1 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)22:59:11 ID:ByczdfnmS
[新宿区 高田馬場]
……。
この辺は住宅が多い。
以前来た時よりも増えている気がする。
「…」
『…ええ。ではその日に届けに参りますので…お名前を伺ってもよろしいでしょうか?』
『私のか?…ふむ。そうだねぇ…闇絵と呼ばれているよ』
『え?…あ、はぁ…』
……世の中には、変わった人もいるものだ。
……俺も、か?
時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼は自分勝手になり、自由になる。
誰にも邪魔されず、気を遣わずものを食べるという孤高の行為。
この行為こそが、現代人に平等に与えられた最高の癒し、と言えるのである。
『東京都 新宿区の炒飯』
3 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)23:06:52 ID:ByczdfnmS
「…ん?」
…高そうな、黒塗りの車。…特注車だな。
こういうのに乗る人って、会社の社長とか、それ以上の人とかが多い。
…何だってこんな学校の近くに停まってるんだろう。
よっぽど過保護な親、とかかな。
4 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)23:07:48 ID:VThQRIJ0w
炒飯くいてえな
5 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)23:10:41 ID:ByczdfnmS
「…五月雨荘……」
……ここか。
…随分年季が入ってらっしゃる。
「…うわっ!」
…黒猫。
ちょいと怖い。
6 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)23:13:14 ID:ByczdfnmS
「…お」
……木の近くに灰皿がある。
ここは、煙草を吸ってもいいのだろうか。
「……」
そう思ったら急に吸いたくなってきた。
待ち合わせにはまだ時間もあるし、一本だけ吸わせてもらおう。
「…~…」
「…良い匂いだ」
「!」
7 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)23:19:16 ID:ByczdfnmS
……びっくりした。
「…君が、井之頭という男で間違いないみたいだな?」
…木の上に、人と、猫。
…何だかシュール。
「…あ、あのー…闇絵さん、でしょうか?」
「そうだね。…しかし、冬だな」
「え、ええ」
「冬は特に、煙草が美味いな」
「え?」
「煙草が、美味い」
「…よろしければ、一本どうぞ…」
「おやすまないね。詮索してしまったみたいで」
…絶対嘘だ。
「…?」
「…ああ、その猫、ダビデに渡してくれ」
「…あ、はい…」
……クロネコの宅急便。
8 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)23:25:13 ID:ByczdfnmS
「それで、その様子だと持ってきてくれたようだね」
「あ、はい。…こちらになります」
「…」シュタッ
「!」
「…そんな身構えなくても、取って食ったりはしないよ。…ふむ。間違いない。私の注文した通りの物だな」
…この人、代金払えるのかな。
「……私が貧乏であるかのような顔だな」
「!!…い、いえそんな事は…」
「無理もないさ。このアパートに住んでいるという時点である程度はそう思う」
……この人、侮れん。
9 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)23:28:27 ID:ByczdfnmS
「…ん?」
「真九郎!家まで競争だ!」
「あ、こら!紫、危ないから走っちゃダメだ!」
「へへー!私を捕まえてみせろー!」
「もう、また環さんだな!変な事を吹き込んで!」
「真九郎、私を捕まえてみ……」
……。
「……ぷはっ」
「むらさ…!!!」
「……」
………どうしよう。
10 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)23:34:20 ID:ByczdfnmS
「…本当にすいませんでした」
「ああいや、私の方こそ…」
「ほら紫、ちゃんと謝って…」
「…すまない」
……小さな子供と、高校生。
兄と妹だろうか。
歳の離れた妹を健気に育てる、兄。
「…あ、あのー…」
「!…いや、本当に気にしないで下さい。…お嬢ちゃん、お兄ちゃんに迷惑かけちゃダメだよ?」
「?お兄ちゃん?…何を言っておるのだ!真九郎は私の夫だぞ!!」
「えっ……?」
「い、いえ違うんです!!こいつったらまた変な事吹き込まれたみたいで……きちんと後で叱っておきますので!」
……ちょっぴり聞き捨てならないセリフがあった。
…何だか、想像するのが怖い。
13 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:01:12 ID:iHASuJ6dZ
「しかしこの男からは何だか真九郎に似たものを感じるぞ!とっても優しい雰囲気だ!」
「こら!失礼な事を言うんじゃない!」
「…はは」
……少年よ、あまり間違った方向に育ててはいけない。
「…あの、本当に誤解しないで下さい…」
15 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:08:23 ID:iHASuJ6dZ
「それでは、これで…」
「今日はゴローも食べていけ!真九郎の料理は美味しいのだぞ!」
「…ありがとう。でもおじさんこれからお仕事しなきゃいけないんだ。ごめんね」
「色々とすいませんでした…」
「いえ、大丈夫です。それでは…」
……何だか疲れた。
しかしあの少年が皆の飯を作っているとは。
…少し気になるが。
これから事務所に帰って書類の山を片付けなきゃならんし。
……。
いかん。
気にしだしたら。
急に。
腹が。
減った…。
16 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:09:49 ID:iHASuJ6dZ
しかしこの辺にはあまり店が無い。
最悪、コンビニで買う事にもなりかねん。
ここは慎重に探さねば。
17 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:11:28 ID:iHASuJ6dZ
「……」
どこでもいい。
何処かに飯屋は無いのだろうか。
「…お」
細い路地に、赤のれん発見。
ここにしよう。
もう腹がペコちゃんなんだ。
18 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:16:05 ID:iHASuJ6dZ
「……」
楓味亭。
ラーメン屋か。
……正直、この間も食べたから、ラーメン以外が良い。
この際中華がダブるのは良しとしよう。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃい!」
女子高生と、おじさん。
親子でやってるんだなあ。
「お好きな席へどうぞー」
……さて、何にしようか。
今日はあまり時間も無い。
早急に決める必要がある。
19 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:21:26 ID:iHASuJ6dZ
「………」
いかん。
腹が減って思考能力が低下しているのか。
どれも美味そうだからか、中々これといった物が選べない。
「…」
…!
そうだ。
ラーメンと考えるからダメなんだ。
麺類として考えればいいんだ。
なら、ご飯ものだよな。
「…すいません」
「はーい」
「餃子一人前、それと炒飯を大盛りで…」
「はい。かしこまりました」
……妥協策ではあったが、吉と出るか凶と出るか。
20 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:28:29 ID:iHASuJ6dZ
「お待たせしました。餃子一人前です」
「……」
……。
「…いただきま……」
「こちら、炒飯大盛りですねー」
……間髪入れずに来た。
この店は、飯が来るのが早いんだな。
「…いただきます」
……まずは、餃子を。
「…」
皮はパリッと、中から肉汁が溢れ出している。
良い。こういうの、大好き。
21 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:30:59 ID:iHASuJ6dZ
お次は、炒飯か。
「……」
……あ、さほど長い時間炒めてないんだ。
あんまり焦げ目が無い。
はふはふ。はふはふ。
これも、良い良い。
…どうやら、俺の選択は吉と出たようだ。
22 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:32:03 ID:FFLLSNG3E
朝だけど食いたい
23 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:35:15 ID:iHASuJ6dZ
「ご馳走様でした」
「ありがとうございました。またお越し下さい」
……あの女の子、結局、最後まで笑顔見せてくれなかったなあ。
親御さんの方は、ずっとにこやかだったのに。
まあ、いいか。
しかし、ちょっぴり食い過ぎた。
こりゃたまらんぞ…。
ゴロ~
ゴロ~
ゴロ~
イッノッガシッラ
ゴロ~
ゴロ~
ゴロ~
イッノッガシッラ
24 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)07:39:28 ID:xvRbmAVBU
朝から腹減るスレだなちくしょう
25 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)08:02:31 ID:iHASuJ6dZ
「…はい!やって参りましたね!」
今回久住さんが来た店は…
「こちら、楓味亭でございます!」
「あれ?何かデジャヴ…(笑)」
26 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)08:04:16 ID:iHASuJ6dZ
店に入ると、店主から…
「おっ!早速…麦スカッシュですね(笑)………一番搾り!(笑)」
27 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)08:05:52 ID:iHASuJ6dZ
「おまたせしました。もやしラーメンです」
「いただきます~………あ、もうね、シャッキシャキ(笑)もやしが」
「これ、最高だよねぇ(笑)」
28 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)08:10:15 ID:iHASuJ6dZ
久住さん、お店の方に話を聞いてみました…
「じゃあ、元々は違うお仕事されてたんですね~」
「そうなんですよ。…というか、なるべくしてなった?かな…嫁さんの実家だったし!(笑)」
「(笑)」
「そんであいつ銀子ってんだけど、誰に似たのか無愛想で、…けど一人の男にだけは愛を振りまくんだ」
「おっ!いいじゃないですか!ボーイフレンドが出来たんですね(笑)」
「(笑)」
今回久住さんが来た楓味亭。
高田馬場から大久保の真ん中にありますよ!
29 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)08:10:27 ID:iHASuJ6dZ
終
30 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)08:15:44 ID:FFLLSNG3E
乙~
31 :
名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)09:03:16 ID:RSm5VgQIf
乙
あっさりしてたな
転載元
井之頭五郎「東京都 新宿区の炒飯」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1416146351/ 久住昌之 原作 ナカタニD. 作画
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