1 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 20:36:10 ID:wEUUT1l.
茨の森、奥深く
王子「むう、なんと綺麗な森だろうか」
パカラッパカラッ ヒイン!
王子「・・・・・・ん? あれ、は」タッタッタ
美女「・・・・・・すう、すう」
王子「・・・・・・眠っている、のか?」
美女(おお! と、とうとう人が来た!!)
王子「しかし、何故こんなところで」
美女(針が刺さったら眠っちゃったんだようー)
王子「・・・・・・美しい」ボソ
美女(えへへーそうでしょう? 100年経ってるけれど身体は15歳だからねー)
王子「噂に聞いたことがある、眠れる美女は、キスで目が覚めると・・・・・・」
美女(お、おおお。・・・・・・まさか?)
2 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 20:36:56 ID:wEUUT1l.
王子「・・・・・・いざ」ゴクリ
美女(きゃあぁぁ来ちゃうのか! ついに目覚めちゃうのか!!)
王子「・・・・・・」ズイ
美女(きーす、きーす、きーす)
王子「・・・・・・なーんてね」
美女(!?)
王子「ははは、それにしても気持ち良さそうな顔で寝るお方だ。・・・・・・しかし何か羽織らぬと身体に悪い」バサリ
美女(マントいらねえよ!! 私にキスをしろ!!)
王子「・・・・・・うむ。これでよし」ニコ
美女(よくないって!! キス!! キス!!!)
王子「ではいくぞ! 白馬!!」
白馬「ヒイン!!」
パカラッパカラッ
美女(おーい!!)
3 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 20:49:46 ID:wEUUT1l.
翌日、茨の森、奥深く
パカラッパカラッ ヒイン!
王子「・・・・・・気になってまた来てしまった」スタ、スタ
美女「・・・・・・すう、すう」
美女(おお、昨日の人じゃないか!)
王子「・・・・・・む、このマントは・・・・・・まさか、あれからずっと寝ているのか?」
美女(そうだよ、もう百年になるよ)
王子「・・・・・・なんと、まさか・・・・・・」
美女(そう! 眠れる森の美女だ!!)
王子「よく眠るお方だ!!」ニコ
美女(違う!!! そうだけれど違う!!!)
王子「よほど疲れているのだろうな」
美女(いや、もう寝疲れしてるよ)
王子「・・・・・・しかし、それにしても美しいお方だ」
美女(ああ、私は超絶美しいんだ。だからキスを)
5 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 20:50:47 ID:wEUUT1l.
王子「・・・・・・そうだ、写生しよう」
美女(キスをしろ!!!)
王子「・・・・・・むう」かきかき
美女(・・・・・・おいおい、ほんとに描き始めたよ)
王子「・・・・・・む!」ごしごし
美女(拘らなくていいからキスしなさい)
王子「・・・・・・おお、上手く描けた」ニコ
美女(そりゃあ良かったな! キスをしろ!!)
6 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 20:51:22 ID:wEUUT1l.
王子「・・・・・・そうだ、隣に置いておいてあげよう」スッ
美女(馬鹿みたいだろ!! やめろって!! 恥ずかしい)
王子「・・・・・・自分の隣に自分の絵とは・・・・・・ははは」
美女(だからやめろって!!)
王子「・・・・・・行くぞ、白馬!」
美女(おいおいおい待てよ!!)
白馬「ヒイン!」
パカラッパカラッ
美女(おーい!!!)
7 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 20:58:22 ID:wEUUT1l.
翌日、茨の森、奥深く
パカラッパカラッ ヒイン
王子「今日こそあのお方と知り合いになりたいな」スタ、スタ
美女「・・・・・・すう、すう」
王子「・・・・・・む、また寝てるようだ」
美女(・・・・・・眠れる森の美女だからな)
王子「・・・・・・はははっ」
美女(・・・・・・な、なによ)
王子「まるで眠れる森の美女じゃないか! ははははっ」ニコ
美女(てめえこの野郎本当にそうなんだよ!!!)
王子「・・・・・・いや、はは・・・・・・くっ、はははは!」
美女(そんなに笑う要素はないだろうに)
王子「ははは、じ、自分の隣に、自分の絵を・・・・・・くはは」
美女(お前が置いたんだよ!!)
8 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:04:53 ID:wEUUT1l.
王子「・・・・・・いや、まさか」
美女(そう! 本当に眠れる森の美女なんだ!!)
王子「そんなに私の絵を気に入ってくれたのか」
美女(違う! 起きてないだけだ!!)
王子「・・・・・・よくみれば、私のマントもそのまま使っている」
美女(起きてないからな!)
王子「・・・・・・そんなに気に入ってくれたのかぁ」ニコ
美女(どっちもいらねえよ! キスが欲しいの、キスが)
王子「・・・・・・いや、何度見ても美しいお方だ」
美女(そうだな、私もそう思う)
9 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:05:28 ID:wEUUT1l.
王子「・・・・・・寝てるうちに・・・・・・キスを、しても」ズイ
美女(おおおいいぞ! どんどんキスしよう!!!)
王子「駄目だ!! そんな騎士道に反するようなこと!!!」
美女(駄目じゃない!! ウェルカム! ウェルカムだよ!!)
王子「くっ! 自分が恥ずかしい!! 行くぞ! 白馬よ!!」
白馬「ヒイン!」
パカラッパカラッ
美女(おーい!!!)
10 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:21:15 ID:wEUUT1l.
翌日、茨の森、奥深く
パカラッパカラッ ヒイン!
王子「・・・・・・昨日はすまなかった」スタ、スタ
美女「・・・・・・すう、すう」
王子「今日も良く眠っている」ニコ
美女(うん、眠っているよ。お前がキスしないから)
王子「・・・・・・はあ」
美女(・・・・・・ん?)
王子「・・・・・・実は、私は王子なのだ」
美女(うん、どう見ても王子だな)
王子「これでも私は理想の統治者と呼ばれていてね、民からそれなりに尊敬もされているのだ」
美女(キスはしない無能だけれどね)
王子「・・・・・・しかし、本当の私は・・・・・・尊敬されるような人間ではない」
美女(・・・・・・)
11 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:22:08 ID:wEUUT1l.
王子「・・・・・・花に詳しいのは、庭師に学んでいるからなのだ」
美女「・・・・・・すう、すう」
王子「剣術に心得があるのは、城の騎士に稽古を頼んでいるからだ」
美女「・・・・・・すう、すう」
王子「容姿が端正と言われるのは、高い服を身に着けているからだ」
美女「・・・・・・すう、すう」
王子「・・・・・・つまるところ、私は、自身の力では何も出来ぬのだ」
美女(・・・・・・王子)
王子「そんな私が、民に笑顔を向けられ、時に頭を下げられる・・・・・・これ程悔しいことはない」
12 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:23:04 ID:wEUUT1l.
美女(・・・・・・そんなことないよ。それだけが、あなたの全てじゃない)
王子「・・・・・・ははは、くだらぬことを話してすまない・・・・・・こんなこと、寝ているあなたにしか話せなかった」
美女(・・・・・・いつでも話していいんだよ)
王子「・・・・・・行くぞ! 白馬!」
白馬「ヒイン!」
パカラっパカラッ
美女「・・・・・・すう、すう」
美女(・・・・・・・・・・・・何しにきたんだよこの野郎!!!)
13 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:33:42 ID:wEUUT1l.
翌日、茨の森、奥深く
パカラッパカラッ ヒイン
王子「やあ!」
美女「・・・・・・すう、すう」
王子「・・・・・・今日も、眠っているんだね」
美女(お前がキスしないで絵描いたり愚痴をこぼしているせいだろう!!)
王子「・・・・・・実は、私は恋焦がれているのだ。その美しい姿に」
美女(・・・・・・お?)
王子「だからこそ! 騎士道に準じて・・・・・・その、私と、プラトニックな関係を」
美女(そんなのいらないって! 好きならキス!! それで解決だろうに!!)
王子「・・・・・・君が目を覚ましたら、私は君に愛を告白しようと思う」
美女(あああぁぁあ分かってないな!! キスしたいんだよ私は!!!)
14 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:34:33 ID:wEUUT1l.
王子「・・・・・・しかし、なんと言えば良いのだろう・・・・・・愛している・・・・・・いや違うな」
美女(はっきりしろって! 男ならキス! 問答無用でキス!!)
王子「好きだ、結婚しよう・・・・・・いやいやいや、この花のようにあなたは・・・・・・いやいやいやいや」
美女(きーす、きーす、きーす)
白馬「ヒイン」パカラ、パカラ
王子「私があなたを幸せに? 愛? いや、城で一緒に暮らしませんか?」
白馬「・・・・・・」ベロベロ
美女(うわっ! ぺっ! やめろ! 馬! こら、馬!!)
王子「・・・・・・君は、どう思う?」チラ
美女「・・・・・・あ」パチ
王子「・・・・・・え?」
美女「えい!」チュウ
王子「むうう!?」
美女「ぷはぁぁ! やっとキスできたぞ馬鹿やろう! 遅いわ!!!」
王子「目、目を覚ましたのか!」
15 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:37:44 ID:wEUUT1l.
美女「あんまり遅いから馬で起きちゃったじゃないか!! 馬鹿!!」
王子「な、なにを」
美女「もういい! 帰る!!」スタ、スタ
王子「ま、待ってくれ! 君が好きだ!」
美女「はっきりしない男は嫌いだ!」スタ、スタ
王子「待ってくれ!! 君が好きなんだ!!」
美女「うるさい! キスできるようなってから出直してこい!!」
王子「そ、そんな」
美女「行くぞ! 馬鹿白馬!!」
白馬「ヒイン!」
パカラッパカラッ
王子「ま、待ってくれ!! 君を愛してるんだぁぁ!!」タッタッタッ
完
16 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:44:33 ID:wEUUT1l.
深い森の中
ヘンゼル(・・・・・・母さん、僕達を捨てたんだね)スタ、スタ
グレーテル「・・・・・・」スタ、スタ
ヘンゼル(・・・・・・でも、僕は母さんと離れるなんて嫌だよ。それに、グレーテルだって)
グレーテル「・・・・・・」スタ、スタ
ヘンゼル(・・・・・・だから、家に帰れるようにこのパン屑を)ポイ
グレーテル「もぐもぐ」
ヘンゼル(道の途中に捨てていけば)ポイ
グレーテル「もぐもぐ」
ヘンゼル(ちゃんと家に帰れるんだ!)ポイ
グレーテル「もぐもぐ」
ヘンゼル「おい」
グレーテル「んー?」
17 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:48:56 ID:wEUUT1l.
ヘンゼル「・・・・・・何を食べているんだい」
グレーテル「パン!」ニコ
ヘンゼル「・・・・・・それは、兄さんが道に置いたパンだよ」
グレーテル「ありがとうお兄ちゃん!」ニコ
ヘンゼル「ああ、いいよ。・・・・・・いやいやいやいや」
グレーテル「んー?」
ヘンゼル「いいかいグレーテル、よくお聞き」
グレーテル「うん」ニコ
ヘンゼル「このパンを道に捨てていけば、それを辿ってまた家に帰れるんだ」
グレーテル「ああそっか! お兄ちゃん頭が良いね!」ニコ
ヘンゼル「ありがとう。だから、落ちているパンを食べちゃ駄目だよ?」
グレーテル「分かった!」ニコ
ヘンゼル「よし、じゃあ行こうか」ポイ
グレーテル「もぐもぐ」
ヘンゼル「おい!」
18 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:52:20 ID:wEUUT1l.
グレーテル「んー?」もぐもぐ
ヘンゼル「・・・・・・そのパンは、兄さんが道に置いたんだよ」
グレーテル「美味しいよ!」ニコ
ヘンゼル「うん、美味しそうだね」
グレーテル「うん!」
ヘンゼル「食べちゃ駄目って、言ったよね」
グレーテル「うん!」
ヘンゼル「じゃあ食べちゃ駄目だよね」
グレーテル「うんっ!」ニコ
ヘンゼル「・・・・・・」ポイ
グレーテル「もぐもぐ」
ヘンゼル「こらっ!!」
19 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/03/22(水) 21:53:00 ID:VoRAIqOY
終わったと思ったらはじまた
20 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 21:56:59 ID:wEUUT1l.
グレーテル「んー?」
ヘンゼル「ねえ、グレーテル」
グレーテル「なーに、お兄ちゃん」ニコ
ヘンゼル「うちに帰りたくないのかい?」
グレーテル「帰りたいに決まってるでしょう!?」
ヘンゼル「あ、ああ。ごめん」
グレーテル「酷いよお兄ちゃん!」
ヘンゼル「うん、ごめんよ。もう言わないから」
グレーテル「なら許す」ニコ
ヘンゼル「グレーテルは優しいんだね」
グレーテル「お兄ちゃんの妹だもの」ニコ
ヘンゼル「・・・・・・よし、じゃあ行こうか」ポイ
グレーテル「もぐもぐ」
ヘンゼル「うおい!!!」
21 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 22:00:57 ID:wEUUT1l.
深い森の先、お菓子の家
ヘンゼル「・・・・・・結局パンの道は作れなかったなぁ」
グレーテル「お兄ちゃん! あれ見て!」
ヘンゼル「え? なにこれ!」
グレーテル「すごーい! お菓子の家だ!」
魔女「ヒイッヒッヒ! 私はこの家に住」
グレーテル「もぐもぐもぐもぐ」
魔女「・・・・・・」
ヘンゼル「・・・・・・」
グレーテル「美味しいよ、おばあちゃん」ニコ
魔女「・・・・・・ヒ、ヒイッヒッヒ! 私はこ」
グレーテル「もぐもぐもぐもぐ」
魔女「・・・・・・」
ヘンゼル「・・・・・・」
22 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 22:06:29 ID:wEUUT1l.
グレーテル「はあ、おなか一杯! お邪魔しまーす!」
ガチャッバタン!
魔女「・・・・・・」
ヘンゼル「・・・・・・」
魔女「・・・・・・」
ヘンゼル「・・・・・・あの、さっきの続き」
魔女「あ・・・・・・ヒ、ヒイッヒッヒ! 私はこの家に住むおばあちゃんだよ。お腹が空いたならこ」
ガチャッバタン!
グレーテル「お邪魔しました!」ジャラジャラ
23 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 22:07:43 ID:wEUUT1l.
ヘンゼル「・・・・・・グレーテル、そのパンパンに膨らんだポッケはなんだい?」
グレーテル「お土産!」ニコ
魔女「いや、それは私の宝せ」
グレーテル「お土産!!」ニコ
魔女「あ、いや、だからそ」
グレーテル「お土産!!!」ニコ
魔女「ああ、お土産だ。お土産だよ。もう煩いから帰っておくれ」
ヘンゼル「・・・・・・あの、すいませんでした」
完
24 :
◆rPuHN1dQX2 :2017/03/22(水) 22:13:28 ID:wEUUT1l.
雪の降る街
むかしむかし、雪の降りしきる大みそかの晩。
みすぼらしい服を着たマッチ売りの少女が、寒さにふるえながら一生懸命通る人によびかけていました。
少女「マッチは、いかが。マッチは、いかがですか。誰か、マッチを買ってください」
でも、誰も立ち止まってくれません。
少女「お願い、一本でもいいんです。誰か、マッチを買ってください」
今日はまだ、一本も売
おじさん「おお! 良い所に!! うちは煙草屋なんだが、マッチを運んでいる馬車が事故にあったようでね」
きょ、今日はまだ、一ぽ
おじさん「全部売ってくれ! なんなら支払いに色をつけても良い!」
きょ、今日はま
おじさん「ありがとう! 本当に助かった! いや、いいんだ。多いお金で暖かいものでも食べなさい」
今日は
少女「スープあったかいなぁ」
完
26 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/03/22(水) 22:19:28 ID:VoRAIqOY
面白かった
乙
30 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/03/23(木) 10:15:21 ID:EVA9IAkU
白馬△
乙
転載元
美女(きーす、きーす、きーす)王子「・・・・・・」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1490182570/
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