1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:20:44.69 ID:FvSA75Cl0
顔に噴き付ける風が冷たい。周囲は雲に包まれ、白い。
そして、学園都市第三位にして常盤台のエースの電撃姫、御坂美琴は
美琴「……!!」
気がついた。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:21:34.91 ID:FvSA75Cl0
美琴が目覚めた場所は、空中であった。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:22:06.73 ID:lU4Gh4Cr0
あらやだこわい
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:22:41.18 ID:FvSA75Cl0
雲が晴れ、地上が見えてくる。眼前に広がるのは一面緑色。ジャングルだ。
美琴「ちょ、な、なにこれ!?」
超電磁砲の異名を持つ彼女の能力でも、高度数千メートルからの落下には対応できない。
もう三分も持たないだろう。
冷蔵庫から落ちる卵を連想し、美琴は目を瞑った。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:23:55.23 ID:FvSA75Cl0
美琴の覚醒に合わせて、胸のメーターに赤い光が灯る。
混乱している美琴は気付かなかったが、彼女の身体には大きなバックパックがくくりつけられていた。
胸元のバックルには、赤い液晶のメーターのようなものが埋め込まれている。
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
電子音と共にメーターの目盛りは減っていく。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:24:39.34 ID:FvSA75Cl0
残り数百メートル。
メーターに合わせて電子音の間隔は短くなってゆき、ついには一つの長い音となった。
それと同時に赤い光が消え、美琴の背中のバックパックが破裂する。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:25:24.05 ID:FvSA75Cl0
美琴「ぶわっ!?」
美琴の背中から大きな布の塊が飛び出す。
布の塊が落下によって広がり展開、一枚の巨大なパラシュートとなった。
パラシュートが美琴の落下のスピードを緩めてゆく。
そして美琴は、ジャングルのど真ん中へと落下していった。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:26:19.54 ID:FvSA75Cl0
バキバキッ ドサッ
美琴「いたたたた……」
飛び出た枝でところどころ身体を切ってしまっている。
常盤台の夏服は袖が短く、スカート丈も長くはない。
目を固く瞑っていたのは幸いだった。枝で目を傷つけていたかもしれない。
身体にくくりつけられていたパラシュートを外し、御坂美琴は立ち上がった。
美琴「(学園都市の新しい実験?それにしては意味がわからなさ過ぎよね……。)」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:27:46.73 ID:FvSA75Cl0
???「こんなところで何をしているのですか?」
美琴「ッ!?」
困惑している美琴の背後から、声をかける者がいた。
???「と、ミサカはお姉さまに質問します。」
美琴「アンタ……!?」
御坂美琴と全く同じ姿をしているが、スカートの裾からは短パンがなく、頭にはゴーグルをつけている。
1990号「このミサカは識別番号01990号です、と、ミサカはお姉さまへ自己紹介します。」
御坂美琴のクローン、“妹達”の内の一人だった。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:29:26.15 ID:FvSA75Cl0
美琴「なんでこんなところに……!?」
1990号「それはこちらが聞きたいです、質問を質問で返さないでください、テスト0点ですよ、と、ミサカは鸚鵡返しします。」
美琴「わ、私は目覚めたら空から落とされてて……」
1990号「奇遇ですね、このミサカもです、と、ミサカは新しい情報が得られない事に露骨にがっかりします。」
美琴「それにあんたの番号……あの実験で……?」
1990号「それも不思議でなりません、確か私は一方通行に追われていたところだったはず、とミサカは自身の記憶を確認します。」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:30:51.81 ID:FvSA75Cl0
美琴「他の妹達と連絡は取れないの?あのネットワークがあるんじゃ……?」
01990号「何らかの原因でこのミサカからのアクセスが不通になっているようです、とミサカは至極残念そうに答えます。」
考えられる事として。
01990号「現在ネットワークに何らかの機能障害が起きていてアクセスが不能になっているか、」
「制御から離れたミサカを通して部外者がネットワークに干渉できないように、プロテクトされているか、」
「そもそもこの場所自体がネットワークの圏外になっていて接続そのものが出来ないのか、」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:31:34.88 ID:FvSA75Cl0
01990号「これらのいずれかでしょう、とミサカは推論を述べます。」
ネットワークの機能障害、圏外、そんな事が有り得るのだろうか。
世界中に散らばった妹達全員がほぼ完全に情報を共有しているらしい、という事を美琴は知っている。
(それを身を以て知る事となるのだが、それはまだ先の話だ。)
その範囲の限界がどれくらいなのかは知らないが、まさか、学園都市内だけ、というわけではあるまい。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:32:37.50 ID:FvSA75Cl0
2番目の仮説が妥当だろうか。
そもそも有り得ない話ではあるが、内外に敵が多い学園都市の事情からすれば有り得ない事ではない。
死んだ事になっている個体からはアクセス出来ないようになっているのかも。
どこかに、組織図のような形でネットワークを図化した名簿があって、実験で死亡した個体の番号には斜線が引かれて、不通となる。
美琴「……って、イメージなんだけど?」
1990号「そんな一昔前の小学校の連絡網じゃあるまいし(プ 、と、ミサカはお姉さまの発想力の貧弱さを嘆きます。」
美琴「……アンタ、本当にネットワークから切り離されてるの?」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:33:18.82 ID:FvSA75Cl0
そういえば、と、1990号は切り出した。
1990号「あの“実験”は終わったのですか?と、ミサカはお姉さまに質問します。」
美琴は言葉に詰まった。
あの実験はその後も続けられ、あの幻想殺しを持つ少年の活躍によって打ち砕かれるまで更に8000人近い妹達が命を落とした。
ネットワークから切り離されている1990号はその事を知らない。
あまりに残酷すぎる事実。
だから美琴は、
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:34:04.96 ID:FvSA75Cl0
「……ええ。」
嘘をついた。
美琴「実験中にあんたがいなくなったせいで、ツリーダイアグラムの計算が狂ったの。」
だから実験は1990回で中止になった。
それで中止になるなら苦労しない。
実に幼稚な嘘だという事ぐらい、美琴自身よくわかっていた。
それでも敢えて言ったのは、もっと早く終わらせる事が出来ていたら、という美琴本人の願望だったのかもしれない。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:34:57.95 ID:FvSA75Cl0
1990号の無感動な瞳に、若干変化が見えた後、彼女は
1990号「……そうですか、と、ミサカは安心します。」
と答えた。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:36:26.10 ID:FvSA75Cl0
がさがさ。
美琴「誰ッ!?」
???「……君達、日本人かい?」
草陰から二人の男が現れる。
???「驚かしたなら悪かった。」
???「武器を持ってるなら、撃たないでくれ。丸腰だから。」
髪の黒い青年が日本語で話し掛けてきた。
御人好しの好青年という雰囲気のある男だ。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:36:32.36 ID:8Jb77gaS0
プレデターズ?
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:37:20.48 ID:FvSA75Cl0
美琴「話せるの?」
???「母が日系でね。何年か日本にいた事もある。」
日本語が通じるなら、その方がありがたい。
???「僕はジョン。ジョン・ユタニだ。」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:38:20.31 ID:FvSA75Cl0
AHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!
美琴「悲鳴ッ!?」 ダッ
1990号「ちょっと待ってください、とミサカはお姉様を呼び止め……ああもう行っちゃった。」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:39:09.19 ID:FvSA75Cl0
駆け付けると、大木に、男が逆さまにぶら下がっていた。
助けを求めている男。
1990号「パラシュートが枝に引っかかってるようですね、とミサカはry」
言い終える前に、美琴がレールガンでパラシュートの紐を撃って切断していた。
ぼちゃん。
絶叫しながら、下の水溜りへ落下する男。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:39:19.41 ID:j6PHRXwp0
>美琴の覚醒に合わせて、胸のメーターに赤い光が灯る。
ウルトラマンだと思ってしまった俺に謝れ
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:40:27.20 ID:FvSA75Cl0
ジョン「い、今のって……!?」
美琴「ああ、説明しとくべきだったわね。」
「私ね、日本の“学園都市”ってところで、能力の開発を受けているの。」
ジョン「……キミの名前はひょっとして、“ミサカ”かい?」
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:41:32.66 ID:FvSA75Cl0
美琴「え?何でそれを……うわっ!」
そこへずぶ濡れの男が妙なアクセントの日本語で割り込む。
???「アナタ、あの学園都市第三位のミコト・ミサカですか!?」
???「幻想御手事件、乱雑解放事件を解決したという、あの!?」
美琴「え、ええ、まぁ。(何、この人……?)」
???「光栄です、以前ワタシもそこで能力開発を受けていました!」
美琴「え、ええっと……?」
???「あー、申し遅れました、ワタシの名前はエドウィンです。ヨロシク。」
美琴「ど、どもー…… ;」
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:43:22.66 ID:FvSA75Cl0
ジョン「そこの子とミコトは凄い似てるけど、ひょっとして双子?」
1990号を指すジョン。
美琴「ま、まぁね!」ギクッ
1990号「厳密には異なりますが似たようなものです、とミサカは答えます。」
ジョン「……三つ子なのかな?」
1990号「その言い方で表すならば20000子です、とミサカは答えます。」
ジョン「……その喋り方は最近の日本での流行りなのかい?」
1990号「いいえ、ミサカ達の間でのみのトレンドです、とミサカは否定します。」
ジョン「ミサカ達……?」
1990号「ミサカ達と言うのはお姉様n 美琴「ごめんごめん!この子ちょっと変わってるの!!」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:44:26.13 ID:FvSA75Cl0
ジョン「……外見はびっくりするほど似てるけど、性格は全然違うって事でいいのかな?」
美琴「そ、そうそう!!」
1990号「そうです、と、ミサカは何か釈然としない物を感じながらお姉様に同意します。」
「ちなみに見分け方は、下着g 美琴「わーわー!!」
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:45:07.18 ID:FvSA75Cl0
1990号「ところであちらの方はどなたですか、とミサカは話題を切り替えます。」
ジョンと共に現れたヒスパニック系の巨漢を指す1990号。
あちらの方「…………。」
身長は2mにも達するであろう。
アクション映画に極悪ギャングの役どころで出演していそうな強面だった。
ジョン「彼はブルーノ、って言うらしい。」
美琴「らしい、って……?」
ジョン「話しかけてもあまり喋らないんだ。英語は通じるみたいなんだけど。」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [↑CJの人]:2011/01/09(日) 20:45:57.71 ID:FvSA75Cl0
一行はジャングルを歩き続けた。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:47:16.07 ID:FvSA75Cl0
「……なんだこれ?」
巨大な石造物だった。
ぐるりと石柱が立ち並び、合間合間に骸骨の怪物の像が置かれている。
中央にはこれまた別の巨大な骸骨の怪物の像が、周囲の骸骨を従えるような配置で置かれていた。
ジョン「恐竜か何かかな……?竜の像だとしたらここが地球上のどこかの可能性もあるけど。」
1990号「竜にしては随分頭が後ろに長い竜ですね、とミサカは形状を説明します。」
美琴「うわっやだこれ、目がついてない。気味悪ぅ……。」
エドウィン「昔これに似た物を見ました。」
美琴「え、どこで!?」
エドウィン「ディスカバリーチャンネルです。」
「ピラミッド特集でした。」
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:48:24.44 ID:FvSA75Cl0
ジョンがバックパックから蛍光ランタンを取り出した。
美琴「準備がいいわね。」
ジョン「BePrepared、“そなえよ つねに”ってね。」
辺りは薄暗くなっている。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:49:13.19 ID:FvSA75Cl0
1990号「ところで、」
1990号「この場所は妙なところですね、とミサカは他の人達に問題提起します。」
エドウィン「えっ?」
美琴「どういう意味よ?」
1990号「月が7つあります、とミサカは自分の発見を話します。」
美琴「えっ」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:49:57.33 ID:FvSA75Cl0
見上げた空には、実に異様な光景が広がっていた。
普段見えるそれの数倍大きい月が7つ。
いや、大きいだけではなく、クレーターまで見える距離だった。
色も白ではなく、赤であったり、かと思えば青であったり。
褐色のものもあれば緑の物もあり、と、一定ではない。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:50:50.45 ID:FvSA75Cl0
美琴「これ、夢じゃ…………?」
1990号「そうだとすると集団で幻覚を見ている事になります、とミサカは動揺しつつ分析します。」
ジョン「実は、それだけじゃないんだ。」
ジョン「さっきコンパスを見てみたんだが、地磁気が狂ってる。」
エドウィン「ワタシも変だと思いました。」
「一緒に生えているはずの無い植物が一緒に生えています。」
「熱帯雨林で見れる物もあるかと思えば、高山植物らしいものも生えていたり、」
「花の咲いている物があるかと思えば、冬の植物のように枯れている物もあったり、」
「ここが普通のジャングルだったらまず有り得ません。」
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:51:39.32 ID:FvSA75Cl0
…………。
一同の中を、生温かい風が抜けてゆく。
背筋が冷たくなったのは、風のせいだけではあるまい。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:56:05.59 ID:FvSA75Cl0
美琴「なんか寒い……。」
1990号「夏服ですから当然です、とミサカは常盤台の制服にケチをつけます。」
ブルーノ ツカツカツカツカ……
美琴「!」
巨体のブルーノが迫ってくるその威圧感は、学園都市第三位の実力者である美琴をも圧倒した。
小脇に大量の枝のようなものを抱えている。
美琴「(こ、怖ー……。)」
バキッ!!
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:56:58.94 ID:FvSA75Cl0
美琴、1990号 ビクゥッ
バキッ!バキッ!
ブルーノ「……。」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 20:57:42.57 ID:FvSA75Cl0
黙々と枝を折り始めるブルーノ。
美琴「え、えーっと……ブルーノさん?」
シュッ
枝をひとしきり折り、組むと、ポケットからマッチを出し、火をつけた。
美琴「(焚火を作ってくれてたんだ……)」
美琴「(案外いい人なのかも)あ、ありがとう……。」
1990号「この場合はThankYouと言うべきでは、とミサカは提案します。」
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [ネオポリスの中の人]:2011/01/09(日) 20:59:35.95 ID:FvSA75Cl0
ブルーノの強面が緩む。根は子供好きなのだろうか。
ブルーノ つピラ
美琴「写真……?」
ブルーノとヒスパニック系の女が並んで映っている。
余白には“Isabela”と書いてある。
美琴「イザベラさん……?」
ブルーノ コクリ
美琴「この人って……奥さん?」
ブルーノ コクリ
美琴「へぇー……。」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:01:26.10 ID:FvSA75Cl0
美琴「(でも、後ろにいるのって……)」
「(どーみてもギャングよねこれ…… ;)」
写真の事はともかくとして、話題を繋ぐ。
美琴「子供はいるの?」
ブルーノは写真の下の方を指差した。
確かに、イザベラの腹部は少し膨らんでいる。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:02:45.03 ID:FvSA75Cl0
…
彼は石柱の上から、見つめている。
“偉大な蛇の座”でキャンプファイアーとは、随分マヌケな奴らだ。
地球人達の眼に彼の姿は映らない。
彼らの不可思議なテクノロジーが、彼を完全に隠匿していた。
「子供 ハ イルンデスカ?」
今回の狩りはこぶつきか。彼は内心舌打ちした。
それが不満である一方、狩りは弱者から狙うのが理に適っているのも事実。
楽しみは後に取っておいた方がいい。
音もなく膝からネットガンを取り外し、そして構える。
…
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:04:01.52 ID:FvSA75Cl0
ちょっとうんこしてくる
47 :
ただいま :2011/01/09(日) 21:11:21.97 ID:FvSA75Cl0
ドシュッ
ブルーノ「!!」
美琴を突き飛ばすブルーノ。
美琴「あいたっ!?」
直後、ブルーノ目掛けて鋼鉄製の投網が覆いかぶさった。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:11:32.97 ID:VbYjnkuj0
じゃあ俺も
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:12:06.60 ID:FvSA75Cl0
投網はそのままべたりと石柱に貼り付き、ブルーノを磔に締め上げる。
絶叫するブルーノ。
美琴「ブルーノさん!」
ジョン「触るんじゃない!」
美琴「早く助けなきゃ!」
ジョン「よく見ろ。」
指差すジョン。
ジョン「ワイヤーソーだ……!」
鋼鉄の投網の下、ブルーノの身体はズタズタに切り裂かれつつあった。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:12:54.24 ID:FvSA75Cl0
苦悶するブルーノの腹部に、赤い三点光が当たった。
赤い光はするするとブルーノの身体を滑り、胸部で止まる。
ブルーノ「……!!」
ブルーノが最後に見た物。
それは石柱の上から彼の心臓を狙う、怪物の光るまなこであった。
青白い高熱の塊が発射され、ブルーノの心臓を貫通し破壊する。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:14:12.44 ID:FvSA75Cl0
石柱から見えない影のような物がするりと飛び下りる。
降り立った辺りの茂みが揺らぎ、火花が散る。
ジョン「な、なんだ!?」
美琴「何あいつ!?」
眼に映らないが、何かが要る。
学園都市にも光学変化の能力者はいない事もないが、これほどの精度で擬態できるのはなかなかいない。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:14:54.64 ID:FvSA75Cl0
美琴「!?」
美琴は先の一体に気を取られ、接近しているもう一体に気付かなかった。
もう一体の見えない影は数歩のところにまで迫っていた。
美琴「くっ!!」
放電する美琴だったが、相手にはまるで応えていない。
電撃が干渉し、光学迷彩が破れ、影は姿を現す。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:15:36.22 ID:FvSA75Cl0
美琴「何よコイツ……うぐっ!?」
美琴の首を掴み、ぐいと引き寄せたそいつは、おおよそ人とは言い難い姿をしていた。
爬虫類のような白い肌がところどころから見え、頭にはドレッドヘアーが無数に生えている。
顔には赤い照準機のついた金属製マスクをしており、素顔は伺えない。
全身に銀色の鎧のようなものを身につけており、左肩にはキャノン砲のようなものが添え付けられていた。
???「オマエ ハ イッタイ ナンダ?」
怪物が美琴に聞き返した。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:19:15.31 ID:FvSA75Cl0
白い怪物の出現に合わせて、石柱から飛び降りた怪物も姿を現す。
おおよその輪郭は白い奴と変わらないが、こちらは体色が緑で、髪は青い。
装備にも少しばかり違いがある。
キャノン砲が右肩にあり、色は銀と言うよりも赤銅に近い。
肩から鎖を垂らし、マスクから象牙のような二本の牙が生えている。
??? カラカラカラカラ……
緑の怪物は、左腕のネットガンを膝に装着した。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:20:05.38 ID:FvSA75Cl0
ジョン「上だ!まだ上にいるぞ!」
石柱の上からプラズマキャノンで狙撃しようとする怪物の姿を確認するジョン。
発見された事に気づき、石柱から飛び降りる3体目の怪物。
先程の2体とシルエットは変わらないものの、こちらは全身を黒い鱗で覆われている。
ドレッドヘアーも黒単色ではなく、ところどころに赤が混じっている。
マスクも異なり、顎の部分には、何かの生き物の下顎が埋め込まれていた。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:20:53.50 ID:FvSA75Cl0
獲物を横取りにされて怒った緑の怪物がタックルを仕掛ける。
それを受け止め、黒い怪物は突き飛ばす。
他の二体に気付いた白い怪物は、美琴を放すと、二体の取っ組み合いに割り込んだ。
三体の怪物は、三つ巴の殺し合いを始めた。
ジョン「逃げるぞ!!」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:22:21.38 ID:FvSA75Cl0
しかしどちらに向かえばいいのかわからない。
???「こっちだ!!」
その時、草陰から一人の男が飛び出し、一行を誘導した。
???「死にたくなければついてこい!」
それに従い、一行は近くの穴倉へ転がり込む。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:23:57.43 ID:FvSA75Cl0
それは古い寺院の遺跡のようなものだった。
先程の遺物同様、石造りで、ところどころに古い象形文字のような物が書かれている。
一行を救った男は、歩きながらノーランドと名乗った。
ノーランド「あんたらもやっぱり落とされたクチか?」
ジョン「ああ、あんたもか?」
ノーランド「かなり昔にな。」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:25:03.60 ID:FvSA75Cl0
ノーランドは、ホールのようなところへ一行を案内した。
ホールには武器のようなものがいくつか置いてある。
モーフィアス「……さて、どっから話したものかな……。」
(ジョンの通訳を介して)語り始めるノーランド。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:27:45.76 ID:FvSA75Cl0
ノーランド「ここは奴らの狩り場みたいなもんだ。」
「獲物を補充しては殺し、補充しては殺しを続けながら、延々と殺し合いを続けてやがる」
エドウィン「な、何故にWhy!?」
ノーランド「さぁな、俺が聞きたいね。」
「お前達が見たのはどんな奴だ?白い奴か?緑の奴か?」
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:28:27.36 ID:FvSA75Cl0
ジョン「白い奴と緑色の奴、それに黒い奴もいた。」
ノーランド「“ハンター”、“トラッカー”、“バーサーカー”か。」
「これまた厄介な奴らに目を付けられたようだな。」
美琴「名前があるの?」
ノーランド「いや、殺しのやり方や見た目から、俺がつけたアダ名だよ。」
ノーランド「奴らはだいたい3~4体でここに来るんだが、全員微妙に違いがある。」
「イヌとジャッカル、オオカミみたいにな。」
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:29:09.74 ID:FvSA75Cl0
ノーランド「白い奴はハンター。」
「こいつはそれこそプロの狩人みたく独特のこだわりがあるみたいだが、詳しくはわからん。」
美琴「(私を掴んだ奴ね。)」
モーフィアスじゃない人「あと、ハンターの追跡の技術と執念は本物だ。」
「目をつけられたらどこまでも追いかけ回されると思って差し支えねえ。」
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:29:23.52 ID:nuyt9mKK0
,. - 、 ◎
彡 ゚ω゚ミ ||
用ノ哭ヾ二=G キャンディ食べる?
〈_〉〉=={
{{{.《_甘.》
{_} {_}
ム' ム
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:30:12.20 ID:FvSA75Cl0
ノーランド「緑の奴はトラッカー(犬の調教師)だ。」
「いつも犬用の鎖をぶら下げてるからな。」
「犬みたいなものでまず偵察、陽動して、」
美琴、1990号 ピクッ
ノーランド「……あー、犬といっても、そこの嬢ちゃん達が想像しているようなワンコロみたいなのとは全然違うからな?」
「それで追い詰めたところで自身が殺しに来る。」
美琴、1990号 シュン…
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:31:09.49 ID:FvSA75Cl0
ノーランド「黒い奴はバーサーカー。」
「文字通り、狂犬みたいに一番凶暴で危険な野郎だ。」
「奴にはルールも何も存在しないから、とにかく強い。」
「仲間をぶっ殺したり、かと思ったら獲物を生け捕りにして嬲り殺しにしたり、何を仕出かすか全く予想がつかん。」
「昔、ヤツに捕まった人間の末路を見た事があるが……酷い有様だった。」
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:32:42.14 ID:FvSA75Cl0
ノーランド「全員共通してる事は、だ。」
ノーランド「奴らは狩る側、“プレデター”で、俺達は狩られる側。」
ノーランド「見つかったらオシマイってこった。」
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:37:25.06 ID:bWb7bCp50
>>64
∧_∧ いたぞおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
(;´Д`)
-=≡ / ヽ ,. - 、 ◎
. /| | |. | 彡 ゚ω゚ミ ||
-=≡ /. \ヽ/\\_ 用ノ哭ヾ二=G
/ ヽ⌒)==ヽ_) 〈_〉〉=={ ||
-= / /⌒\.\ || || {{{.《_甘.》 ||
/ / > ) || || {_} {_} ||
/ / / /_||_ || ム' ム____,
し' (_つ ̄(_)) ̄ (.)) ̄ (_))
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:40:13.88 ID:FvSA75Cl0
説明を終えたノーランドは、脇に包みを抱えて立ち上がる。
ジョン「何処に行くんだ?」
ノーランド「今晩はゆっくり寝るといい。
「俺が見張りをしておいてやるよ」
そう言いながらノーランドはホールを出て行った。
70 :
いたぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!>>64 :2011/01/09(日) 21:41:44.51 ID:FvSA75Cl0
その夜。
美琴「……どこで知ったの?」
ジョン「え?」
美琴「私の事よ。」
何故ジョンが美琴の名前を知っていたのか(>>25-27)。
ジョン「ああ、その事か。」
1990号「これは素晴らしい……」
「と、ミサカは鞘から抜いたナイフを見ながら独り言を呟きます。」
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:43:06.58 ID:FvSA75Cl0
ジョン「母の姉、つまり僕の日系の叔母がね、」
「といっても育ての親みたいなもんなんだけど。」
「その人が、まぁー、その、ちょっとした会社を経営してるんだが……」
美琴「そこが学園都市のスポンサーになってるんだ?」
ジョン「そうそう、そういう事。」
なるほど、そういう事ね。美琴はジョンの心境を察し、苦笑した。
“ちょっとした会社”が学園都市のスポンサーになれるわけがない。
本人の意に沿わず、お嬢様・お坊ちゃま扱いされる人間にしかわからない悩みだ。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:43:52.58 ID:FvSA75Cl0
ジョン「昔は僕も行きたいって思ってたけど、何故か当の叔母が許してくれなくてね。」
「それが切っ掛けで大喧嘩した挙句、家出同然の状態で今はこの有り様さ。」
肩をすくめるジョン。
ジョン「でもやっぱり気になっちゃってね。」
「叔母の部下を通じて、学園都市にまつわる話を定期的に仕入れてるんだ」
1990号「この鎖帷子いいですねうふふ、と、ミサカは柄にもない事を呟きます。」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:45:22.51 ID:FvSA75Cl0
ジョン「ましてや第三位ともなれば、学園都市での生活も楽しいもんなんだろうね……。」
美琴「…………」
美琴「……そうでもないかなー。」
「レベル5だからって変なのには狙われるし、」
「変な事件には巻き込まれるし、」
「漫画の立ち読み一つも気を遣わないといけないし。」
「レベル0でも勝てない相手ってのもいるし。」
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:48:33.68 ID:FvSA75Cl0
ジョン「え?レベル0って能力がない人だろ?」
美琴「本人はそう言ってるけど、あれ絶対嘘ね。」
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:49:27.69 ID:FvSA75Cl0
美琴「こっちから勝負仕掛けると、いつも攻撃しないで逃げようとするのよ。」
「そのくせ、こっちの攻撃だけはきっちり防御して見せるんだから。」
「レールガンを素手で防ぐ奴のどこが無能力だ、ってカンジ。」
ジョン「(それを人に向けて撃つのもどうかと思うけどなぁ……)」
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:50:29.70 ID:FvSA75Cl0
美琴「もっとムカつくのは、あいつが超がつく御人好しだってところ。」
「この私に負けないってだけでも凄いのに、その事を全然鼻にかけないし。」
「自分で『不幸だー』って言うわりには、厄介事にいつも首突っ込むし。」
「……なんかやたら女の子にモテるのに自覚ないし。」
美琴「とにかくホントにもうムカつく奴。」
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 21:51:45.97 ID:FvSA75Cl0
美琴「ま、いつか私が負かしてやるんだけど。」フフン
ジョン「…………楽しそうだね。」
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:18:54.56 ID:FvSA75Cl0
美琴「……あれ?」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:19:48.18 ID:FvSA75Cl0
ジョン「どうかしたかい。」
美琴「いや、何か変な臭いが……」 クンクン
変な臭いは強烈な刺激臭へと変わる。
何かの薬品が燃えるような臭いだ。
美琴「……火事っ!?」
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:20:36.43 ID:FvSA75Cl0
ジョン「ドアは!?」
飛び起き、ドアに飛びつくエドウィン。
エドウィン「ドアは開きません!外からカギがかかっています!」
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:21:21.11 ID:FvSA75Cl0
通路の方からノーランドの声がする。
ノーランド「……人肉って食ったことあるか?」
「ねえだろうなぁ?」
「追い詰められると案外食えるもんなんだぜ?」
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:22:07.55 ID:FvSA75Cl0
ジョン「な、何を言ってるんだ……!?」
ノーランド「お前らどうせ、俺の事を殺して食おうとしてたんだろう?」
美琴「そんな事するわけg」
ノーランド「黙れ糞ガキ!サバイバルのSの字も知らんくせに!」
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:28:45.41 ID:FvSA75Cl0
額に汗を浮かべながら、叫ぶノーランド。
ノーランド「いいぜ、」
「お前らが俺を殺そうってなら、」
「俺がお前らをぶち殺す!」
この男、狂っている。長年の逃亡生活が、ノーランドの脳を蝕んでしまったのだ。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:30:41.92 ID:FvSA75Cl0
美琴「離れて!」
美琴はポケットからコインを一枚取り出し、出口の方へ向けて、ぶっ放した。
封鎖された扉が吹き飛び、出入り口が確保される。
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:31:48.62 ID:XK+1cVoZP
御坂の電撃くらったらいくらプレデターでも一撃だろ・・・・通常兵器で十分死ぬんだし
88 :
>>87落雷食らっても叫んでる方々だしなぁ…… :2011/01/09(日) 22:34:37.34 ID:FvSA75Cl0
…
人間達の仲間割れに真っ先に気が付いたのはトラッカーだった。
異常な電流の放出、先程逃がした人間どもの仕業に違いない!
さっきのように他の競争者から邪魔されない内に、獲物を独占しなくては。
トラッカーは闇夜を跳び、廃墟へと侵入した。
その後を、彼の忠実な猟犬どもが追う。
…
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:35:20.32 ID:FvSA75Cl0
廃墟のどこかから、トラッカーの雄叫びが聞こえる。
ノーランド「来たか……!」
今まで手に入れた装備をフル活用しながら、廃墟から脱出するノーランド。
彼が脱出するまではあいつらが囮になってくれるだろう、という読みもあった。
ノーランド「……災難だと思って諦めな。」
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:36:42.90 ID:dsxxiRzU0
こんな話なの?
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:39:20.85 ID:FvSA75Cl0
ジョン「(……まずい、)」
「(あの雄叫びが聞こえたから慌てて走ったけど、)」
「(そのせいで皆とはぐれてしまった……!)」
93 :
うん、こんな感じ :2011/01/09(日) 22:41:39.73 ID:FvSA75Cl0
カツン。
ジョン「(足音!?)誰かいるのか!?」
???「……。」
足音が近づいてくる。
人間なのか、それともあの例の怪物か、暗くてよくわからない。
ノーランドの部屋から失敬した発煙筒に火をつけ、投げるジョン。
94 :
うん、こんな感じ :2011/01/09(日) 22:42:20.94 ID:FvSA75Cl0
ガツン。
空中で何か見えない物にぶつかり、発煙筒は床へと落ちた。
発煙筒の煙をかきわけ、足音の主が姿を現す。
緑の体色、首の鎖、牙の生えたマスク。トラッカーだ。
ジョン「くそっ!」
踵を返し、トラッカーから逃げ出すジョン。
トラッカー カラカラカラカラ……
ジョンをせせら笑うように、トラッカーは顫動音を鳴らしている。
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:44:03.05 ID:FvSA75Cl0
後を追うトラッカーは腰のスマートディスクを起動し、投げ放つ。
光り輝くスマートディスクは素早くジョンを追い越し、その鋭い刃で彼の片足を切断した。
ジョン「ぎゃあぁっ!」
スマートディスクはトラッカーの左腕へ舞い戻り、再び変形して腰の鞘と格納される。
獲物が動けなくなった事を確認し、トラッカーは左腕のコンピュータガントレットを操作した。
他の獲物については“犬”に任せてある。
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:46:52.46 ID:FvSA75Cl0
美琴「ジョンさんとはぐれちゃった……。」
グルルルル……。
美琴「な、なにあれ……?」
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:49:38.18 ID:FvSA75Cl0
1990号「あれが例の“犬”でしょうか、と、ミサカは愕然とします。」
美琴「あんなの犬じゃない……!」
サイズこそ大型犬クラスだが、頭には角が生え、顎はワニのようであり、そこにはイノシシのような牙が無数に生え揃っている。
ノーランドの言うとおり、とても犬とは言い難い生き物だ。
不潔な涎を撒き散らしながら、美琴と1990号に駆け寄って来る犬ども。
無論じゃれるためではない。
美琴「逃げるよっ!!」
1990号「言われるまでもありません、と、ミサカは既に走り出しています。」
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:51:01.07 ID:FvSA75Cl0
群がる犬どもと、それらから逃げる少女達。
電撃で牽制しつつ、走り、また電撃で牽制して走る。
この繰り返しがいつまで持つのかわからない。
加えて、この廃墟の迷路のような構造。
あの“完全記憶能力を持つ少女”がいたなら話は違ったかもしれない。
あるいは、美琴の崇拝者であり自称露払い“白井黒子”がその場にいたならば。
しかし記憶能力に関しても美琴も1990号も常人程度でしかなく、二人とも電撃使いであってテレポーターではなかった。
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:53:22.45 ID:FvSA75Cl0
…
倒れこむジョンに、トラッカーは右腕のリストブレードを突き立てた。
ジョン「うごぁっ」
トラッカー グルルルル……
血を吐くジョンを胸元へ手繰り寄せ、勝ち誇ったように唸るトラッカー。
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:54:10.57 ID:FvSA75Cl0
ジョン「……タダじゃぁ死なねぇ!」
トラッカーの油断につけ入り、懐から何かを引き抜くジョン。
トラッカー「!!」
彼の指にぶら下がっているのは、手榴弾のピンだった。
驚いた犬のような悲鳴を挙げ、慌ててジョンを放り投げるトラッカー。
直後、廃墟内部を劫火が吹き荒れた。
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:56:21.29 ID:FvSA75Cl0
…
迷路を駆け回る美琴達と犬。
美琴と1990号の眼に光が差し込む。
間違いない、外部からの月光だ。
美琴「出口が見えたッ!」
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:58:07.05 ID:FvSA75Cl0
途端に轟く爆音。
1990号「後ろからすごい音がしましたね、とミサカは嫌な予感がします。」
急激な温度上昇で、空気が膨張し、迷路内を駆け巡っているのだ。
美琴と1990号が飛び出す。
それと同時に、出入り口から炎が噴き出し、背後に迫っていた犬達を飲み込む。
幸運だったのは、二人が飛び出した出入り口のすぐ下が堀になっており、二人は炎に巻き込まれずに済んだ。
1990号「おかげで頭から泥に突っ込みました、とミサカはあながち幸運でもない事を主張します。」
美琴「あたたた……。」
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:59:08.01 ID:FvSA75Cl0
ごそごそ。
穴から這い出て来た物に警戒する二人だったが、
???「ワタシです、エドウィンです。」
美琴「エドウィンさん、ジョンとノーランドは?」
エドウィン「わかりません、途中ではぐれました。」
「今の爆発は多分ユタニ君が……。」
美琴「(ジョン……。)」
1990号は吹き飛んだ犬の死骸を突っついている。
1990号「でもおかげで犬は殲滅したようですね、とミサカh!?」
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 22:59:50.44 ID:FvSA75Cl0
美琴、エドウィン「!?」
背後から撃たれ、言葉もなく倒れ込む1990号。
青い電光と共に現れる黒い体色。バーサーカーだ。
美琴「待ち伏せだなんて……ッ!?」
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:00:32.15 ID:FvSA75Cl0
バーサーカー グルルルル……
あの得体の知れない肩のキャノン砲の照準光が、美琴の額を撫でる。
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:03:06.72 ID:FvSA75Cl0
直後、後ろで倒れていた1990号が起き上がり、バーサーカーへと飛びついた。
1990号「逃げてくださいお姉さま!とミサカは逃亡を促します。」
手のナイフに電荷を加え、バーサーカーを滅多刺しにする1990号。
不意打ちに混乱し、1990号をなかなか振り解けないバーサーカー。
エドウィン「逃げましょうミコト!」
1990号を助けようと力いっぱい暴れる美琴だが、大人の腕力からは逃れられない。
半ば抱えられるような形で、美琴はエドウィンと共に脱出した。
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:03:52.01 ID:FvSA75Cl0
1990号の捨て身の格闘は2分と持たなかった。
黒く焦げた常盤台の制服の下から、焼けた鎖帷子が露出している。
1990号「こんな事もあろうかと先程失敬しておきました、とミサカは画面の前の誰かへ説明します。」
加えて彼女は電撃使い。無意識の内に電流の膜で身体を包み、キャノン破壊力を削いでいた。
出し抜かれた事に、バーサーカーは怒りを隠せない。
1990号「ざまあみやがれ宇宙のカマ野郎、とミサカは嘲笑いま」
彼女の言葉が終わるのを待たず、バーサーカーの刃が彼女の胸部を刺し貫いた。
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:05:26.39 ID:FvSA75Cl0
誰もいなくなった廃墟の屋上で何か作業をしている者がいる。
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:06:19.57 ID:FvSA75Cl0
緑色の体色に首の鎖。トラッカーだった。
火傷を負ってはいるが、致命傷ではない。
まさか獲物が自爆するとは思ってもみなかった。
おかげでネットガンが破損し、犬も何体か失った。
それにあの不思議な電撃使い。
取るに足らないガキだと思っていたが、意外なダークホースの登場にトラッカーは戸惑っていた。
そんなトラッカーの背後から、黒い影が忍び寄った。
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:07:32.54 ID:FvSA75Cl0
そんなトラッカーの背後から、黒い影が忍び寄った。
気配に素早く気づき、トラッカーはリストブレードで斬りかかる。
迷彩が破れ、正体を露わした黒い影はバーサーカーであった。
トラッカーへ威嚇の咆哮を挙げるバーサーカー。
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:09:21.25 ID:FvSA75Cl0
左腕のコントローラーを操作するトラッカー。
単純な戦闘能力では勝ち目はないかもしれないが、こちらには豊富な装備がある。
犬を召喚してなぶり殺しにしてやる。
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:09:25.33 ID:KZDneNNZ0
七夕の夜はプレデター
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:12:21.04 ID:FvSA75Cl0
……という判断だったが、時既に遅し。
トラッカーがコントローラーを操作するより先に、バーサーカーがプラズマキャノンを発射していた。
撃ち出されたプラズマの槍が、トラッカーの左肩を撃ち抜き、吹き飛ばす。
吹き飛んだ左腕が痙攣し、意味なく空を握った。
片腕を失った激痛で悲鳴を挙げるトラッカー。
その隙がバーサーカーのさらなる追撃を許した。
バーサーカーは再びプラズマを発射、リストブレードを振り上げようとしたトラッカーの右腕に命中。
右腕が肘の辺りで千切れ飛ぶ。
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:13:31.89 ID:FvSA75Cl0
無様に膝を突くトラッカー。
武器を操作するはずの腕はもうない。抵抗する戦意すらなかった。
そんな相手の胸倉をバーサーカーは掴み上げ、容赦なく壁へ叩きつける。
金属の擦過音が鳴り、バーサーカーの右腕から一枚の長いリストブレードが飛び出す。
そしてバーサーカーは唸りながら、トラッカーの脊椎を引き抜いた。
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/09(日) 23:14:27.76 ID:FvSA75Cl0
バーサーカーの雄叫びが、闇夜で轟く。
それに合わせるかのように、異星のジャングルで雨が降り始めていた。
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:08:03.75 ID:7GKQ99k60
二人は雨を避けるように、近くの洞窟へと逃げ込んだ。
エドウィン「……水、飲みますか?」
美琴 「……。」コクリ
エドウィンから差し出された水筒から水を飲む美琴。
エドウィン「ここなら出入りは一方通行、」
「いざとなればアナタの能力で相手を迎撃できる。」
美琴「……。」
エドウィン「……あー、雨が、強くなってますね、」
「しばらくここで雨宿りさせてもらいましょう。」
119 :
さるさんにかかってた :2011/01/10(月) 00:13:12.55 ID:7GKQ99k60
美琴「……さっきから気になってた事なんだけど、」
エドウィン「なんですか?」
美琴「あんた、本当は何者?」
エドウィン「え……?」
美琴「私についてはまだしも、幻想御手の話も乱雑解放の話も部外者が知ってる話じゃない。」
「どうしてあんたがそれを知ってるの?」
エドウィン「……。」
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:16:11.85 ID:7GKQ99k60
エドウィン「…………流石だ。」
エドウィン「でももっと早く気付くべきだったなァ、ミサカ・ミコト?」
美琴「どういう意味y……ッッッ!!??」
美琴を凄まじい頭痛が襲う。崩れ落ちる美琴。
それを見、エドウィンの顔から、御人好し外国人の仮面が完全に剥げ落ちた。
エドウィン「わざわざはぐれたフリをして、あの廃墟を漁った甲斐があったよ。」
「ワタシには薬学に関しては特別な才能があってね。」
「勘で調合したから効果は然程持続しないだろうが、充分だろう。」
キャパシティダウンを大音量で耳元に掛けられたかのように頭がガンガンする。
それだけでなく、身体にも力が入らない。
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:20:38.26 ID:7GKQ99k60
エドウィン「そうとも、学園都市にいたのは昔じゃない。」
「それどころか、ここに拉致されるまであそこの施設に勤務してたんだ。」
「何を隠そう、ワタシは元々、ミズ・ライフラインの下で働いてたんだよ。」
美琴「(ライフライン……!?)」
テレスティーナ・木原・ライフライン。
かつて美琴達にその野望を打ち砕かれた狂気の科学者。
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:27:24.80 ID:7GKQ99k60
エドウィン「あの一件の後、彼女の部下だったワタシは酷い扱いさ。」
「どこの部署でも腫れ物、厄介者扱いだ。」
「あちこち回された挙句、学園都市暗部の傘下に拾われたのは不幸中の幸いだったがね。」
「最初パラシュートで放り出された時はどうなるかと思ったさ。」
「でもこうしてキミも連れて来られたと知った時、小躍りしていただろう?」
「ずっとこの時を待っていた。」
邪悪な笑みを浮かべるエドウィン。
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:29:41.95 ID:7GKQ99k60
エドウィン「でもね、もうそんな事は半分くらいどうでもいいんだ。」
エドウィン「ワタシはね、考えたんだよ。」
「あのつまらない退屈でクソッタレな生活に帰るべきなのか、って。」
「誰もワタシを認めてくれない、理不尽で甘ったれで時としてえげつないあの世界に?」
「そんなの御免だね。」
「この場所、この惑星こそがワタシ、そしてキミのいるべき場所なんだ。」
美琴「お……!あ……!」
美琴は反論したかったが、喉が言う事を聞かない。
エドウィン「キミだって楽しいんだろう?誰かと闘うのがさァ!?」
「だから必要もないのにレールガンなんて技を編み出したんだろう?」
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:31:47.72 ID:7GKQ99k60
狂ったように嗤うエドウィンの背後、岩陰から、あの光の歪みがゆらりと現れた。
美琴「あ……!が……!」
警告しようとするが、声が出ない。
エドウィン「なんだ?言いたい事でもあるってかアッッ!?」
ナイフを逆手に、振り上げるエドウィン。
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:32:36.77 ID:7GKQ99k60
その腹部を、見えない何かが貫いた。
エドウィン「な……!が……?」
串刺しにされたまま、エドウィンの身体はそのまま暗闇へと引きずり込まれる。
途端に悲鳴と、骨や内蔵が引きずり出されるバキバキバキという音が狭い洞窟内に響く。
音が止むと、光の歪みが再び暗闇から歩み出て、光学迷彩を解いた姿を現した。
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:33:20.68 ID:7GKQ99k60
白い肌に、黒い髪。血に染まった右腕。
“ハンター”だ。
如何なる方法によるものか、美琴の警戒を掻い潜りここまで尾けてきていた。
あるいは、人間達がここに来ると計算し、ここで待ち伏せしていたのかもしれない。
全身麻痺状態で、電撃も使えない。絶体絶命の状況だった。
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 00:35:39.39 ID:7GKQ99k60
ハンター グイ
美琴「あぐッ……!」
ハンターは美琴の喉を掴み上げ、その顔を見つめている。
爪の長く伸びた指で、美琴の頬をなぞるハンター。
強烈な威圧感。身体の麻痺がなかったとしても、美琴は微動だに出来なかったかもしれない。
どうやって殺そうか考えているのだろうか、それとも記念品に適しているのはどこか鑑定しているのか。
それから、ハンターは、美琴を放り捨てた。
129 :
ここのさるの基準がわからない :2011/01/10(月) 01:01:30.49 ID:7GKQ99k60
美琴に背を向け、クローキングを展開し、ハンターは姿を眩ます。
プロの狩人の、つまらん、という呟きが聞こえたような気がした。
美琴「(た……助か……っ……………。)」
緊張から解放された安堵からか、いつしか美琴は眠り込んでいた。
…。
…1時間後。
目覚めると、麻痺からはほぼ完全に解放されていた。
美琴「(……よし、)」
美琴「(頭がくらくらするけど、能力には支障ないみたい)」ビリビリ
美琴「(雨は…………止んでるみたいね。)」
美琴「…………行こう。」
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:06:47.24 ID:7GKQ99k60
回復してから、一体どれくらい歩いただろう。
闇の中を彷徨う美琴。
共に行く者もいなければ、行くあてもない。
疲労と、ジャングルの湿った空気、絶望感が、彼女の身体から体温を奪ってゆく。
ふと、ぼんやりと明かりが見える。誰かいるのだろうか。
少し足早に灯りへ向かって行く。
美琴「……なーんだ。」
最初に襲撃されたあの野営地だった。
灯りの正体は、なんのことはない、ジョンが使っていた電池ランタンだ。(>>33)
結局この辺りをぐるぐる回っていただけだったのか。
美琴は力なく笑った。
132 :
次さるで途絶えたら寝る 落ちてたら後日貼り直す :2011/01/10(月) 01:09:22.94 ID:7GKQ99k60
美琴「(何かが柱に……!?)」
美琴は悲鳴を挙げそうになり、押し殺した。
1体は、トラッカーだ。首と両腕を切断された状態で逆さ吊りにされている。
黒い奴、バーサーカーの仕業だろうか。ノーランドの言葉を思い出す。
『昔、ヤツに捕まった人間の末路を見た事があるが……酷い有様だった……。』
自分もこうなっていたのかもしれないと考えると、美琴は身体が震えた。
もう1体はハンターだ。
両腕は鎖で縛られ、引き剥がされた鎧や武器が辺りに散らばっている。
あの金属製のマスクははめたままで、こちらは生きているのか死んでいるのかは判らない。
後で拷問するつもりなのか、それとも美琴を狙った新手の罠か。
少なくとも、電気仕掛けの罠はない。もしそのようなものがあるならば、美琴にはわかるはずだ。
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:15:38.63 ID:7GKQ99k60
二度も命を見逃してもらった事が気にかかっていたのか。
その後の展開を計算した上での打算的な行動だったのか。
はたまた、そのまま見捨てる事を、彼女持ち前の正義感が許さなかったのか。
その時何故そうしたのか、美琴にもわからなかった。
美琴「……アンタ、私の言葉がわかるんでしょう?」
美琴「(最初に出くわした時、私の質問に対して答えようとしてたし)」
ハンター「……??」 ムクリ
美琴「これからアンタを自由にしてあげる。」
美琴「だから、私を地球に帰して。」
気が付いた時、美琴はそんな取引を持ち掛けていた。
言いたい事だけ言って、美琴は落ちていたハンターの槍で、その両腕を縛っている鎖を断ち切る。
後は賭けだ。どうにでもなればいい。
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:16:36.95 ID:7GKQ99k60
解き放たれたハンターはすぐさま立ち上がり、美琴の喉を掴んで柱へ押し付ける。
美琴「(やっぱりダメ!?)」
睨むように美琴をしばらく見つめると、ハンターは彼女の身体を離す。
そして、油断なく美琴を監視しながら、自身の剥がされた鎧を着る作業に取り掛かった。
…
その頃、バーサーカーは、ノーランドを解体していた。
長年取り逃がしていた獲物だ、借りを返してもらわねばなるまい。少しずつ、ゆっくりと。
バーサーカーは躊躇しない。むしろそれを楽しんでさえいる。
彼にとっては、この時の獲物の声、仕草こそが至高の愉悦なのであった。
ビー!ビー!ビー!
お楽しみの最中、突然、ガントレットの警報装置が作動する。
野営地に磔にしておいた獲物が脱出したらしい。まさかあいつか!?
バーサーカーは先程捕らえておいた獲物(彼にとっては同族とて獲物に過ぎない)の事を思い出す。
手早く道具を片付けて、リストブレードでノーランドの喉を突いてトドメを刺すと、バーサーカーは自身の野営地へと駆けた。
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:17:40.36 ID:7GKQ99k60
装備を装着し終わったハンターは、美琴に向き直る。
ハンターは左腕のコンピュータガントレットを作動させ、光を投影する。
立体映像機能までついているのか。野蛮な異星人には不似合いまでのハイテクだ。
そしてそこに映されているのは、
美琴「地球……!」
その呟きに応じるように、ハンターは大きく頷いた。
途端、野営地の向こう側に巨大な光の塊が出現し、ジェットの音のような物が聞こえてくる。
美琴「光学迷彩で隠してあったんだ……!」
まさか最初の野営地にこそ脱出のヒントがあったとは。
美琴「なんとも皮肉よね……。」
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:19:10.58 ID:7GKQ99k60
反対側の茂みから、野獣の唸り声が聞こえた。
振り返る美琴とハンター。
バーサーカー カチカチカチ…
黒い鱗、骸骨の飾りがついたマスク、バーサーカーだ。
片手にぶら下げていたノーランドの死体を捨て、雄叫びを上げるバーサーカー。
美琴「やろうってわけね……!」
電撃を弾けさせ、跳び出そうとする美琴を、ハンターが突き飛ばした。
美琴「な、何すんのy……!!」
宇宙人の言語や性質には暗い美琴だったが、今目の前に立つ狩人が何を言いたいのかは理解できた。
俺 の 獲 物 だ 、 手 を 出 す な 。
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:20:54.96 ID:7GKQ99k60
美琴「……ありがと。」
宇宙船へと駆けてゆく美琴を、ハンターがちらりと見た。
さあ、始めようか。
ハンターは勇ましく咆哮した。
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:21:52.78 ID:7GKQ99k60
両者は向かい合い、突進、中央部で正面衝突した。
ぬかるんだ泥地を転げ回り、激しく殴り合う。
殴る度に装備から青い火花が飛び、光学迷彩に干渉、姿にノイズが走る。
揉み合う中でハンターを蹴り飛ばし、間合いを取ったバーサーカーはガントレットを操作。
それに合わせて、茂みから素早い影が飛び出す。
トラッカーから奪った犬だ。
猪のようにパワフルで狼のように獰猛な犬がハンターに襲い掛かる。
ハンターは背中から一本のバトンを取り外した。
手元のロックを外して変形させるとバトンは一本の槍へと変わる。
槍を構え、犬の群れへ飛び込むハンター。
見事な槍捌きで次々と犬の頸を刎ねてゆく。
そうしてハンターはあっという間に犬の群れを殲滅してしまった。
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:22:55.71 ID:7GKQ99k60
犬が駄目ならこいつだ。
バーサーカーはハンター目掛けてスマートディスクを放つ。
スマートディスクは、バーサーカーの左腕の動きに応じて、空中を自由自在に旋回。
素早い動きでハンターを翻弄し、その身体をずたずたに切り裂く。
ハンターは神経を研ぎ澄まし、槍を投擲した。
槍は見事命中、空を舞う円盤を串刺しにし、石柱へと張りつけた。
ならば、これでどうだ?バーサーカーは両肩のキャノンを起動。
一門だけでも厄介なプラズマキャノンが二門。これもトラッカーから奪ったものだ。
最初の一発がハンターのプラズマキャノンを破壊する。
機関砲のように、間断なくプラズマ弾を連射するバーサーカー。
優れた動体視力と反射神経で、弾幕の合間を縫い、回避するハンター。
石像や石柱を次々と粉砕し、吹っ飛ばした石造物の破片と泥が飛び散った。
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 01:32:13.66 ID:g8l5zgpyO
規制解除による支援だ!
あとハンターがファルコにだぶった。
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:00:40.73 ID:7GKQ99k60
プラズマキャノンの掃射が止み、爆発が収まると、いつの間にかハンターの姿は消えていた。
どこに消えやがった!?
困惑するバーサーカーの脇から、ハンターが飛び出す。
光学迷彩で隠れていたのだ。ハンターとバーサーカーは再び激突した。
ハンターのリストブレードを、バーサーカーは自身のブレードで受け止める。
斬り結ぶ二体のプレデター達。
見事な剣閃でリストブレードでバーサーカーの身体を引っ掻くハンター。
ハンターの身体を持ち上げ、岩へ叩きつけるバーサーカー。
技量ではハンターの方が上かもしれないが、身体能力ではバーサーカーの方が遥かに上回っていた。
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:01:47.65 ID:7GKQ99k60
達人の蟻は素人の象に敵わない。
激しい闘いの果てに、ハンターのリストブレードが折られた。
全ての装備を失ったハンターの腹部に、バーサーカーはリストブレードを突き立てる。
思い切り引き寄せて、顔面へ頭突きを叩き込み、マスクを打ち砕く。
マスクの破片の隙間、ハンターの額と口から、緑色の体液が噴き出した。
リストブレードを引き抜き、そのままハンターの左腕を叩き斬る。
バーサーカーはハンターの喉を掴み上げ、それから、引き抜いたリストブレードの一閃で、その頭部を胴体から斬り離した。
バーサーカーの勝利の雄叫びに、耳をつんざくような激しいジェット音が重なった。
彼らの宇宙船が発進、バーサーカーの頭上を越えて、宇宙へ向かってゆくのが見える。
さっきの小娘はそういうわけか。ハンターの真意を察したバーサーカーは嘲笑う。
だが惜しかったなァ?
バーサーカーがガントレットを展開し、キーパッドを叩く。
ハンターが命がけで発進させた宇宙船は、大気圏を離脱する直前で自爆、光の塵となり消滅した。
144 :
もうちょい頑張る :2011/01/10(月) 02:02:33.02 ID:7GKQ99k60
その時だった。
バーサーカーの頬を超音速の何かがかすり、左肩のプロテクターに直撃、丸ごと吹き飛ばした。
???「流石のアンタも、これは通じるみたいね……!」
数々の強敵を撃破してきた彼女の得意技にして、その異名の由来。
バーサーカーが振り返ると、目の前に常盤台の超電磁砲─レールガン─、御坂美琴が立っていた。
残った右肩のプラズマキャノンを発射するバーサーカー。
美琴「こんなもの、タネがわかれば!」
放出されたプラズマを、美琴は右手で払い、そして横へ薙いだ。
バーサーカーは驚愕するが、実は原理自体は難しくはない。
手に電気の膜を張って強力な磁場を作る事で、プラズマの軌道を逸らし、受け流す。
勿論、御坂美琴が優れた電撃使いだからこそ出来る芸当だ。
人体を貫通する稲妻、プラズマキャノンも、最高位の電撃使いである美琴には通用しない。
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:03:55.09 ID:7GKQ99k60
美琴を庇い、世にもおぞましい死に方をしたブルーノとジョン。
あの実験、今回と最初から最後まで運命に弄ばれ続けた1990号。
美琴を殺す事に執着しながら死んでいったエドウィン。
文字通り弱肉強食の精神で、何年も逃げ続けてきた挙句失敗したノーランド。
一度敗北した相手へ勇敢に闘い、散ったハンター。
美琴「……今度は、私の番。」
美琴は右手を突き出し、指先で二発目のコインを弾く。
超高速で撃ち出されたコインが、バーサーカーの脇腹を通り過ぎ、背後の石柱を木っ端微塵にした。
美琴にプラズマキャノンは通用しない。
しかし、バーサーカーにレールガンを防ぐ術はない。
狩る側と狩られる側が完全に逆転していた。
美琴「(こんな事になるならもっと詰めておけばよかった……。)」
ポケットに入っているコインの数はさほど多くない。残り3発。
敵の生命力は未知数、一発で仕留められるかどうかさえ危うい。
正直なところ、バケツ一杯欲しかったが、贅沢は言っていられない。
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:04:40.11 ID:7GKQ99k60
三発目をひらりとかわし、光学迷彩を起動するバーサーカー。
美琴「逃げんなあああああああああ!!!」
バーサーカーの生体電流を探り出し、撃つ!
動き回るバーサーカーには命中しない。石柱が一つ粉砕される。
美琴「(ええい、まどろっこしい!!)」
美琴「うるあああああああああああああああああ!!」
美琴は空気中に放電、辺り一帯に電撃をばらまく。
攻撃の為ではない。ただの放電では殺せない事がわかっている。
電気がバーサーカーの光学迷彩に干渉し破壊、その姿を浮かび上がらせた。
美琴の最後の一発が、動揺したバーサーカーの上半身に直撃する。
バーサーカーは衝撃で吹き飛ばされ、石柱に激突。
崩壊した瓦礫の下敷きとなった。
美琴「(やった!?)」
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:05:53.44 ID:7GKQ99k60
だが、バーサーカー本人はほぼ無傷だった。
瓦礫を突き崩し、肩と首をこきこきと鳴らしながら、悠然と立ち上がるバーサーカー。
超音速のレールガンの直撃を受けたのではなく、まるで軽い貧血でも起こしただけであるかのように。
美琴「うそッ!?」
上半身の装甲に、美琴のコインがめり込み、半ば融合してしまっている。
ところどころから火花を噴き、ひび割れて、もはや装甲の用を足さないだろうと思われた。
バーサーカーはめちゃめちゃになった上半身の装甲を脱ぎ、地面に叩きつけると、美琴を睨みつけ咆哮した。
今、バーサーカーは完全にブチキレていた。
得意の電撃も牽制にはなるかもしれないが、辺りは湿地。
しかも相手は、ただの雷撃では殺傷出来ない事がわかっている。
効果を十分発揮させるのは難しい。
砂鉄やコインなど、電気や磁力を媒介にして活用出来るものがあれば対抗できるかもしれないが。
ポケットにコインはもう、ない。
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:07:36.84 ID:7GKQ99k60
バーサーカーに張り倒され、蹴りで吹っ飛ばされる。
美琴「あぐぅっ!!」
息を継ぐ間もなく殴り飛ばされ、ぬかるんだ泥の中を転げまわる御坂美琴。
まるでハンマーで殴打されているようだ。歯や顔の骨が折れないのが不思議なくらいの威力だった。
女子供と言えど、激怒したバーサーカーは容赦しない。
不意打ちを狙う事が出来た1990号とは違い、こちらは真っ向勝負。
どこかの州知事や人間兵器、傭兵ならまだしも、せいぜい中学生に毛が生えた程度に過ぎない美琴の身体能力で敵う相手ではない。
だがしかし、奴らは獲物を仕留める時、獲物の喉を掴み上げる癖がある。
今まで遭遇した時、それと先程のハンターを殺した様子を観察して、気付いた事だった。
美琴「(バーサーカーが掴んだら、 直 接 その身体へ 全 力 の 電 流 を叩き込むッッ!)」
果たしてどれほどの威力に耐えられるのかわからないが、最高出力値は数億ボルトにまで達する。
生きているモノに到底耐えられる威力ではない。
正体不明の化け物とはいえ、相手も傷つき、血も流している。
血が流れるなら、殺せるはずだ。
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:09:09.44 ID:7GKQ99k60
美琴を殴打するのに飽きたのか、バーサーカーは美琴の眼前に聳え立っている。
次はどう料理してやろうか、とでも考えているのだろうか。
美琴「やるならやりなさいよ……!」
バーサーカーを挑発する美琴。
何か思いついたのか、バーサーカーは左手で美琴を掴み上げた。
美琴「(かかった!!)」
演算し全力で放電する美琴だったが、
バーサーカー「…………。」
電流は流れていかなかった。
美琴「(な、なんで!?)」
美琴は、自身の喉を掴んでいるバーサーカーの腕に手を触れる。
金属の冷たい感触ではなく、ざらざらとした粘土のような質感。もしや絶縁性なのか。
バーサーカーは、トロフィーのように高らかに掲げ、万力のような腕力で美琴の気道を絞めてゆく。
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:12:46.64 ID:7GKQ99k60
美琴の策に気付いていたのだ。
勝者の余裕だろうか、自由な右手でゆっくりと自身のマスクに爪を掛ける。
ゴキッ、という嫌な音が鳴り、美琴へ素顔を晒すバーサーカー。
美琴「(……なんて醜い、恐ろしい顔なんだろ。)」
口の周囲から大きく広がった四本の牙。ぎょろりと蠢いている小さく赤い目。禿げ上がった真っ赤な額。
バーサーカー・プレデターの異名にふさわしい、おぞましい怪物じみた素顔だった。
美琴「(息が……!!)」
美琴が窒息するか否か、ギリギリの締め方で、美琴を嬲るバーサーカー。
バーサーカー「災難ダト思ッテ諦メナ……!」
あざ笑うかのように言い放つ。ノーランドの台詞だ。(>>89)
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:18:25.75 ID:7GKQ99k60
流石に限界なので寝る。
落ちたら後日立て直す。
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 02:30:12.67 ID:7MHoopCP0
美琴は常に電磁波発しててそれの反射で物体を見分けれるから光学迷彩は意味なしな気がする
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 03:05:04.22 ID:dXuXchhO0
戦闘能力の無い相手はクリーナー以外手を出さないんだっけ
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 05:24:44.82 ID:QWI2nJQs0
仲間思いなんだか鬼畜なんだか
163 :
おはよう :2011/01/10(月) 08:54:30.22 ID:K1WiOImO0
美琴は気付いた。
バーサーカーの背後の石柱に、槍が突き立っている。
先程の戦闘でハンターが投げたものだ。
血と暴力に飢えたバーサーカーは、美琴を嬲るのに夢中でそれに気付いていない。
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 08:55:12.02 ID:K1WiOImO0
美琴「(アレを利用できれば…!)」
美琴は酸欠の脳で必死に演算し、手から磁力を発して、槍を手繰り寄せる。
岩に深々と突き刺さった槍が少しずつ動いてゆく。
バーサーカーが右手のリストブレードを展開する。
槍が半分まで抜ける。
バーサーカーがリストブレードを振り上げる。
そして、
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 08:56:00.85 ID:K1WiOImO0
槍が、バーサーカーの胸郭を突き破った。
成功した。バーサーカーは何が起こったのかすら理解できていない。
膝をつくバーサーカーが、離された美琴の顔を見上げた。
右手で槍を握り締め、美琴は吼えた。
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 08:56:43.20 ID:K1WiOImO0
美琴「これが本当のッッ!」
槍を持つ手に力が入る。
美琴「ホントの災難って奴よおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
そして彼女はありったけの電流を放った。
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 08:57:27.89 ID:K1WiOImO0
数億ボルトの電圧、それも内臓へ直に流される事によって、生み出される破壊力。
体内で内臓が破裂し、口から血を吐くバーサーカー。
バーサーカーの全身が焼け、目玉が飛び出し、肉は爆裂した。
裂けた体中から緑の血が噴き出し、美琴へ降り掛かる。
…。
数分後、バーサーカーの死体が完全に炭化するまで、美琴は放電し続けた。
槍を手放し、へたり込む美琴。これ以上はもう出ない。
焼き尽くされたバーサーカーの死骸は、美琴が槍を離すと同時に崩れ落ち、倒れた拍子に粉々に砕け散った。
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 08:58:12.04 ID:K1WiOImO0
美琴「もう帰れないのかな……。」
頸を切断されたハンターの死体を見つめながら、美琴は呟いた。
バーサーカーという差し迫った恐怖がなくなった途端、美琴は急に心細くなった。
宇宙船はない。ここがどこなのかもわからない。
絶望的状況なのは変わりなかった。
気付かない内に、美琴の頬を涙が伝っていた。
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 08:58:53.45 ID:K1WiOImO0
その時、美琴の全身に赤い斑点が浮かび上がった。
美琴「!?」
あの赤い照準光だ。それも1人2人という数ではない。
??? グルルル……
??? カラカラカラカラ……
美琴を包囲するかのように、プレデター達が次々と姿を現した。
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 09:03:24.91 ID:K1WiOImO0
短くてごめんね。
これから知り合い二人と南極辺りにエイリアン狩りに行って来る。
ネットガンとリストブレードありゃ充分だよね
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 09:28:56.55 ID:QWI2nJQs0
おまえらそんなこと言ってると八宝菜出さなきゃいけなくなるだろ
174 :
中途半端だからもうちょいがんばる :2011/01/10(月) 09:36:50.11 ID:K1WiOImO0
侍のように腰からナタをぶらさげ、全身を赤い鎧で包んでいるもの。
全身に緑と赤の模様が入っており、上半身に黒いプロテクターを着込んでいるもの。
銅色のイノシシのようなマスクを被っているもの。
青白い肌をしており、槍を携えているもの。
黄色い体色に、肩から毛皮を巻いているもの。
山羊や羊を思わせる、面長なマスクを被っているもの。
全身に重装甲の鎧をまとい、骸骨のようなマスクを被っているもの。
緑の体色で、鳥を思わせるマスクを被り、左腕に機械の鳥型偵察機を従えているもの。
ハンターとよく似ているが、赤い照準装置がないマスクを被っているもの。
両肩に頭蓋骨を飾り、マスクに返り血のような赤いストライプを入れているもの。
両腕から巨大なブレードを伸ばし、額と頬が露出したマスクを嵌めているもの。
あの遺跡にあった骸骨の像そっくりのマスクを嵌めているもの。
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 09:37:30.87 ID:K1WiOImO0
体格も、肌の色も、装備の内容も造詣も一定ではない、個性的な面々だった。
最後に、傷だらけのマスクをはめたプレデターが、中央に立つ。
額にびっちりと彫り込まれた象形文字と角、襷にかけたベルト、腰から下げた鞭が特徴的だ。
一昔前のギャング映画のベテラン殺し屋のような風格がある。
彼はマスクを外し、美琴へ素顔を晒した。
先程のバーサーカーに似ていたが、こちらには片目がない。
顔の左半分が火傷のように爛れており、牙も一本折れている。
「……オーケー、」
美琴は乾いた笑みを浮かべながら言い放つ。
「次は誰が来るのかしら?」
もうヤケクソだった。
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 09:38:18.87 ID:K1WiOImO0
美琴に詰め寄ろうとする赤いプレデターを、片目のプレデターが制した。
身体が一回り大きく、体中古傷だらけだ。
どうやら彼こそがプレデター達のリーダーのようだった。
片目のプレデターが左腕のコンピューターのキーを叩き、その腕をかざすと、そこから光が放たれる。
『……アンタ、私の言葉がわかるんでしょう……』
立体映像だ。
美琴がハンターに取引を持ちかけたシーン。どこかから見ていたのだろうか。
片目のプレデターが美琴に迫る。
そして美琴は意識を失った。
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 09:39:21.56 ID:K1WiOImO0
美琴「…………初春さん?」
初春「‥‥ぐすっ……よかった‥‥!」
美琴「ここは……?」
病室のようだった。
確か、例のカエル顔の医者がいる病院がこんな感じだったような気がする。
辺りを見回していると、
???「お姉様あああああああああああ!!」
美琴へ飛び付くツインテールの少女。
美琴「ちょっ、黒子……!」
黒子「黒子はもう、心配で……!心配で……ッ!」
美琴「ご、ごめんごめん ;」
178 :
↑ミス :2011/01/10(月) 09:40:02.57 ID:K1WiOImO0
???「御坂さん!御坂さん!」
誰かが呼ぶ声で目を覚ます。
美琴「…………初春さん?」
初春「‥‥ぐすっ……よかった‥‥!」
美琴「ここは……?」
病室のようだった。
確か、例のカエル顔の医者がいる病院がこんな感じだったような気がする。
辺りを見回していると、
???「お姉様あああああああああああ!!」
美琴へ飛び付くツインテールの少女。
美琴「ちょっ、黒子……!」
黒子「黒子はもう、心配で……!心配で……ッ!」
美琴「ご、ごめんごめん ;」
179 :
↑ミス :2011/01/10(月) 09:40:43.61 ID:K1WiOImO0
少々激し過ぎる抱擁の後。
黒子「お姉様を拉致した×××××野郎はどこのどいつですの!?」
「仰っていただければこの黒子がすぐにでもとっちめて参りますの!!」
美琴「…………へ?」
黒子「……覚えていらっしゃらないんですの?」
美琴「何を聞かれてるんだか、さっぱりわかんないんだけど……?」
初春「御坂さんはこの2日間、行方不明になってたんです。」
「授業の後、学校で白井先輩と別れた後、門限過ぎても寮に帰って来てない、って。」
美琴「……ああ、そういえばそうだったかも。」
黒子「思い出されました?」
美琴「うん、学校出た辺りまでははっきり覚えてるんだけど。」
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 09:42:58.74 ID:K1WiOImO0
美琴「(で、その後いつもの自販機でジュース買って、)」
「(アイツと出くわして、)」
「(いつも通り勝負仕掛けて、)」
「(で、上手くまかれて、それから……えーっと、)」
「(……あれ?思い出せない。)」
初春「御坂さんが発見されたのは、捜索開始から二日後の事でした。」
「学園都市内の雑木林で倒れているところを発見されたんです。」
「全身泥だらけ傷だらけの状態で、もう大騒ぎだったんですよ?」
黒子「お姉様の露払い白井黒子とあろうものが、一生の不覚ですの……!」
美琴「そんなオオゲサな…… ;」
初春「で、誘拐事件って事で風紀委員・警備員双方から捜査が進んでまして、」
「事件については、御坂さんの証言待ちだったんですけど……。」
美琴「……」
自身に起こった出来事について思うところがなくもなかったが、美琴は
美琴「ううん、覚えてない。」
と答えておいた。
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 09:43:38.99 ID:K1WiOImO0
黒子「はっ、まさかあの 類人猿 に……ッッ!」
美琴「んなわけあるかァアッッ!!!」ビリビリビリビリ
黒子「はううううううううううううううううううん!!」
…
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 09:44:21.77 ID:K1WiOImO0
…
その後の顛末を少し。
入院から数日後、御坂美琴はたまたま病院にやって来ていた“幻想殺しを持つ少年”と遭遇。
いつも通りの追走劇を展開し、彼女が順調に回復した事を証明して見せた。
そして無事、御坂美琴は常盤台中学へと復帰し、いつも通りの日常へと帰った。
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 10:09:25.39 ID:QWI2nJQs0
ベトベターさんになら犯されてもいい
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 10:30:08.48 ID:HlbUrHU4P
終わり?
185 :
もうちょい :2011/01/10(月) 10:49:20.05 ID:K1WiOImO0
退院前、妹達の一人、10032号が病室へ訪れた。
美琴はあの1990号について尋ねたところ、やはり実験中に死亡した事になっているという。
御坂妹「……ですが、」
と、10032号は言った。
御坂妹「あのミサカの遺体は回収されていません、とミサカは疑問の余地がある事を暗示します。」
美琴「どういう事?」
御坂妹「1990号は一方通行が直接手をかけたのではなく、ベクトル操作で起こした爆発に巻き込まれて粉微塵に爆死しています、とミサカは端的な事実を述べます。」
それとあのセロリ野郎‥‥もとい、一方通行が言っていた事ですが、と。
御坂妹「『爆発の時強い光が見えて、気が付いたらあいつは消えちまッてた』」
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 10:50:09.83 ID:K1WiOImO0
退院後、職員名簿をハックしてみたが、学園都市内の医療施設にエドウィンという名の職員は存在しない。
偽名だったのかもしれないし、元々そんな男はいなかった可能性もある。
もし彼が学園都市暗部の人間であれば、名簿なんぞに載っているわけがない。
あの出来事はただの夢だったのだろうか。
いつものボロ自販機の近くのベンチで、美琴がぼんやりと空を眺めていると、一つの飛行船が目に入った。
普段なら気にも留めないような、その広告用の飛行船には、大きくこう書かれている。
『ウェイランド・ユタニ・カンパニーは貴方の未来を約束いたします』
END。。。
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 10:51:15.94 ID:K1WiOImO0
初SSに付き合ってくれてありがとう。
最初は学園都市にスカーフェイスが襲撃掛ける話だったんだけど、黒子辺りがディロンみたいに死にそうだったのでやめた。
今度はエイリアン・ナンバーシックスとカミジョーさんとインなんちゃらさんで何か書くかも
じゃ、。成人式でエイリアン2~3匹倒してくるから ノシ
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 10:56:08.04 ID:HlbUrHU4P
すっきりしてるな
乙
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 11:22:02.33 ID:QWI2nJQs0
ニヤニヤとイライラどっちにするべ
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 11:56:46.22 ID:gRhBGceyi
乙っした
193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 12:33:53.28 ID:bCgzInb+0
乙~
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 14:43:48.04 ID:QWI2nJQs0
おさしみ~
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 16:01:21.82 ID:QWI2nJQs0
どういうことなの
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 17:20:03.55 ID:QWI2nJQs0
これは良SS
205 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 17:46:15.83 ID:QWI2nJQs0
オノデーワロタ
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/10(月) 18:40:03.98 ID:05VySLYo0
いやあ、面白かった。ライトノベルと言うよりハヤカワ文庫って感じだったな
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