、ですわっ!!!)
ハァハァと息を荒げながら白井は二人を急かす。
「さぁ、お姉様方!!一方通行さんにバレないよう事を起こすには、ドアを開けるのは必要最低分!!
お二人が密着した状態で静かに撮影するしかありませんわ!!」
「うん解ったお師匠様!!ってミサカはミサカは番外個体と手を取り合ってあの人の部屋に向かってみたり!!」
「小柄な最終信号が前面に出て映像を担当した方が良さそうだね。ミサカは後ろから音声を撮るからビデオは任せたよ!!」
素早く一方通行の寝室の前へと立った二人は、打ち止めの後頭部が番外個体の胸元へと埋まる密着した形で機器を構えた。
そんな姉妹の様子に白井はもう絶頂間近である。
(ああっ………お姉様方っ………!!お二人のその間に、黒子も混ぜてくださいましっ……!!!)
371 :
【小ネタ】 部屋と師匠とミサカ達 [saga]:2010/12/12(日) 20:36:45.85 ID:xgz85eY0
深夜。
リビングに設置された大型テレビの前で打ち止めと番外個体は手をとりあって『ある映像』を見つめていた。
「イイ感じに撮影出来てるじゃない最終信号、見なおしたよ」
「番外個体こそ、あの人の声が最高に撮れてるね!ってミサカはミサカは興奮してきて……うぅ~~~」
テレビに繋がれたヘッドホンを仲良く片耳ずつ装着し二人は思い人の悩ましい声とその痴態を堪能していた。
『……くっ、……なンで、こンなっ……あ、あ!……つ、ゥ…………』
普段の行動がアレなくせに顔を真っ赤にさせて映像を堪能する二人はもはやヘブン状態だ。
「これからもお師匠様の下で二人一緒に頑張ろうね、ってミサカはミサカは番外個体の手を握り締めてみたり!!」
「一人じゃどうとでもならない事も、ミサカ達二人なら何とかなるよ!!」
姉妹愛に興ずる二人は気付かない。
そんな二人を見つめる影が一つ、そこにあることに―――――
「白井黒子、ブッ殺す」
一方通行は彼女が愛する御坂美琴へと電話をかけ、そして―――――――
「あぁん!!あの人の声堪らない、ってミサカはミサカは~~~」
「見て最終信号!!あの人がアソコに手をかけてホラっ………!!!」
(だめだコイツら、早く何とかしないと―――――)
一方通行の苦労はまだまだ続く。
『部屋と師匠とミサカ達』(完)
372 :
>>1 あるいはシャツの人 :2010/12/12(日) 20:37:40.39 ID:xgz85eY0
今回も皆様から頂いたネタを採用しました。
>>338様と
>>346様,
>>347様のネタを混ぜてみたのですが……ど う し て こ う な っ た 。
そう言えば昨日はスレを立てて初めて更新が出来ない日でした。
これは皆様のコメントを見て直ぐ書いたので投下できているのですが書き溜めストックが現在完全にありません。
最近書いている時間が取れない事ができてきました。
毎日更新は難しいかもしれませんが放り出す真似は致しませんので、どうか見守ってやって下さいませ。
―――――ところで黒子ちゃんの口調はこれで合っていますか?お嬢様言葉難しいです。
373 :
>>1 あるいはシャツの人 :2010/12/12(日) 20:40:00.55 ID:xgz85eY0
追記。
>>347様へ。美琴病を発揮しない黒子譲は僕には書けませんでした。
多分戦闘モードになったら普通にカッコいいのでしょうが……
ちょっと場面場面だけでも書いてみます。申し訳ありません。
374 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 20:41:11.99 ID:3ePiwLAo
乙です。
親孝行な1を責めるやつなんていないので
自分のペースで更新すればいいよ。
で、親孝行した後にどうしてこんな変態小話を投下できるんだ?
375 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 21:04:41.77 ID:X5smi2AO
番外止めの和解がまさかこんな展開だとはwwwwwwww
376 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 21:26:09.41 ID:uGo52xoo
変態すぎるwwww
いいぞもっとやれ!
381 :
>>1 あるいはシャツの人 :2010/12/12(日) 22:10:33.43 ID:xgz85eY0
>>374様、それは僕が変態という名の紳士だからです。
>>347様へ。お詫びに僕なりのカッコイイ黒子嬢を。
打ち止めに襲いかかってきた刃は、しかしその直前で突然現れた塊によって軌道を逸らされた。
「え……?」
何故自分は生きている?
喜ばしい事態の筈なのに、その理解できない要素がより一層打ち止めを不安にさせる。
「どうして……?」
「――――お姉様の大切な妹君を、失うわけにはいきませんでしょう?」
疑問は、同様に突如現れた声によって遮られた。
ああ。この人は。
「………誰だ?」
打ち止めと相対していた男だけが納得できずに声を上げる。
それに声の主は高々と、満ち足りた声で名乗りを上げた。
「風紀委員ですの、婦女暴行および殺人未遂の疑いで拘束いたしますわ!!」
「………黒子お姉ちゃんっ、どうして!!ってミサカはミサカは――――」
382 :
>>1 あるいはシャツの人 :2010/12/12(日) 22:11:28.56 ID:xgz85eY0
何故彼女がこんな場所にいる。これは自分の問題だ、巻き込むわけにはいかない。
そう訴える打ち止めを、白井黒子は眼だけで制した。
「――――大切な人の宝物を護ろうとする意志に、理由が要りましょうか。
先に行って下さいまし、一方通行さんがお待ちなのでしょう?」
なんとか立ちあがるも足を進めず、躊躇いを見せる打ち止めを白井は更に急かす。
「早くいって下さいな。………お姉様に、黒子の功績はしっかり伝えて下さいね」
その言葉に打ち止めは決心したように踵を返す。
彼女がちゃんと、彼女の愛しい人が待つ上へと向かったことを確認した白井は
愛武器である鉄矢を構えながら眼の前の男に向かい口角を上げた。
「――――――さて。恋する乙女に無粋な真似は通じません事よ、野蛮人さん?」
白井黒子の、孤独な戦いが始まる。
………こんな感じで如何でしょう。どういう状況かは僕にもさっぱりですが。
383 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:01:58.98 ID:Vd2Wul.o
というか美琴も何しとんwwwwww
ある意味諸刃の剣だよな
違う女の名前でも叫んでた日には……
384 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 23:45:29.21 ID:Vy/n7ZQ0
乙
お母様は大切にね ビリビリ
それにしてもこの2人変態であるもっとやれ
389 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:16:17.05 ID:fm92PA60
♪ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る~
12月24日、クリスマス・イブ。
街にはツリーが至る所で彩られ、焼けたチキンや甘いケーキの香りがあらゆる商店から漂っていた。
(遂に来た…!!あの人と二人っきりの、クリスマス……!!)
ここ最近仕事で忙しくしていた一方通行はその日の内に家へ帰ることが中々できないでいた。
彼のその頑張りが自分や番外個体を養っていることは知っているが、
それでも寂しいものは寂しい打ち止めは一週間前に約束したのだ。
『クリスマスは、絶対ミサカと二人っきりでロマンチックに過ごそうね!』、と――――
(番外個体はクリスマスじゃない日に一度、あの人に何しても見逃すってことで賠償したし……)
実の所、これまで打ち止めは一方通行と二人きりのクリスマスというものを体験したことがない。
結婚した黄泉川の新居に二人呼ばれたり、美琴主催のパーティーに出席したり、
ときには妹達全員を集めてネットワーク越しでない初の全生顔合わせをしてみたりもした。
そのどれをも打ち止めは心から楽しんだが、やはり大切な人との二人きりの時間というのは格別に思う。
(えへへ……今日は二人で何しようかなぁ……)
そして、打ち止めは人生初の『特別なクリスマス』を迎える―――。
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ
390 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:16:49.33 ID:fm92PA60
12月24日の朝。
打ち止めと一方通行、番外個体は3人で朝食の席を囲んだ。
一人先に食べ終えた番外個体は、約束を果たしてくれるつもりなのか
「用事があるから」と言って出かけていった。
さて、遂に二人きりだ。
あの人はデートの計画とか立ててたりするのかな、と打ち止めの心臓は既に爆発寸前だ。
駅前のイルミネーションも見に行きたいし、美味しいディナーも食べたい。可愛いケーキも買って……
「ンじゃ、取り敢えずデパートでも行くか。夕飯の買い出ししてェし。」
打ち止めの考えを汲んだかのように出かける事を提案する一方通行。
(あぁ、本当に楽しみ! ってミサカはミサカは―――)
391 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:19:56.29 ID:fm92PA60
ど う し て こ う な っ た 。
「お、キャビア安い」
「え、マジで!?マジでキャビアなんて食わせてくれんの!?」
「流石あくせられーたなんだよ!とうまと違って甲斐性ある!」
現在打ち止めと一方通行は、上条当麻・インデックスと行動を共にしていた。
そこに至るまでの経緯を説明するには、時は1時間前を遡る――――
「お、一方通行じゃねえか」
駅前の大通り、期間限定で設置された大きなクリスマスツリーの前で打ち止め達と上条達は偶然鉢合わせた。
何処に行くのかと問われた一方通行が素直にクリスマスディナーの材料調達と言えば、
それを聞いたインデックスはさぞ羨ましそうに「いいなぁ…」と呟いた。
話を聞けば、上条家にはクリスマスにご馳走を用意するだけの貯蓄が無いらしい。
「とうまは貧乏だからね」
「お前が取っておいた貯金を使い果たすくらい食い尽くしたんじゃねえか!!」
―――――自業自得とはいえ、何だか可哀相になってきた。
誰だってクリスマスは楽しく賑やかに過ごしたいものだ。
その時こそ打ち止めはそう思いはしたが、まさか一方通行があんな申し出をするなんて
彼女は考えもしなかったのだ。
「だったらウチで飯食うか?」
―――今日は、二人だけのクリスマス、だったのに。
392 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:20:25.75 ID:fm92PA60
そのまま行動を共にすることになった4人は、デパートの地下にある食料品売り場で食材の調達をしていた。
素材にこだわりを持つ一方通行は安さより品を優先させるので値段など気にせず
気に入った物をホイホイ籠へと放り込んでいくのだが、そんな彼に上条とインデックスは目を白黒させるばかりだ。
「5000円もするテリーヌ買ってるし……上条さん家なら有り得ない光景ですよ」
「ねぇねぇ、あくせられーた。七面鳥は買わないの?あそこで売ってるよ?」
「ああゆうのは大抵中身ミックスベジタブルだから買わねェ。自分で仕込む。
……あとはどうすっか、シスター入ると量必要になるしチーズフォンデュでもやるかァ?」
「チーズフォンデュ!!食べたい食べたい、作ってあくせられーた!!」
―――ああ、シスターさんが嬉しそうで何よりです。
確かにあれだけの笑顔を見せられれば良かったと思うが、打ち止めとしては複雑な気分だ。
(二人きりって約束、忘れちゃったのかなぁ……)
「どうしたの、らすとおーだー?お腹痛い?」
打ち止めの憂い顔に気付いたインデックスは声を上げかけるが、
何分彼女が元凶であるので打ち止めは明るい顔など到底できない。
「ううん、違うの。あの人のマリネ美味しいから作ってくれないかなって思って、
ってミサカはミサカはさりげなく希望を述べてみたり」
こういう時、自分が醜い人間であると実感して嫌になる。
393 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:22:32.00 ID:fm92PA60
「あァ?屋上だァ?」
「うん!デパートって屋上に遊園地があるんでしょ、行ってみたいんだよ!!」
「でもよインデックス、あーゆーのって小さい子用だぜ?お前もうハタチじゃん」
「とうまのバカっ!ホントに乙女心が解ってないんだから!ねー、らすとおーだー?」
「それはどちらかと言えば子供心だと思う、
ってミサカはミサカは味方に付けないことを表明してみたり……」
時刻は午前11時過ぎ。
なんやかんや言ってもインデックスの意見を無下にもできない一行はデパートに設置された屋上遊園地にいた。
「ガランガランだねぇ…、ってミサカはミサカは隠しもせずズバッと見たままを正確に言ってみたり」
「うぅ…なんだか想像してたのと違うんだよ……」
しかし遊園地といっても所詮はデパート。
インデックスの想像したような観覧車やジェットコースターは勿論ない。
「だァから言っただろォが?遊園地なら第6学区にでも行かねェと」
「にしてもホントに誰も居ないなあ…―――うわぁ!!」
上条の急な叫びに一同一斉に注目する。
疑問を抱いたまま彼が凝視する方向をそっと見遣れば、そこには
「うわぁ…ってミサカはミサカは……うわぁ…」
「あの人前にみた『りすとら』の人とおんなじなんだよ。
昼間からワンカップ片手にベンチでうなだれてるとことか」
「こ、こらインデックス!!そんなハッキリ言っちゃいけません!もっと相手に気を使ってオブラートに包んでだな……」
周りが好き勝手その男を言う中、一方通行だけが一人小首を傾げていた。
そうして男の座るベンチへと近づくと、何の躊躇いもなく男へ声をかける。
「ンなトコで何やってんだァ、浜面ァ?滝壺はどォした?」
394 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:23:02.37 ID:fm92PA60
暫くボーっと地面を見つめていた浜面は、一方通行の声にゆっくりと顔を上げた。
「あぁ……一方通行ぁ……?」
実際そんな事はないのだが、彼の纏うオーラの所為なのか心なしか少しやつれて見えるのが気にかかる。
一方通行も若干引き気味に再度滝壺はどうしたのかと尋ねる。
すると浜面は急に滝のような涙を流しながら「一方通行ぁ…!!一方通行ぁ…!!!」と縋りつき始めた。
良い歳をした大の男がやっているのだ、気持ち悪い事この上ない。
「だァクソ、離れやがれェ!!第一俺らはンな馴れ合う様な関係じゃねェだろォが!!!」
「声かけといてそんな態度はねぇだろぉおおお……!!!!滝壺がぁ、滝壺がぁ……!!!」
浜面のある意味において尋常ではない様子に一方通行は訝しげに眉を寄せる。
滝壺に何かあったのだろうか。
しかしそれなら浜面もこんな所で呑気になどしていないだろう。
(なら滝壺に浮気でもされたかァ……?でも滝壺の奴はンな柄でもねェだろうし……)
一方通行の知り合いと気付き警戒心が薄れたのか、近づいてきた上条達も心配そうに彼を慰める。
「なぁ、何があったんだよ……?あんたが誰かなんて知らないけど、話くらい聞いてやるぜ?」
上条と浜面は、浜面がまだスキルアウトだった頃に御坂美鈴の命を狙った一件で面識があるのだが
互いにそれには至っていないらしい。
見ず知らずの人間の温かい思いやりに触れた浜面は、袖口でゴシゴシと涙を拭いながら思いのたけを暴露した。
「麦野とっ……!!麦野と絹旗に、滝壺とられたぁああああああああ!!!!!!!!!」
瞬間、一方通行の渾身の蹴りが浜面をブチ抜いた。
395 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:23:45.52 ID:fm92PA60
「ンな下らねェ事でウダウダやってやがったのか!!無駄な時間取らせやがってェ!!」
「だって俺このままじゃクリスマス一人ぼっちだよ!!彼女居るのに!!聖夜に!!オンリー☆俺!!」
良く解らないが彼女さんの女友達に彼女さんを連れて行かれてしまったらしい。
彼と一方通行の話を聞いていただけだった打ち止めは、詳しい事情は知らないがそういう事で納得した。
(もうこうなったら、一人増えようが二人増えようが一緒、なのかな………)
「なら、ミサカ達と一緒にパーティーする?ここにいるヒーローさんとシスターさんも来るんだよ、
ってミサカはミサカは一人ぼっちにならない方法を提案してみる」
「………っ、いい、のか?俺なんかが着いて行って……」
「―――――まァ、シスター居るンじゃ一人や二人増えたところでメシ作る量変わンねェしな」
やっほおおおおい!!!!
と両手を上げて喜ぶ浜面に上条とインデックスも「キャビアも七面鳥もあるんだよ!」と彼の気分を盛り上げてやっている。
ミサカは、良い事をしたのだ。それでいいじゃないか。
震える腕を、打ち止めはそっと握った。
396 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:24:22.52 ID:fm92PA60
適当にデパート内のファストフード店で昼食を摂って、
一方通行の指示の下必要な食材を買い上げると時間は既に夕方の4時を回っていた。
最後に人気のケーキ店でかなり大きめのホールケーキを3箱買い
(なにせ暴食シスターとパーティーを共にするのだ、自分の分を確実に確保するにはこれでも足りないかもしれない)、
5人は打ち止めと一方通行の暮らすマンションへと帰った。
部屋の玄関を開けると、靴が3足並んでいた。
1足は見慣れた番外個体のものだ。だがもう2足、この女物のスニーカー達は誰の物だろう?
一方通行が何も言わないのであの人は知っているのかもしれない、と打ち止めがそのまま彼の後ろを着いて行くと
待っていたのは既に家を出ていた筈の黄泉川愛穂と芳川桔梗であった。
「おお、お帰りじゃん。ってうぉ!なんかいっぱい来てるじゃん、ビックリした~」
「あら本当、ワインとシャンパン多めに買ってきて正解だったわね」
二人はそれぞれ酒やらツマミやらを持ちこんでいたから、
当初からここで揃ってクリスマスパーティーをすることは決まっていたらしい。
打ち止めは今朝から彼が二人に連絡をとる所など、一切見ていない。
(やっぱり約束、忘れてたんだろうなあ……)
キッチンにいた番外個体も賑やかな様子を聞きつけたのかリビングへと顔を出してきて
パーティーにおける料理長である一方通行がクリスマスのディナーを完成させるまで、結局、
ロマンチックな要素など欠片もない半ば宴会のようなパーティーが続いた。
397 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:26:25.32 ID:fm92PA60
芳川が持ち込んだワインは然程アルコール度数が高くないにも関わらず彼らに大きな影響を与えたらしい。
「一番・黄泉川!!脱っぎま~~~す!!」
「二番・浜面!!歌いま~~~す!!」
「三番・上条!!生そげぶしま~~~す!!」
ディナーを粗方食べ終えた頃には、打ち止め以外の人間は既に皆ベロンベロンの泥酔状態であった。
酒が禁止される理由は幼い身体には害が大きいからだ、と唯一成人を迎えていない打ち止めは
自分より製造が後であるのに肉体的に成熟しているからと飲酒を許された番外個体を憎らしく思いながら
一人、周りの雰囲気に着いてゆけず悶々としていた。
「なあ一方通行もなんかやろうぜえ?なんなら上条さんとそげぶゴッコやる?」
「ンなの俺がボコられるだけじゃねェかよォ……あァなら俺『百合子』やるゥ、あれ得意ィ」
「あ、あ!俺ミニスカサンタの衣装持ってるぅ、これの所為で麦野と絹旗が
『超エロい事考えてる』とか『クリスマスのノリでできちゃったガキの気持ち考えろ』とか
言って滝壺連れてっちゃったんだけどぉ、あはははははははは」
男性陣も中々に盛り上がりを見せているようだ。しかし何故かそこに黄泉川が便乗して
「なら一方通行と私で野球拳やるじゃん、負けた方が一枚一枚脱いでくの~~」
と何やら変な方向へと向かいかかっているのが気にかかる。
「「野球~をす~るなら、こ~ゆ~具合にしなしゃんせ~」」
「アウトォ!!」「セーフ!!」
「よよいの、よい!!」
よっしゃああああ!!!まずは一勝、いいぞ一方通行このまま爆乳剥ぎとれぇええええ!!!!
――――ああ、あの人が勝ったのね。
ミニスカサンタのワンピなんてタイツと帽子と本体しかないしミサカは安心したよ……
「な、なんで一度も勝てないじゃん!!もう下着しか残ってないじゃんよ!!」
「ジャンケンってェのはなァ、振りかざそうとする拳が既に次に出すチョキやらパーやらを作ってンだよォ。
HUNTER×HUNTERのG・I編でも読んで出直してくるンだなァ」
打ち止めはすでに悟りきった表情で一人ジュースを傾けていた。
398 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:27:32.93 ID:fm92PA60
パンツとブラジャーだけになった黄泉川は、そこでやっと男性陣から解放されたらしい。
本人は自分の格好など気にもせず悔しそうにビールを開けているので、『解放』という表現が正しいのかは定かでないが。
調子に乗ったのか今度は浜面が芳川に勝負をかけ始めた。
しかし芳川はもう既に絡みモード全開で下着だけの黄泉川に女同士くんずほぐれつの濃厚なちょっかいを仕掛けている。
「なら次はミサカとあなたで野球拳やろぉよ~」
普段の刺々しさは何処へ消えたのか、酒の所為で些か甘え上戸になったらしい番外個体が
今度は一方通行との勝負を所望している。
「あァン?さっきの見てただろォが、オマエが俺に勝てるワケねェだろォが……ヒック」
――――顔赤くしてミニスカサンタで凄まれても何にも恐くないよ、あなた。
呆れ顔の打ち止めが溜息をついて隣を見れば暴食シスターはフォークとナイフをカチカチ言わせながら
「七・面・鳥!!七・面・鳥!!まだまだ足りない七・面・鳥!!」と叫んでいるのが目に入った。
………コイツは酒が入ってもあまり変わらない。
シスターの保護者と言えば、例のフラグ体質故か芳川と黄泉川の絡みに上手い事巻き込まれ
今にも出血大サービス(物理的な意味で)でもおかしそうな勢いだ。
浜面は一方通行の更なる快勝=番外個体の全裸を期待して待機中である。
399 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:28:20.68 ID:fm92PA60
(ハァ……クリスマスって何だっけ、ロマンチックって美味しいの?……ハァ……)
最早打ち止めからは溜息しか出て来ない。
「野球拳ミサカとやるったらやるの!!ただやってもつまんないしぃ、
負けたら指定された場所を脱いで晒した素肌を一分ずつ舐められるぅ~」
「俺の勝ちは揺るがねェし別にいいけどよォ、後悔してもしらねェぜェ?」
「いいぞぉ、ね~ちゃん!もっとやれぇ~ってハマヅラはハマヅラは盛り上げてみるアハハハハ」
―――――何やってるんだか、あの人達は。
打ち止めの大人組を見る目は既にウジ虫を見るそれと同類だ。
―――――てゆーかミサカ、何か忘れてる気がするんだけれど……なんだったっけ?
「「野球~をす~るなら、こ~ゆ~具合にしなしゃんせ~」」
「アウトォ!!」「セーフ!!」
――――――アレ?そういえば番外個体って……アレ?アレぇ!!?
「そ、その野球拳ちょっとタンマってミサカはミサカはっ―――――!!!!」
「よよいの、よい!!」
400 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:29:22.38 ID:fm92PA60
「なン……だと……?」
「はぁい、ミサカの勝ちぃ♪忘れたのぉ?ミサカはネットワークからあなたの動きを先読み出来るんだよ!!
原作20巻でも読んで出直して来な!!
解ったら大人しくそのミニスカサンタワンピ脱いでミサカにビーチク舐めさせることだね!」
―――――番外個体のヤツ、酔ってなんていなかったぁああああ!!!!!!
アイツ、酔ったフリしてあの人の油断を誘い脱がせるのが目的だったというのかぁああ!!!!
「これは途中で抜け出す事など到底許されないまさにデスゲーム!!
あなたは負けると知りつつ恥じらいながら一枚一枚丁寧に脱ぎ、
そしてミサカにその肌を捧げるんだね!!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!!」
――――――なんか、もういいや。
「……っ、クソッタレ!!好きにしやがればいいだろォが!!」
「ならまずは上半身からだねぇ!!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!!」
―――――パトラッシュ、ミサカはもう疲れたよ……なんだかとっても眠いんだ……
「あ、らすとおーだー寝るんだったらそのチキン貰っていいかな?」
やがて打ち止めは教会(より厳密にはシスターが身に纏う霊装としては壊れている『歩く教会』)の前で静かに眠りにつき、
そして………
401 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:30:00.38 ID:fm92PA60
打ち止めが目を覚ますと、すでに日付は変わり25日に突入していた。
時刻は深夜1時。
他の面々はそれぞれソファーやマットレスの上で眠り果てているが、何故か一方通行だけが見つからない。
暫くして耳が覚醒を始めると静かな部屋の中にカチャカチャと僅かな音が聞こえてくる。
音を頼りに打ち止めがキッチンへと向かうと、やはり一方通行はそこにいた。
「どォした?起きたンならキチンとベッドで寝ろよォ」
ロマンチックどころか二人きりの瞬間だって朝の僅かな時間しかなかったクリスマス。
それなのに何にも気にしていないという風なあの人の態度。
(楽しみにしてたの、ミサカだけ、だったのかな……?)
そう思うと途端に涙が出てきた。
気付いたあの人が洗いかけの食器を置いて慌てて駆けてくるのが判る。
「おィ、どォした!?腹でも壊したか!?」
「違うの!!ミサカはっ、ミサカはっ!!う……うぅ……」
あの人は何もわかっちゃくれない。
ああそうだ、言わなきゃ解らないかもしれない。それでも、何も言わずとも解ってほしい。
―――――あなたとの時間を、ミサカがどれだけ大事に思っているか。
「ミサカ、ミサカはね、クリスマスっ……」
「こりゃ明日のクリスマスもしかしてダメかァ?無理矢理休みとったが何処かにズラして……」
(………え、………?)
402 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ [saga]:2010/12/13(月) 20:31:35.73 ID:fm92PA60
「え……?クリスマスって……、え……?」
「ンだよ、オマエが時間取れっつったクセして自分は忘れてたンですかァ?
これでも俺が二日連続でまるまる休み取るって結構大変なンだからなァ」
―――――――え?
「え、だってクリスマスって今日じゃ……」
「はァ?今日はクリスマス・イブじゃねェか。
イブは黄泉川や芳川が来るからオマエと夜出かけるのは25日にしたンだろォ?」
――――――アレ?そう言えば一週間前……
『クリスマスは、絶対ミサカと二人っきりでロマンチックに過ごそうね!』
『あァ?別に良いが…なら24日は黄泉川達くるし何とか2日間休みもぎ取ってくる。約束なァ』
―――――――…………………忘れてたぁあああああ!!!!!!!
あの人とのデートにテンション舞い上がっちゃってヨミカワ達来るの忘れてたぁあああ!!!
悪いのミサカじゃん、勘違いしてたのミサカじゃん、
え?どうしよう、マジ恥ずかしいんだけどマジどうしようマジヤバイよ、どれくらいヤバいかってゆうとマジヤバイ
「熱は?……ねェみてェだなァ……取り敢えず今日は大人しく寝て明日ダメだったら……」
「だだだだだ大丈夫!!もういいの、もう平気なの、ウンもう大丈夫、明日楽しみにしてるね!!
ってミサカはミサカは………なんかホントごめんなさあああい!!!!」
あの人を置いてミサカはつい走って部屋へと籠ってしまった。
―――――ちゃんと、覚えててくれたんだ。
ああ、顔が熱い。
朝になったら一日を満喫するために今は一刻も早く眠らなきゃいけないのに
この滾る心の火照りは、なかなか抜け切れそうにない。
そして、ミサカ達は新たにクリスマスを迎える―――――。
『部屋とクリスマスとミサカ ――前日編――』(完)
404 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 20:52:09.77 ID:EUyHi2Ao
乙
先に言っとく
25日のはまづらはもげてしまえ
405 :
298 :2010/12/13(月) 21:01:41.77 ID:33WCNu2o
イエィ!! ミニスカサンタ百合子ごっつぁんです!
GJ!!
408 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 21:16:21.37 ID:rLLEToAO
前日編クッソワロタwwwwwwww
409 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 21:40:30.07 ID:eFIk1XUo
き・て・るるるるうううううううううううう!!!
きてる! きてる!
うひゃああああ今自分が見てる中でここの
>>1だけが更新してるややふうううう!!!
うれぴいいいうれっぴいいいいよおおおおお
うごぎゃあああああああ
412 :
>>1 あるいはシャツの人 :2010/12/13(月) 22:10:56.82 ID:fm92PA60
「
>>409様のためにミサカが執刀してあげるよ。取り敢えず何?ケツにメスでもブッ刺しとけばいいの?」
「
>>409様死んじゃうから!らめぇええええええ、ってミサカはミサカは搾乳器片手に叫んでみたり♪」
「………なンでオマエもちょっと楽しそうなンだよ、クソガキィ」
417 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 23:05:58.83 ID:xjq/eoSO
で、番外個体は結局どこをペロペロしたの?
B地区とあとはどこ?
耳?うなじ?内股?足の指?
早くデータをアップして感覚共有をってミサカはミサカはぁぁぁああああ!!!!
428 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 20:59:38.39 ID:9KX4szI0
12月25日。
一方通行は駅前の巨大なツリーの前で、一人小さく困惑していた――――。
《番外編》 部屋とクリスマスとミサカ―当日編―
429 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:00:07.55 ID:9KX4szI0
事は1時間前に遡る。
昨日と同じく一方通行と打ち止め、番外個体に加え黄泉川や芳川、上条、インデックス、浜面の8人で
賑やかに朝食の席を囲んだ彼らは、食事が済むとそれぞれ別れて行動をとることにした。
今度は完全に全員バラバラだ。
それはと言えば、今日一日を共に過ごすことを約束した打ち止めが
『デートっていったらやっぱり待ち合わせからだよね!ってミサカはミサカは雰囲気を大事にしてみる!』
なんてことを言い出した所為だ。
(デートなんて言った覚えはないンですがねェ……)
兄妹や父娘でも二人で出掛けることを『デート』と比喩することもあるが、
なまじあの少女の場合はそれが『どのような意味』なのかは図りづらい。―――大方予想はつくが。
(まァ、アイツも喜ンでるみたいだったし……良しとするか)
なんたって今日は、クリスマスだ。
430 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:00:44.78 ID:9KX4szI0
打ち止めは誰もいない我が家でいそいそと着替えていた。
今日のファッションはスノーホワイトのファー付きワンピース。
あの人と一緒のときは、何と無く彼の白さとお揃いの様な気がして気に入っている。
(番外個体に悪いことしちゃったかな……)
数分前に出て行った彼女を思い、打ち止めは思案する。
どうしてもと頼み込みクリスマスを譲ってくれた彼女は、今晩は芳川の下で一晩を過ごすらしい。
『ミサカは昨日あの人に好きなだけ悪戯したからね、今夜は最終信号に譲ってあげるよ。
ミサカからのクリスマスプレゼントね。……んじゃ、ミサカは独り者同士芳川と飲み合ってくるから』
番外個体には何かあの人とは別に取っておきのプレゼントを買ってこよう。
(ありがとねっ…、番外個体!!)
431 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:01:22.99 ID:9KX4szI0
朝食をご馳走になってから二日酔いでフラフラとなったインデックス(しかし食事は人の3倍、しっかりと食べた)を
背負って一方通行宅を出た上条当麻は、自身が暮らす学生寮の前に見慣れない影が立っていることに気付いた。
目を凝らして窺えば、
「あれ……御坂?」
そこに居たのは御坂美琴であった。
「どうしたんだよビリビリ、こんなところで。インデックス連れた俺が言うのもなんだけどココ男子寮だぜ?」
いつもならここで電撃を伴った反応
――例を挙げるなら「アンタが言う台詞じゃないっ!」や「べ、別にアンタには関係ないじゃないっ!」などだ――
が返ってくるものだが、今日に限って美琴は何故か萎らしい。
「どうしたんだよ……――何かあったのか?」
もし彼女がそうだ、と言えばそれだけで上条は事情など求めずに協力するだろう。
しかし美琴の口から出たのは、上条にとっては思いがけない言葉であった。
「昨日は黒子達とクリスマスパーティーしたんだけど今日は皆『彼氏』と過ごすみたいでっ……、
アンタ今お金ないんでしょ?ち、丁度いいから私がパーティーメニュー作ってあげても、い、いい良いわよ!」
「え、マジ!?でもなんで俺が金無いって知ってるんだ?」
上条が尋ねると美琴は一瞬ビクリと肩を震わせた。
「べ、別に?アンタの事だからどうせそんな所だろうと思っただけよ!」
「ふーん」
美琴としてはそんな重箱の隅を突いたような細かい事より『彼氏』を強調させた方に気付いて欲しかったのだが、
ここは少しくらい目をつむろう。
クリスマスを共にする、まずは第一段階完了だ。
432 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:01:53.76 ID:9KX4szI0
「お、おまたせっ!って、ミサカはミサカは一度やってみたかったシチュエーションを思い切り堪能してみる!」
「走るなクソガキ、転んでもしらねェぞ」
こんな日まであからさまな子供扱いかと打ち止めは一度口を尖らせるが、
次に続いた「珍しいモン履いてンだから気ィ付けろ」という言葉に一転して顔を真っ赤にさせた。
(奮発して買った新しいブーツ、……気付いてくれたんだ)
気を配った精一杯のオシャレを見てくれること程、最初の第一声として嬉しいものはない。
「ンで?結局何も決めてなかったが何処行きてェんだァ?」
「えっとね、デパート!今日はミサカがディナー作るから!ってミサカはミサカは宣言してみる」
「飯だけで良いのか?」
「あなたが他にも良いって言うならディナーの後に駅前のイルミネーション見に行きたいな……
って、ミサカはミサカはあなたの顔を窺いながら希望を述べてみたり……?」
「なら飯早めに作り始めねェとなァ、駅前混むだろォし」
さりげない言葉は了承の合図だ。
「えへへーっ」
「あァン?」
ニマーっ、と顔を綻ばせた打ち止めはそのまま一方通行の腕へと自身のそれを絡ませ手を繋いだ。
恋人繋ぎくらい許されるだろう。
何たって今日はクリスマスだ。
433 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:02:55.84 ID:9KX4szI0
浜面仕上は『アイテム』がアジトの1つとしている個人サロンの一角へと来ていた。
昨日麦野と絹旗に連れて行かれてしまった滝壺に携帯は繋がらなかった。
3人の自宅を回ってみても見つからなかったことを鑑みれば、あとは浜面が知る内でパーティーが出来そうな場所は此処しかない。
しかし此処まで来たはいいものの、滝壺に何と言えばいいのだろう。
もしかしたら彼女は自分をエロい事しか考えていない最低な男と思ってしまったかもしれない。
強ち間違ってはいないかもしれないが………あんなに可愛い彼女がいるのだ、少しくらいは仕方ないというものだ。
「しかし俺は誠意を持って滝壺に接するのだ、浜面さんマジ紳士に俺はなるしかひゃああああ!!!!!?」
「………じぃー……」
浜面の紳士になります宣言はしっかりと滝壺に届いていた。
ただし気持的でなく現実的に。
「たたたたた滝壺!?なんで?麦野と絹旗は?」
「むぎのもきぬはたも二日酔い。まだ寝てる」
「イヤ麦野はともかく絹旗まだ呑んじゃダメだろ」
滝壺は相変わらず天然満開のキョトン顔を繰り広げているが浜面としては恥ずかしい事この上ない。
何せ要は『男の欲求に耐え今夜は純愛を目指すのだ』というような内容を聞かれていしまったのだ。
我慢している、は前提にエロい事を考えているが見え隠れだ。
普通なら折れてしまうかいっそのこと開き直ってしまいそうなこの状況下で、しかし浜面は男を見せた。
漢・浜面仕上!!滝壺の為だったらどんな逆境にだって堪えてみせますとも!!
もう二度と麦野に『クリスマスのノリで出来ちゃったりしたガキの気持ち考えろ』なんて言わせねえ!!
「滝壺!!」
「なに、はまづら?」
「滝壺……俺、俺、………ノリじゃなくてキチンとお前としたいんだあああああ!!!!!!」
―――――――――アレ?なんか違くね?
「こんな場所でなぁに宣言してるのかなあ、はーまづらぁー」
以上、なんか浜面だけ危機を迎えているクリスマスの中継。
434 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:03:26.85 ID:9KX4szI0
デパートで買い物を終えた一方通行はリビングでのんびりとした1日を過ごしていた。
『あなたが昨日美味しい料理を作ってくれたから今日はミサカが一人で作るの!』待ちである。
(そォいや、超電磁砲は上手くいったかねェ)
御坂美琴に上条当麻が金欠でクリスマスもまともに送れないという情報をリークしたのは、何を隠そう一方通行だ。
『メシでも作りに行ってやれ』という内容なら美琴も上条に会いに行く口実ができるし、
インデックスも多少女関係を我慢すれば好きなだけ豪華な食事にありつける。
どちらか一方を優先させたわけではなし、我ながらナイスなアイディアだ。
(らしくねェことしてる気もするが……案外とクリスマスに舞い上がってたのかもしれねェなァ、俺も)
ところでリビングからは何だかキャア!だのウォウ!だの尋常ならない声が上がっているのだが大丈夫なのだろうか。
ソファから立ち上がろうとする度に「大丈夫だ、問題ない!」と牽制されてしまうのでどうにもあちらの様子が解らない。
(………そういえば揚げ物とか手の込んだモンは危ねェからやらせた事無かった気がする)
「キャアアア!!!あひるさんの油がああああってミサカはミサカはああああああ!!!!!」
―――――………そんな料理で大丈夫かァ?
435 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:04:08.86 ID:9KX4szI0
御坂美琴の振る舞うクリスマスディナーは上条当麻とインデックスに至福を齎した。
「ぷはぁー、美味しかったあ。短髪のヤツ料理できたんだね」
「シスターのくせによく食べるわねえ……てゆうかご飯作ってあげたのに失礼よね、人を何だと思ってるのよ」
「いやあ、やっぱり何だかんだ言って御坂は『お嬢様』って印象が強いからさ。
こーゆー庶民的なこと?っていうの?出来るとは思わなかったから上条さんも好感度UPというものですよ」
好感度UPという言葉に美琴の顔が一気に赤く染まる。
そんな彼女の様子を、フォークを銜えながらじっと観察していたインデックスはあからさまな棒読みで上条を囃し立てた。
「あーあ、イルミネーション見に行きたかったけどお腹いっぱいで動けないんだよ。
代わりにとうまが短髪と一緒に見に行ってよ」
「え、お前が腹いっぱいになるとかありえなくね?てゆーか名にその棒読m……―――」
「うるさいんだよ、私だって満腹くらいあるもん!判ったらさっさと行くんだよ!!」
懐かしくも噛み付いてまで起こり始めたインデックスに対し上条はこれ以上のやり取りは得策でないと判断したらしい。
大人しく彼女に従い「悪いけど付き合ってくれ」と美琴を促す。
美琴にとっては嬉しい限りだが、あの欲望に忠実なシスターがわざわざ敵に塩を送りつけるような理由が解らなかった。
上条に連れられて玄関に向かう途中、すれ違いざまにインデックスの方を見遣ると
「――――ご飯作ってくれたお礼。私だって大人の分別くらいあるんだよ」
小さな声で呟かれた。
美琴が声も出せずにそのまま外に出ようとすれば、彼女もはっきりと礼を言うことが相当恥ずかしかったのだろう。
「1時間だけなんだからねっ!シスターは寂しいと死んじゃうんだから!!」
近所迷惑になるほどの大声が、辺り一面に響いた。
436 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:04:42.77 ID:9KX4szI0
昨日の酒は体内分解を促進させて抜いてあったようだが、日頃の疲れは相当溜まっていたのだろう。
いつの間にかソファで寝込んでしまった自分にそれは流石に失礼だろうと一方通行は叱咤を飛ばす。
時計を見れば最後に確認してからまだ5分程しか経っていなかった事に安堵の息を吐いた彼は、
改めて台所を確認してみた。
先程のような悲鳴は聴こえない。
しかし、何かを調理しているような音もまた聴こえない。
時刻は午後5時。
イルミネーションを見に行く為に早めの夕食を予定していたから既に完成していたとしてもおかしくはないが、
打ち止めの性格を考えると出来たら直ぐにでも運んできそうなもので、何処か違和感があった。
足音を立てずにそっと台所へと向かえば、打ち止めは放心状態で声も出せずに泣いていた。
カウンターとコンロには何がどうなったのか原形を留めていないダークマターが2つ(暗黒物質的な意味で)。
そっとそのまま気付かれないようリビングに戻り一方通行は感慨もなく、
あくまでいつも通りに打ち止めへと声をかけた。
「そォいや、ケーキの材料買うの忘れたなァ。
今からだと買ってくるのに1時間くれェかかるが我慢できるかァ?」
急に話し掛けられた声にハッと反応を示した打ち止めは、
自身の動揺を悟られないよう必死に平淡な会話を取り繕う。
「う、うん!その頃にはご飯も完成してると思う、ってミサカはミサカはあなたを送り出してみる!」
玄関口の閉まるキィ…とした音を聞き届けると、打ち止めはその場に小さく座り込んだ。
「……あと1時間ある。大丈夫。美味しいご飯は作り直せる、
ってミサカはミサカは自分に言い聞かせて気合いを入れてみたり」
(―――こっちは暗部で命懸けの騙し合いしてンだ、これくらいでヘマして堪ンかよ)
外へと出た一方通行は普段使うバス停を横切りあえての徒歩を選んだ。
時間は出来るものではない、作るものだ。
437 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:05:47.70 ID:9KX4szI0
浜面仕上と滝壺理后は駅前のコーヒーショップにいた。
あの後麦野にさんざん怒鳴られ追い掛け回された浜面はすでに息も絶え絶えだ。
昨日に続き今日までも、彼ら二人はクリスマスらしいことを何一つ揃ってやっていない。
「悪ィ滝壺、あんなこと言って。………やっぱり失望したか?」
「ううん。はまづらがバニーの雑誌持ってたときも
『男とはそんなもんだ、それを受け入れる度量が女を美しくする』ってかきねが言ってたから」
「名言っちゃ名言だけど……アイツ何言ってんだ?」
純真無垢を絵に描いたような滝壺にあんな男の欲望丸出しな思いを暴露してしまい
彼女に引かれたりしないかと不安に感じていたのだが、
彼女の度量の広さというか天然っぷりはそれを上回るものだったらしい。
垣根じゃないが、そこまで大きく受け止められるといつも以上にときめいてしまうではないか。
「――――つーか俺ら、クリスマスらしいこと何一つしてねえな」
「でも、はまづら連れて来てくれた。コーヒーショップじゃなくてあそこに行きたかったんでしょ」
滝壺が指したのは近くで催されているイルミネーションのライトアップだ。
既に周りは混雑していて、特にツリーの辺りは今から集団に加わっても遠目にしか見えないかもしれない。
「いやでも何か混んでるし。滝壺人混み苦手そうだから気ぃ悪くするかなあって」
「………迷わないように手、繋いでくれるならへーき」
そう言うと滝壺はそっと浜面の手を握り取ってレジへと向かい、浜面が財布を取り出す前にさっさとカードで会計を済ませた。
店を出た後も彼の手をぎゅっと握りしめサクサクと煌びやかな明かりへと向かってゆく。
可愛らしいというより、もういっそのこと男前と呼んだ方がピッタリな具合だ。
滝壺に手を引かれながら歩く浜面は、ふいに自分の尻ポケットから不可解な振動が立っていることに気づきそちらに目を遣る。
「……たぶん、むぎのから」という滝壺の言葉に
そういえば雰囲気ブチ壊しなんて事にならないよう携帯を今日はマナーモードにしていたことを思い出す。
麦野からだと知っているという事は出ていいという事だろうか。
滝壺の方を窺いながら通話ボタンを押すと、電話の向こう側の相手は一言、小さく言って電話を切ってしまった。
「ゴメン。……羨ましいからって、調子乗り過ぎた」
彼女が羨んだのは、果たして浜面か滝壺か。
438 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:06:24.47 ID:9KX4szI0
ケーキを求めて街中を歩いていた一方通行は上条当麻に手を握られて顔を真っ赤にしている御坂美琴を発見した。
手を引かれて歩く姿はさながら迷子にならぬよう気をとめる親子の様だ。
その例えは上条から見ればあながち間違っていないのだろうが、美琴から見れば至って大真面目だから何とも言えない。
(つーかあのヒーロー相手に超電磁砲のヤツよくアソコまで進めたなァ)
女心が解らないのは自分も同類だという自覚はあるが、自覚がある分まだ彼よりはマシな筈だ。
………恐らく。
声をかけるのも野暮だろうと考えた一方通行は大人しく目的地へ向かおうとその場を離れようとしたが、
やはり相手が悪かった。
「アレ?あそこにいるの一方通行じゃねえか?」
おーい一方通行ー、なんて暢気な声が後ろからかかる。
今日ばかりは超電磁砲に同情した。
「お前こんなところで何してんの?打ち止めは?」
「そこの洋菓子屋にケーキ買いに来たンだよ。アイツは飯作ってる」
打ち止めはご飯作ってくれるから偉いよなー、ウチのインデックスはさー、……――――
続く上条の愚痴に既に美琴からはビリビリと抑えきれない小さな電気が発せられている。
『ウチの』という言葉も引っかかったのだろうが、何分この雰囲気の中他の女を話題に出されたのだ。
無理はない。
そんな美琴を横目に確認した一方通行はどうにかしてこの場を離れる手段を考えようとするが、
目の前の鈍感ヒーロー様は「あ、あっちには浜面が!!あの人が彼女さんかなあ?」と次のターゲットをロックオンしている。
「あー……なンつーか……俺はガキ待たせてるから、あとは仲の良いお二人でごゆっくりィ」
(―――――厄介な女。人の事にはやたら口出すクセしてよォ)
『仲の良い』をワザと強調させてトンズラをこいた一方通行は
「な、仲良くなんてないわよ!」と大声でビリビリやっている美琴を尻目に確認し溜息をついた。
439 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:06:59.23 ID:9KX4szI0
一方通行が帰宅すると、食卓にはささやかながら豪勢な食事がテーブルを彩っていた。
かぼちゃのスープにパスタにリゾット、マリネにテリーヌに―――――北京ダック?
「き、昨日七面鳥食べちゃったから北京ダックにしてみたんだけど………おかしかったかな?ってミサカはミサカは――――」
「いや、北京ダック久しぶりに食うなァと思っただけだ」
ケーキを冷蔵庫にしまうといつの間に用意したのだろう。赤ワインがグラスと共に一方通行の席にだけ置かれた。
打ち止めの席にはアップルサイダーが頓挫している。
「あひるさんの油がけに失敗しちゃって……結構焦げちゃったりしたんだ………
焦げた所はミサカが食べるからあなたは美味しい所食べてね、ってミサカはミサカは皿を勧めてみたり」
本格的に丸のアヒルを加工する所から始めたらしい打ち止めは、
皮だけしか使われない北京ダックの尚且つ焦げていない箇所という非常に希少な部位を一方通行の皿へと乗せた。
そのまま彼の席へとサーブすると不安そうにこちらを見つめてくる。
「どうかな、ってミサカはミサカは心配しながら尋ねてみたり……」
一方通行がそれを静かに口へ運ぶと、打ち止めは今にも消え入りそうな小さな声で尋ねてきた。
「うめェよ」
「本当のこと言って!………ミサカ、あなたがケーキ買いに行く前に一回料理全部失敗しちゃったの。
そこから何とか頑張ってみたけど、昨日あなたが作ってくれたみたいにはならなかった!!
見た目だって貧層だし味も保証できないし………ダメならダメってちゃんと言って、ってミサカは……ミサカは……」
440 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:07:45.48 ID:9KX4szI0
打ち止めは泣いていた。
涙をぽろぽろと零しながらそれでも表面上の言葉ではなく本音が欲しいと言う。
強い奴だ、と一方通行は素直に感じる。
思えば出会ったときから、この悲痛な運命の下生まれてきた彼女は強く、気高く、優しかった。
「味が濃い。この濃さならテンメンジャンは少しでいい、それかタレは無しでも。後は削いだネギかキュウリの千切りが欲しい。」
だから一方通行は彼女のプライドに倣い、隠さずに本音を吐露する。全部。
普段は恥ずかしくて言えないような台詞も全部纏めて。
「だが、………だが、俺の為に作ったっつーだけで、満足だ。
栄養管理とか義務だとかそうゆうンじゃない『俺だけの為のメシ』は、オマエらに会ってからが初めてだしなァ」
研究所で餌のように与えられる物でもない、一人味気なく食べていた冷凍食品や外食でない、
自分の為に作られた食事。
打ち止めという一人の少女が、まさしく一方通行の為だけに奮闘して用意した夕食。
「―――――それだけで、十分うめェよ」
うわあああああん!!!!
緊張の糸が切れたのだろう。
もっと幼かった頃のように声を張り上げて泣く姿が一方通行にはひどく懐かしいもののように思えた。
その所為か、彼女との生活にやっと慣れ始めた頃に始めた『撫でる』という行為を一方通行は静かに何度も行った。
彼の白く骨っぽい手が彼女の頭に触れる度、打ち止めは小さく「大好き……」と呟いていた。
一方通行は答えなかった。
代わりに向かい合った細い腕が、そっと打ち止めの肩を引き寄せた。
441 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:08:22.53 ID:9KX4szI0
バチンっ!と小さく電気が音を発したと思うと、急に部屋の明かりが消えた。
この学園都市で停電なんて事態は非常に珍しい。
(――――超電磁砲がなンか遣らかしたかァ?)
実は彼の勘は見事的中しており、
上条が天然で言った美琴にとって恥ずかしい言葉が彼女を真っ赤にさせると共にひどい電流を生み出したのだが、
この場にいる打ち止めと一方通行には知る由もない。
「………電気、消えちゃったね」
「仕方ねェな―――――コレならどォだ?」
「ふふっ!なぁにそれ、ってミサカはミサカは珍しく珍妙な行動をとるあなたを笑ってみたり」
一方通行が持ちだしたのは外で購入してきたケーキだった。
しかしただのケーキではない。
持ちだされたのは、まるで誕生日のようにロウソクが何本も刺さったクリスマスケーキだった。
その一本一本にライターで火を付けた一方通行は「これで大丈夫だろォ」と満足そうに言い、
それがますます打ち止めの笑いを誘った。
「でも、これじゃ外のイルミネーション復旧するまでに時間かかりそうだね……
七面鳥じゃなくて北京ダックだし、ケーキも誕生日みたいになっちゃったし。
クリスマスらしい雰囲気全部吹っ飛んじゃったかも、ってミサカはミサカは少ししょんぼりしてみたり」
真っ暗な部屋で顔も見えないが、打ち止めが本当は『少し』などではなく『かなり』がっかりしていることは声で解った。
伊達に何年も一緒に暮らしていない。
442 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:09:22.41 ID:9KX4szI0
どうしようか学園都市第一位の頭脳をフル回転させて考えた一方通行は、
去年のクリスマスパーティーで黄泉川がケーキを運ぶとき大声でクリスマスソングを歌いながら持ってきたことを思い出した。
いかにも『クリスマスらしい』雰囲気に打ち止めが手を叩いて喜んでいたのも頭に残っている。
「―――――♪ We wish you a merry Christmas And a happy New Year.」
一方通行は小さく息を吸うと、『歌う』という本当に慣れない行為を始めた。
彼が彼女の為に歌ったのはこれが2回目だ。
そして、意識ある彼女の前で歌うのは、これが初めてだ。
「♪ Glad tidings we bring to you and your kin We wish you a Merry Christmas and a Happy New Year! 」
暫く驚いたようにして打ち止めも彼が1番を歌い終える頃には顔を綻ばせていた。
「こンなンしとけば雰囲気出るだろォが」と呟いた彼が恐らく顔を真っ赤にさせているだろう事は、彼女が一番良く知っている。
「♪ For we all like figgy pudding For we all like figgy pudding」
「♪ ふぉあ うぃー おーる らいく ふぃぎー ぷでぃんぐ ふぉあ うぃー おーる らいく ふぃぎー ぷでぃんぐ」
2番を促した打ち止めは彼に声を合わせ歌い始める。英語の発音が上手くいかないのは御愛嬌だ。
「♪ For we all like figgy pudding so bring some out here! 」
「♪ ふぉあ うぃー おーる らいく ふぃぎー ぷでぃんぐ そぉ ぶりんぐ さむ あうと ひあー」
そこまで歌うと窓と向かい合う形で座っていた打ち止めが声をあげた。
外をじっと見ているので何事かと同じように見遣れば
「雪!雪だよ見てみて!ってミサカはミサカは興奮して窓を開けてみたり!!」
全ての街灯が消え真っ暗となった夜空に、白く輝く雪が舞っていた。
「ホワイトクリスマス、あなたの歌のおかげだねっ!ってミサカはミサカは喜びを身体全体で表現してみたり!!」
そんな遣り取りをしているうちに街はだんだんと灯りを取り戻してゆく。
――――――あァ、やめろ。今明かりがついたら顔が真っ赤なのがバレちまう。
443 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスとミサカ ―当日編― [saga]:2010/12/15(水) 21:10:17.61 ID:9KX4szI0
「電気付いたし、イルミネーション見に行くかァ?」
顔を隠すように俯きながら立ちあがった一方通行に、打ち止めは何も言わなかった。
言えなかった。
何か言おうと顔を合わせれば自分も顔を真っ赤にしていることが知れて、恥ずかしかった。
「うん行く!ってミサカはミサカは勢いよく立ちあがって玄関までダッシュしてみたり!!」
「おィ、クソガキィ!!ちゃんと上着着やがれ風邪引いてもしらねェぞォ!!」
そして、彼らのクリスマスは―――――
「クソガキィ、帰ったらツリーの下ちゃんと見とけよォ」
「なんで?ってミサカはミサカは疑問を提示してみたり」
「サンタさン来てたから」
「あ、それならミサカも見た!クリスマスツリーの下にね、プレゼントが3つ置いてあったの!!」
「………3つ?2つじゃなくてかァ?」
「赤いリボンの2つ以外にいつの間にか黒いリボンのが混ざってたんだよ、ってミサカはミサカは不敵に笑ってみたり」
「………そォかよ」
――――――――円満の完結を迎える。
We wish you a merry Christmas!(楽しいクリスマスをあなたに!)
『部屋とクリスマスとミサカ ―当日編―』(完)
461 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:19:09.85 ID:MCOcixI0
【 部屋とクリスマスと未元物質 】
「……なぁ。こんな日にこんなトコいて悲しくなったりしないわけ、お前?」
「その台詞、そのままバットで打ち返すわ」
垣根帝督は暗部で使用している『アジト』の一つにいた。
何かと色々揃っているので、垣根は此処がお気に入りだ。
「世間はクリスマス一色、リア充達は恋人同士ロマンチックに過ごしましょうってな。
俺の相手は基本どれもセフレだから今日みたいな日は皆本命といたがるんだよ」
「最っ低」
そんな最低男・垣根が先程から話しかけているのはドレスの女だ。
『心理定規』と呼ばれ垣根達が徒党を組んでいる組織『リバース』で尋問官を務めている女と言えば、お分かりいただけるだろうか。
「つーか俺ら去年もココでこんな感じに過ごしてなかったか、クリスマス」
「そうかもね。でも私の場合はいつ仕事が来ても平気なように待機してるだけだから違うわよ」
いやいやいや。
お前も絶対俺と同類だって、と垣根は思うが口には出さない。出せばウルさく返されるだけだ。
「あーあ、近くに可愛い子がいればなあ」チラッ
「ホント。近くに色男がいればね」チラッ
言いながら二人は互いに顔を見合わせて――――――
「「はぁ。ホント空から落ちてきたりしないかな」」
吐いたため息は冬の空気に混じって白く色付き、直に消えた。
462 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:20:04.36 ID:MCOcixI0
【 部屋とクリスマスと超電磁砲組 】
「なぁんで、あんなこと言っちゃったんでしょうかねぇ……」
佐天涙子はレストランの個室で溜息を吐いた。
小洒落たフレンチレストランも、メンバーがクリスマスイヴ・当日共に女だけとなると虚しいばかりである。
「でも言いだしたのは佐天さんでしょう」
向かいに座る初春飾利はデザートでありある意味メインディッシュでもあるブッシュ・ド・ノエルに舌鼓を打ちながら
今回の『計画』の主犯である佐天を見た。
「だってさ、ああでも言わなきゃ御坂さん『当日も女4人でワイワイやりましょ』って言うのが目に見えてるし。
…………ホントは好きな人と過ごしたいクセして、中々言いだせないからってさ」
「だからってあんな強引に『御坂さんも男の人でも誘えばいいじゃないですか』はありませんの!!
お姉様がもしあの猿人類に何かされでもしたら黒子はどうしたらよいか、ああお姉様!!!!!!」
嘆いているのはご存知、白井黒子である。
よっぽど『愛しのお姉様』が心配なのかまだ成人を迎えていない佐天がこっそりシャンパンに手を伸ばした事にも気付いていない。
463 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:21:13.07 ID:MCOcixI0
「何かしちゃうとしたら御坂さんの方だと思いますけどねー。………それと佐天さん、風紀委員は白井さんだけじゃありませんよ」
訂正。白井が気付かずとも初春がしっかり見張っていたらしい。
仕方ないと諦めて佐天はグレープジュースを口に含んだ。
と、突然。
「あ、停電」
「………どうやら此処だけでなく街全体で起こってるみたいですわね」
先程まで『お姉様』を連呼していた人間がこうも早く反応できるとは、流石しか言いようがない。
「学園都市で停電なんて、普通なら殆どないことですし…………まさか!!」
何か感づいたのか『お姉様ァアアアアア!!!!!』と叫び声をあげて白井はテレポートしてしまった。
どうしたのだろう、という佐天の疑問を捉えたのか初春は軽く目配せしながら悪戯っ子のような笑みで簡単に言った。
「普通なら起きない学園都市の電気制御の攪乱なんて、誰なら出来ると思います?」
恋のコの字も惚れたホの字もないのは、どうやら自分と彼女だけらしい。
佐天はそんな常識外れの、見ず知らずの超能力者の思い人を心の中で労りながら――――――
「あ、雪だ」
ホワイトクリスマスを引き合いに出せるロマンチックな恋人が座る隣席は、埋まる日が未定なまま未だ空席だ。
464 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:21:59.98 ID:MCOcixI0
【 部屋とクリスマスと番外個体 】
「女は不条理でね、馬鹿な男ほど可愛く思っちゃうものなのよ」
「芳川ぁ、ミサカには意味わかんないですけどぉ」
465 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:22:40.13 ID:MCOcixI0
クリスマスはあの人と二人きりで過ごすのだ。
そう豪語した最終信号に家と一方通行を譲ってやった番外個体が(製造月日的にはミサカのが年下なのに)
逃げ込んだ先の芳川の家での飲み会を終えて帰って来たのは、25日を2時間ほど過ぎた辺りの頃だった。
「たっだいまぁー」
―――――返事はない。
二人とも流石に寝てしまったのだろうか。
……まさかミサカを差し置いて二人でしっぽり、なんてことはないだろうな。
一度懸念を抱いてしまえば後はもう嫌な予感しか湧いてこない。
足音を立てないようそっとリビングへと向かえば、なんてことはない。
一方通行はリビングから繋がったキッチンで食器を洗っていた。
「おかえりィ」
「………うん、ただいま。……最終信号は?」
あまりにもあっけらかんと言われるものだから最終信号もからかいどころを失くしてしまった。
今日は一日二人で何をして過ごしたのか、聞きだしながら弄ってやろうと思っていたのに。
「ガキならもう寝たぞ、はしゃぎ過ぎて疲れたみてェだな」
「……ふぅん。そっか」
なんとなく、気まずい。
466 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:23:22.27 ID:MCOcixI0
番外個体は二人が一日どうしたのか実は何も知らないわけではない。
最終信号が感じたクリスマスで最も幸せだった瞬間。
彼女はそれを無意識に、殆ど反射的にミサカネットワークへバックアップをとった。
(―――――14510号と20000号が騒いでたっけ)
彼女たちにとっての記憶のバックアップは全個体での記憶の共有を示す。
すなわち『妹達』の一体である番外個体も『知って』いるのだ。
彼の、『最終信号だけの歌』を。
番外個体は正直少し羨ましかった。
いつでもあの人に大切にされる最終信号。
あの人が護ろうとする世界の象徴でもある最終信号。
いつでもどんな時でもあの人にとっての最優先事項となる最終信号。
(……ミサカも、『ミサカだけの』何か、欲しいな……)
カチャカチャと食器を洗い続けるあの人はこっちの憂いなんてものには気付いてくれやしない。
だからどうせ気付かないなら、いっその事放っておいてくれればいいのだ。
それなのに。
「そォいや、あのガキとクリスマスにオマエが家空ける代わりに俺に何かさせるって約束したんだってェ?」
「……え?あ。……うん」
467 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:24:03.74 ID:MCOcixI0
唐突だった。
こちらの気持には全く気付いてくれやしないのに、あの人はいつも『欲求』だけは直ぐに察する。
「何がいいンだァ?俺にも準備っつーモンがあンだから、早いうちに決めて言え」
言えば、ミサカにもくれるのだろうか。
ミサカの一番欲しいもの。
「なら、一緒に寝てよ」
「………………は、ハァアアアアア!!!?????」
「そっちの意味じゃないよエロ魔人、残念だったねあひゃひゃひゃひゃ!!添い寝しろっつーことですぅ」
「添い寝だァ?」
「そう、添い寝。………それで、子守唄かなんか歌ってよ」
あの人は一瞬押し黙った。
ミサカが『歌った』事について知っているのを感づいたのかもしれない。
あの人が拒否したら何と言おうか。
添い寝の方ならまだしも、歌うことを躊躇われるのはちょっぴりショックだ。
「………いいぜェ。どっちで寝る?」
だから、あの人が自分とミサカ、どちらのベットで寝るか聞いているのだと理解するのに数秒かかった。
468 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:24:45.08 ID:MCOcixI0
自分から言い出したのはいいものの少し緊張する。
あの人のベットで一緒に横になったはいいものの、あの人はミサカに一切手を出さなかった。
ただ、横にいるだけ。
それでもこんな近い距離にあの人が居るのは初めてだった。
「………子守唄っつっても、大したモン知らねェぞ俺ァ」
「クリスマスソングとかでもいいよ。もう過ぎちゃったけど」
あの人は少し悩んでいた。
少し悩んで、やがて小さく口を開いた。
「♪ Lullay, Thou little tiny Child, By, by, lully, lullay.(おやすみ、おまえみどりごよ、 ねんね、ねんね、おやすみよ。)
O sisters too, how may we do, For to preserve this day.(あねさまいもうと、どうしたら、この一日を守れるの。)
This poor youngling for whom we sing By, by, lully, lullay.(わたしら歌ってきかせてる、あわれなこの子を守れるの。)」
静かな歌だった。
小さな声で歌うあの人の顔は、シーツに埋もれてよく見えなかった。
469 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:27:23.93 ID:MCOcixI0
学習装置からインストールされた知識のお蔭でだいたいの日本語訳はできるものの、
いかんせん曲の背景が解らない。
「ねぇ、それ何て曲?」
「……歌ってやったんだ、大人しく寝ろ」
「曲名気になって眠れないよ。教えてくれたら素直に寝る」
真っ直ぐ見つめてハッキリと言えば、根負けしたようにあの人は「『Coventry Carol』だァ」、と教えてくれた。
歌ったことが、それともこの曲がそんなに恥ずかしかったのか、
言ったらそれきりあの人はシーツに顔を埋めたまま不貞寝してしまった。
これじゃ全くミサカを寝かしつけていないじゃないか、と思いながらも
しかし好都合と言わんばかりに番外個体はネットワークへと意識を巡らせた。
(――――――もしもし?誰か手が空いてる個体いる?)
(ミサカなら空いていますが、とミサカ10777号は返答します)
10777号。確かロシアにいる個体だったか。
(悪いんだけど『Coventry Carol』って曲について調べてくれない?気になるけど調べられない状況でさ)
(了解しました、とミサカ10777号は番外個体の依頼を快く引き受けます)
こんなときミサカネットワークは便利だと、素直に思う。
470 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:28:40.16 ID:MCOcixI0
(――――調べ終わりましたよ、とミサカ10777号は番外個体へと通信を繋げます)
10777号からの返信が帰って来たのは10分ほど経った後だった。
(Wikipedia先生は優秀ですね、とミサカは調査が全く苦でなかった事を告げます。
―――――『Coventry Carol』、イギリスのコヴェントリーで『刈り込み人と仕立て屋の芝居』という劇中で歌われた曲ですね。
作者は不明ですが、聖書中のマタイ伝に出てくる物語のヘロデ大王がベツレヘムで行った大規模な幼児虐殺事件を描いているとあります。
この歌はその中で当時乳幼児であったイエスを逃亡させる場面を歌っているともあります、とミサカは結果報告します)
(………そう、ありがとう)
471 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏 [saga]:2010/12/17(金) 19:29:50.95 ID:MCOcixI0
言葉が出なかった。
10777号との通信は一方的に切ってしまった。
この人はこの歌の、誰に誰を当て嵌めてこの歌を歌ったというのだろう。
大量の虐殺を行ったという王様?
乳飲み子のイエスを護ろうとする人?
いずれにしても。
「――――ホント、馬鹿だ」
『自分を殺すために生まれてきた存在』にまで気を使うことなんてないのに。
こんなミサカの傷まで、あなたは自分の傷にしてしまう。
確かに最初「あなたの所為だ」と言ったのはミサカだ。
それでも、鵜呑みにしてミサカの事まで自分の『痛み』にしてしまうあなたは、本当に馬鹿だ。
「……でも、そんな馬鹿が、愛おしくてたまらないんだ……」
寝入ってしまったあの人の隣で、芳川の言葉が頭に響いた。
『女は不条理でね、馬鹿な男ほど可愛く思っちゃうものなのよ』
≪部屋とクリスマスと舞台裏≫(完)
474 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/17(金) 20:08:20.19 ID:2paVoPY0
相変らず良いね、このシリーズ。
番外個体カワイイよ番外個体
乙でした。
475 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/17(金) 20:31:02.98 ID:sae.8bc0
476 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 21:35:26.98 ID:kA6GsASO
禁書さんに幸せになってほしいんだが現実はそんなに甘くないのか
478 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:51:42.50 ID:osjcNek0
【部屋とクリスマスとアイテム】
「――― 頭、撫でてよ」
麦野の『お願い』に、浜面は動揺した。
「滝壺にするみたいなのを望んでるんじゃない。……ただ、撫でてくれればそれでいい」
479 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:52:13.11 ID:osjcNek0
滝壺との『デート』を終えて浜面達が戻ってきたのは、結局最初のサロンだった。
そこで2日目の『飲み会』を行ったらしい麦野と絹旗はそれぞれソファで酔いつぶれている。
人混みに少し疲れたのかもしれない。
滝壺も此処に戻ってくるなり横になるといって眠ってしまった。
そんな滝壺の頭を優しく撫で毛布をかけてやった浜面は結局、
先程までの甘い雰囲気の余韻か興奮冷めやらぬ自分だけが酒臭い部屋の隅っこで残っていたワインを一人傾けることとなった。
浜面がツマミを食すために置くグラスの固い音だけが時折部屋に響く。
数時間前まで立っていたイルミネーション前の賑わいとは大違いだった所為か、実はあの幸せな一時が夢だったのかと疑ってしまう。
(イヤイヤイヤ、ドンパチやら物騒な日常に馴れ合い過ぎだろ俺。ああゆうのもアリだって普通)
しかし色々な経緯を経て『アイテム』に加わらなければ滝壺と出会えなかったのも事実である。
妙な気分になるのはクリスマスに浮かれ過ぎた為だろうかと一人葛藤していると、
うんうん呻っていた声が聞こえたのだろうか。
割と近くで眠っていた麦野がムクリと起き上ってきた。
480 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:53:04.03 ID:osjcNek0
「はよ、麦野。二日酔い大丈夫か?」
イヴでダウンするまで呑んだ挙句、今日また浴びるように酒に投じたのである。
麦野の丈夫さは死ぬほど知っているが、それは『超能力者』としての彼女であって『彼女自身』の強さを指しているワケではない。
こんな二日酔いなんかで言うのも何であるが、心配なものは心配だ。
「……ん。ちょっと気分悪い、かな?」
疑問形とはいえ多少はキツイのだろう。
米神を押さえる麦野に浜面は水を取って来てやることにした。
「ホラ、飲め」
差し出した浜面の男らしい大きな手と麦野の女性らしい細い手が重なった。
否、麦野が、重ねた。
「………麦野?」
「ねえ浜面。……お願い、あるんだけど」
―――お願い?
キョトンとする浜面。
近づいてくる麦野の顔に、ああ。このまま握っていたら水が温まっちまうな、なんて場違いな事を考える。
そして麦野はキスでもするかのように近い距離、唇と唇の距離僅か数センチで静かに『頼んだ』。
「――― 頭、撫でてよ。
滝壺にするみたいなのを望んでるんじゃない。……ただ、撫でてくれればそれでいい」
481 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:53:36.66 ID:osjcNek0
「――――― へ?いや、……なんで?つーか、なんで頭?」
「いいから。撫でろっつってんだよ。いいでしょ別にキスだのセックスだのしろって言ってるわけじゃないんだし」
「セセセセセセ、セックスって、おま!!!女の子がそんな直接的な表現するもんじゃないでしょう、めっ!!」
何?まだ滝壺と致してなかったワケ?なんて暢気に言う麦野は自分がどんな爆弾発言をしたのか解っているのだろうか。
驚いて思わず後ずさった浜面を追いかけるようにソファから起き上りその後を追う。
「―――クリスマスプレゼント。まだ貰ってないし。頭撫でるだけっていったら安いもんでしょ?」
「いや俺お前にプレゼント貰ってな……」
「滝壺との二人きりの時間」
バッサリと切り捨てるように言う麦野に、いよいよ浜面は逃げ場を失くした。
別段逃げきろうとしていた訳ではないがなんとなく滝壺に目撃されたらマズイなと思う後ろめたさがある。
会話が会話だからだろうか。
482 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:54:07.09 ID:osjcNek0
「ちっこいガキにでもしてやるようなのでいいんだよ。――― 本当に、それだけで満足なんだ」
ボソリと呟くように発する麦野の目は真剣だった。
真剣で、それでいて何処か思いつめたような切なさを伴っていた。
ここで簡単に容貌を聞いてやる事は、後々麦野を傷つけることにはならないのだろうか。
嘗て浜面は麦野を見捨てた。
滝壺という一人の少女を護る為に、麦野という選択肢を見限った。
それを知り、それを聞いた麦野の『お願い』を聞く事は、果たして麦野にとってプラスなのだろうか。
浜面は考える。
そして、一つの結論を出す。
483 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:54:37.72 ID:osjcNek0
「酔い、早く醒ませよ」
これは、『気遣い』だ。
酔っぱらった仲間にかける、当たり前の気遣い。
その大きな手でワシャワシャと整えられた髪を掻きまわすのは『プレゼント』でもなければ『色恋』でもない。
ただ麦野の小さな思い出として残るだけの、ありきたりな行為。
麦野も、それを正しく感じ取ったのだろうか。
「絹旗、起きてるんでしょ。さっきからモロバレ」
「べ、別に起きてたんじゃなくて超寝ぼけてただけです!」
わざわざ寝たフリをしてこちらを窺っていた絹旗を起こし、からかう様にこう続ける。
「アンタもして欲しいんならしてもらえば?良い夢見られるかもよん」
「いやそんなして欲しいなんて超思ってないんですけど!?でも私以外全員やったなら此処は超空気を読むべきかな、みたいな!?」
「おおイイぜ、ちびっこ絹旗には寝んねのナデナデが必要だモンな」
手をワキワキとさせながら絹旗の下へ行く浜面。
顔を真っ赤にさせながら大人しく頭を差し出す絹旗。
それを大笑いしながら見つめる麦野。
そして、いつの間にか置きだして写真に収める滝壺。
これが、アイテムのクリスマス。
484 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:55:06.87 ID:osjcNek0
【部屋とクリスマスとライバル達】
「お前、良い母親になるかもな」
そう言われた御坂美琴はアイツがお父さんで私がお母さんで子供には真琴なんて名前を付けて……、
とそこまで妄想を爆発させ赤面した。
『超電磁砲』の異名を持つ彼女の、渾身の一撃と共に。
「なななななな、何恥ずかしいこと言ってんのよバカーーーーーー!!!!!!」
485 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:55:34.40 ID:osjcNek0
事は数十分前に遡る。
イルミネーションに彩られた大通りを緊張の面持ちで歩く美琴は、隣を歩く上条当麻をチラチラと見遣る最中で一人の迷子を発見した。
その小さな少女は割と長い時間保護者と離れた状態らしく、
優しく声をかけた美琴に飛びつき堪えていた涙を溢れさせた。
そんな少女を丁寧にあやしながら美琴は「何処で見失っちゃったの?」「いつ頃から一人ぼっち?」と事細かに情報を仕入れていく。
彼女の鮮やかなて付き合って故か、直ぐに少女の保護者は見つかった。
「バイバイ、お姉ちゃん達!!」と元気良く手を振る少女に、良かったなと上条は素直に感じる。
そこで冒頭の一言だ。
『学園都市最強の電撃使い』の一撃は辺り一面の電気機器にも大きな影響を及ぼしたらしい。
自身は『幻想殺し』で守れた上条も、周囲全体となると無力に等しくなる。
バチバチと不気味な音を立て、パチパチと灯りを点したり消したりという妖しい動きを繰り返していたイルミネーション達は
とうとうプツリという音を最後に全ての電気を消してしまった。
それだけならまだしも信号などの交通機関や各商店・家庭の電気すら消えてしまったのはマズイ。
当事者の美琴もどうしよう、やってしまった!と顔を真青にしている。
「落ち着け御坂!!お前のチカラでどうにかならないのか!?」
「此処でやれって言うの!?む、無理よ!!こんな広範囲なんて……キャっ!!」
486 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:56:13.00 ID:osjcNek0
反論しながら上条の方を振り向こうとした美琴は、未だ暗闇に慣れていない目の所為か
近くのレストランに設置されたコンクリートの階段に躓いてしまった。
そんな美琴がひっくり返る前にと慌てて上条も手を伸ばす。
しかしそこは不幸体質・超フラグ乱立師の上条当麻である。
『不幸な事にも』彼の足もとにも割と大きな小石が落ちていた。
暗闇の中上条はそれに気付く事が出来なかった。
美琴へと手を伸ばしながら足を踏み出した上条は自身もその小石へと躓き、そして――――
「おい大丈夫かビリビ……うわぁあああ!!!」
倒れ込んだ上条の『幻想殺し』は、見事美琴の標準より小さめの心臓部へと収まった。
「い、一体……何処、触って……イヤァアアアアア!!!!!!」
「わ、悪い落ち着いてくれ御坂…ってうぉおおおお!!??」
混乱しながら絶叫を上げた御坂は今にも内に秘めた紫電を全力開放させようとする勢いだった。
上条は今すぐ御坂の胸元から手を退けてやりたいのだが、
こんな状況で『幻想殺し』を彼女から放せば確実に自分は死ぬ。この近距離は絶対だ。
「お、落ち着いてくれ頼むから御坂、右手放せないお前から!!いやそうゆう路線の意味でなく生死の問題で!!」
「せせっせ、精子!!!???べべべべべ別に嫌ってわけじゃないってゆうか寧ろ歓迎なんだけどこんな大勢の前では……その……」
「いや何の話をしていらっしゃるんでせうか御坂さん!?」
上条も美琴も軽いパニック状態である。最早会話が噛み合っていない。
そんな時、こんな状況を切りぬけるキーパーソンとなる人物がやってきたのが上条の目に見えた。
ああ、誰でもいい助けてくれ。この状況を何とかしてくれ。
そして、その人物は―――――
「この変態類人猿!!こんな公衆の面前でお姉様のお、おお、押し倒すだなんてっ……!!」
「お前は白井……!!え、ちょ、本当に違うんです、あの鉄矢を向けないでいただきた……あの、だから、不幸だあああああああ!!!!!」
487 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:56:42.82 ID:osjcNek0
「取り敢えず、電気の方の復旧はこちらで手配しておきましたわ。
……といっても此処まで広範囲ですもの、局ももっと早くから手をつけていたようですが」
「「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」」
危うく婦女暴行罪で風紀委員に拘束されそうになった上条と「ああん、離れたくありませんわお姉様!!」と白井に腕を絡まれていた美琴は
暗闇に目が慣れてきた辺りがザワザワと自分達を本格的に騒ぎ立てる前に何とかその場を抜け出した。
「んで?これからどうする?イルミネーションの完全復旧にはまだ時間かかるって言ってたけど………どっかで暇潰すか?」
ここでウンと頷けば、美琴が上条と共に過ごす時間は格段に伸びる。
過程はどうあれ結果オーライだ。
しかし頷きかけた美琴の頭にそっと、あのシスターの顔が浮かんだ。
寂しそうに、しかし義理立てとして自分にこのクリスマスを譲ってくれたあのシスター。
自分はそれを有難く受け取ってきたが、1時間だけだよと言ったあのシスターは一体どんな思いで自分達を見送ったのだろう。
「………そうだな、――― ケーキ屋さん寄りたいかも。とびきり美味しいケーキ屋さん」
488 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:57:24.95 ID:osjcNek0
インデックスは誰もいなくなった部屋での突然の停電に困惑していた。
以前停電が起こったときには懐中電灯を持ちだした上条と共に恐い話などをして盛り上がったものだが、
一人ぼっちの家の中ではそんな思い出もただただ心細いだけである。
「とうまぁ……寂しいよぉ……」
自分が美琴へと彼を譲った事を、インデックスは後悔していない。
恋敵である彼女に塩を送ってやる事事態は釈然としないが、一食の恩義と言う借りをその恋敵に作るのはもっと釈然としなかった。
しかし、そんな想いとは裏腹に『寂しい』という感情は消えてくれない。
隣の部屋は誰かと共にこの瞬間を過ごしているのだろう。
インデックスにとっては聞きなれた、
日本人にとってはクリスマスにしか聴かないような讃美歌を流したその部屋からは時折クスクスとした笑い声が洩れてきた。
寂しさを紛らわせるためにポソポソと薄ら聴こえるメロディに合わせて歌ってみる。
そんな彼女の歌声が隣にも聞こえたのか、彼女を讃えるような拍手が壁伝いに送られた。
褒められても隣の賑わいを感じるだけで、寂しさは埋まらなかった。
テレビも付かない、暖房機器も付かないために冬の寒さが身に染みた。
「早く帰って来てよぉ……とうまぁ………」
そんな時だった。
玄関に響いたガチャリという施錠音はその瞬間、彼女にとって神の御神託を聞き入ることと同位となった。
489 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:57:53.72 ID:osjcNek0
「ただいまインデック……うお寒っ!!そっか、俺ら歩いてきたから体温まってるけど部屋こんなに寒いのか」
「……とうまぁ、ヒグっ……とうまぁ……」
「うお、どうなさったんですかインデックスさん!?お前暗闇恐怖症とかじゃなかったよな!?」
上条の帰宅を認識した途端、インデックスは堪えていた涙をボタボタと零し彼に飛びついた。
ワンワンと泣き続ける彼女に戸惑いながらも上条はその背中をポンポンと叩いてやる。
「そうだよな、こんな暗くて寒い部屋に一人きりじゃ寂しかったよな。ゴメンな」
「……う、……うん……でもとうま、短髪は?」
いるよ。そう言って上条が自身の後ろを見せると、そこには高級ケーキ店の箱を抱えた美琴が立っていた。
「御坂が帰ろうって言ったんだ。お前が一人じゃ寂しいだろうから、って」
上条の言葉にインデックスが窺う様にして美琴を見つめる。
どうして短髪が。
目がそう語っていた。
490 :
≪番外編≫ 部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ [saga]:2010/12/18(土) 21:58:36.63 ID:osjcNek0
「1時間って、そう約束したからね」
そんなインデックスに美琴は恥ずかしそうに答えた。
実際で、内心美琴は物凄く恥ずかしかった。
なんだかんだ言って彼女に『好敵手』以上の『友情』を感じている、自分に対して。
「でも外、こんな停電になっちゃって、……あんまり見て回れなかったんじゃ……?」
「そこは自業自得だし―――――それにアンタの立場になって考えた。私には寂しすぎて出来ないって、そう思った」
二人の会話にキョトンとする上条を尻目に少女達はそっと手を取り合う。
「ケーキ。買ってきたから食べましょ。アンタどうせお腹いっぱいになんかなってないんでしょ?」
「さっきまではいっぱいだったもん!でも泣いたらお腹がすいたんだよ。とーま、早くお皿並べて!!」
普段は喧嘩ばかりの彼女たちの突然の変わりように上条は目を白黒させる。
そして二人の笑顔を見ながら少し可笑しそうに笑った上条は、
「来年も3人で過ごそうな、クリスマス!!」
「「女心の解らないバカっ!!!」」
今宵これからも、きっと笑いが絶えることはない。
「あ、短髪!!そのオペラは私のなんだよ!」
「お子様はショートケーキでも食べてなさい」
≪部屋とクリスマスと舞台裏Ⅱ≫(完)
492 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 22:05:46.38 ID:SG0LFR.o
乙なんだよ!
浜面はとりあえず爆発しろなんだよ!
496 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 22:25:41.88 ID:kA6GsASO
ありがとう禁書の可愛さでお腹いっぱいです
上条さん本当に22なんだよなこれ…
505 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ :2010/12/19(日) 20:43:29.18 ID:DrGDPmM0
「なんで……」
朝になっても起きて来ない一方通行を心配して彼の部屋を訪れた打ち止めは戦慄した。
なぜなら彼のベッドには
「なんであなたと番外個体が一緒のベッドで寝ているの!?ってミサカはミサカはァァァァアアアアアア!!!!!!!!」
パジャマの上しか着ていない番外個体と、それをしっかり抱え込んだ一方通行が仲睦ましく一夜を共にしていた為である。
【部屋とプレゼントとミサカ】
506 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:44:06.41 ID:DrGDPmM0
「うっせェなァ……」
打ち止めの怒声で目覚めた一方通行は寝ぼけ眼を擦りながら奇声を上げた少女を見上げた。
打ち止めはプルプルと肩を震わせながらそんな彼をキッと睨みつけ尋問をかける。
「問1!なんで番外個体と一緒に寝てたの!?問2!なんで番外個体はそんな格好なの!?
問3!あなたのチェリーは既に奪われてしまったの!?ってミサカはミサカはあなたに追究してみる!!」
打ち止めの質問に一瞬訳が解らないと顔を顰めた一方通行も、
隣でうんぅ…と声を漏らして張り付いてくるお寝坊ワーストを見て納得した。
そういや強請られたまま添い寝したんだったか、と昨夜の事を思い出す。
――――― 思えば中々にこっ恥ずかしいことを自分は致したかもしれない。
そんな余計な事まで思い出しながら。
「解1、お前の勝手な約束の所為でコイツに付き合わされたから。解2、俺は知らねェどうせコイツが自分で脱いだ。
解3、女子高生が童貞云々言うな。つーか俺の歳で童貞っつーのはお前の中でアリなのかァ?」
「え、ちょ、それってまさか今回の前にもう済まして、えぇ!?ダメそんな、エェエ!!?ってミサカはミサカはぁぁああ……」
「んん……ちょっと最終信号、朝からキンキン煩い……」
打ち止め本日2回目の奇声に今度は番外個体もしっかり目覚めたようである。
507 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:44:51.09 ID:DrGDPmM0
起き上った彼女からシーツがパラリと落ちると
そこからは中々に豊満な果実を包む黒いレースと、魅惑の茂みを覆い隠す揃いのギリギリラインがパジャマの裾に隠れて見え隠れした。
「にゃはぁあああああ!!!!!!」
打ち止めの羞恥に満ちた叫び(本日3回目)にも目もくれず、
当の本人達は呑気に何のアフターかと思うほどの甘い空気(ジェラシーを含んだ打ち止め視点)を漂わせている。
「おいテメェ、真冬なんだから下蹴り脱いだりしてンじゃねェよ。風邪引くだろォが」
「だって……二人でひっついてたら熱くなってきちゃったからさあ」
肌蹴た番外個体のパジャマのボタンを留めてやりながらその下を手渡す一方通行を見て打ち止めは、
「や、やめてぇぇぇえええええええ!!!!!!!!」
本日4回目の悲痛な叫びをあげた。
508 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:45:37.69 ID:DrGDPmM0
「あ、ああナルホド……つまりあの約束(
>>389)の所為だったのね、ってミサカはミサカは一応は納得してみる。ウン。」
「だからそうだって言ったじゃねェか」
何とか打ち止めを落ち着かせた一方通行はコイツ全く人の話を聞いちゃいなかったなと察しを付けながら受け答える。
「てゆうかイヴにあの人の乳首や脇や×××を舐め漁ってたのが『約束』じゃなかったわけね、
ってミサカはミサカはある意味しっかりとした番外個体に感心してみる。ある意味」
「×××って何だよ、規制しなきゃなンねェよォな所舐めさせちゃねェよ」
「そうだよ安心しなよ最終信号。アソコすら舐めようとしたらあの人に止められたんだよアナr……」
「ハイ、番外個体ちゃん規制ェェェェェェ!!!!!」
今度は一方通行が奇声を上げながら番外個体の口を塞ぐ。
そんな番外個体を半ば羨ましげに見ていた打ち止めは、はたとその後ろのツリーの下に置かれた幾つかのプレゼントボックスに気が付いた。
「あ。そう言えば二日酔いだ何だでクリスマスに開けるの忘れてたね、ってミサカはミサカは今更ながらプレゼントの存在を示唆してみたり」
509 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:46:32.35 ID:DrGDPmM0
ツリーの下に置かれたプレゼントの数は6個。お互いが自分以外の2人へ向けて置いた数になる。
「折角だし今からプレゼント交換しよっか、
ってミサカはミサカは自分の買ったプレゼントを二人に手渡しながら提案してみる。ハイ、どーぞ」
打ち止めは一方通行に黒のリボン、番外個体にピンクのリボンの付いたプレゼントを手渡しながらそう言った。
それに薄く微笑んだ二人は自身らが購入したプレゼントをそれぞれ交換する。
「じゃあまずは番外個体のから開けようかな、ってミサカはミサカはリボンを解いてみたり」
「それって好きなオカズは最後に残す、ってヤツ?まあミサカはいいけどさ」
シュルシュルと番外個体から貰ったプレゼントの箱を開けていく打ち止めはそこでビデオの一時停止のように固まった。
同じ様に彼女からのそれを開けていた一方通行も岩と同類となっている。
「最終信号はこの前数学のテストで赤点取ってたから『サルでもわかる算数ドリル』。
あなたにはミサカ達に構わずに勝手に抜けば?って意味を込めて『オナホール』と『バイブ』」
空気が凍った。
「つーかよォ……オマエ一体何処でどんな顔してコレ買って来たンだ一体……」
「ああ店知りたい?師匠お勧めの路地裏店。
あなた案外と好きそうかなってバイブ買ったときはすんなりだったんだけど、オナホールは怪訝そうな顔されたなあ」
「もうオマエら白井黒子と会うの禁止だかンな」
510 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:47:11.30 ID:DrGDPmM0
「………き、気を取り直して次はミサカのプレゼントを開けてみてよ、ってミサカはミサカは二人を促してみる」
番外個体の件がよっぽど答えたのか、一方通行は失礼にも打ち止めのプレゼントを警戒して開けていた。
まあ仕方ないと言えば仕方ないが。
そして彼は、シュルシュルとリボンを解いた先の中身に驚愕した。
「モノクロの……ライター……?」
「あなた偶に煙草吸ってるし使うかなって思って。―――― 気に入らなかったかな?ってミサカはミサカはそっと伺ってみる」
モノクロの小物と言えば、以前一方通行が打ち止めに男が出来たと勘違いしたときに彼女が購入していたものだ。
彼好みの品を買う為に先輩から色々と話を聞いていたのだが、その所為で一方通行から誤解を受けることとなった曰くの品。
「オマエ、コレ……俺の為に買ってたのかよ……?」
「え、うん。そうだけど……やっぱり気に入らなかったかな?ってミサカはミサカは――――」
「―――― いや。クソガキにしちゃァ良いセンスしてンじゃねェかと思ってなァ」
な!ガキじゃないもん!と文句を飛ばす打ち止めを尻目に何故か安心した気になっている一方通行は
まあ。あの男にゾッコンなンてなってたら今頃ヤバかったしな、なんておかしな方向に思考を傾けていた。
しかしこれ位が本人達にとっても前進なのかもしれない。
511 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:47:52.62 ID:DrGDPmM0
「番外個体も開けてみてよ。ミサカ的には結構イイと思うんだ、ってミサカはミサカは自信を持って勧めてみたり」
促されるまま箱を開けた番外個体は目をパチパチとさせた。
「――――― ネックレス?」
「番外個体のアクセサリって可愛い系はあんまりないでしょ?お母様に貰った服とかに合うかなって選んでみたんだけど、
ってミサカはミサカはクリスマスを譲ってくれたお礼に買って来てみればこれだよチクショーって本音を晒しながら渡してみたり」
暫く押し黙った番外個体は着がえて来ると言って部屋を出ていった。
そう言えば彼女も一方通行も打ち止めに起こされたきり寝巻のままである。
一方通行のプレゼントを開けるのは3人揃ってからの方がいいだろうと判断した打ち止めは、
本当は待ちきれない彼のプレゼントを開ける事を耐え、番外個体を待つことにした。
一方通行もその間に自室に着がえに行った模様だ。
「――――― これで、どう?」
戻ってきた番外個体が着ていたのは以前美鈴から貰った所謂森ガール的なフリル満載の少女服だった。
胸元には先程打ち止めが渡したネックレスが飾られている。
「似合う!!似合うよ番外個体!!ってミサカはミサカは自分のセンスが抜群だった事に自画自賛してみたり!!」
絶賛する打ち止めに、番外個体は恥ずかしげに口を尖らせるといういつもなら絶対しない様な表情で
「………ありが、とう」
と小さく呟いた。
普段は一方通行を挟んだ恋のライバル的なポジションである筈なのに、彼女の嬉しそうな顔を見るのが打ち止めはひどく嬉しかった。
512 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:48:55.14 ID:DrGDPmM0
「ンじゃ、最後は俺のだなァ」
そう言うと一方通行はそれぞれ大きさの違う赤いリボンの付いた箱を二人へ手渡した。
自分のものよりも番外個体の箱の方が大きな事に少し動揺する。
「ね、ねぇ!番外個体から開けてみなよ!!ってミサカはミサカはお願いしてみたり!」
こうゆう時に人から先にやらせるのは非常にズルイと思ったが、自分から開けるなどという事は何ともし難かった。
ならミサカから開けるねと言われるがまま素直に実行してくれた番外個体は、
打ち止めのとき同様、箱の中身を見て再び目をパチパチと躍らせた。
「―――― ミュール……」
「ま、要はクソガキと同じだな。オマエあの少女趣味抜群の服に合わせる靴持ってねェクセに、
『お母様から貰ったのだから』っつって着る気満々だったからなァ」
番外個体が与えられたピンクのミュールは、彼はどんな顔でこれを買いに行ったのだろうと考えてしまうほどに可愛らしいもので、
しかしそれが美鈴の服とキチンとマッチするあたり無駄にブランドやらに精通している一方通行らしかった。
「まだ下ろしてねェし室内で履いても問題ねェだろ。合わせてみ?」
美鈴の服。
打ち止めのネックレス。
一方通行のミュール。
それらを全て揃えた番外個体は極めて女性的な普段とは全く違う印象を皆に与えた。
彼女本人も鏡の前でそれを認識すると、そっと胸の前に当てた手を握り締める。
「ウン。ありが、とぉ………大事にする」
番外個体のあんな笑顔見たの久しぶりだな、打ち止めはそう感じた。
513 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:50:25.97 ID:DrGDPmM0
「よ、よぉし。じゃあミサカも開けちゃおっかな、ってミサカはミサカは緊張の面持ちでリボンに手を伸ばしてみたり」
終に一方通行のプレゼントを開けた打ち止めは、その先でピタリと手を止めた。
そのままギギギ……と首を回転させると後ろにいた一方通行に静かに尋ねる。
「………コレ、は?」
「Yシャツ。揃いのが欲しかったみてェだから俺でもオマエでもサイズが合う様にオーダーしてきた」
揃いの、Yシャツ。
ミサカでもあの人でも着れるサイズの、Yシャツ。
「ね、ねぇ……ならもしかして今あなたが着てるYシャツって……」
「あァ、俺の分。この後かったりィが仕事だしなァ」
あの人とお揃いの、ペアルックの、Yシャツ。
「―――――― い、」
「……い?」
先程から片言でしか喋らない打ち止めに一方通行は眉を顰める。
選択肢を誤ったのだろうかと
学園都市第一位の頭脳をフル回転させながら本当にプレゼントがこれで良かったのか確認の為に彼女の顔色を窺う。
するとそこへ、
「いぃやっふぅうぅうううううう!!!!!!!!ってミサカはミサカは大・歓・喜ぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!!」
一方通行の鼓膜を突き破るかのような打ち止め本日5回目の奇声が辺り一面に響き渡った。
514 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:51:17.27 ID:DrGDPmM0
打ち止めは上機嫌で街を歩いていた。
仕事に行った一方通行と、あの服で少し散歩してくるという番外個体が家を出た為に自身も外へと繰り出すことにしたのだ。
現在の打ち止めの服装はいつもの制服。
ただし、その下には先程一方通行から貰った『彼シャツ』が仕込まれている。
(ムフフフフ……ああ、今この瞬間このミサカを誰かに自慢したくて堪らない……むふ、むふふふふふふ)
そんな打ち止めは大通りの前方で恰好のカモ、もとい丁度いい話相手を見つけた。
『妹達』の下位個体の一人だ。
「ねぇ!!あなたは何号?ってミサカはミサカはあなたへ唐突に尋ねてみる!」
「ミサカの製造番号は10032ですが何か御用でしょうか、とミサカは上位個体に尋ねます」
「うん!ちょっとお話に付き合って欲しいんだ。奢るから付いて来てよ、
ってミサカはミサカは上位であるのを良い事に10032号を引き摺り回してみる!」
「あーれー、とミサカは面倒臭ぇなこのJKと思いながらノリに合わせて叫びます。あーれー」
515 :
≪番外編≫ 部屋とプレゼントとミサカ [saga]:2010/12/19(日) 20:52:15.96 ID:DrGDPmM0
そんなこんなでミサカ10032号こと御坂妹を捕まえた打ち止めは近くのファミレスへと彼女を連れ込んだ。
そして適当に注文を付けた後、無い胸を張りながら御坂妹へと自慢を始めた。
「と、言う訳で!!これがミサカの彼シャツなのだ凄いだろう!!
とミサカはミサカは興味なさ気な10032号へと構わず見せつけてみたり!」
制服のボタンを少し外し、中のYシャツを見せつけた打ち止めは高々と天狗にした鼻をフフンと鳴らし言いきった。
そんな彼女を惚気んじゃねえよこのガキがという顔を隠しもせずに見せた御坂妹は、
これまでの話を聞いてのありのままの感想を打ち止めに伝えた。
「というか上位個体。彼シャツというのは彼氏のブカブカ袖余っちゃうYシャツを着るから彼シャツなのであって、
袖が余ったところでブカブカでもない、寧ろ一方通行の方がウエストの余る上位個体自身のYシャツを彼シャツと呼ぶかはミサカには甚だ疑問です。
とミサカは自分の長ったらしい説明口調にウンザリしながら吐き捨てます。砂糖も吐きそうウェップ」
ピシリ、と打ち止めが固まった。
凍りついた打ち止めにも目もくれず席を立った御坂妹は静かに伝票を上位個体の手へと握らせながらこう呟いて店を出ていった。
「国産黒毛和牛を使った極上サーロインステーキご馳走様でした、とミサカは礼儀良く申し上げます。それでは」
カランカランとドアを閉めたベルが鳴り、ハッと意識を取り戻した打ち止めは――――――
「チクショォォォォォオオオ!!!ミサカにとってはこれが彼シャツなんだよコンチクショォォォォオオ!!!!
でも真の意味での彼シャツも諦めねェからなコノヤロォォオオオオ!!!!」
打ち止めの彼シャツを目論む計画は、まだまだ終わりを見せない。
≪部屋とプレゼントとミサカ≫(完)
517 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 21:09:38.33 ID:FRbnpYY0
乙
そろそろ番外はリオに帰るべきなんじゃないかなってミサカはミサカは涙目になってみたり
一方さんまじ罪な男
518 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 21:29:41.83 ID:HAmY4oAO
なにこの打ち止め超可愛い
520 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 22:08:12.64 ID:Nq1ngWwo
乙
御坂妹ww
521 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 22:41:54.66 ID:F/ycOUSO
ここにきてまたYシャツとは…
一方さん外さねーな流石だわ
彼(とお揃いの)シャツでもいいじゃないか
一方さんとペアルックって考えると…なんかこっちが恥ずかしくなってきた
526 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/20(月) 14:24:21.13 ID:7kpJqxMo
>つーか俺の歳で童貞っつーのはお前の中でアリなのかァ?
おいやめろおい
転載元
打ち止め「あなたのYシャツ貸して欲しいな!ってミサカはミサカは…」一方「あァ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1290833510/
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