1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:30:11.09 ID:hlFI3uKmo
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:30:45.23 ID:hlFI3uKmo
都内に大雨警報が出た、いつもより強い風雨の夜
いつものように音楽を聞いていると、携帯電話が振動していることに気がついた
プロデューサー?
「もしもし、どうかしましたか?」
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:31:20.59 ID:hlFI3uKmo
『ああ、千早。起きてて良かった』
「え……?」
『実はさ。この雨で電車が止まっちゃって、春香が帰れなくなっちゃったんだ』
「春香が?」
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:32:00.77 ID:hlFI3uKmo
『さっき、テレビ局から車で出てきたんだけどな』
「お疲れ様です、こんなに遅くまで」
時計の針を見る
九時過ぎ、こんな遅くまで仕事だなんて
「春香は、いま何を?」
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:32:48.57 ID:hlFI3uKmo
『ああ……コンビニに寄って、いまは晩飯を買ってるところだよ』
ご飯も食べずに仕事をしていたなんて、と春香の体調に不安な気持ちを抱く
普段はこの時間まで収録も入っていないのに、どうしたのだろう?
『ああ、実は収録が押しちゃったんだ』
「そうですか……」
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:33:23.16 ID:hlFI3uKmo
『なあ、千早。良かったら、春香を一晩泊めてくれないか?』
「えっ?」
来るとは思っていた言葉だったけれど、心構えをしていなかったから大きく反応してしまった
春香を泊めるなんて、いつぶりだろうか
『春香にはビジネスホテルでも探すかって言ったんだけど、できたら千早ちゃんの家がいいです、って』
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:34:31.51 ID:hlFI3uKmo
「私の家……」
『メールもしたって言ってたけど、見てくれたか?』
「……すみません」
ヘッドフォンで音を聞くのは、やっぱり良くないかもしれない
いつの間に電話が震えていたのか、気づかなかった
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:35:17.97 ID:hlFI3uKmo
『いや、構わない。良かったら、泊めてもらっても構わないか?』
「わかりました」
急いだ会話になってしまった
相手が全て言い終わる前に、返事をしてしまうような
『ありがとな、千早。これから春香を送って行くよ』
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:35:52.36 ID:hlFI3uKmo
「お願いします。……春香と電話しても良いですか?」
『ん、ああ。春香、千早から』
電話の向こう側で、春香の元気な返事と一緒にごそごそ、と物音が聞こえてくる
『もしもし、千早ちゃん』
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:36:30.63 ID:hlFI3uKmo
「春香、大丈夫?」
『うん、ごめんね……雨も降ってて、しかも収録も時間がかかって』
春香は、毎回千早ちゃんのお世話になっちゃって悪いなぁ、と続けた
私が、自分の家だと思ってくつろいでと言うと、声色がはずんだ
『千早ちゃん、ありがとう! 私、お手伝いいっぱいするからね』
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:37:01.55 ID:hlFI3uKmo
「ええ。それじゃあ、待ってる」
電話を切った後で気づいた
プロデューサーがまだ何か伝えることはないだろうか?
「……まあ、大丈夫よね」
何かあるなら、春香を送った時に言うだろう
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:38:07.86 ID:hlFI3uKmo
「部屋、片付けないと」
一人暮らしをすると、ひとりごとが増える
私のちょっとした癖だった
「……ふふっ」
春香が泊まりに来る、楽しみだ
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:39:03.62 ID:hlFI3uKmo
元々物が少ない殺風景な部屋だ
お風呂を洗い直して、ベッドのシーツを整えるぐらいで綺麗になった
インターホンが鳴って、私は受話器を耳に当ててみた
『千早、おまたせ』
「待ってました」
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:39:55.73 ID:hlFI3uKmo
ロビーのオートロックを解除するボタンを押して、部屋の前に来るのを待つ
数分で春香とプロデューサーはやって来た
その間にも、雨音は強くなっていく
「こんばんは、プロデューサー、春香」
「千早ちゃーんっ!」
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:42:04.23 ID:hlFI3uKmo
私がドアを開けると、春香が突然私を抱きしめてきた
雨のせいだろう、彼女の髪や服はしっとりと濡れてしまっていた
「こら、春香。濡れた服で抱きつくんじゃない」
「あっ、ごめんなさい……大丈夫だった?」
「ええ。これからお風呂に入って、着替えるんだし」
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:42:56.60 ID:hlFI3uKmo
私はプロデューサーの方を向いた
「お疲れ様です、プロデューサー」
「ありがとう。千早こそ、夜分遅くにすまないな」
「気にしないでください。私は春香だって、音無さんだって……プロデューサーだって、泊めますから」
「俺は困るかな、嬉しいけど」
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:43:31.36 ID:hlFI3uKmo
三人で笑ったら、普段も見ているはずの廊下や景色が色を付けたように変わる
相変わらず、雨のにおいがするけれど
「それじゃあ、よろしく頼むぞ。おやすみ」
「おやすみなさい、プロデューサー」
「おやすみなさいっ、プロデューサーさーん! ありがとうございました!」
「ああ。気をつけてな」
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:44:08.12 ID:hlFI3uKmo
春香をリビングに案内するまえに、お風呂場の横に置いたバスタオルを持ってきた
彼女の髪を、わしゃわしゃと拭いてみる
「千早ちゃん、なんだか楽しそうだね」
「そう?」
「うん、ずっと笑ってる」
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:44:35.03 ID:hlFI3uKmo
「そうね。春香が泊まりに来たから、かしら?」
「え、私?」
「ええ」
春香は照れくさそうに、頬をかく
私はタオルをバスケットに放り込むと、お風呂を沸かすためのボタンを押した
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:45:10.51 ID:hlFI3uKmo
「千早ちゃん、お風呂は入った?」
「まだ、入っていないわ」
「それじゃ、一緒に入らない?」
「春香が良いなら、よろこんで」
雨の日は、昔から嫌いだった
けれど、こんな幸せな夜をもたらしてくれる雨は、嫌いじゃない……かも?
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/12(木) 23:46:59.49 ID:hlFI3uKmo
終わりです。
早く梅雨明けてほしいですね、はるちはわっほい!
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/12(木) 23:51:27.37 ID:zwewI0ZIo
乙
トタン屋根を打つ雨音の心地よさは異常
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/13(金) 00:12:39.69 ID:rs1p1/VJ0
車の中での雨音も良いぞ乙
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/13(金) 01:27:40.75 ID:NjsAO9gEo
乙乙
はるちはわっほい!
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/13(金) 01:53:34.93 ID:6QVZg2Lmo
雨上がりの訳わからん貝みたいなの踏むのが一番楽しい
転載元
千早「降福」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402583410/ KADOKAWA メディアファクトリー (2014-06-25)
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