1 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:54:02.78 ID:Ud2Z8WAQo
2 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:55:14.09 ID:Ud2Z8WAQo
目を覆いたくなるほど、生々しく滲んだ赤い血。
どれほどの痛みが真美の細い身体に襲いかかっているのだろうか。
真美の乱れた呼吸に混じる、うめき声。
それでも俺にはどうすることも出来ない。
どんどんと荒くなる真美の呼吸が
『終わり』に向かっているのだと確信させてくれた。
俺みたいなロリコンに目を付けられなきゃ
こんな事にはならなかったのにな。
3 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:55:51.20 ID:Ud2Z8WAQo
真美「ねえ……兄ちゃん……兄ちゃんは覚えてる……かな……?」
P「…………?」
真美「真美は……覚えてるよ……兄ちゃんと初めて会った日のこと」
P「……どんな感じだった?」
真美「兄ちゃんは……笑って握手して、くれたんだよ……」
P「……そうだったかな」
真美「うん……絶対にトップアイドルにしてやる……って……」
4 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:56:33.91 ID:Ud2Z8WAQo
それ以上、真美は何も言わなかった。
いや、気を失いそうな激しい痛みで
半ば理性を失いかけているのかもしれない。
どんどんと近づいてくる終わり。
いや、双海真美としての人生はとっくの昔に終わっている。
俺が終わらせたんだ。
5 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:57:08.81 ID:Ud2Z8WAQo
ささやかな引退ライブを最後に
双海真美は芸能界から、その姿を消した。
それなりの知名度を得ていた真美には
当然、ゴシップ記事が大半を埋め尽くすような
三流雑誌の記者から執拗なまでの追求もあった。
真美の実家に乗り込んでくる輩も居たが
真美には俺の住むマンションに身を隠すように
指示していたので二ヶ月もすれば諦めてくれた。
6 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:58:23.58 ID:Ud2Z8WAQo
その間も真美は、ずっと気丈に振舞っていた。
もし俺と出会わなければ、こんな事にはならなかったのに。
全ては俺が馬鹿なせいだ。
いつも真美を泣かせて。
そして今、俺の目の前で痛み、苦しんでいる。
俺は真美を苦しめたりしない。
そう誓ったはずなのに心の底では
この状況に興奮し、歓喜に震えているのだ。
7 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:58:50.84 ID:Ud2Z8WAQo
どうしようもないな、俺は。
出来ることなら、もう少しだけ二人で居たかった。
だけどそれも、もう終わり。
始まりがあれば、やがて終わりが来る。
8 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:59:21.42 ID:Ud2Z8WAQo
真美「ねえ、兄ちゃん……真美、ずっと謝ろうと思ってたんだ……」
P「……ん?」
真美「お仕事の邪魔ばっかりして……ごめんなさい……」
P「お、おい……何もこんな時に謝らなくても……」
真美「そうだよね……でもっ……こんな時じゃないと、なかなか踏ん切りがつかなくってさ……」
P「俺の方こそ、真美に辛い思いばかりさせて、すまん」
9 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 16:59:59.11 ID:Ud2Z8WAQo
口を衝いて出たのは謝罪の言葉。
真美は少しだけ顔を歪めたあと。
柔らかく微笑んだ。
今も痛みに苦しんでいるはずなのに。
突然、ぼやけた視界に驚き
思わず手で押さえると、温かいものが指先に触れる。
溢れては、こぼれていく涙を
止める術は無かった。
10 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:00:37.56 ID:Ud2Z8WAQo
真美「なんで泣いてるの……? 真美の……せい?」
P「まさか」
真美「ごめんね……わがままばかり言って……いつも兄ちゃんを困らせて……真美、本当に悪い子だよね……」
P「真美……」
真美「これもワガママになっちゃうかも知れないけど兄ちゃんには……ずっと笑っていて欲しいな……」
だって、しようがないじゃないか。
11 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:01:20.10 ID:Ud2Z8WAQo
溢れて止まらないんだ。
真美への想いが。
真美との思い出が。
いつも、気づくと視界の隅に
真美のポニーテールが揺れていた。
いつも仕事の邪魔をしにきてくれて、ありがとう。
12 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:01:50.17 ID:Ud2Z8WAQo
悲鳴の様な真美の声が聞こえ慌てて涙を拭う。
俺に向かって精一杯、その手を伸ばす真美。
言葉も無く、すがる様な眼差しを向けられ瞬時に理解した。
しっかりと両手で握り締めた真美の手は。
初めて出会った時と、変わらぬ大きさのままだった。
13 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:02:51.21 ID:Ud2Z8WAQo
真美「真美ね……ホント言うと、もう少しだけアイドル続けたかったんだ……」
P「すまん。俺のせいだ……俺が……」
P「真美の人生を滅茶苦茶にしてしまった」
P「本当なら今頃、きっとトップアイドルとして有名になって」
P「TVにも引っ張りだこで―――」
真美「兄ちゃん!!」
P「―――っ!?」
14 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:03:42.47 ID:Ud2Z8WAQo
真美「真美、後悔なんかしてないよ!」
真美「そりゃ今は、痛くって苦しくって辛いけど……」
真美「真美が望んだ事だし……だから―――」
真美「絶対に、元気な赤ちゃん産むかんね!!」
いつまでたっても子供のままだと思っていたのに。
15 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:04:19.66 ID:Ud2Z8WAQo
俺は生粋のロリコンだと思っていたけど、違うのかもしれない。
今なら分かる。
きっと、真美だから好きになったんだ。
さあ、もうすぐだ。
終わりが訪れ、新しい日々が始まる。
今まで二人で過ごしてきた日々を懐かしむと同時に。
真美の頑張る姿を見て
ようやく、新しい命を迎える決心が付いた気がする。
16 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/03(金) 17:04:46.94 ID:IxC7WvL10
おや…………?
17 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:05:18.50 ID:Ud2Z8WAQo
頑張れ、真美。
いつだって、俺は応援する事しか出来ないけど。
真美の悲痛な叫びが分娩室に響き
次に大きな産声が響き渡った。
だけどこれで終わりじゃない。
苦しみが二倍なら、喜びも二倍。
18 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:05:50.65 ID:Ud2Z8WAQo
遅れること数十分。
産まれ落ちた愛の結晶がもう一人に負けない様に泣いた所で。
俺も。
真美も。
我慢しきれずに泣いた。
初めて、家族四人で泣いた。
これからは四人で歩いて行こう。
19 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:06:41.64 ID:Ud2Z8WAQo
P「お疲れ様、真美。よく頑張ったな」
真美「んじゃあ、ご褒美ちょ→だい?」
P「何がいい?」
真美「……真美の頭……撫でて?」
P「やっぱり真美は子供だな」
真美「子供じゃないよ! もうお母さんだもん!」
20 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:07:31.39 ID:Ud2Z8WAQo
ひとしきり真美の頭を撫でたあと。
二人の我が子を抱く真美を
そっと包み込むように抱きしめる。
この腕の中にある温もりだけは
何があっても守り抜こうと思った。
21 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:07:59.57 ID:Ud2Z8WAQo
真美「ねえ、兄ちゃん……?」
P「うん?」
真美「真美は今、無茶苦茶幸せだよ」
【P「真美の人生を無茶苦茶にしてしまった」】改め。
【P「真美の人生を滅茶苦茶幸せにしてしまった」】終わり。
22 :
◆cjitx1hLjk [saga]:2014/01/03(金) 17:08:47.62 ID:Ud2Z8WAQo
以上で投下終了です。
ここまで読んで戴いた方が居ましたらありがとうございました。
23 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/03(金) 17:10:19.00 ID:IxC7WvL10
のっけから血の気の引くような気持ちでビクビクと読んでたけど、ハッピーで良かった。 乙!!
でも、「無茶苦茶」と「滅茶苦茶」が混同しておかしくなってるような。
24 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/03(金) 17:12:52.18 ID:tYewFY9d0
乙
いい意味で予想を裏切られたわ
26 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/03(金) 17:13:20.58 ID:EdWk+3AGo
乙
血を吐くかとおもったら砂糖を吐いていた
良かったです(小並)
27 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/03(金) 17:16:31.44 ID:+05JNH1t0
苦茶がゲシュタルト崩壊した
色んな意味でよかった
30 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/03(金) 18:22:00.86 ID:0SwBSCQao
新年初裏切りだった
乙乙
転載元
P「真美の人生を滅茶苦茶にしてしまった」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1388735642/
バンダイナムコゲームス (2014-05-15)
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