1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:11:55.59 ID:Ngh+TKCSo
時計を見ると、もう九時を回っていた。
相変わらず窓の外はしとしとと雨が降っている。
湿った空気は、気温が高くない今は不快ではない。
切りの良いところまで済ませたし、そろそろ帰ろう――。
パソコンの電源を落として、荷物を纏める。
電灯を消しかけたところで、ソファーに寝そべる人物に気付いた。
「……真美、何してんだ。こんな遅くに」
返事が無い。傍に寄って見ると、真美はソファーに仰向けに寝そべり、
心地よさそうに寝息を立てていた。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1373458315
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:12:39.16 ID:Ngh+TKCSo
無意識に――
規則正しく上下する胸に目がいった。
薄手のトレーナーをわずかに押し上げている膨らみ。
唾をのむ。瞬間、我に返り、慌てて目を逸らす。
俺は何を考えているんだろう。
こんな子供に、自分の担当しているアイドルに劣情を抱くなんて。
気の迷いだ。無理やり頭からかき消して、真美の肩を優しく揺すった。
「おい、起きろ」
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:13:42.56 ID:Ngh+TKCSo
真美は、んぅ、と声を上げ、身じろぎをした。
汗の匂いの混じった、独特の甘い香りが鼻をつく。
その一瞬間で五感が鋭敏になる。
よこしまな考えが、頭を、身体全体を満たした。一つ深呼吸をして、目を瞑る。
聴こえるのは雨音と、時計と、真美の静かな呼吸と、自分の荒くなり始める呼吸、鼓動。騒がしい。
顕在の思考が停止し、代わって、潜在の思考が勝手に打算を始めた。
目を開ける。真美の胸は変わらず、規則正しく上下していた。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:17:46.45 ID:Ngh+TKCSo
震える手を伸ばす。真美の膨らんだ胸元へ。
これまでに感じたことのない緊張と、背徳感、性的な高揚に、
全身が揺さぶられるような感覚に陥る。
吐き気がしたが、それすら自分を耽溺へと後押しする。
息が詰まり、絶えず分泌される唾液が口の端から零れそうになる。
彼女の柔かい身体の感触を、想像する。
胸、腹、首、二の腕。視線が落ち着かない。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:18:16.97 ID:Ngh+TKCSo
後――
数センチで手が届く。胸の高鳴りは最高潮に達した。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:18:42.76 ID:Ngh+TKCSo
瞬間。
クラクションの大きな音が事務所に響く。文字通り、俺は飛び上がった。
間を置いて、外で、車が乱暴に走り去っていく音が聞こえた。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:19:49.15 ID:Ngh+TKCSo
俺は破裂しそうな心臓を抱えて、息も絶え絶えにその場にへたり込んだ。
そして、全身の力が抜け、気味の悪い冷や汗がじわりと肌着を濡らす。
色々な感情のないまぜになった溜息を吐き出す。
同時に襲ってくる自己嫌悪。最悪だ。
真美はと言うと、先ほどのクラクションで目を覚ましたらしい。
「くぁ……んむ。にいちゃん、何してんの?」
のんきに目を擦りながら身体を起こしてあくびを一つ。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:20:30.69 ID:Ngh+TKCSo
「……起こそうと思って」一応、事実だ。
「あっそ」
興味なさげに言って、真美はもう一回、あくびをした。
「……真美、何してんだよ。こんな時間まで」
「雨宿りしようと思って」
「傘持ってないのか?」
「いや……持ってるけど」
真美は頬を掻きながら、すこしばつが悪そうに笑った。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:21:01.78 ID:Ngh+TKCSo
「……待っててくれたのか」
「にいちゃんの傘、無かったから」
「…………ごめん」
「ううん、いいって!もう、お仕事終わりでしょ?一緒に帰ろうよ」
「……そうだな」
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:21:54.86 ID:Ngh+TKCSo
俺の『ごめん』は、多分、真美の思う『ごめん』じゃない。真美の許した俺の『ごめん』は多分、違う。
重いため息を漏らした俺を見て、真美は少し考えるような素振りをした後、手を握ってきた。
驚いて真美を見る。真美は照れ笑いを浮かべて、
いつもの様なおどけた調子で言った。
「んっふっふ~、にいちゃん、今日はなんだか寂しがり屋さんみたいだから、ね……その……」
真美が言い切る前に、その白い手を無言で握り返す。
少し顔を赤くして笑う真美に、
この劣情をどうか、いつまでも悟られることがないように願った。
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/10(水) 21:25:19.33 ID:Ngh+TKCSo
終わり。
あんまりに短いけど、すっきりまとまっちゃったんで。
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 21:26:44.62 ID:kPhqd/FAO
え~こっからでしょう!?
乙ー
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 21:40:19.98 ID:Ja62gIqs0
変態乙
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 21:41:50.00 ID:d+dfaA7lO
乙
こっからこっから
ワッフルワッフル
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 22:57:10.15 ID:jKPFL4/ko
続きはよ
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:25:09.24 ID:B528jesGo
描写が素晴らしかったから続きは無いかと期待してしまう
とりあえず乙乙
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 06:27:24.25 ID:h/hxSTaJo
おつ
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/13(土) 23:51:59.72 ID:NG9EbgpWo
乙
転載元
P「真美……?寝てるのか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373458315/
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