1 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:18:52 ID:6YI9Wupg
こんなに遠くに来たのは初めてだ。
雨に降られ、風に吹かれ。
崖を行き、森をいくつ越えただろう。
見たこともない景色が眼科に広がり、
友の手が私を強く握る。
その橋は永遠に続くようにも、
すぐに果てるようにも感じられた。
友の名はワンダ。
私の名はアグロ。
これは私たちの命を懸けた物語だ。
2 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:19:43 ID:6YI9Wupg
ワンダと初めて出会った時、ワンダの背は今の私の膝くらいだった。
物静かだけれど、私を優しく撫で、
「あぐろ、あぐろ」
と覚えたての私の名前を何度も呼んでくれた。
ともに草原を駆け、気づけばワンダは私の背にまたがり、
私はワンダの足となり、風のように駆け回った。
ワンダは私のだいすきな人になった。
3 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:20:15 ID:6YI9Wupg
ある日ワンダと村を歩いた。
食べものや、雑貨を買いに来た。
帰りしな、手綱がびくんと引かれた。
顔を上げると、太陽のように暖かく、
風のように優しい笑顔の少女が立っていた。
彼女の名はモノ。
4 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:20:50 ID:6YI9Wupg
ワンダとモノは、それはそれは良い仲になった。
モノとワンダを背に乗せて、
ゆったりと草原を走った。
風と競争するような力強い走りも好きだが、
風と散歩するような、こんな走りも好きになった。
二人と私はずっと一緒だった。
モノが一人で私に跨ったとき、バランスを崩して
モノが私の体に抱きついた。
ワンダは一瞬焦った顔をしたけれど、すぐに大きく笑った。
モノも笑った。
私はモノに抱きしめられながら、
モノも私のだいすきな人になった。
5 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:21:25 ID:6YI9Wupg
ずっとずっと一緒にいたいなと思った。
ずっとずっと。
6 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:21:59 ID:6YI9Wupg
きっとそれがいけなかったんだ。
ずっとずっとじゃ足りなかった。
ずっとずっとずっと。
そう願えば良かったんだ。
7 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:22:34 ID:6YI9Wupg
モノがしんだ。
ワンダは泣いた。
その声は朝も夜もなく、私の耳に届いた。
物静かで、無口なワンダ。
「モノ、モノ」
ただ彼女の名を叫んだ。
涙が枯れたワンダはどこかへ消え、
戻るとモノの亡骸を毛布で来るんだ。
弓を背負い、ワンダは何も言わずに私に跨る。
かける言葉も見つからない。
私にあるのは駆ける足。
途方もない距離を、ただひたすらに駆けていった―――
8 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:23:18 ID:6YI9Wupg
たどり着いた城の戸が開く。
私は屋上から漂う甘い香りに惹かれていたが、
城の中からこみ上げてきた嫌悪感に震えた。
踏み入れた城の中、小さな池が出迎えてくれた。
奥は天井が高く、いくつもの像が私たちを見下ろす。
それは城というよりも、教会に近い気がした。
ただ、村にあったそれとは違い、
ここにはなにか、弓矢でどこからか狙われているような、
嫌な雰囲気が漂っている。
光の中にベッドのような台が見えてきた。
ワンダは私の背からモノの亡骸を抱き降ろすと、
その台に寝かせ、毛布を剥いだ。
その後ろ姿は、あまりに切なく―――
9 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:23:59 ID:6YI9Wupg
!!なんだこれは!!
やめろ!!私に触るな!!
ワンダ助けて――
どこから湧いたのだろう。
無数の黒い影が私に迫ってきていた。
ワンダは怯えることなく、前を見据えている。
モノが亡くなった日から変わらない、
深く悲しい瞳で。
ワンダが剣を抜く。
見たことない剣だったけれど、
その剣に照らされた途端、影が消えていく。
10 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:24:41 ID:6YI9Wupg
同時に雷が響き、天から声が降りてきた。
ドルミン
私が知る中で最も邪悪という言葉が似合う声だった。
怯える私を置いて、ワンダはそいつと会話を進める。
そうなることが分かっていたように。
そうなることを望んでいたように。
ドルミンとワンダは契約を結んだ。
モノの魂。
巨像の破壊。
それが全てで、これが始まり。
11 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:25:18 ID:6YI9Wupg
ワンダは私の手綱を握り締め、城から飛び出した。
しばらく行くと崖に行き着く。一心不乱にワンダが登る。
不安でずっと見上げていた。
ワンダはどこへ行ったのだろう?
ここで待ってていいのかな。
登り続けるワンダを見つめ、見えなくなって顔を下ろす。
不安で、怖くて、寂しくて。
12 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:26:07 ID:6YI9Wupg
だけど私はワンダを信じr―――――
「ヴオォォォオォオォ!!!!」
今までに感じたことのない地響きと、雄叫び。
ワンダの登った崖の上からだ!!
ワンダは見えない。
けれど蠢く大きな黒い影は見えた。
それはここから見ても大きい。
怯えて体が震える。
ワンダ・・・!!
13 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:27:12 ID:6YI9Wupg
待つしかない。
何度も繰り返す地響きと、雄叫びの中、
駆けるしか脳のないこの四肢を呪い、
ただひたすら待った。
「・・・ウォォオオォ・・」
どのくらいの時間が経ったのかはわからないけれど、
今までにないくらい悲痛な雄叫びと、地響きがこだました。
そして静寂に包まれた。
ワンダはどこ!!
帰りをただ待った。
刹那、
あのドルミンの邪悪を感じ、
光の柱が崖の上を照らした。
14 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:27:54 ID:6YI9Wupg
城の方から何かが砕ける音と、
ドルミンの声が聞こえる。
呪った四肢を全力で振り回し、
城へ急いだ。
15 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:28:40 ID:6YI9Wupg
城の中には砕けた像と、
傷ついたワンダがいた!
嬉しくて駆け寄る私に目もくれず、
ドルミンから何を聞いたのか、
モノの亡骸を見つめながら、
今まで見たことのない、
とても恐ろしい微笑みを見せた。
16 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:29:21 ID:6YI9Wupg
あの日から凍りついたワンダの感情。
モノを救えるかもしれないという、
希望を見つけたのだろうか。
あれが希望の微笑みならば、
希望とはそれほどまでに
恐ろしいものなのだろうか。
17 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:29:52 ID:6YI9Wupg
やっと私に気づき
「アグロ!」
と私を呼んだ。
その声も表情も、さっき見せた微笑みは見当たらない、
モノがいたころのものだった。
私はなんだか嬉しくなって、
あの大きな黒い影のことも、
今思っていた事全て、
一瞬で消えてしまった。
ワンダが呼んでる!!
18 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:30:27 ID:6YI9Wupg
ワンダは私を撫で、背に跨ると。
再び城から飛び出した。
こうして見ると、ここは駆け回るにはもってこいだ!
いろんな地形があって楽しい限りだ。
あの日からこんなふうに風と競争することもなかった。
すっかり忘れていたけど、やっぱり楽しい!
ワンダがいる!
ワンダを感じる!
嬉しいなぁ!!
19 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:32:01 ID:6YI9Wupg
ぽっかり空いた大地にかかる、
細くうねる橋を渡って、
穴のそこへと続いてく
これまた細い道を行く。
慎重に慎重に。
危ない道だものね!ワンダ
振り返って見えたワンダの表情に戦慄した。
そこにモノのいた頃の笑顔はなく、
深い悲しみの瞳と、
歪んだ希望の微笑みがあった。
20 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:32:51 ID:6YI9Wupg
忘れていたんじゃない。
忘れたかったんだ。
ワンダは昔のワンダじゃない。
もうあの頃には戻れないのかな。
いつの間にか穴の底に到達していた。
21 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:33:32 ID:6YI9Wupg
穴の底は薄暗く、
気持ちをより一層陰鬱にしていく。
壁に洞窟のようなものが見え、
そこに向かって進んでいく。
22 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:34:04 ID:6YI9Wupg
洞窟には扉のようなものが見えt――――
ドォォン!!・・・ドォォォォン!!
なにかが扉を叩いている・・!!
扉を叩く音と共に、体を突き上げる地鳴り。
ドォォォッッッ・・・!!
「ブオォォォオオォォ!!」
なんだ・・・コレ・・・!!
23 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:35:22 ID:6YI9Wupg
目の前に現れた大きな黒い影。
大きなという言葉しかないのが悲しいくらい大きい。
生き物なのかはわからないけれど、
城がそのまま動いているような大きさだ。
― 巨像。
ドルミンの言っていた、
崖の上で見た影が、コレだったんだ・・・!!
24 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:36:05 ID:6YI9Wupg
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなky・・・!!
今までに聞いたことのない心臓の鼓動。
それが私自身のものだと気づくのに少し時間がかかる。
私の足が動き始めると、手綱は逆に向けて引かれた。
ワンダの顔を見る。
あの恐ろしい微笑みをたたえ、
今までにないくらい強く手綱を引いている。
25 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:36:49 ID:6YI9Wupg
ワンダは見知ったように、弓を弾き巨像を跪かせる。
跪いた衝撃の大きさに悲鳴をあげる私から飛び降りて、
巨像の背に駆け上がるワンダ。
逃げ惑いながらもワンダを見つめる。
真っ黒な血を体に浴びながら、
ワンダは巨像に剣を突き立てる。
そこにさっきまでの微笑みはなく、
モノを亡くした日の悲痛な瞳が見えた。
26 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:38:50 ID:6YI9Wupg
ワンダが大きく剣を振りかぶり、
突き立てた。
巨像は、切なく悲しい鳴き声を上げながら、
息絶えた。
すると巨像の中からドルミンに感じた邪悪が
黒い蛇のように溢れ出てきた。
私は体を仰け反らせ怯えそうになる足を地面につきたてる。
ワンダを救わなくちゃ!!
27 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:39:36 ID:6YI9Wupg
ボロボロになったワンダが巨像のそばで立ち尽くしている。
生気を奪われたような、ボロボロのワンダ。
急いで逃げなきゃ!
ワンダを救わなくちゃ!!
・・・・ズチャッ・・・・!!
ワンダの体がくの字に折れる。
巨像から出てきた蛇のようなドルミンの邪悪が、
ワンダの体を突き刺したのだ。
28 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:40:52 ID:6YI9Wupg
ワンダ!!!
口から黒い煙を放ち倒れるワンダを、
天空から光が包みこむ。
まぶしさに遮られ、ワンダを見失い、
光が収まるとワンダは消えていた。
城に戻ると、砕けた像とワンダ。
もう、戻れない。
その時その思いは、確信に変わった。
29 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:41:28 ID:6YI9Wupg
私たちはひたすら駆けた。
風を追い越し、心を殺し。
私の体はボロボロで、
それでも足を振り回す。
ワンダの体もボロボロで、
それでも手綱を握りしめ。
30 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:42:33 ID:6YI9Wupg
ほとんどワンダ一人の戦いだった。
私ができるのは巨像の断末魔を共に受け止めるだけ。
時には共に戦った。
襲い来る恐怖。立ち向かう狂気。
目の前で潰える巨像の命。
くすんでいくワンダの瞳。
31 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:43:16 ID:6YI9Wupg
できることなどなにもなく、
戻る場所はどこにもない。
邪悪な希望にすがりつき、
一心不乱に駆けていた。
32 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:44:57 ID:6YI9Wupg
いつのまにか城の像は、あと一つになっていた。
ワンダは巨像の血を受けて、
体中黒く染まっていた。
ほとんど気力だけで立っているような状態。
私を呼ぶ声もかすれて風に消えそうだ。
それでも私を引く手綱は、どんどん力強くなる。
歪んだ希望を見つめながら、
最後の巨像へと向かった。
33 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:47:08 ID:6YI9Wupg
最後の巨像へと向かう道程、
ワンダが不意に私を抱きしめた。
抱きしめたのか、バランスを崩したのかわからない。
そして耳元で
「アグロ」
と私の名を
かすれた声で囁いた。
34 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:49:18 ID:6YI9Wupg
その先の言葉は聞こえなかった。
私はモノに抱きしめられたときのことを思い出し、
変わり果てた私とワンダを想う。
この戦いが終わったら、また三人で過ごせるのかな。
そしたら今度は願うんだ。
ずっとずっとずっと。
35 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:51:02 ID:6YI9Wupg
変わってしまったかもしれない。
汚れてひしゃげてしまったかもしれない。
けれどどんなに汚れても
形がいびつになったとしても
変わらないものはここにある。
モノへの想い。ワンダへの想い。
また三人で風とともに・・・
36 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:51:41 ID:6YI9Wupg
そんなことを思っていると、森の奥の扉にたどり着いた。
最後の戦いだ。
また三人で。
歪んだ希望でもいい。また三人でずっとずっとずっと。
37 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:52:24 ID:6YI9Wupg
そびえ立つ遺跡。
この上に最後の巨像がいる。
足場の悪い橋。ちくしょう最後の最後に。
でも私にできるのは、ワンダを見送ることだけだ。
それならせめて―――
38 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:53:48 ID:6YI9Wupg
飛び上がる私。
砕ける橋。
届け届け届け届け届け届け届け
届け届け届け届け届け届け届け
届け届け届け届け届け届け届け
届け届け届け届け届け届け届け
届け届け届け届け届け届けとdッ!!
間に合わない。と思うよりも先に体が反応していた。
首を反らせ、その反動で思い切り手綱ごとワンダを壁に投げつけた。
39 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:55:50 ID:6YI9Wupg
砕けた橋とともに、落ちていく私。
遠くなる空。
痛みばかりの日々。
だいすきな人。
目を閉じた私の前に
少し前の思い出が蘇る。
走馬灯を馬である私も見るのか。
40 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 10:59:02 ID:6YI9Wupg
――――いつだったか巨像を探しているうちに、
なぜか海岸にたどりついたことがあった。
ただ巨像だけを求めていたワンダが
唯一あの時ふっと肩の力を抜いた。
そして私から降りて駆け、
振り返りながら
「アグロー!」
と私を呼んだ。
その顔には少しだけ、
三人の頃の笑顔が差し込んでいて。
私も水をバシャバシャと弾きながら
風と競争した。
ああ。そうだ。あの時少しだけ戻ったんだ。
二人だけだったけど、戻れたんだ―――
41 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:00:29 ID:6YI9Wupg
ッパーン!!
体が水で貫かれるような衝撃とともに、
深く深く水のそこに押し込められていく。
かすかに私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
意識が遠のいていく。
ワンダ・・・モノ・・・
私のだいすきな人。
ずっとずっとずっと。
一緒に。
42 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:02:25 ID:6YI9Wupg
―――アグロ―――
なぜだろう。闇の中の水泡の奥から
モノの声が聞こえた気がした。
水面が見える。
戻れるんだ。
私たちは。
四肢をぶん回して水上へ向かう。
43 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:03:02 ID:6YI9Wupg
そうだ。願ったんだ。
今度はずっとずっとずっと三人で。
44 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:03:55 ID:6YI9Wupg
無我夢中で川岸を探す。
足に鋭い痛みが走り、下半身が水中に飲み込まれそうになる。
いつの間にか降り始めた雷雨の中、
必死に川岸を目指す。
ワンダを悲しませたくない。
モノを悲しませたくない。
何より私は
だいすきな二人に会いたい!!
45 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:04:56 ID:6YI9Wupg
痛みを抱えた足を、川から少し入った林の中で休ませる。
あれだけ当たり前に使っていたけれど、もう私の足じゃないようだ。
風と競争はかなわないかなぁ。
でも三人だったらゆっくり散歩もできるよなぁ。
雨が止んだらゆっくり城に戻ろう。
そしたらワンダもモノもいたりして。。。
46 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:06:12 ID:6YI9Wupg
一本使えないだけでこうも動けないのかと、
からだの不思議を感じながら、
二人の待つであろう城を目指すアグロ。
やっと見えてきた、すでに郷愁すら感じるドルミンの城。
不意に城の方から凄まじい光と突風が吹き、
アグロはかがまずにはいられない。
なにかが崩れる音が続く。
47 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:06:53 ID:6YI9Wupg
聞きなれない音や光にアグロは、
「きっとワンダが最後の巨像を倒したんだ!」
「そしてモノの魂の儀式が行われたんだ!!」
と感じずにはいられない。
傷ついた足をかばいながら、なんとか城にたどり着いた。
48 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:08:49 ID:6YI9Wupg
階段を登りきると光に照らされた白い衣がなびく。
太陽のように穏やかで風のように優しい、
ずっと会いたいと望み、願った人がそこにいた。
「アグロ・・!」
自身の命を救ってくれたその声と、
ずっと願っていた優しい手のぬくもり。
歪んだ希望は、
あまりにも美しく
尊い現実を与えてくれたのだ。
49 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:09:46 ID:6YI9Wupg
不思議と城の邪悪さは消えていた。
像はすべて壊されていた。
像以外の床や壁も壊れていた。
何かがおかしい。
アグロは感じていた。
いつもそこにいたはずの
いつもそばにいたはずの
ワンダがどこにもいなかった。
50 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:11:15 ID:6YI9Wupg
何かがおかしいと私は感じていた。
すると城の奥から、
・・・おぎゃぁ・・・
小さな泣き声が聞こえる。
入口にあった小さな池の方からだ。
モノとともに歩いていく。
私のあゆみに合わせて、
支えてくれるように共に歩いていく。
51 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:12:02 ID:6YI9Wupg
この声はきっと。
痛みをこらえながら、確信めいたその希望に手を伸ばす。
池の中は干上がり、中に小さな赤ん坊がいた。
52 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:12:43 ID:6YI9Wupg
モノが死んでから、
ワンダがここに来てから、
ワンダとドルミンが契約を結ぶ間、
私は願っていた。
ずっとずっとずっと三人で。
53 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:13:31 ID:6YI9Wupg
私はあの甘い香りのした屋上へ向かう。
傷ついた体を休めるために。
優しい光の中で、変わり果てたワンダとモノと私。
ずっとずっとずっと三人で。
また風と散歩するように駆けよう。
これは私たちの命を駆ける物語なのだから。
【完】
54 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:14:48 ID:6YI9Wupg
はじめてで、書き方よくわからなかったので、
読みにくくてごめんなさい。
ありがとうございました。
55 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:40:13 ID:c7x3ax/w
良かったぞ、なんか優しい気持ちになるな
56 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 11:44:49 ID:5o65RdKM
乙
良かった
57 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/05/31(金) 12:46:07 ID:dtMjcLPY
乙
ワンダと巨像はマジで名作
アグロ落下で号泣した
58 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2013/06/01(土) 16:32:22 ID:.SqXxkUA
乙!すごく良かった
転載元
黒馬と友達
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