1 :
※ほのぱな(某所にて投下済み) [sage saga]:2015/02/14(土) 05:01:20.31 ID:XZ4s6zFjo
そりゃ穂乃果だって
地球が止まってる ように見えて
実は ぐるぐる回ってることくらい分かってるし、
自転するおかげで
お日さまと お月さまが ぐるぐる 無限に追いかけっこして
昼と夜とが回ってる って分かってる、
分かってるんだよ、
しかも 地球はひとりで回ってるだけじゃなくって
太陽の周りを ぐるりと一年かけて 回ってるもんだから、
いま 穂乃果の目の前が 真っ暗くもり空で
分厚い雲のおふとんが 視界ぜんぶを ふさいじゃってたってさ、
きっと どっか遠い国、
さっき テレビでやってた外国の天気、クアラルンプールとか?
ボスニア=ヘルツェゴビナとか?ストラストビーチェとか?
よく知らないけど、
私の知らないとこでは 太陽がさんさんに降ってて
穂乃果の分まであっためてくれてるんだ、そんなの分かってる、
分かってるんだって ほんとに、
だから 今日がくもりでも
自分のターンまでガマンしなさいって、そりゃあね、うん……。
って、そんなの知らないよっ!
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1423857680
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:02:20.75 ID:XZ4s6zFjo
きょうは朝練、
いつもより一時間早い目覚まし。
十一月すぎると晴れてる方がめずらしくって、
ぶっちゃけ布団のなかもそとも変わんないって感じで、
目覚めたー!おはようーっ!って感じになれない。
最近なんか雪穂やお母さんに怒られてばっか。
あと海未ちゃん。
ここ最近の東京じゃあ 私の太陽はそっぽ向いてばっかで、
ぽかぽか暖まれた気がしない。
いってきまーす、なんて声も重たい、まだ眠たいから。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:02:47.36 ID:XZ4s6zFjo
布団の中から出られないまんま、
こんな日がずっと続くような気がして、
携帯カイロなんかじゃ 指先の皮膚はあったまらなくって、
私の温度もどんどん下がってさ。
乾燥した空気が肌をどんどんカサつかせて、
穂乃果なんて すっかり干からびちゃいそうでね。
カバン抱えて 自分の身体を引きずってるだけで、
こんな顔みんなに見せらんないな
学校ついたら 顔でも洗って切り替えよって
いつも登る歩道橋を
わざとスルーして ビルの陰に沿ったルートにしたの。
そしたらね、
「あれ……穂乃果、ちゃぁん?」
って、声が上からきこえた。
ぽかぽかした、日だまりみたいな声が。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:03:13.94 ID:XZ4s6zFjo
花陽ちゃんだ。
私、ちゃんと手を振れたよ。
笑顔だったよ、たぶん。
頭の上、歩道橋の真ん中ちょっと過ぎたとこ、
花陽ちゃんはくもり空の弱い光を受けて、
でも見上げた場所で穂乃果に笑いかけてくれるあの子が
今でも きらきら輝いてるみたいで、
立ち位置と 陽の当たる向きと 影の関係かな、
あの子が 太陽みたいにみえちゃって。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:03:40.52 ID:XZ4s6zFjo
駆け寄ってきてくれる。
わざわざ、私の方まで引き返して。
すててててって階段を駆け下りて、
おはよう、
穂乃果ちゃん、
って名前呼んでくれる。
さっきまで じめじめしてたのが嘘みたい、
日だまりひとしずくを すくって集めたような、あったかい感じ。
いつもだったらなんも考えずに、ぎゅーってしてたかな。
でも、
私はあはは、おはよう、ってわらうばかりで、
自分の声も乾燥してつめたくなっちゃってて、
なんかもう、調子わるいなあって。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:04:07.09 ID:XZ4s6zFjo
花陽ちゃんのお話を聞くのがすきだった。
っていうより、
声をずっと聞いてたかった。
学校に向かう間も、帰るときでも、
私の知らないことをたくさん知ってて、
アイドルの話とか、お米の炊き方とか、なんだっていいの、
とにかく このやわらかくってお日さまみたいな女の子には
私の知らない世界がいっぱい詰まってて、
宇宙の神秘みたいで、
冬の朝に ストーブにあたるみたいに 惹かれてっちゃうんだ。
こころより先に、からだの方から、花陽ちゃんの方へ。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:04:33.68 ID:XZ4s6zFjo
「花陽ちゃん、今日、さむいね」
「そうだね。……でも、きょうはあったかいよ?」
「そう、かなぁ?」
いつもより3割増しで陰った雲の下で、
まだ開いてないタワレコのおっきな看板の下で、
(なんとかっていうアイドルが全面に映ってた。
花陽ちゃんがすっごい興奮してて、
なんでか 夕暮れ みたいにさみしくなった)
それなのに、
花陽ちゃんはたのしそうだった。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:05:00.23 ID:XZ4s6zFjo
きっと、
花陽ちゃんの こころの国は晴れきってて、
今日だって誰かを照らせるぐらいなんだ。
にこちゃんや凛ちゃん、
真姫ちゃんの方までぽかぽかと暖めてるんだ。
こっちのターンになって、穂乃果の季節になっちゃえばいいのに、
って思ってたりするんだけど。
「きっと、穂乃果ちゃんと一緒だからだよ」
……ふぇ?
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:05:26.81 ID:XZ4s6zFjo
って、花陽ちゃんのうつむいた顔、
近づいた腕の熱、
そんなの気にする間もなく信号が青になって
私たち向こう岸へ渡ってしまう(でないと遅刻しちゃうから)。
これから会社に向かう大人の人たちに流されるようにして、
私も花陽ちゃんも学校に近づいてく。
だけど、だけど!
どうしよう、急にそんなこと言わないでよ、穂乃果、
穂乃果ったら、
「……そんなにあったかくないよ」
なんて口にしちゃう私。
つめたい声。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:05:53.48 ID:XZ4s6zFjo
ああもう わけわかんないよね。
伝わんないよね 私のこころ。
いっつも 主語と目的語が抜けてるとかって
海未ちゃんに言われたりするもん。
信号渡りきって
あのファミマのとこ曲がったら もう学校着いちゃう。
花陽ちゃん黙ったまんま。
顔洗っとけばよかった、
陽は陰ったまんま、
ああもう今日だめだ寝てたかった
って言ってもしょうがないし
学校着いたら切り替えて いつもの高坂穂乃果に、
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:06:20.04 ID:XZ4s6zFjo
「……穂乃果ちゃんは、あったかいです!」
次の瞬間、
私は花陽ちゃんにぎゅってされた。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:06:46.62 ID:XZ4s6zFjo
うわ、わわっ、ええと、急に、どうしたの?
ええっとその、
「あのね、花陽はっ、
……穂乃果ちゃんみたいに、
みんなをあっためてくれる、照らしてくれる人になりたいって、
ずっと思ってるの」
「……そんなの、買いかぶりだよ」
私はそんなんじゃない。
太陽じゃなくって、太陽ごっこしてるだけ、
私だって みんなに笑顔になってほしいし、そうしてるだけ。
花陽ちゃんの方が、ずっとずっと自然で、
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:07:13.17 ID:XZ4s6zFjo
「それじゃあ、曇りの日は、私があっためてあげるね」
って花陽ちゃんが言ってくれた。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:07:39.71 ID:XZ4s6zFjo
これだけ聞いても意味わかんない、伝わんない言い方で。
穂乃果と花陽ちゃんにしか伝わんない国のことばで。
だからかな、
ぽっ、って心の奥に光がさした、
制服越しに感じる熱源がとってもいとおしくて、
あ、私もう大丈夫だ、って思えちゃった。
単純でちょろいけど、思わずわらっちゃって、
それが反響しあうように 花陽ちゃんにも伝わって、
ろうそくの火を近づけて
もう一本にも火をともすように、私の心が晴れてくる気がしたの。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:08:06.29 ID:XZ4s6zFjo
天気予報だと、昼までには晴れるみたいですよ。
って、すぐそばで教えてくれる。
テレビで言ってたみたい。
穂乃果はテレビつけたら
NHKの外国の天気しか映ってなくって、
見逃してたから、東京の晴れ模様なんて知らなかった。
でも、
花陽ちゃんが言うから、
きっと昼には晴れるんだ。
って考えたら今にも雲のスキマから光がもれだしてきたような、
単純だけど、そんな気がしたんだ。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/14(土) 05:08:32.85 ID:XZ4s6zFjo
ねぇどうしよう、学校着いちゃう。
どきどきしちゃって、汗かいちゃいそう。
でももうちょっとだけ、
雲のお布団の中で、
私の太陽にふれててもいいかな。
そしたら穂乃果、もう、大丈夫だから。
おわり。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/02/14(土) 08:03:15.51 ID:/YjFdc9vO
イミワカンナイ
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/02/14(土) 08:40:34.87 ID:k0nCd6Pmo
(どゆことー
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/02/14(土) 09:33:09.29 ID:SG73W3pf0
ほのぱなもあったのか
こういう雰囲気好き
乙
転載元
穂乃果「東京は、 くもり のち 晴れ !」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423857680/
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