1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:37:39.46 ID:Sy2hxobt0
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:39:00.46 ID:Sy2hxobt0
ある日の放課後。地学準備室。
古典部の部室にいるのは、俺と千反田だけ。
今日も机を挟んで、向かい合わせで静かに読書をしている。
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:39:41.67 ID:Sy2hxobt0
える「これ、親戚からの頂き物です。好きにつまんでください」
そう言って千反田は、お菓子がたくさん入った箱を差し出してくる。
俺は何も言わず、一つつまんだ。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:40:54.01 ID:Sy2hxobt0
える「不毛です!」
奉太郎「……」
える「不毛なんです!」
奉太郎「……か」ボソッ
える「折木さん?」
奉太郎「『そうか』と言ったんだ」
える「そうでしたか。ですが折木さん、もっと大きな声で発言してください」
奉太郎「……」
える「そんなに小さな声でしゃべられても、聞こえませんよ?」
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:41:49.02 ID:Sy2hxobt0
える「話が逸れてしまいました。とにかく、不毛なんです! 何かしましょう、折木さん!」
奉太郎「……んどくさい」ボソボソ
える「はい?」
奉太郎「『めんどくさい』と言ったんだ」ハァー
える「ですから、そんな小さな声じゃ聞こえません!」
奉太郎(めんどくさい……)
える「どうしたのですか、折木さん? 今日は一段とテンションが低いですよ?」
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:42:34.22 ID:Sy2hxobt0
奉太郎(ただでさえ今日は声を発することすらだるいのに)
奉太郎(千反田といると、どうもしゃべらなければいけない羽目になる)
奉太郎「帰るか……」ボソッ
える「帰るのですか?」
奉太郎「今のは聞こえたんだな」
える「正直言ってよく聞こえませんでしたが、折木さんが発する雰囲気で察知しました」
奉太郎「……さいで」
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:43:35.15 ID:Sy2hxobt0
える「というか、帰ってはダメです!」
奉太郎「なぜだ? 特別やることも無いし、帰っても問題ないだろう」
える「せっかくこうして部室にいるのですから、何かしなきゃ勿体無いです!」
奉太郎「……」
える「そうだ! こうしましょう!」ピキーン
奉太郎「?」
える「折木さんの発声練習をしましょう!」
奉太郎「」
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:44:11.71 ID:Sy2hxobt0
奉太郎「は?」
える「ですから、もっと声が大きくはっきりしゃべれるように練習しましょう!」
奉太郎「やらん。やらなくても良いことはやらない」
える「面接試験とかでも重要なことですから、やらなくて良いことではないです!」
奉太郎「確かにそうかもしれんが、別に今やる必要はないだろ」
える「『善は急げ』です」
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:44:49.75 ID:Sy2hxobt0
奉太郎(こいつは一度決めるとなかなか曲げないからな……)
奉太郎(なんとかこの状況を簡単に抜け出す方法はないだろうか……)
奉太郎「……あっ」ピキーン
える「では早速始めましょう。まずは息を大きく吸って深呼吸しまs」
奉太郎「なぁ千反田。こうすればもっと早く解決するんじゃないか?」
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:45:49.55 ID:Sy2hxobt0
そう言って俺は座っていた椅子から立ち上がり、千反田の隣の椅子に座った。
奉太郎「ほら、こうすれば聞き取りやすいだろ?」
える「! た、確かにそうかもしれませんが……」
奉太郎「? まだ聞き取りづらいか? じゃあこうしよう」
える(!!??!???!!!!???//////////////)
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:46:39.91 ID:Sy2hxobt0
奉太郎「こうすれば、さすがに聞こえるだろ……?」ボソボソ
える「お、折木さん! そんな、み、耳元でしゃべらないでください!//////」カァー
奉太郎「なぜだ? お前が俺の声が聞こえないって言ったからだぞ?」ミミモトデボソボソ
奉太郎「これが一番手っ取り早い方法じゃないか」ミミモトデボソボソ
奉太郎(やらなければならないことは手短に、だ)
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:47:26.98 ID:Sy2hxobt0
える「そんな、耳元で話さなくても、大きな声で話せば済む話です!///」
奉太郎「めんどくさいんだよ。それに今日はもう可処分エネルギーが残されていない」ミミモトデボソボソ
える「だ、だからって……、そんな、恥ずかしぃ……、です……//////」ボソボソ
奉太郎「ん? どうした? 今度はお前の声が小さくなってるぞ」ミミモトデボソボソ
える「だって、折木さん、が……//////」ミミモトデボソボソ
奉太郎(……可愛い……)
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:48:47.65 ID:Sy2hxobt0
ガラガラッ
里志「やぁ! ごめん二人とも! 遅くなっちゃった~、……って、あれ?」
摩耶花「ごめんね~! 福ちゃんが宿題忘れて先生に怒られt、……ん?」
奉太郎&える「」
里志&摩耶花「……帰ろっか」
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:49:42.07 ID:Sy2hxobt0
える「ま、待ってくださいお二人とも!! ち、違うんです!!」
里志&摩耶花「ナニガー?」ニヤニヤ
える「折木さんの声が小さくて聞こえないから、もっと大きな声で話してと私が言ったら、こうしようって折木さんが……」
里志&摩耶花「ニヤニヤ」
える「私の耳元で話せば、大きな声を出す必要ないから、って//////」
里志&摩耶花「ふ~ん」ニヤニヤニヤ
奉太郎「これが一番手っ取り早い方法だろ?」
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:50:32.10 ID:Sy2hxobt0
里志「いや~、まさか『あの』ホータローがね~」ニヤニヤ
摩耶花「ついに『あの』折木が……。良かったね、ちーちゃん」グスッ
奉太郎「おい、『あの』ってどういうことだ」
える「はぁ~、すごく緊張しました……///」
奉太郎「何で緊張するんだ?」ミミモトデボソボソ
える「だ、だから折木さん、やめて、ください……//////」
奉太郎「今度からお前と会話する時はこの方法でいこう(面白いから)」ミミモトデボソボソ
里志「やっぱ僕たち帰ろうか」コソコソ
摩耶花「そうね。二人の邪魔しちゃ悪いしね」コソコソ
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:51:17.39 ID:Sy2hxobt0
翌日の放課後。地学準備室。
今日もまた、古典部の部室にいるのは、俺と千反田だけ。
今日、里志と伊原はいわゆるデートというやつらしい。
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:53:11.31 ID:Sy2hxobt0
奉太郎(……)
える(……//////)
える「あ、あの、お、折木さん//////」
奉太郎「?」
える「な、何で今日は最初から、と、隣に座って本を読んでいるのですか……?///」
奉太郎「だから昨日言ったじゃないか。今度からお前と会話するときは、お前の耳元で話す、と」ミミモトデボソボソ
える「は、恥ずかしいので、や、やめて、ください……///」
奉太郎「そう言いつつ、お前逃げないじゃないか」ミミモトデボソボソ
える「はぅ……///」カァー
奉太郎(やべぇ超可愛い)
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:54:57.21 ID:Sy2hxobt0
奉太郎(ちょっといたずらしてみよう)
奉太郎「」フゥー
える「はぅあ!!」ビククッ
奉太郎「」クスクス
える「な、何するんですか!? 折木さん!//////」
奉太郎「何って、お前の耳に息を吹きかけただけだが?」ミミモトデボソボソ
える「だから耳元でしゃべらないでください!///」
奉太郎「嫌なら逃げればいい」ミミモトデボソボソ
える「そ、それは、その……」シュン
奉太郎「その代わり、もう俺としゃべることはできなくなるだろうな」ミミモトデボソボソ
える「! それはダメです!」
奉太郎「なら、このままでいくしかないな」ミミモトデボソボソ
える「ぅ……//////」
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 17:56:02.11 ID:Sy2hxobt0
~一方、里志と摩耶花は~
摩耶花「今頃、折木とちーちゃんは、またイチャイチャしてるのかしら」
里志「だろうね。ホータローには、僕たちが今日部室に行かないことをあらかじめ伝えておいたよ」ニヤッ
摩耶花「GJ福ちゃん!」ニヤニヤッ
里志「ところで、耳元でささやかれるのって、女の子的にはどうなの?」
摩耶花「さぁ? 人によって違うだろうし、私は別にどっちでも良いかな」
摩耶花「あと、男の声質にもよるんじゃない?」
里志「あぁ。確かにホータローはあぁ見えて、結構良い声してるしね」
摩耶花「えぇ~? あの折木が~?」
里志「なんと言っても、CV:中○悠一さんだしね」
摩耶花「あぁ……」
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 18:02:24.38 ID:Sy2hxobt0
さらに翌日の放課後。地学準備室。
今日も、いつもの二人だけ。
える(//////)ドキドキ
奉太郎(……)
える(……?)
える(今日は折木さん、隣に座ってきません……)
える(何かあったのでしょうか……。私、気になります……)
える「あ、あの! 折木さん!」
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 18:09:27.96 ID:Sy2hxobt0
奉太郎「?」
える「今日はなぜ、と、隣に座らないのですか?」ドキドキ
える(そういえば私ったら!)
える(こんなこと聞いたら、折木さんにまるで隣りに座って欲しいみたいじゃないですか!///)カァー
奉太郎「ふむ」
ガタッ トコトコ ストン
奉太郎「これで、良いのか?」ミミモトデボソボソ
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 18:10:31.47 ID:Sy2hxobt0
える「えっ? あっ、いえ、あの、その……///」
奉太郎「なんだ、こうじゃないのか?」ミミモトデボソボソ
える「いえ、あの、ち、違います……!//////」カァー
奉太郎「そうか、じゃあ戻るぞ」
ガタッ トコトコ ストン
える「えっ……」
奉太郎「? お前は俺に隣りに座って欲しくないんだろ?」
奉太郎「だから元の位置に戻っただけだ」
える「あの……」
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 18:12:05.58 ID:Sy2hxobt0
奉太郎「これで良いんだr」
える「折木さん!」
ガタッ トテトテ チョコン
奉太郎「なんだ」
える「はい! どうぞ!」グイ
奉太郎「いや、いきなり俺の膝の上に座ってきて、『どうぞ』と言われてもな」
える「! で、ですから!/// ね? わかるでしょう?///」
奉太郎「いやさっぱり」ニヤニヤ
える「くっ……。で、ですから、み、耳元でささやいてください!!//////」カァー
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 18:15:36.53 ID:Sy2hxobt0
奉太郎「最初からそう素直になれば良いんだ……」ミミモトデボソボソ
える「はふぅ~//////」ウットリ
奉太郎「今日は何の本を読んでいたんだ?」ミミモトデボソボソ
える「何も読んでません……」
える「折木さんに耳元でささやいてもらいたくて、内容なんか覚えていません///」
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 18:17:56.48 ID:Sy2hxobt0
奉太郎「お前は可愛いな……」ナデナデ
える「折木さん//////」
奉太郎「好きだよ、える……」ミミモトデササヤキ
【完】
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 18:35:14.50 ID:fJo+5PVWo
ブラックコーヒーがパルスイートに。
乙したー
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 18:57:47.02 ID:2tbWSkdfo
えるたそー
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 19:47:03.69 ID:Sy2hxobt0
思いつきで書いたので、結構適当になってしまいましたが、楽しかったです。
読んでくれた方ありがとうございました。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 20:08:47.71 ID:6SDwbq60o
また思いついたら書きにきてくれていいのよ
乙
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 20:28:31.08 ID:LAV/l5IzO
最高だった
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/12(水) 22:21:22.71 ID:mlwNkWjNo
良かった
転載元
奉太郎「千反田の耳元でささやいてみる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371026259/
角川書店 (2013-04-26)
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