30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:05:36.45 ID:dtuFfnRW0
身体が左右に軽く揺れる感覚。
ああ、違う。俺が揺れているんじゃなく、誰かに揺らされているのか。
そして、俺はこの手を知っている。
「起きてください、京介さん。もうお昼ですよ?」
「うっ、眩しいな……おはよう、沙織」
「はい、おはようございます、……アナタ」
言って沙織は頬を赤らめた。
こっちだってまだその呼ばれ方には慣れちゃいなかった。
とは言え、恥ずかしいなら止めれば良い、なんて口が裂けても言えやしない。
そう、俺こと高坂京介と槙島沙織は1週間前、めでたく結ばれ、契りを交わした。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:11:08.19 ID:dtuFfnRW0
「あ゙ー、寝すぎた」
俺は頭をポリポリと掻きながらあくびをかみ殺し、ベッドから這い出た。
枕元に置いてあるデジタルの目覚まし時計は11時を示している。
「昨日は遅くまでお仕事でしたから」
沙織はそこで一旦区切って続けた。
「さ、少し遅いですけれど、朝ごはんの用意ができております」
「ありがたいねえ。今日は真っ黒なトーストじゃないだろうな?」
「もう、京介さんったら……」
沙織はあまり料理が上手ではなかった。
中学の頃から親元を離れて暮らしていたと聞いていたので
正直期待していたと言えば嘘になる。
が、本人は至って真面目にやっている。
まだお互い若いんだし、これからいくらでも上達するだろうよ。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:17:28.90 ID:dtuFfnRW0
ダイニングのテーブルには、サラダ、トースト、卵焼きと
シンプルながらヘルシーな朝食が用意されていた。
「おっ、美味そう」
「見た目だけじゃありませんよ?」
まだ先ほどからかった事を気にしているのか、少し頬を膨らませ
責めるようなジト目で、沙織はこちらを見ている。
「んじゃ味わってみますか」
そうして俺達は、いただきますと手を合わせて遅めの朝食を摂る運びとなった。
「お、んまい」
「そ、そうでしょう!?」
沙織は強がってはいるが明らかに嬉しそうにこちらを見ている。
同時に安心もしているようだ。やれやれ、そんなに気にする事もないんだがなあ。
まぁ俺がからかうのがいけないんだろうが……沙織が可愛いからつい、な。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:20:49.23 ID:dtuFfnRW0
「あー、そう言えば今日って……」
「はい、そうですよ。桐乃ちゃんと、瑠璃ちゃんが来ます」
やはりそうだったか。
「? なぜそんなに嫌そうな顔をしていらっしゃるのですか?」
「いや、そんな顔してたか、俺?」
「はい、それはもう」
嬉しそうに言われても反応に困る。
「嫌って事はないけどさ……昨日の残業で疲れてるからかなあ」
「ふふっ」
「何笑ってるんだ?」
「いえ、相変わらず素直ではないのですね」
放っておけ。
ああ、今確実は俺は嫌そうな顔をしているな。
沙織をからかうのは好きだが、その逆は嫌いなのである。
贅沢者め。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:25:29.64 ID:dtuFfnRW0
そんなこんなで和気藹々と朝食を食べ終わり、後片付け。
料理は沙織がやると言って聞かないので、
せめて皿洗いは俺が担当する事にしている。
「……」
「……」
「……」
「……あー、沙織」
「は、はいっ!?」
「いつも言っているが、あんまりジロジロ見るなよ」
「な、なぜお分かりになるのでしょう……」
視線なんて物理的には何もないようなものだが刺さるものは刺さる。
沙織の料理の腕があまり良くないと言った俺だが
俺自身、家事が得意な訳ではない。
だから監視されているような気分になってしまうのだ。
しかし沙織にはカッコイイとこだけ見せたいので、
皿を洗うところを見られるのは正直居心地が悪い。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:30:04.17 ID:dtuFfnRW0
「そうは仰いますが」
キュッとお湯を止め、手を拭いて皿洗い終了。
「男の方がキッチンにいる姿を見るのは……なんと申しますか、心がぽかぽかします」
「な……」
恥ずかしがり屋のくせに、こういう台詞を臆面もなく本人に言えるのは
やはり沙織がお嬢様だからなんだろうか?
「でもまぁ、確かに、沙織がキッチンで料理作ってるの見ると、イイなぁと思っちまうのと同じか」
「そ、そんな事を思っていらしたのですか?」
沙織は顔を紅くして下を向いてしまった。
ふっ。俺を照れされた報いよ。
「でも」
俯いたまま、ボソッと呟くように。
「そう思って頂けて、とても嬉しいです」
カウンターで真っ赤になったのは俺の方だった。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:39:02.52 ID:dtuFfnRW0
気まずいような、くすぐったいような沈黙を破ったのは携帯電話の振動だ。
「沙織、鳴ってるぞ」
「はい。メールですね……あ、桐乃ちゃんからです」
そう言えば、沙織は今では桐乃と瑠璃(黒猫の事だ)を本名で呼ぶようになった。
何ヶ月か前にいつものメンバー4人で集まって俺達が結婚する事を決めた時からだと思う。
『きりりん氏、黒猫氏。今日はお2人にどうしても報告せねばならない事がございます』
そう言って、沙織は牛乳瓶の底のような眼鏡を外し、居住まいを正して。
『私、槙島沙織は高坂京介さんと結婚する事になりました』
本当は男である俺の口から言うべきなんじゃないかと俺は2回ほど沙織に念を押した。
が、沙織は頑として譲らなかった。
桐乃と黒猫の表情は、硬かった。
沈黙が部屋を占拠して、息をするのも苦しかった。
「……そう」
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:44:37.79 ID:dtuFfnRW0
まず口を開いたのは、黒猫だった。
『まぁ、貴方達が付き合っていたのは知っていたから、
いつかこういう日が来るのかしらとは、思っていたけれど』
しかしそう言ったきり、また口を閉ざしてしまう。
そしては桐乃は。
『……』
少し肩が震えているようだった。
前髪から覗く額や目の周りはやや青みがかっているようなのに
頬や耳は紅潮しているかのように見えた。
膝の上に載せられた小さな拳は真っ白になるほど強く握られていた。
沙織は口を開かず、ただ、手を床について、下を見ている。
どのくらい時間がたったのか。ようやく口を開いた桐乃から発せられた言葉は
殺気さえ孕んだような
『おめでとう』
の一言だった。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:50:27.20 ID:dtuFfnRW0
そして一拍の間をおいて、桐乃は立ち上がり、俺を指差して叫んだのだった。
『今からこの部屋は女子専用! 男のアンタは出てって!』
『な、なんだと?』
『良いから出ていきなさいよ!変態!キモっ!ウザっ!』
『お、お前なぁ……』
救いを求めるように黒猫に視線を移したが、黒猫はため息を1つ零すと
桐乃に同調するように言った。
『そうね、貴方は今すぐにこの部屋から、いえ、この家から消えなさい。それが身のためよ』
『く、黒猫……?』
『京介さん、私からもお願いです。話が終わりましたら連絡いたしますので』
沙織にまでそう言われてはどうしようもない。
俺は財布と携帯電話だけ掴んで家を出た。
雰囲気が雰囲気なら、ガールズトークってヤツで盛り上がるんだろうけど
そんな空気とは無縁だったよな……沙織、大丈夫かな。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 17:55:17.36 ID:dtuFfnRW0
行くアテもなく、しかし、俺は思い当たって、歩を進めた。
そこは一軒の和菓子屋。幼馴染の家だった。
『あら、京介ちゃん』
出迎えてくれたのは麻奈実のお母さん。この人も昔から俺に良くしてくれた。
『麻奈美ー、京介ちゃんよー』
大きな声で愛娘を呼び出すおばさんの姿に俺は何か一抹の寂しさを覚えてしまった。
『あ……きょうちゃん……』
『よぉ。ちょっと話がしたくてさ。今、時間あるか?』
『うん』
通されたのは居間。もう昔のように部屋になんて上がれない。
『単刀直入に言うぞ。俺、今度沙織と結婚する』
『そっか……』
返事をする麻奈美の目にはうっすらと光るものがあった。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 18:01:07.43 ID:dtuFfnRW0
俺は幼馴染の見せた涙に何も言う事はできなかった。
しかし、麻奈美は涙を溜めたまま、笑顔でおめでとうと言ってくれた。
あの妹とは大違いだぜ。全く。爪の垢を煎じて飲ませてやりたいね。
『でも、ごめん、きょうちゃん。今日は帰って……?』
『……わかった。その、元気でな』
『うん、きょうちゃんも。沙織さんと、お幸せにね。結婚式には絶対呼んでね』
小さく、ハッキリと頷いて居間の戸を滑らせるとそこには麻奈美の弟、岩男がいた。
『何してんだ、お前は……』
『な、なんでも!』
そう言って岩男は2階へと駆け上がってしまった。
『なんだってんだ、アイツは……』
『あ、あとで私から叱っておくよ』
『はは、お手柔らかにな』
『うん』
そうして俺は田村屋を後にした。
もう裏の玄関から入ることはないのかもしれんと思うと寂寥感は拭えそうになかった。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 18:08:46.90 ID:dtuFfnRW0
結局、沙織からメールが来た頃には日付が変わっていた。
終電も終わってしまったという事で、沙織は俺の家にそのまま泊まるらしい。
が、俺の帰宅は果たして認めてもらえず、俺はファミレスから
駅前の漫画喫茶への移動を余儀なくされた。
一体、何を話しているのかねえ。
沙織へのメールの裏で、黒猫にメールを送った。
『To:黒猫 From:京介 なぁ、沙織を2人でいじめたりとかそういう事はないよな?』
すぐに返信がくる。
『To:京介 From:黒猫 貴方は銀河の果てまで吹き飛ばされてしまえば良いのに』
おいおい! 何いきなり怖い事を口走ってんだよ!
『To:京介 From:黒猫 冗談よ。安心しなさい。3人で思い出に浸っているだけだから』
ふーん、まぁ確かにそういう話って時々時間を忘れるよな。
でも、俺が帰ってはいけない理由にはならないと思うんだが……。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 18:20:12.72 ID:dtuFfnRW0
翌朝、朝8時。ようやく出た帰宅許可だったが、
慣れない寝床で夜を越した俺にはなかなかキツイ。
『京介さん、ごめんなさいね』
『お前が謝る事じゃないだろ、沙織』
ごめんとは口にした沙織だが、その顔は裏腹に明るい。
桐乃、黒猫も、まるで一睡もせずに泣き明かしたかのような
ひどい顔だったが、昨日俺を追い出した時よりは
幾分スッキリしているような印象だった。
そしてあの晩を境に、沙織は、あのぐるぐる眼鏡を止めた。
ついでに呼び方も変わった。
とは言え、あの美人顔でオタクな発言をされると
ギャップに少々驚いてしまうのだが、そこは勘弁してもらおう。
「京介さん?」
「ああ、悪い。ちょっとボーっとしてた。で、黒猫のやつ、なんだって?」
瑠璃ですよ、と言って沙織は続けた。
「2人は夕方になるそうです。私の手料理を楽しみにしている、とも」
「そりゃ、気合入れて夕飯準備しないとな」
はい。と嬉しそうに頷いた沙織の顔にはやる気が満ち溢れているようだった。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 18:29:09.45 ID:dtuFfnRW0
結婚して1週間。いまだ新居は綺麗なままの新居……などと思ってもらっては困る。
むしろかなり散らかっている。
と言ってもこれは沙織が掃除のできないヤツ、という訳ではないし、
俺が脱いだ服をその辺に投げている訳でもない。
沙織が相当なお嬢様というだけあって、結婚式はかなり盛大なものだった。
いやすまん。かなりどころか、とても盛大なものだった。
この年になるとチラホラ友人の結婚式に呼ばれるからその違いはハッキリ分かる。
最近は紙切れを提出し、結婚を報告する葉書だけで終わらせるような
カップルも少なくないというのに、両家の親戚連中はもちろん、
お義父さん(いまだにそんな軽々しく呼べない)の仕事関係の友人たち
そして奔放初のお披露目となった沙織の姉であるところの『香織』さん。
新婦側の多さに、あの、うちの親父ですら軽くビビっていたのはここだけの話である。
そう言えば、香織さんと言えば、かつて沙織が『コスプレ』した『元キャラ』で、
当時、そのコスプレはサバイバルゲームをたしなむ男勝りってな感じの印象だったが
実際目の当たりにしたその人はやはり沙織並に整った目鼻立ちをしており
しかし、豪快で竹を割ったような性格をしていた。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 18:35:47.19 ID:dtuFfnRW0
話がやや逸れたように思われるかもしれないが、ちゃんと繋がっている。
要は、結婚式に出席してくれた方々からの贈り物の数が尋常ではなかったのだ。
これがかつて沙織が住んでいた、両親所有のマンションなら
まだ『倉庫』もあっただろうが、ここは若い2人にありがちな新居で、ぶっちゃけそんなに広くない。
それでも2LDKなのだから世間の平均にしたら広い方だと思うんだけどな。
しかし、この荷物の山を収めるには手狭。圧倒的、あるいは致命的に場所がない。
加えて共働きしているため荷解きも満足に行えていない状況だ。
「……このままじゃ、アイツらが寝るところねーな」
「あら? 泊まって頂くんですか?」
「お前だって最初からそのつもりだろうに」
京介さんは何でもお見通しなんですね、と沙織ははにかんだ。
当然だろ。お前の事だからな。まるっとお見通しよ。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 18:40:50.79 ID:dtuFfnRW0
かくして荷解きと片づけが始まった。
さすがにアイツらと同じ部屋では寝れないからな。
まぁ、最悪。女性陣3人は寝室。俺はリビングに寝れば良いんだけどな。
どちらにせよ、できるだけ早くやらなければならないタスクである。
そもそも何を頂いたのかすら把握しきれていない現状もヤバイしな。
基本的に贈り物は沙織向けのものが多かった。
食器類、貴金属や宝石などのアクセサリー(俺が買った指輪より高いんじゃないか?)、そして、
「ベビーベッドって……気が早すぎんだろオイ」
「あらあら。期待されていますのね」
言いながら赤面している沙織である。
言わなきゃ良いのに。
まぁ、俺まで恥ずかしいから、なんだが。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 18:49:30.14 ID:dtuFfnRW0
でも、そうなんだよな。
結婚したからには、そりゃいつかは子どもを作る訳で。
自然な事だよね。いやそうなんだけどね。
脳裏に浮かぶのは去年の夏。
デートで海へ行ったのだが……。
『きょ、京介さん』
『お、遅かった……な!?』
『申し訳ありません……あまり慣れておりませんで……』
そこにいたのは美の化身かと見まがうばかりに神々しささえある沙織の姿だった。
ビキニではなかった。ちょっと期待してたんだけどね!
しかしそんな事が瑣末に思えるほど、沙織の水着姿は完璧だった。
水色のワンピースに短いパレオを腰から巻いている。
パレオが作り出すスリットからすらりと伸びた白くて綺麗な脚は
程よい太さで美しい曲線を描いていたし、
大きく開いた背中は透き通るように美しいし、
極め付けに窮屈そうにしている胸ははちきれそうなのだ。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 18:54:09.05 ID:dtuFfnRW0
『ど、どうでしょう?』
どうでしょうって。どうでしょうってお前さん。そりゃ最高としか言えないよ。
この時ばかりは自分の語彙の少なさを呪ったね。
『ありがとうございます』
照れてはにかむ沙織の姿はビーチのマドンナ(死語)だった。
ただ、他の男に見せたくなかったので、
もう2度と公共の海水浴場には行かない事にしたけどね。
そう。そんな沙織を抱く?
うわあ。思い浮かべるだけでヤバイぜ。
今日はこれから桐乃たちが来るんだからそれどころじゃないってのに。
「京介さん?」
「はいっ!!?」
突然呼ばれて声を裏返らせた俺を見て沙織は吹き出した。
「どうしたんですか? 手が止まっていますよ?」
「悪い悪い……頑張るよ」
全く、頑張って雑念を払わないとな。
精を出すのは片付けだけにしろってな。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 21:13:23.90 ID:dtuFfnRW0
1つ1つ包みを開封して中身を確認しては沙織に確認を取り
用途ごとに振り分けていく。
しっかし一体いくつあるんだろうねえ。
今日一日、いや半日で終わるのか怪しいもんだ。
「あら?」
「どうかしたか?」
「い、いえ、なんでもありませんわ」
沙織は箱のフタをそっと載せ、小走りに隣の部屋へ駆けて行く。
「?」
おっとこうしちゃいられん。さっさと片づけを進めないとな。
これもアクセサリーかよ。ダイヤにプラチナ?
しかも揃いでネックレスまで。
なんだかなぁ。自信なくなっちまうぜ、ホント。
あの時の事をちょっと思い出すな。
それは、そう。初めて沙織のご両親、槙島夫妻に会った時の事だ。
本当の金持ちは上ではなく、横にでかい家に住む。とは誰が言ったのだろう。
槙島家はまさしくそんな家だった。
こんなのゲームや映画の世界にしか存在しないとさえ思っていたんだけどな。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 21:58:50.94 ID:dtuFfnRW0
『さ、お入りください』
威容に圧倒されている俺の手を引いて門をくぐる沙織の手はひんやりと冷たくて
変に昂ぶっている俺の気持ちを少しだけ冷静にしてくれた。
まず玄関のドアを開けると広いエントランスが、なんて事はなかったが、
日本特有の狭小住宅と明らかに違う、ゆとりある空間の使い方だ。
調度品も全然厭味がなくて落ち着いた雰囲気を作り上げている。
そうか、こういう家に生まれると沙織みたいな子が育つのか、
なんて事を考えてしまうあたり、平常心とは言えない。
『高坂様、ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ』
なんとリアルメイドの登場だ。いるところにはいるもんだねえ。
と感心している横で沙織は少し不機嫌気味だ。
『沙織? どうしたんだ?』
『いえ……』
否定する沙織だったが、明らかに怒っている。
これはハッキリ言ってかなり珍しい事だった。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 22:48:53.46 ID:dtuFfnRW0
ドアを開けるとそこには気立ての良さそうな婦人と、
穏やかな表情のナイスミドルが座っていた。
『これはこれは。よくいらっしゃいました。沙織の母でございます』
『ど、どうも。お初にお目にかかります。私は、こ、高坂京介と、申します』
『あらあら。硬くならないでよろしいんですのよ』
『そうとも。娘から良く話は聞いている。自分の家だと思ってくつろいでくれたまえ』
こういうシチュエーションでは大概父親は良い顔をしないもんだと思っていたが
どうやらそれは杞憂だったらしい。
少なくとも表面上は歓迎ムードなようだった。が沙織が噛み付いた。
『お父様、お母様! お客様が来たのに自分たちが迎えに来ないのはいかがなものでしょう?』
なるほど、さっきちょっと憤慨しているように見えたのはそういう事か……。
割とそういうトコ気にするんだな。
『お、おい。俺、いや私のことは良いから』
『良くありませんわ。京介さんは私の大切な彼氏なのですから!』
一瞬、空気が固まった。
『まあまあ。うふふ』
『はっはっは。大切な、か。見せ付けてくれる』
当の俺と沙織はゆでだこか、もしくは加熱したエビみたいに真っ赤だった。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:03:07.76 ID:dtuFfnRW0
それからは完全に会話の主導権を掴んだご両親のペースだ。
なんだか喋らなくて良い事までお互い口にしてしまった気がする。
そして意外だったのは
『私たちも、年をとった。香織は年に1回帰国するかしないかだからね』
『ええ。だから子どもは早めにお願いしますね。孫を抱くのが今の私たちの生きがいなのですから』
という発言だ。どうやらすっかり結婚するものと決め込んでいる。
ただ、俺はその時、一瞬だけ垣間見たのだ。
お義父さんの目が光ったのを。
娘を幸せにするだけの覚悟と経済的、社会的、社交的な力量。
当然それらを持ち合わせた上で娘と付き合っているんだろうな、と。
釘を刺されたように感じた。
圧倒的に持っている者の、言外の恫喝に、俺は身震いした。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:17:03.17 ID:dtuFfnRW0
沙織は、正真正銘のお嬢様で、俺は中流家庭の平民。
選ぼうと思えばいくらでも稼ぎの良い男、家柄の良い男がいるはずだ。
それでもコイツは俺を選んでくれる、と思う。
そう疑わないだけの時間、10年近い時間を一緒に過ごして、乗り越えてきたんだ。
じゃあ俺はそれに応えられるのか。心身を引き締めずにはいられなかった。
ふと気づくと、沙織が俺を見ていた。
『どうかしたのか?』
そう聞くと沙織はふるふると顔を小さく横に振って微笑んだ。
『私の使っていた部屋がありますわ。よろしければご覧になりませんか?』
『おお、そりゃ是非ともお願いしたいね』
『では参りましょう』
嬉しそうに俺の手首を掴む沙織の姿に、俺はコイツを幸せにしてやると、改めて強く思ったものだ。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:21:50.93 ID:dtuFfnRW0
「……懐かしいなあ……」
なんだかんだ言って良いご両親だ。
お義父さんボロ泣きしてたもんな。
「京介さん」
「んー、どうかした、か……?」
突然沙織の声に呼ばれて振り返ると、そこには綺麗なドレスを着たお姫様が立っていた。
「おま、その格好……」
「ふふ。どうです? 贈り物に入っていたのです」
ワインレッドのベルベッドに身を包む彼女はまるで女神だ。
流れるようなラインが沙織のスタイルの良さを上品に、そして強烈に表現している。
「すげー似合うぜ。ドレスも良いけど、やっぱ中身が最高だから」
「もうっ、京介さんったら……」
なんとなく、そんな格好をした沙織を見ていると。
なんとなく、1週間前の事を思い出して。
なんとなく、沙織の目が潤んで。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:25:55.38 ID:XXTQ1R3c0
※沙織180cm
京介175cm
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:30:25.35 ID:dtuFfnRW0
「沙織」
「はい」
「好きだ」
「私もです、京介さん」
なんとなく。
沙織の柔らかな唇に、唇を重ねた。
やがて、ほうっと息を漏らして沙織が離れた。
心臓が仕事しすぎなんじゃないかと心配になるくらい左胸の鼓動がヤバイ。
お互いに心なしか息が荒くなっている気がする。
「沙織……」
名前を呼んで、肩をつかむ。
ビクッと小さく震えて、けれどすぐに力が抜けて。
「……沙織……」
「京介さん……」
ピンポーーーーーーーーーーーーーーーーン
「…………あ゙?」
水を差された状況とは逆に、俺の怒りはMAXで燃え上がってしまったが致し方ない。
沙織はあからさまにガッカリした顔になっている。これはこれで珍しい。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:34:15.28 ID:72YBSpp30
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:38:00.42 ID:dtuFfnRW0
俺は観念してカメラ付きインターホンを付けるとそこにいたのは例の2人だった。
『げっ』
「人ん家に来て第一声がそれか。早かったな」
『早いって……もう4時過ぎてるじゃん』
あれ? まだ15時前くらいかと思っていたがそんな事はなかったぜ。
『それで、いつになったら開けてもらえるのかしら、このオートロック?』
「ああ悪い。今開けるよ。ほいっ」
『全く』
それからややあって、玄関のベルが鳴る。
「よう、よく来たな」
「はぁ? 別にアンタに会いに来た訳じゃないし。ていうか早くどいてよ」
「……」
なんだろうね。コイツのこの態度は。なんだか昔を思い出すねえ。
懐かしくて涙が出そうだぜ。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:44:40.02 ID:dtuFfnRW0
「黒猫も、いらっしゃい」
「ええ。1週間ぶりね。と言ってもあの時はほとんど話もできなかったけれど」
2次会はあったが、どっちかと言うと新郎新婦の友人たちと騒ぐって言うより
新婦の関係者による質問攻めと、新郎の品定めみたいなものになったのは嫌な記憶だ。
「2人ともいらっしゃい。桐乃ちゃん、瑠璃ちゃん。来てくださって嬉しいです」
「沙織!」
俺が応対している間に先ほどのドレスを着替えた沙織が奥から出てきた。
そんな沙織を見るなり桐乃と黒猫は駆け寄った。
「沙織、大丈夫? あの男に変なもん食わされてない? いびられてない?」
「貴女の事だから大丈夫だと思うけれど、何かあったらすぐ連絡するのよ」
「いやだ、2人ったらもう……」
「いやいやいや。お前らなんつー会話してんだよ」
なんだか放っておくと話がエスカレートしそうな空気だったのですかさず止めに入る。
と、桐乃は気の立った猫のようにこちらを睨んだ。
「あのねー。何? この散らかりよう。沙織に家事押し付けて、
自分はふんぞり返ってんじゃないでしょうね」
「そっ、そんな事しねーよ! 俺だって皿とか洗ってる!」
「あーやだやだ。マジキモイ。何? それくらいで得意面? 自慢ですかぁ?」
「ぐっ……」
相変わらずコイツは人の神経逆撫でするのが上手いよなぁ!
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:53:09.64 ID:dtuFfnRW0
「口を動かすより手を動かした方が良いわね。沙織、手伝うわよ」
「あ、アタシもアタシもー」
「2人とも、ありがとうございます。助かりますわ」
そんな訳で我が家の初めての客に家の掃除を手伝わせると言う
なかなか申し訳なくもあり、情けなくもある状況になってしまったのだが
ぶつくさ文句を言いながらもしっかりやってくれる桐乃に
黙々と手を動かす黒猫の2人を見ていると良いコンビだと心底思う。
……ただ途中途中で、高価なものを見る度に
こっちを一瞥しては嘲笑するのが癪に障ったけどな。
そして夕食。沙織は宣言どおり、料理の腕を振舞った。
結果としては……満点とはいかなかったが、2人の先生からは
及第点ギリギリをもらったとだけ言っておこうか。
いや、別に不味い訳じゃないんだよ?
マズメシ嫁なんかじゃないからな?
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:57:51.80 ID:dtuFfnRW0
で、その後は宴会になった。
桐乃はあんまり酒に強くない。良く笑うし、良く泣く。そう、泣く。
普段絶対人前で泣いたりしないヤツなのに、だ。
あやせが初めて桐乃と飲んだ時の動揺っぷりと言ったらなかったね。
ちなみに翌日には綺麗さっぱり忘れるから始末が悪い。
黒猫もあまり強くないらしい、が、ペースと量を弁えているので
桐乃のようにハメを外しすぎる事がない。
ある意味一緒に酒を飲むなら一番適任だろうな。
一番って沙織はどうしたって?
アイツはダメだ。完璧超人の旧姓・槙島沙織だが、やはり人には欠点があるもので。
沙織は、酒の量が一定のラインを超えると、脱ぐんだよ。
いや止めるのにマジで苦労するんだ……。
本人分かってるのに、結構酒が好きみたいでな。
俺? 俺はまぁ普通だよ。テンションが上がるだけ。
面白味がないとか言うな。軽く凹む。
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/10(水) 23:59:25.64 ID:dtuFfnRW0
まぁ、そんな訳で、こんな4人が宴会である。
到底人様には(特に槙島家の関係者)見せられない様相だ。
「ちょっと、そこの変態! 今パンツ見たでしょ!」
「見てねぇ!」
「京介さぁん……聞き捨てならないですぅ……」
「沙織! 脱ぐな!」
「じゃあアタシが脱ぐ!」
「意味が分からんわ!」
「貴方が脱ぐなら私も脱ぐわよ」
「ぐぬぬ……それはヤバイわね……」
何がどうヤバイんだ。いや確かにヤバイけどな。
しかし見ていると酔った桐乃を黒猫は割りと上手にいなしているように見えた。
「きょーすけさーーん! もーう、ろこみれるんれすかぁー」
「うわわわ、沙織! バカ! 桐乃たちが見てんだろ!」
「らーってぇー」
本当に黒猫がいなかったらどうなってたのやら……マジで恩に切るぜ。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 00:00:11.74 ID:vLAorgNV0
そんな乱痴気騒ぎは日付が変わっても続き、ようやく収束したのは午前も2時を過ぎた頃だった。
結局半裸になって倒れた沙織と桐乃を寝室にぶち込み、酒臭いリビングに戻ると
黒猫がソファにちんまりと座ってこちらを見上げていた。
「2人は?」
「ぐっすり寝てやがるよ。いい気なもんだ」
「そう」
「今日はサンキュな。お前がいたおかげで地獄の一歩手前で済んだ気がするぜ」
そう、と黒猫は落ち着いた声だった。
「お前は、あんまり楽しめなかったか?」
「いえ、そんな事ないわ。私がお酒を飲むのは貴方達とだけよ」
「ははっ、そりゃ光栄だ」
ほんのり朱が差したような頬。20を過ぎてなお、コイツの肌は桐乃の折り紙付きだ。
「沙織は」
「ん?」
「とても、幸せそうね」
「……お前にそう見えるんなら、嬉しいね」
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 00:01:35.44 ID:dtuFfnRW0
しんみりと、そしてしっとりした空気だ。
これは黒猫の人格に依るものだろうか。
コイツといると、昔から落ち着くのだ。不思議と、優しい気持ちになる。
「ねぇ」
「なんだ?」
「なぜ、あの時――」
そこまで言い掛けて、しかし、黒猫は
「いえ、なんでもないわ」
「お、おい。そこまで言っておいて」
「私もそろそろ寝ようかしら。貴方も寝たら? 明日も仕事なのでしょう?」
そう、日曜だが明日も仕事だ。正確には明日じゃなくて今日だけどな。
「ま、追求しても言いそうにないしな。寝るか」
「私と一緒に?」
「……バカヤロー」
「……冗談よ」
知ってるよ。
冗談じゃないって事はな。
「じゃあ、おやすみ、黒猫。いや、瑠璃」
少しだけ目を見開いて、黒猫はそっと微笑んだ。
「ええ、おやすみなさい。京介」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 00:03:24.04 ID:vLAorgNV0
朝7時。女3人が起きてくる様子はない。
ま、特に問題はないだろう。
沙織には後でメールしとくとして……。
「きょうすけ……さん?」
「あれ、なんだ起こしちゃったか?」
眠そうな目を擦りながら現れたのは沙織。
明らかに寝不足風の顔だ。
「ご、ごめんなさい……寝坊しちゃって……」
「いいって。今日は日曜なんだしさ。まだ寝てろよ。もう出るし」
「そ、そんな」
家を出る前に、愛する奥さんの顔を見て、声を交わせる。
平凡でありきたり。でもそんな日常こそが、俺の夢見た幸せであり、
今ここにあるのはまさしくそれだった。
「んじゃ行ってくるよ、沙織」
「はい。気をつけていってらっしゃい、貴方」
「おう」
「あ」
ついっと滑るように俺との間合いを詰め、すと手を伸ばした。
沙織がふわりと微笑んで
「タイが曲がっていてよ、京介さん」
今日も、頑張れそうだった。
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 00:05:13.77 ID:vLAorgNV0
終わりです。ごめんなごめんよ。また黒歴史築いちまったよ。
ラストはちょっと駆け足だったのもごめんよ。
でもそれ以上に面白くなくてごめんよーーーーーーー!!
おやすみ
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 00:07:20.92 ID:lirPj/v70
黒猫……(´・ω・`)
ともかく乙。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 00:08:42.34 ID:vLAorgNV0
ほ、ホントは桐乃、黒猫の2人に得になる展開を挟んでやりたかったけど心を鬼にした
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 00:08:50.17 ID:bNSPZThx0
乙
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 00:08:50.13 ID:JXhxdzgU0
終わり方いいね
乙
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 03:58:25.21 ID:tHwmBfLAO
おもしろかった
乙
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 08:10:44.88 ID:vLAorgNV0
京介視点だと桐乃のくんかくんかとか書けないし
黒猫との青春時代は蛇足になるだろうし
一応沙織メインのスレだからさ
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 09:09:47.49 ID:cKnNeFCG0
乙
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 10:48:45.06 ID:xlRPp9wQ0
いまだにこのアニメがなんで評価されてるか分からない、でもSSは最後まで読んだ
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 10:54:35.60 ID:K9GFb439O
京介の嫁は麻奈実がいい
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 11:07:01.71 ID:RQ7mcdLW0
乙
午前中から良いもの読んだ
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 13:35:30.58 ID:vLAorgNV0
幼馴染って一番頑張らなきゃいけない存在だと思うんだよ
主人公と過ごした時間や交わした言葉はヒロインたちの中で最も多く
一見近そうに見えるけれど恋愛対象としてはその実一番遠い、みたいな
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 14:34:34.06 ID:Klps6qdC0
そこにあって当然な空気のようなものか
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 16:26:11.26 ID:kdIU9TikO
地味子をヒロインで書いてくれればギャルのパンティあげるよ!
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 16:27:19.80 ID:vLAorgNV0
マジかよ・・・桐乃の話書き溜めたの捨ててくる
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 16:40:48.26 ID:msszN6/uO
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 17:28:42.09 ID:vLAorgNV0
蛇足だぜ
桐乃サイド
---
自棄酒、なんて生まれて初めてだった。
お兄ちゃんと沙織の新居。
どれだけ飲んでもいつもみたいに酔えない。
ワインを飲んでも、ビールを飲んでも、焼酎を飲んでも
いつもなら飲まない大吟醸にも口をつけたけどちっとも酔えやしない。
ただ頭の中は車のアクセルを踏みっぱなしにしてるみたいで
なんだかもう訳わかんなくて。
気がついた時には、私はお兄ちゃんの腕に包まれていた。
えっ、やだ、なんで!?
これって、お姫様だっこってヤツ?
私、今、お兄ちゃんにお姫様だっこされてるの!?
なんでなんでなんで!?う、嘘みたい。これって夢?
ううん、夢でも良い。
お兄ちゃんがこんな近くにいるなんて夢、幸せすぎるもん。
ああー……お兄ちゃんって意外と筋肉質なんだぁ。
それに胸板もほどよくボリュームあって……。
「ん? なんだ、起こしちまったか?」
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 17:29:27.33 ID:vLAorgNV0
「あ……」
「おっと、変態だのキモいだのというのはナシだぞ。
あんだけ酒を呷って潰れる人間が悪いんだからな」
「な、なによ……兄貴面しちゃって……」
ばかばか。またいつもみたいに、お兄ちゃんの前で素直になれない。
そうやってお兄ちゃんに冷たくしてるから、沙織に取られちゃったのに。
でもお兄ちゃんは、態度の悪い私に向かって
兄貴だからな、って笑って言ってくれた。
なんでこんなに優しいの?バカなの?死んじゃうよ?
「ほら」
「あう」
優しく、壊れ物を扱うみたいにそっとベッドの上に私を寝かせてくれるお兄ちゃん。
やだ。ここってもしかして、毎日お兄ちゃんと沙織が寝てるベッド……だよね?
「あ、アンタが寝てるベッドで寝るなんて……サイテー」
「文句言うなよ。ここより上等な寝床はウチにはねーんだ」
また。私ってなんでいつもこうなんだろう。
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 17:30:16.42 ID:vLAorgNV0
「……桐乃?」
「なによ」
「お前、なんで泣いてるんだよ」
「えっ……」
涙が頬を伝って、熱い。
「み、みん……見ないで……」
「……」
「……ごめん。いきなり」
「うんにゃ、別に」
なんでいきなり泣いちゃったんだろう?訳わかんないなぁ。我ながら。
でも、そんなに長い時間泣いた訳じゃないのに、なんかスッキリした。
「あのさ」
「おう」
「昔、人生相談とかしたの、覚えてる?」
私は、あの頃を思い出しながら喋った。
「懐かしいな」
「あの頃は……いろいろ、ありがとね」
「気にすんなよ。あれはあれで、今となっちゃ楽しかったしな」
「うん」
いつ聞いても不思議な気持ちになる、お兄ちゃんの声。
どきどきしたり、ざわざわしたり、めそめそしたり、いらいらしたり、ふわふわしたり。
男の人は大学にも職場にもいっぱいいるのに、そんなのお兄ちゃんだけ。
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 17:31:00.96 ID:vLAorgNV0
「ねえ」
「あいよ」
「……お願い、しても良いかな」
「なんだよ?」
「……キスして」
「は?」
恥ずかしい。きっと私、今顔真っ赤だ。
お兄ちゃんはどんな顔してるんだろう。
こんな事言い出す妹に引いてるかもしれない。
目を開けるのが怖い。
けど、すっと空気が動いて、顔の近くに何かが来たのが分かる。
え、うそ、ほんとに……?
ちゅ、と。頬に触れたお兄ちゃんの唇は想像していたよりずっと熱くて、
私は顔だけじゃなくて、体全部がきっと真っ赤になった。
「お、おやすみ」
それだけ言ってお兄ちゃんは足早に部屋から出て行っちゃった。
声を押し殺そうとして、でもちょっと失敗してどもってたけど。
ここのところ、あんまり眠れない日がずっと続いていたけれど。
今日はぐっすり眠れそう。
ありがとう、お兄ちゃん。大好き。
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 17:31:45.20 ID:vLAorgNV0
., -、,. -─- 、⌒〉
{ } ヽ_ r'⌒)
ヽ、 ,,-‐‐ ‐‐-、 iヽ、 J
{ 、_(o)_,: _(o)_ヽ/ ヽ/∪
! >:: } / 丶
l /( [三] )ヽノ‐''> < つわぁぁぁああああ!
i⊂}__ `二´‐'´__/__ 俺きめええええええ!
ヽ ‐- 、二`ヽ/〉⊂ニニ⊃)
| // ̄ ̄)j~U^∪ヽ
ノ ` ‐-L!--‐''(´ )
`i''ー----‐ ''"´ ヽ、__/
! } ` }
!. , -‐- 、. ノ--─ '
ヽ、_{. `ヽi'⌒i
`''‐- 、.. __,!
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 17:38:24.96 ID:dGVdzkuY0
>>119 ありがとう、ID:vLAorgNV0ちゃん。大好き。
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 17:44:47.99 ID:vLAorgNV0
>>120 やめろ……俺が悪かったから……orz
なんとか桐乃を可愛くしてみようと思って
過去に起こった京介と疎遠になる事件を捏造してみたり
夢オチでえっちな事させちゃおうとかしたんだけど
沙織の本編より長くなりそうだったから止めた。
で、正直黒猫と麻奈美は書ける気がしない。
あやせ?いや、フラグ立ってないだろ……?
そんな訳で落としちゃおうぜ!あばよ!
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 17:47:36.04 ID:avTsnmpp0
>>121 ID:vLAorgNV0ちゃんちゅっちゅ!
欲を言えば全員ルート書いてきっちり落としてください^^^^^^^^^^
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 22:39:42.21 ID:vLAorgNV0
麻奈実ルート
---
「平凡」「不変」「普通」
俺が常々口にしている、俺なりの幸せのかたち。
変わらないものを変わらないまま続けていく難しさは
ある程度理解しているつもりだった。
いや、大した経験や体験談がある訳じゃないから、
苦労を乗り越えて血肉としてそう言い切れるような人たちに
面と向かって言う事なんてできやしないけどな。
だってそうだろ?
誰でもが簡単にできる事なら、誰も苦労しないんだ。
けれど、俺の場合。案外あっさりそこに手が届くかもしれなかったりする。
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 22:40:38.38 ID:vLAorgNV0
俺には1人の幼馴染がいる。
名前は田村麻奈実。和菓子屋の娘だ。
とにかく地味な性格、地味な容姿なのだが、成績に関しては優秀の一言に尽きる。
麻奈実のおかげで、そこそこ良いレベルの高校に合格できたし、
さらに都内の大学にも現役で合格した。
旧帝ってほどじゃないが、やはりそれなりに名の通った大学で
合格の知らせを聞いた両親や桐乃、黒猫や沙織、あやせも
割と驚いていたのが、悔しくもあり、また同時に嬉しくもあった。
「きょうちゃーん。こっち手伝って~」
「あいよ!」
季節は8月。大学生活4回目の夏休みは4年連続4度目の、バイトに来ていた。
どこって? そりゃ決まっている。
「おにーさん、このお饅頭とこっちのお煎餅2つずつね」
「はいはい。えーと、1050円が2点、840円が2点で……」
「違うわよ。こっちの1260円の方」
「うわっ、すんません!」
お盆を前に帰省ラッシュも始まりつつあるため、和菓子屋は大盛況という訳だ。
初めて麻奈実から話を持ちかけられたのは4年前。夏休みを控えた7月のある日の事だった。
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 22:41:20.01 ID:vLAorgNV0
『バイト?』
『そう。実は毎年この時期は忙しいの。それで、今年もあるばいとをお願いしてたんだけど
急に1人きゃんせるが入っちゃって』
『それで俺に白羽の矢が立った訳か』
この話を聞いて、俺は悪くないなと素直に思った。
バイトは未経験で、兼ねてより探そうかなと考えたりはしていたからだ。
根が小心者の俺としては、いきなりコンビニなんかの知らないところで働くよりは
ある程度気心の知れた人間の店で働く方が気が楽ってもんだろ?
とは言え、一応親父の耳に入れる必要はあるだろうと思い、
その場では前向きに考えると答えるに留めた。
もちろん、その晩、親父からは2つ返事が許可が下りたけどな。
「あっ、すいませーん。これって包んでもらえるんですか?」
「贈答用ですか? 熨斗の指定はありますか?」
普段はぽけーっとしている麻奈実は意外にも手際よく客を捌いている。
そしてなんだか今日は機嫌が良さそうだな。傍目にも浮かれてやがる。
19時閉店。今日も1日お疲れ様でした。
ちなみに普段の営業は18時まで。繁忙期なので1時間延長しているのだそうだ。
実際閉店間際にもお客さん来てたしな。
「きょうちゃん、おつかれさまあ」
「おう、麻奈実もお疲れさん。今日もよく売れたな」
「うん。えへへ。きょうちゃんのおかげだよ~」
やっぱり機嫌良いな。なにかあったんだろうか?
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 22:42:01.30 ID:vLAorgNV0
「なあ、麻奈実。お前、今日何か良い事でもあったのか?」
「えっ!? な、なんでわかるの~?」
そりゃお前、顔に書いてあるって表現がピッタリくるぐらい顔に出てるからな。
隠し事のできないヤツめ。
「それってさ、昼間のアレだろ?」
と、顔をひょこっと出したのは麻奈実の弟、岩男だった。
「にーちゃんがお昼食べてる時、お客さんに言われてたんだよなー」
「こ、こら! それはないしょ」
「なんだ? 俺が許す。言ってみろ」
むぐむぐと口で言っているかのようにもがく麻奈実を後ろから抑える。
「今日は若旦那は一緒じゃないのかい?ってお客のばーちゃんに言われてたんだよ」
「なっ! わかっ!?」
「ぷはーっ! もう、言っちゃだめって言ったのにー」
今度は俺が真っ赤になる番だった。若旦那て。
「ご、ごめんね。きょうちゃん。迷惑だった、かなあ?」
「……」
少し困るようにはにかむ麻奈実を見て、
何故だか心に小さなトゲが刺さったみたいに感じた。
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 22:43:05.98 ID:vLAorgNV0
だから、俺はハッキリと否定してやる。
「いや」
「ふえ?」
「10年後、こうやって俺とお前はこの店を切り盛りすんのかなって、ちょっと今日思った」
麻奈実は、今自分が聞いたものが信じられないと言わんばかりの表情だったが、
一拍の間を置いて喜色満面になった。
「そ、それって、きょうちゃん……」
「まぁ、そういう事、かな。今後ともよろしくな、麻奈実」
「うん、うん!」
戻ってきた岩男が口笛を鳴らして快哉を叫ぶ。
あーあ、あの分じゃ爺ちゃんも婆ちゃんも、麻奈実の両親も聞いてたな。
でもまぁ。情報化社会、文化の欧米化が進む現代の日本で
伝統の和菓子を守るって仕事も悪くないだろ。
「えへへ、きょうちゃんだいすき~」
ましてや、涙と笑顔でくしゃくしゃになってるコイツと一緒なら、なおさらな。
こうして。既にいくつかの内定をもらっていた身ではあったが、
俺は永久就職先を見つけてしまったのだった。
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 22:44:33.14 ID:vLAorgNV0
/ ̄ ̄`ヽ :
/. i /ヘ\ヽ\:
;| ! |/__.xト、L,_ ト}: こ…
; |!ヘ cモリ lモ!oV こんなんで良いんですか?
;| !|.ト" rっ ツ|.|、:
,',ノ 斗ャ fて`Y トミヽ 黒歴史ってこういうもの
/ {トミトv|'´ゝ } ノノ:l }: なんですかぁ……?
:/イ { ゝィVr-ヘト、 ! ハ
. | !|Y⌒'ミ{ヾ=' | /イ|
ヽ人 |! /\ :
`'┬' トー'´ ヽ :
:,/{、 || ,.|='´ } :
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 22:47:59.10 ID:rSr6oNQn0
r───────-、
. ヽ,.ヘ、__,. '⌒,ゝ l
. ヾ`く /./ヽ. |
/\_]| |「_ ∠_ _」 │
「::==。lニニ「:==。=::|r=、 |
ヽ:::: ̄:l l:::: ̄:::::ノ||^!| | 問題は何もない
l  ̄ L___.」 ̄ ̄ ||ン│
! ⊂ニニニ⊃ .∧. ト、
! -- / ヽ !:::\
__,∧____./ >|:::::::::`ー
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151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 22:59:29.02 ID:u+/GTGbG0
地味子が幸せになってよかった・・・幼馴染が成就してくれてよかった・・・・・・っ
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/11(木) 23:01:58.77 ID:sf6V23Oz0
大丈夫だ、問題ない。
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:51:27.01 ID:MjI6d/rI0
あやせルート
---
妹の親友にして、あの妹と同格の存在。
いまやカリスマモデルとしての評価と地位を不動のものにしている
マイラブリーエンジェル、こと、新垣あやせ。
いや、今となってはそんな事言える年じゃないんだけどさ。
もうねえ、俺もあやせも大学生ですから。
ラブリー(笑)エンジェル(爆)ってなもんだ。
しかし、桐乃がそうであるように、あやせもまた美しく成長している。
そこは純粋に凄いと評価すべきだろうな。
子どもの頃は散々その容姿をもてはやされた人間が
成長してみるとてんで大した事なくなってる、なんてのはよくある事だと
俺はこの業界にそれなりに長く触れる間に何度も目の当たりにしてきたんだ。
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:52:08.93 ID:MjI6d/rI0
「おい、まだ……やんのか……」
「決まってるじゃないですか、京介さん。何これぐらいで音を上げているんです?」
情けないくらい息を乱して訴えた抗議は無常につっかえされた。
あやせは汗こそかいているものの、まだまだ余裕たっぷりという感じだ。
「ほら、良いじゃないですか。もう1回やりましょう」
「うっ……い、いや……俺は遠慮したいなー、なんて」
「は? 何言ってるんですか? この私が誘ってるんですよ?
それを拒むとか頭おかしいんじゃないですか?」
「わ、わかった! わかったよ! わかりましたから!」
半ば、いや、全ばとでも言うのか(読み方など知らん)
とにかく強引に俺から口上の同意を取り付けたあやせは嬉しそうに器材の方へ歩いていく。
断じてベッドとかじゃない。
ここはフィットネスジム。週3回、あやせはジムに通っている。
そして俺は毎回それにつき合わされているのだ。
あくまで『仕事』として。
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:52:59.70 ID:MjI6d/rI0
俺が大学2年の時、1つの転機が訪れた。
久々にあやせからメールが届いた事に歓喜しながら受信したそれを開いてみると
そこには短く本分が記されているのみだった。
『今、人生相談お願いできませんか』
矢も盾も取らず、とはこういう場合に使うのか。
俺は全力で部屋を飛び出した。
場所なんて書かれていなかったが、アイツの人生相談と言えば『あの場所』しかない。
そしてその予想はバッチリ的中した訳だ。
公園のブランコに、あやせは座っていた。
その背中はとても寂しそうで、悲しそうで。
俺は声をかける事も、近づく事も躊躇った。
それでもあやせの方は何か感じたらしい。
ちらと俺の方に目をやった。
「あ……」
「……よう」
どことなくホッとしたような、そんな顔。
1人にされた子どもが迎えに来た親を見るような、そんな顔だった。
「場所なんて言ってなかったんですが」
「お前の相談なんて、ここ以外で受けた事ないだろ?」
「それも……そうですね」
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:53:41.92 ID:MjI6d/rI0
当時あやせは高校2年。初遭遇から3年が経過している。
これがビックリするほど綺麗で、いや、それは中2の時も思っていたが
あの頃に比べてほぼ完全に子どもっぽさ、あどけなさと言うものが抜け
大人の女としての魅力すらまとい始めていたのだ。
そんなあやせの憂いた表情にどきりとしたが、今はあくまで相談だ。
俺は安心させるように、ゆっくりと近づき、2つ隣のブランコに腰掛ける。
「……」
「……」
こちらから切り出してやるのは簡単だ。
「どうした?」「なんかあったのか?」
でも、それはズルだ。
誰でも人が他人に何かを相談するってのは割と一大決心するもんだ。
まして、あやせが桐乃でなく俺に。
それは間違いなく一大決心だったろう。
だから、俺からは聞いてやらない。
あやせから、自分から言い出せるまで、辛抱強く待った。
「……モデルの仕事を、辞めるようにって、母から言われたんです」
沈黙は長くなかった。この辺は意志の強さから来るものだろうか。
「ほう」
「今までは大目に見てきたけれど、もう受験の準備を始めなさいって。
そのためにはモデル『なんかに』うつつを抜かしている場合じゃないでしょうって」
「……なるほど」
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:55:00.48 ID:MjI6d/rI0
あやせの母は頭が固い。しかも視野がだいぶ狭い事は分かっていた。
それまでにも何度か相談を受けたが、大体桐乃か母親が絡んでたからな。
「私は辞めたくないんです。モデルの仕事は好きだし、桐乃とも一緒にいられるし」
「まあ確かに、もったいないよな。お前らの人気すげーもん」
「でも、母はそうは思っていません。むしろその人気が仇になっているみたいで」
「ん?どういうこっちゃ」
そこで少し口ごもったあやせだったが、1つ深呼吸して話しを続けた。
「インターネットの掲示板とかで、私の事を、その、
い、いやらしい目で見る人の書き込みがすごい多いらしいんです」
「あー……」
絶句した。思い当たるフシが山ほどある。
というか、つい先日桐乃や黒猫、沙織たちとそのスレッドを見たばかりだったのだ。
『げーキモっ!アタシらはお前らのためにモデルやってんじゃねーっての』
『モデルだろうが何だろうが、抜けるものでヌく。彼らの常でござるよ』
『低俗極まりないわね。わざわざ検索して見つける方も見つける方だけれど』
桐乃もあやせも。今では男どものオカズとしての地位まで確立している。
そりゃ腹立つよ? 可愛くないとは言え、俺の妹と、マイラブリーエンジェルあやせたんで
ティッシュを無駄遣いして環境破壊を促進するような輩にはムカつきますけどね。
でも、そんなのどうしようもねーじゃん。送信者と受信者。そこには明確な差がたくさんあるのだ。
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:55:51.31 ID:MjI6d/rI0
「それで、けがらわしい、みたいなイメージをモデルに対して持つようになってしまったみたいで」
「なるほどなぁ……」
「それに、確かに最近モデルの仕事が忙しくなって、勉強が疎かになってきている部分もあるんです」
悔しそうに告白する。
そりゃそうだろう。俺に自分の欠点を明かすなんてな。
「まだ成績は維持できていますけど、次の定期テストではどうなるか……」
「つまり、不安な訳か」
「はい」
まとめると問題は2つ。
純粋に母親が娘を守ろうとちょっと行き過ぎた義憤にかられている事。
そして、勉強が疎かになりつつある事。
この2つをクリアできれば、なんとかなりそうだ。
「勉強は良いとして、問題はお母さんのほうだな」
勉強なら俺や麻奈実(というかほぼ麻奈実)も見てやれる。
俺の手柄ではないが、アイツは良い先生だからな。きっと大丈夫だろ。
ふと、思いついた俺は自分の仲間内で最も頼りになるヤツに電話をかける事にした。
「……お兄さん?」
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:56:54.25 ID:MjI6d/rI0
2回目のベルが鳴り終わる前に、がちゃりという効果音。
『もしもし、京介氏でござるか?』
「よお、沙織。遅い時間に悪いな」
『いえいえ。決して。京介氏からの電話でしたら何も問題ござらん』
相変わらず嬉しい事を言ってくれるヤツだ。
『して、今日はどのような?』
「ああ、ちょっと聞きたいんだけどさ。こないだ2ちゃんで桐乃のスレ見ただろ?」
『ええ。ですがああいったものを気に病む事はありませんぞ』
「それは分かってはいるんだけどさ。いや、あーいうヤツらって、
どんな事でショックを受けるんだろうと思ってな」
ふうむ、とやや考えた沙織が俺に教えてくれたものとは。
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:57:58.47 ID:MjI6d/rI0
「オッケー。分かった。それくらいならなんとかやれそうだ。
助かったぜ。ありがとな、沙織。恩にきる」
謝辞を伝えて通話を終了。
あやせを見ると、何故か先ほどまでの不安の表情に加えて、不満の色が混ざっていた。
……別にあやせの名前は出してないし、プライバシーは守ったよな?
もしかして桐乃もそういう目で見られていると、今の電話で察したのかもしれないな。
コイツは桐乃教信者ナンバーワンだし。
「とりあえず、手は考えたぜ」
「……ホントですか?私には女性と楽しそうにお喋りしているだけのように聞こえましたが」
「な、何勘繰ってんだよ」
「別に」
……コイツはホントにわからんぜ。俺も20歳になるけどいまだに女心はサッパリだ。
「じゃあ作戦は3つだ」
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 10:58:41.16 ID:MjI6d/rI0
1週間後。
あやせから1通のメールが届いた。
『母からOKをもらえました♥』
目を疑ったね。だってハートマークですよ。
あやせが絵文字を使うのだって未だに新鮮なのにハートマークって。
まぁ、何にせよ、よかった。勉強に関してはこれから少しずつやっていけば大丈夫だろう。
あやせと麻奈実は俺よりよっぽど仲良いっぽいしな。
良かったな。と返信するとすぐにあやせから電話がかかってきた。
多少訝しく思ったが、出ない理由は何もない。
「もしもし」
『よかったな。ってそれだけですか?なんかひどくありませんか?』
えー……なんかいきなりいちゃもん付けられたんですけど……。
「いや、それ以外になんて言えば良いんだよ……良かったじゃん」
『それはそうですけど……』
なにやらブツブツ言っているがうまく聞き取れない。
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:00:50.46 ID:tmiJmHnzO
よしいいぞ
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:01:52.53 ID:MjI6d/rI0
「ただまぁ、ちょっと荒療治だったけどな」
『でも、事務所の方々も感謝してましたよ。やっぱり思わしくなかったみたいですから』
そりゃコラージュとか横行してたもんな、あのスレ。
事務所としては、そういう画像がネット上に転がるのはイメージダウンになりかねない。
グラビアアイドルなら男を興奮させるのが目的だから黙認されんのかもしれねーけど。
さて、種明かし。俺たちが何をしたかと言うと。至って簡単で。
あやせが男と一緒に買い物している画像を1枚、わざとネットに流したのだ。
『あのスレの流れを見るに大半は処女厨と呼ばれる集団でしてな』
「処女厨?」
『はい。要は、対象の女性が自分以外の異性と結ばれていないと盲信的に妄信しているのです』
「……なんか救えないヤツらだな」
『しかし、それこそ正に信仰的ですぞ。だからこそ、あれだけの熱意を持ってコラを作ったりできるのです』
誰にでも、簡単にできるというものではござらん。と沙織は続ける。
『だから、例えば京介氏と一緒にいる写真などが彼らに露見すれば、少なくとも処女厨たちは
手のひらを返したように見向きもしなくなるのでござる。男の影は禁忌でごある故』
「でもそれってイメージダウンに繋がったりしねーか?」
『時と場合、そして事務所の戦略と対応次第でござる。今回は世の女性を見方につける事が肝要。
モデルならネットの一部の男性から疎まれても、女性の同情を買えれば勝ちでござる』
嫌な言い方ではございますが、と少し困ったように言ったが、そこは否定した。
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:02:34.42 ID:MjI6d/rI0
「いや、分かったぜ。俺が一時矢面に立てば良いって訳だ」
『詳しくはPCの方のメールに資料を添付します故。そうですな。明日の夜にでも確認してくだされ』
「何から何まですまねえな」
『いやなに。京介氏の頼みとあらば。それでは可愛い彼女のため、頑張ってくだされ』
アイツめ。桐乃の話ししか切り出していないのに、気づいていやがったのか。
いや全然彼女でもなんでもないんだが。悪い気はしないけどな!
で、次の日メールに添付されていたのはパワーポイント形式のファイル。
そこには画像流出の手順から事務所、当事者の対応がフローチャート形式で説明されている。
『元々あったものを今回のケースにあてはめて拙者のアレンジを加えたでござる』というそれは
素人目にもしっかりできていて、俺はすぐさまそれをあやせに転送した。
事務所の反応は早く、そしてそれ以上にネットの反応は早かった。
3日後には画像が流出、例のスレでは『なんだよ男いたのかよ』と嘆いて去る者が後をたたず
あっという間に過疎スレ化し、昨日にはdat落ちしたのを確認した。
彼らは懸念されていたほど暴走せず、新たな嫁探しに出向いたようだった。
『それで、なんですけれど』
「ん?」
『事務所の方が、その、お兄さんに、私のマネージャーを前提に入社しないか?と』
「……マジで?」
正式なお話は今度直接会って、という事ですが。とあやせは続け、そして現在。
内定どころか確定を頂いてしまった俺は氷河期と呼ばれる就職活動を経験しないまま
この時期に至って、あやせとジムに通ったり、現場に入らせてもらったりしている。
世の中、何がどうなるか分からないもんである。
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:03:18.35 ID:MjI6d/rI0
ちなみに、あやせの母親は、ネットが沈静化した事と、モデルの仕事の現場に呼んで仕事振りを見せ
さらに会社や現場でのあやせの評価を聞いた事で心を改めた。
どんな仕事でも真面目にやってるヤツは一定の尊敬を持たれて然るべきだよな。
職業に貴賎はないって事を改めて強く認識したもんだ。
「……さん、お兄さん」
「ん? わり、なんだ?」
「もう、やり過ぎですよ。規定の回数はとっくに超えてます」
はたと我に返る。そう言えば今はジムにいるんだったっけ。
「お兄さんって、意外と何か始めるとハマるというか、集中しますよね」
「ものによるな。身体を鍛えるのは嫌いじゃないし」
「確かに」
そう言って、あやせはつつっと俺の二の腕を軽くなぞった。
「なっ、なななな何してんだよ!」
「いえ、引き締まった良い腕だなと……」
「よせやい。腕を誉められてもそんなに嬉しくない」
「あら」
……今、なんかあやせの目がキラリと光った気がするのは錯覚だろうか。
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:04:18.86 ID:MjI6d/rI0
「なら、じゃあお腹、胸、背中、腰まわり、お尻、腿なら嬉しいんですか?」
人差し指を胸から腹にかけて沿わせるように動かしていく。
「ば、ばばばばっかやろ……」
イチイチどぎまぎさせるヤツである。ていうかなんかもうエロい。
「はむ」
「なんで口に咥えてんだよ!」
自分の指を、である。俺の腕や胸、腹をなぞった右手の人差し指。
「味と匂い、覚えましたからね?」
「……は?」
そしてピトリと、俺の唇に人差し指を押し当てた。
「今後、他の女の匂いなんかさせたら、即刻クビですから。気をつけてくださいね、『京介さん』」
「……ッ!?」
妖艶にすら微笑んで、更衣室へと踵を返すあやせの後姿を、俺は呆然と見送る事しかできなかったのだった。
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:06:01.40 ID:MjI6d/rI0
:: .|ミ|
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:: / ,,.-'" ヽ ヽ、 ::
:: ,,.-'"_ r‐'" ,,.-'"` ヽ、 ::
:: / ヾ ( _,,.-='==-、ヽ ヽ、
:: i へ___ ヽゝ=-'"/ _,,> ヽ
:: ./ / > ='''"  ̄ ̄ ̄ ヽ
:: / .<_ ノ''" ヽ i
:: / i 人_ ノ .l
:: ,' ' ,_,,ノエエエェェ了 /
i じエ='='='" ', / ::
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ヽ、_ __ -_'"--''"ニニニニニニニニヽ ::
`¨i三彡--''"´ ヽ ::
/ ヽ :: ┼ヽ -|r‐、. レ |
/ ヽ:: d⌒) ./| _ノ __ノ
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:06:11.50 ID:wvSoWUoo0
ラノベにあってもよさそうな感じ。
190 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:08:24.28 ID:eQgVVheI0
よくやった
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 11:09:32.07 ID:ttQ6Ev760
原作読んで無いんだけど黒猫ルートってどんなかんじなの?
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 13:21:34.18 ID:zaMDuUCz0
桐乃みたいな素直になれない不器用な子が大好きです
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:20:24.54 ID:MjI6d/rI0
「俺の妹がこんなに」ルート
---
どうしてこうなった。
どうしてどうしてこうなった。
昨日、親父とお袋は子ども達を残して
2泊3日の温泉旅行へと連れ立っていった。
事の発端は桐乃。
2週間前くらいに夕食の席で突然こうぶち上げたのだ。
「お父さんとお母さんに、旅行をプレゼントさせてください」
贈り物をする人間の言葉としては些か下手に出ている感もあるが
これはウチでは仕方ない。子は親に敬語。特に父親のいる前では。
それが我が家の侵されざる不文律なのだ。
「急になんだ」
「そ、そうよ、どうしたの、桐乃ったら」
動揺しているように見えるが母親は興奮を隠し切れていない。
ここらへん、親父とは違いがありすぎる。
203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:21:17.24 ID:MjI6d/rI0
「仕事で稼いだお金を自分のためだけに使う事に少し気が引けるというか……
要は、親孝行しておきたいなって思ったの」
まぁこの子は、なんつって。お父さん聞きました?なんつって。
母親は1人舞い上がっている。
それに引き替えアンタは、と俺に一瞥くれるのも忘れない。
「あんまりすごい所は厳しいけど……お父さんが2日ぐらいお休み取れるなら
どうかなって思ったんですが、どうですか?」
乗り気の母親は親父に熱い視線を注ぐ。
「……検討してみよう」
母さんの歓声が上がったのは言うまでもなかった。
そして翌日の夜には早くも有給休暇を取得してくるあたり、
親父は親父で内心喜んでいるのだろう。
可愛い娘の親孝行だからな。受け取ってやるのも愛情だ。
え、俺? いや、まぁ今はそれは置いとこうぜ。
そんな訳で、早速宿に連絡して予約完了。
(桐乃はすでにネットの評判などで宿を決めていたらしい。)
そして冒頭。2人は水入らずで出かけていった。
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:22:05.31 ID:MjI6d/rI0
平日だから俺も桐乃も学校がある。
朝食を食べ、それぞれ登校し、学校では麻奈実や赤城と話し、
放課後には部活に顔を出して黒猫や瀬菜たちと次の企画について論じ、
帰宅した頃には時計は19時を回ろうとしていた。
「ただいまー、っと」
いつものように靴を脱ぎ、麦茶を飲もうとダイニングキッチンのドアを開けると
「お、おかえり……」
台所にはエプロンを付けた桐乃が立っていた。
「お前、何してんの?」
状況を理解できず空っぽになった頭ではそんな言葉が限界で。
「は、はぁ? 夕食の準備に決まってんじゃん。それとも何?
アンタが作るってーの? 何が入ってるか分かんなくて怖いっつーの!」
いやまぁね。確かにね。俺の質問も悪かったよ。
そりゃあそうだよ。台所でエプロンつけて、包丁で野菜切ってて
何してんのって、見りゃ分かるよね。うん、俺が馬鹿だった。
でもさ。桐乃だぜ? ウチは専業主婦のお袋がいたからってせいもあるけど
桐乃が料理してるところなんて見たことなかったし、想像もできなかったんだよ。
じゃあお前自分で作るのかって言われたら多分カップ麺だったと思うけどさ。
205 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:23:17.34 ID:MjI6d/rI0
「何よ。じゃあアンタの分はいらないのね」
「いや、いる、いるよ!食べますって!」
「ふ、ふーん。食べたいんだ……アタシの手料理……ふーん……」
なんだよ。食べて良いのか悪いのか分かりづらいヤツだな。
ただ、料理している桐乃の邪魔をするのも悪いかなと思ったんで麦茶はキャンセルした。
「じゃあ、部屋にいるからな」
「う、うん。出来たら、呼ぶから」
「おう」
……桐乃の手料理、か。完璧人間のアイツの事だし。
結構上手なのかもしんねえな。
まぁあんまり期待してそうでもなかった時が辛いし。
毎日20年近く作り続ける母親と比べるのも酷だし。
あんまり上を望むのは止めておこうか。
部屋に入り、着替えを済ませて適当に本なんぞ読んでいると
唐突にドアがノックされた。
「できたよ」
それだけ言って桐乃は1階に降りてしまったようだ。
さてさて。鬼が出るか蛇が出るか。
……ん? これじゃどっちが出てもダメじゃん。
そんな事を思いながら階段を降りるとなんとも良い香りが鼻腔をくすぐる。
そして食欲はドアを開けると嗅覚だけじゃなく、視覚によっても加速した。
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:24:24.21 ID:MjI6d/rI0
「お、おぉっ……」
桐乃は先に椅子に座ってこちらを見ている。
「は、早く席ついたら?」
「あ、ああ」
テーブルに並んでいるのはどれも美味そうだ。
魚の煮付け、おひたし、根野菜の煮物に厚焼き玉子、味噌汁まで完備されている。
ちらりと桐乃を見ると、ジッとこちらを見ている。
これは、先に食べろという事なのか?
「い、いただき、ます……」
「……召し上がれ」
やはり俺が先に食べるようだ。ええい、ままよ!
まず味噌汁。口元に近づけるとふわりと出汁と味噌の良い香り。
具は豆腐とわかめか。ちゃんと綺麗に小さく切り揃えられている。
「美味い」
「ほ、ほん……ゴホン。お味噌汁だけじゃなくて他のも食べなさいよ」
言われるまでもない。
俺は魚の煮付けに箸を伸ばした。
そっと箸を入れると身はほろりと解けるように切れた。
断面から新しく立ち上る湯気がまた食欲をそそるねえ。
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:25:25.14 ID:MjI6d/rI0
「これも美味い」
「え、あ、あの……ほんと?」
「嘘言ってどーすんだよ。すげーうめぇっての。お袋より美味いかもしんねーぞ」
桐乃は顔を光り輝かせて喜んでいるように見えた。
そんなバカな。
桐乃が、俺の妹が、こんなに可愛いわけがない……!
安心したのかようやく桐乃もご飯を食べ始めたのだが、
先ほどの顔を見て何故か顔が熱を帯びているのを感じた俺は
急いで桐乃の手料理をかっ込んだ。
「そんな慌てなくても……」
「う、うるせえ。美味いから食が進むんだよ!悪いか!」
「わ、わるくない……」
食事を食べきって、俺は自分の部屋のベッドに逃げるように飛び込んだ。
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:26:31.79 ID:MjI6d/rI0
あれ以上はヤバイ。桐乃ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
まず可愛い。もう可愛いなんてもんじゃない。超可愛い。
可愛いとかっても「あやせと同じくらい?」
とか、もう、そういうレベルじゃない。
そこまで暴走しかけた俺は先ほどの事を思い出した。
あんまり美味くて、良い嫁になれるみたいな事を口走りそうになって
でも咄嗟に急ブレーキを踏んだ。
嫁って。誰のだよ、畜生。って訳だ。
そりゃ兄妹で結婚なんてできる訳ないしさ。
いや、何考えてるんだよ俺は。これじゃあ本当に変態じゃねえか!
でも意識しないようって考えれば考えるほど意識しちまうんだよ。
長い睫毛とか、柔らかそうな赤い頬っぺたとか、滑らかな肌とか、
ふっくらした口唇とか、さらさらした髪とか、すらりと伸びた手足とか、
陸上やって引き締まったお尻とか、キュッとくびれた腰とか、
その割にちゃっかり出てる胸とかさ!
イカン。イカンぞ。これでは妹の身体に発情する変態と罵られても言い返せない!
どうすんだよ。どうすんのよ。どうすんだよコレ!
あーもう、ヌくにも今ヌいたら妹でヌいたみたいな事になって、
そんな事になったら自己嫌悪ハンパねぇぞ!?
「ねえ、兄貴?」
「きっ、桐乃!?」
気がつくと、そこにはドアを開けた桐乃の姿があった。
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:27:31.38 ID:MjI6d/rI0
「どうかしたの……?」
「えっ、あ……いや……」
言えるか。お前に発情しちまったなんてよ。
「ほ、ホントはアタシの作ったご飯、美味しくなかった?」
「な、なんでそうなるんだよ」
「だって……食べ終わるなり部屋に戻ってさ、ちょっと心配になって来てみても返事はないし
ドア開けたらなんか苦しそうに悶えてるし……」
桐乃の表情は珍しくも本当に俺を心配しているように見えて。
余計罪悪感でいっぱいになった。
「薬持ってこようか?」
「い、いや」
そこまで言いかけて気がついた。
桐乃が、すぐ側に、立っていた。
「桐乃……?」
なんてこった。俺、どんだけ動揺してんだよ。
こんなに側に来るまで接近に気づかないなんてよ。
「あ、兄貴……それ……」
「っ……!」
そう。罪悪感とか自己嫌悪とか関係なく。
俺のそれはギンギンにいきり立っていたのだ。
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:28:13.42 ID:MjI6d/rI0
「え、えっ?」
恥ずかしくて死にそうだ。
「あ、兄貴……」
実の兄が勃起してるところを見せちまうとは……どんだけ気まずいんだよ。
あーあ。これでまた変態兄貴に逆戻りか。つーかもう2度と口きかなくなるかもな……。ははは……。
というか。いつもの桐乃なら変態とか何とか叫んで一撃かましてさっさと退散するだろうに
なんで今日に限ってそういう反応がないんだ?
そんな事を考えていると、何故か桐乃は俺の横に座った。
「き、桐乃? お前何して……」
「あ、あのさ。もしかしてそれ……」
生唾を飲み込む音は、果たしてどちらのものだったのか。
「アタシに、興奮してくれたの?」
「な、あ……」
「そうだとしたら、……嬉しいよ」
そして、桐乃は、俺の口唇に、柔らかい口唇を優しく押し付けてきた。
もう、限界だった。
俺は、桐乃と、そのままベッドに倒れこんだ。
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:29:14.37 ID:MjI6d/rI0
すーすーと可愛い寝息を立てて寝ている桐乃を見る。
コイツってばホントに端整な顔立ちしてるよな。
同じ両親から生まれてどうしてこうも違うかねえ……。
2人とも生まれたままの姿。
2人とも同じ両親から生まれた子ども。
これは決して叶わない、叶ってはいけない想いだったはずだ。
もしかして、桐乃は、昔から俺の事を……。
そんな事を考えながら、俺もまた、深い眠りへとつくのだった。
朝。目覚ましの音と共に起きると、目の前には桐乃の顔があった。
「おはよう、兄貴」
「ああ、おはよう。桐乃。つか起きてたのかよ」
「まあね。でも、ベッドの中で好きな人とおはようって挨拶したかったんだ」
言ってから真っ赤になる桐乃。言われた俺ももちろん真っ赤なんだが。
くすぐったいような、甘ったるい空気が俺の部屋に満ちている。
「学校行かないとな」
「うん。本当は、兄貴と一日ずっと一緒にいたいけど。ダメだよね」
「……それも悪くないけど、親が不在でもきちっとしないとな」
お互いに軽くシャワーして身支度を整え、桐乃の用意した朝食を取る。
やっぱり桐乃の作ったご飯は美味かった。
昼休み。一通のメールはあやせから。
放課後公園で会えますか、という文面だった。
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 14:40:35.70 ID:tmiJmHnzO
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 15:12:23.02 ID:MjI6d/rI0
……話の内容が目に見えている気がしたが、だがいつかは通らなきゃいけないだろう。
話せばあやせも分かってくれる、と、良いな。という超希望的観測を胸に。
公園に着いた時にはまだあやせは到着していなかったようだが、
代わりにメールを1通受信した。
『ちょっとだけ遅くなります』
律儀なヤツだ。俺はどのぐらいかだけ聞いておこうと返信メールを
「遅くなりました」
そんな声が、俺の背後から聞こえて。
なんだか背中が熱くて。ぬるぬるしている。
肩が何かに強くぶつかった。
「手を出したら殺しますって、言いましたよね。
ああ、ごめんなさい」
「もう、聞こえていませんよね」
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 15:13:05.13 ID:MjI6d/rI0
問題:これなんてエロゲ?
,.へ
___ ム i
「 ヒ_i〉 ゝ 〈
ト ノ iニ(()
i { ____ | ヽ
i i /__, , ‐-\ i }
| i /(●) ( ● )\ {、 λ
ト-┤. / (__人__) \ ,ノ  ̄ ,!
i ゝ、_ | ´ ̄` | ,. ‘´ハ ,!
. ヽ、 `` 、,__\ /” \ ヽ/
\ノ ノ ハ ̄r/:::r―?―/::7 ノ /
ヽ. ヽ::〈; . ‘::. :’ |::/ / ,. ”
`ー 、 \ヽ::. ;:::|/ r’”
/ ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
| 答 | ス ク イ ズ │|
\_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ
ラストはさるった。スクイズルートってこんなんで良いのかな?
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 15:21:49.69 ID:zaMDuUCz0
どうしてこうなった…俺のわっふるをかえせ……
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 15:22:54.35 ID:tmiJmHnzO
あやせさん怖いっす><
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 15:25:31.43 ID:pA0ZUe2f0
ナイスな最後だ
もっともっと
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 20:49:59.42 ID:MjI6d/rI0
フェイトルート
---
朝起きると携帯の背面ディスプレイがチカチカと光っていた。
新着メール:1通
昨日寝る前に携帯を見た時は確かになかったはずなので
寝ている間にメールが来ていたらしい。
それなりに遅い時間だと言うのに誰だと携帯を開き操作する。
フェイトさんだった。
『PCの方のアドレスにいつもの送ったからよろしく☆』
年甲斐もなく星マーク。あの人はそろそろ年齢を考えた方が良い、
なんてのは妙齢の女性に対して禁句である事ぐらいは俺も承知している。
冗談は、真実でないから良い事もある、って事だ。
それにしても、と思う。
そうか。もういつものヤツが届いたのか。
つまり、前回から一ヶ月経ったという事。
特別な思い入れがある訳じゃないが、なんだかちょっと感慨深いモンがあるな。
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 20:54:19.40 ID:MjI6d/rI0
高校の連中と同人誌即売会にサークル参加した時に再会して以来、
フェイトさん、こと伊織・F・刹那さんとはちょっとした親交がある。
そもそもの馴れ初めは今回省略するとして、あまり友好的とは言えないはずの
俺と彼女が定期的に連絡を取り合うようになった経緯は説明させて頂こうと思う。
きっかけはやはりメール。ちょっとした相談があるとの旨だった。
FXや馬、ボートに自転車ととにかく碌な金の使い方をしない彼女だが
さすがに高校生相手に金の無心はしないだろう。いや、してきたらその場で着拒ものだが。
とにもかくにも都内で会う事になった。
その席で打ち明けられたのは、小説の事だった。
「小説を、読んでほしい?」
「そう。小説と言っても、ちょっと特殊なジャンルではあるんだけど」
特殊? それはまさか赤城瀬菜が好むような、いわゆるBLものではあるまいな。
「あの、腐った女子向けの本なら紹介できるヤツがいますけど……」
「ち、違う違う。ソッチじゃないわよ。ドリーム小説とか、夢小説って知ってる?」
「いや、聞いたことないッスね。なんですか、それ?」
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 20:55:15.73 ID:MjI6d/rI0
ここでフェイトさんはちょっと得意そうな顔になって件の小説について説明してくれた。
曰く。
①ウェブ上で公開されている。
②ブラウザに名前を登録する事で登場人物の名前を自由に変えられる。
この2つが大きな特徴らしい。
つまり、自分がピンチになったところに颯爽と現れて助けてくれるのは
自分の好きな漫画のキャラ、ないし好きな芸能人、みたいな事ができる形態の小説らしい。
へー、ふーん。なるほどねー。ケータイ小説とかドリーム小説とか色々手ぇ出すよな、この人。
「でもそれって金になるんすか?」
「そんなのは分からないけど、ケータイ小説だって、
当初からお金になるなんて誰も思ってなかったのよ?」
まぁそれは確かにそうだろう。ある程度の知名度を得たところでそれを商材に活用する。
近年、より顕著に見られるビジネスモデルだ。
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 20:56:07.95 ID:MjI6d/rI0
「で、そこで名前を売るなりして、お金を稼ぎたいって訳ですか?」
俺は正直この時点でかなりうんざりしていた。
あんだけやってまだ懲りてないのか、とか。
いい加減しっかり働いて稼ぐ気はないのか、とかな。
「ううん」
でも、フェイトさんは意外な一言を放ったのである。
「私、なんだかんだ言って、お話を書くのが好きなのよ」
その声は驚くほど柔らかく、落ち着いていて。
ああ、この人って本当に年上の女性なんだな、と妙に思ったものだった。
もっとも、帰り際に
「ところで、今日って……この店ワリカンよね?」
この一言で霧散しちまったけどな。
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 20:56:49.17 ID:MjI6d/rI0
まぁそんな訳で。
ネットにアップロードする前に誰かに見てもらいたい。
その誰かとして白羽の矢が立ったのが俺だったのだ。
……他に友達いないのかな……あの人。
それからと言うもの、毎日1回のペースでフェイトさんは小説を書いてはメールで送ってくる。
ちなみに俺はとうとう、ねんがんの のーとぱそこんを てにいれた! のだった。
なので桐乃に気兼ねすることなく自室でPCが使えるのだ。
気をつけないと時間が無為に流れていくから要注意だけどさ。
今回送られてきたのは、またあっまあまなラブストーリーだな。ていうかちょっとエロっちいよ?
でも読者の事を考えると、自分の好きなキャラとこういう事したいって思う人もいるのかもね。
オーケーわかった。エロいのは良しとする。良しとする事に決めた。
でもさ、なんで登場人物の名前が『フェイト』と『京介』なのかね!
『京介くん……私もうガマンできないよ……』
『俺もさ、フェイト……できるだけ優しくするから……』
『うん……嬉しい、嬉しいよ……京介くんと1つになれるなんてぇ……!』
机に突っ伏した。
何考えてんだよ、あの人!!
そりゃこの名前の部分は自由に読者が変更するから、このまま使われたりしないけどさ!
さすがにこれ以上は読めないぞ?
うーん。でもなぁ。
『私、なんだかんだ言って、お話を書くのが好きなのよ』
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 20:57:40.17 ID:MjI6d/rI0
チクショウ、である。あの顔が未だに忘れられないのだ。
正直言って反則だったと思う。
あーもう。あーもう。分かったよ。最後まで読む。読みますよ。読めば良いんでしょう。
それから30分ほどして。
今月分の夢小説の原稿を読み終える頃には、俺の中でいろいろな何かが壊れかけていた。
死力を尽くして携帯を取り出してメールを打つ。
『こんばんは。今月分読みました。内容はまぁ良いんじゃないかと思います。
でも刹那さんはともかく、俺の名前使わなくても良いんじゃないですかね』
送信ボタンを押して、ベッドになだれ込む。
たまにあるんだよな。こういうちょいエロ系。
今日のはちょいどころかモロだった気がするけど。
でも名前がフェイトと京介って……。
もうこのまま寝ちまおうかなと思った矢先、携帯が鳴る。
フェイトさんからの返信だろうか。
『だから、言ったでしょ?』
『』
『』
『』
『』
『自分の好きな人と、素敵な体験ができるのが、夢小説の良いところなんだ、って』
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 20:58:25.97 ID:MjI6d/rI0
// ,.へ ー‐-、` 、:.:.::/ \ \
__ _,. ‐'´/ / ヽ/ k'^ヽ、 ヽ ',
`ヽ、__/ / / / / / ヽ ∨ !:.:.:.:.:.ヽ、 ', !
/ / / ,' / / / / , ヘ、 ', |:.:.:.:.:.:.:.:ヽ、 ', |
. / / / l ,' | i_!__| | | |__|_| ! | i | ト、:.:.:.:.:.::.:| |
/|イ / ' | ! ィ'∧ハ∧! |,ハト、ノノ`ヽ ,' | ,' \:.:.::.:.::| |
,' | ! | .| | N,r‐=ト 斤―-、 / / N ヽ、:.:| |
/ '., ト、 l | ト、 〈 ヒ′;;| ヒ′;;}ヾ// ! ー' |
. / ヽ|. \ト, | ヽ| 辷_.リ 辷_.ソ 7 ∧ |
/ | | ', :::::::::::: ′ ::::::::::: / ,' ', |
./ /レ∧ ト、 - ― / , ! |
/ / ', ! > 、 ,. イ l ! |
┌fj-fj-fj-fj-fj-fj-fj┬|-`-ー- ´┤ _| | | |
. ,. -─-、 |:::::::::::::::: ,/´ | | __ ! ',
j ー─< | -‐-- / | |-‐- 、 ', ヽ
{ ー─< | ,/ | | ト ヽ
/l ー‐< おわり /´ ̄ `l丶 / | | lハ \
' ー--‐' { ̄ ̄ | \. | | iハ \
l. | {´ ̄ | \| | リ } \
ゝ _ | ヽ´ ̄ | | | ,′ノ ヽ、
└───────┘`ー ' { ! i| //
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 21:03:31.17 ID:zaMDuUCz0
さあ次はブリジット√だ
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 21:04:33.29 ID:MjI6d/rI0
お前は何を言っているんだ
255 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/12(金) 21:26:24.51 ID:IXPEzCbH0
285 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:33:51.67 ID:k+Q07ESh0
加奈子&ブリジットルート
---
「ただいまー」
大学から帰ってくるとなぜか玄関には桐乃が仁王立ちしていた。
それもすげー不機嫌そうな顔でこちらを睨んでいる。
なんだよ? 俺、何かした? 思い当たるフシはないんだが。
「……い」
「えっ?」
ボソッと言われてもわかんねーよ。
「遅いっつってんの!」
くわっと効果音が付きそうなくらい目を見開いて俺を叱る。
「まだ明るいだろ?」
「……チッ」
強烈な舌打ちである。なんだよ、本当に何かしたのか?
「来て」
「はい?」
「良いから来いっつってんのよ!」
286 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:34:37.46 ID:k+Q07ESh0
俺の手を握り、家の中に引きずり込まれそうになり
慌てて靴を脱いで、なんとなく揃えた。
いや、こうしとかないと親父がうるさいんだよ。
駆け上がるって程じゃないがそれでもやけに早足で階段を昇っていく桐乃に
俺は戸惑いながらもついていく。一体なんだってんだ?
「入って」
「あ、ああ」
桐乃の部屋に通されるなり、桐乃は机へ向かい、
電源を引っこ抜いたラップトップを持ってきた。
俺の目の前の液晶画面に表示されていたのは
『星くず☆うぃっちメルル 第4期決定!!』
の文字と、見覚えのある女の子。いや、ちょっと成長してるか?
チラッと桐乃の顔を見ると、ああ、なるほど。すげーウキウキしてる。
もしかしてこれを誰かに言いたくてウズウズしてたってのか?
「どう!?」
「いや、どう? って言われても……こういう時は、良かったなって言えば良いのか?」
「はァ!? アンタ全然分かってない!」
「ええっ?」
「全っ然! 分かってない!!」
うわーテンションたっけえ。
287 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:35:18.73 ID:k+Q07ESh0
「良い? まずアニメで4期なんて相当ないのよ?
精々やっても2期が限度。3期ですら稀なの。
なんでかって言うと、どんどん新しいコンテンツが出てくるから。
どうしたってそっちに目移りしちゃうのが消費者だし、制作側もそれを分かってる。
それにどうしたって演出やストーリーのクオリティも下がってくるのが常だし。
スタッフのモチベだってそう長続きしないわよ。
だから4期なんてフツーのアニメじゃありえない訳。
でもサザ○さんとか、ドラ○もんとか、名探偵バーローとかあるじゃん。
あーいう国民的人気を誇るコンテンツはそんなのお構いなしに続いてる。
逆に言うとメルルも、不朽の名作的な? 国民的? あるいは世界的な?
セールスと人気がいまだに根強く残っているっていう明確な証なのよ!」
………………さいですか。
288 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:36:01.20 ID:k+Q07ESh0
こんなにテンションたけえのいつぶりだろう。
ぶっちゃけ言ってる事は分かったが、理解はあんましできてなどいない。
ただまぁ、3期が終わった時にはすげー凹んでたもんな。
この終わり方は完結するって演出だよ、とか言って2日くらい飯が喉を通ってなかったぐらいだ。
それを考えるに、この4期発表は嬉しいんだろうねえ。
さすがにちょっと怖いくらいのテンションだが、まぁ兄としては一緒に喜んでやるべきか。
「よ、良かったな。メルルもなんかちょっと大きくなってるみたいだし
成長したメルルと再会できるって訳だ。おめでとう、桐乃」
「……」
え? なんで? なんでそこで黙りこくる?
「問題はそこよ」
「へ?」
「メルルちゃんが成長してるってどういう事なの? 魔法少女が成長なの?
アタシたちの可愛いメルルちゃんはどこにいっちゃうの?
ババァになったメルルちゃんとか誰得なの?」
…………あるぇー…………?
「い、いや。あれ? お前、メルルの4期が決まって喜んでたんじゃねーの?」
「それとこれとは別! まるっきり別物なの!」
め、めんどくせぇー! 何? ファンってこういうもんなの?
289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:37:03.40 ID:k+Q07ESh0
「で、でもさ。まだ詳細な情報はないんだろ? もしかしたらすげえ可愛いかも……」
「は? キモ。どう考えたっておかしいじゃん。中学生のメルルとかありえないでしょ」
「で、でもほら。なんつーの? 動いて喋るトコ見たら意外と、みたいなさ」
「ないない! ありえないから! 一応スタッフとか声優は3期と同じだけどー。
何考えてんだろって。ネットではもう喧々囂々、侃々諤々の議論なの!」
なんでファンでもない俺が制作スタッフのフォローしなきゃならんのだ……。
「なんだよ……じゃあ、メルル4期が決まったの嬉しくないのか?」
「バッカじゃないの!?」
もう、俺、泣いて良いかな。
「嬉しいに決まってるじゃん! でもそれとこれとは別。ご飯とスイーツぐらい別腹。
メルルが帰ってくるんだから盛大に祝ってやるのがファンってもんでしょ?
けどその内容、っていうか設定がありえない。おかしい。頭おかしい」
頭おかしいのはお前だ。何がスイーツだよ。デザートって言え。
その後もお袋から晩飯のお呼びがかかるまで、実に1時間半ほど。
延々とテンションのタガが外れた桐乃の説教(なんで?)を聞かされるハメになったのだった。
あやせからメールが来たのはその後のこと。
マイラブリーエンジェルからのメールは嬉しいのだが、大抵やっかい事になるんだよな。
今回も、やっぱし、ちょっとやっかいそうな事案だった。
290 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:38:14.61 ID:k+Q07ESh0
翌日。学校が終わってだらだらと店に入ったりして時間を潰した後、俺はとある公園に来ていた。
いまだに交番裏のこの公園でしか会ってもらえない俺はどれだけ信用がないのかね。
軽く泣きそうになるぜ。昨日とはまた違った意味で。
「お兄さん、お待たせしました」
「よう。久しぶり」
そう。あやせとの待ち合わせ。うーん。字面だけだと素敵シチュエーションなんだけどなあ。
これからの事を考えると気が重くなるのは止むを得ない。
「面倒な事になったな……」
「は、はい……すみません」
「いや、あやせが謝る事じゃないけどさ」
別にあやせは何も悪くないし、誰も悪くない。
ただいくつかの小さな事が積み重なって起きただけの話。
「またマネージャーの真似事をしなきゃならないとはな……」
事の発端はメルル4期。桐乃が大騒ぎしてたアレだ。
どうやら4期開始にあたり、大々的にイベントを行う事になった制作会社が
来栖加奈子――あのクソナマイキなチビ――に打診を入れたらしい。
今までに2回ほどお披露目されたメルルのコスプレはいずれも大好評大絶賛の嵐で
3期が終わってからもコスプレ愛好家の間では『メルルコス=かなかな』、
ついでに『アルファコス=ブリジット』という公式が成り立っている程の人気ぶりなのだった。
291 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:38:57.83 ID:k+Q07ESh0
「まさかあの子がこんな事言うなんて、思いもよらなかったんですけどね」
問題は、何故か加奈子が付き人として俺を指名してきた事。
『メルルのコスプレって言えば、あのド新人マネージャーってクビにされたの?』
『まぁアイツ無能だったから仕方ねぇかもしんねぇけどぉ?』
『でもこの加奈子様に付いてたヤツがクビなんてまるでアタシがサゲマンみてーでムカつくし』
『ちょっと呼んで来い』
……どんな指名だよ。
で、『あの時』の顛末を知っているあやせと事務所スタッフが協議した結果、
件の新人はちょっと地方に飛ばされているから当日には呼び戻すって事になったらしい。
「あのさ。アイツはもう正式な事務所のモデルなんだろ?
前は確か禁煙できてるかどうかの確認をするためには俺がうってつけだったって事で
引き受けたけどさ。本来、無関係の素人である俺にやらせるのは無理があるんじゃねーの?」
「それは……私もスタッフも同感なんですけど、ブリジットが……」
「あん? ブリジット?」
なんでそこでブリジットの名前が出てくるんだ?
いや待てよ。そういやあの子もあやせや加奈子と同じ事務所に所属したんだっけか。
そして今回、メルルシリーズ4期。……当然アルファも出る訳か。
「いや、やっぱ繋がらん。ブリジットがどうして」
「ですから。ブリジットも、お兄さんの事をご指名なんです」
「……なん……だと……」
292 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:39:39.14 ID:k+Q07ESh0
『加奈子とブリジットから指名なんて、お兄さんモテモテですね~』
……なんであの時のあやせは若干怒ってたんだろうねえ。
つーかこれモテモテとかそういうんじゃないだろうに。
そんなこんなで事前に打ち合わせを済ませ、いざ当日。
『星くず☆うぃっちメルル エターナルフォース 4期制作決定記念イベント』(長い)である。
いつもの如くサングラスにオールバック、スーツで一応の変装は済ませた。
……変わり映えのしない格好だが、別に俺が出演する訳じゃないんだ。良いさ。
そういやあの2人と会うのは……かなり久しぶりだな。
そんな事を思って現場に着くと、既にそこには、それらしき2人がいた。
「おはようございます」
「お、おはようございます、高山さん」
「おっせぇぇぇぇぇ! マネージャーの方が遅く現着するって何様なんだよ。
そんなんだから地方巡業とかやられんだっつーの。マジ超ウケる」
「……悪かったな」
ご挨拶だぜ。これでも予定の待ち合わせ時間より1時間は早く来たってのに。
ちなみに『高山』というのはもちろん偽名。地方云々は俺が左遷されていた地方から
今日は2人のご指名のおかげで中央に栄転したという設定だからである。
「か、かなちゃん……私たちだって早く来ちゃったんだから……」
「はァ!? そんなんカンケーねぇし。マネージャーなら最低でも2時間は早く着いて待ってろって話しだろ」
ブリジットはともかく、加奈子はDQNっぷりがちっとも改善されてねえじゃねーか。
コイツの言葉遣いは何とかすべきじゃね?
まぁ? まぁまぁ? 見た目は2人ともえっらい可愛くなってるけどな?
295 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 12:55:34.87 ID:8X5b3qSFO
( ・∀・)つ④
296 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:02:54.01 ID:cD5CUEZ+0
細かいけど2人に使った偽名は赤城支援
297 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:05:12.77 ID:k+Q07ESh0
ブリジットは小学生から中学生になっても金髪さらっさら。
ハリウッド映画にだってこんな子見ねーよってくらい。
しかも目とか大きくて色もすげー綺麗だし。宝石? 宝石なの?
中学生の頃の桐乃より手足長そうだし、白人ってやっぱすげーわ。
一方の加奈子も相変わらず背ぇちっさいし、ロリーな体型だけど良く言えばスレンダー?
でも昔に比べてやっぱちょっと大人びてんじゃん。
あと髪ツヤすげえしな。天使の輪っかとかあるもん。
桐乃やあやせとは違ったベクトルで可愛いかもしんない。黙ってれば。
でもそれはあくまで、女の子として、あるいはファッションモデルとして、だ。
アニメキャラのコスチュームを着て可愛い、だけでは公式のコスプレイヤーとしては物足りない。
あくまで以前、絶賛されていたのは2人の可愛さではなく、2人が超絶に似ていたから。その1点に限る。
「オラ、いつまで立たせてんだよ。早く控え室に案内しろ、このボケマネ」
「だ、だから、かなちゃん。そんな言い方しちゃだめ……」
作画さえ変わらなければいつまでも変わらないアニメキャラ。
時間が経てば年を取り、外見の変化する人間。
あの時はたまたまそれが合致したが、今回それはうまく行くんだろうか?
「早くしろっつってんだろ! 何ボサッとしてんだ無能!」
「わ、分かってるよ!」
結論から言うと、それは杞憂に終わった。
298 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:06:11.87 ID:k+Q07ESh0
会場は異様な雰囲気だった。
以前来たイベントとは違い、歓声一色ではないのだ。
本邦初公開となるプロモーションムービーの出来栄え1つ取っても
予算や力の入れ方が計れる、と言うのは桐乃の弁である。
しかしやはりコイツらにとって一番気になっているのは『果たしてどうなのか』だろう。
つまり、大きくなったメルルちゃん&アルファちゃんは愛すべき対象なのかどうか。
ちなみに本日桐乃は来ていない。
あやせとモデルの仕事が入っている事に加え、
『アタシはまだ静観する』という立ち位置を取ったようだ。
あんだけ興奮しといて何が静観だよ笑わせんな。
そんな事を考えていると、フッと会場の照明が落とされる。静かなBGMが流れ出し、
巨大ビジョンには、黒を背景に白抜きのゴシックフォントが次々と現れては消えていく。
否が応にも高まる緊張感。相変わらずこういうの上手いよな、映像会社ってのはさ。
そして最後にデカデカと、ビジョンの中心に現れる『あの2人が帰ってきた』の文字。
次の瞬間、腹をえぐるように強烈な低音が会場に轟いた。
画面をところ狭しと飛び回るメルル、アルファの姿に会場のボルテージは
一気に最高潮へと達した。怒号、歓声、嬌声!
俺も久しぶりに味わう空気だが、やっぱこのエネルギーはすげえ。
ライブだからこそのこの震える感じには鳥肌が立つ。
流れるBGMは2期前半のOP曲をアレンジしたユーロトランス。
確か桐乃が『メルルのOP・EDは全部神曲だけど、そん中でも最高!』って
ベタ誉めしてたやつだ。一時期毎日リピートで聞かされていたから
このメロディラインには覚えがあったのだ。
299 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:06:53.32 ID:k+Q07ESh0
5分に及ぶプロモーション映像がメルルとアルファの抱擁で締められると
会場は誰からどこからともなく大きな拍手で包まれた。
おいおい、なんだか泣いてるヤツいんぞ。そんな繊細なハートで大丈夫か?
興奮冷めやらぬ空気の中、ステージの照明が付くと裾から出てきたのは司会進行の女性。
ここで一息つかせるのである。ずっとテンション上げっぱなしは辛いもんな。
紹介されて出てくる監督さん、プロデューサーさん。
彼らがメルルに対する思い入れを語ると、観客は呼応するように笑ったり拍手したり。
やっぱこういうコール&レスポンスがリアルタイムにあるイベントって良いな。
なんて思ったりしている間にキャラの声を担当する声優さんたちも登場し会場はまた熱を取り戻していく。
さて、そろそろ出番か。お前ら、度肝抜かれんなよな。
「それでは登場して頂きましょう! メルルコスのかなかなさん! そしてアルファコスのブリジットさんです!」
ステージの両端から中央目掛けて真っ直ぐ走る影が1つずつ。
一際大きいどよめきが観客の最前列から広がり――
2人の杖が交錯したところでステージ上の声優さんがすかさず声を当てる。
『やっと会えたね、あるちゃん!』
『うん、会いたかったよ、めるちゃん!』
その時の会場、いや観客ったらなかったね。狂喜乱舞ってのはあーいうのを言うんだろう。
俺も年甲斐もなくちょっとクるもんがあったけどさ。
300 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:07:45.98 ID:k+Q07ESh0
いや何がすげえって。完全に一致。メルルとアルファの生き写しかよってくらい一致。
加奈子とブリジットの姿を見てデザイン起こしたって言われても納得するわ。
こんな再現度ありえねーだろ。リアルにメルルとアルファがいるならコイツらがそう。
衣装を着た2人を見た時の俺の衝撃ったらなかったね。
思わず口の悪いクソガキ加奈子に対して
「か、可愛い……」
と本音をポロリしちまったくらいだ。
もちろんブリジットも同じくらい可愛かったし、2人揃ってたから余計にそう思ったのかもしれん。
あの控え室が完全に非日常空間になってたもんなあ。
「あ、当ったり前だろ? このアタシが可愛いとか……あ、当ったり前だろ!」
「かなちゃん。同じ事言ってるよ?」
「う、ううううっせえええ! このマセガキ!」
「ひゃあっ、そ、そんなとこ触っちゃだめなのお!」
そんな2人を見ていた俺は、その時点でこのイベントの成功を断定していたのだが、
にしたってこの盛り上がり。すげえ。すげえの一言だよ。
トークは相変わらず加奈子は上手いし、ブリジットも以前より場慣れしたのか上達していて
なんの問題もなく進行した。名ゼリフを言いながらポーズを決める度に上がる歓声は
加奈子の自尊心を強くくすぐったようで、イベントが終わっても上機嫌であった。
「2人ともお疲れさん」
「あ、マネージャーさん。お疲れ様でしたあ」
「お疲れ様」
憎まれ口を叩かないもんね。普段なら槍か杖かメテオが降ってくるとこだろ。
301 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:08:47.49 ID:k+Q07ESh0
ブリジットがシッポを振る犬っころみたいな表情で聞いてきた。
「今日のイベントどうでしたか?」
「凄い良かったよ。感動したもん」
「まっ、アタシにかかればこれくらいチョレーっての」
「かもな」
「えっ」
なんだそのポカーンとした表情は。失礼な。俺だってたまには素直に人を誉めるぞ。
「ふ、ふん……」
そう言って加奈子はそっぽを向いてしまった。
ペットボトルを2人に手渡しながら俺は言ってやる。
「本当に感動した。久しぶりで実は心配だったけど、
2人のおかげで大成功だったしな。良かったよ」
「……成功、か」
「だろ?」
「……じゃ、じゃあさ。これってアンタの手柄だよな?」
んん? 何言ってんだ? どう考えてもスタッフさんと、
お前ら2人を含めた出演者さんの手柄だろ。
「加奈子……?」
「……」
あの加奈子が黙ってしまった。珍しいな本当に。
怪訝な顔をした俺を見て、横からブリジットがにこにこしながら言った。
302 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:10:00.59 ID:k+Q07ESh0
「かなちゃんは、お兄さんと一緒に仕事したいんですよ。
だから、今日成功して、無能じゃないって証明できれば地方から戻ってこれるかもって」
「ばっ、バァァァカ! ブリジットてめェェェェ! 言うなって言っただろうがよ!」
……なんだって? 加奈子が、俺と?
さっとブリジットは俺の背中に回って加奈子から逃げると更に続ける。
「私も、お兄さんがマネージャーさんになってくれたら嬉しいです。
他の人の時より、お兄さんが一緒にいてくれる時の方が落ち着きます」
「え……」
「な……ブリジット……」
加奈子がなんだかショックを受けたような、ちょっと怒ったような顔をしている。
「加奈子、そうなのか?」
「し、知るかよ。ケッ! 全部ソイツの妄想じゃねェの?」
あ、これ本当だ。もし嘘ならコイツはこういう態度は取らない。
そんなに付き合いが長い訳じゃないが、照れ隠しとそうでない違いくらい分かるつもりだ。
ていうか基本的にコイツって、隠し事できないタイプだし。だから、まぁ。
「悪いけど、また明日から地方なんだ」
「えっ……そうなんですか?」
「でも、そうだな。あと1年ぐらいしたら、必ず中央に戻ってくるよ」
口から出た言葉は自分でも驚くほど優しくて、でもハッキリしていた。
だから、分かったんだ。
あぁ、これ本音だ、ってな。
303 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:11:00.65 ID:k+Q07ESh0
「お兄さん……約束ですよ?」
後ろを見ればブリジットはなんだか涙をうるうるさせている。
ぽんぽんと頭を撫でてやりながら、あぁ、約束だ、と告げた。
「……」
「加奈子」
「……」
俯いたまま、無言の加奈子は、カツカツとヒールの音を立てて俺に歩み寄って、
何か言われるのかと思ったら、素通りされた。
なんだよ、と思って振り返ろうとした刹那。
「……待ってる」
ボソッと呟いた声は、そんな風に聞こえて。
加奈子は控え室へと入っていくのだった。
ブリジットはなんだかニコニコした顔でそれを見送り、次いで控え室へ戻っていった。
やれやれ。どうやら就職活動先の企業に、1社加えなきゃならなくなっちまたらしい。
304 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:12:26.72 ID:k+Q07ESh0
>>296 || ⊂⊃
|| ∧ ∧
|| ( ⌒ ヽ
∧||∧ ∪ 俺ノ マジかよ俺死んだ
( ⌒ ヽ 彡 V
∪ ノ フワーリ
∪∪
かなかな&ぶりちゃんルート消化
もう、ないよな・・・
305 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:20:05.67 ID:cD5CUEZ+0
乙
少なくとも瀬菜√、リア√は残ってるが
306 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 13:21:58.96 ID:8X5b3qSFO
おつ
桐乃ルート
地味子ルート
あやせルート
沙織ルート
ブリジット・加奈子ルート
フェイトルート
よくこれだけ書いたもんだ
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:16:29.39 ID:k+Q07ESh0
リアルート
---
異常気象だのなんだのと言っても暑いものは暑い。
寝苦しくて目が覚めると時計はまだ6時。
ただでさえ昨夜も暑くて寝付けなかったと言うのに
これじゃ疲れも取れねーっての。
「あー……シャツ汗だくだぜ……」
ちなみに俺の部屋には空調がない。
正確にはこないだ壊れた。
暑さか。暑さのせいか。暑さのバカ野郎。
「……麦茶でも飲むか」
ため息混じりに階段を降りてキッチンへ。
ぷはあ。うめえ。
……寝直そう。あんま寝れる気はしねーけど。
重い身体を引きずり俺は自分の部屋へと戻り、
再び夢の中へと戻っていった。
316 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:17:33.53 ID:k+Q07ESh0
――――――
――――
――
……今、何時だ?
時計を見ればすぐ分かる事なんだけどさ。
もう時計は10時を過ぎている事を示していた。
「……ちょっと寝すぎたか」
2度寝ってさ、寝ても余計疲れてたりするよな。
うん。今まさにそんな感じ。
……麦茶飲もう。
家の中はやたら静まってて、世界に俺しかいないみたい。
なんてそんなバカな事はねーんだけどさ。
親父はお袋と東京に買い物行くって言ってたし、桐乃は部活。
そういう訳で世界ではないが、家には正しく俺1人って訳だ。
ここんとこ大学のレポートやらサークルの飲み会やらで
忙しかったからたまにはのんびりするのも良いだろう。
317 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:18:20.06 ID:k+Q07ESh0
なんて今日を気ままに過ごす算段を立てていたら玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
うるせえ。なんだ? 勧誘か? うーん、面倒くせえな。
しかも俺今、シャツとトランクスだけだしなあ。
ガチャ。
……え? 今ガチャッて言った? まさか勝手にドア開けたのか?
っていうか鍵閉めてなかったのかよ! 誰だよ最後に出て行ったの!
じゃなくて、そんな事考えてる場合じゃねえ。泥棒だったらどうすんだ!
勢い良くドアを開けて廊下に飛び出た俺の目の前にいたのは、
誰だ?
「キョウスケおにいちゃん!」
え? どちらさま? てか日本語?
瑞々しい褐色の肌。しなやかに伸びた手足。艶やかな髪は腰まで伸ばしている。
肩から、胸、腰、ヒップ、そして太ももへの流れるようなそれでいてメリハリのある曲線は
芸術と呼べるまでに美しく、整った目鼻立ちは到底日本人のそれではないと誰の目にも分かる。
際立って、匂い立つような美少女だった。
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:19:05.19 ID:k+Q07ESh0
生まれて20年ちょい。日本から出た事は1度だけあるが外国人の友達などいない。
あ、でも待てよ。1人だけ知り合いっぽいヤツはいるけど、いるけどさあ。
「キョウスケおにいちゃん……まさか」
「お前、リアか?」
たった1つの心当たりを口にすると少女は一層弾けるような笑顔を見せて抱きついてきた。
「キョウスケおにいちゃん、超好きッ!」
「うわっ、こ、こら……ていうか、お前本当にリアなのか?」
「そうだよ。リアはリアだよ! あ、もしかして、
リアがあんまりイイ女になってるもんだからすぐには分かんなかったのかな?」
ぶっちゃけその通りだった。はっきり言って記憶の中のリアとは姿形が違いすぎた。
もう4年前になるのか? あの当時のリアはまだ12歳とかそんなもんだったはず。
確かに可愛かったが、まだまだお子様だったんだ。それがこうなるとはねえ。
容姿の成長も、行動パターンも。全然予想できないヤツだ。恐れ入ったわ。
「それもあるけどさ、なんでこんなトコにいるのか、って方が分かんねえよ」
「えっへっへー」
蕩けるような笑顔を見せるな。この純真さは変わっていないようだ。
いや、中身が変わっていないからこそ、この外見とのギャップがやべえ。
語彙が貧弱だから月並みな言葉しか思い浮かばねえがとにかく可愛い。
加速的に可愛い。短距離ランナーだけに。あんま上手くねえ。
319 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:19:46.75 ID:k+Q07ESh0
「キリノはいないの? お出かけ?」
「多分部活だよ。今日は日曜だけど、部活はあるんだ」
「あークラブかあ。じゃあ走ってるのかな?」
「今度全国大会があるらしいぜ。その調整だろ」
ふーん。と、リアは気にした割りに気のない返事だ。
「じゃあ、キョウスケおにいちゃんはせっかくの日曜に何してんの?」
「うぐっ」
そこを突かれると痛いな。
「最近いろいろ忙しくてな……今日はだらだら休もうかと思った」
「えー。つまんなーい。じゃあリアと遊びに行こう!」
「は、はぁ!?」
断れる訳もなく。いや、お前ムリだろ?
褐色美少女に『遊んでよー』とちょい悲しげな目で迫られてみ?
喜んでだろうが渋々だろうが絶対断れないから。
そんで、来たのはココ。
「おー、久しぶりのアキバだー」
前回桐乃と3人で来た秋葉原。あの時は散々だったな。
「なんだか前来た時とちょっと違うね」
「良く覚えてんな。確かこのビルは建て直したし、アッチは駐車場になったし。
いろいろ変わっちまったよ、この辺も」
「そうだね。変わっちゃったね」
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:20:29.27 ID:k+Q07ESh0
そう零したリアの背中が思いのほか寂しそうで。
「よし、リア。なんか食べに行こうぜ!」
慌てて俺は声をかけ、その手を取って駆け出した。
こういう場合って、女の子が「はや~い」みたいな展開になるじゃん。
全然ならなかった。そりゃそうだよな。桐乃が敵わないって言い切ったヤツなんだ。
「キョウスケ! 何食べるのー?」
ナリはこんななんだけどな。天は二物を与えたわ。
「そうだなあ。まずはおにぎりでも食べるか」
仮にも女の子と2人きりの、デートとも言えなくない状況で握り飯を食らう。
はっは。こんなんだから俺は彼女と別れたのかもな……はは、ははは。
「ん!」
「ん?」
途端にリアが顔を近づけてきた。
うお、近くで見るとホントに綺麗な顔してやがんな、コイツ。
「今、リア以外の誰かの事、考えてたでしょ!」
す、鋭い。女の勘が良いってのは万国共通か。男頑張ろうぜ。
321 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:21:05.37 ID:PjJ90t3hO
支援
322 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:21:18.72 ID:k+Q07ESh0
「キョウスケと今一緒にいるのはリアなんだよ。
だから今はリアの事だけ考えてよねー」
「分かった。悪かった。んじゃ飯食うか」
「おー」
おにぎりは割と好評だった。日本オリジナルの物だから、という事と
カロリーが高すぎないから、だそうで。特に後者はアスリートのリアらしい考えだと思った。
「あ、何あれ」
「んー?」
リアの指差す先にあったのはクレープ屋だった。
「クレープって知らん? クリームとかフルーツを小麦粉練って焼いた皮で包むんだ」
「……よく分からないけど、美味しいの?」
「日本の、リアと同い年くらいの女の子には人気かな」
じゃあ食べる、と。さっきおにぎりがカロリー高くないという理由で気に入った人間に
こんなもの食べさせて良いのか判断に迷ったが、リアの好奇心に満ちた顔を見ると
とてもじゃないがそんな事は言い出せなかった。
美味しそうにクレープをついばむリアと一緒に秋葉原の街を歩く。
間違ってもエロ漫画屋には入らんし、エロゲショップにも入れさせんよ?
今日は日曜という事もあって、人が多く、
そこかしこにメイドやコスプレをした人が立ち客引きしている。
途中で記念撮影なんかもしたりして。割と楽しい時間だった。
323 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:21:59.85 ID:k+Q07ESh0
「キョウスケ~、ちょっと疲れたよ~」
この人の多さは日本特有のものだし、慣れてないリアが目を回すのは当然かもしれないと思った。
「んじゃこっち行こう。小さいけど公園があるんだ」
「うん」
リアがするりと俺の左腕に右腕を絡ませる。
ちょっと驚いた顔でリアを見ると、リアはなんだか嬉しそうな顔をしていた。
……振り解ける訳なんて、なかった。
「はー。落ち着いたー」
「悪いな。人ごみって疲れるだろ?」
「そだね。いろいろみてたり行ったりしたけど、今日みたいのは初めてかも」
「はは。もう少しゆっくりしたら帰ろうぜ。桐乃もそろそろ」
「ううん」
リアは、首を横に振った。
「キリノには会っていかない」
「そう、なのか?」
もしかして喧嘩でもしたとか?
いや、それならウチを訪ねて来たりはしないよな。
「キリノの事は今でも好きだよ。手紙もたまに書くし。
でもね、今日はキョウスケに会いたかったの」
「……リア……?」
そういやいつの間にか『キョウスケおにいちゃん』じゃなくなってた。
324 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 17:22:41.56 ID:k+Q07ESh0
「今日はすごい楽しかった。だからリアはこのままロスに帰るよ」
「えっ、もうか!?」
「うん。今日の最終便。実は元からそのつもりだったの」
急すぎる。いや、昔コイツが日本に来た時も目的を果たしたら即帰っちまったけどね。
ってことは、本当に俺に会うために、わざわざロスから来たってのか?
「キョウスケに会えて本当に良かった。
しかもこんな風に遊べるなんて思ってなかったから。すごく嬉しいよ」
「リア……」
そうして本当に、リアはロスへ帰っていった。
「ただいまー」
「あら、お帰りなさい。アンタ今日は1日家にいるんじゃなかったの?」
「いや。ちょっとな。いい年した若いモンが不健康だろ?」
「まぁねー」
麦茶を飲んで、他愛のない会話。
部屋に戻った俺はPCを起動し、ブラウザを立ち上げた。
「んーと、リア……ハグリィだっけ」
リアのフルネームを検索にかけると、まぁ出るわ出るわ。関連サイトがゴミのようだ。
天才少女。その肩書きはいまだ健在のようだった。
が、しかし気になる記事を見つけた。
「……期待の超新星リア・ハグリィ スランプか?」
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 18:08:00.15 ID:k+Q07ESh0
記事によるとこの1年ほど記録が伸びず、思わしくない成績が続いているようだ。
将来の五輪女子100メートルの金メダリストを嘱望された天才少女に黄信号、みたいな内容。
まぁ、そりゃいくらリアが生活の全てを短距離に賭けていても、
そしてどんだけ才能があったとしても、そう簡単に世界の頂点になんてなれないよな。
知り合いが金メダル取れるほど、世界は狭くねーっての。
でも、頑張れよ。 応援してっからな。
一ヵ月後。テレビでは世界陸上の生中継を放送していた。
で、どうやらリアがエントリーしているらしく、
応援も兼ねて桐乃とテレビの前に陣取って視聴しているのだ。
『さぁー、トラック女子の花形、100メートルが始まりますよ!』
『アメリカからは期待の新星リア・ハグリィ選手が登場です』
『いやあ、ここのところ調子を落としているそうなんですが、大丈夫ですかねえ』
『若いんですねえ! ええっ!? まだ16!?』
解説や司会がいろいろ言っているが、横の桐乃は真剣そのものの表情で画面を見ている。
一応かつてのライバルだもんな。でもコイツもなんだかんだ言いながら応援してるんだ。
まず予選。ここでリアは不安説を吹き飛ばす抜群のパフォーマンスを見せ付けた。
『速い速い速い! アメリカのリア・ハグリィ、大会新で予選突破です!』
「うお、マジかよ!」
「リアすっごい! 不調とかなんだったのよー」
桐乃が目をキラキラさせている。これはもう感動の域だ。
走りで誰かを感動させるとか、どんだけすげーんだよ、リア。
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 18:08:51.32 ID:k+Q07ESh0
「もしかしたら、今回優勝しちゃう?」
「アクシデントがなければ文句なしよ……」
そして少し時間を置いて、決勝だ。
予選タイムではリアがぶっちぎりのトップ。
後はフライングがない事を祈るしかないですねーとか言っちゃって。
スタートの号砲が鳴って、ランナーが飛び出した直後、
競技場にいた人、中継を見ていた人、誰もが確信した。
わずか4歩。
未来の金メダリストを確実視される事になるニューヒロインが、他を圧倒して置き去りにしていた。
観客席のあちこちがカメラのフラッシュを焚いて、女子短距離界を
今後引っ張っていくであろう1人の女の子の優勝と世界新を祝福している。
リアは嬉しそうに星条旗を両手に持ってトラックを一周していく。
ウィニングラン。勝者にのみ与えられた特権だ。
テレビ越しに見ても、勝ったリアはとても嬉しそうで、
俺たちはちょっとテレビが滲んで見えない。
すると、解説のオッサンが何かに気づいた。
『おや、リア選手は国旗以外にも何か左手に持ってますよ?』
「ん? そういえば、なんかあるな」
「なんだろ。写真? 家族の?」
330 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 18:09:35.32 ID:k+Q07ESh0
カメラがアップでリアを写す。大きさ的に写真のようだった。
そうしている間にリアが戻ってきて、インタビューが始まる。
『優勝、世界新。おめでとう』
『ありがとう。とっても嬉しいわ。トレーナーや家族、応援してくれた皆に感謝します。皆ありがとう!』
『ところで、その皆が気にしているのだけれど、星条旗と一緒に写真を持っていた?』
『ああ、そうよ。これは私に元気をくれた大好きな彼の写真なの』
そう言ってリアが写真を持ち上げた。
「ああああああああああああああああああああああああああっ!!!?」
「桐乃、うるさいぞ! 静かにせんか!」
「ご、ごめんなさい! で、でもでもでも」
「何よ、どうしたの?」
慌てふためく桐乃を横に俺は唖然としていた。
だって、その写真はさ。
「なんでリアとアンタが映ってる写真を、リアが持ってる訳!? 意味分かんないんだけど!」
先日秋葉原に行った時、客引き中のメイドさんにお願いして撮影してもらった写真だったのだ。
331 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 18:11:32.39 ID:k+Q07ESh0
「ねぇ、ちょっとこれどういう事? なんであの子がアタシの知らない写真持ってんの?
ええええ、意味わかんない意味わかんない意味わかんない!」
「京介、アンタこれはどういう事なの?」
「……京介、説明しろ。桐乃も母さんもうるさくてかなわん」
親父もそれなりに驚いているっぽい。
いや、桐乃より親父よりお袋より、一番驚いてるの俺だぜ?
そして、そんな俺たちの事など何も知らないように。
『キョウスケのおかげで優勝しちゃった!
今度日本に行ったらまたデートしてね!
あ、次はチャペルでウェディングも良いよ!』
下げ止まりをみせない居間の温度。鳴り止まない電話。ついでに変な汗も止まらない。
あぁーもう。ったくさ。ほんっと、予測できないヤツだよ、リア。お前ってやつは。
『キョウスケ! 超好きッ!』
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 18:13:35.84 ID:k+Q07ESh0
_
\ヽ, ,、
`''|/ノ ∞ . . .
.|
_ |
\`ヽ、|
\, V
`L,,_
|ヽ、)
.|
/ ,、 ,
/ ヽYノ
.| r''ヽ、.|
| `ー-ヽ|ヮ
| `|
ヽ, __,|
´ ` <⌒
/ l ト、 、 \
. / l. _/リ! ヽ _} 寸¬
l'´/ ,リ  ̄V\ ヽ
{ /| |/ {:.ヽ !
X l l◯ ◯ l:.:.l V
/ ヽ (| ! _ }:.:.!
. | !、_( __) イj\| ┼ヽ -|r‐、. レ |
}/,レヘ/─-\ ′ d⌒) ./| _ノ __ノ
333 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 18:14:49.69 ID:1qB5T/xz0
乙
いい終わりだ
さあ残るは・・・
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 18:22:52.49 ID:8X5b3qSFO
おつ
つーかk+Q07ESh0頑張りすぎだろwww
413 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 12:48:23.56 ID:zZuVFrAs0
_ __
/´=:ミ´二.ヾ\
/ '/ '´rー=、ヽ.ヽ 、ヽ
i / 〃,イ| | |_L| l l 当スレは誰でもウェルカム
|.l.l ル'__リヽ ヘl_Nヽ!.l | 18歳未満にご退出願うような展開は
| |.バ ̄o` ´o ̄,"|l | 一切ございません
. レ1  ̄ 〈|:  ̄ !`| ご自由にお楽しみください
ド」 、ー-----‐ァ ,lイ!
_,,... -‐| l ト、`¨二¨´ ,.イ.l lー- ...._
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ヽ::::::::::::::;イ:::::::::::::::::::::::::::V V::::::::::::::::::::::::::::ト、:::::::::::::/::::::::::::::::::::::/
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422 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 17:53:50.95 ID:zZuVFrAs0
桐乃ルート
---
「兄貴、寒い」
「……ホッカイロはもうねーぞ」
「今、使ってるのがあるでしょ!」
「お前! 俺に凍え死ねってのか!?
じろりと回りに見られてハッと我に返って頭を下げた。
桐乃は、ふん! とふんぞり返ってるけどな。やれやれ。
12月24日。世間ではクリスマスイなんとかって日に、俺と桐乃が何をしているのかって言うと、
秋葉原で先着限定の特典付きアニメDVDを買うため徹夜で並んでいるのだった。
時刻は6時。東の空が白んできてもうすぐ夜が明けそうなのだが
実は日の出の前後1時間くらいが一番寒い事を今知った。
このためにコートとセーターを着こんで、カイロをしこたま持ってきたのだが
桐乃は見た目を気にして、ダウンジャケットにホットパンツという
馬鹿丸出しの格好のためか、日付が変わったくらいからカイロの消費が異常に速い。
「だから温かい格好してこいっつったろ……」
「……だって……」
流石に失敗したと思っているようだ。全く。
「あと1時間くらいで整理券配布だろ? もうちょい頑張れ」
「……うん」
カイロを1つ渡して、頭をぽんぽんと叩いてやった。
あー、全く。なんでこんな事になったのかねえ。
423 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 17:54:36.12 ID:zZuVFrAs0
「……メルルの劇場版?」
「そう! あの神作がとうとうブルーレイで発売されんのよ!」
メルルと言えば、桐乃がハマりまくっている魔法少女もののアニメ。
3期が終わった後も根強く残った人気とファンの声により、劇場版が制作・公開された。
時系列的には1期と2期の間を補完するようなストーリーで、
作画・ストーリー・音楽、とどれを取っても『アニメ史上最高』だったらしいが
まぁそれはファンによる色眼鏡的な評価があっての事と思う。話半分。
「で、それがどうかしのたか?」
「だーかーらー、ココ! 耳の穴かっぽじって、よっく見てみなさい!」
耳掃除しても目には関係ねぇだろう……。
「……ソフ○ップ特別協賛、先着限定特典?」
「そう! それなのよ!」
今回の新商品発売にあたり、店頭で購入した客に先着順で特典をつける、と。
某ネット通販サイトに対抗しての策なのかね。
「……それで?」
「アンタの目は節穴!? よく見るの!」
「んー……?」
ああ、なるほど。そういう事かと合点がいった。
424 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 17:55:26.68 ID:zZuVFrAs0
「メルルとアルファ。2種類特典があるのか」
「そう! けどこれは一限なのよ」
「? いちげん? 大学の講義の1コマ目ってこと?」
「アンタバカァ!?」
ひっでえな! そこまで言われる事かよ!?
「お一人様限定1つまでってこと。1人で買いに行ってもコンプできないってことなのよ」
「なるほど。なかなかアコギな商売だな」
「うっさい」
とまぁ、ここまで来れば先は読めたよな。
1人1つ限定。しかし2種類ある特典は両方ほしい。
「なるほどな。つまりこの発売日に、予定空いてる? って聞きたい訳だ」
「はぁ? 違うし。24日、行くからねっていう確認」
……既に決定事項なのかよ……。
「どうせアンタ、クリスマスイヴなんて予定ないでしょ? じゃあ問題ないわよね」
「確かに予定が入る予定もないけどさ……」
いい年こいてイヴに妹とアニメのDVD買いに行くのか……胸が苦しくなるな。
「あ、ちなみに、前日の終電で現地入りして徹夜だから」
「殺す気か!」
そんな訳で、予定通り予定の入らなかった今日。
こうしてメルルの劇場版ブルーレイを購入する為、桐乃と並んでいるという訳だった。
425 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 17:56:22.48 ID:zZuVFrAs0
陽の光が少しずつ大きくなっていく。
こうやって日の出を見るのは、あれ? もしかして人生初かもしんねえ。
初日の出とかそういうのはあんまし興味なかったし、富士山登ってご来光を拝む、
みたいな崇高な趣味も持ってないしなあ。
……人生初の日の出は、妹と秋葉原でアニメのDVDを買うために並ぶ最中見ました。
割と素で泣けてくるな、これ。
街は少しずつ起き始め、行きかう車や人も増え始めた。
こんな時間からスーツ着たサラリーマンが歩いてるのを見ると
ああ、こういう人たちがいるから社会は機能するんだなとか思っちまう。
「あ、兄貴」
「ん?」
「あれ」
必要最低限しか喋らなくなったな、こいつ。
ダウンジャケットの裾から指だけ出して差した先を見ると
ソフ○ップのロゴ入りナイロンジャケットを着たオニーチャンが出てきていた。
「本日はー『星くず☆うぃっちメルル劇場版DVD/BD』にお並び頂きまして誠にありがとうございます」
うわー、そんな風に言われちゃうとなんだか公開処刑されてるみたいだぜ。
街行くリーマンやキャリアウーマンの皆さんの視線が痛い痛い。
426 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 17:57:04.12 ID:zZuVFrAs0
「予想以上に大勢のお客様がいらっしゃっておりますので、予定を繰り上げ、整理券の配布を
始めさせて頂きたいと思います。お受け取りになられたお客様は周辺のお店、一般の歩行者の方々の
ご迷惑になられませんよう、よろしくお願いいたします」
「ら、らっきー……」
「助かったな、桐乃」
「ん」
先頭から順番に1人1枚ずつ券が配られていく。
終電で来た俺たちが並ぶ頃には既に50人くらい前にいたのには恐れ入った。
無事整理券を2人分もらうと、俺たちはその場を離れた。
「行くアテあんのか?」
「……ネカフェ」
あぁ、なるほど。24時間営業のネットカフェや漫画喫茶なら
座れるし温かい飲み物もあるし、個室では人目を気にせず休憩できそうだ。
黙々と歩く桐乃の後ろからついていき、とあるビルに入る。
エレベーターで4階に上がると受付があった。
「2名様ですか?」
「あ、はい。そうですけど、席は」
「カップルシートで」
なに?
427 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 17:57:46.75 ID:zZuVFrAs0
「かしこまりました。お煙草はお吸いになられますか?」
「いえ。禁煙席で」
「はい。それではこちら、3番のシートをどうぞ。ドリンクはセルフサービスになっております」
「どうも。いくよ」
「あ、お、おい」
ポケットに両手をつっこんで足早に進む桐乃に
声を掛けられるような雰囲気は皆無だ。
俺はまぁ、別に一緒の席でも構わんが、お前は構うんじゃないのか?
全く。わっかんねーヤツだな。相変わらず。
428 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 17:58:31.43 ID:zZuVFrAs0
「ここ」
そう言って3と書かれた扉を開いて俺は驚いた。
「意外と広いんだな」
ゆったりとしたソファークッションに、足をゆったり伸ばせるスペース。
大きな液晶画面のデスクトップPCと大きなヘッドフォンが2つ。
なるほど。これなら確かに、普通の個室に入るよりゆっくり休めそうだ。
桐乃はブーツを脱いで端っこに置くとジャケットを脱いでクッションに横になる。
自分の上に、着ていたジャケットをかけて、完全に寝る態勢に入っている。
「開店まで寝るから」
「あいよ」
「変な事しないでよね」
「あいよ」
疲れていたんだろう。桐乃は目を瞑って動かなくなった。
1人でクッション独占しやがって。
これが本当のカップルなら添い寝でもするんだろうけどね。
ははは。まだ死にたかねーや。
429 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 17:59:13.15 ID:zZuVFrAs0
実は、昨日の夜。お袋とこんな話をした。
「アンタ、最近桐乃と一緒に行動する事多くない?」
「ん? そうか? そんな事ねーと思うけどな」
「うーん」
お袋は難しい顔して唸っている。
「なんだあれか? 桐乃に手を出すなーってヤツか? 心配しなくても……」
「いやー、最近分かんなくなってきちゃったわよ」
「は?」
だからね、と。お袋は前置きして続ける。
「最近分かんなくなっちゃったのよ。アンタたち、昔から仲悪いし、
今も仲良さそうには見えないけど、アンタはアンタでたまに良いお兄ちゃんしてるし
桐乃もなんだかんだでアンタの事頼りにしてるみたいだし。
そんでアンタたち、彼氏も彼女も作らないでしょ?
もしかしてこのまま2人で生きていくつもりなのかしら、とか」
俺はお袋のトンデモ発言に身震いした。
実の母が実の子どもが結婚しないとか、しかも兄妹で生きていくとか想像していやがる。
430 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 18:01:14.12 ID:zZuVFrAs0
「ねーよ。ありえん。俺が彼女いないのは仕方ないとして、アイツはムカつくけどモテるんだろ?
だったらその内、自分に合うやつ見つけて連れてくんじゃねーの?」
「そう、ねえ。そうだと良いんだけどねえ」
まぁ、そんなヤツは良いヤツだろうと何だろうと一発殴るとは思うが。
「んだよ。随分疑うじゃん」
「なんていうか、女の勘ってヤツ? あの子、あたしたちが思ってる以上にアンタに懐いているのかもって」
「桐乃が? 俺に? ねーわ。ねーよ。ていうか懐くって何だよ。犬か?」
「もし、もしよ? 京介」
ちょっとお袋はマジだ。いつもおちゃらけてるから、こっちまでちょっとマジになる。
「アンタが桐乃に手を出すのは許さないけど、
もし、桐乃がアンタについてくって言うなら、アンタ、ちゃんと受け止めてやんなさいよ」
それこそ一番ありえない事だと思うけどな。
つーかホント桐乃贔屓な母親だな。長男の俺がちょっと凹むくらい。
まぁデキが違うから仕方ないんだろうけどさ。
433 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 18:04:47.65 ID:zZuVFrAs0
こちらに背を向けて寝ている桐乃を盗み見る。
綺麗に染めたライトブラウンの髪も、両耳のピアスも、
艶やかにマニキュアを塗られた綺麗な爪も、端整な顔も、すらりと伸びた手足も、
今はダウンジャケットの掛け布団に隠されちまっているが。
コイツが、俺を慕うとか、懐くとか。
「……ありえねーだろ」
小声で、誰にも聞こえない声で呟く。
自分の着ていたコートを桐乃の下半身に掛けてやり、
俺はブランケットを取りに行こうと個室を出ようとした。
「……ありがと……」
そんな声が、か細い、糸みてーな声。
だけど確かに、聞き間違うはずのない桐乃の声がした。
「桐乃?」
桐乃は動かない。ぴくりとも反応しない。
でも、残念な事に片耳は隠れていなかった。
赤くなった耳は、寒さのためか、それとも――。
おかしいな。
俺の妹が、こんなに可愛い訳がないのに。
434 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 18:06:07.00 ID:zZuVFrAs0
._
\ヽ, ,、
`''|/ノ
.|
_ |
\`ヽ、|
\, V
`L,,_
|ヽ、) ,、
/ ヽYノ
/ r''ヽ、.|
| `ー-ヽ|ヮ
| `|
ヽ、 |
ヽ ノ
-‐=‐ _
/ ′ 丶
, /l i、 、
. // .′、{ \ \ l }} 〈〕 l7 ,、
/ { l{ , -ミヽ 、,>_
. 〉ヘ《 fり ´f'う}}ノ ,ヘ. 、 /⌒ヽ
fト、 ー_介ー:: ' _`´::ィレ个:7 l ┼ヽ -|r‐、. レ |
〈√ ̄ /.ィゝ、イ ) .ィ :ト ヽ,′ | d⌒) ./| _ノ __ノ
 ̄ ー- ソ / { />r- // 厶- 7 '
. / / \:} {__{./ / // / /
/ / /:|〈と朮、/ 〃 / ∠ \
. ; ; Y/::Krくリレ /ィ7 ―/ }_ \
| { {トミ三/ ̄ ̄`く. フ7 , い }
. 丶 、 K ゝ-―‐-、 { ′ / } }ノ
. \ミ- 丶>トぃヽ_ 丶.ー、`ー-、 ,ノリ
435 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 18:07:35.98 ID:JyvXexaq0
えっ
436 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 18:07:51.42 ID:2i3Pmvq00
風邪をひきそうだ
437 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 18:14:58.78 ID:zZuVFrAs0
おまけ。
「あ、兄貴……もういない? いない? いっちゃった?
ああああああああああ兄貴いいいいい兄貴のコートコートコート!!
くんくん……あぁぁ兄貴の汗の匂い凄いよお!兄貴が添い寝してるみたい。
もしかしてアタシ今、兄貴と添い寝してるの? やだもう幸せ過ぎるんですけど?
ば、バカ兄貴ったらアタシと添い寝したいなんて何言っちゃってんの?
ホント変態すぎるんですけどー超キモイ。ありえないから。
そんな兄貴の事、好きでいてあげられるのなんてアタシくらいしかいないんじゃない?
もうホントどうしようもない兄貴だけどー、アタシぐらいの心の広さがあれば許してあげちゃっても良いよ?
え? 許してほしい? 仕方ないなー。そんなに妹のアタシにベタぼれしてるなんて、でへへ。
キモ過ぎて婿の貰い手もいないでしょー。地味子とか完全に引いちゃってるし。
仕方ないから、兄貴の事はアタシが養ってあげるわよ。もうバカ変態兄貴。
今度は何? アタシのジャケット貸してくれって? この変態、何する気?
ちょ、ちょっと、何ジャケット嗅いでんの!? 変態すぎるんですけど!
い、良い匂いがするって……バカ、バカ兄貴。もう。最悪。最低。
仕方ないから兄貴のコートにアタシの匂いつけといてあげるわよ。
こうすればいつでもアタシの匂い嗅げるでしょ?
あーもうこんな変態兄貴持ってホント不幸。あたしってホント不幸!
アタシを不幸な目にあわせた責任、ちゃんと取らないと許さないんだからねっ!」
438 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 18:15:39.74 ID:zZuVFrAs0
あれ、俺、何してんだろう……なんか外暗いよ、沙織……
439 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 18:19:06.55 ID:8hRbAHBwO
ほんのりとしたデレか、いいね
452 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 19:48:03.18 ID:zZuVFrAs0
変わらないものを変わらないように維持していくのはそれなりに大変だ。
時間が経てば、変わる。それは自然の摂理なんだからな。
例えば、俺や麻奈実は大学生活3年目に突入するし、
黒猫と沙織、ついでに瀬菜もめでたくこの春から大学生。桐乃はこの冬受験だ。
就職活動もしなきゃなんねーし、みんなも今よりもっと明確に
将来について真面目に考えなきゃいけないだろう。
ずっと今のままではいられない。
それは例えば沙織の姉が結婚し、海外へ行ってしまった為に
彼女を中心としたコミュニティーが空中分解してしまったように。
いずれは俺に彼女ができたり、あるいは、誰かに彼氏ができたり、
仕事の都合で遠くに引っ越す事になったり、それこそ海外とか。
何があるのが分からないのが人生なんだ。
それを面白いって言うヤツもいるだろう。
まさに俺の人生はそんな感じだったから、同意しなくもない。
だけど、こんな風になるなんて、いくらなんでも想定外だった。
453 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 19:49:02.86 ID:zZuVFrAs0
「またお前に先輩って呼ばれる日が来ようとはな」
「おや、拙者も今年からは後輩になるでござりますぞ」
「ああ、宜しく頼むよ、沙織」
入学式を終えて出てきた2人と合流する。
沙織はともかく、黒猫までここに受かるというのは
正直難しいと思ってたんだがどうやら見くびっていたらしい。
「まあ、先輩の目は節穴ですからね」
「む……」
悔しいが言い返せない。麻奈実は黒猫の合格を信じて疑わなかったからな。
ちなみに俺と沙織は経済学部、麻奈実は商学部、黒猫は文学部だ。
「その点については悪かったよ。悪かった。反省してるし、謝るよ」
「ふん……、分かれば良いのよ」
2つ下の女の子に頭が上がらない俺である。
「まぁ、ここに突っ立ってても仕方ない。行こうぜ」
「そうでござるな」
「行こう、と簡単に言うけれどね……」
454 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 19:49:51.77 ID:zZuVFrAs0
そこで言葉を区切った黒猫の視線の先にあるもの。
激しい掛け声やら校歌斉唱やら何やらしながら無数のプラカードが踊っている。
決してデモとかそういうんじゃないぜ。
この季節、どの大学でも見られる至って一般的な恒例行事だ。
「……あそこを無事通り抜けられたら、の話ね」
「だな」
新入生をサークル勧誘せんと、校門前に大挙として押し寄せている人間の波だった。
実は先ほどから視線が痛い。
この場所にスーツを着て立っていれば大体新入生である事が確定していて
彼らにしてみれば端から声をかけたいぐらいの気持ちでいるはずだ。
しかし、ここに1人、強烈に目を惹く女の子が立っている。
黒く長い髪を綺麗に結わえ、凛とした目に薄化粧の黒猫、こと五更瑠璃は
この数年で桐乃ですら驚くほどの成長を遂げていた。
背はさほど変わらないものの、手足はすらりと細くなり、
顔つきも以前の堅さが少し取れ、高嶺の花、クール系美人へと進化し
高校では一、二を争うほどの人気になっていると瀬菜から聞いた。
本来ならその横に立つ、180センチの美少女、槙島沙織はそれに劣らぬどころか
俺の知る限り、あやせにすら匹敵する美貌の持ち主――つまり世界最高水準――だ。
しかし、いつものぐるぐる眼鏡は今も肌身離さず
身につけているからパッと見には分からないんだろうな。
455 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 19:50:54.17 ID:zZuVFrAs0
あーあー。まるで獲物を見る狼の目つきだぜ。
どうしたもんかねえ。
頭を悩ませていると、沙織はこちらに振り向いてω←こんな口を形作っている。
何か悪い企みを思いついた顔だぞ、これ。
「にゅふふ」
「沙織、なんか企んでるだろ」
「いやいや。そのような大げさなものでは決して。ええ」
そう言って沙織はするりと俺の左腕に自分の右腕を絡ませてきた。
「なっ!?」
「これでそう簡単に、彼らも声を掛けられなくなったのではござらぬか?」
ちょっと抵抗ある、というか恥ずかしいが沙織の言う事には一理ある、気がした。
本当だぜ? 決して邪な考えじゃないって。マジで。
「それじゃあ私も」
「おう!?」
すると黒猫も反対側、俺の右腕を取って自身の身体を押し付けてきた。
「く、黒猫まで……」
「この状況で声を掛けてくるような愚劣な輩はいないでしょうね」
「うむうむ」
「さぁ、行きましょうか。先輩」
456 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 19:51:36.96 ID:zZuVFrAs0
勧誘を企てていたサークルの人間たち、
特に野郎どもの視線は針どころか槍のムシロだ。
そりゃまぁそうだろうなあ。女2人を両脇に侍らせて
何だアイツはって思われてるに違いない。
それに、こう言っちゃ語弊になるかもしれんが、
サークルの男たちは美味しくいただける
新入生の女の子を探しに来てるヤツが相当多いはずだ。
とんびに油揚げをかっさわれた心境だろうよ。
射殺すような視線は努めて無視。
校門を出るまで、まるで生肉をぶら下げられたライオンの前を
裸で通っているような心持ちだったね。
「やれやれ。もう離れても大丈夫だよ、沙織、黒猫」
「? なぜでござる?」
「なぜって……」
相変わらずニヤニヤしながら聞き返してくる沙織。
くそう。ちっと恥ずかしがらせてやろうかな。
「……ってんだよ」
「はぁ? なんでござるか?」
「だから、胸が当たってるんだよ」
「当ててんだよ。言わせんな恥ずかしい」
見事なカウンターだった。
ガックリとうな垂れたいところだったが、
両脇を固められていてはそうもいかない。
そんな情けない姿の俺を、黒猫が見上げていた。
458 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 19:52:18.05 ID:zZuVFrAs0
「……」
「ど、どうした、黒猫?」
「……どう?」
どうって何がだ。心なしか黒猫は頬を紅く染めている。
そう言えばなんだか右腕がちょっと苦しい。
「私も当てているのよ。言わせないで、恥ずかしい」
「~~~~ッ!?」
聞いて真っ赤になったが、すまん、黒猫。
スーツの上からだとあんまり感じない。
いや言われてみればちょっと感じるんだけど
左からくる圧力がちょっと凄すぎてヤバイ。
津波の前の小波って感じだ。
とにかく、2人とも腕を離す気はないらしい。
俺は予め考えていた定食屋へとやや早足で進んでいくのだった。
459 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 19:53:04.84 ID:zZuVFrAs0
「でさ、真面目な話、2人ともサークルには入らねーのか?」
「拙者は既にいくつか興味のあるところは調べているでござる」
さすが沙織。その辺は抜かりないな。
「ただ、あまりサークルに捕らわれたり縛られたりは御免ですので
もう少し情報を集めてから決めようかと」
「私は、今のところ、あまりその気はないわね」
まあ黒猫らしい。コイツ、昔ほどじゃないけど積極的に人と関わるの下手だもんな。
「そっか。ただ就活する時に、サークルって1つの指標になるから
ムリじゃない範囲で参加しておくと、何かと楽になるぜ」
「そうね。考えておくわ」
「おう」
出された鯖の塩焼き定食を頂いて腹ごしらえをしていると、携帯が鳴った。
麻奈実からのメールだ。
「どうしたの?」
「えーと、『2人に会えた? 宜しく伝えておいてね~』だとよ」
「マメでござるなぁ」
ちなみに黒猫には麻奈実が勉強を教えていたので、
合格発表の時は自分の事のように喜んでいたし、
門出の日に駆けつけたがっていたのだった。
しかしアイツは今日は外せない用があり、来れない事は予め分かっていた。
相当残念がってたなぁ。
『もー、るりちゃんの晴れ舞台だよぉ? それなのにぃ……』
462 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:05:32.83 ID:zZuVFrAs0
まぁ、こういうのはタイミングってヤツだ。
そして間の悪さって意味ではアイツは結構悪い方なんだよな。
「さて、京介氏。拙者この後いろいろ買い物したいのでござるよ」
「ん? おお。じゃあ荷物持ち手伝うぜ」
「かたじけのうござる」
大学入ると何かと物が入り用になる。
それは自分たちの時に経験済みだ。
先輩として、男としてここは手伝ってやらにゃ。
「……」
しかし黒猫はちょっとムスッとしている。
「黒猫?」
「いえ、なんでも、ないわ」
全然なんでもなさそうじゃないんだけどなぁ。
でも俺には心当たりが全然なかった。
沙織に助けを求める視線を送ると、同様に?が浮かんでいる。
が、何か思い当たったらしい。
「黒猫氏、拙者……」
「いえ、沙織。良いのよ。ごめんなさい。大丈夫」
「しかし」
「大丈夫よ」
こうなると黒猫は引かねーんだよなあ。
463 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:08:36.68 ID:zZuVFrAs0
「後で先輩に埋め合わせしてもらうから」
なんて、そんな不穏な発言をして。
「ところで、何を買うのかしら?」
「ええ。必要なものはこのリストにまとめてあるでござるよ」
肩を寄せ合ってリストを見ている2人はなんだか姉妹みたいで微笑ましい。
「つか沙織は、いつまでその眼鏡かけてるんだ?」
「うーむ。難しい質問でござる。ですが拙者、まだしばらくは手放さないつもりでござる。にんにん」
以前は俺たちネットを通じて知り合った仲間の前、という前提でのみ眼鏡をかけていて
普段は特にキャラを作らず過ごしていたはずだったんだが、いつしか沙織は
常日頃から眼鏡をかけるようになっていった。
もったいない気がするが、こればっかりは本人の決める事だしな。
「よし。んじゃ買い物行くか。とりあえずハンズあたりか?」
「そうでござるな。道案内は宜しくお頼み申す」
「あいよ。あ、すいませーん、会計お願いします」
まぁ先輩だし、おめでたい日だし?
これぐらいは奢っとかねーとな。
その後、電車で移動し色々と必要な物を買い揃え終わる頃には太陽が沈んですっかり暗くなっていた。
「今日は本当に助かったでござる」
「いつもお前に助けられる事の方が多いんだ。たまには恩を返させろよ」
「京介氏……」
464 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:10:07.67 ID:zZuVFrAs0
ちょっと温かい空気。くすぐったくなるけど、心地いい。
しかしそんな中、黒猫は1人黙り込んでいる。
それを敏感に察した沙織ではあったのだが、何故だろう。
なんかニヤニヤしている。いつもなら気を遣ってフォローに入るなり何なりするのに。
「京介氏」
「ん?」
「今日は火曜でござる」
「そうだな」
それが何だって言うんだ?
「黒猫氏は、試験などでバタバタして、久しく時間が取れませんでしたからなあ」
「っ……沙織!」
珍しく声を荒げる黒猫だったが、そこまで言われてようやく俺も気がついた。
というか、思い出したのか、それとも意図的に目を背けていたのか。
そんな事を自問自答するのも恥ずかしすぎた。
465 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:11:07.64 ID:zZuVFrAs0
「にゅふふ。それでは邪魔者は退散すると致しましょうぞ。それではまたっ!」
「あ……」
「……」
気まずい。クソ、沙織のヤツめ。この甘ったるい空気。
先ほどのちょっと温かい空気が比にならない気恥ずかしさだ。
それでも、男だからな。俺。
「く、黒猫」
「……何かしら」
1つ咳払いをして。
「寄ってくか?」
「……」
黒猫はちょっと躊躇ったのか逡巡したのか。
「ええ」
それでも、頬を紅く染めて、そう答えた。
466 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:12:27.15 ID:zZuVFrAs0
電車で、徒歩で、移動している間。俺たちは一言も話さなかった。
昼間は沙織と競うように絡ませていた腕も、今は手を握るのみ。
パッと見には、2人の距離は遠くなったように見えるが、
固く握り合った感触は、俺と黒猫が物凄く近くにいるように感じられた。
駅から徒歩5分。学生が住むにはちょっと広めの1LDK。
自宅から通えなくもない場所の大学に通う俺が、
こうして部屋を宛がわれているのは、とある理由があった。
手を解いて鍵を出す。ガチャリと回してドアを開け、靴を脱いで家にあがった、
ところで、後ろから黒猫に抱きつかれた。
「黒猫?」
「……2人きりの時は、もう1つの名前で呼んで頂戴と、言ったはずよ」
「そう、だったな、瑠璃」
黒猫が『仮の名前』と称している本当の名前。
それを呼ぶと黒猫は、さらに強く俺を抱きしめた。
「ずっと、来れなくて、寂しい思いをしたのよ。
こんな事を言うなんて、私も随分弱くなったものだけれど」
「……そうでもないだろ。弱さを曝け出せるのも、強さの1つだと俺は思うぜ」
「ふふ」
ちょっと笑って、黒猫は腕の力を緩めると
「……今日は、いっぱい愛してくれるのよね」
「御意」
468 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:13:26.03 ID:zZuVFrAs0
部屋の明かりは点けないまま、黒猫の手を取り寝室へと進んでいく。
お互いにとって勝手知ったる間取りに歩は鈍らない。
ドアを閉め、部屋の真ん中にあるベッドに腰掛ける。
そして黒猫はそこが指定席かのように俺の隣に座った。
……何度こうしても、この時間だけは緊張する。
いや、緊張も何もなくなったら、それはそれで寂しい話だよな。
黒猫も緊張しているっぽい。元々黒猫はそういう傾向があるけど
今日は本当に久しぶりだ。それこそ、3ヶ月ぶりか?
うーむ。上手く出来るかどうか、心配だ。
先に動いたのは情けない事に黒猫。
ついっと身を寄せると俺の頬に軽く唇を触れさせた。
緊張しているけれど、それ以上に期待している瞳。
白い肌と、見事なコントラストになった黒い髪、長い睫毛、大きな瞳。
そして、小さくてぷっくりとした紅い唇。
そんな黒猫が愛しくて、今度は俺から頬に軽いキス。
一度離れて、今度は互いに引き寄せられるように唇を重ねる。
「ぁ……」
そんな小さな吐息が黒猫の口から漏れ、黒猫の瞳がとろんとした。
背筋がぞくぞくして、思わず身体を強く抱き寄せ合って、熱烈に口付け合った。
キスの間あいだに熱い息が零れ、火照った声が聞こえる。
ぴくんぴくんと反応する黒猫が可愛くて脳が蕩けそうだ。
469 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:14:20.54 ID:zZuVFrAs0
どちらの唾液ともつかないじゅるじゅるしたものを貪って与えてまた貪って。
黒猫の手は俺の背中から上半身へとまさぐるように動き、やがてボタンを上から順に外していく。
キスはもちろん止まらないまま、意図を汲んで俺はシャツを脱ぎ捨てる。
お返しとばかりに黒猫のジャケット、そしてシャツのボタンを外してやると
黒猫もまた、上着とブラを脱ぎ捨て、直接肌と肌を擦るように重ね合わせた。
胸の辺りに当たる少し固い突起は黒猫の乳首がピンと立っている証だ。
黒猫の背中に、あるいは頭に、腰に回していた右手をそっと左胸に沿わせると
少し大きく声をあげて反応した。
「んぅっ」
キスの応酬はそこで一旦休憩。お互いに荒い吐息のまま、ステージは第2ラウンドへ。
「瑠璃の乳首、固くなってるな」
「そ、そういう事……んっ、言わない、でっ、あぁっ、ちょう、だい……くぅん!」
久々なのであまり強い刺激は辛いだろう。
優しく乳房を下から持ち上げるように触り、ゆっくりと円を描くように愛撫する。
「ふぁ……ん……んん……」
470 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:15:42.54 ID:y42HvrxcO
④
471 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:17:00.38 ID:zZuVFrAs0
黒猫が、俺の膝の上で、快感に集中するように目を閉じている。
その姿があまりにも可愛くて、俺は空いている首筋に軽くキスした。
「ひゃんっ! そ、それは……ダメ……くび、よわいの……知ってるくせにぃ……」
「瑠璃」
「な、なに……」
「可愛い」
言ってもう一度、首筋にキス。
「ば、ばかぁ……!」
黒猫の顔はもう蕩け切っていて、大理石みたいな肌はうっすら桃色に染まっているようだった。
身体を少し浮かせ、穿いたままのスカートを捲り上げると、黒猫は何をされるか察知したのだろう。
「ちょ、ちょっと……だめ……」
抗議の声を挙げたが、それで止まってやれるほど、俺も余裕はない。
少しでも優しく触れてやるので精一杯だった。
「ッ!……っあ……はぁっ……」
「すげえ、熱い……」
黒猫の秘所はすでにびしょびしょで、ショーツの上からでもその潤いが瞭然だ。
それにクリトリスも勃起しているのが分かる。
こっちもいきなりは控えた方が良いだろう。
人差し指と薬指で蜜壷の周りをゆっくり上下に撫で上げた。
「ぁ、ぁぁっ……そ、それ……んっ、んっ……」
473 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:18:51.40 ID:zZuVFrAs0
大丈夫だろうか、黒猫の身体がさっきからぴくぴくしていて、もしかしたらイキそうなのかもしれない。
これじゃ挿入なんてしたらショック死しかねない。
「瑠璃、一回イっとけ」
「ふぇ、い、いくって、どこ……あ、あぁっ!?」
乳首とクリトリス。敏感なところを弄りながら、首筋にキス。
もう限界近かったのだろう。
「ひぁっ! ぁっ! だめ、い、うっ、あ、はっ、やっ! っく、ぁぁぁぁっ!」
俺の身体にしがみつく様にして、びくびくと大きく揺れ、黒猫は達した。
「くっ、は……は……はぁ、はぁ……」
「……大丈夫か、瑠璃」
黒猫の呼吸はまだ荒い。必死で酸素を取り入れようとしているのが、なんだか不謹慎にも愛らしい。
「……大丈夫、じゃ、ない……わよ……」
ちょっと涙目で、顔を真っ赤にした黒猫はやっぱり可愛い。
いとおしくなって、優しくハグ。頭をゆっくり撫でてやると黒猫はコテンと頭を俺の肩に預けてきた。
「京介……貴方、上達してるでしょう」
「……いや、そんな事はないと思うが……」
心当たりがなくはないのが非常に心苦しかったりする。
475 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:21:09.20 ID:JyvXexaq0
京介さんマジテクニシャン
476 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:24:06.92 ID:FTL4fUNC0
ふぅ…
483 :
さるだよ・・・うう・・・ :2010/11/15(月) 20:45:43.96 ID:zZuVFrAs0
「隠さなくて良いのよ。元々、そういう約束なのだから」
そう、約束。同時に契約でもある。
俺がここに住む最大の理由にもなっている。
この発案者は、あろうことか、BL大好きの潔癖主義者。赤城瀬菜だった。
『……なんだって?』
『ですから。これだけ大勢の女性から愛されている高坂先輩には、応える義務があるんです!』
瀬菜がぶちまけたのは、俺の高校卒業を祝うという名目の元開催されたパーティーでだった。
桐乃、あやせ、黒猫、沙織、麻奈実、瀬菜、フェイトさんの7人の女子(約一名は女子というか女性)に対し
男が俺1人と言うのはいかにも異常だったのだが、割合つつがなく会は進んでいたのだ。
しかし、瀬菜が唐突にこんな事を言い出した。
『高坂先輩は、どの子が良いんですか?』
そりゃジュース吹き出すよな。
お前もうちょっと空気嫁と。
で、一気に場の雰囲気は大変な事になった。
尤も、それは正直俺にとっては想定外な事ばかり、というか、想定内の反応など1つもなかった。
484 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:47:01.00 ID:zZuVFrAs0
『まぁここは私って答えて頂いても全然構わないんですけど』
と瀬菜が言えば、
『冗談は胸だけになさい。先輩は私のような落ち着いた人間が良いのよ』
と黒猫が返し。
『そういう意味では年上の私が最適って事かしら?』
とフェイトさんが胸を張れば
『はァ? 年増とか需要ないから。早く婚活始めればァ?』
と桐乃。
『そ、そうだよね。桐乃は妹だから……選べませんよね。
この中で一番可愛いのは桐乃ですけど、
でも仕方ないから私を選んで下さっても良いですよ、お兄さん』
とあやせが言うと
『おっと、眼鏡を外せば拙者、それなりに自信がございますぞ』
と沙織が張り合う。
485 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:47:57.67 ID:zZuVFrAs0
そして
『きょうちゃんの事をいちばん理解してるのは、わたしだもん』
と胸を張る麻奈実に対しては
『バッカじゃない? それを言うなら妹のアタシほど
バカ兄貴の事分かってるヤツはいないっての』
と、こうなった。
おかしいなあ。ここまで張り合う理由あるのか?
一番の当事者だった気がするが、既に蚊帳の外。
誰かが名乗りを上げると、誰か(もしくは誰か『達』)が否定する。
言いがかりも、水掛け論も、ごり押しも飛び交う
さながら戦場のような光景だった。
結局出ない結論に、瀬菜はそう言った。
これだけ大勢の女性から愛されている俺には、応える義務があるのだと。
そんな実感は全くなかったんだけどなあ。
しかも誰か1人を選ぶ、とかじゃなくて、全員なのか?
ん? どういう事?
486 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:49:11.59 ID:zZuVFrAs0
『なるほど。全員でござるか』
『ええ。皆、ちゃんと順番を決めれば不満は出ないかなと!』
なんの順番だよ!?
『……なるほど、丁度7人、と言う訳ね』
『さっすが五更さん。あ、今は黒猫さんでしたっけ。
丁度1週間で回りますから覚えやすいですよね』
だから一体なんの話を進めてるんだよ。
蚊帳の外にも程があるだろ。
『ですから』
瀬菜は快活な声で
『ここにいる7人の女の子を、日替わりで、高坂先輩に愛してもらうんです』
一瞬、いや、数秒だったかもしれない。
『なにぃぃぃぃぃぃ!?』
瀬菜の言葉を理解できた時、俺はそう叫んでいたのだった。
487 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:49:52.22 ID:zZuVFrAs0
しかしそこからは数に勝る女性陣があれよあれよと話を決めてしまった。
ただ、高坂家に何人もの女の子が入れ代わり立ち代わり来るのは
両親から見て不審と思われるだろうし、ましてやあの親父だ。絶対に大問題になる。
そこで対策として、沙織のコネクションを使って物件を探す事になった。
実家から通うよりは楽で、且つ、女の子たちが通いやすいロケーション。
真っ直ぐに部屋の前まで来れない構造。
(建物の前でインターホンを使い、自動ドアを開けてもらわないと入れないようなアレだ。
万が一にも鉢合わせはマズイし、親の抜き打ちチェックなんてあったら頭と胴が離れちまう。)
用途が用途なので、防音性とセキュリティに優れている事も重要。
予算と相談して、見つかったアパート。
必ずではないが、ここには曜日ごとに決まった女の子がやってくる。
月曜は瀬菜。火曜は黒猫。水曜は沙織。木曜はフェイトさん。金曜は麻奈美で
土曜に桐乃、日曜はあやせ、という風に。
ハッキリ言うが、何の冗談かと思った。
随分壮大なドッキリじゃないか、こんなに金と手間をかけて大変だなオイってな。
だから女の子たちも、誰一人として来ないだろうってタカをくくってた訳だ。
初めての1人暮らし、満喫してやろうって。
488 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:51:39.91 ID:zZuVFrAs0
まず引越しが完了したのは水曜だったんだが、
その夜、沙織は引越しソバを食べようとやって来てくれた。
凄え嬉しかったんで、喜んで迎え入れた。
春らしい、薄いピンクのワンピースはシンプルなライン故に
藤原紀香と同じと自称するプロポーションを引き立てている。
あれ? そう言えばいつものオタクファッションじゃない、のに眼鏡をしている。
その上、白いエプロン身につけてるしな。
それがなんだかアンバランスでちょっとおかしい。
けどそのおかしさが、この一種異様な空間――自分の『家』で女の子と2人きりという――にあって
唯一、心を落ち着かせてくれる特効薬になっていたのだった。
『京介氏、ソバのおツユは濃い目と薄目、どちらがお好みですかな?』
『あー、つけて食べるなら濃い目で、かけるなら薄目かな』
『了解でござる』
なんだか鼻歌交じりにキッチンに立っている沙織が凄く新鮮に見えて
油断するとすぐ心臓の鼓動が早まりそうになる。やべえぜ。
醤油と出汁のいい香りがしてきたなと思うと、沙織はお盆に器を2つ載せてやってきた。
『出来上がりましたぞ、京介氏』
『おお、すまんな。全部やってもらっちまって』
『いや、なに。大した手間ではござらんよ』
つくづく思うけど、コイツってホントによく出来たヤツだよな。
2つも年上の俺がやけにちっぽけに見える。
489 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:52:23.13 ID:zZuVFrAs0
『んじゃ、いただきます』
『召し上がれでござる。お口にあうと良いのですが』
ずるずるーとソバを啜ると麺にからんだツユはやや甘めで疲れた身体にじんと染みる温かさ。
思わず
『うめえ……』
と漏らしてしまった。
普段家で食べるものとはなんだか少々味が違うのは、
やっぱ作り手が違うと家の味が変わるからなのかなとか思ったりした。
割かし勢い良く食べていた俺だったが、ふと気づくと沙織がこちらを見ていた。
『なんだ? 食べないのか? 美味いぜ』
『はは。京介氏が本当に美味しそうに食べてくださるのが、拙者、嬉しくてですな』
『な……なんだよ』
『……良いものでござるな、こういうものも』
めちゃめちゃ優しい顔で笑っているのが眼鏡越しにも分かる。
心の中に湧いた何かを振り切るように、俺は箸を動かしたのだった。
『……あー、美味かった。ごちそーさん』
『お粗末様でござる』
沙織はソバを持ってきた時と同様、器をお盆に載せて、台所に持っていく。
『あ、洗い物ぐらい俺がやるから置いといてくれ』
『これぐらい大丈夫でござるよ。量もそう多くはありませぬ』
490 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:53:17.51 ID:zZuVFrAs0
ジャーッという音がして沙織は皿洗いまで始めちまったらしい。
一応俺の家になるのに、こんなに任せきりで良いのだろうか。
でも、何気に沙織のヤツ、家事好きなのかな。割と楽しそうなんだよな。
新婚夫婦ってこんな感じなのかって思ったりした俺は慌ててそれを打ち消した。
『京介氏~』
『お、おう!?』
声が裏返っちまった。くっ、恥ずかしい。
『お風呂沸いてるでござるよ。お先にいかがかな?』
『えっ……なっ……』
『ほれほれ、入った入った!』
半ば強引に風呂場へ押し込まれてしまった。
いやいや。え? まさかだよな。けど、そもそもこの家ってさ。
ごくり。風呂のお湯のせいじゃない。この顔の熱さは。
これがエロゲーなら沙織が風呂に乱入してくる訳だが
く、来るのか? 来ちゃうのか? そんなCG回収しちまうのか!?
『京介氏~』
『なっ、なななんだ!?』
ほ、ホントにキタ――(゚∀゚)――!!?
493 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:54:57.40 ID:zZuVFrAs0
『湯加減はどうでござる?』
『あ、あああ、良いぜ! ちょっと熱めだけど、うん、気持ち良いぐらいで』
『そうでござるか。ごゆっくりでござるよ~』
そう言ってパタンと音がして。
沙織はそのまま出て行った。
そ、そ……そりゃそうだよな!?
いくらなんでもそれなんてエロゲみたいな展開はねえよなあ!
あー恥ずかし。何1人で舞い上がってんだよ俺。バッカみてー。バーカバーカ。
引越しで疲れた俺を労うために、ソバ作って風呂まで準備してくれた沙織に対して
なんつー邪な気持ちを抱いていたんだ。反省しろ。
風呂を上がって髪を乾かし、居間に戻るとそこには沙織の姿はなかった。
なんだ、帰っちまったのか? それなら声をかけてくれても良さそうなもんだが。
『沙織ー? いねーのかぁ?』
『こちらに』
声が返ってきたのは寝室から。
まさかベッドメイキングまでしてくれてんのか?
そんなんならもうマジで良妻になるな、沙織。
なんて事を考えながらドアを開けると、そこにはベッドの上に正座している沙織がいた。
しかも三つ指ついてる。しかも、しかもしかも、何故か、先ほどまで着ていた
ワンピースが綺麗に折り畳まれている。
つまり、裸エプロンだった。
494 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:56:08.62 ID:zZuVFrAs0
『さ、沙織!?』
『拙者は一応、家を出る前に身体は清めてきたでござる』
……そ、それって……。
『ただまぁ、その、なんと申しますか。いきなり全てをお見せするのは、抵抗がございまして。
斯様な見苦しい姿を京介氏の前に晒す無礼をお許しくだされ』
『見苦しいって……んなこと……』
『京介氏さえ、よろしければ、拙者の事を、その……その……』
そこまで言われればいくら俺にだってその先は予想できる。けどな。
『沙織は、その、良いのか? お、俺なんかが……』
『京介さん』
沙織は眼鏡を外し、大きな瞳で俺を見据える。
『私は、軽い女ではないつもりです』
凛とした声。それは確かな意志だった。
『分かったよ、沙織』
その晩、俺たちは互いの初めてを、相手に捧げる事になった。
495 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 20:57:44.47 ID:EngN+CVn0
キタ――(゚∀゚)――!!
496 :
次さるったら風呂入る :2010/11/15(月) 21:01:57.51 ID:zZuVFrAs0
ある日、瀬菜に聞いた事がある。
『なぁ、瀬菜』
『はい、なんですか?』
『こういうのって、お前にとっちゃ許せない事なんじゃないのか?』
瀬菜はとにかく真面目気質で、きちんとしていない事が許せない性質だった筈だ。
自分で言うのもなんだが、1人の男が、相手を1人に決めずにいる事は
彼女にとっては到底許容できない事なのではないか。ましてそこに、自身が加わるなど――。
『京介先輩の言いたい事は分かります』
俺に向き直って、瀬菜は続けた。
『確かにおかしいと思いますよ。この現状。むしろ異常だと思わなくなったらオシマイかなって思いますし』
『そこまで言うなら、なんで』
なんで、あの時、お前はこんな事を発案した。
『こういうのって、ゲームの中だけかなって思ってました。
普通ならありえないんですよ。女の子って嫉妬する生き物だから。
誰かが、自分の好きな人に愛されているのが耐えられない。
そういう生き物なんですよね』
鼻歌を歌うように結構酷い事言ってないか?
497 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:02:38.05 ID:zZuVFrAs0
『だから、例えば五更さんが、嫉妬にかられて私や槙島さんを刺したりとか。
そういう展開があってもおかしくないんですよね』
『おいおい』
おいおい、である。そういやそんなエロゲあったな。
『でも、皆、多少の不満はあっても、許容範囲内みたいなんですよ。
それがなんでか、分かります?』
『……いや』
『先輩が、素敵だからです』
ズッコケた。階下の人、すんません。
『お前、はぐらかそうとしてねーか?』
『失礼ですね。真面目トークではそんな事しません。それくらいの空気は読めますよ、あたし』
……そうかなあ。コイツ全然空気読めないヤツだと思うんだけど。
『女の子って愛されれば自尊心が満たされて、満足するんです。
ある人は10。またある人は15って感じで人それぞれ違うんですけどね。
でも先輩はあたしたちが満足できる程度に愛してくれているんです。
だから不満が出ないんですよ』
『そんなに何かしてるつもりは全くないんだが』
『そこが先輩のすごいところなんです!』
ビシッと瀬菜は指差して言った。
タオルを巻いただけの胸がほよんと揺れて目に悪い。
498 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:03:18.57 ID:zZuVFrAs0
『普通の人なら1人を大事にするので精一杯です。
だから浮気や不倫をすると、どっちかが不足してしまいます。
経済的な意味だったり、単純に時間的、情緒的な意味だったりしますけど』
今度は腰に手を当てて胸を張る。
だから、お前はそこを強調しちゃダメだっての。
『まぁ先輩の場合、ライバルがあんまりにも多すぎているから
女の子たちが多くを求めすぎていない事も1つの要因である事は確かでしょう』
『ちょっとした事で満足してるってのか?』
それ全然誉められてないよなあ。
『でも、皆、幸せそうにしています』
『む』
『むしろ、これ以外の方法じゃ、誰も幸せになれないんです』
そこまで言うか?
幸せのかたちなんて千差万別だろう。
『だから先輩。皆、先輩と幸せになりたいんですから、
ちゃんと皆を幸せにしてくれなきゃダメですよ』
『……お前の”ちゃんと”の精神はそこに帰結するのか……』
にへらっと瀬菜は笑って――以前はこういう笑い方しなかったんだけどな
499 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:04:17.51 ID:zZuVFrAs0
『見届けたいんです。皆揃って、幸せになるのを』
『……へっ、そんなに期待しても、できる事しかやれねーぞ』
どうやら逃げ場はないらしかった。
『そうですね。じゃあできる事ヤリましょうか』
『カタカナで言うな』
『でも、先輩のソコ、また元気になってますよ?』
『……ッ!』
気づかれてた! そりゃまぁこっちもタオル巻いてるだけだからな! 隠し様がないよな!
『先輩、さっきずっとあたしの胸見てたでしょう? お見通しですよ?』
……女の子ってなんでこう男の視線に敏感なんだろね。
『他の男に見られてもいい気はしませんけど』
そう言って瀬菜は俺の前にしゃがみ込んで、タオルをふわりと解いた。
艶かしい肌が露になる。それにしても本当に大きいな、コイツの胸。
『先輩になら、嬉しいです』
ああもうこの野郎。そんな事言うからまた愚息が反応しちまっただろうが――。
500 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:04:58.74 ID:zZuVFrAs0
そんな訳で。どんな訳だ。
この2年。毎日ではないが、それでもかなりの頻度で俺は女の子を抱いていた。
始めはそれぞれお互いに初心者みたいなもんだったし、拙い愛撫、単調なピストンだけ
って感じだったが、だんだん相手の気持ちいいところが分かるようになったり
ネットなんかを通じて軽く勉強したりしてちょっとずつ上達した、んじゃないだろうか。
黒猫たちは今年に入ってセンターや本試験など、まさに大学受験のクライマックスを
迎えるため、お泊りどころかウチに来るのを禁止させた。
さすがに試験前にヤリ過ぎて勉強できなかった、なんて事になったら親御さんに顔向けできないからな。
そういう訳で大体3ヶ月はご無沙汰だった訳だ。
うーん。それぐらいで劇的に上達するとは思わないんだが。
7人のうち3人(黒猫、沙織、瀬菜だ)は受験生だったから実質半減だしな。
それでも、黒猫は満足してくれたらしい。その事は純粋に嬉しかった。
「もう、大丈夫。ごめんなさい」
「焦るなよ。時間はいくらでもあるだろ」
「いえ、そんな事ないわ。足りないくらいよ」
埋め合わせしてもらうって言ったでしょう、と。
ぐいっ、と黒猫は思い切り俺に体重を預け、ベッドに俺を押し倒した。
「瑠璃?」
「今度は、私の番」
黒猫の手が俺の肉棒に絡みつくとぞくりと一気に快感がこみ上げた。
501 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:05:41.37 ID:zZuVFrAs0
「うっ」
「あら、情けない。まだ始まってもいないわよ」
コイツは責めても可愛い反応するけど、気性的にはSなのだ。
つまり、やられたらやり返さないと気がすまない。
黒猫の痴態を見ただけで溢れていたカウパーを巧みに手のひら全体に伸ばし
シュッシュッと両手で上下に擦り始める。
さらに顔を俺の胸に近づけて、乳首のあたりを舐め始めた。
「ぐっ、る、瑠璃……それやべえ」
「まだ、れろ、出してはだめよ……んむっ、もっと、ぴちゃ、楽しませてちょうだい」
これでブランクが3ヶ月とか。コイツこそ上達してんじゃねえのか?
容赦なく続く責めに、それ以上耐えられそうにない。
「やば、出る……」
「ッ!」
ビクンと一際大きく揺れる肉棒を感じ、黒猫は素早く顔を股間へとうずめ、
どぐっ、どぐどぐっ。
「う、あ……」
俺は黒猫の小さな口の中に、欲望を吐き出した。
502 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:05:44.07 ID:FTL4fUNC0
まさかの月月火水木金金ktkr
503 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:06:24.22 ID:zZuVFrAs0
「る、瑠璃……」
黒猫は答えない。どうやら予想以上に出たので困っているらしい。
それでも、外に吐き出す気はないようで、こくんこくんと喉を鳴らして
ゆっくり俺の精を飲み下していった。
「……ふぅ。ご馳走様」
「……お粗末様」
「ふふっ、久しぶりに堪能したわ」
嬉しそうに、黒猫はそう言って、未だに鎮まる事を知らない俺の股間に目を向けた。
「次は、こっちね」
「……ああ」
黒猫が上に跨り、間近で見なくても分かるぐらいに濡れそぼった割れ目を俺の棒に宛がう。
「いくわよ……んっ」
じゅぶりと音を立てて俺のモノを受け入れた黒猫のそこは熱くてキュウキュウと締め付けてきた。
「あぁっ……す、すごい……」
「やっべ……瑠璃の中……気持ち良すぎる」
「バカね、当たり前、でしょう?」
なんとか平静を装っている黒猫だが、バレバレだ。
でもそんな強がっている様子が愛しくてつい悪戯心が湧いてしまう。
ぴくり。筋肉で肉棒を動かし、黒猫のイイ部分を軽く刺激してやると、
黒猫の身体がびくりと反応した。
504 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:07:05.85 ID:zZuVFrAs0
「なっ」
「相変わらずそこが弱いんだな、瑠璃」
「お、おやめ、なさ……やめ……だめ……そこ、だめ、なの……ひゃん!」
やっぱり可愛い。クソ、可愛すぎる。
こうなるともうガマンできない。
ベッドのスプリングを生かし、反動をつけて、下から黒猫を突き上げた。
「ひゃ、ぅっ……ら、あっ、あぁぁっ! わた、わたし、が……うごく、のにぃっ!」
「もうたまんねーよ。こんなっ、可愛いとこ、見せられちゃ!」
黒猫が身をよじって逃れようとするが、許さない。
腰を両手で抑え、わざと音を立てるように肉孔をかき回していく。
「ひゃ、らめ、も、い、ちゃ……わ……」
突如、膣圧が急激高まり、黒猫の絶頂が近い事を知る。
「くっ、お、やべっ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
黒猫が長く美しい髪を振り乱して絶頂に達すると、
俺も搾り取られるように2度目の射精に至った。
ぱたりと、黒猫が俺の胸にもたれかかるようにして倒れてきた。
505 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:07:47.15 ID:zZuVFrAs0
「瑠璃……、大丈夫か?」
そう聞く俺の呼吸も荒い。
「ええ……だい、じょうぶ……」
それ以上に黒猫の吐息も荒くなっていた。
「ちょっと、休憩すっか?」
「……それも良い提案ね。でも、まだまだ搾り取るから覚悟なさい」
「はは……お手柔らかに頼むよ、瑠璃」
月明かりが差す部屋に、卑猥な音が反響する。
肉と肉、骨と骨がぶつかり合う音。
混ざり合った体液を貪りあう音だ。
「あァ、んぅっ! ひぅっ! ぁぁっ!」
ベッドに黒猫の手をつかせ、後ろから獣みたいに交わる俺たち。
いや、これはもう獣そのものかもしれない。
黒猫との3ヶ月ぶりのセックスは、それくらい激しいものになっていた。
「ぐっ、で、射精そうだっ、瑠璃っ!」
「いい、わっ! だして、だして、なか、にっ! んんっ!」
強烈な一突きを黒猫の秘肉に打ち込み、一番奥、子宮に肉棒の先端を押し付けて
今日4度目の射精の勢いは弱まる事を知らなかった。
黒猫も、最後にイったらしい。膣は俺を離そうとはしなかった。
506 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:08:29.49 ID:zZuVFrAs0
折り重なるように黒猫の背中の上から被さって、キスをした。
黒猫もそれに応じて顔をこちらに向けてくれる。
「ん、ちゅ……んん……」
「んっ……ふう……どうだった?」
「どうって……決まってるわ」
ぷいっとそっぽを向いた黒猫は決してこっちを見ない。
けれど、耳まで真っ赤なのはこの角度でもよくわかる。
「すごく、素敵だった」
言わせたのは俺だけど、こんなに嬉しい言葉はないし、こんなに照れる言葉もない。
「瑠璃も、すげえ可愛かったよ」
「ッ……バカ……」
さすがに4回も出すと結構疲れる。……最初は2回でもヘロヘロだったんだけどな。
ま、黒猫も満足してくれただろ。多分。
なんてそんな事を考えていた時の事だった。
ギシッ。
510 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:24:23.58 ID:1GKPwEtQ0
実にけしからん
511 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:28:39.29 ID:08usc8q40
もっとやれ
512 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:36:40.97 ID:CNUv4Ex/O
止まった?
513 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:36:48.91 ID:MIp8Ymse0
寒いだろ
515 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:41:41.99 ID:FTL4fUNC0
俺の股間のビームサーベルが桐乃の温泉を沸かせたがってるんだ
516 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:51:39.10 ID:mwTiK3Q3O
見ゆる…見ゆるぞ、麻奈実の痴態が!
俺の股間の略。
517 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:58:56.04 ID:zZuVFrAs0
………………えっ?
今、明らかに寝室の外、つまり居間から物音しなかった? まさか、不審者?
動揺しかけた俺を、しかし、黒猫の声がぴしゃりと抑えた。
「……見逃してあげようと思ったけれど、自分からシッポ踏ませてどうするの」
『……』
「観念して出てきなさい、沙織』
「さっ、沙織ぃ!?」
慌てて寝室のドアを開けるとそこには、本当に、沙織が腰をおろしていた。
それも、ただ床に座り込んでいた訳じゃない。
スカートをたくしあげ、ショーツはぐしょぐしょに濡れていたのだ。
しかも手元には俺のジャケットがあった。つまり、沙織は――。
横になっていた黒猫がようやくむくりと起き上がり、シーツを巻いて立ち上がる。
「自分を慰めるだけで気が済むなら、見逃すつもりだったけれど。
こうなっては仕方がないわね」
「も、申し訳……」
沙織は傍目にも可哀想なくらい震えていて、今にも泣きそうだった。
「お、おい。る……黒猫。あんまり沙織を……」
「人聞きが悪いわね。苛めているつもりはないわよ」
「うう……」
黒猫は目を眇めて沙織を見ると、ニヤリと笑った。
あ、なんか嫌な予感。
519 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 21:59:47.80 ID:zZuVFrAs0
「沙織。取引といかない?」
「取引……ですか?」
「ええ」
沙織のやつ、眼鏡してるのに普段の口調に戻ってない。
キャラを被る余裕がなくなっているって事か。
いやまぁ、そりゃこの状況で平静でいられる女の子とかちょっと引くけどね。
「3Pをします」
「「……は?」」
図らずもハモってしまった。え、何言ってんの、黒猫さん?
ううん、と首をひねって思案するような仕草。
「違うわね。こうじゃないわ。3Pをして……頂けませんか?」
な、なにを……
「3Pをしたら……どうなんですか……?」
さっきから何を口走っているんだよ、黒猫おまえっ!
「3Pをしましょう。沙織」
しかも俺じゃないっ!?
「さ、さささんぴー……?」
「ええ、そうよ。私と貴方と、京介の3人でプレイ。略して3P」
520 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:01:00.19 ID:zZuVFrAs0
3Pて。お前は何を言っているのか分かっているのか?
いや、知識はあるよ? そりゃね、そういうものは見聞きしましたよ。
主にゲームとかDVDとかでな。
けど、黒猫。お前は分かっているはずだろう?
女の子は基本的に独占したいんだ。独占して、満たされる。
けど3Pってそれとは真逆の行為じゃねえのか?
それで黒猫も沙織も満たされるのか?
俺には――
「京介」
「……?」
「私も本音を言えば、不満がない訳ではないわ」
「黒猫」
「……」
チラリと沙織を見て、黒猫は続けた。
「今日は私の日なのに、出歯亀した上、乱入なんてね」
「ご、ごめんなさい……」
「けど、分からなくはない」
沙織の元に歩み寄って、しゃがみ込んだ。
521 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:06:21.31 ID:zZuVFrAs0
「貴女も、私と同じで、ずっとお預けされていたんですものね」
「……」
「……溜まっていたんじゃなくて?」
カッと沙織の顔が紅くなる。
「ふふ。久しぶりに京介に会って、腕に抱きついて、彼の匂いを嗅いで、
優しくされて、でも、彼は他の女とこれから一夜を共にする、なんてね。
耐えなさいって言う方が酷と言うものよね。」
沙織は耳まで真っ赤にしながら、黙って聞いている。
「だけど、今日はやっぱりまだ私の日。あと2時間はね。
でも、一刻も我慢できないお嬢様のために、ちょっとだけ分けてあげるわ。
その代わり、明日は私も混ぜなさい」
「っ!」
黒猫は優しい目をしたまま、沙織の耳元に口を近づけて、ぽそりと呟いた。
「さぁ、早く京介に貫かれたいでしょう?」
その声は静かで穏やかだったはずなのに、
やけに静まった部屋の中でハッキリ聞こえてしまった。
そして沙織は眼鏡を外して俺を見上げた。
「京介さん……私にも、ください……!」
真っ赤な顔、潤んだ瞳。
疲れていた体が上下共に一気に活力と精力を取り戻して漲る。
523 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:09:25.77 ID:zZuVFrAs0
結局その日。日付が変わっても快感の饗宴が終わる事はなかったのだった。
524 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:10:20.94 ID:zZuVFrAs0
翌日。
講義やオリエンテーションは変わらずあるよ?
しかしそこは、『そういう用途のための家』である。
女性陣たちはそれぞれ、お泊りセットと着替えの1つ2つが完備されている。
歯ブラシの数だけ見たらどんな大家族かと思うよな。8本て。
干からびそうな身体に鞭打って起こすと、既に黒猫も沙織も起きていたらしい。
「おはようございます、京介さん」
「おはよう、先輩」
なんだろうね。2人ともすっごいツヤツヤしてんすけど。女ってすごい。
「朝ごはんはもうすぐ出来ますから。顔でも洗って待っててください」
「あ、ああ、あんがと、沙織……」
525 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:11:45.07 ID:zZuVFrAs0
ふらふらしながら洗面所に向かう。ああ、太陽が黄色い。
顔を洗って少しさっぱりしたけど、だからって疲れは抜けない。
……何回出したか分からんくらい出した、っつーか絞られたもんなあ。
そりゃおにーさんもヘトヘトですよ。
けどよ。
「京介さん、ご飯できましたよ~」
「早くいらっしゃいな、京介先輩」
こうやって、幸せそうな顔見てると、頑張らなきゃなって思い直す訳だよ。
ゲンキンなヤツだって? 我ながらそう思うぜ。
この生活は、いつまでも続く訳じゃないだろう。
いつか必ず変化は訪れる。ずっと今のままではいられない。
そんな事は良く分かってる。
だからこそ、今は。目の前の笑顔を大事にしていこう。
「はい、しっかり食べて体力つけてくださいね、『兄さん』」
「そうですね、今夜も頑張って頂かなくてはいけませんものね、『お兄様』」
カーッと顔が紅く、熱くなる。
だって仕方ないだろ?
俺の妹たちは、こんなに可愛い。
526 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:12:27.37 ID:zZuVFrAs0
-― ̄ ̄ ` ―-- _ もうだめぽ
, ´ ......... . . , ~  ̄" ー _
_/...........::::::::::::::::: : : :/ ,r:::::::::::.:::::::::.:: :::.........` 、
, ´ : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::::: : ,ヘ ::::::::::::::::::::::: : ヽ
,/:::;;;;;;;| : ::::::::::::::::::::::::::::::/ /::::::::::::::::::: ● ::::::::::::::::: : : :,/
と,-‐ ´ ̄: ::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::r(:::::::::`'::::::::::::::::::::::く
(´__ : : :;;:::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::`(::::::::: ,ヘ:::::::::::::::::::::: ヽ
 ̄ ̄`ヾ_::::::::::::::::::::::し ::::::::::::::::::::::: : ●::::::::::::::::::::::: : : :_>
,_ \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: `' __:::::::::-‐ ´
(__  ̄~" __ , --‐一~ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄
527 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:15:23.87 ID:mwTiK3Q3O
乙!
…あれ?
おーーーい!
麻奈実は!? 麻奈実は!?
そんなに需要なかったっけ!?
528 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:16:27.03 ID:+VZMSLmR0
8Pはどうした
529 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:18:36.88 ID:zZuVFrAs0
同時に1つの話にあまりにたくさんの子を出すとまず書き分けできん。
特に台本形式じゃないこういう形式では。
語尾が特徴的だとそういう懸念もないけど、俺妹にはそういう子いないんだよね。
必然的に俺の好きな沙織と黒猫をハーレム描写代表でやらせてもらいやした。
8P? ははっ、童貞に何書かせる気だよ!!
530 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:19:56.21 ID:AkHaqpQWO
6日間乙だ!
お前らいい加減許してやれww
532 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:24:02.39 ID:CNUv4Ex/O
乙でした
533 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:24:10.21 ID:gXn0xgUV0
乙
8Pとかエロゲでもなかなか見かけないよなww
534 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:25:05.84 ID:pnWoUKlP0
なるほど、堂々の完結だな
ID:zZuVFrAs0のポテンシャルに乾杯!
536 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/15(月) 22:27:11.61 ID:8hRbAHBwO
仕方ねーな、最大級の乙を贈ってやるよ( ・∀・)っ大乙
604 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 13:05:25.89 ID:gHmPx/qq0
京介「んじゃ俺、お茶でも淹れてくるよ。待っててくれ」
黒猫「別にそんな気を遣わなくても良いわよ。
それに今日はデバッグの作業をするために来ているだけだし」
京介「まあお茶の一杯で作業が終わらなくなる訳じゃねーんだから良いだろ?」
黒猫「仕方ないわね。そこまで言うならさっさと行ってきなさい」
京介「あいよ。んじゃ行ってくる」
パタン
黒猫「……行ったかしら? 行ったわよね? 行った! はい、今行ったわ!
はぁぁぁあああん! 先輩の布団! 先輩の枕! 先輩の毛布!!
くんかくんか! すーすー! もふもふ! もふもふ! ぐりぐりぐりいいいっ!
先輩の匂い! たまらないわ! たまらないの! 良い匂いなのおおお!
私のためにお茶を入れてくれる先輩可愛い!妹が渡米して寂しがっている先輩超絶可愛すぎるわ!
はっ、実の妹をあんなに溺愛しているなんて、見事なシスコンね。気持ち悪い!
でもでも、私っていう存在に安らぎを見出してしまう先輩は許せるわ!
仕方ないわよね、私だもの。あんな粗暴で下品な妹とは大違いの私!
救いようのない変態シスコン先輩のために一肌脱いであげるのが後輩ってものよね!
な、何言ってるんですか? 一肌って、服を脱ぐ訳ではないに決まっているでしょう!?
そんな目で見ても駄目……あ、やだ、そんな目で見られたら……お願いされたら……拒みきれないわ
分かりました。脱ぎます。脱ぎますけど……だ、だめ……そんなじっと見ないで……
む、胸は自信……ないから……え、可愛い? や、やだ……でも嬉しい……
せ、先輩……寒い……えっ、先輩が人肌で温める……何を言って……あ、先輩温かい……
先輩に包まれてるの嬉しいわ……でもこれでは離れられなくなってしまいそうです……
せ、責任を取るって……それどういう……し、仕方ないわね。私ぐらいしか先輩の相手はできそうにないものね」
ガチャ
黒猫「遅いわよ、先輩」
京介「悪い悪い。手間取っちまったわ」
607 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 13:19:46.60 ID:gHmPx/qq0
京介「あー、あっちいな……」
麻奈「仕方ないよお、夏だもん」
京介「そうだけどよお。んじゃそろそろ帰るわ」
岩男「なんだよ、兄ちゃん。もう帰るのかよー」
京介「ああ、じゃあな、ロック」
岩男「じゃあねー」
パタン
麻奈「あ……きょうちゃんハンカチ忘れていっちゃった……」
麻奈「……」
麻奈「きょうちゃんの! きょうちゃんのハンカチ! ふあああああ!!
超レアなきょうちゃんの汗拭きたてハンカチきたああああああ!
新鮮なきょうちゃん汁すごいのおおおおお!
くんかくんか! ぺろぺろ! きょうちゃんぺろぺろ!!
きょうちゃん舐めちゃったよおお! おいひいいいいいい!!
もう和菓子屋なんてやめて、きょうちゃんの汗取り扱いたい!
今日のおすすめのきょうちゃんなんですか?
見てよ奥さん。きょうちゃんの靴下3日ものですよ。
ほしいいいいいいいいい!! きょうちゃんの不衛生靴下ほしいよおおおお!!
きょうちゃんのおよめさんになったら、きっとお洗濯はわたしがやるよね?
そうだよね。だっておよめさん。わたし、きょうちゃんのおよめさん!
きょうちゃん、たまには自分でお洗濯してよー。もう仕方ないなあ。
ああああああああきょうちゃんの靴下と……ぱ、ぱぱぱぱんつ!?
きょうちゃんのスーツむれむれパンツうううううう!! らめえええええ!
もうこんなの妹さんに洗わせちゃだめなんだからねっ」
609 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 13:22:13.20 ID:T/1GgZLwO
こんな地味子も許せる俺の包容力は無限大
612 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:30:39.63 ID:gHmPx/qq0
ハーレムルート あやせ編
---
引越して5日目。日曜日、つまりあやせの日。
結局昨日、俺は桐乃を抱く事はしなかった。
だって妹だぜ? さすがに手を出そうって思えないだろ?
それでもちょっとは楽しく飯食ったり買い物行ったりできたから
あれはあれで良いんじゃねえって思った。
桐乃も別れ際、そこそこ満足してる風だったし。
まぁそれは置いといて。
今日はあやせ。マイラブリーエンジェルあやせですよ、おまいら。
ずっと幼馴染だった麻奈実の時は、変な意味で緊張したけどそれはまぁ別の話で。
あの、全宇宙最高の美少女あやせたんを抱く?
うわああああああああああああマジなのかよ!?
全っ然信じられん。現実感皆無だっての。
つーか本当に今日来るのかねえ。それすら怪しいもんだぜ。
まぁ、あんな事言ったけど、ぶっちゃけあんま期待してねえんだ。
ヒゲは念入りに剃ったし、爪もヤスリをかけて万が一にも痛くないように手入れした。
部屋には1時間前にファブ○ーズして十分換気、ちょっとアロマっぽいのを焚いたりしてな。
……すんません。気合だけは入りまくりです。
この『夢のような生活』が始まってまだ5日目。
俺はまだ、このどこか現実離れしたシチュエーションに適応できずにいた。
614 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:31:28.23 ID:gHmPx/qq0
部屋の中で不審人物発見。はい、俺です。
さっきから落ち着かない。ぴくりともしない携帯を手に取ったり、うろうろしたり。
本を手に取ったり、やっぱり机に戻したり。
何やってるんだろうねえ。
なんか落ち着くよう音楽でもかけようか。
そんな風に思っていた時、インターホンのベルが鳴り響いた。
「は、はいっ!?」
「……何をそんなに慌ててるんですか?」
聞こえてきたのは、まぎれもなくあやせの声だった。
「開けてもらっても良いですか?」
「あ、ああ。もちろんもちろん。今すぐ開けるよ」
「ありがとうございます」
インターホンの通話を切って正面玄関のドアを開けるボタンを押した。
……マジで来た。1人か? 実は怖いお兄さんが後ろに立ってるとか……。
ぐるぐる考えていると今度はうちのチャイムが鳴る。あやせだ。
鍵を外し、ドアを開くと、そこにはまぎれもなく彼女が立っている。1人で。
「お邪魔しますね、お兄さん」
やっぱ可愛い!
615 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:32:15.74 ID:gHmPx/qq0
「よ、良く来たな」
「はい。へー、ここがお兄さんの新居なんですね。なかなか綺麗じゃないですか」
あやせがキョロキョロと辺りを見回している。
今日のあやせは白を基調としたファッションでまとめられていた。
落ち着いた色のインナーに、薄い白のカーディガン。
膝丈のスカートと、シルバーのネックレス。
やべえ可愛い。やっぱあやせたんマジ天使だぜ。略してAMT?
「あ、お兄さんお腹空いてません?」
「え? あ、ああ……そりゃまぁ、それなりに」
「じゃあお昼ごはん準備しちゃいますね。お台所、お借りします」
そう言って、あやせはカバンを置いてキッチンに入っていく。
「俺も何か手伝おうか?」
「いえ。座っていてください」
別に嫌がられているとかそういう事ではないらしい。
あやせは鼻歌交じりで冷蔵庫の中を検分している。
沙織と言い、あやせと言い。女の子って意外と料理好きなのか?
最近の若い子は料理しなくなってるって聞くけどあれはマスコミの情報操作か。
あ、でもフェイトさんは料理なんて全然しようともしなかったな。
……もう30も近いのに、あの人だけはマジ心配だぜ。いろんな意味で。
616 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:32:59.29 ID:gHmPx/qq0
キッチンからは包丁の規則正しい音。
いやー女の子が台所に立ってるのはマジ良いぜ。つくづく思うね。
やがて炊飯器が音を立て、米が炊き上がったらしい。
あやせはそれを待っていたかのように、調理を仕上げに入る。
熱された油の音、どうやら炒め物らしい。
一気に香ばしい匂いがして食欲をかきたてる。
「出来ましたよー」
「おっ、美味そう」
「お兄さんのお口にあうと良いんですけど」
ご飯に味噌汁。そして肉野菜炒め。派手じゃないけど、逆にそれがすごく良い。
あやせの家庭の味を頂けるなんてこれ以上幸せな事はない。
「あ、でもさ。あやせは大丈夫なのか?」
「? 何がです?」
「よくわかんねーけど、カロリーとか」
炒め物みたいな油を使う料理はモデルの体型維持のためにはどうなんだろう。
若い男はこういうの大好きだけどさ。
「大丈夫です。鶏肉は胸肉なのでヘルシーだし、油も脂肪になりにくいのを使ってます。
それに健康的な食生活という意味では少しくらい油を取った方が良いんですよ」
「へぇ、そういうもんなのか」
「はい。それじゃ食べましょうか」
「だな。ありがたく頂きます」
617 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:33:43.42 ID:gHmPx/qq0
女の子って、やっぱ反応が気になるのかね。
俺が一口食べるまで、じーっとこちらを見てる。
「あ、美味い。それにすげえ良い香りするな」
「良かったです。香りは、仕上げにちょっとだけごま油を加えると良いですよ」
そういや、ごま油とか買ったなあ。使ってなかったけど。
あやせは安心して食べ始めたようだ。
いや、お世辞じゃなく美味いぜ。沙織と言い、麻奈実と言い、大したもんだな。
あやせのモデルの話や学校の話、楽しい昼食を終えて一息つく。
ややあって、あやせはぽつぽつと語り始めた。
「私、怖いんです」
「あやせ?」
「お兄さんの事は、嫌いじゃないです。でも、その、エッチするのは……怖い」
あやせは、本来的に怖がりだ。
あの時もそうだった。
桐乃が落ちぶれてしまうのが怖い。
大好きな桐乃が私に秘密を隠していることが怖い。
「皆もお兄さんが好きで、だから、今この状況をどうにかしようとは思いません。
でも、やっぱり、その処女は、結婚する人のために取っておきたいんです」
「……そうか」
もっともだと思う。そしてハッキリとそう言ってくれた事が、俺には嬉しかった。
その日、結局あやせは何もせず、帰っていった。
618 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:34:36.21 ID:gHmPx/qq0
もしかしたら、もう来ないかな、と思った。
あやせは根が真面目なんだ。
今までのように、なあなあでやっていくには本音を出しすぎてしまったんじゃないか。
でも、俺はそれでも良いと思ったんだ。寂しくないとは言わないけどさ。
あやせが自分で選んで、そうするなら、それはとても良い事であるはずだ。
だから、翌週。1日中待ってあやせが来なくても、俺はなんとも思わなかった。
思わないように、した。
ところが、そのさらに翌週。あやせは現れた。
「……こんばんわ」
ちょっと俯いて上目がちにこちらを見るあやせはどこか照れくさそうにしていて、
でも、あやせが会いに来てくれた事を俺は純粋に喜んだ。
居間のソファに腰掛けたあやせにハーブティーを出してやる。
気分が落ち着く、らしいよ?
「……ありがとうございます」
こうやってあやせと静かにお茶を飲むのも良いもんだ。
俺は心なしか優雅な気持ちで、日曜の昼下がりを楽しむ事にした。
619 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:35:29.31 ID:gHmPx/qq0
お茶を8割ほど飲んだあたりで、あやせが切り出した。
「あの、ですね。その、先日は申し訳ありませんでした」
「ん? なんかあったっけ?」
どっちかって言うと、何もなかったんだけどな。
「……あれから、色々と考えたんですけれど、やっぱり、お兄さんとエッチするのは、ちょっと……」
「そっか」
気落ちなんて全然してないぜ。いや本当に。
別に日曜は念入りにシャワーしたりとかねーし。
長めに歯磨きしたり、眉毛の手入れしたりとか、全然関係ねーし。
「でも、やっぱりお兄さんと、特別な時間は過ごしたい気持ちがあるんです」
「特別?」
「はい。なので、その、しょ、処女は、ダメなんですけど」
顔を真っ赤にして、あやせは顔を上げた。
「後ろの処女なら良いです!」
………………お茶、全部飲み干しておいて良かったよ。
620 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:36:10.56 ID:gHmPx/qq0
そこからあやせは早口で捲し立ててきた。
「ネットでちゃんと調べてきました! そういうの、アナルセックスって言うんですよね!」
「ぶふうっ!」
「ちゃ、ちゃんとグッズも買っておいたんですよ!」
いやに目がギラギラしてるのは気のせい、じゃない。よな。
やる気満々の顔でカバンから出てきたのはまず大きなボトルが1つ。
「そ、それは?」
「アナルセックス用ローションです!」
orz
OTZ
○| ̄|_
マイラブリーエンジェルあやせたんが壊れていく……いやもう壊れてしまったのか?
あんまりその顔と声でアナルアナル言わんでくれんですか! 兄さんいろいろ限界ですよ!
「普通のローションじゃダメらしいんですよ。ちゃんとコッチ使ってくださいね」
あ、もうアナルセックス(自分で言うのも憚られる)やるって決定してんのね。
「それから、やっぱり病気とか怖いのでコンドームです。
お兄さんは常備してるかなとも思ったんですが、一応薄いの買っておきました」
なんという気遣い。でもかえって痛い。主に心に。
621 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:36:54.40 ID:gHmPx/qq0
その後も、アナルをほぐすために使う細いバイブとか、
初心者の俺のためのマニュアルをサイトからプリントアウトしたものとか。
なんかもう、本当に準備万端だな、あやせ。
お前はどうしちまったんだ。
そりゃまぁ、興味がなくはないよ?
桐乃にやらされたエロゲでもそういうシーンは散々見てきたしさ。
でもこういうのって普通女の子の方が嫌悪感を示すもんじゃねーの?
見るからにノリノリなんですけどこの子。
ひとまず俺は言われた通り、念入りに石鹸で手を洗い、さらにエタノールを使って殺菌。
あやせは寝室でうつ伏せになって待っていた。
「あ、ちゃんと綺麗にしました?」
「お、おう」
「じゃあ……」
今さら恥らわれてもなぁ、とかちょっと思ったけど、やっぱり恥らうあやせは可愛かった。
くそう、このマイラブリーエンジェルめ。
だけど、この子と今からする事を考えると心臓の鼓動が早まるのも致し方ない事だ。
あやせは少し腰を持ち上げ、スカートとショーツ、そして靴下を脱いだ。
可愛いらしい、小さくキュッとしたお尻があらわになる。
宝石みたいで、その艶は真珠か何かと見紛うばかりだった。
622 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:38:32.91 ID:gHmPx/qq0
ベッドの上に膝を立てて、四つんばいみたいな格好。
あやせのお尻と、そして今まで誰も見た事がない場所が丸見えになった。
「こ、これがあやせの……お尻の穴……」
「い、いいい言わないでくださいよ、そういう事! 恥ずかしいじゃないですか……」
あやせは天使だから、排泄とかしないけどさ。
でもココってそういう目的の穴な訳だ。
そう考えると背徳感が沸々と沸きあがってくるのを抑えられない。
「え、えーと、じゃあ、始めるぞ」
「は、はい……あの、優しく、お願いしますね」
言われるまでもねえ。えーと何々。マニュアルによると、まずは肛門の周りを……。
「ひゃっ!」
つんつん。本当に軽く。弱く。触れるかどうかぐらいの強さで少しずつ刺激していく。
肛門周辺の筋肉は非常に強く堅固だ。(って書いてある。)
そのままでは性器どころか指だって入るもんじゃない。(らしいよ。)
まずはマッサージするように少しずつ柔らかくさせていく必要がある。(んだってさ。)
「うーん」
「ど、どうか……ひゃう……んくっ……しましたか……?」
624 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:46:51.78 ID:rhbLRBoQ0
うむ
625 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 14:47:12.97 ID:CEgfcj4r0
予想外すぎた
629 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:01:33.14 ID:gHmPx/qq0
確かにココに入れる訳だし、そのために肛門周辺の愛撫をしてやる事が
絶対必須なのは、まぁ、マニュアル読んで分かるし、そうなんだろうと思うよ?
でもさ、例えば通常のセックスで『ソコ』ばっか愛撫する訳じゃないじゃん。
キスもするし、胸を触ったりとかするだろ?
やっぱそういうの必要だよな? っていうか、俺はもっとあやせのいろんなトコ触りたい。
けどまだ肛門のマッサージは慣れてないし神経使うから、疎かにはできない。
この体勢では胸に手は届かないし、キスなんて真逆の位置に相当する。
「あっ!?」
とりあえず目の前のお尻にキスした。
程よくハリというか弾力があって、でも、柔らかい。
胸とはまた違う新鮮な触感を、唇で、舌で、指で手のひらで感じようとする。
「お、おに……さん……こ、こんな……ううっ」
すらりと伸びた脚はほどよく肉がついてて、すべすべする。
片手で脚をまさぐり、もう片手で肛門を注意深く触り、口でお尻を楽しむ。
やべえ、これちょっと良いな。
「そんな……ところばっかり……」
なんだかもぞもぞしているので、ふと上半身に目をやると
あやせは自分の胸を自分で触り始めていた。
「あやせ……自分で触ってるのか?」
「だ、だって……お兄さんが全然触ってくれないから……切なくなってしまったんです」
630 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:02:16.49 ID:gHmPx/qq0
腹に当たるかと思うほど勃起したわ、こんちくしょう。
でもアナルセックスは根気が大事なんだ。
十分に準備をせずに挿入を逸れば、女の子は大変な思いをする。
しかも気持ちよくもないし。
あやせが自分の胸を慰める姿に興奮しながらも、焦らず、マッサージを続ける。
心なしかさっきよりあやせの体温が上がってきたような気がする。
それに伴って、肛門の周りもなんとなく柔らかくなってきた。人体の神秘。
あれ? でも初めての場合、結構マッサージに時間取られるって書いてあるんだけどな。
かなり柔らかくなってきたのを感じて、俺は恐る恐る指の先を入れてみる。
「っーーー!!」
入った。
そして同時にあやせの背中がびくんと跳ねた。
「あ、あやせ、大丈夫か?」
「は、はい。お兄さん……すごい上手です」
こ、こんなんで良いのか? えーと次は、指が爪の半分くらい入るようになったら
ゆっくりとほぐすように、指を上下に動かす。
631 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:03:40.84 ID:gHmPx/qq0
「あっ、あぁっ……」
あやせからなんとも艶っぽい声が吐息と共に漏れ始めた。
本当に、お尻で感じてるのか、あやせ。
しかも思った以上にほぐれるのが早い。
少しずつ、抵抗を探りながら指を深くし押し込みつつ、動かしているのだが
既に指は第一関節まで入って、あわや第二関節間近だった。
いくらなんでも早すぎねえ? まだ15分くらいだけどこれで本当に大丈夫なのか?
そして、同時に嫌な疑問が浮かんだ。もしかしてあやせ、後ろは初めてじゃない?
「な、なぁ、あやせ?」
「は、はい……んくぅ……はぅ……」
「お前もしかして、アナルセックス初めてじゃないのか?」
「初めてに、決まっ、てるじゃ、ないですか……何、言って、るん、ですか」
身体をぴくぴくさせながら答えているから、言葉も途切れ途切れだ。
「で、でもなんかほぐれるの早くないか? 逆に心配なんだが」
「あ、そ、そんな、こと、ですか? きまって、ます。
きょの、ために、わたし、じぶんで、じゅんび、したんれす」
「なっ……」
今日のために? 俺の、ために?
「そう、れす。おに、さんに、だかれ、たくて……」
やっぱりお前はマイラブリーエンジェルだ! 疑ってすまなかった!
632 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:04:23.05 ID:gHmPx/qq0
指を出し入れしながら、アナルに触れていない方の手で前も少し愛撫してやる方が良いらしい。
しかし、そこは既にとろとろで、どろどろだった。
「あっ、そこ、さわ、ちゃ……らめ……っ! んっ!」
あやせの痴態に心臓がどくどく言ってる。
逸る気持ちを懸命に抑え、丁寧にマッサージを続けた。
指は1本から2本へ。そしてかなり深くまで抽送できるようになった。
マニュアルによれば、これぐらいならもう準備万端って感じらしい。
つかこんなにホントに拡張するもんなんだな……。
「あやせ、そろそろ……」
呼びかけられてこちらを向いたあやせの顔は羞恥と興奮に真っ赤だ。
「……はい、お兄さん。来て、ください」
633 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:05:34.92 ID:gHmPx/qq0
ゴムを被せて、こっちも準備OK。
いい感じにほぐれたアナルが元に戻らないうちに。
ぐっ。
「うあ……」
「あっ……あぁぁっ……」
膣とは全然違う圧力。挿入感。
まだ俺のペニスは全体の1/5も入ってない。本当に先端。カリもまだ埋まらない。
それでも、これはやばい。
女の子がイく時にすげえ締め付けになる時があるけど、
あれくらい強く、最初からぎゅうぎゅうと締め付けられているようだ。
「い、痛く、ないか? あやせ……」
「は、はい……大丈夫……大丈夫ですから……」
「痛かったら、絶対言えよ……」
異物を押し返そうとする肛門と直腸。それに逆らって少しずつ、少しずつ推し進めていく。
「ぁぁぁ……おにい、さん……はいって……きてます……」
あやせの反応、声だけでも射精そうなのに、この圧迫感はヤバイ。
正直どれだけ保つのか、耐えられるのか分からない。
635 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:07:15.86 ID:gHmPx/qq0
それでも、ゆっくりと、あやせの中に埋めていき。
「はい、った……」
「あ、ぁぁ……はい、ってるん……ですか? おにいさん、ぜんぶ……?」
「おう。根元まで、しっかり入ってるぞ」
「う、うれしい……れす……おにいさん……」
そんな事を言うあやせがあんまりにも可愛くて。
欲望の赴くままに動かしてしまいたくなったが、それは絶対ダメだ。
ていうかそんな事したら1秒ももたんよ!
マニュアルにも書いてあったが、俺自身、ようやっと感じる事ができる
あやせの中に少しでも長くいるため、ゆっくりと円を動かすように腰を動かし始めた。
「あっ、あぁっ、うごいてる……おにいさんの……うごいてましゅ……」
「ぐっ……あやせのなか、すげえ気持ちいいぞ……」
「うれしい、うれしいです……わらしも……おにいさんきもちいいれすう……!」
直腸の中は真っ直ぐじゃない。その分、膣のそれより不規則な圧力がかかって
油断すると意識ごと持っていかれそうだ。
それにあやせが物凄く感じてくれている。言葉にならない声で、喘いでいるあやせは
たまらなく、反則的に可愛い。アナルに挿入れている背徳感と相まって腰のあたりががくがくしている。
「にゃっ……そ、そこ!」
突如あやせが妙な声をあげて一際大きくよがる。
痛がったのかと思い、腰の動きを止めた。
636 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:08:31.60 ID:gHmPx/qq0
「あやせ、ど、どうした?」
「い、いまなんか……おにいさんのが……なんか、あたって……」
「……よ、良かったのか?」
こくんと恥ずかしそうに頷く。あーもう可愛い。マジ天使。
お尻で繋がったまま、手をベッドについて、そっと上半身を前に倒した。
「あやせ、こっち向いて」
「あ……おにいさん……」
そこで初めて、俺はあやせとキスをした。
蕩けるようなキス。すぐにあやせは舌を出してきた。
もちろん俺も応じてやる。腰はゆっくり小刻みに動かしながら体液の交換。
やがてどちらからともなく離れて、結合部の刺激を再開する。
先ほどあやせが感じたのは、この辺か?
「あっ……あぅ……んぁぁ……」
違うっぽい。こっちか?
「ひんっ! ら、らめ……って……そこぉ……!」
ここだった。男なら、女の子の弱いところを攻めてあげるよな?
確か女の子の言葉は他意があるって誰か言ってたし。
「あっ、らめ、そこ、へん、へん、なっちゃう、あっ、ひゃっ!」
あくまで激しくはせず、緩慢な動きで、だけど執拗な動きで
Gスポットの裏側あたり重点的に攻めた。
637 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:09:30.40 ID:gHmPx/qq0
口をぱくぱくさせて喘いでいるあやせはまるで魚みたい。
そしてそれはもう絶頂に程なく近いだろうと思い、
俺も自身にかけていたブレーキを徐々に緩めていく。
「あ、あやせっ、そろそろ、イくぞっ!」
「っ!……っ!……っ!」
もう、声すらない。しかし、俺の言ってる事は分かるらしく懸命に顔を振って答えている。
そして、俺の肉棒は、あっという間に射精へと至った。
びくんびくんと悶えるように、ゴムの中に精液を吐き出す。
それに合わせるようにあやせの身体は弓のように反り返って果てた。
ベッドに2人とも脱力して倒れこんだ。
俺の腰はまだどくどくと射精を続けている。我ながら驚くほどの量だ。
喋るのも辛いぐらいの圧倒的な疲労感。
かろうじてペニスだけ抜いて、俺たちは折り重なったまま、
急速に深い睡眠へと落ちていった。
638 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:10:36.86 ID:gHmPx/qq0
目が覚めた時にはすっかり夜になっていた。どうやら3時間くらい寝ていたらしい。
まだ身体の芯が、特に腰が気だるい。
あやせはまだ穏やかな、そして幸せそうな顔で寝ている。
4月とは言え夜はまだ冷える。風邪を引かないよう布団をかけてやり
俺は熱いシャワーを浴びるべく風呂場へ向かう。アナル触ったりもしたからな。
サッパリして部屋に戻ると、あやせが起きていた。
「ありゃ、起こしちまったか?」
「はい。お兄さんがいなくなっちゃったのが寂しかったみたいですね」
あれ? なんかいつもよりデレてるよ?
「あやせも疲れたろ? シャワーしてこいよ。サッパリするぜ」
「そうですね」
「んで、その後、夕飯は外で食おうか。なんか腹減ったわ」
んー。と、あやせは口に手をあてて考える仕草をして。
「実はご飯の前に、1つお願いがあるんです」
「なんだ? なんでも言ってみろよ。今ならお前の頼み、なんでも応えてやるぜ」
「じゃあ遠慮なく」
そう言ってあやせはベッド脇に置いといたカバンから1本のバイブを取り出した。
「あのーあやせさん?」
「お兄さんにはアナルバージンを差し上げたので、やはりお兄さんからも同じものをもらいたいなと」
アッー!
639 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:11:18.41 ID:gHmPx/qq0
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
┏━━━━┓ / /" `ヽ ヽ \ ┏┓┏┓
┗━━━┓┃ //, '/ u. ヽハ 、 ヽ ┃┃┃┃
┏┳┛┃┏┳┳┓┏━━〃 {_{\ / リ| l │ i| ━━━━━┓┃┃┃┃
┃┣━┛┃┃┃┃┃ レ!小l● u. ● 从 |、i| ┃┃┃┃┃
┏┛┃ ┗┻┫┃┗━━ ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ|━━━━━┛┗┛┗┛
┃┏┛ ┏┛┃ ./⌒ヽ__|ヘ.u ゝ._) u. j /⌒i ! ┏┓┏┓
┗┛ ┗━┛ \ /:::::| l>,、 __, イァ/ /│ ┗┛┗┛
おわりだにょろ。
もう赤玉だぜ・・・。
640 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:18:05.02 ID:P+5ul+H40
643 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:31:08.43 ID:wlu6QxqV0
今日で7日間か、よく書き続けたな
おつ
646 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 15:51:05.71 ID:AJdWhDCQ0
やっとここまで読み終わった乙
648 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 16:08:42.90 ID:qm1VDztqO
SSってたるいからあんまり読まないんだけど、これは読破せざるを得なかった
良い暇潰しになったことを感謝すると同時に、
作者の筆の速さと巧みさに感服
649 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 16:08:58.71 ID:gHmPx/qq0
やっとさる解除かよ。
でも最後まで投下してからさるでよかった。
さすがにもうこれ以上は書けんよ。
明日は朝早くから1日外に出なきゃいけないしな。
あと
>>641 このあやせルートのために「アナルセックス 入門」でぐぐった俺の勇姿を想像してくれ
652 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/16(火) 16:37:04.66 ID:T/1GgZLwO
乙超乙
地味子は脳内で補完しよう
764 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/17(水) 23:57:44.46 ID:mZifTPG40
「きょうちゃん、お風呂はいろ~?」
「う、い、いや、良いよ。遠慮しとく……」
「なんでよ~」
麻奈実は7人の中で最も良く尽くしてくれる女の子だ。
それはとても有難いし、とても嬉しい。
こんな幼馴染がいる事が、俺の手柄でもないのに誇らしい。
しかし、最近少しずつ悪ノリというか、エスカレートというか。
ぶっちゃけやりすぎなんじゃね? って思う事がある。
例えば、これ、『一緒にお風呂に入ろう』だ。
いや、良いんだよ。普通にお風呂に入る分には。
確かに気恥ずかしいとかそういう問題は山積みしてるけど
それはそれでちょっと素敵なイベントだ。
だが、麻奈実と入ると、ちょっとね、いや、うん。
まぁ結局、押し切られて一緒に入浴する事になった訳ですが。
765 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/17(水) 23:58:28.98 ID:mZifTPG40
「はーい、きれいきれいしましょうね~」
これよ。なんでか知らないけど、麻奈実は洗いたがる。
気持ちいいんだけどさ。でも自分で洗えるぜ?
なんていうか気分は介護されているお爺ちゃん。
「どこかかゆいところありませんか~」
「ないぞ」
「きもちいい?」
「おう」
「えへへ~」
こんな調子なので文句も言えない。
実に楽しそうなのである。
「じゃあ流すね~」
「わっぷ」
お湯をたっぷり使って十分にシャンプーを流す。
「はい、かんりょ~」
「サンキュな。じゃあ俺、自分で身体洗うから……」
「だめだよ~。わたしがきょうちゃん洗うんだもん!」
背中を流すくらい良いじゃないかって?
どうせ前も洗ってもらったりするんだろうって?
766 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/17(水) 23:58:29.72 ID:NG+t6cquO
キターーー(゚∀゚)ーーー!!
767 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/17(水) 23:59:09.46 ID:mZifTPG40
バカ言わんでくれ。そんなのはなんの問題にもならん。
じゃあ何が困るかって?
だから、麻奈実は洗いたがるんだよ。
……ケツの穴までな……。
想像してみてくれ。毎週お風呂のたびに恥ずかしい姿勢で
前立腺マッサージを受けながら肛門を洗われる姿を。
鬱になるわ。
「ま、麻奈実サン……今日は尻の穴は結構ですんで……」
「ええー、だめだよ。綺麗にしないと。
もし、きょうちゃんがお尻の穴を汚くしていたせいで
女の子が病気になったらどうするの?」
どういう説得だよ! 清潔にしておけって言うだけで十分だろ!
「い、いやほら、自分で洗うからさ……」
「ムリだよお。きょうちゃん絶対自分じゃできないよ~」
「自分の尻の穴くらい自分で管理するって!」
なんだか聞くに堪えない酷い会話内容だが、本人達は至って真面目なので許してほしい。
それはさて置き、俺の発言を受け、麻奈実から発せられる雰囲気は突如底冷えするものになった。
これまで10年以上一緒にいたが、こんな麻奈実は初めてだった。
「……あやせちゃんに掘られたくせに……」
俺はもう、それ以上何も言えなかったとさ。
768 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/18(木) 00:00:16.69 ID:gbVU3mDf0
もう寝る!寝るよ!1週間ありがとなー
770 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/18(木) 00:01:21.32 ID:gbVU3mDf0
あ、ちなみに最後は麻奈実を希望する声が多かったので
麻奈実とイチャイチャさせてみた。
1時間で思いつく小ネタはこの程度のもんだったよ・・・。
麻奈実ファンのみんな、マジごめん。
775 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/18(木) 00:41:43.72 ID:NuZBMF3n0
一週間乙!
また建ったら書いてくれw
776 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/18(木) 00:44:09.05 ID:1tPPgA+sO
乙でした!
次回作も期待しています
777 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/18(木) 00:55:09.85 ID:l6G+pojKO
乙でひた!
ヒロインはまだいると思うの
母親とか……さ?チラッ
次期待してるぜ
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