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「テルマエ・オトノキザカ」 ~ 8人の平たい顔族と1人のゲルマン 【前編】

2017/08/17 22:02 | CM(0) | ラブライブ! SS
1 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 20:29:31.27 ID:HNNY1ZCN0
〔元ネタ〕
『テルマエ・ロマエ』
『ラブライブ』

ネタばれ注意
タイトルの由来は『テルマエ・ロマエ』原作にて主人公が現代ロシア人をゲルマンと認識したエピソードから

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1471778970




3 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 20:35:40.74 ID:HNNY1ZCN0
ルシウス (嘘だろ……)

ルシウス (クビって……)

ルシウス (つまり、仕事が無くなるということか……)




ルシウス (私の……私の輝かしい……)

ルシウス (テルマエ技師としての生活が!)



4 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 20:37:32.49 ID:HNNY1ZCN0
ルシウス 「あの設計事務所め、アテネにまで赴き最高の建築技術を習得してきたこの私をクビにするとは!」

マルクス 「俺も彫刻で食ってる身だし気持ちはわからんでもないが……まあ、そうカッカするなってルシウス」

ルシウス 「いつか私はこれまでにないテルマエを造り、私の才能を認めなかった連中を見返してやる!」

マルクス (ルシウスは腕はいいが融通の利かんところがあるからな)

マルクス 「……そうだ! ルシウス、ちょっとテルマエにつき合わねえか」

ルシウス 「テルマエだと?」

マルクス 「こういう時は風呂に入ってパーッと気分転換するのが一番だって」

ルシウス 「……」



5 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 20:51:18.49 ID:HNNY1ZCN0
売り子 「菓子はいらんかね――ッ!」

垢すり屋 「ダンナ! 随分出ますね!」

脱毛屋 「脱毛! ワキの下綺麗に脱毛しますよッ!」

マルクス 「ハーイ、ハイハイッ。俺脱毛頼みます!」

ルシウス (……いつ来ても騒々しい浴場だ……)

じゃぼっ……

ルシウス (こうして湯の中に入らねば静けさを感じられないなんて……私ならもっと趣のある浴場を……)

ルシウス (建国から約800年……。確かにこのローマがかつてこれだけ豊かだったことはないだろう。
     ……一体ローマ帝国の境界線はどこまで広がったのであろうか……)

ルシウス (世の中は景気が良くても失業した私にとっては住みにくくなるばかり……)

ゴポッ

ルシウス (ん?)



6 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 20:58:07.13 ID:HNNY1ZCN0
ゴポポポ……

ルシウス (こんなところに穴が……妙な排水口だな……?)

ルシウス (職業柄どのような仕組みになっているのか気になる。調べてみよう)

ズズウッー!

ルシウス (……ぐわぼっ、湯の中に吸い込まれる! なんなんだ!? この吸引力は!)

ゴポポポポポポッ

ルシウス (く、苦しい……)

ゴボボボボボボ

ルシウス (……あれは……水面!?)



7 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 21:03:16.77 ID:HNNY1ZCN0
ゴポゴポゴポゴポゴポ

ザパアッ! 

ルシウス 「ぷふアッ! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

入浴客達 「……」

ルシウス (な、……なんなんだ、ここは一体!?)

ルシウス (こ、この壁画は! 女性が描かれているのか……)

ルシウス (えらく目が大きい……斬新なデザインだ)

ルシウス (その下に書いてあるのは模様? いや、文字……)

ルシウス (明らかにラテン語ではない。ギリシャ語でもない。見たことの無い文字だ)



『キュアメイドスパへお帰りなさいませ、ご主人様』



男性客A 「風呂場だから濡れても大丈夫なようにってことなんだろうけど……」

男性客A 「メイド風の白いフリル付きの濃紺スクール水着で接客なんて誰が考えたんだろうな? 頭には白のカチューシャまでつけてるし」

男性客B 「濃紺スク水と白エプロンの組み合わせってのも意外とアリだろ」

男性客A 「ああ、しっかしまあどう考えても交わらない筈の組み合わせだぜ」

男性客B 「案外『雪見だ○ふく』とかこういう発想で生まれたのかもな。ただ、東京観光でここに来て正解だったろ?」 

男性客A 「おう、何せ日本でもここだけっていうメイドスパだ」

男性客B 「ほら、あそこに外国人もいるしやっぱ海外でも話題なんだよ」



ルシウス (私を見ているこの男達、ローマ人じゃない。……顔が平たい)



8 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 21:09:22.56 ID:HNNY1ZCN0
ルシウス (肥満体の男が多い。裕福な市民層だろうか。少なくとも奴隷風呂ではなさそうだ)

ルシウス (この桶、何という鮮やかな黄色……)

ルシウス (この引き戸の先はどうなってる?)

ガラガラガラ

ルシウス (ここは脱衣所か)

ルシウス (これは!)

ルシウス (巨大な一枚板の鏡! なんという技術だ!?)

ルシウス (これは!)



『次回イベント メイドさんと萌え萌えジャンケン大会』



ルシウス (文字は読めないが催し物の告知か。……これ程の絵が書ける職人がいるのか)

ルシウス (ほう、ここではこの籠の中に衣類を入れるのだな)

ルシウス (この先にも部屋があるのか? 行ってみよう)

ルシウス (入り口の日よけ布か……この案も頂いたぞ? ん? 急に開けた感じが)



9 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 21:16:37.41 ID:HNNY1ZCN0
男性客D 「また来るね~ミナリンスキー」

男性客D (キュアメイドスパ伝説のメイド『ミナリンスキー』相変わらず可愛いなあ)

ことり 「いってらっしゃいませ、ご主人様!」

ことり (さて次のお仕事は……ん? 向こうの方が何か騒がしい……)

女性客 「キャーッ!?」

ことり (何! トラブル!? 行かなくちゃ!)



10 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 21:26:58.14 ID:HNNY1ZCN0
女性客 「変態、露出狂だわ!?」

ルシウス (この女、えらく動揺している……)

男性客E 「おい、あの外人、フリ○ンで出てきたぞ!」

ことり (大変!?)

ことり 「ご主人様、お召し物がまだのようですね? 一旦更衣室までご案内致します」

ルシウス (この娘、何を言っている? この民族の言葉か?)

ことり (日本語通じない……でもあせっちゃ駄目。スマイルよ、ことり!)

ニコッ

ことり 「このままの格好で休憩コーナーにいらしてはお風邪を引きます。ご主人様がお風邪を引かれたらミナリンスキーは悲しいです」

ことり 「お願いです! どうか一緒に来て下さい!」

ウルッ

男性客F (満面の笑みの後で)

男性客G (胸元に手を寄せてから目を潤ませて懇願の表情……今日のミナリンスキーもたまらん!)

ルシウス (よく分からんが案内してくれるようだ)



11 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 21:39:39.57 ID:HNNY1ZCN0
ことり 「失礼します、ご主人様」

ルシウス (さっきの部屋に戻った)

ことり (ここでアルバイト始めたばかりの頃は清掃時に男子更衣室に入るのが凄く恥ずかしかったけど、今は大分慣れたかな)

男性客H (おおっレアイベント! ミナリンスキーが更衣室に!)

男性客I (やべっ!? 剥いておこっ!)

男性客J (これは俺のマッパをミナリンスキーの網膜に焼き付ける好機!)

ことり (落ち着いてことり、先輩に言われたアドバイスを思い出すのよ)

ことり (『ご主人様に注目された時は相手をウィンナーだと思え』)

ことり (……)

ことり (ウィンナーじゃなくてジャガイモだった!)

ことり (改めて落ち着くのよ、まずは状況確認から)

ことり 「ご主人様、服はどちらに置かれましたか?」

ルシウス 「FUC?」



12 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 21:46:55.84 ID:HNNY1ZCN0
ルシウス 「……」

ルシウス (ここはローマではない……。どうやら私自身の身に何かが起こったようだ……私は元の世界に帰れなくなったのだろうか……?)

ことり (どうしよう、服の場所聞いても分からないし、この人凄く落ち込んでるし……)

男性客J 「ミナリンスキー、俺の奢りでこの人にネクター飲ませてあげなよ」

ことり 「よろしいのですか、ご主人様?」

男性客J 「えらく困ってるみたいだし、盗難にあったのかもしれん。これが原因でこの人が日本嫌いになったら悲しいでしょ?」

ことり 「ありがとうございます!」

男性客J (数百円でミナリンスキーの俺への好感度が上がるのなら安いもんだ)

ことり (お話しする時はせめて前は隠して欲しいかな……)

ことり (以前は『安心して下さい、穿いてませんよ!』っていってワザと見せる人が多くて……って少しでも外人さんに元気になって貰わないと!)

ことり 「ご主人様、少々お待ち下さい」

ルシウス (?)

ルシウス (部屋から出て行った……)

ことり (音ノ木坂の廃校を悲しんでいるお母さんとさっきの外人さんが重なって見えた……)



13 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 21:56:42.77 ID:HNNY1ZCN0
ことり 「お待たせしました、ご主人様」

ルシウス (戻ってきた)

ことり 「これを召し上がって元気を出して下さい」

ルシウス (ガラスの容器に入った……飲み物か)

ことり 「でもその前に、いつものやりますね」

ことり 「美味しく♡美味しく♡美味しくなあれ! 萌え♡萌え♡キュン!」

ことり 「ハイ、どうぞ♡」

ルシウス 「……」

ことり (思いっきり引いてる……)

ルシウス (この娘、呪文をかけた飲み物を渡してきたぞ!?)

ルシウス (私を呪い殺す気か!)



14 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 22:06:14.84 ID:HNNY1ZCN0
ルシウス (待てよ、本当に呪い殺す気ならわざわざ目の前で呪文をかけたりはしない……)

ルシウス (ではさっきの呪文は……)

ことり 「美味しいですよ。当店特製ネクターです」

ルシウス 「?」

ことり 「イッツ ネクター」

ルシウス (ネクタル!?)



15 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 22:14:49.26 ID:HNNY1ZCN0
ルシウス (ギリシャにおいて神々が飲まれるとされた不老長寿の飲み物、ネクタル)

ルシウス (その名前を冠した飲み物……分かったぞ)

ルシウス (仰々しい名前を付けた飲み物を乙女が勧めることで客の気を引く魂胆か)

ルシウス (どうせ大したこと――)

ゴクリ

ルシウス (美味い!!)

ルシウス (しかも冷たくて甘い!!)

ルシウス (甘い果実の風味、雪のような冷たさ、湯上りの火照った体内に沁み込む柔らかな味……)

ルシウス (この味は桃? いや桃だけではない、複数の果実の味と香りがする)

ルシウス (この独特の舌触りととろみ……果実を絞った果汁ではなく、果肉を細かく磨り潰しているのか?)

ルシウス (この世のものなのか?ああ、この甘みが夢心地にさせてくれる……)

ことり (よかった、気に入って貰えたみたい)

ルシウス (よく見るとこの少女の服装、壁画の目の大きな娘と同じ。濃紺の服を纏い、呪文を操る……)

ルシウス (まさか、魔女!?)

ルシウス (あれ……景色が……)



16 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 22:20:52.74 ID:HNNY1ZCN0
マルクス 「ルシウス! おいッ!」

ルシウス 「……あれ」

マルクス 「大丈夫かッ、ルシウス! オマエ、ずーっと浴槽の下に沈んでたんだぞッ」

ルシウス 「……平たい顔の男達は?」

マルクス 「なに言ってんだ、水飲んで目を覚ませっ」

ルシウス 「……夢、だったのか?」

コンッコロコロ

ルシウス (これは……魔女の飲み物の容器!)

ルシウス (夢だけど夢じゃなかった!)



17 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 22:29:59.25 ID:HNNY1ZCN0
入浴客A 「ほう、この籠に衣類を入れるのだな」

入浴客B 「おお、これが今週の見世物の告知か!」

入浴客C 「これが噂の目の大きな魔女の壁画、斬新だ」

入浴客D 「接客の女奴隷が壁画と同じ格好してましたなあ」

女奴隷 「当浴場特製ネクタルです、お一人様1本まででお願いします!」

マルクス 「いやぁーすっげえなあァ、ルシウス。失業して落ち込んでたオマエが今じゃ
     ローマで大人気の建築家ときたもんだ。」

マルクス 「魔女が甲斐甲斐しく客の世話をするテルマエってよく思いついたな」

ルシウス (マルクスには悪いがとてもあの経緯を説明出来る自信は私にはない)

女奴隷 「ルシウス様、地下水で冷やした温度よりもネクタルを冷やせません!」

ルシウス 「駄目なのか?」

女奴隷 「はい、言われた通り、この浴場の全ての奴隷に『モエモエキュン』をさせたのですが」

ルシウス (最後の『キュン』という引き締まるような語感から、あの世界の飲み物があんなに冷えていたのは魔女の呪文に
     よるものかと思っていたのだが……私もその場で聞いただけであの呪文を完全に覚えていた訳ではない……)

マルクス 「あっ、そうだルシウス。前にオマエが沈んだ浴場でさ、浴槽の中にでっかい穴が見つかって
     危険だから取り壊すことにしたんだってよ」

ルシウス (なに!)

ルシウス 「……」

ルシウス 「せめてあの魔女から『モエモエキュン』のやり方を教わってくる!」

マルクス 「おいッ、どこ行くんだルシウス!」



18 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 22:39:28.61 ID:HNNY1ZCN0
穂乃果 「見て見て見て、このパンフレット!」

海未 (音ノ木坂の廃校を聞いて以来、元気が無かった穂乃果が明るい声で……?)

ことり (どうしたのかな、穂乃果ちゃん?)

穂乃果 「アイドルだよ、アイドル! こっちは大阪の高校で、こっちは福岡のプールアイドルなんだって!」

海未 「プールアイドル?」

穂乃果 「うん、プールで歌って踊るアイドルのことだよ。最近どんどん増えてるらしくって、人気の子がいる学校は
    入学希望者が増えてるんだって!」

穂乃果 「それで私考えたんだ。……あれ、海未ちゃん、まだ話終わってないよー! いい方法思いついたんだから聞いてよー!」

穂乃果 (かつてお祖母ちゃんもお母さんも卒業した音ノ木坂、そして今は私が通う学校……)

穂乃果 (入学希望者が増えれば廃校を阻止出来る筈!)



こうして二千年近く離れた二つの世界が繋がった
テルマエ・オトノキザカ
これは古代ローマと現代日本を結ぶ
時空を超えた皆で叶える物語(風呂限定)



21 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/22(月) 20:02:09.93 ID:XoQH7kYp0
希 「理事長の話では今度のオープンキャンパスの結果次第やね」

絵里 「廃校が正式に決定するか、一時保留になるか……ここが頑張りどころよ」

真姫 「私達のライブでオープンキャンパスを盛り上げてみせるわ」

穂乃果 (プールアイドル『μ's』を結成して早数ヶ月、手応えはある。学校を存続させるんだ!)



22 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/22(月) 20:13:55.86 ID:XoQH7kYp0
海未 「これを弓道部に提供して下さるのですか?」

にこ 「そうよ! あんた、今度のオープンキャンパスで弓道部は射的をやるって言ってたでしょ」

海未 「はい」

にこ 「お客さんへの景品をどうするか悩んでるって言ってたわよね」

海未 「はい」

にこ 「このプールアイドルにこにーのフィギュアをあげるわ」

海未 「ありがとうございます……ってこのフィギュアは?」

にこ 「人気プールアイドルにもなればこうしてフィギュアが作られるのよ」

穂乃果 「私のフィギュアもあるのかな?」

にこ 「無いわ」

穂乃果 「えっ!?」

にこ 「現在μ'sで唯一フィギュアが作られたのがこのにこにーよ。あんた達もいずれ人気が出たら作って貰えるでしょうね」

にこ 「だから頑張りなさい」

穂乃果 「はい!」

にこ 「但し!」

海未 「?」

にこ 「フィギュアを提供するにあたってこれから出す条件を飲みなさい」

穂乃果 「条件出すの?」

にこ 「当ったり前でしょ。このフィギュア高いのよ」

ことり 「高いってどの位ですか?」

にこ 「定価6800円だけどプレミアがついて今じゃ相場3万円で取引されているわ」

海未 「そんな高価な物を!?」

にこ 「そう。だから話を聞きなさい」

海未 「分かりました」

にこ (本当は中古ショップで叩き売りされていた昔のアニメのフィギュアがたまたまにこにーに似てたから買い取って少し改造しただけなんだけど)



23 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/22(月) 20:29:29.82 ID:XoQH7kYp0
にこ 「話を戻すわ……まず、このフィギュアは射的の1等賞にしなさい」

海未 「分かりました。それだけ高価な物なら当然です」

にこ 「次に、1等賞なのだから難易度を高くするのよ。素人では絶対に取れない獲得条件にしなさい」

海未 「分かりました」

にこ 「それからこのフィギュアは1等賞の商品として一番目立つ場所に展示しなさい。ポップはこちらで用意するわ」

海未 「はい」

にこ 「最後に……」

海未 (まだ条件があるのですか?)

にこ 「誰も1等賞を取れなかったら商品は私に返しなさい」

海未 (それって弓道部をダシに自分の宣伝をしたいだけでは……)



25 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/24(水) 01:40:04.60 ID:fFixeUKW0
アッティリアヌス 「元老院の意見なんてあって無きに等しいもの……何もかも納得がいかぬ……。どうせハドリアヌスが後ろでいろいろと操作しているんだろう」

セルギアヌス 「私は心配ならんのですよ! 今のローマを思うと……」

アッティリアヌス 「かといって裏で謀をしたことが皇帝に知れたらえらい目に遭いますぞ」

セルギアヌス 「そうそう、あの皇帝は戦いはしないくせに内部の企てに対しては容赦が無いからな」

アッティリアヌス 「何かこう……良い手は無いものか……」

セルギアヌス 「……市民が今のように皇帝を支持しなくなればいいのですよ。それにはまず風呂をどうにかせねばと思っているのですが……」

アッティリアヌス 「風呂!?」

セルギアヌス 「市民にとって大切な浴場を繁栄させているのだからハドリアヌスやアエリウスの人気も当然かと……ならば……」

セルギアヌス 「その人気の原因を消してしまえばいいのではないかと……」

アッティリアヌス 「! ほう……そんな人物がおるのかね……」

セルギアヌス 「ハドリアヌスお抱えの浴場設計技師で名は……」



26 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/24(水) 01:49:10.80 ID:fFixeUKW0
ルシウス (陛下の命でヴェスビオスまで来たが山賊に囲まれるとは……)

ルシウス 「金なら持って無いぞ」

山賊の頭 「金を盗るだけが山賊の仕事じゃねえ……」

ルシウス 「こっちだって仕事だ。私は皇帝からの仕事を仰せつかってここへ来たのだ! ここへ浴場を作らねばならぬ!」

山賊共 「……」

山賊共 「ドッヒャハハハハハ!」

山賊A 「ハハハハ、フロだってよ!」

ルシウス 「風呂を小馬鹿にしている様だがお前達の臭さはこの世のものとは思えぬ。一体どれだけ風呂に入っとらんのだ!?」

山賊の頭 「うるせいッ! 山賊が風呂なんかにちまちま浸かってられるかって! 馬と身に着けてる物さっさとこっちに寄越しな!」

ルシウス 「こんな宝の山に囲まれているのに……」

山賊の頭 「……宝だとォ!?」

ルシウス 「……知りたければ……私について来い!」

山賊の頭 (俺達を見ても顔色一つ変えねえなんて大した度胸だなァ……ま、宝とやらが見つかったら始末すればいいか)



27 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/24(水) 01:59:27.37 ID:fFixeUKW0
山賊の頭 「で、お宝ってのはどこなんだ?」

山賊の頭 (こいつに言われるままに石を動かして湧いてくる湯を溜めたが……まさか命が惜しくてデタラメ言ってたんじゃ……?)

ルシウス 「これが宝だ」

山賊の頭 「!?」

ルシウス 「お前達が頑張って作ったテルマエ、思う存分浸かればいい」

ルシウス (湯量も豊富、温度も適温、そしてこの湯の良質なこと、触れただけで肌の中に染み込んでくる! 今は湧いてくる湯を簡易的に石で囲んだだけだがいずれ……)

山賊達 「……」

山賊の頭 「フザケやがって! ぶっ殺してやる!」

ビュンッ!

ルシウス 「何ッ!?」

ドボン!

山賊A 「お頭の剣を避けようとして風呂に落ちたぞッ!」

山賊の頭 「マヌケな野郎だぜ!」

ルシウス (ゴポポポッ!)





山賊B 「……おいっ……あいつ出て来ねえぞ!?」

山賊の頭 「っていうか居ねぇぞ!?」



29 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/24(水) 07:59:41.98 ID:fKvht4FSO
えいがばんか



30 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/24(水) 20:59:34.90 ID:Qu2ten/s0
ゴポゴポゴポゴポゴポ

ザパアッ! 

ルシウス 「ぷふアッ! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

ルシウス (テルマエ!)

ルシウス (……また見知らぬ世界に来たのか? このテルマエ……えらく天井が高い)

ルシウス (上の方に席がある……あの席からだとここを見下ろせるようだ)

ルシウス (しかしこの鼻をつく薬のような湯の匂い、何とかならないものか。それに浸かるには湯の温度がぬるい。ここの窯職人は何をしている?)

ルシウス (ともかく出よう、ここを調べるぞ)



31 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/24(水) 21:09:29.16 ID:Qu2ten/s0
ルシウス (ようやくテルマエから出て来た)

ルシウス (テルマエが整備されたこの建物の出入り口……扉が全面ガラスで出来ているとは)

ルシウス (平たい顔族の技術の高さに改めて驚かされる……)

ルシウス (出入り口の上に刻まれている文字、私には読めないがこの建物の名前なのだろう)

『音ノ木坂学園 屋内プール』



32 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/24(水) 21:23:34.74 ID:Qu2ten/s0
花陽 「アルパカさん、今日はオープンキャンパスの日だからいい子にしようね」

花陽 (アルパカを飼育してる学校って珍しいだろうから今日の来場者の印象に残ればいいんだけど……ん?)

ルシウス 「……」

花陽 「ぴゃあ!?」

花陽 (一般解放は10時からの筈、フライングで入ってきたの? それにこの人ずぶ濡れ……)

花陽 「あの……タオル持ってきます!」

ルシウス (少女が走り去っていった……。この生き物は!?)

白アルパカ 「メエェェ」

茶アルパカ 「メエェェェ」

ルシウス (見たことも無い生き物!? まるで羊のように毛むくじゃらだ。だが羊にしては足も首も長過ぎる)

ルシウス (体形はむしろ駱駝に近い。……がコブが無い。顔は羊と駱駝を足して2で割ったようだ)

ルシウス (これは……まさか!?)

ルシウス (キメラか!?)

ルシウス (ならばあの少女はキメラ使い!?)



34 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/25(木) 19:27:32.57 ID:M+/q2c0AO
死霊使い的な



35 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/25(木) 22:27:56.05 ID:WqHpn1a/0
花陽 「持って来ました。このタオルで身体拭いて下さい」

ルシウス (言葉は相変わらず分からんが、これで身体を拭けということか)

ルシウス 「礼を言う」

花陽 「……えっ!? ええっ!?」

ルシウス 「?」

花陽 「あ、あの、私、後ろ向いてます!」

花陽 (まさかいきなり脱ぎ出すとは思わなかった……)

バシャアア

花陽 (水が落ちる音……脱いだ服を絞ってるんだ……今、裸なのかな?)



36 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/25(木) 22:41:07.27 ID:WqHpn1a/0
花陽 「手伝ってくださってありがとうございます」

花陽 (凄い、あのアルパカさん達が大人しくしてる)

ルシウス (世話の仕方は馬とさほど変わらないようだ)

花陽 (この人絞ったばかりの服を着ている、着替えがあればいいけど私の服貸す訳にもいかないし……)

花陽 (最初は警備員さん呼ぼうかとも思ったけど、アルパカさん達が懐く位だからきっといい人なんだ)

ルシウス 「ところでこのキメラの名前……いや、私から名乗ろう」

ルシウス 「私はルシウス・クィントゥス・モディストゥスだ」

花陽 「ルシ……」

ルシウス 「ルシウス・クィントゥス・モディストゥス」

花陽 「ルシウス・クイントス・モデストス?」

ルシウス (発音はやや怪しいが良しとしよう)

ルシウス コクリ

花陽 (頷いてくれた!)

花陽 「私は」

花陽 「花陽、小泉花陽と言います!」

ルシウス 「ハ、ナ……」

花陽 「ハナヨ・コイズミ」

ルシウス 「ハナヨ・コイズミ」

花陽 コクリ

ルシウス 「彼らの名は?」

花陽 (アルパカさんを指差してる。名前を聞いてるのかな?)

花陽 (そういえば……)

花陽 (私、アルパカさんの名前知らない!)



37 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/25(木) 22:51:04.80 ID:WqHpn1a/0
花陽 (どうしよう……?)

ルシウス (動揺している。キメラの秘密を知られたくないのか? ん? 白いキメラを指差した)

花陽 「ハナコ」

ルシウス 「ハナコ?」

花陽 コクリ

ルシウス (頷いてもう1頭のキメラを指差した)

花陽 「ヨウコ」

茶アルパカ 「メエェェェ!」

花陽 「ご、ごめんなさい! 今は話合わせて」

ルシウス (ハナコとヨウコか)

花陽 (勝手に名前決めちゃった)



39 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/26(金) 20:16:50.36 ID:SSm7Lrq60
希 「みんなお疲れ様」

真姫 「午前のステージは問題無く終わったわね」

絵里 「午後のステージまで各自休憩にしましょう」

凛 「かよちん、一緒にご飯食べに行こう」

花陽 「うん」

穂乃果 「海未ちゃんとことりちゃんもご飯行こう」

ことり 「うん」

海未 「私は弓道部に顔を出さないといけないので食事は済ませておいて下さい」

穂乃果 「わかった、後で弓道場行くね」

穂乃果 (アイドル研究部と弓道部掛け持ちって忙しそうだな、海未ちゃん)



40 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/26(金) 20:23:35.70 ID:SSm7Lrq60
花陽 「あ、あの人!」

凛 「どうしたの」

花陽 「さっき話したアルパカさんのお世話手伝ってくれた人だよ」

花陽 「あ、こっちに気付いたみたい」



41 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/26(金) 20:37:08.38 ID:SSm7Lrq60
ルシウス 「君か」

花陽 「今朝は有難うございました」

ルシウス (言葉は分からないが私に感謝しているようだ)

凛 「日本語は分からないみたいだね。ねえかよちん」

花陽 「何、凛ちゃん?」

凛 「この人ひょっとして生徒会長の親戚かな」

花陽 「ハッ! そうかも」

凛 「外人さんで髪の色一緒だし」

プーン

ルシウス (この香りは……)

ルシウス 「向こうで食事を作っているのか?」

凛 「学食の方指差してるよ? 案内してあげよう」

花陽 「うん」



42 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/26(金) 20:53:15.11 ID:SSm7Lrq60
凛 「ここで食券を買います、ほら」

ピッ

カタン

ルシウス 「!」

ルシウス (硬貨を入れたら紫の板が出てきた!)

花陽 「私は……これ」

ピッ

カタン

ルシウス (こんどは黄色い板!?)

ルシウス (まさかこの箱の中で奴隷が瞬時に判断して板を出しているのか?)

花陽 「ロシアでは券売機って珍しいのかな?」

ルシウス (ともかく硬貨を入れよう。私も試したい)

ルシウス (入らん……)



47 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/28(日) 19:57:58.86 ID:Joq4+a3C0
凛 「これ日本のお金じゃないよ、これじゃ券売機使えないね。外人さん、税関で両替しなかったの?」

花陽 「私が出すよ」

凛 「かよちん?」

花陽 「アルパカさんのお世話を手伝ってくれたお礼をしたいから」

凛 「かよちんのそういうところ、凛好きだよ」



48 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/28(日) 20:07:40.35 ID:Joq4+a3C0
花陽 「このメニューでよかったのかな」

凛 「せっかくだからロシアには無さそうな料理がいいにゃ」

ルシウス (ハナヨが私にくれた鮮やかな紫の板……何か刻まれている)

『音ノ木坂学園食堂部』

ルシウス (さっきのテルマエにも似たような文字があった。これがこの辺り一帯を指す言葉なのだろう)

花陽 「その食券を出したら食事が貰えます。こっちです」

花陽 「代わりにこれくれるのですか? いいですよそのお金日本じゃ使えないから」

花陽 「お気持ちだけ頂きますから」

花陽 「……分かりました、その小銭頂きます」

凛 (かよちん、押しに弱いにゃ……)



49 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/28(日) 20:25:18.20 ID:Joq4+a3C0
ルシウス (この料理……一体何が素材になっているのであろうか……)

ルシウス (こうして見たところ私に判別出来るのは薄切りの平たい肉と茹でた卵くらいだ。汁の中に浸されたこの黄色くて長い物は何なのだ?
     この黒いパピルスのような物やこの茎の伸びたような植物は一体……。渦巻き状のこれは食べるのが惜しい程美しいが何なのかさっぱり分からぬ……)

ルシウス (いや、それよりも私が気になるのは……この器の縁にあるギリシャ伝来のメアンドロス柄……。
     以前のネクタルといい、この民族も我々と同様にギリシャの影響を受けていたのか? しかしローマにはこの様な食べ物は存在しない……)

凛 「早く食べないとラーメン伸びちゃうよ」

ルシウス (早く食べねば冷めてしまうという忠告か。それもそうだ。まずは頂くとしよう)

凛 「そっか! きっと食べ方が分からないんだよ。凛が食べるのを見て同じように食べるといいよ」



52 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/29(月) 20:52:25.00 ID:j8DwHyqG0
凛 「うーん、美味しい~」

花陽 「凛ちゃん本当にラーメン好きだね」

凛 「ここのラーメンは学食にしてはおいしいよ」

ルシウス (なるほど……このリグラとルディクス2本で中身を汁からすくい出すのだな)

ズ、ズズズズル

ルシウス (美味い!)

ルシウス (これは一体どういうことなのか……。料理の分野でも我々はこの民族と同様にギリシャの影響を受けているはずだというのに……。
     (なぜ平たい顔族だけこんなに美味い物を開発できたのだっ!?)

ルシウス 「OPTIMUM!(うまいぞ!)」

凛 「へ!」

花陽 「きっと美味しいって言ってるんじゃないかな?」

凛 (確かに美味しそうに食べてる……)

※ リグラ = ローマ時代のスプーン
※ ルディクス = スープをかき混ぜたりした太い棒状の食器



53 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/29(月) 21:02:42.29 ID:j8DwHyqG0
ルシウス (この汁に気を取られてもう一つの料理を食べてなかった。こっちも食べてみよう)

モグモグ

ルシウス (むう……美味い!)

花陽 「餃子も気に入って貰えたみたいだね」

凛 「このおじさんにラーメン餃子セットを選択して良かったにゃ」

ルシウス (これはっ止まらん! ……待て! 最後の一個はローマに持ち帰ろう……)

凛 (小銭入れに餃子をしまってる……)



54 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/29(月) 21:17:59.62 ID:j8DwHyqG0
凛 「お腹一杯……」

花陽 「生徒会長さん探さないと」

凛 「そうだね。生徒会室に行こう」



55 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/29(月) 21:44:40.08 ID:j8DwHyqG0
ルシウス (いろいろな出店や催し物で賑っている上にギムナシウム(運動場)まであるとは……。そして治安の悪さを全く感じさせない。清潔かつ開放的な空間)

ルシウス (私が先程まで居たヴェスビオスで漠然と思い浮かべた復興案に似ている……)

ルシウス (いや! ここは私が想像したものより遥かに素晴らしい……。画期的な事を思いついたと確信していたのに平たい顔族にとっては既に存在するものだったとは!)

凛 「あ、穂乃果先輩だよ」

花陽 「本当だ」

パスッ

ビシッ

穂乃果 「アーッ……真ん中駄目だった」

弓道部員 「残念、でも2等ですよ」

穂乃果 「これ1等取れる人いるのー?」

ルシウス (今の弓……素人だな)

凛 「先輩」

穂乃果 「凛ちゃん、花陽ちゃん……その後ろにいる人は……」

花陽 「ルシウスさんって人です。ひょっとしたら生徒会長のご親戚じゃないかって思って」

ことり (この人メイドスパのお客さんだ! バイトしてるのがバレるかも!)

穂乃果 「どうしたの、ことりちゃん?」

ことり 「私、お母さんと会う約束してるから、また後で!」

穂乃果 「ことりちゃん! 行っちゃった……」

花陽 「行っちゃいましたね」

凛 「海未先輩は?」

穂乃果 「海未ちゃんは演武の準備中、着替えてくるって……そうだ! 外人さん!」

ルシウス 「?」

穂乃果 「弓やってみませんか?」



57 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/30(火) 20:15:53.07 ID:fa2WU6580
弓道部員A 「園田さん、大変! ……着替え中だったの」

海未 「構いません。何があったのですか?」

弓道部員A 「着替えが終わったら直ぐに来て。予想外の事態が起きて……」



58 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/30(火) 20:36:17.45 ID:fa2WU6580
弓道部員A 「あの人よ、一手(二射)束中されて1等のフィギュアを持っていかれたわ」

弓道部員B 「園田先輩がさっき更衣室で着替えていた間の出来事です」

海未 「そんな……」

海未 (的を近くしたとはいえ、初心者向けのオモチャの弓で……)

ルシウス (的が近すぎる……それよりこの像だ……)

ルシウス (顔の造詣は雑だがなかなかよく出来ている。マルクスの彫刻の腕前には及ばないものの、あんな簡単な的当てで得た褒美としては十分過ぎる)

ルシウス (特筆すべきはこの像の素材だ。金属なのか粘土なのか、それすら我々の科学力では分からない)

海未 「持って行かれたものは仕方ありません。素直にあの方の腕を称えましょう」

弓道部員A 「そうね」

海未 「私はこれから演武に入ります」



59 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/30(火) 20:48:17.40 ID:fa2WU6580
ルシウス (あんな簡単な的当てでこんな大きな褒美を与えると言う事……それはつまり平たい顔族の軍事力の低さを物語っている)

ルシウス (この像は私がこの民族をやっと超えられたということの大切な証……)

ルシウス (あの弓を射ろうとしている少女も構えは良いが――)

ビィィン

スパァン!

ルシウス (何!? あれだけ離れた円の的に当てたぞ!?)

穂乃果 「凄おぉい! さすが海未ちゃん!」

凛 「かっこいい!」

花陽 「おおぅ……」

ルシウス (何ということだ……平たい顔族は少女でもあれほどの弓の腕前なのか? 技術も発想も軍事力も優れている……)

ルシウス (もし彼らと戦争になればいかにローマといえども……)



61 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/31(水) 09:28:38.02 ID:qOXQ5RCyO
クオリティの高さよ



62 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/01(木) 22:09:25.60 ID:DXvSgtvL0
真姫 (午後になって人が増えてきたわね)

真姫 (どこを向いても女の子ばかり……って女子高のオープンキャンパスだから当たり前か……)



63 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/01(木) 22:19:43.43 ID:DXvSgtvL0
ルシウス (あの娘は……)

にこ 「あーッ! にこにーのフィギュアが!?」

海未 「申し訳ありません、1等を取られました」

にこ 「心配になって弓道場に来て見れば! 1等は難易度を上げなさいって言ったでしょ!」

海未 「初心者ではまず無理な難易度です。ただ、弓の経験者が現れて……」

にこ 「もー! どうして経験者が来ることを予想しなかったのよ!」

ルシウス (先ほどの弓使いの娘が叱責されている。ということはあの黒髪の娘はあの弓使いより偉いのか? 百人長といったところか)

ルシウス (……そうだ……分かったぞ)



64 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/01(木) 22:30:27.90 ID:DXvSgtvL0
ルシウス (何故ここは女性ばかりで男の姿が見当たらないのか?)

ルシウス (何故弓の得意な娘がいるのか?)

ルシウス (平たい顔族の正体……)





ルシウス (彼女達は……アマゾネスだ!)



65 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/01(木) 22:39:10.96 ID:DXvSgtvL0
海未 「申し訳ありません……」

にこ 「しょうがないわね……提供するって言ったのはにこだし」

にこ (あのフィギュアが実はにこにーのフィギュアじゃないと知れたら私の立場無くなるし、あまり責めるのも大人気ないわね)

凛 (良かった……仲直りしてくれた)

ルシウス (この娘達がアマゾネスならその胸が平たいことに合点がいく。伝説では弓を射るのに邪魔な右の乳房だけ切り取ると言われているが……)

ルシウス (実際には両方切り取っていたのか……)



68 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/03(土) 23:23:00.47 ID:VxppgwbP0
穂乃果 「あの外人さんとどこで出会ったの?」

花陽 「朝、アルパカさんのお世話をしてたらあの人が現れて……」

ルシウス (あの娘はキメラの世話をしていたし、もう一人の弓の腕前は素人)

ルシウス (アマゾネスの全てが戦士ではなくて、戦に出ない者は切り取らないのだろう)

ルシウス (あれ……また景色が……)



69 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/03(土) 23:45:51.99 ID:VxppgwbP0
絵里 「親族から今日ここに来るという話は聞いてないわ」

穂乃果 「そうでしたか……」

絵里 「でも気を利かせてくれてありがとう」

花陽 「いえ、そんな……」

凛 「とすると急に居なくなったルシウスさんって人、何者だったのかな?」

ことり 「そ、そろそろ午後のステージの準備しよ!」

希 「そうやね、みんな屋内プールに移動しよか」



70 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/04(日) 00:00:32.24 ID:RwFevcLW0
ルシウス (ハッ! 戻ってきたのか……)

山賊の頭 「あら? ……こいつ生きてるわ」

山賊B 「おめえあんなに長い間湯の底に沈んでてよく死んでねえなあ」

ルシウス 「私に案がある!」

山賊の頭 「案? ……どんな?」

ルシウス 「皆が平和に暮らせる案だ!」



73 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/04(日) 18:16:48.19 ID:RwFevcLW0
山賊B 「このおみやげたったの1アスです!」

山賊A 「おっ! 親分!」

山賊の頭 「おおー、お前か。忙しそうだな」

山賊A 「いやー繁盛してますよ。例の野郎が何度も味見して作った変なスープと蒸し料理、客にバカ受けっスよ、ワハハハ」

山賊の頭 (みんな堅気になって喜んでる……ルシウスよ、貴様にゃ感謝してるぜ!)

山賊の頭 (でもよ、俺の仕事が羊と駱駝の牧畜って何なんだよ……いくら一緒に飼ってもキメラなんて産まれねえよ)



75 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/04(日) 18:43:26.48 ID:RwFevcLW0
セルギアヌス 「お忍びで様子を見に来れば……暗殺どころか奴め、こんな快適な街なぞ作りおって……」

セルギアヌス 「計画は大失敗だ!」

アッティリアヌス 「まあまあもう良いではないか……いずれまた機会も来よう、セルギアヌス殿」

セルギアヌス 「私はどうもあのモディストスという男を甘く見ていたようだ……クッ!」

セルギアヌス (おのれ……このままでは済まさぬぞ)



76 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/04(日) 18:57:54.39 ID:RwFevcLW0
マルクス・ウェルス(後のマルクス・アウレリウス・アントニヌス) 「それにしても……」

マルクス・ウェルス 「手強い山賊をも集めて働かせてここに温泉の村を築くとは、さすがハドリアヌス陛下が気に入られるだけのことはありますね」

ルシウス 「いえ、ここに村を建設出来たのはマルクス・ウェルス様がお連れになった大勢の兵によって確保出来た労働力と……」

ルシウス 「湯の力です!」

マルクス・ウェルス 「ところでルシウス技師、気になることがあるのですが。あの奥のララリウム(祭壇)に置かれている……」



祭壇に置かれし『にこにー』フィギュア



マルクス・ウェルス 「あれは一体何なのですか?」

ルシウス 「神です!」

ルシウス (本当はアマゾネスにとっての女神像だろうが、それを話したらローマ人の祭壇には飾れなくなる)



77 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/04(日) 19:10:17.80 ID:FTG5UwNDO
テルマエロマエっぽい
よいぞ



78 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/04(日) 19:11:54.52 ID:RwFevcLW0
教師 「小泉さん、これどこで手に入れたの?」

花陽 「貰ったんです」

教師 「そう……。先生ね、教職以外に学芸員の資格も持ってるんだけど……これ古代ローマの古銭ね」

花陽 「古代ローマですか?」

教師 「ほら、ここにラテン語で『ハドリアヌス』って当時の皇帝の名前が書いてあるの。2世紀の古銭よ」

花陽 「2世紀……そんな昔のお金……」

教師 「極めて保存状態が良いわ、多分売ったら軽く1万円は超えるでしょうね」

花陽 「1万! ……そんなに」

花陽 (学食1回奢っただけでそんなに! そして……)

花陽 (ルシウスさん、どうして古銭を食券の自販機に使おうとしたんだろう?)



83 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/05(月) 22:37:25.10 ID:z6Rk4aSk0
ルシウス (パンノニア提督にして次期皇帝候補ケイオニウス様からの依頼)

ルシウス (駐屯地でも楽しめるテルマエという要望に応えるべく自宅に作ったこの簡易式木製テルマエだが……)

ルシウス (こうして浸かってみると我ながら良い出来だ)

ルシウス (これで実用に耐えうることは分かった。明日にでも船か馬車でパンノニアに送ってもらおう)

ルシウス (そろそろリウィアが外出先から帰宅する頃だし風呂から上がるか)

ルシウス (仕事で家を空けることが多かったからな、妻リウィアへの贈り物も用意したし……)

ズルッ

ルシウス (足が滑った!?)

ドボオン!

ゴポゴポゴポゴポッ



84 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/05(月) 22:47:35.08 ID:z6Rk4aSk0
絵里 「オープンキャンパスの結果、廃校を一時保留にして学校の存続を検討し直すってことになったわ」

亜里沙 「良かったね、お姉ちゃん」

絵里 「まだ油断は出来ないわ」

亜里沙 「そうなんだ……」

亜里沙 (昔はお姉ちゃんとお風呂に入ると一緒に湯船に浸かってたけど、流石に今は一緒に浸かるには私達も身体が大きくなった)

亜里沙 (お姉ちゃんがこっちに背中を向けて髪を洗っている間に私がこうして湯船に浸かっている)

亜里沙 (私が洗う番になったら今度はお姉ちゃんが浸かる。入れ違いだ)

亜里沙 (仮に音ノ木坂が存続したとして来年私がそこに入学出来たとしてもその時お姉ちゃんは……)

亜里沙 (入れ違いか……)

ゴポゴポゴポッ

ザパアッ! 

ぺちっ

亜里沙 (ほっぺたに何か当たった!?)

ルシウス 「ぷふアッ! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

ルシウス (これは……狭い室内にテルマエ!?)

亜里沙 (何、この人!?)

ルシウス (この少女……?)





ルシウス (ゲルマン!?)



86 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/05(月) 22:57:09.64 ID:z6Rk4aSk0
亜里沙 (こっちに背中向けて髪洗ってるお姉ちゃんはまだ気付いていない……。心臓がバクバクする。声が出ない……)

ルシウス (何だこの狭苦しいテルマエは……)

亜里沙 (それに想像つくけど、想像したくないけど、さっきわたしのほっぺたに当たったのって……)

亜里沙 (この人の……お…おちん……)

亜里沙 「キャアアアアアア!」

絵里 「ヒィッ!?」

絵里 「亜里沙ッ!? いきなり大き……な……声……」

ルシウス 「……」

絵里 (うちの風呂に見知らぬ男が……?)

絵里 「キャアアアアアアア!」

ルシウス 「いいかげんにしろ!」



89 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/06(火) 08:31:33.61 ID:x/Q44lHkO
とんだ変態さんじゃあないか



91 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/08(木) 00:21:25.38 ID:0zk2rLv80
ルシウス 「いきなり入って来たのは悪かったが私は怪しい者ではない」

亜里沙 「お姉ちゃん……」

絵里 「亜里沙、こっちよ!」

絵里 「この覗き魔め……」

亜里沙 (お姉ちゃん、垢すりの布を持って何を……)

ビシィッ!

ルシウス 「痛ッ!」

ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! 

絵里 「変態ッ、覗きッ、犯罪者!」

亜里沙 (濡れた垢すりをムチのように使って男を叩いてる)

ルシウス (所詮は狭い奴隷風呂にしか入れない蛮族か、風呂で騒ぎおって)

ガシッ!

絵里 (垢すりを掴まれた!)

ルシウス 「この蛮族め!」

グィッ!

絵里 (引っ張られる!)

ドン! ドボン!

亜里沙 「お姉ちゃん!」

亜里沙 (勢い余ってお姉ちゃんが裸の男とぶつかって一緒に湯船に!)

ゴポゴポゴポ

絵里 (今度は吸い込まれる!?)

絵里 「亜里沙!」

亜里沙 「お姉ちゃん、捕まって!」
 
ガシッ!

亜里沙 「うわっ!」

バシャア!

亜里沙 (私も落ちた!?)

ゴポゴポゴポゴポゴポ

ルシウス (また潜る羽目に……あれは水面?)



92 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/08(木) 00:33:29.14 ID:0zk2rLv80
ルシウス 「ぶぷあっ!」

絵里 「ぶぷあっ!」

亜里沙 「ぶぷあっ!」

ルシウスと絵里と亜里沙 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

リウィア 「貴方、あまり根を詰め……」

リウィア 「……」

ルシウス 「ハァ、ハァ……リウィア」

リウィア 「さっき帰宅したんだけどどういうことか説明して」

ルシウス 「……」

リウィア 「あなたと混浴してるその若い娘達について」

ルシウス 「!」

ルシウス 「待ってくれ、これは誤解だ!」

リウィア 「次期皇帝候補の依頼とかいって自宅に小さいテルマエを造るなんておかしいと思っていたらこういうことだったのね」

ルシウス 「このテルマエは本当に仕事の――」

リウィア 「夜に私の相手をしてくれなかったのも、その小娘達に色々絞り取られていたからでしょ!」

ルシウス 「本当に違うんだ!」

リウィア 「実家に帰らせて貰うわ」

ルシウス 「待ってくれ!」



94 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/08(木) 06:41:29.11 ID:BfhT92+AO
アカン



95 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/11(日) 01:12:35.60 ID:3OZHSVrQ0
亜里沙 「私達取り残された?」

絵里 「ええ……。あの人達修羅場だったようね」

亜里沙 「うん、言葉はわからなかったけど。それよりここはどこかな?」

絵里 「さあ……」

ゴポゴポゴポゴポ

絵里 (また!?)

亜里沙 (溺れる!?)

ゴポゴポゴポゴポ



96 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/11(日) 01:22:41.91 ID:3OZHSVrQ0
絵里 「その後また風呂で溺れて気がついたら私も亜里沙も家の風呂に戻ってたの」

希 「えらいスピリュアルな話やね」

絵里 「本当よ、信じてないでしょ!?」

希 「うちは信じるよ、エリチがそういう冗談言うとは思えへんし」

絵里 「もう……、顔が笑ってるわよ」



104 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/19(月) 19:28:59.36 ID:HQOPcSBt0
マルクス 「ルシウース、おーい。オレだ、マルクスだ!」

マルクス (テルマエに誘おうとルシウスの家まで来たのはいいが……おかしいな……奴隷も出て来ないなんて。まさか引っ越しでもしたのか……?)

マルクス 「あれ? 鍵が開いてる!?」



105 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/19(月) 19:42:17.92 ID:HQOPcSBt0
マルクス 「うっ……酒臭ェ……。……何が起きたんだ一体……!?」

ルシウス 「……う……リウィアか……?」

マルクス 「ルシウス! おっお前!? どうしちゃったんだようッ」

ルシウス 「リウィアが家を出て行った……」



106 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/19(月) 19:58:25.76 ID:HQOPcSBt0
マルクス 「自宅で女と混浴してたところを見られた……流石にそれはマズかったんじゃねえか?」

ルシウス 「私だって望んだことではない。何というか……そういう事態に巻き込まれたのだ」

ルシウス (マルクスに事の経緯をうまく説明出来なかった。『気がついたら見知らぬ世界のテルマエに居るときがある』と話す訳にもいくまい……)

マルクス 「まあ、男にはその気が無くてもつい……ってことがあるからな」

ルシウス 「でもその娘達には決して手を出していない!」

マルクス 「娘達って……一人じゃなかったのか?」

ルシウス 「……ああ」

マルクス (羨ましいというか何というか……本来生真面目なルシウスがなぁ……ん?)

マルクス 「ルシウス、この布は?」

ルシウス 「それか……あの女の腰布だろう」

マルクス 「腰布って……これ目が粗いしスケスケだぞ。……なあ、ルシウス」

ルシウス 「何だ?」

マルクス 「その娘達ってのは美人なのか?」

ルシウス 「ああ、二人共若くて美しいゲルマン娘だった。だが私にとっては悪夢だ……」

マルクス 「……この布、貰ってもいいか?」

ルシウス 「ああ、好きにしろ」

マルクス 「それじゃ、頂くぜ」

マルクス 「今回のことは、カミさんの怒りが少し収まったところで連れ戻しに行けばいい! な! その時は俺も行くから!」

ルシウス 「ああ……」

マルクス (ルシウス、立ち直ってくれよ……)



107 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/19(月) 20:09:46.82 ID:HQOPcSBt0
亜里沙 「久しぶりだね。家でお風呂に入るの」

絵里 「そうね……」

絵里 (しばらく私と亜里沙は銭湯を利用していた。あの日起きたことは夢だと思いたかったが、垢すりの布が無くなってたことが、あれが夢では無いことを物語っていた)

亜里沙 「大丈夫だよ、防犯グッズも買ったし」

絵里 「そうよね……」

絵里 (これからラブライブの予選も始まるし、亜里沙の為にも、私がいつまでも不安がってちゃ駄目)



109 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/22(木) 23:29:49.57 ID:L7N9XX4J0
真姫 (現在ランキングで私達は比較的上位にいる)

花陽 (このライブが成功すれば……)

凛 (きっとラブライブに出場出来る!)

穂乃果 (身体がだるい……まだライブ中なのに……)

穂乃果 「ウウッ……」

バシャッ ブクブクブク

海未 「穂乃果!?」

海未 (穂乃果が沈む!?)

ことり 「穂乃果ちゃん!?  しっかり!」

ことり (支えないと溺れちゃう!)

絵里 「穂乃果、大丈夫!? ハッ! 凄い熱……」

絵里 (こんなコンディションでプールでダンスしたら……)

穂乃果 「次の曲……せっかくここまで……来たんだから……」

観客A 「どうした?」

観客B 「倒れた?」

観客C 「大丈夫……?」

絵里 「すみません。メンバーにアクシデントがありました。少々お待ち下さい」

雪穂 「お姉ちゃん!」

雪穂 (ライブ観に来たらこんなことになるなんて……)

にこ 「続けられるわよね? まだ諦めたりしないわよね!? ねぇッ!」

希 「穂乃果ちゃんは無理や」



110 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/22(木) 23:43:51.71 ID:L7N9XX4J0
真姫 (穂乃果がライブ中に倒れてμ'sが今回のラブライブへの出場を断念してからギクシャクしてる)

絵里 「じゃあ穂乃果はどうすればいいと思う。どうしたいの? ……答えて」

穂乃果 「辞めます。……私……プールアイドル辞めます」

希 「穂乃果ちゃん……」

パシィン!

穂乃果 (痛ッ!)

海未 「あなたが、そんな人だとは思いませんでした……」

凛 (ぶたれた穂乃果ちゃんも痛かったろうけど……)

花陽 (ぶった海未ちゃんも心が痛かった筈……)

にこ (ただでさえことりが居なくなるってのに……)



111 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/22(木) 23:54:04.01 ID:L7N9XX4J0
絵里 「正直、穂乃果が言い出さなくてもいずれこの問題にはぶつかっていたと思う。来年までだけど学校が存続することになって……」

絵里 「私達は何を目標にこれから頑張るのか考えなきゃいけない時が来ていたのよ」

希 「そうやね。ひとまず廃校を阻止出来たといっても穂乃果ちゃんがプールアイドル辞めてもうてμ'sは活動休止」

希 「仮に穂乃果ちゃんが辞めてなくてもことりちゃんが海外留学する時点で衣装作りの問題が詰んどる」

絵里 「お得意のカードは何か告げてる?」

希 「えりちもうちのカードを当てにするようになった? この前は水難って言うたら風呂に変態が現れたし結構的中やろ?」

絵里 「もう! その話はしないで。それより今後のことを占って欲しいのよ」

希 「今下校中やから、明日部室でえりちの前でやるよ」

絵里 「お願い」



112 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/23(金) 00:00:51.71 ID:8gDkT1O50
希 「……」

絵里 「どう?」

希 「塔のカードが出とる。トラブルの発生は免れんやろなあ」

絵里 「例えば?」

希 「高所からの転落」

絵里 「ストレート過ぎるわよ」

希 「でも悪いことばかりやないよ。逆向きの女帝のカードが何なのかは予想し難いけど、太陽のカードが穂乃果ちゃんだとしたら……」

希 「案外丸く収まるかもしれんよ」



114 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/25(日) 14:34:24.55 ID:xryHp6yi0
子供A 「キャハー」

子供B 「プハー」

子供C 「ハハハハハ!」

アポロドトス 「……最近やたらと浴場の中の子供の数が増えたような気がするが……争いごともない分、人口もどんどん増えとるということじゃ……」

アポロドトス 「ただこういつも子供に騒がれてばかりいるとこっちはなかなかくつろげんしのう」

ルシウス 「子供の入浴時間に制限を設けるというのはどうでしょう?」

アポロドトス 「ハドリアヌス帝が混浴を禁止して以来男女の時間帯も分けられているのに、その上更に子供の時間帯まで区切られてしまうとなると……」

アポロドトス 「不便じゃのう……」

アポロドトス 「……いっそ同じ浴場施設内に子供も楽しめるような浴場があればいいのかもしれんが……」

ルシウス (この世界で大先輩にあたる天下のアポロドトス技師をも悩ませる問題。子供の人口が増加する今のローマに必要なのは子供が楽しめる浴場だ!)



115 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/25(日) 14:49:48.45 ID:xryHp6yi0
子供 (よしっ、助走を付けてから風呂の中に飛び込むぞ!)

ルシウス (そうだ! ……彫刻の代わりに子供が楽しめる何かを設置して……)

スクッ

子供 (おじさんが急に立ち上がった!?)

ゲシッ!

ルシウス 「わッ!?」

バシャーッ!

ゴポゴポゴポゴポ



116 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/25(日) 15:08:11.76 ID:xryHp6yi0
穂乃果 「次、スライダー行ってみようよ!」

雪穂 「うん!」

穂乃果 (最近μ'sの活動で忙しかった。こうして雪穂と遊ぶのも久しぶり)

穂乃果 (プールアイドルは辞めたけど、もう学校は存続することになったし、こうして家族との時間も増える)

穂乃果 (いくら練習しても今回優勝したA-RISEには勝てっこないし、後は好きなことをやって残りの高校生活を楽しめばいい)

穂乃果 (好きなことか……)

雪穂 「お姉ちゃん!?」

穂乃果 「何?」

雪穂 「あれ見て! あの男の人素っ裸だよ!?」

穂乃果 (あの人、まさか!?)



117 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/25(日) 15:21:50.58 ID:xryHp6yi0
ザッパッ

ルシウス 「プハ、ハーッ、ハッ」

ルシウス (ここは……滝だ!)

ルシウス (なっ……何なのだこれはッ!? 湯だとッ!?」

ルシウス (傾斜のある水路上に湯が流されていて、そこを平たい顔族が滑り落ちてくる……)

プール監視員A 「脱げちゃいましたか? このバスタオル巻いて下さい」

ルシウス (大きな布を渡された。……そう言えばここは何故か皆全裸ではないな……。これで体を覆えということか)

プール監視員A 「しばらくその格好でお願いします。それでは水着探しますね」

ジャボン!

ルシウス (男が潜っていった……)

穂乃果 「ルシウスさん」

ルシウス 「以前出会った弓の素人の娘……」

女性客A 「あの人さっきまで真っ裸だったわよ!?」

女性客B 「やだーッあの男の人、水着着てないッ!」

雪穂 「お姉ちゃん、皆見てるよ」

穂乃果 「ルシウスさん、こっちへ」

雪穂 (お姉ちゃんが知らない外人さんの手を引いてる)



120 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/27(火) 00:49:43.93 ID:taD2SiPH0
穂乃果 「ここまで来れば大丈夫かな、よっと!」

ジャブン!

ルシウス (この堀のようなテルマエは……)

穂乃果 「こんなところで会うなんて奇遇ですね。ルシウスさん」

穂乃果 (オープンキャンパスの次は温泉遊園地かあ)

ルシウス (依然言葉は分からないが私に対して友好的だ。以前出会ったゲルマンとはえらい違いだ)

雪穂 「お姉ちゃん、この人は?」

穂乃果 「この人はルシウスさんっていってオープンキャンパスの時に学校に来てたの」

雪穂 「そう」

穂乃果 「花陽ちゃんが言ってたんだけど、学校で飼ってるアルパカさんのお世話を手伝ってくれたんだって」

雪穂 「そうなんだ」

雪穂 (中年のオジサンが女子高のオープンキャンパスに?)

穂乃果 「ルシウスさん、紹介します。妹の雪穂です」

雪穂 「Nice to meet you. I am Yukiho Kosaka. I'm her younger sister.」

ルシウス 「……」

雪穂 「英語、通じないみたいだね」



121 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/27(火) 01:02:54.90 ID:taD2SiPH0
雪穂 「流れるプール久しぶりだったね、お姉ちゃん」

穂乃果 「うん、そろそろスライダーに戻っても大丈夫かな」

ルシウス (このような発想があったとは……)

ルシウス (円環状につながった堀のようなテルマエの中で大勢の入浴客が同じ方向にグルグル移動すれば大きな水流が起きる)

ルシウス (輪になったテルマエでその流れに身を任せながら回遊する、流れるテルマエ……)

ルシウス (しかも唯の真円ではなく緩やかに蛇行させて飽きさせないようにしている)

雪穂 「お姉ちゃんスライダーやりたいの?」

穂乃果 「うん、やりたい! 雪穂も一緒に滑ろうよ」

雪穂 「うん」

穂乃果 「ルシウスさんも行こう!」



122 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/27(火) 01:38:52.29 ID:taD2SiPH0
プール監視員B 「はーい3人ずつ1列に並んで下さい。前の人との間隔を十分に取ってから滑って下さい」

雪穂 「お姉ちゃんこういうの好きだよね」

穂乃果 「うん、ワクワクする!」

ルシウス (叫び声を上げながら平たい顔の子供がとめどなく下に滑り落ちていく……もしやこれは精神力を鍛える為の装置なのではないだろうか!?)

ルシウス (かつてスパルタでは子供に過酷な修行をさせて国力増強を計っていたが……この国ではどうやら湯を使って子供を鍛えているのかもしれぬ)

ルシウス (この湯滑りの修行でどれだけ精神力が高められるのか試してみようではないか!)

ズルッ

ルシウス 「!?」

バシャー

雪穂 (フライング!?)

穂乃果 「ルシウスさん、早い、早いよ。雪穂、私達も行こう!」



125 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/28(水) 00:12:16.09 ID:kX6ibVEj0
穂乃果 「ヒャッホー、ハハハハハ!」

雪穂 「ヒャー! キャー!」

ルシウス 「FER MIHI AUXILIUMI!(助けて!)」

ブン ドボーン!

ゴポッ

ルシウス 「プファッ! ハァッハァッ」

ルシウス (怖いが、愉快だ!)

穂乃果 「ルシウスさんこっちこっち! そのままそこにいると次の人が来ちゃうよ!」



126 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/28(水) 00:25:36.28 ID:kX6ibVEj0
ルシウス (少し離れてこうして見ると、子供も大人も楽しそうに滑り降りている)

ルシウス (湯滑りのテルマエを造り、それを囲むように流れるテルマエを巡らせる。これはローマ市民に確実にウケる!)

ルシウス (しかし高いところにあるあの黒い大きな板は何なのだろう?)

穂乃果 「楽しいね!」

雪穂 (お姉ちゃん凄く楽しそう……ここに連れてきて良かった)

雪穂 (元々人懐っこいお姉ちゃんが、それこそ言葉も通じない一回会っただけの外人さんにも屈託無く笑顔で話しかけるようなお姉ちゃんが……)

雪穂 (μ'sの皆と一緒にアイドル活動出来なくなって寂しくない訳が無いんだ)

雪穂 (これで少しでも元気になってくれれば……)



127 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/28(水) 00:34:37.78 ID:kX6ibVEj0
バン!

雪穂 「オーロラビジョン……」

穂乃果 (オーロラビジョンが点いた)

ルシウス (板が光った!?)



128 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/28(水) 00:51:43.52 ID:kX6ibVEj0
番組司会者 「今、話題のプールアイドル。その頂点を決めるプールアイドルの祭典がラブライブです。先日行われたその第一回大会で見事優勝された人気プールアイドル……」

番組司会者 「A-RISEの皆さんをスタジオにお招きしています! よろしくお願いします!」

A-RISE一同 「よろしくお願いします!」

番組司会者 「栄えある初代チャンピオンということで……おめでとうございます」

A-RISE一同 「ありがとうございます」



129 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/28(水) 01:00:27.19 ID:kX6ibVEj0
雪穂 (よりによって何て映像が流れるの!)

女性客C 「キャー、A-RISEよ!」

女性客D 「カッコイイー!」

穂乃果 「……」

雪穂 (お姉ちゃん落ち込んじゃった……)

ガシッ

穂乃果 (掴まれた!? ルシウスさん!?)

ルシウス 「教えてくれ!」



131 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/28(水) 23:24:36.90 ID:ANrN+AiG0
ルシウス 「さっきまで黒かったあの大きな板が光ると同時に中に人が入っていた」

ルシウス 「どういう仕組みになっているのだ……!?」

ルシウス 「あれはどんな装置なのだ!?」

穂乃果 「い、痛い!」

雪穂 「おじさん!? ちょっと止めて!」

ルシウス 「ハッ! ……すまない、つい力が入って」

ルシウス (言葉が分からないがこの娘が間に入って我に返ることが出来た)

雪穂 「お姉ちゃん大丈夫?」

穂乃果 「大丈夫……、ちょっと肩掴まれただけだから」

雪穂 「もう、一体何なの……」

ルシウス 「……」

雪穂 (おじさんが跪いてる)

ルシウス (何ということだ……)

ルシウス (技術なのか、それとも奇術なのか……このような物はローマにはない……私の誇るべきローマには……)



132 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/28(水) 23:35:05.05 ID:ANrN+AiG0
穂乃果 「どうしちゃったのかな?」

穂乃果 (今度は俯いて体育座りしてるし、少なくとも落ち込んでるのは分かる)

雪穂 「お姉ちゃん、ひょっとしてこの人μ'sのファンじゃない?」

穂乃果 「まさか」

雪穂 「さっきオープンキャンパスでこの人に会ったって言ったよね。女子高のオープンキャンパスに男の人って普通来ないよ」

雪穂 「A-RISEの映像が映ったのを見て、さっきお姉ちゃんに言ったんじゃない? 『あの映像を見ても何も思わないのか? 悔しくないのか?』って」

雪穂 「この人日本語分からないし、きっと日本に来て日が浅いんだと思う。そんな人がμ'sの追っかけしてたんだよ」

雪穂 「外国から来た人も魅了するだけのものをお姉ちゃん達は持ってるんだよ」

穂乃果 「でももうプールアイドル辞めたから」

雪穂 「お姉ちゃんを応援してくれてたのは身近な人だけじゃない。ファンの人達だってそう。この人は大勢のファンの一人」

雪穂 「お姉ちゃんが辞めて、こうして悲しんでいる人が他にも大勢いるんだよ」

穂乃果 「……」

雪穂 「お姉ちゃんがどうしてもμ'sに戻るのはイヤだって言うのなら無理強いは出来ない。でも……」

雪穂 「戻りたいという気持ちが少しでもあるのなら、ルシウスさん達のことも考えてあげよう」

穂乃果 「雪穂……」



135 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/30(金) 22:36:39.24 ID:s23GAmiB0
絵里 「ごめんね、突然お邪魔して」

穂乃果 「いえ、お気になさらず。今お茶を」

絵里 (穂乃果の自宅を訪ねたけど、思ったより元気そうね)

穂乃果 「そうだ、お茶を淹れたら聞いて欲しい話があって」



136 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/30(金) 22:46:21.60 ID:s23GAmiB0
絵里 「そう、そんなことが」

穂乃果 「私、その時初めて本当に自分のファンを意識したんです」

穂乃果 「決して自惚れじゃなくて。アイドルを続けて人気が出てきたらファンが増える訳で、でもその人達のことを今まで真剣に考えたことが無かった」

穂乃果 「勿論応援してくれることは嬉しいし感謝もしてる。でもこれまでプールアイドルやってきたのは学校の為、ラブライブの為で……ファンのみんなのことはあまり考えてなかった」

絵里 「私もよ」

穂乃果 「絵里ちゃん……」

絵里 「私は日本に来る前にシンクロをやっていて……その時続ける上で感謝する相手は家族、チームメイト……コーチ。そして友達」

絵里 「ただ競技者としてやっている間、ファンのことは意識していなかった。レギュラーを決めるのはコーチ、試合で採点するのは審判であってファンではない」

絵里 「プールアイドルやるようになって観客の皆を意識してダンスするようになってはきたけど、ライブ以外にファンと交流する場も無かったし、穂乃果と同じよ」

穂乃果 「お互い気付くのが遅かったね」

絵里 「遅くなんかない。今気付いたのならこれからでも――」

穂乃果 「言わないで」

絵里 「穂乃果」

穂乃果 「今更虫が良過ぎるとは思うけど、考えさせて欲しい」

絵里 「分ったわ。あのとき見たいに直ぐに答えなくてもいい。ゆっくり考えて」

穂乃果 「ありがとう」

絵里 「私もそのルシウスさんって人に会ってみたいわ……」



137 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/30(金) 22:58:05.20 ID:s23GAmiB0
穂乃果 「私好きなの、歌うのが。それだけは譲れない。だから……ごめんなさい!」

穂乃果 「でも! 追いかけていたいの!」

海未 「私が怒ったのは穂乃果がことりの気持ちに気付かなかったからじゃなく、穂乃果が自分の気持ちに嘘をついているのが分かったからです」

穂乃果 「ことりちゃん、行かないで!」

ことり 「私の方こそごめん。私、自分の気持ち分かってたのに……」

絵里 (穂乃果もことりも戻ってきた。これで再びみんなで……)

花陽 「全員再集合してからの初ライブ、緊張する……」

凛 「それより凛達スクール水着のままだよ」

真姫 「高校生らしくていいんじゃない」

希 「じゃあ、全員揃ったところで部長、一言」

にこ 「ええっ!? なぁーんてね。ここは考えているわ」

にこ 「今日皆を一番の笑顔にするわよ!」

穂乃果 (『今日皆を一番の笑顔にする』か……)

穂乃果 (凄いよにこちゃん。にこちゃんは最初から分ってたんだね。ライブを観に来てくれた皆を笑顔にする。ファンのみんなを意識したステージにする)

穂乃果 (この人は心底アイドルが好きだから、自分もアイドルに憧れてきたから……ファンの望むことが分かるんだ)

穂乃果 (大分遅れちゃったけど、穂乃果も同じ様になろう)





雪穂 (こうしてお姉ちゃんはプールアイドルを続けることになった)

雪穂 (あの日のルシウスさんの姿がお姉ちゃんの決心にどれだけ影響を与えたかは分からない)

雪穂 (ただ、あの後突然姿を消したルシウスさんがお姉ちゃんのライブを見てくれてることを私は信じている)



138 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/30(金) 23:12:18.30 ID:s23GAmiB0
ルシウス (あの光る黒い板は再現出来なかったが、滑り湯と流れるテルマエは造った。問題は……)

ケイオニウス 「まず私が最初に滑ると言ったであろう」

法務官 「いや、次は私の番の筈です!」

将軍 「違いますよ法務官殿、あなたはもう2度もお滑りになったでしょ!?」

子供A 「お父様ばっかりでずるいよう!」

子供B 「子供はずっと流れるテルマエしか入れないの?」

ルシウス (このようなことになるとは! 私だって明日のローマを思って全力を尽くしたのだ!)

マルクス・ウェルス 「そのように思いつめた顔をしなくても心配には及びませぬよ、ルシウス技師」

ルシウス 「マルクス・ウェルス様!」

マルクス・ウェルス 「大人達も十分童心に帰ったらそのうち飽きてくることでしょう。それまで待てばいいだけの話です!」

ルシウス (な……何とできたことを……!)

ケイオニウス 「誰だッ! こっちで順番を決めている間に勝手に滑っているのは!?」

ジャバーッ

アポロドトス 「こりゃ愉快じゃあーっ」




143 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/10(月) 20:54:55.10 ID:Ajl3tDvj0
司会 「μ'sの皆さんでした。盛大な拍手を!」

観客 ワーッ、パチパチパチパチ

μ's一同 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

穂乃果 (地区大会決勝……)

真姫 (私達のステージが終わったわ)

希 (やれるだけのことはやった……)

花陽 (まだ歌ってないのは残り1組、優勝候補筆頭……)

にこ (A-RISE!)



144 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/10(月) 21:08:26.96 ID:Ajl3tDvj0
にこ 「もう! 着替えてからじゃないと会場の出場者席に戻れないって何なのよ!」

ことり 「仕方ないよ。濡れた身体のままシートに座る訳にいかないし」

花陽 「早く着替えないとA-RISEのステージが始まります」

にこ 「万が一の時はここで視聴するわよ」

絵里 「ワンセグ?」

ムニュ

希 「ここ(女子更衣室)で見るの?」

ムニュ

にこ (二人して両脇から覗き込まないでよ!)

凛 (にこちゃん挟まれてる)

穂乃果 (か、格差が……)

にこ 「あれ?」

花陽 「どうしたの?」

にこ 「『しばらくお待ち下さい』ってこの画面……」

希 「まるで放送事故やん」



145 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/10(月) 21:37:30.16 ID:Ajl3tDvj0
にこ 「間に合った」

海未 「私達のステージが終わってから多少時間がかかっているのが気になりますが……」

絵里 「どうしたの、希? キョロキョロして」

希 「えりち、会場の雰囲気なんかおかしくない?」

にこ 「確かにこれからトリのA-RISEの出番にしては盛り上がってないわね」

海未 「私達が歌い終わった直後はもっと盛り上がってました」

ことり (盛り上がるどころか騒然としてる)

花陽 「何かあったのかな?」

真姫 「そろそろ始まるみたいよ」



146 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/10(月) 21:53:52.09 ID:Ajl3tDvj0
絵里 (一体何があったの? 動きに余裕が無い)

穂乃果 (笑顔で歌ってるけどどことなく表情が硬い)

凛 (今、一人だけ振り付け間違えた)

花陽 (A-RISEのこんな姿を見るなんて)

にこ (ウソ、今歌詞間違えたわよ!?)

海未 (気の毒ですが、これでA-RISEの優勝は……)



147 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/10(月) 22:24:21.48 ID:Ajl3tDvj0

ツバサ 「みんな、悔いは残るかもしれないけど……」

英玲奈 「本来の力を出せたらこんなことには……」

ツバサ 「本番で力を発揮できるかどうかも実力のうちよ」

あんじゅ 「でもおかしいわ」

あんじゅ 「歌う直前に完全にフリチ○の男が突然プールから飛び出して来るなんて」

英玲奈 「あれのせいで大きくペースが狂った。いくら仕切り直しさせてくれたといっても、おいそれと平常心には戻れない」

英玲奈 「正式に抗議した方がいいと思う」

ツバサ 「抗議しようにも犯人は行方不明。個人の意思か誰かの差し金かも分からない」

ツバサ 「私だってこんな終わり方納得出来ない」

ツバサ 「でもせめて潔く勝者を称えましょう」



この日、μ'sは初めてA-RISEに勝利した。



149 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 21:19:36.55 ID:y7YEP7s7O
ルシウス (今度は直接パンノニアに赴いてケイオニウス様の為のテルマエ造りか……)

ルシウス (特に今のような冬場に寒冷地パンノニアでの入浴となると、湯につかるだけでは侘しいのも分かる)

ルシウス (だからこそ、袋に道具一式を詰め、辺り一面雪景色の山道を護衛の兵と共に歩いているのだ)



150 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 21:34:18.35 ID:y7YEP7s7O
ルシウス (どこまでも続く雪道……。この前迷い込んだ平たい顔族の派手なテルマエとは対象的だ)

ルシウス (あのテルマエで見た眩いばかりの色とりどりの灯り、あれはどうやって灯しているのか?)

ルシウス (そしてあの時入浴中の3人の娘達を、私は以前湯滑りのテルマエで見ている)

ルシウス (忘れもしない。謎の光る黒い板に入っていた娘達だ。まるで奇術師……そうか!)

ルシウス (きっとあの娘達は奇術師で、テルマエにて客に奇術を披露していたのだ。着衣で入浴していた時点で身体を洗ったり疲れを取ったりする為の入浴でないことは明らか)

ルシウス (そしてテルマエが混んでいないにもかかわらず、服を脱ぎもせずに彼女達の前に集まっていた大勢の人間は、奇術を見に来た観客だったのだろう)

ルシウス (だから私が突然テルマエに現れた時に皆怒っていたのだ)

ルシウス (しかし今更ローマに引き返して奇術師を探す訳にもいくまい。それに駐屯地で都市部のような豪勢なテルマエ造りは望めまい)

ルシウス (以前ヴェスビオスで作った温泉村は帝国の中心部に近く観光収入が見込めるから建設と維持が可能な訳で、国境近くで蛮族との戦いに明け暮れるこの地でそれは難しいだろう)



151 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 22:05:15.85 ID:y7YEP7s7O
ルシウス (それでも少しでも力になりたい。ケイオニウス様からの書状には『体力が日に日に衰える』と書かれていた)

ルシウス (帝国が私を必要とするなら家庭の不和があっても仕事を続けよう)

ルシウス (……)

ルシウス (それでは以前の私と何ら変わらないではないか。今の私ではリウィアを連れ戻すことは……)

ズルッ

ルシウス (うわっ!)

ズササササアアッ!

兵士A 「ルシウス殿!?」

兵士B 「ルシウス殿が滑落したぞ!」



152 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 22:16:43.11 ID:y7YEP7s7O
タッタッタッタッタッタッタッタッ

ルシウス (止まれ、止まれ!?)

ルシウス (この下り坂はどこまで続く? 今、足を止めたら転倒する)

ルシウス (しばらく走り続けるしかないのか?)

ブワッ

ルシウス (宙に浮いた!?)

ドッポーン!

ゴポゴポゴポゴポ



154 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 20:57:37.73 ID:Fsy3wms3O
真姫 (この露天風呂から上がったら湯冷めにしないように気をつけなくちゃ。だって今日は年に一度の大切な日……)

ザパアッ!

真姫 「何っ!?」

ルシウス 「ぷふアッ! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

ルシウス (ここは……落ちた先に天然の温泉があったのか? 不幸中の幸いだった)

ルシウス (こうしてはおれん。早く合流せねば皆を心配させてしまう)

ルシウス (仕事道具を入れた袋は……あった! 良かった……旅先でこれを無くす訳にはいかない……。ん?)

ルシウス (夕方……先程まではこんなに暗くなかったぞ)

真姫 「……」

ルシウス (平たい顔族……)



155 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 21:13:12.65 ID:Fsy3wms3O
真姫 (振り返った先に居た白人のおじさん、大きな白い袋を背負って、厚手の冬服を着て……)

真姫 (そして今日はクリスマス……)

真姫 「サンタさん!」

ルシウス 「SANTASAN……?」

真姫 「貴方サンタさんでしょ! ひょっとして橇から落ちたの? 大丈……」

真姫 (あ、そういえば私……裸……)

真姫 「キャアッ!」

ルシウス (やはりそうなるか)

ルシウス (この前のゲルマンみたいに暴れられては面倒だ。立ち去るとしよう)

真姫 「待って!」

ルシウス (私の袖を掴んだ?)

真姫 「お願い、少しお話したいの……」

ルシウス 「……」



156 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 21:29:54.26 ID:Fsy3wms3O
真姫 「ここから見えるあの家がうちの別荘……って知ってるよね。サンタさんは毎年プレゼント届けてくれるから」

ルシウス (この前の奇術師は兎も角、平たい顔族は概ね私に対して友好的だが……この娘は特に顕著だ)

真姫 「今年は秋に別荘でμ'sの合宿をやってその時暖炉を使ったんだけど、今はもう煙突と暖炉の掃除終わってるから。サンタさんが煤で汚れないように毎年煙突と暖炉の掃除を前もってしてるのよ」

ルシウス (上目遣いで私の腕に抱きついて話しかけてくる、私が来ている服の生地が厚いとはいえ、僅かに胸の膨らみの感触が……)

真姫 (これでも恥ずかしいんだから……くっついた方が裸見られずに済むし)

真姫 「そろそろ時間ね……サンタさんもう一度うちの別荘を見て」

ルシウス (平たい顔族が指差す先の屋敷……)

真姫 「……ほら、光った!」

ルシウス (……これは!?)



158 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/17(月) 23:22:50.36 ID:klUsEP6rO
真姫 「今年のクリスマスのイルミネーションよ? 発光ダイオードって綺麗よね」

真姫 (サンタさんと二人きりで……露天風呂からクリスマスのイルミネーションを見るなんて……今年のクリスマスは最高だわ!)

ルシウス (何なのだ、あの光は!?)

ルシウス (赤、青、白、緑、色とりどりの明かりが点滅しながらあの屋敷を覆っている!? あの明かりの源は!?)

ルシウス (これが平たい顔族の技術か……。いや、技術だけではない。辺りが閑散とした雪山だからこそ明かりが映えるのだ)

ルシウス (しかし少々派手過ぎないか……。あれではルパナル(娼館)だ)



159 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/18(火) 00:29:26.15 ID:D4lnEk28O
ブッブー!

ルシウス (今の音!? 進軍ラッパ?)

真姫 「クラクション! パパがジャガーで迎えに来てくれたのね」

真姫 「サンタさん、残念だけどここでお別れ」

チュッ

ルシウス 「!?」

ルシウス (私の頬にキスを!?)

真姫 「パパ以外の男の人に初めてしちゃった。毎年プレゼントを貰っているお礼よ。今年もあの別荘で待ってるから!」



160 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/18(火) 00:42:50.23 ID:D4lnEk28O
ルシウス (さっきの娘が私に慣れ慣れしくしていたのはあの娼館の商売女だからか……)

ルシウス (立ち去る直前、最後に私に話しかけながらあの娼館を指差したのは、後で客として館に来て欲しいという意味だったのだろう)

ルシウス (しかし妻との生活がうまくいかなかったショックで今の私は男として無能なのだ。とてもそんな気分には……)

ルシウス (ん、景色が……)



164 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/20(木) 22:03:17.31 ID:0ZtCxIJ9O
兵士A 「ルシウス技師が見つかったぞ!」

兵士B 「川に落ちたのか。ルシウス殿、お怪我は!?」

ルシウス (寒っ! 戻ってきたら川だったとは……)

ルシウス 「大丈夫だ、心配をかけた。それよりテルマエのアイデアが……」




165 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/20(木) 22:15:25.73 ID:0ZtCxIJ9O
ケイオニウス 「言われた通り、以前ルシウス技師が贈ってくれた木の風呂に浸かったが、これからどうしろというのだ」

ケイオニウス (さっき日が落ちたところだ。間も無く真っ暗になると言うのにこんな屋外の丘で……。そしてこの風呂を覆う木の矢倉は何だ?)

ルシウス 「これよりご覧に入れます」

ケイオニウス (ルシウスが松明を振っている、何かの合図か?)

ケイオニウス 「! これは……」



166 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/20(木) 22:29:48.77 ID:0ZtCxIJ9O
ケイオニウス (テルマエを覆う矢倉に兵士達が松明を灯した。矢倉の各所に点火する場所を用意していたのか。明かりに覆われたテルマエ!?)

ルシウス 「これだけではありません」

ケイオニウス 「おお……!?」

ケイオニウス (いつもは侘しく見える駐屯地の建物とその周辺に大量の松明が灯っている。まるで光の宮殿だ……)

ルシウス 「この地で本格的な都市は造れなくても、せめてこれをお見せしたかったのです」

ケイオニウス 「その為にこの小高い丘に……光の宮殿、美しい」

ケイオニウス 「テルマエに浸かりながらこの幻想的な風景を楽しむ、素晴らしい! 礼を言おう」

ルシウス 「勿体無きお言葉」

ルシウス (松明は高価だが、それでも豪勢なテルマエを造るよりは安上がりだし時間もかからない。これでケイオニウス様が少しでも元気になってくだされば……)

ケイオニウス 「後、もう一つ頼みが」

ルシウス 「私に出来ることなら何なりと」

ケイオニウス 「ローマに帰ったら、美しい娘を2、3人この地に寄越すよう手配してくれぬか? この景色をテルマエに入りながら美女と楽しみたい」

ケイオニウス 「パンノニアの娘は田舎臭くていかん」

ルシウス (軟弱な……。平たい顔族の商売女でもあてがってやりたい)



168 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/22(土) 16:37:32.37 ID:OyWouF9pO
穂乃果 「冬休みも学校で練習かぁ……」

海未 「授業が無いこの時期こそ練習に専念するチャンスです!」

真姫 「実は私、週末びっくりするようなことがあったの」

穂乃果 「びっくりするようなこと?」

真姫 「そう! 私、今年のクリスマスで遂に……遂に……」

真姫 「サンタさんの正体を見ちゃったの!」

真姫を除く一同 「……」

真姫 (何、このお通夜みたいな雰囲気……)

穂乃果 「あちゃー……」

海未 「遂に知ってしまったのですね」

凛 「凛は幼稚園で経験したから今の真姫ちゃんの気持ち分かるよ!」

絵里 「いつかこの日が来るとは思っていたけど……」

希 「真姫ちゃん、サンタする側にも事情はあるんよ」

にこ 「そうよ……。今年、虎太郎が薄目で寝た振りしてるのに気付かなかったばかりに……翌朝虎太郎から嘘吐き呼ばわりされたわ」

にこ 「真姫、これだけは覚えておきなさい」

真姫 「何、いきなり?」

にこ 「あんたの家ではどんなだった知らないけど、あんたは家族に愛されてるわ。それだけは絶対に信じること、いいわね」

真姫 「ええ、分かったわ……」

花陽 「良いこというねえ」

にこ 「当ったり前でしょ、何たって部長なんだから」

真姫 (意味分かんないんだけど……?)



169 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/22(土) 17:10:05.73 ID:OyWouF9pO
マルクス 「お前まだカミさんのことから立ち直ってねえのか?」

ルシウス 「マルクス、オレはもうダメだ。妻に逃げられる男などローマ人として失格だ」


ルシウス 「私は妻を愛しているしパンノニアでも一度も商売女には手を出さなかった!」

ルシウス (そして平たい顔族の商売女にも)

ルシウス 「妻は度々子供を私にせがんだが、かえって萎縮してしまって……。子孫を残せない男なんて……私が女でも……お断りだ」

マルクス 「まー確かにガキガキ言われ続けたら萎えるよな……。よし! オレに考えが浮かんだ!」



170 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/22(土) 18:03:29.17 ID:OyWouF9pO
オイテノアのオババ 「まず服を脱いでこのカメの中に入るのじゃ」

ルシウス 「何!?」

マルクス 「カミさんを連れ戻したいんだろ!」

マルクス 「このオイテノアはな、オレの師匠(78歳)が女買う前に必ず寄ってくとこなんだ! だから絶対効き目あるって!」

ルシウス 「そっそうか……よし……」

ルシウス (この薬湯の入ったカメに入るのか。……腰巻だけは着けたままでいいか)

ジャブ

オイテノアのオババ 「この薬湯に頭ごと全身を沈めるのじゃよ!」

ルシウス 「何ッ! ここに全身だと!?」

オイテノアのオババ 「早くッ! 効き目が無くなるッ!」

グイッ

ルシウス 「ごふっ!」

オイテノアのオババ 「わしが良しと言うまで出てはいけぬぞ!」

ゴポポポポッ


※ オイテノア = ブリアポス神の女祭司



173 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 15:51:02.33 ID:g233VfSOO
穂乃果 「みんなおはよう!」

海未 「おはようございます」

ことり 「おはよう、穂乃果ちゃん」

凛 「おはよう」

花陽 「おはよう」

真姫 「おはよう」

にこ 「おはよう、ってあんたが最後よ」

穂乃果 「えーっ、でも時間には間に合ってるよ……って希ちゃんは?」

海未 「希はもう準備に向かいました」

穂乃果 「そっか。絵里ちゃんと真姫ちゃんからはメール来てたけど」

花陽 「大丈夫かな……」

海未 「大勢で押しかけてもかえって迷惑でしょうし、ここは真姫に任せましょう」



174 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 16:10:29.69 ID:g233VfSOO
絵里 「ハァ、ハァ、せっかくの参拝を……台無しにして、ごめ……ゴホッゴホッ」

真姫 「病人なんだから今は自分の心配だけしてなさい。全く、受験生が新年早々インフルエンザなんて絵里も運が無いわね」

亜里沙 「ありがとうございます」

真姫 「貴方もタクシーに乗って」

亜里沙 「はい。何から何まで、ハラショーです」

真姫 「あなたも罹ってたら後で大変でしょ。二人まとめて家の病院で診てあげるわ」

真姫 (後輩が出来たらこんな感じなのかしら)



175 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 17:47:29.17 ID:g233VfSOO
ジャバジャバ

男性参加者達 「オーッシ! オーッシ!」

ジャバジャバ

穂乃果 「『寒中禊がまん会』かあ。見てるこっちが寒くなりそうだよ」

海未 「μ'sのラブライブ優勝と3年生の大学受験合格祈願も兼ねての参加です」

にこ 「希もここで働いているとはいえよく参加する気になったわね」

花陽 「あの氷柱が浸かっているお水を頭から被るんだよね」

凛 「1月上旬だよ、普通に服着てても寒いのに」

ことり 「でも希ちゃん以外は皆見てるだけだから」

ゴポゴポゴポ

ザパァ

ルシウス 「ぶぷあッ、冷たッ!?」

穂乃果 「急に人が飛び込んできた!?」

ルシウス 「冷水!?」

男性参加者達 「オーッシ! オーッシ!」

ジャバジャバ

ルシウス (この男達は何をしている!? また平たい顔族の世界か?)

ルシウス (腰巻一つの男達が掛け声をかけながら冷水を浴びている……これは!)



神○明○寒中禊がまん会、ここでの水行は禊場と呼ばれる氷柱が入った水場にて行われる。
禊場の冷水を桶で掬い自らの全身にかけて身を清めるものだが今年は折からの暖冬と快晴にて氷柱が溶けて角が丸くなり、見ようによっては卑猥な形状となった。
それが不幸にも古代ローマ人の誤解を生んだ。



ルシウス (氷で出来た○根だと!?)



178 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/24(月) 21:18:59.79 ID:FfkMWdYiO
ルシウス (天に向けてそそり立つこの氷の男○は妻に対して問題を抱えた私への当てつけか!? だとしたら非道すぎはせぬか!?)

ツンツン

ルシウス 「ん?」

希 「外人さん、交代よ」

ルシウス (私の肩をつついたこの純白の衣装の女……服が濡れているということはこの娘も既に冷水を浴びたということか)

ルシウス (妙に色気のある女性ではないか……)

ルシウス (冷水に打たれて毛穴が閉じているのだろうか、つややかできめの細かい肌。凍えているせいか憂いを含んだ瞳)

ルシウス (それに濡れた服が身体に張り付いているからこそ分かる)

ルシウス (胸デカッ!)



179 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/24(月) 21:51:53.66 ID:FfkMWdYiO
希 「あんまり見られると恥ずかしいわぁ」

ルシウス (隠した? ……これはもしや……ローマ女には見られない恥じらいというものなのか……!?)

ムクムクッ

ルシウス (何ッ!)

ルシウス (今まで不能だった私に男の活力が!)

ルシウス (やった! やったぞ! 素晴らしい! いや、いかん!)

ルシウス (このような衆人環視の場で怒張なぞしてはローマ人の誇りに係わる)

ジャバジャバ

ルシウス (冷水を浴びれば収まる筈……)

希 「あの、次の人達待ってるから……」

シナシナッ

ルシウス (ローマ人の誇りは守られた……)



180 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/24(月) 22:09:53.73 ID:FfkMWdYiO
穂乃果 「あの外人さん、オープンキャンパスで見たよ! あとプールでも!」

海未 「私も思い出しました。弓の経験者の方です!」

にこ 「にこにーのフィギュアを持っていった男ね」

凛 「ラーメン一緒に食べた人にゃ!」

花陽 「ルシウスさんだ!」

ことり (あのメイドスパのお客さん……ここにも来てたんだ)

海未 (ここにいる誰もが突然現れたこの男性をいぶかしんでいるのでしょうが……)

海未 (神事に口を挟むのを皆憚っているのでしょう。私もこの場で「神主さん、水場から人が!」なんて言い辛いです)



183 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 19:57:41.63 ID:Vs5ArVNLO
ジャバジャバ

女性参加者達 「エイッ、エイッ」 

ルシウス (我々ローマ人のフリギタリウム(冷水浴室)とは明らかに違う。この浴場の目的は何なのだろう?) 

ルシウス (……ひょっとしてこの者達はさっきの私のように淫らな心を捨て去らんが為に冷水を浴びているではないか?)

ルシウス (人は生きていれば色々な欲望がある。名誉欲、物欲、性欲、その他諸々様々な欲望を消し去ろうとしているのなら……)

ルシウス (彼らの目指すところは質実剛健を理想とする我らローマ人に通じるものがある)

ルシウス (女性達が上がるようだ)

希 「次、外人さんの番やで」

ルシウス (ローマ女性をも凌がんとするボリューム感と触ってみたくなるような柔らかそうな体つき……)

ビキビキッ、ビーン!

ルシウス (これまでの反動か!? 元気が良すぎる!) 

ルシウス (冷水を浴びて自らを律すると同時に他民族の心を惑わすとは恐るべし、平たい顔族)

ルシウス (今の私は善きローマ人とはいえない。私も冷水で静めよう)

ガツッ

希 (この人、水場の縁に足引っ掛けた!)

ドボォン!

穂乃果 「落ちちゃった!」

凛 「……あれ、居ないよ!」

花陽 「あの人、居なくなっちゃった……」



184 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 20:16:58.66 ID:jmATnzBlO
ザパアッ

ルシウス 「ぶぱぁっ、ハァ、ハァ」

マルクス 「ルシウスッ、大丈夫かッ! うお! 効いてるじゃねえかルシウス!」

マルクス 「バッ、バババすっげえ!」

オイテノアのオババ 「当たり前じゃ」



185 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 20:24:15.97 ID:jmATnzBlO
マルクス 「ここがお前のカミさんの家か、すげえ立派な屋敷だな……」

ルシウス (遂にこの時が来た。今日、私は何としても妻を連れ戻す!)



186 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 20:39:12.53 ID:jmATnzBlO
ルシウス 「リウィア、私とローマに帰ろう! 今までお前には色々と辛い目に会わせて悪かった! しかし今の私ならお前をいくらでも満足させられるであろう」

リウィア 「あたし、あなたがパンノニアに行ってる間に再婚したの。私のお腹にはその人の子が居るのよ。だからあなたとはもう縒りは戻せないわ。ごめんなさいネ」

リウィア 「元気になったのなら大好きなゲルマン娘でも孕ませなさいルシウス……」

バタン

ルシウス (無情にもリウィアの実家の扉が閉まった)

ルシウス 「違うっ、私は浮気などしていないッ、違うんだーッ!」



191 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 20:22:16.67 ID:UlXZgx4OO
凛 (凛は悪い子だ)

凛 (本当はイケナイことだって頭では分かってる。みんなが凛の秘密を知ったら凛のこと軽蔑するかな。でもこんなキモチイイこと覚えたらもう止められないよ)

凛 (かよちんは優しいから本当のことを知っても凛を強く責めたりはしないと思う。いや、凛の為を思って怒ってくれるかもしれない)

凛 (でも一番怖いのは、連帯感からかよちんが凛と同じようになること。それは凛の虫のいい願望だけどかよちんがそんな女の子になっちゃ駄目。だから一番仲良しのかよちんにも相談出来ない。いや、誰にも知られちゃいけないんだ)

凛 (でも凛がこうなったのはμ'sに入ったからだよ。μ'sに入らなければこんなこと始めなかった……)



192 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 20:33:50.79 ID:UlXZgx4OO
穂乃果 「気持ちいい……」

ことり 「露天風呂、癒されるね」

穂乃果 「いいなあ……海辺に温泉付きの別荘なんて。真姫ちゃんはその気になればいつでも来られるんでしょ?」

真姫 「だからってそんな頻繁に来ないわよ。普段は学校だってあるし」

穂乃果 「そっか……。でもやっぱり羨ましい! こんな露天風呂あったら毎日でも入りたいよ」

海未 「穂乃果、あまり浮かれてはいけません。真姫の別荘を借りたのはラブライブ決勝直前合宿の為です」

穂乃果 「分ってるよぉ。でもお風呂に浸かってる時位は息抜きしたっていいじゃん」

絵里 「そうね、レッスン後は体を休めることも大事よ。今回の合宿の目的、海未はどう思ってる?」

海未 「それは、決勝前の最終調整です」

絵里 「そう、決勝まで残り数日。オリンピックで例えれば既に選手村に滞在しているようなもの。今すべきことは決勝に向けての最終リハ、メンタルの安定、コンディションの調整で、体力増強のトレーニングではないわ」

海未 「それはそうですが……」

絵里 「これでも私、昔は本気でオリンピックを目指してたのよ。だから少しは信用して」

海未 「ええ、わかりました。……絵里がオリンピックを目指していたのは知っていますから」

海未 (そう、シンクロ経験者の絵里がいなければ私達はここまで来られなかった)

花陽 「いよいよ決勝なんて緊張しますぅ……」

にこ 「あんたはまだいいわよ。来年も再来年も経験出切る。あたしは次が最後なんだから」

希 「うちら3年生は受験も終わったし、これが高校最後のビッグイベントやね」

絵里 「残るはラブライブ決勝……」

凛 (あ~)

凛 (……)

凛 (……気持ちいいにゃ~)

凛 (……ごめんねみんな、イケナイことだって分ってるけど……)

凛 (これだからお風呂でオ○ッコするの止められないにゃ~)



193 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 20:46:00.74 ID:UlXZgx4OO
穂乃果 「ねえ、そろそろ温泉卵出来てるでしょ? みんなで食べようよ!」

花陽 「楽しみです。凛ちゃん?」

凛 「ふぇ!?」

花陽 「?」

凛 「な、なんでもないよ」

花陽 「凛ちゃん、そこで茹でてる温泉卵取ってくれる?」

凛 「うん」

凛 (オ○ッコしてたの見つかったかと思った……。それに凛の近くに卵あったの忘れてた。すぐ傍でオ○ッコしちゃった)

凛 (……)

凛 (ま、いっか!)

ゴポゴポゴポゴポゴポ

ザパアッ! 

ルシウス 「ぷふアッ! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

ルシウス (屋外のテルマエ……!?)

μ's一同 「……」

ルシウス (この娘達は!?)

μ's一同 「キャアアアアアア!」



195 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/30(日) 14:14:59.93 ID:c17tK2PAO
さあどうなるか



196 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/30(日) 19:57:26.90 ID:DVCSbthmO
ルシウス (平たい顔族か!)

希 「あーっ! この人、神社で見たわ!」

ルシウス (胸の豊かな娘が!)

真姫 「えっ!? サンタさんでしょ?」

ルシウス (商売女!)

凛 「以前凛とラーメン食べた人だよ! 覚えてるよねかよちん?」

ルシウス (旨い飯を紹介してくれた少女……)

花陽 「覚えてます! 以前この人から古銭貰いました」

ことり 「バイト先のご主人様……」

ルシウス (キメラ使いに……魔女もいる!?)

穂乃果 「プールで会った人だ!」

ルシウス (滑り降りるテルマエの娘……)

海未 「弓の経験者……」

ルシウス (アマゾネスの弓兵!?)

にこ 「結局こいつは何なのよ!」

ルシウス (アマゾネスの百人長!?)

絵里 「覗きよ」

ルシウス (ゲルマン!?)

海未 「覗き!?」

絵里 「ええ。この男、ウチの風呂を覗いたのよおおおお!」

μ's一同(絵里を除く) 「エエーッ!?」



197 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/30(日) 20:15:49.97 ID:DVCSbthmO
にこ 「どこ見てんのよ!」

凛 「こっち見ないでよぉ」

ルシウス (慎ましい胸の先端に薄桃色の突起が)

ルシウス (アマゾネスの伝説みたいに切り取っていた訳ではなかったのか)

海未 (見られてしまいました。見られてしまいました。見られてしまいました。見られてしまいました。見られてしまいました。見られてしまいました)

海未 (これを無かったことにするには……そうです!)

海未 「みんなでこの男を抹殺しましょう!」

穂乃果 「海未ちゃん物騒過ぎ!」



198 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/30(日) 20:31:40.97 ID:DVCSbthmO
希 「道理でウチの身体に視線感じた訳や……」

海未 「武道を嗜む者として恥を知りなさい!」

ことり 「海未ちゃん、この人日本語通じないから」

真姫 「サンタさんだと思ってたのに……騙したわね!」

絵里 「捕まえるわよ」

花陽 「捕まえるって……私今裸……」

にこ 「こいつは唯の覗きじゃない。きっとストーカーよ。今捕まえないとまた出没するわよ」

花陽 「怖い……」

凛 「捕まえるって具体的にどうするの? この人筋肉質だし、背だって凛より頭一つ大きいよ」

絵里 「まずは全員で絶えずお湯をかけ続けて相手の視界を奪うわ。その方が裸を見られずに済むし」

絵里 「そして私と希で男にタックルをかけて倒して、倒れた相手の右腕を穂乃果、左腕を凛が抑える」

絵里 「最後は後ろから海未が相手の首を取る。5人で押さえ込めば流石に捕まえられる筈よ」

絵里 「他の4人はその間、男の顔にお湯をかけ続けて。男を確保したらことりは警察に通報。真姫とにこは男を縛るロープを持って来て」

花陽 「あの……私は何を?」

絵里 「取り押さえた男の両目を手で塞いで。私達が見られないように」

花陽 「はい……」



201 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/01(火) 23:24:16.74 ID:mhavZfqgO
絵里 「作戦開始!」

バシャバシャバシャバシャ

ルシウス (包囲してお湯をかけてきただと? 前が見えん)

絵里 「希は右、私は左でそれぞれ片足タックル、いくわよ……」

希 「オーケー」

絵里 「せーの、行けッ!」

ガシッ
ガシッ

ルシウス 「!」

ザバァン!

ことり (倒した!)

穂乃果 「捕まえた!」

ガシッ

凛 (そんな悪い人に見えなかったのに!)

ガシッ

凛 「この人凄い力だよ……」

絵里 「しっかり抑えないと逃げられるわよ!」

絵里 (この男、筋肉がしっかりしている。お湯をかけて視界を奪わなければ二人がかりでタックルしても倒せたかどうか……)

穂乃果 「ここの露天風呂ぬめり湯だからすっごい滑るよ!」



202 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/01(火) 23:40:37.58 ID:mhavZfqgO
ルシウス (何なのだ、このテルマエは!?)

ルシウス (ぬめり湯の中で柔らかくかつ弾力に富みスベスベしたものが手足に絡みついてくる!)

ルシウス (うら若き娘達が一糸纏わぬ姿で身体に縋りついてくるテルマエ。気持ち良すぎる!)

ルシウス (しかも顔に絶えず湯をかけられるので必然的に目を閉じるようになる)

ルシウス (目を閉じることでより研ぎ澄まされる触覚!)

ルシウス (独自の発想と高い技術を持つ平たい顔族のテルマエにはこれまで幾度も驚かされたし、打ちひしがれて来たが……)

ルシウス (気持ち良さではこれまで入ってきたテルマエの比ではない!)

ルシウス (このようなテルマエが流行したら人間は堕落してしまう!)

ルシウス (ハドリアヌス帝が混浴禁止令を出されたのは慧眼であった)

ムクムクッ、ビーン!

にこ 「こ、こいつ、興奮してるわよ!」

花陽 「ぴゃあっ!?」

真姫 「何よ、私の時は勃たなかったくせに」

ことり (みんなは驚いてるけど私はメイドスパのバイトで一生分見たからもういいかな)

海未 「人様の浴場で欲情するとは破廉恥極まりない……」

海未 「最低です……」

海未 「あなた、最低です!」

穂乃果 「海未ちゃん!」

希 「うちらが抑えてるうちに早く首を取るんや!」

海未 「わかりました。私がこの汚らわしい男に天誅を下します。この男の首に……」

海未 「天蓮華を!」

穂乃果 「そんな技かけたら死んじゃうって!」



203 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/01(火) 23:51:41.77 ID:mhavZfqgO
海未 「ならば仕方ありません。生け捕りにしましょう……」

ガシッ

海未 「裸絞めです!」

花陽 「裸でかけるのが前提の技があるんだ……」

ことり 「裸絞めは裸でかける訳じゃないよ」

にこ 「じゃあ何で裸絞めって言うのよ?」

ことり 「それは……」

真姫 「今はそんなのどうだっていいでしょ!」

ルシウス (後ろから抱きついてきた!? く、首が締まる……)

ゴポゴパゴポゴポッ

花陽 (辺りから気泡が……)

花陽 「みんな、気をつけて!? 何か変!?」



207 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/03(木) 16:38:58.97 ID:K4bT+IbKO
ゴポン

穂乃果 (力が抜けた!?)

穂乃果 (いや……違う……吸い込まれる!?)

穂乃果 (溺れる?)

ゴポゴパゴポゴポッ



208 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/03(木) 16:55:52.71 ID:K4bT+IbKO
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!

さつき 「!」

さつき (家の浴室の方から凄い音が?)

さつき (どうしたのルシウス!?)



209 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/03(木) 17:11:50.56 ID:K4bT+IbKO
さつき 「これって……」

凛 「助けて……」

花陽 「むぎゅー」

真姫 「もう、早くどきなさいよ」

海未 「真姫、暴れないで」

ことり 「落ち着いて、狭いのは……みんな一緒だよ……」

絵里 「ひきがでひなひ」(息が出来ない)

希 「エリチしゃべったらくすぐったいって」

穂乃果 「さっきから下半身だけ水面から出して足ジタバタさせてるのは誰?」

にこ (苦しい……し……死ぬ……)

ルシウス 「さつき、これは違うんだ!」



210 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/03(木) 17:21:50.42 ID:K4bT+IbKO
さつき 「この度は主人が大変ご迷惑をおかけしました」

穂乃果 「どうか頭を上げて下さい。ええと……」

さつき 「さつきと言います。順を追って説明します。少し長くて突拍子もない話ですが……」

穂乃果 (この女の人凄く綺麗……)



212 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/04(金) 08:08:46.97 ID:rbVSMML6O
さつきいるんかい!



213 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 18:01:36.24 ID:OcxTjBKYO
真姫 「もう、これ唯の水じゃない」

さつき 「すみません。今、テルマエでネクター分けて貰えるようにお使いを出したから」

希 (テルマエってスーパーの名前かしら?)

凛 「あの、身体拭いたタオルはどこに?」

さつき 「……それは腰布として渡したんです」

凛 「腰布……?」

海未 「下着の代わりです。説明を聞いていなかったのですか?」

凛 「そんな怒ることないじゃん」

ことり 「みんな、落ち着いて」

穂乃果 「まずはさつきさんの話を聞こうよ」



214 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 18:19:07.43 ID:OcxTjBKYO
穂乃果 (さつきさんから聞いた話は突拍子も無い話だった)

穂乃果 (ここが2世紀のローマということ)

穂乃果 (私達が露天風呂で出会った男の人はルシウスさんといってお風呂の設計技師をしていること)

穂乃果 (原因や原理は分からないけどルシウスさんやルシウスさんと関わった人が不定期でタイムスリップすること)

穂乃果 (さつきさんもその不思議な力でルシウスさんに巡り会って……)

穂乃果 (そして二人が最近この時代で結婚したこと……)



215 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/05(土) 18:32:05.28 ID:OcxTjBKYO
穂乃果 「そうだ!」

さつき 「どうしたの……?」

穂乃果 「私達、元の世界に帰らないといけないんです!」

真姫 「まさか穂乃果今の話を信じたんじゃないでしょうね」

にこ (これはきっとプールアイドルに仕掛けられたドッキリよ! でもここはドッキリ企画を潰さないようにアイドルとして騙されたフリを続けないと……)

ことり 「実は……この男の人、μ's結成前に私のバイト先に来たことがあるの」

穂乃果 「えっ!? そうだったの?」

にこ (何よ、μ'sへのドッキリじゃなかったの?)

海未 「ならば元々ことりがターゲットだったのでしょうか?」

花陽 「メイドスパ伝説のメイド、ミナリンスキーへのストーキング……ありえます」

凛 「でもイタズラやストーキングにしても手が混んでるよ……」

希 「ウチはさつきさんの話信じてもいいと思うんやけど」

絵里 「兎も角、何でもいいから私達を元居た場所に帰して下さい!」



217 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/05(土) 20:23:05.33 ID:hlsZKkUTO
原作の男根祭りやら射的の腕の話やらが順不同だから一気にさつきと結婚時まで飛んで面食らった

続けてどうぞ



218 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/06(日) 21:01:34.95 ID:zoIi0DfxO
ことり 「……」

海未 (ここに来て3日目、本当なら今日がラブライブ決勝の日……)

花陽 「お父さん、お母さん……グスッ……」

凛 「かよちん……」

凛 (家族に会いたいのは凛も一緒だよ……)

絵里 (亜里沙、今頃どうしてるかしら……)

希 (元々独り暮らしのウチと違って家族と暮らしている皆はこういう時に耐性が無い。親元を離れているエリチも亜里沙ちゃんと二人暮らしやったし……)



219 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/06(日) 21:12:21.87 ID:zoIi0DfxO
にこ 「どうしてくれんのよ……」

ルシウス 「……」

さつき 「……」

にこ 「にこは本気でアイドルやりたかったからμ'sに入ったのよ! ここに賭けようって思ったのよ! それをこんな形で諦めろっていうの!」

さつき 「……ごめんなさい」

にこ 「うちは弟も妹達もまだ小さいの! 親が仕事で忙しいから弟や妹達の世話はあたしがしてきたの! あの子達きっと困ってるし泣いてる……」

さつき 「……本当にごめんなさい」

にこ 「……風呂に入れば元の世界に帰れるかもって……言ったじゃない……」

ルシウス (これまでの彼女達の経緯はさつきが教えてくれた。言葉は分からないがこの少女が怒るのは尤もなことだ)

真姫 「にこちゃん……」

穂乃果 「だったら……」



穂乃果 「ここでアイドルやってみない?」



220 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/06(日) 21:24:31.04 ID:zoIi0DfxO
にこ 「……あんた、本気で言ってるの?」

穂乃果 「このまま何もしないでいると穂乃果も気が滅入りそうだし、折角歌もダンスも一生懸命練習してきたのにこんな形で終わりにしたくないもん」

穂乃果 「にこちゃんだってアイドルやりたいんでしょ? だったら……ね」

真姫 「でもこの時代にアイドルなんて文化無いわよ」

穂乃果 「無いなら作っちゃえばいいんだよ、私達で」

希 「アイドルの元祖になるわけや。うまくいけば後世に名を残すかもな」

にこ 「……やるわ」

にこ 「にこにーがこの時代に飛ばされたのは、ここでアイドルの原点にして頂点になれという神の啓示ね。きっとそうよ!」

絵里 「そうね、このままじっとしてても手持ち無沙汰だし」

絵里 (家族のことを思うと歌って踊れば気が紛れるというものではない。でもここで悩むよりは何かすることがあった方がいい)

凛 「凛もやるにゃー!」

花陽 (私まだ、アイドル出来るんだ……)

ことり 「だったらまた衣装作らないとね」

にこ 「二千年近い時を超えた超時空アイドルにこにーが古代ローマにカルチャーショックを起こしてやるんだから!」



222 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/09(水) 00:11:02.83 ID:zpnXPDEcO
海未 「あの、一つ問題が……」

穂乃果 「どうしたの?」

海未 「私、ラテン語で作詞なんて出来ませんよ。それ以前にラテン語で歌える人間が誰一人いないではないですか?」

穂乃果 「日本語で歌えばいいよ。日本のアーティストが海外公演する時にわざわざ現地の言葉でライブやらないでしょ?」

真姫 「でも自己紹介くらいはラテン語で出来るようになっておいた方がいいわよ」

穂乃果 「そうだね……そうだ!」

穂乃果 「さつきさん、私達にラテン語教えて下さい!」

さつき 「わたしに? 分かったわ、協力させて頂戴」

ことり 「あとは練習場所の確保だね」

さつき 「それはこちらで何とかするわ」

花陽 「何とかするって……」

さつき 「ルシウス、あなたのツテでどこかテルマエを貸切り出来ないかしら?」

ルシウス 「テルマエを?」

さつき 「今までの会話日本語だったから分からなかったのね、簡単に説明するわ」



223 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/09(水) 00:44:03.56 ID:+YobRjMDO
海未 「ワン、ツー、ワン、ツー、はいそこまで! 一旦休憩にしましょう」

ルシウス (これが平たい顔族の踊り……)

ルシウス (本来テルマエは踊る場所ではない。テルマエで歌って踊るなど言語道断と思っていた)

ルシウス (しかし、彼女達の躍動感溢れる歌声と踊りには心動かされる物がある。何より今までこのような歌も踊りも見たことが無い!)

ルシウス (テルマエとは癒しの場、その大前提は変わらないし変えるつもりもないが……)

ルシウス (かつて経験した滑り降りるテルマエといい、女体が絡みつくテルマエといい、興奮や高揚感を齎すテルマエも平たい顔族は造ってきたのだ)

ルシウス (この柔軟な発想は見習う部分ではある)



224 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/09(水) 00:59:53.26 ID:+YobRjMDO
真姫 「やっぱり音楽が欲しいわね」

絵里 「でもこの時代ピアノ無いわよ」

真姫 「分ってるわよ! それでも弾ける楽器を手に入れなきゃ駄目でしょ!?」

さつき 「楽器なら私が……」

花陽 「さつきさん、楽器使えるんですか?」

さつき 「三味線の経験があるからこれから竪琴を覚えれば……」

海未 「今から覚えるって……。演奏なんて一朝一夕で出来るものではないと思いますが?」

穂乃果 「海未ちゃん」

海未 「でもそうでしょう?」

ことり (場の雰囲気が……話題逸らさないと!)

ことり 「さつきさんって三味線弾けるんですね。音楽以外には何かされてたんですか?」

さつき 「日舞を」

海未 「いい加減にして下さい」

穂乃果 「どうしたの海未ちゃん、さっきから?」



227 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/10(木) 21:27:42.37 ID:XRCdLmOsO
海未 「失礼ながら言わせて頂きます」

海未 「私達の夢をフイにした負い目があるから少しでも役に立つ人間と思われたいという気持ちは分からないでもありません。私だって逆の立場なら心苦しいです」

海未 「だからといって三味線や日本舞踊といった若者があまり経験しないことを挙げるのはいかがなものかと?」

にこ (要するにブラフと言いたい訳ね)

希 「海未ちゃん、いくらなんでもさつきさんに失礼や」

さつき 「三味線や日舞は本当にやってきたの」

海未 「ならば私が見極めさせて頂きます。私は日舞の家元の跡取りとして幼少の頃から稽古をしてきました」



228 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/10(木) 21:42:02.66 ID:XRCdLmOsO
穂乃果 (これがさつきさんの舞……)

ことり (素人目にはよく分からないけど……優雅というか……)

花陽 (美人さんだから様になります)

海未 ワナワナ

ことり (海未ちゃん震えてる……)

凛 (叫ぶ直前の藤○達也みたいになってるよ)

真姫 (もしかして怒ってる?)

海未 「数々のご無礼、申し訳ありませんでした!」

μ's一同(海未を除く) 「ええっ!?」



229 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/10(木) 21:57:42.76 ID:XRCdLmOsO
にこ 「あんたと比べてどんだけスゴイのよ?」

海未 「比べるのが失礼です! 天才ですよ!」

さつき 「そんな、大袈裟よ」

希 (謙遜しつつも恐縮はしとらん。褒められ慣れてるんやな。つまりそれだけ上手いっちゅうことや)

海未 「あの、お許し頂けるなら……」

海未 「『先生』と呼ばせて下さい!」

絵里 (完全に心酔してる……)



230 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/10(木) 23:16:00.66 ID:u4dZ6MrhO
ルシウス 「サツキ、いるか?」

真姫 「キャッ!」

ルシウス 「……シチュレーシマスタ」

真姫 「もう、気をつけてよ……」

ルシウス (日除け布の向こう、サツキの部屋でマキが着替えていたか)

ルシウス (この娘、露天風呂で初めて会った時はもっと友好的だったが……それでもここに来た当初よりは打ち解けた感じがする)

ルシウス (トラブルになりそうな時に相手に向けて唱えるようにとサツキが教えてくれた呪文……)

ルシウス (「シチュレーシマスタ」には一定の効果が認められる)



233 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/11(金) 15:45:04.80 ID:5DiGU+0GO
シチュレーシマシタwww



234 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/12(土) 18:39:21.96 ID:9g+gp4j9O
にこ 「焦らしてるの? もう、早く済ませてよ……」

にこ 「このにこに恥かかせるつもり?」

にこ 「にこにー……もう我慢出来ない……」

にこ 「あんたトイレ長いのよ! ここで漏らしたらあんたのせいだからね!」

ルシウス (言葉は分からなくても言いたいことは察することが出来る。が、用を足してる時に急かすのは止めてくれ)



235 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/12(土) 18:51:03.48 ID:9g+gp4j9O
ルシウス (サツキと暮らすようになって自宅のトイレの改装を行った)

ルシウス (個室式にし、用を足した後に風呂の残り湯を便器に流すと汚水が下水管に流れる水洗式だ。尻を拭く為のパピルスも置いてある)

ルシウス (公衆トイレで水洗なら兎も角、個人宅で水洗式のトイレ、増してや個室式などなかなかお目にかかれない)

ルシウス (だが、このトイレは9人の居候共にはすこぶる評判が悪い)

キィィッ

ルシウス (個室トイレの扉を開けると不機嫌な表情をした内股のにこと目があった)

ルシウス 「シチュレーシマスタ」

にこ 「もう、いいからどいて」

バタン

ルシウス (私の横をすり抜けるようにトイレに入って扉を閉めた)

ルシウス (いきなり同居人が9人も増えたせいで我が家のトイレは順番待ちが多い。トイレを増築するか?)

キィィッ

ルシウス (一度閉まった扉が空いた?)

にこ 「絶対に音聞いちゃ駄目よ」

バタン

シャアアアアア

ルシウス (相変わらず平たい顔族の言葉は分からん)



238 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/12(土) 19:32:10.91 ID:9g+gp4j9O
>>236は以下の通り訂正
さつきの名は平仮名表記が基本。ルシウスの台詞や独白内のみカタカナ表記

ルシウス 「サツキ……」

さつき「ルシウス……愛してる」

チュッ チュパッ レロレロ

ルシウス (平たい顔族の少女達が我が家で暮らすようになってからサツキとの夜の営みは……それまでの日々が嘘のようにパッタリと無くなった。同胞の同居人が大勢居るのを気にするサツキが拒むのだ)

ルシウス (新婚だというのに侘びし過ぎる)

ルシウス (我が家に居ながら人目を忍び、偶にこうして抱擁しながら口づけを交わすだけの悶々とした日々)

さつき 「ルシウスッ、ダメッ!」

ルシウス (私を拒絶した!?)

さつき 「その、後ろ……」

海未 ワナワナッ

海未 「あ、あの、……先生……」

ルシウス (見られたか。ウミが小刻みに震えてる)

海未 「失礼しました!」

ルシウス 「!?」

ルシウス (私が怒ると思って先に呪文を使ったのか!?)

ルシウス (私も使おう)

ルシウス 「シチュレーシマスタ」

海未 「いえ、私が悪いんです。失礼しました!」

ルシウス 「シチュレーシマスタ」

海未 「すみません、覗くつもりなんてなかったんです!」

ルシウス 「シチュレーシマスタ」

海未 「末永くお幸せに……ごゆっくりーッ!」

ルシウス (逃げるように走り去っていった)

さつき (ごゆっくりって言われても……)



239 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/13(日) 17:40:07.59 ID:buvlcM4XO
ルシウス (サツキには『この後ウミちゃんとニチブのケイコを付ける約束してるのにどんな顔して会えばいいのよ』と恨み節を言われた)

ルシウス (最早自宅に居るよりも、こうして公衆浴場に浸かっている方が落ち着く)

マルクス・アウレリウス 「先帝ハドリアヌス帝は帝国各地を行幸されることで……」

ルシウス (テルマエに浸かりながら話をしている相手が次期皇帝候補のマルクス・アウレリウス様だというのに)

マルクス・アウレリウス 「それは各地の属州に対し『自分達は帝国の一部である』と再認識させ、皇帝の権威を……」

ルシウス (こうしてマルクス様と会話する方が家より落ち着くとは皮肉なものだ)

マルクス・アウレリウス 「その代償としてハドリアヌス帝はローマを離れることが多く、元老院との確執……」

ルシウス (ここではシチュレーシマスタの呪文も不要)

マルクス・アウレリウス 「義父上は元老院との関係改善を急務とし……」

ルシウス (突然9人の若い娘達が降って湧いたように現れ、我が家は突然賑やかになった)

マルクス・アウレリウス 「元老院との関係改善に成功しても、その後に皇帝が行幸を頻繁に行えば従来に逆戻りです。そこで……」

ルシウス (これまでは私と妻のサツキと僅かな奴隷だけでの暮らしからいきなりの大所帯だ)

マルクス・アウレリウス 「帝国を束ねる新たな指標が必要です。私はそれをストア哲学に見出し……」

ルシウス (今の自宅は手狭過ぎる。かといって扶養家族が増えて物入りな今、広い家に引っ越すのは金銭的な問題が……)

マルクス・アウレリウス 「義父上も私の考えに賛同して下さりました。コスモポリタニズムに則る国政こそが……」

ルシウス (こういった会話についていけるのは若かりし頃アテネに修行にいった時の経験が大きい。アテネでは建築技術だけでなく多くを学んだ)

マルクス・アウレリウス 「その政の方針を記念式典の催し物で示したいのです」



240 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/13(日) 17:56:40.31 ID:buvlcM4XO
マルクス・アウレリウス 「ついてはルシウス技師、この件を引き受けて頂きたいのです」

ルシウス 「畏まりました。全身全霊をもって務めさせて頂きます。……一つお聞きしてよろしいでしょうか?」

マルクス・アウレリウス 「どうぞ」

ルシウス 「アントニヌス陛下の皇帝就任記念式典にて開催される数々の催し物の一つとして、ローマと帝国内の異民族との融和に繋がるものを行いたい……」

ルシウス 「その企画立案から運営までを私が行うと」

マルクス・アウレリウス 「そうです。勿論必要な労働力と資金は此方で用意します。報酬も弾みます」

ルシウス 「有り難き幸せ。しかし、それ程の大役を何故私に?」

マルクス・アウレリウス 「ルシウス技師の独自な発想と行動力、そして帝国への忠誠心は先帝ハドリアヌス様の御代に数々の優れたテルマエを生み出しました。それを買っているのです。そしてもう一つ」

ルシウス (もう一つ?)

マルクス・アウレリウス 「民族の枠を超えた愛を成就されたルシウス技師こそこの件の適任者だと思ったのです」



242 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/14(月) 21:59:04.36 ID:6Hi1XQuvO
穂乃果 「ライブですか?」

さつき 「そう、ライブよ。新皇帝の就任記念式典でライブをやってみない?」

海未 「皇帝の就任記念式典となるとどの位の規模になるのでしょうか?」

さつき 「ローマのコロッセオが会場だから観客は5万人ってところね」

花陽 「ご、5万……」

凛 「ドーム球場並だよ」

にこ 「チャンスよ」

絵里 「まさか、話を受ける気?」

にこ 「あたり前でしょ。いきなりそんな大きなハコでライブ出来るなんて、やっぱりにこはここで時代の先駆者になる運命にこ」

希 「発声練習も頑張らんとなぁ。マイク無しでそんな大きな会場で歌うんなら」



243 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/14(月) 22:13:06.68 ID:6Hi1XQuvO
ルシウス (平たい顔族の踊り娘達は二人返事で引き受けてくれた)

ルシウス (マルクス・アウレリウス様にテルマエで踊る娘達の話をしたらすんなり採用された)

ルシウス (9人の少女達は式典に向け練習を続けている。目標が出来たせいか生き生きしている)

ルシウス (マルクス様が目指されるコスモポリタニズム。しかし、人類は遍く地球市民であると元老院やローマ市民に説いたところでどうなるものでもない)

ルシウス (敬意は相手の長所を見つけることから生まれる。私が平たい顔族に一目置くようになったのは、彼らが優れた技術と発想を持ちながらそれに驕ること無く勤勉かつ親切で平和を愛する民族だからだ)

ルシウス (ローマ市民に彼女達の歌と踊りを見て貰う。その上で平たい顔族のことを知って貰う。ローマ人以外にも優れた民族が居ることを知れば頭の固い連中も考えを改めるだろう)

ルシウス (これから忙しくなるぞ)

伝令 「ルシウス・モディストゥスは居るか!?」

ルシウス (一体何だ?)



244 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/14(月) 22:23:34.11 ID:6Hi1XQuvO
ルシウス (元老院に呼び出された)

ルシウス (仕事の依頼だろうか? 仕事があるのは嬉しいが、今は他の仕事を同時進行する余裕は無い)

アッティリアヌス 「ルシウス・モディストゥスだな」

ルシウス 「ハッ」

アッティリアヌス 「モディストゥス技師がヴェスビオスにて造ったテルマエの町、あれは素晴らしいものであった」

ルシウス 「有り難き幸せにございます」

アッティリアヌス 「ところでお主が今進めているという記念式典の催し物だが……」

アッティリアヌス 「蛮族の歌と踊りを会場で披露するというのは本当か?」

ルシウス 「どこでそれを?」

アッティリアヌス 「質問しているのはこっちだ」

ルシウス 「……確かに異民族の歌と踊りを披露する予定ですが、彼女達は蛮族などでは無く……」

セルギアヌス 「嘆かわしい!」

ルシウス 「!」

セルギアヌス 「何が楽しくて野蛮人の歌と踊りを見せられねばならんのだ? しかもよりによって新皇帝の就任記念式典でだ」

セルギアヌス 「モディストゥス技師にはローマ人としての誇りが感じられんな」

ルシウス 「!」

ルシウス 「恐れながら、私はローマ人であることに誇りを持ち、先帝ハドリアヌス様の御代より帝国に尽くして参りました」

セルギアヌス 「聞けばそなたは異民族を妻に娶ったそうではないか。愛人や娼婦なら兎も角、卑しい蛮族を正妻に迎えるなどど……」

ルシウス 「サツキは! ……我が妻は、蛮族などではありません……。妻も、妻の民族も、高い知性と豊かな発想を持ち、平和を愛しています」

アッティリアヌス 「平和……軟弱な発想だ」

セルギアヌス 「そもそも帝国における公用の行事に敢えてその異民族の踊りを行う理由は何か?」

ルシウス 「それは……」



246 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 23:52:31.76 ID:1/Tbgk30O
ルシウス (どこから話が漏れた? 式典の段取りを進める際にマルクス・アウレリウス様が元老院に話されたのだろうか?)

ルシウス (ここでマルクス様が仰ったコスモポリタニズム構想の話をするか?)

ルシウス (いや、この元老院議員達がマルクス様のお考えに賛同するとはとても思えない。それはマルクス様のお立場を悪くしてしまいかねない)

アッティリアヌス 「どうした、モディストゥス技師?」

ルシウス (よし、ハッタリでもいいから話しながら考える)

ルシウス 「新たなるサーカスの提供です」



247 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/16(水) 00:12:25.93 ID:2QLqOWwIO
アッティリアヌス 「サーカスだと?」

ルシウス (よし、食い付いて来た!)

ルシウス 「ハッ、サーカスでございます」

ルシウス 「帝国の維持には民衆の支持が必要不可欠です。そしてそれには市民への施しと催し物が大きく影響することは周知の事実であります」

ルシウス 「私はこれまでローマ人が見たこともない新たな催し物を開拓することで、民衆の帝国への忠誠心を高めることに微力ながら貢献したいのです」

ルシウス 「ローマ人にとって未知の物をと考えた結果、異民族の歌と踊りに目を付けました」

ルシウス 「私がこれまで見たこともない、そして見ていると元気になれるような歌と踊りです」

セルギアヌス 「そなたの帝国への忠義は分かった」

セルギアヌス 「勿論我らとて帝国、ひいては陛下の御身を案じておる。その思いはモディストゥス技師と同じだ」

ルシウス (ついこの間、故ハドリアヌス陛下の弾劾を決議しておきながらよく言う)

ルシウス (現皇帝陛下が元老院を説得出来なかったら、今頃ハドリアヌス陛下はローマ人の歴史から抹消されていた)



250 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/17(木) 22:23:18.75 ID:nRYasnS/O
アッティリアヌス 「どこの馬の骨とも知れぬ蛮族の歌や踊り、そのようなものが我らローマ人を魅了し、これまで長年闘技場で行われてきた剣闘士の殺し合いや罪人の処刑に取って代わるものとでも言うのか?」

ルシウス 「はい、数年のうちに彼女達の名は帝国全土に響きわたることでしょう」

セルギアヌス 「今一度聞こう、モディストゥス技師。その歌と踊りは従来の『パンとサーカス』にとって代わるものと断言出来るのだな」

ルシウス 「はい、お約束します!」

セルギアヌス 「ならば今回の式典で民衆にそれを見せて反響が大きければ今後の催し物として採用するというのはどうでしょう、アッティリアヌス殿?」

アッティリアヌス 「セルギアヌス殿!?」

ルシウス 「有り難き幸せ」

セルギアヌス 「但し!」

セルギアヌス 「元老院に対してそこまで言い切るのであれば失敗は許されん。分かっておろうな?」

ルシウス 「元より覚悟の上です」

セルギアヌス 「見上げた精神だ。……ならばもし失敗したら……」

セルギアヌス 「その踊り娘達を剣闘士にしてその者達同士で試合をさせるぞ」

ルシウス 「!」



251 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/17(木) 22:56:16.51 ID:5EqcUiqqO
ルシウス 「お待ち下さい! それはあまりにも――」

セルギアヌス 「その方は『覚悟の上』と言ったばかりではないか! 舌の根も乾かぬうちに言葉を翻すか!」

アッティリアヌス 「代々帝国を支えてきた元老院に一介のテルマエ技師が意見するなどおこがましい」

アッティリアヌス 「もしくはその娘達を素っ裸にして猛獣の前に放してみるか」

セルギアヌス 「クックック、アッティリアヌス殿も人が悪い」



252 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/18(金) 00:36:06.88 ID:dUeUFDw5O
アッティリアヌス 「さっきの奴の顔と言ったらなかったぞ」

アッティリアヌス「あの者、今頃はハドリアヌスや野蛮人に肩入れしたことを後悔しているであろう」

セルギアヌス 「しかし懸念すべき事案ではありますぞ。アッティリアヌス殿」

セルギアヌス 「あのルシウスという男、風呂造りにおいてはあのアポロドトスをも凌ぐ天才と言われています。それほどの審美眼の持ち主が推す物となると実際に人を惹きつけるのかもしれませぬ」

アッティリアヌス 「確かにヴェスビオスに奴が造ったテルマエの町は見事であった」

セルギアヌス 「バイアエにあるハドリアヌスの別荘もあの者の設計です。それはもう桃源郷のようなところでした」

セルギアヌス 「そして私が懸念しているのは、新皇帝がハドリアヌスの為に我々元老院を涙ながらに説得したことです」

アッティリアヌス 「ハドリアヌスを敬愛する皇帝の前で異民族がその就任を喜んで歌い踊るか……」

アッティリアヌス 「まあ、面白くはないですな」



256 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/19(土) 22:56:30.88 ID:Qa24WCkIO
セルギアヌス 「現皇帝は先帝と違って情に厚い。しかしながらハドリアヌスの政策を受け継ぐ気でいることは容易に想像出来る」

アッティリアヌス 「また領土拡大を諦め守りに徹するローマが続くのですか」

セルギアヌス 「現状維持は緩やかな後退に等しい。陛下が就任から日の浅い今こそ我ら元老院が陛下をお支えして……」

セルギアヌス 「強く誇り高きローマを築きましょうぞ、アッティリアヌス殿。その為には野蛮人の見世物など不要」

アッティリアヌス 「全くですな。もしその踊り娘共の人気が出たら異民族を付け上がらせる切っ掛けになる。あのテルマエ技師はそれが分かっていない」

セルギアヌス 「そうです。帝国は我らローマ人が管理運営してこそ滅亡を免れるのです」



257 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/19(土) 23:15:22.78 ID:Qa24WCkIO
さつき 「何てこと……」

ルシウス 「元老院がこのような手に出るとは思わなかったのだ」

ルシウス 「済まない」

さつき 「謝る相手が違うわ」

さつき (あの子達に本当のことなんて言えない。言ったらきっと萎縮してうまく行くものも行かなくなる)

さつき 「マルクス様は?」

ルシウス 「視察に向かわれて暫くローマには戻られないそうだ」

さつき 「出来るだけ早く相談しないと……最悪ライブの件は辞退してでもーー」

ルシウス 「諦めるのはまだ早い」

ルシウス 「陛下やマルクス様ならきっと助けて下さる」

さつき 「私だってあの子達が落ち込む姿なんて見たくないわ」

さつき 「でも意地を張っている場合じゃないわよ」

ルシウス (サツキ、私はお前が蛮族呼ばわりされたのが許せない。だからこそ退きたくないのだ)

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2017/08/17 22:02 | CM(0) | ラブライブ! SS
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