1 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:17:24.84 ID:K8oo0MNvO
俺は、時間を巻き戻す能力を持っている。
ガキの頃、親に連れて行ってもらった遊園地が楽しくて、
『もう一度今日が来ればいいのに』
そう思って眠りについたら、本当にもう一度『昨日』がやってきた。
俺の『昨日』の記憶は確かにあって、
『こらこら、はしゃぎすぎないの』
そう母さんが言った後に妹が転んで大泣きして、
泣き止ますためにアイスを父さんが買ってきて。
何もかも、同じことが起きた。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1410520644
2 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:18:30.50 ID:K8oo0MNvO
それから、何か気に食わないことがあると時間を巻き戻した。
やり方は簡単、一日の終わりに望むだけ。
『もう一度今日が来ればいいのに』
一日しか時間を戻すことはできないが、それで十分だった。
この能力を使って、いろんなことを自分の都合よくこなしてきた。
これからも、そうやってうまくやっていくつもりだった。
3 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:19:33.92 ID:K8oo0MNvO
母「ごはんよ?」
男「はーい!」
妹「お兄ちゃんはやく?!」
階下から呼ぶ声に返事をして、ダイニングへと向かう。
母「今日は二人に買い物に付き合ってもらうわよ」
妹「明日のバーベキューの買い出し?」
母「そう!荷物持ち要員としてよろしく?」
さっさと朝食を済ませて、支度をすまし、
母さんの運転する車に乗り込む。
4 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:21:31.75 ID:K8oo0MNvO
妹「今日は道混んでるね~。前も後ろもいっぱい」
助手席に座る妹が窓から顔を出して、後続車を見ながら言った。
男「そうだな~、休日だとしても多いな」
母「裏道通ろうかしら」
何の変哲もない、いつもの景色。
しかし、それは一瞬で壊れてしまった。
5 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:22:34.20 ID:K8oo0MNvO
突然の衝撃と回転する視界に、最初何が起きたのかわからなかった。
ただ、揺れる視界がおさまった時、
俺のすぐ目の前に蜘蛛の巣のようなガラスがあった。
わけがわからず、ただ心臓が痛いくらいなっている。
全身が心臓になってしまったかのように、波打つ。
「大丈夫か!?」
「救急車よべ、救急車!」
「警察もよべ!」
「大丈夫ですか!?」
遠くで聞こえる声に答えることができなかった。
蜘蛛の巣の前に、マリオネットのように曲がった白くて赤いもの。
それがなんなのか、認識したくなくて目を閉じた。
6 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:23:21.58 ID:K8oo0MNvO
白いベッドの上で、天井を見上げた。
なんでこんなことになってしまったんだろう。
この現実を、変えなければ。
俺は目を閉じた。
『もう一度今日がくればいいのに』
7 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:24:44.47 ID:K8oo0MNvO
母「ごはんよ~」
男「はーい!」
妹「お兄ちゃんはやく~!」
階下から呼ぶ声に返事をして、ダイニングへと向かう。
ああ、また『今日』が始まる。
母「今日は二人に買い物に付き合ってもらうわよ」
妹「明日のバーベキューの買い出し?」
母「そう!荷物持ち要員としてよろしく~」
男「天気もいいし、みんなで自転車で行こうぜ!」
妹「いっぱい買い物するんだから車がいい~」
男「3人いれば大丈夫だって!それに今日は休日だから道路混んでるだろうし」
母「そうね。たまにはいいかしらね」
車に乗らなければ大丈夫。
これで、大丈夫。
8 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:25:59.88 ID:K8oo0MNvO
さっさと朝食を済ませて、支度をすまし、
青空の下、自転車をこぎ始めた。
妹「風が気持ちいいね~」
母「そうね~」
男「こら妹、ちゃんと前みてこげ」
妹「は~い」
『昨日』曲がった裏道には入らず、大通りを進む。
赤信号で止まり、空を見上げる。
ああ、これで大丈夫
9 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:26:53.50 ID:K8oo0MNvO
そう思った矢先に、またすべてが壊れた。
交差点を曲がろうとした車が目の前を横切る。
2台の自転車を巻き込んで。
ああ、どうして
どうしてなんだ
『もう一度今日が来ればいいのに』
10 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:28:21.45 ID:K8oo0MNvO
朝目が覚めた俺は、計画通りに動き始める。
母「ごはんよ~」
男「はーい!」
妹「お兄ちゃんはやく~!」
階下から呼ぶ声に返事をして、ダイニングへと向かう。
何の変哲もない、いつもの景色。
変えたくない、景色。
母「今日は二人に買い物に付き合ってもらうわよ」
妹「明日のバーベキューの買い出し?」
母「そう!荷物持ち要員としてよろしく~」
男「それなんだけどさ、俺一人で行ってくるよ」
妹「え、どうして?一緒に行くよ?」
母「そうよ、荷物いっぱいで大変だし」
男「いや、大丈夫だって。母さんたちは家の掃除でもしててよ」
母「そう?ならお願いしようかしら」
11 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:29:29.96 ID:K8oo0MNvO
母さんから買い物メモを受け取ると、さっさと朝食を済ませて、支度をすまし、
俺は車に乗り込んだ。
俺一人なら、大丈夫
二人を外に出さなければ、大丈夫
相変わらず道は混んでいたが、俺は裏道を通らなかった。
交差点もなんなく通過した。
今度は、大丈夫か
買い物も無事に済ませて、俺は家へと向かう。
帰りの道も混んでいたが、特になにも起こらなかった。
12 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:31:14.92 ID:K8oo0MNvO
家に近づくにつれ、騒がしくなる。
青い空に、黒い雲が。
雲?
上へ上へと昇る、不思議な黒い雲。
窓を開けると、風が咳き込む匂いを連れてきた。
男「どうして・・・」
真っ赤に染まる我が家を前に、俺は立ち尽くした。
「男くん!男くん!」
野次馬の中から近所に住む幼馴染が俺を呼んだ。
幼馴染「もうすぐ消防車がつくから!そしたらきっと助かるから!」
男「母さんも妹も、まだ中なのか?」
幼馴染「ここらへんでは見かけてないの・・・きっと」
男「俺、助けに行ってくる」
幼馴染「無理よ!男くんが死んじゃう!」
男「二人が死んでもいいのかよ!」
幼馴染「そ、それでも!それでも!」
13 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:32:33.47 ID:K8oo0MNvO
幼馴染を振り切り、俺は家へと向かう。
木造二階建ての家は、赤く赤く、燃え盛る。
でも、行かなくちゃ。助けなくちゃ。
意を決して中へ入ろうとすると、すごい勢いで後ろに引き戻された。
「君!なにをしている!」
その勢いで俺は後方へと吹っ飛んだ。
俺を吹っ飛ばした男が俺を見下ろしている。
男「母さんと、妹が、中に」
「消防隊を待とう。この火の勢いだ。君にできることは、今は何もない。」
14 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:33:28.01 ID:K8oo0MNvO
また、俺は救えなかった。
現実を、変えることができなかった。
今まで、この能力でいろんなことを変えてきた。
なのに、なんで、なんで、今回は、変えられないんだ。
なんで、何度も、俺の目の前で、二人は死んでいくんだ。
でも、諦めちゃだめだ。
俺が、絶対に、救ってみせる。
俺の、大切な家族。
『もう一度今日が来ればいいのに』
15 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:35:03.05 ID:K8oo0MNvO
ぴっぴっぴっぴっ
鼓動に合わせて、機械音が鳴り響く。
薄暗い部屋に、無機質な音。
一度ため息をついてから、外へ出る。
「また、明日来るからな」
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
何度夜が来ても、何度朝が来ても、
受け止めきれない事実。
家へ帰っても、誰もいない。
真っ暗な部屋に一人。
リビングに立てかけてある写真に写る人は、笑っていた。
「あの日、休日出勤なんてしなかったら、俺も一緒にいけたかなぁ。」
最後に撮った、家族写真。
俺たち4人は、とても幸せそうだった。
16 :
ししのは :2014/09/12(金) 20:35:49.49 ID:K8oo0MNvO
終わりです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/12(金) 20:36:57.88 ID:oc5QAOeu0
あぁ、そゆことか
乙
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/13(土) 10:13:26.12 ID:wvCegA3DO
意識不明(?)の男の夢の中での話?
読み返してみても全くわからん
転載元
男『もう一度今日が来ればいいのに』
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410520644/ 八束澄子
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