1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 04:41:16.67 ID:2SxJaJ2D0
自らを脅かす存在などいるはずも無し、圧倒的な自負心を持ち備えた者。
何をしようとも、しまいとも、誰よりも速く、強大なる力が増大する者。
全てに勝利し、敗北を知らない者。何も恐れる必要などなし……否っっ!!
圧倒的退屈! 虚無感! 絶対王者だからこその感情が付きまとう。
大いなる力というのは、必ずしも全てを満たすものでは無い。
彼は願った。このつまらない日常を変えてくれる存在!! 何かを!!
勇次郎「……あぁ?」
可笑しいのは当たり前。昨晩、都内の最上級ホテルのスイートルームで眠っていたはず。
しかし、目が覚めればどうか。人の気配は無いが、どこかの商店街らしき場所で自分は存在している。
勇次郎何が起きてやがる……」
緻密な頭脳を持つ勇次郎であろうと、この状況を判断する事は難しく、思考に耽ろうとする。
と、そこで
男「はぁはぁ……」
男が走って来る。常人では考えられない程の危機感を持ちながら。
男(!? 鬼かっ!!……い、いや、違う)
男「お、おいあんた!! 逃げなくていいのか!! 血液型は!?」
勇次郎「……何故、貴様に言う必要がある」
男「はぁ!? こんな時に強情張ってる場合じゃ!! っくそ!! もう来やがった!!」
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 04:43:10.75 ID:5drWhGLL0
映画リアル鬼ごっこって5まであるんだなwwww
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 04:44:13.64 ID:+pMJ/hWf0
どう見ても鬼の側です本当にありがとうございました
7 :
>>2 あ、「抜けてたわ :2013/01/03(木) 05:02:51.54 ID:2SxJaJ2D0
数名の『男』がこちらへと向かってくる。顔に面を付け、身体は黒いコートで覆われ、
手には何かが装着されている。
男「や、やべぇ!! おいあんた!! 逃げ」
男の口が噤まれる。何故か。
このような危機的状況において、目の前の男は口角を上げていたからだ。
勇次郎(感じるぜ……紛うこと無き殺気ッッ!!)
そして、向こうに居る数人の一人が抜け出し、勇次郎へと迫る。
勇次郎(仕掛けられるのはいつぶりか……弱者ではあるが……その勇気、感謝ッッッ!!!!)
10メートル、5メートル、3メートル……1メートルと身体が触れ合う距離。
勇次郎「邪ッッッ!!!!」
男(っっ!?)
何が起こったのかは分からない。
気がついたら。首が落ちていた。
そして、面を付けた男の手にはワイヤーが握られていた。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 05:17:32.60 ID:2SxJaJ2D0
首なしの仮面の男は、首から血を噴き出しながら、ゆっくりと膝を付いて、その場に倒れた。
男「な、何が……」
向こうにいる男達も同様に身体の動きが止まっている。
勇次郎「どうした? かかって来ねぇのか?」
勇次郎がそう発すると、我に返ったのか。
向こうの男全員がズリズリと、1メートル程、後ずさりをし、踵を返した。
勇次郎「ッチ。まぁいい。テメェに聞きたい事がある」
男「あ、あんた一体……」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 05:28:54.69 ID:5tof/NDU0
この勇次郎はバキとやり合ったあとの勇次郎だな
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 05:30:48.13 ID:c1ibEFnR0
エア味噌汁は吹いた
19 :
勇次郎の血液型設定は適当です :2013/01/03(木) 05:38:21.74 ID:2SxJaJ2D0
――
勇次郎「クスクス。王様の命令でAB型の命が狙われていると……面白ぇ」
男「笑い事じゃねぇよ……こっちは殺されそうになってんだから……」
勇次郎「だが、腑に落ちねぇ点がある」
男「何だよ」
勇次郎「何故、AB型だけが狙われる。仮にも国の王だろう。何の理由も無しにやるとは到底思えぬ」
男「……王様は、AB型の稀少性をもっと高めたいらしい。王様自信がAB型だから、自分をもっと特別な存在にしたいんだと」
勇次郎「……ククク。成る程、形は違えど『力」を持ち合わせてはいるようだ」
勇次郎「食ってみてぇな……おい、その王とやらにはどこに行ったら会えるんだ?」
男「王様は、あの塔に居る」
男「最後まで生き残ってた人達には褒美が与えられ、王様にはその時に会えるらしい」
勇次郎「クスクス。まぁ、今から向かってもいいが、食い足りねぇ。存分に楽しませもらうとしよう」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 05:51:31.09 ID:2SxJaJ2D0
――
王「どうだ? 初日の状況は」
側近「はい。AB型、1000万人に対し、鬼は100万人」
側近「初日の成果は100万人といった所でしょうか」
王「はっはっは。結構結構。上出来じゃ」
側近「しかし、被害も出ています」
王「ん?」
側近「およそ1000人の鬼が死亡しています」
王「そうでなくては面白くないわい。奴らの中にも手練はおるじゃろう。一方的なゲームはつまらんからの」
側近「……1つ、気になる情報が」
王「何だ」
側近「A区の鬼からの報告なのですが、こちらをご覧下さい」」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 06:02:47.94 ID:2SxJaJ2D0
王「ん……おっ。これはまたえらく強そうな男じゃの」
側近「えぇ。この男に注目して下さい」
王「…………んん? 何だこれは」
王「何が起こったのかさっぱり分からん。急に鬼の首が落ちたじゃないか」
側近「えぇ。私も色々な方法で調べてみたのですが、この男がどうやって鬼を殺害したのか分かりませんでした」
王「……まぁ、よい。恐らくはワイヤーか何か使ったんじゃろう。トラップか何かを予め仕掛けておいてな」
側近「……」
王「国王を喜ばすのは民の役目。明日が楽しみじゃのう」
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 06:26:24.44 ID:2SxJaJ2D0
――
2日目。ウー、と人々を混乱に陥れるサイレンが町中に鳴り響く。
結果はまさにその通り、悲鳴、混乱、阿鼻叫喚、そこら中に響き渡っている。
もっとも、唯一の例外も存在したが。
男(……正直、ツイてる)
勇次郎「……」
横行闊歩する勇次郎の隣を常人が並ぶ。
勝手に付いて来た? いや、違う。強引に行おうとしても、身体が拒絶する。
許可を出した? それも違う。そんな事をする理由が無い。
何故。襲われるからこそ価値がある。そう! 相手が弱者だからこそ、この美意識は守らなければならない!!
つまり、弱者よりも弱いこの男を隣に置く事でその理屈は成立すると、そう考える。
男(こいつが何者なのかは知らないが、身体で分かる事がある。こいつは強者だと!)
勇次郎「……クク。さっそくおでましかい?」
男「えっ?」
まだ、サイレンから10分も経っていない。
まるで図ったかのように、同時に、4人。
東西南北、それぞれの方向から鬼が現れた。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 06:44:32.63 ID:2SxJaJ2D0
勇次郎「そこに伏せていろ」
疑問を持つ事無く、一切の発言する事無く、ただ従った。
何故なら、強者であると分かっているから。
勇次郎「ほう? 同時に来るか」
4人同時に図り合わせたように直進してきた。
偶然。いや、彼らは連絡を取り合っていた。
距離、速さ、タイミング、あらゆる要素が同じだったのだ。
また、それに加えて
男(えっ? な、ナイフ!?)
前日よりも明らかに殺傷能力が高い武器を手にしていた。
だが、勇次郎は臆するどころか、にやりと笑う。
勇次郎「昨日の奴よりは威圧感があるな……まぁ、3流以下もいいとこだが」
手と足の優位性は比べるまでも無い。それは射程においても同じだ。
右足を半歩下げ、機会を待つ。
鬼達は攻撃を加えるための予備動作を行う。
刹那、『軽く』地面を踏む。勇次郎の身体は2メートル程まで上昇し、静止した。
そのタイミングで、身体を回転させながら……
勇次郎「邪ッッッ!!!!」
鬼達の頭の位置で回し蹴りを放つ。
直立不動の死体の足元には4つの首が転がっていた。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 06:51:41.89 ID:+pMJ/hWf0
公務員って大変だなあ
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 06:55:41.87 ID:2SxJaJ2D0
男「ッッッッ!!!」
身体に衝撃が走る。
見た光景、にでは無い。
力の一端を目の当たりにしたからだ。
男「……凄い」
自然と漏れたその言葉は、まさに今の心情を表していた。
勇次郎「……おい。行くぞ」
男「あ、は、はい!」
自分の価値観を根底から覆す力。
圧倒的なカリスマ性。
男は思う。
王になるべきなのはこのような人物だと
39 :
>>36 スマソ。地面からね :2013/01/03(木) 07:02:17.47 ID:2SxJaJ2D0
――
側近「……成る程。もういい。今日はもう終了だ」
側近「……」
側近「……人間じゃ無い、か……」
側近「……ふふふ」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 07:03:06.40 ID:NOAL8J6G0
リアル鬼ごっこ4からお前らの嫌いなB型が狙われるようになったぞ
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 07:04:30.46 ID:v9j96OSl0
その勇気、感謝
のとこで鼻からうどん出てきた
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 07:14:10.29 ID:2SxJaJ2D0
――
王「どうじゃ? 成果は」
側近「はい。2日目終了時で、AB型の人数は700万人以下へと減少しました」
王「ほほー。随分、順調じゃないか。昨日よりも100万人も多い」
王「何かしたのか?」
側近「はい。大した事はしていませんが、武器と人数の追加を」
王「これこれ、目標は全滅ではあるが、あんまり無茶はいかんぞ」
王「出来るか、出来ないかくらいが楽しいんじゃから」
側近「はっ。以後気を付けます」
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 07:45:41.55 ID:2SxJaJ2D0
――
3日目
男(この人の傍に居れば安全。それは間違いない……でも、そろそろ国も異常性に気付くかもしれない……杞憂で済めばいいんだけど……)
不測の事態、というものは何に対しても存在する。この『リアル鬼ごっこ』においても例外ではない。
勿論、国がその事を想定してないはずが無い。
精鋭部隊はその内の1つだ。表、裏、あらゆる所から有能な人材を見つけ、厳選し、結成されている。
本来、使用される事のない物だが、機会ができてしまったのだ。使わない手はない。
勇次郎「……ほぉ」
上空から1人、右から更に1人。
男「っっっ!!」
男の身体は硬直して動けない。
そんな事はおかまいなしに、上空の男はナイフを、地上の男はワイヤーを用意している。
どうやら、2段構えで来るようだ。上空の男がナイフを切りつけようとする。地上の男はワイヤーで囲もうとする。
勇次郎は相手が反応するよりも速い動きで、バキバキと、骨が折れる音を鳴らしながら、男ごとナイフの制御件を握る。
そして、掴んだまま、地上の男の喉元へとナイフを突き立てた。
声にならない絶叫を鬼達はあげた。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 08:16:11.23 ID:2SxJaJ2D0
その光景を覗いていたのにも関わらず、臆せずこちらへ向かってくる者達がいる。
3人組だ。そして、通常の鬼とは違い、マスクも服装もバラバラだ。軍服を着ている者も居れば、ジャージ姿の者も居る。
しかし、血を浴びている。という点では皆同じだった。
キツネ面の男「どうする? 流石に1人ではきついぜ?」
軍服の男「確かに。殺されるのが目に見えるな」
キツネ面の男「だろぉ? おい、オッサン。どうする?」
老人「ふむ……まぁ、全員で掛かればええんじゃないか?」
軍服の男「了解した」
キツネ面の男「うい。じゃあ、それで」
およそ30メートル先に見える男達を勇次郎は睨んでいる。
警戒しているのではない。確かめているのだ。
勇次郎「……3人合わせて1流ってとこか……弱者にしては中々の戦力だ」
くすくすと、含み笑いをした後、何かが変わった。
目に見えている分には何も変わっていない。しかし、何か、勇次郎の周りの雰囲気が何か変わった。
緊張の糸はまだ切れていないと男は感じる。これが切れた時が合図であるとも感じた。
時間がゆっくりと流れている気がする。後、1秒後には最後の砂時計の粒が落ちるだろう。
0.8、0.9……1
ドンっ!! 激しい音と共に勇次郎の身体が消えた。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 08:42:28.36 ID:2SxJaJ2D0
3人の足が止まる。
勇次郎は射程範囲のギリギリで足を止めた。
あまりにもつまらないからだ。
キツネ面の男「……3人でもきつくねぇか?」
老人「だが、やるしかないだろう?」
軍服「うむ。そういう事だ」
勇次郎「クスクス。明らかな実力差が分かっていながらも戦う度胸。気に入ったぞ!!」
軍服「ふんっ!!」
その声と同時に右手でナイフを投げる。位置は心臓を外れる事無く狙っている。
と、次に素早い動きで、ポケットから銃を抜き、構える。
引き金に指を掛け、打った。
しかし、寸前、勇次郎はナイフの柄を掴み、銃口へと向かって投げた。
結果、衝突した両方は誰にも当たる事無く、消えて行った。
息つく暇も無く、キツネ面の男は拳を打つ。目的は別にある。
今まさに打とうとしている勇次郎の拳の軌道を変えるためだ。
先だしが功を奏してか、軍服の男に当たる直前で、腕に当てる事が出来た
が、その拳ははじき返され、勇次郎の拳は身体の中心へと深く刺さり、軍服の男は後ろへと吹き飛んだ。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 08:52:46.95 ID:wQSUP6Ae0
無双じゃん
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 09:05:30.73 ID:2SxJaJ2D0
キツネ面の男「ちぃ!!!」
地面を強く蹴り、後方へと、距離を取ろうとする。
しかし、勇次郎の上段蹴りは既に男の頭蓋骨を捉えていた。
一瞬、時が止まり、ゴキッっと、鈍い音を立てて、またしても後方へと吹き飛んで行った。
老人「おっと、そこまでじゃよ」
片手には少し大きい位の拳銃を構えている。
老人「勘弁してほしいのぉ。一応、武術家名乗っておるのに」
勇次郎「ほう。そんなちっぽけなもんで俺を殺せるとでも?」
老人「この銃は特別製でな。まぁ、弾が爆薬だと思ってくれればいい」
勇次郎「……ククク。いいぞジジイ。乗ってやろうじゃねぇか」
そう言って、一歩、二歩と、下がる。
勇次郎「よーい、ドンだ」
老人「はて?」
勇次郎「合図はてめぇが決めていい。てめぇの決めた合図で打ってこい」
老人「……これはこれは……随分とまぁ……」
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 09:06:41.43 ID:+pMJ/hWf0
とろい矢だなおいフラグ
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 14:14:57.36 ID:qhA09r5B0
範馬って苗字の人が狩られるのかと思った
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 14:15:54.31 ID:ufZYBOh20
>>94 そっちのほうが面白そうだけど
誰一人狩れそうになくてワロタ
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 14:16:28.87 ID:k8lfInnd0
範海王……
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 15:53:53.04 ID:2SxJaJ2D0
勇次郎「……」
老人(どうやら本気のようだ……が、しかしっ!! その驕りっっ!! 弱点となりうるぞっっ!!!!)
思考よりも速く懐からもう一丁の拳銃を取り出し、引き金を……引いたっっっ!!!
ドンっ!!!
つもりだった。
走馬灯が駆け巡る。目の前、ほんの数センチの所にある拳はゆっくりと動き出し
メキャ
っと、低く、潰れる音を立て、老人の頭ごと、コンクリートへ突き刺した。
勇次郎「意識の引き金を捉えるのは命の取り合いにおいて、基本中の基本だ。覚えておけ」
勇次郎「グズグズするな。さっさと行くぞ」
男「あっ、はい!!」
男(やっぱりこの人凄ぇ!!! 誰が来ようと負ける気がしねぇ!)
屍を踏み越え進んでいく。
結局、この日はもう何も起こらず、終了のサイレンが鳴った。
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 16:05:43.84 ID:2SxJaJ2D0
――
王「今日の成果は?」
側近「……」
王「おい、どうした?」
側近「……400万人以下と、一般人は後二日もあれば全滅できるでしょう」
王「その言いぶりだと、一般人じゃ無い者が居るみたいだな……だが、どんなに偉かろうが関係ないぞ? 王はただ1人なのじゃから」
側近「はっ。心得ています……が、です」
側近「仮に、王が二人居たとすればどうすればいいのでしょう?」
王「王が二人だと?……気にいらん。王というのは、頭であり、頂点である。そんな者が二つも居る集団は必ず破滅する。必ずな」
側近「……では」
王「かまわん。どんな手を使ってでも消し去れ」
側近「承知致しました」
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 16:20:45.39 ID:2SxJaJ2D0
――
側近(確かにペースは良い……それもかなり)
側近(そもそも絶対数が減ってきているからな。当然の結果だ)
側近(例外を除けば、数の暴力は実証されている)
側近(……まてよ?)
側近(くくく……そうか。その手があったか)
側近「……あぁ、私だ」
その日、鬼達に命令が下された。
重い、重い、決断が下された時だった。
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 16:25:58.35 ID:i3VHSClz0
渋川さんの出番はまだですか?
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 16:27:58.37 ID:2SxJaJ2D0
4日目。
開始のサイレンが鳴る。
しかし、いつもと様子が違っていた。
男「…・・・何か違和感が……」
勇次郎(殺気を感じねぇ……どうなってやがる)
男「……静かだ」
その地区、いや、その都市は今日、誰しもが一滴の血も流さなかった。
しかし、それが幸か、と問われれば、それはまた別の話である。
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 16:34:48.11 ID:2SxJaJ2D0
――
王「今、数はどのくらいじゃ?」
側近「4日目終了時にて、100万人以下、といった所でしょうか」
王「そうか……もうすぐじゃな……だが、あくまでも、ゲームだという事を忘れんでくれよ?」
側近「勿論です」
王「……ふふ。はたして、この王の前に現れる輩は居るのかのぉ?」
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 16:50:59.29 ID:2SxJaJ2D0
――
5日目。
王の居るその都市で、サイレンは鳴らされなかった。
対象者はその事を終了だと、嬉き、泣きながら喜ぶ者もいたが、否
終わるわけも無く、必要が無かったからだ。
そうして、時間が過ぎ……
塔
王「おい、一体どうなっとるんだ! 今日、サイレンが聞こえんかったぞ!」
側近「大丈夫です。全て作戦通りですから」
王「何ぃ? 作戦じゃと?」
側近「先程、この都市以外のAB型は全て排除されたとの報告を受けました」
王「ほう。そうなのか」
側近「はい。それで作戦というのは――」
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 17:18:03.94 ID:2SxJaJ2D0
――
6日目。
喜びを感じずにはいられなかった。
口からは笑みをこぼさずにはいられなかった。
感じる。明確な殺意。隠す気すらない殺意をッッ!
勇次郎「おい、お前」
男「えっ? あ、はい」
勇次郎「どこかに隠れていろ。邪魔になる」
男「あ。わ、分かりました」
1つ1つが自分に向けられている殺気である。
弱者が強者である俺に対して、殺意を持っている。
勇次郎(いつぶりか。こんな刺激は……)
1つ1つは弱々しい……だがッッッ!!!
恐るべきはその数ッ! その戦力ッッ!!! 小国に匹敵するッッ!!!
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 17:26:00.29 ID:2SxJaJ2D0
ピンポンパンポーン
いつもと違い、軽快な音が町中に響き渡る。
そして、ノイズ混じりの音声が聞こえてきた。
王「えー、諸君。今までよくぞ頑張ってくれた。よくやったと言いたい。どうやら、諸君ら以外の者達は全滅してしまったそうでな。
そこで! 諸君らには褒美をやりたい。1つ。この『リアル鬼ごっこ』は今日をもって最終日とする。1つ。今日の『リアル鬼ごっこ』は制限時間を30分とする。
どうじゃ? やる気が出てくるじゃろう? 生き残った者には褒美を与える。何でも好きな願いを1つ叶えてやろう……それでは。諸君らの幸運を祈っているぞ……」
ブツッ、と音声が切れた。と、すぐにウー、とサイレンが鳴り響く。
AB型の者、残り6千人。
対して
鬼の者、残り100万人。
6千人対100万人? 否
狩られる者と狩る者? 否
狩る者と、狩る者!!!
1対100万人という、空前絶後の戦いが、今まさに始まろうとしていた。
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 18:46:59.48 ID:2SxJaJ2D0
足音が鳴り止まない。
叫喚もその音によって掻き消される程に。
そうして、30秒も経たないうちに、勇次郎の周りは鬼達で埋め尽くされてしまう。
勇次郎「クスクス……」
そう笑いながら、辺りを見渡す。
勇次郎「ざっと2千人って所か……何秒持つか……皆殺しにしてくれるッッッッ!!!!」
敵の距離はおよそ10メートル。どうやら、勇次郎の情報を事前に知らされているらしい。
しかし、それは知らされていなくても変わらなかっただろう。この光景を見たのならば
ゆらぁ
っと、周りの空間が歪んで見える。
両手を上空に掲げ、臨戦態勢に入る。
機会を窺おうとはせず、鬼達は一斉に飛びかかる。
勇次郎「ぬんッッッ!!!!!」
ただ、鬼の顔を殴りつけた。
首を不自然な方向に曲げながら、鬼は、後方の鬼達を巻き込みながら飛ぶ。
鬼は死亡しながらも、なおかつ、弾丸の役目を果たし、10人の鬼達を殺傷させた。
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 19:10:50.11 ID:4IGLsB1c0
コウモリと戦う理論
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 19:18:33.65 ID:2SxJaJ2D0
反応が速い事と、その中で動ける事は同義ではない。
人間は死ぬ瞬間に今までの全ての記憶を巡るらしい。
勇次郎はコンスタントに自分の意志でそれを行える事が出来る。
かつ
その中で自由に動く事が出来る。
つまり、戦いおいて、勇次郎は時を止める事が出来るのだ。
勇次郎「へっ、止まって見えるぜ」
勇次郎「邪ッッッッ!!!!!」
その蹴りに鋭さは持たせなかった。
3人を薙ぎ倒しながら、そのまま後方の鬼達も同様に衝撃を受け、倒されていく。
20人以上が殺害されていた。
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 20:14:55.84 ID:2SxJaJ2D0
2撃に掛かった時間、およそ0コンマ秒以下。
鬼達には何が起こったのか分からない。
ただ、勇次郎に畏怖心を抱いていた。
勇次郎「何だ? 来ねぇのか? ならっ、こっちから行かせてもらうぜッッッッ!!!」
勇次郎「ぬうぅぅぅぅん!!!!!!」
鬼の行列へと突っ込む。
両手を横に広げ、押す。
勇次郎「へっ、力比べだッッ!!」
1000人との、押し合い。
均衡を保つ間も無く、鬼達は後退していく。
間に挟まれている鬼達の何人かは圧迫されて死亡した。
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 20:53:51.14 ID:2SxJaJ2D0
血が潤う。
圧倒的戦力の差に、もやは鬼達には狩りという概念は存在していない。
今まで狩ってきた者達同様、自分も弱者になり下がってしまったのだ。
うわああああぁぁぁあ!!!!
何とか平常を装おうとしていた鬼達が叫び出す。
本物の鬼を見て、本当の恐怖を味わった。
しかし、次々と逃げ出す鬼達を勇次郎が見逃すわけも無く。
勇次郎「ッカ!!! たわけがッッッ!!!!」
繰り出される暴力の数々。
終わった頃には、20分が経ち、辺りは血の海。
人数にして、1万人強の鬼が死亡していた。
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 21:04:50.54 ID:9jgUzfEO0
ねーよwww
早すぎて吹いた
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 21:05:44.53 ID:PZn0SONV0
勇次郎がエプロン姿でスーパーのお肉を買い占めてる画像ください
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 21:16:52.69 ID:2SxJaJ2D0
ウー、と終了の合図が鳴り響く。
しかし、喚起の声も安堵の声もあがる事は無かった。
「『リアル鬼ごっこ』終了です。鬼の皆さんは速やかに帰還してください」
機会的な音声がそう言い放つ。
「続いて、王様のお言葉です」
ブチっ。と音声が切れると。
またしても、軽快な音が鳴った後に、プツッ、とノイズ混じりの音声が入る。
王「いやー、おめでとうっ!! 生還者が『二人』とは!! 良く頑張ってくれたよ!!」
王「本当はもうちょっと時間が残ってたのだが、王様からの慈悲だ。遠慮無く受け取ってくれたまえ」
強い口調で労いの言葉を掛ける。
王「さて、諸君ら2人には褒美をやりたい。そこら中に待機してある車で塔まで来てほしい」
王「何でも1つ願いをかなえてやろう。では。待っておるぞ」
そうして、全てを言い終えた後、ブチっ、と音声が切れた。
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 21:25:00.54 ID:2SxJaJ2D0
――
王「ふぅ……」
側近「お疲れ様です」
王「あぁ……しかし、あんな化け物が紛れておったとはな」
側近「申し訳ありません。私共も想定外でした」
王「よい。今まで見つからなかったのが不思議なくらいじゃ」
王「何せ、1人で1万人もの鬼を殺害しているのじゃから。たとえ、100万人全員で突っ込もうが、勝ち目はなかったじゃろう」
側近「……」
王「それに、おそらく、そいつではないじゃろう」
側近「……はい」
王「もうすぐだ……もうすぐ全てが終わる」
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 21:45:06.15 ID:mb6lSY9Z0
スレタイで勝利確定乙
192 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 21:46:08.12 ID:2SxJaJ2D0
――
塔
王「よくぞ来てくれたな! 感謝するぞ!」
男「は、はい!」
勇次郎「……」
王「さて、願いを適える前に、君達の名前を聞いておきたい。名は? 何と申す」
男「お、男です!」
勇次郎「……名乗る必要はねぇ」
王「はっはっは!! 流石!! 強者だけの事はある!」
側近「……王様」
王「分かっておる。男君。まずは君の願いを適えよう。悪いが、そこの男について行ってくれ」
側近「こっちだ」
男は側近と一緒に、近くの部屋へと入る。
そして、すぐに
パァン!!
という銃声だけが静かな塔内へと響き渡った。
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 22:03:06.64 ID:2SxJaJ2D0
勇次郎「……キサマ」
王「さて、名もなき男よ。君には本当の事を話そう」
勇次郎「何だと?」
王「まず、私について。何の才能も持ち合わせない私が、どうして一国の王になりえたと思う?」
勇次郎「……」
王「予知能力があったのさ」
勇次郎「予知能力だとぉ?」
王「うむ。頻度はばらばら、時間もばらばら。しかし、精度は完全。時たま頭に未来の映像が流れてくるのじゃよ」
王「この力に目覚めた私は着々と地位を上げ、ついには王になったのだ」
王「だが、王になったからこそ民の事を思わねばならん。人材は宝、とも言うしのぉ」
205 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 22:28:19.22 ID:2SxJaJ2D0
勇次郎「で? それとこれと何の関係がある」
王「……1ヶ月程前からのぉ。不吉な物が見えるようになったのじゃ」
王「日に日に具体化し、とうとう正体を現した。何が見えたと思う?」
勇次郎「……」
王「40日後、この国だけでは無い、世界中のあらゆる場所から人々が死滅したのじゃ」
王「更に日が経つと、その原因は日本」
王「そして、AB型の人間が犯人だと。そこまでは分かった」
王「しかし、そこから先がどうしても見えなかった。時間も迫ってきておる。なら、どうするか?」
王「そこで考えたのがこの『リアル鬼ごっこ』なんじゃよ」
勇次郎「ならば、てめぇはどうなる? 自分は絶対にやらぬとでも?」
王「勿論。私も最後には死ぬさ」
勇次郎「ほぉ。俺はどうする? まだ残ってるぜ?」
王「はっはっは。いろいろ見ておったが、お主はやらんよ。いや、何者にも左右されないと言った方が正しいか」
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 22:34:45.86 ID:2SxJaJ2D0
勇次郎「っけ。安心しな。俺ももうじき消える」
王「? どういう事じゃ?」
勇次郎「俺は元々この世界の人間じゃねぇからな」
王「……成る程。合点がいった、その化け物じみた強さはそういう事だったのか」
王「何故、こちらの世界に来れたのかも、その強さなら納得がいく」
勇次郎「ッケ」
王「おっと。そうだ、褒美をやらねばな。何か欲しい者は無いか?」
勇次郎「いらねぇ。欲しい者は自分で手に入れる」
王「つくづく、強者じゃの」
勇次郎「それに。そこそこ堪能する事が出来た。礼を言うぜジジィ」
そう言うと勇次郎は王を背に歩き出す。
自分が欲しているのは強者であり、それ以外は不純物なのだ。
この世界に対し、興味が失せたその時
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 22:42:28.77 ID:2SxJaJ2D0
目に見えるのは真っ暗な空間。
外には薄暗い星空が見える。
勇次郎「戻って……きたか……」
現実と非現実を確認しながら、瞑想する。
勇次郎「……ククク。偶にはいいもんだな」
そう言って、あの世界で起こった事に耽り、もう一度目を閉じた
これにて完結ッッッッッ!!!!
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 22:43:50.25 ID:UQgcfRex0
いちもつ
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 22:44:27.22 ID:O54EDbAU0
乙
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/01/03(木) 22:46:01.58 ID:kdpcLoYn0
乙
転載元
範馬勇次郎「リアル鬼ごっこだぁ?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357155676/
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