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マイルズ少佐「パーシング?」

1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 02:56:23.26 ID:tlJTFIWd0
 1945年某日...

 北アフリカ戦線の後方。

 ここ、カイロにほど近い連合軍の補給基地で押し問答を繰り返す男女の姿があった。

マイルズ「それで……なにかしら、このデカブツ(モンスター)は?」

ブリティッシュアーミー(以下BA)補給将校「ええ、リベリオンの新型陸戦脚ですね」

マイルズ「……私が要求したのは中破したマチルダの交換部品なのだけど?」

BA補給将校「リベリオンのヨーロッパ方面軍からの耐熱試用要求品です。 最新型ですよ」

マイルズ「……つまり、あなたは私に植民地人(ファッキンリベリアン)の玩具で遊べと言いたいのね……」


3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 02:58:21.96 ID:tlJTFIWd0
BA補給将校「いえ、遊ぶのではなく。 お友達(ネウロイ)と一緒に遊んでも壊れないか確かめろという命令です」

 マイルズは生真面目に言葉を返す補給将校を一瞥して、手渡された資料に目を通すと頭を抱えた。

マイルズ「型番はT26E4……聞いたこともないわよ……」

BA補給将校「既にヨーロッパ戦線にはM26として配備されています。 実績もある戦闘脚ですよ」

マイルズ「そのわりには、アフリカ(こっち)では見かけないのはなぜかしら? 補給将校殿」

BA補給将校「リベリオンはアフリカ戦線はスエズ運河さえ無事なら問題ないと考えているようです」

 補給将校が遠くに広がるナイル川の下流方向を指で示してみせる。

 ここからでは見えないが、その方向には人類の交通の要所、スエズ運河があるはずだった。 


4 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:00:07.96 ID:tlJTFIWd0
マイルズ「それにこういう仕事はリベリオンの……それこそパットンガールズがやるのが筋でしょう?」

BA補給将校「いえ、リベリオン国内でAGF(陸軍地上管理本部)と陸軍省が揉めているらしく……」

マイルズ「知らないわよ! それこそ植民地人の都合じゃない!」

 今まで青筋を浮かべながらも耐えていたセシリア・グリーンダ・マイルズ少佐の忍耐は、ついに臨界点を超え咆哮を発する。

 その一喝は戦場であればネウロイをも怯ませる迫力だったが、補給将校は何食わぬ顔で「じゃ、お、渡しましたのでサインをください」と受領書を突き出してきた。

マイルズ「……わかったわよ!」

 マイルズは乱暴に書類を受け取ると、カーネル・イン・チーフの名前が書かれた命令書と、受領書にサインを殴り書いた。

BA補給将校「では、確かに」

 済まし顔でジープに乗り込み走り去る補給将校に、裏ピースを突きつけてから……T26E4を見上げた。

マイルズ「パーシング……ねぇ……」

5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:01:35.65 ID:tlJTFIWd0
マルセイユ「おい、ケイ! マイルズの奴が荒れてるんだがなにか知らないか?」

ケイ「多分原因はあれ……ね」

 テントの入口からのぞき込むマルセイユを……いや、その背後に位置するブリティッシュアーミーの駐機場を指さしながらため息をつく。
 
マルセイユ「? 昼間搬入してた新型ユニットか? 馬鹿でかい大砲積んでたけどそう悪いものには見えなかったがなぁ」

ケイ「まぁ、機体に罪はないのが問題なのよ。 経緯とそれが自分に回されたことに拗ねちゃってるんでしょう」

マルセイユ「マイルズが拗ねたぁ? すえ恐ろしいこともあったもんだな」

ケイ「あら、あの子だって女の子よ?」

 失礼なことを言うなと、肩をすくめてみせる。


6 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:04:11.64 ID:tlJTFIWd0

マルセイユ「とにかく、なんとかしてくれよケイ……あいつアタシの酒まで開けちまいやがった」

ケイ「そうねぇ……」

 圭子はあまり乗り気でないように左手で頬杖をついて、あいた手で短い鉛筆を弄んでいた。

マルセイユ「たのむよ、ケイ……」

真美「ひゃぁぁぁぁぁ!!」

 マルセイユの言葉を遮り遠く聞こえる東洋人の悲鳴に、ついに圭子は重い腰を上げた。

8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:06:55.03 ID:tlJTFIWd0
真美「や、やめてください! 少佐ぁ~」

マイルズ「ひっく、私のお酒が飲めないのかしら、曹長!」

真美「ぱ、ぱわはらです~!」

ケイ「これは相当ひどいことになってるわね……」

真美「ケイさん!」

マルセイユ「あたしもいるぞー?」

真美「大尉が私を人質にしたんじゃないですかぁ!」

ケイ「ティナ?」

マルセイユ「あり? ま、こうして助けに来たわけだしさ! 水に流せよ! あっはっはっ」


9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:08:44.53 ID:tlJTFIWd0
ケイ「……いい加減にしておきなさい、マイルズさん」

マイルズ「ケイコ……」

ケイ「気持ちはわからないでもないけど、中隊指揮官がそれでは部下の士気に関わるわよ」

マイルズ「……ぷはー」

 同僚の叱責も、どこ吹く風という顔で酒瓶を煽り 下品に息をつくマイルズに圭子はため息を漏らした。

マルセイユ「んじゃ、そういうことでアタシの秘蔵っ子を返して……って空じゃないか!」

 マイルズの手から酒瓶を奪い取ったマルセイユが驚愕する。

 先ほどラッパのみしたのが最後の一口だったようだ。

真美「あ、それマルセイユ大尉のだったんですね」

マルセイユ「じょ、冗談じゃないぞ! これ届くのに何週間かかったと思ってるんだ少佐!」

ケイ「ちょっと、ティナ?」

10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:09:57.21 ID:tlJTFIWd0
マルセイユ「ケイは黙っててくれ、これはアタシと……」マイルズ「う……」

真美「う?」

マイルズ「うわぁぁぁぁん!」

 先程まで無駄にヘラヘラと笑っていたマイルズが突然崩れ落ち号泣を始める。

 それは怒れるマルセイユがちょっと引くくらいの号泣だった。

マルセイユ「お、おわっ、ちょっと」

ケイ「あー、これはダメね。 ちょっと手に負えないわ。 真美」

真美「へっ?」

ケイ「もう、お酒はやらないと思うから中佐をテントまでご案内して差し上げなさい」

真美「私がですか?」

11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:12:20.04 ID:jana6nlw0
マルセイユ…

12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:12:26.10 ID:tlJTFIWd0
 顔に嫌ですと書いてあるが、念を押すように直属の上官に「お願いね」と言われてはまさか、嫌ですとは言えない。

真美「わかりました……少佐さん、立てます?」

 マイルズに肩を貸して歩きだした真美を見送りながら、残った二人は同時に息を吐いた。

ケイ「ヒドイ話ね」

マルセイユ「まったくだ」


 圭子は昼間に聞かされた、試作機を他国に丸投げというリベリオンの実験計画に頭を痛め。 マルセイユは秘蔵の一本が失われた事実に心を痛める。

 なお、もっとも実害を被ったのは稲垣真美曹長であったが、人知れず中隊史の闇に埋もれた。

13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:14:21.99 ID:tlJTFIWd0
 翌朝(マイルズの感覚にして朝)

マイルズ「……っ、頭痛い……」

 アルコールが抜け切らず思考の纏まらない頭でテントの中を見渡し、枕元にクシャクシャになった仕様書を見つけ、さらに気分が重くなる。

マイルズ「……」

 とりあえずと水を求めて起き上がり、テントの外に出るが、アフリカの熱気に「直に」肌が焼かれ意識を刈り取られそうになった。

マイルズ「……水」

14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:15:56.78 ID:tlJTFIWd0
 加東圭子の管理が行き届いたこの前線基地では数少ない男女が混合する地点である給水車まで歩き、重い瞼を辛うじて開き列に並ぶ。

 それにしても今日はやけに周りが騒がしい。

少尉「もう、なんですかこの騒ぎは! あ、しょう……って! 少佐!?」

 何事かと様子を見に来たのであろう部下の一人が人垣を掻き分けて、突然マイルズに飛びかかった。

マイルズ「あ……いたっ」

 簡単に足がもつれてひっくり返るが、少尉は構うことなく給水車の保護用の布シートをマイルズにかぶせる。

16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:19:08.49 ID:tlJTFIWd0
少尉「少佐、なんのおつもりですか!」

ケイ「ちょっと、なんの騒ぎ…… 解散しなさい! これは命令です! 憲兵、何を見てるの! 早く解散させなさい!!」

 あまりの騒がしさに出てきたのだろうケイコが、何事か叫び、続けてMPとヘルメットに書かれた兵士たちが周りに集まっていた男たちを無理やり遠ざけていく。 

 相変わらず霞がかかったような思考で、もう高いアフリカの太陽をぼやーっと見つめていると突然貴重な水を嫌というほど顔面に浴びせられた。

マイルズ「っ!? ごほっ、げほっ!」

17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:20:46.71 ID:tlJTFIWd0
ケイ「目が覚めた、マイルズ少佐殿?」

 無理やり現実に引き起こされたような感覚に目をこすると、目の前に鬼のような形相のケイコが立っていた。

マイルズ「ケイコ?」

ケイ「覚めたみたいね。 それでは、今の自分の格好もわかるかしら?」

 マイルズは布の下の自分の肢体に手をあてて、まず最初に赤く……次に青くなった。

ケイ「で、ここに落ちているズボンはあなたのモノよね、少佐?」

マイルズ「……」

 あろうことか、ズボンを片足に引っ掛けただけの格好……つまり、ほとんど全裸で自分のテントからノージェンダーエリア(男女無差別地区)まで歩いて、そのまましばらく給水車の列に並んでいたのだ。

マイルズ「……うわぁぁぁぁん!!」

 それはマイルズを尊敬している部下が思わず目をそらす程の悲痛な泣き声だった。

 と、最初から見物していたマルセイユ大尉は語っている。

18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:23:31.55 ID:jana6nlw0
少佐薬中かよw

19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:25:21.80 ID:tlJTFIWd0
ケイ「処分をする必要もつもりもないわ。 不問よ」

 数分後、マイルズは圭子のテントの椅子に毛布とズボンだけという情けない格好で肩を落として座っていた。

マルセイユ「いや、アタシも止めようかと思ったんだけどさ?」

ケイ「次がないことを祈るけど、次はまっさきに止めなさい」

 さすがに申し訳なさそうな顔を浮かべるマルセイユに一言釘を刺してから、圭子はマイルズに向き直る。

ケイ「マイルズさん。 お気持ちはよくわかりますが、今回の件はやりすぎです」

 返す言葉もない。

20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:25:47.44 ID:WnxwJ2HO0
M26に似た名前のアニメキャラの話しかと思ったらM26だった

21 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:27:54.34 ID:tlJTFIWd0

マルセイユ「いや、なんにせようちでよかったよ、少佐。 他なら病気除隊は間違いなかっただろうし、なにより所属してる男連中が堅物と紳士ばかりだからな」 
 
 先ほどMPが解散させた人垣がそのまま暴徒化してもおかしくなかったと、マルセイユ大尉が言外で指摘する。

 考えただけでもぞっとしない……

マイルズ「……着替えます」

 マイルズは肩を落としとぼとぼとテントから出ていき、話を聞いてついてきていた部下数名に抱えられるように自分のテントに戻っていった。

マルセイユ「まさか、あのマイルズがねぇ……」

ケイ「流石に今回のは冗談じゃすまなかったわ」


22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:31:23.33 ID:tlJTFIWd0
マルセイユ「やばくなったらアタシも止める気でいたけど、予想以上に大事になっちまった」

ケイ「もういいわ、とりあえずしばらく身辺には注意してね」

マルセイユ「私とライーサ、それに真美は問題ない。 問題はC中隊の連中だよ、ケイ」

ケイ「そうね……」

??《ヴィクトリー……答、求む……繰り返す、こちら監視ポイント571、警戒エリア内にネウロイ多数!》

ケイ「こんな時に……」

マルセイユ「化け物(ネウロイ)は空気は読んじゃくれないさ。 こちらは早期警戒航空拠点ヴィクトリー、受信した。 現状を報告せよ、どうぞ」

23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:32:41.96 ID:tlJTFIWd0
マイルズ「何やってるのかしら……私」

 飲みなれない酒で潰れて同僚に迷惑をかけた挙句、先程の痴態である。

少尉「申し訳ありません、中佐。 自分がもう少し早く気がついていれば……」

 先ほどマイルズを止めた古株の少尉が、申し訳なさそうに頭を垂れ、思い沈黙が場を支配する。

マルセイユ「ヘイ、仔猫ちゃん達。 自慢の足の出番だぞ」

 そんな気まずい沈黙の中を、作ったような明るい声が切り裂いた。

25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:36:29.34 ID:tlJTFIWd0
少尉「マルセイユ大尉、ネウロイですか?」

マルセイユ「警戒ラインに陸戦型のお客様がたが侵入したとの通報だよ。 制空権を握るための航空型も一緒のはずだ。 アタシの中隊はこれから出撃する」

マイルズ「……」

マルセイユ「新型のテストにはちょうどいい相手じゃないかなぁ、少佐?」

マイルズ「……C中隊、出動します。 全員陸戦脚に搭乗の上、車上ブリーフィング!」

 マイルズは立ち上がるといつもの胸甲を装着し、部下にそう指示した。

マルセイユ「そうこなくっちゃな! 制空権はアタシたちが握っておくよ、止めは下の仕事だろ? 少佐」

 可笑しそうに笑いながら仮設ハンガーにかけていく大尉の後ろ姿を見送って、私は駐機されているT26E4を見つめた。

マイルズ「90mm……まさにブラッディガンね」

26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:37:45.24 ID:GFM6B1t4O
そういやスフ魔4いつよ

27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:40:31.19 ID:tlJTFIWd0
 数分後。

マイルズ「こちらはブリティッシュ陸軍第四戦車旅団C中隊。 監視ポイント571、聞こえますか。 どうぞ」

 遮るものの何もない砂漠を走りながら座席(長距離移動か精密射撃用のものだろう)に据え付けられた大型の無線機に呼びかける。

 左右を見渡してみると部下たちは心なしアクセルを抑え目に横列を維持している。 重戦車であるパーシングではマチルダの全速移動にはついていけない。

 それどころか、砂漠仕様として急改造されたこのデカブツが、砂漠を全速で長距離移動できるとは思えなかった。

リベリオン陸軍《……ちらはリベリオン陸軍第4歩兵師団所属、第3歩兵旅団。 上空の敵機は黄色い奴がだいたい片付けたが地上の化け物は無傷だ! 後退戦闘中!》

マイルズ「了解、合流予定地点を変更します。 マップグリッド、C-4-5-6、F-7-6-6 どうぞ」

28 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:45:35.39 ID:tlJTFIWd0
>>26

いつだろうね

29 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:49:51.60 ID:tlJTFIWd0
リベリオン陸軍《了解した! 30分で到着する! 以上!》

??《地上の友軍、聞こえる? こちらは上空のサンダーボルト編隊》

 とつぜん割り込んできた無線に顔を上げると、空には数機の魔女の姿があった。

??《上空のサンダーボルト編隊より、地上の友軍車両。 ご馳走が減ってても恨まないでね!》

マイルズ「全て平らげても結構ですよ、貴隊の幸運をお祈りします」

 虹色の魔力光を引きながら飛び去る魔女編隊を見送りながら、空はいいな。と一瞬物思いに耽る。

少尉《少佐、現在速度では目標まで少なくとも45分以上はかかります! 速度を上げられませんか?》

 少尉の声がインカムから聞こえ、マイルズは腕時計を確認した。

マイルズ「……速度を上げるぞ! 全車、私に合わせろ!」

30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 03:59:48.75 ID:tlJTFIWd0
 ラジエーター出力を設計限界(カタログスペック)まで上げ、魔導エンジンをフル回転させる。

 ヨーロッパ戦線で使われているものとエンジンは同型のはずで、このくらいの酷使に耐えないようでは実戦での使用など不可能だろう。

 もっとも、ここは極寒のスオムスではなく、灼熱のアフリカなので不安は残るが……

少尉《了解!》

 以前に見たタイガー重戦車ユニットよりも、洗練されておらず無骨な印象のあるT26E4だが、マイルズには不思議とあっているような気がした。

 もっとも、突き出した巨大な平衡装置は不格好このうえない。

マイルズ「そういうところも含めて、あなたの魅力かもね」

少尉《なにか?》

マイルズ「気にするな!」

31 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 04:12:25.91 ID:GFM6B1t4O
ミリタリ知識は無いが萌え戦知識でなんとかわからなくもない
エイミーちゃん

32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 04:12:46.02 ID:tlJTFIWd0
 突然、気恥しくなりマイルズは前方に集中する。

 気がつくと先程までは無限軌道の音に紛れて聞こえなかった遠い戦闘騒音が聞こえ始めていた。

少尉《……サンダーボルトがいい仕事をしたことを祈りましょう》

 撤退する友軍を撃たずに、確実にネウロイを攻撃するのは航空魔女には非常に困難だ。

 誤爆、誤射は当たり前。 被弾した際の破片やユニットが地上の友軍の上に落ちればそれは凶器となる。

マイルズ「うまくやったわよ、きっと」

 その後は通信も小さな連絡事項くらいのもので、各車無言のまま灼熱の砂漠を走り続づけた。

34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 04:21:23.13 ID:tlJTFIWd0
約30分後

リベリオン陸軍《そちらが見えた! 来てくれたか、少佐!》

マイルズ「ええ、到着が遅くなり誠に申し訳ありません」

 潤沢に車両や装備を持っているリベリオン陸軍は、進軍も撤退も速い。

 どうやらほとんど人員を損耗せずにここまでたどり着いたようだ。


35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 04:26:14.11 ID:tlJTFIWd0
リベリオン陸軍《雑魚は先程来たサンダーボルト編隊があらかた片付けたよ》

マイルズ「そのようですね……問題は」

リベリオン陸軍《ああ、問題は一番の大物が残っているということだな》

 以前に見た戦艦を利用したネウロイに近い大きさ……形もよく似ているが……

少尉《もとは客船でしょうね、大きさは前のやつよりデカそうですよ……》

36 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 04:29:42.35 ID:tlJTFIWd0
マイルズ「怯むな! 総員横列っ!!」

 命令を下してから撤退する部隊の最後列で一列に並び、目標へ砲口を向ける。

マイルズ「目標! 前方、大型ネウロイ! 弾種、徹甲弾! 全力射撃っ!」

 周りの部下の砲がバンッ! バンッ! と砲声をあげてネウロイの巨体へ吸い込まれる。

 が、ものがものだけに対した脅威になっているとは思えない。 

38 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 04:40:34.70 ID:tlJTFIWd0
マイルズ「第一射、目標直接照準……装填よし、ファイアっ!」

 マイルズが90mmのトリガーを引くとズバンッと冗談のような爆音と共に、全身を震わせるような衝撃が伝わる。

 そして……

少尉《大型ネウロイ進撃停止! 効いてます、少佐!》

 正面から飛び込んできた90mm砲弾はネウロイの巨体にめり込むと爆発し、遠目からでもわかるほどの破砕効果を生み出した。

39 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 04:47:52.01 ID:tlJTFIWd0
マイルズ「す、すごい……」

少尉《少佐!》

 一瞬、我を忘れて自らがうちだした砲弾のもたらした戦果を見つめていたが、少尉に呼びかけられ正気に戻る。

少尉《敵大型ネウロイより陸上型のネウロイが多数輩出されています!》

 見ると、カブト虫のような見た目の陸戦型ネウロイが大型のネウロイより排出されている。

 大型のネウロイはさしずめ輸送船といったところだろうか、よく見ると武装もしていないようだし……

40 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 04:52:11.84 ID:tlJTFIWd0
少尉《きゃっ!》

 前言撤回、光線を撃つことはできるようだ。

 今までは射程外だったのか、今更、本気になったのか……まぁ、ネウロイの事情など考慮してやる義理はない。

マイルズ「全車、横列を維持し各個で全力射撃! 通常の陸戦型を狙えっ!」

少尉《デカイのはどうするんすか!?》

マイルズ「私の獲物だ、手を出すなっ!」

43 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:07:49.98 ID:tlJTFIWd0
 こんな状況だというのに、マイルズの言葉で部下たちから笑い声が上がる。

マイルズ「どうした?」

少尉《いつもの少佐にもどりましたね! 雑魚は任せてください!》

 無線から響く心地よい緊張感と高揚感を含んだ声。

 ああ、指揮官の心理状態というのはこうも部下に影響するのか……

44 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:09:30.81 ID:tlJTFIWd0
マイルズ「全車!」

全員《はいっ!》

マイルズ「すまなかった! これより我が隊は全力でお客様を出迎える!!」

少尉《了解っ! おもてなしの料理を全部食べていただくまでは帰れませんね!》

マイルズ「当然だ! 全力射っ!」

 90mm砲の後部から薬莢を排出し、同じ砲弾を薬室に押し込み、砲後を閉める。

マイルズ「ブラッディガンと私は最高の相性なのよ!」


45 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:15:40.47 ID:tlJTFIWd0
 数時間後……


ケイ《おかえりなさい、マイルズ。 なんだか情けない格好ね》

 部下達に牽引されながら、基地に帰ると……マイルズの姿を一目見ようと入口に人だかりが出来ていた。

マイルズ「しょうがないでしょ……エンジンがウンともスンとも言わないんだから」

 結局、戦闘ではあの場から動くこともなく一方的に砲撃を加え続け、ラッキーヒットがコアを打ち抜いて終了した。

 だが、肝心の陸戦脚の方はラジエーターを停止させて砲撃をしていたのがいけないのか……焼け付いて動かなくなっていたのだ。

47 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:23:53.37 ID:tlJTFIWd0
ケイ《ふーん、それより……今日一日でずいぶんファンが増えたみたいね》

 基地の前にはマイルズの姿を一目見ようと人だかりが出来ている。

 今朝の痴態を思い出して、一気に気が重くなった……

ケイ《安心しなさい、マイルズ。 写真は全部ネガから没収したから》

マイルズ「……写真まで撮られてたんですか……」

48 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:28:25.83 ID:tlJTFIWd0
マイルズ「……写真まで撮られてたんですか……」

 肩を落とすマイルズに圭子がカメラを向けてフラッシュを炊いた。

マイルズ「えっ?」

ケイ《気がつかなかった、あなた達いま最高の被写体よ?》

 圭子はそう言って微笑み、早くご飯にしましょ、とからから笑いながら中に基地の中に入っていった。

 呆然とその背中を見送って、なにか嫌な予感を感じながらもマイルズは素直に従った。

 夕日が彼女たちと愛機の装甲を美しく染め上げているのに気づかずに……

49 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:29:53.80 ID:tlJTFIWd0
3日後。 

 扶桑のとある全国版新聞の一面にはアフリカで戦う魔女達の写真がデカデカと掲載されていた。

 魔導エンジンの壊れた重陸戦脚を輝かんばかりの笑顔で引く、陸戦魔女達と……

 重陸戦脚の上で苦笑いをする指揮官。

 彼女たちの生の姿は多くの人々の心に感動を呼び、世界中の新聞に掲載されることとなる。

 この事態に対し、リベリオン陸軍は正式にマイルズ少佐にT26E4を譲渡、改修を約束しブリタニア陸軍の将軍たちを沸かせた。

50 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:30:33.93 ID:tlJTFIWd0
そんな事態の裏で……

 マイルズ少佐の生(まれたまま)の姿を記録した貴重な写真がとある基地で出回り、それを二人の少佐が鬼のような形相で回収して回る騒ぎが発生した。

 彼女たちの姿は多くの兵士に長く恐怖を植えつけたという…… 

51 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:34:05.08 ID:tlJTFIWd0
ということで終了ですー

最後まで読んでいただきありがとうございます!
ヨーロッパ戦線で終戦前に一両しか間に合わなかったT26E4……
伝説の重戦車はアフリカで輝く!

52 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/12/06(火) 05:34:33.94 ID:jana6nlw0
乙 面白かったよ

アフリカの魔女総集編
野上 武志 鈴木 貴昭
密林社
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    コメント一覧
  1. 774@いんばりあん [ 2011/12/07 08:37 ]
  2. まさかのアフリカ編が見れるとは…
  3. 774@いんばりあん [ 2011/12/07 23:24 ]
  4. 珍しいうえに面白かった。
    アフ魔に載っててもおかしくないな
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