1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 22:39:07.42 ID:lieVN8s70
男「は?」
座敷「こんばんは、男さん。私はこの部屋に宿る座敷わらしです」
男「は?」
座敷「本日はこの部屋に溜まった禍根の報告に参りました。
即刻ここを離れなければ、男さんの元に災いが降り注ぐでしょう」
男「は?」
座敷「猶予はありません。さあ、急いで荷物を纏めて出て行ってください」
男「は?」
座敷「……聞いていますか?」
男「え?」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 22:43:51.61 ID:lieVN8s70
男「えっと……君、何? ストーカー? そう言うのは良くないと思うんだけど……」
座敷「座敷わらしです。座敷童衆と書きます。昔話とかで、一度は聞いた事あるでしょう?」
男「……警察、警察」ピポパポ
座敷「無駄ですよ。私が実体化した時点で、この部屋には強い結界が張られています」
男「いやそんな毒電波発信されても……あれ、繋がらない……」カチカチカチ
座敷「残念でしたね。私が此処にいて、貴方がこの部屋を出て行く決断をしない限り、外との連絡は取れません」
男「さ、最近の妖怪はハイテクなんですね……」スタスタ
座敷「勿論」
ガチャガチャ
座敷「ドアの鍵を開けようとしても無駄ですよ」
男「……」
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 22:47:44.66 ID:lieVN8s70
男「……少し話をしようか」ストン
座敷「ええ、いいですよ」
男「ドッキリか何かだよね?」
座敷「電波ジャックするレベルのドッキリを、自分がしかけられてると思うんですか?」
男「……マジで、座敷わらしなの」
座敷「ええ、マジで」
男「最近の妖怪は割りとフランクなんだな……」
座敷「そんな事ありませんよ」
男「……いやいやいやいや。ちょっと待ってよ。色々とおかしいだろうが」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 22:51:30.15 ID:lieVN8s70
男「嘘だろ? 有り得ないよ座敷わらしとか。俺霊感無いもん」
座敷「妖怪に霊感は関係ありませんよ。妖怪を信じるか信じないかです。
これまでの生活を見る限り、貴方はそういった文化に多少なりとも興味を持っているのでしょう?」
男「そ、それはそうだけど……いきなりこんな事言われたって」
座敷「ま、それが普通の反応でしょうね……仕方ないですねぇ」ハフゥ
男「え、え、何?」
座敷「今、証拠を見せましょう」フッ
男「なん――」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 22:56:07.88 ID:lieVN8s70
ゾゾゾゾゾゾ
男「う、わああああっ!?」ビクッ
座敷「今、意識的に結界を緩めました。何が見えますか?」
男「は、はあ!? 何って、てて、天井にっ、黒いもやもやがああっ!?」
座敷「はい……これがこの部屋に溜まった禍根。災いの原因になる物です」フッ
男「あ……消えた……」
座敷「先程も言いましたが、これ以上ここに長居していると、あれは間違いなく貴方の身に降りかかります。
そうするとどうなるか……知りたいですか?」
男「……」ゴクッ
座敷「貴方は死にます」
男「」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:00:49.83 ID:lieVN8s70
男「……嘘だろ?」
座敷「何度も何度も嘘だろと……少しは信用してもいいんじゃないですか?」
男「そ、そう言う教育を受けたものでね……」
座敷「全く……どれもこれも事実ですよ」
男「でも、死ぬって……そんな阿呆な」ボーゼン
座敷「……だから、出て行けというのです。出て行けば……正確には出て行く覚悟を決めれば。
貴方はあの災いから逃れる事が出来ます」
男「……そ、それは……」
座敷「……何かこの部屋を離れたくない理由でも?」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:05:08.37 ID:lieVN8s70
男「い、いや……この部屋はもう何年も暮らしてるし、お隣さんとか大家さんとも、仲良くさせてもらってて……」
座敷「死んだら元も子もありませんよね」
男「うぐ……」
座敷「……大体、あの禍根を生み出した原因は貴方にあるのですよ?」
男「へ?」
座敷「大学生であるにも関わらず、毎日ぐうたら研究もせず遊び惚け。
その癖夜になると冷静に自分の将来の展望を不安に思ったり、けれど結局後回しにしたり」
男「……」グサグサグサ
座敷「禍根は部屋の居住者の不安、後悔を食べて成長します。
あの立派な黒いへどろは、いわば貴方の懺悔の結晶みたいな物なんですよ」
男「なん……だと……」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:10:38.74 ID:lieVN8s70
座敷「自分の愚か加減をようやく認識しましたか。自業自得ですね」プンスカ
男「……でも、この部屋を出てったら災いは俺に来なくなるんだよな?」
座敷「ええ」
男「じゃあ……えっと、この部屋に残ったその禍根は、一体どうなるんだ?」
座敷「勿論この部屋に残り、次の居住者に襲い掛かります」
男「な、そんなの駄目だろ!」
座敷「そうでしょうか? 貴方は無傷で、自分の失態を他人に擦り付けられるんですよ?」
男「で、でも……許される、訳が」
座敷「じゃあ貴方がここで死ぬんですか?」
男「……それ、は」
座敷「……毎度毎度、いるんですよね……そうやって、偽善を振り回す人は……」ハァ
男「くう……」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:15:39.63 ID:lieVN8s70
座敷「誰も犠牲にならずに禍根を消し方法も、無いことは無いんですよ?」
男「本当かっ!?」ガバッ
座敷「ええ……た、だ、し」ズイッ
男「な、な……」グググ
座敷「勿論、条件があります。それも、全てが一瞬で解決するような方法ではありません」
男「それって……」
座敷「貴方がこれから善行を積む事。一日一善、いえ十善百善行う勢いじゃないと、禍根を消し去る事は不可能です」
男「――なんだ。そのくらいだったら……」
座敷「簡単に済む、そう思いますか?」
男「な……いってぇ!?」ドサドサドサッ!!
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:21:01.19 ID:lieVN8s70
男「な、なんだ……本? 本棚から、落ちてきたのか……?」
座敷「禍根は最早爆発直前にまで成長しています。
今は私が結界で封じ込めていますが、その結界からあぶれた小さな災いが、今後日常的に貴方に襲い掛かります」
男「そ、そういえば最近よく箪笥の角に小指を」
座敷「それは貴方が馬鹿なだけです」
男「ば、ばか……」ガクリ
座敷「さて――どうしますか? 災いは些細な物ですが、どれもダイレクトに貴方に襲ってきます。
その煽りを受け、不安な感情を禍根に露呈してしまったら……。
結界を破られ、貴方は死んでしまうかもしれません」
座敷「それでも……やるんですか? この無謀な挑戦を始めるつもりなんですか?」
男「……じょ、上等だ」
座敷「……ふむ」
男「……生憎、尻拭いをするのは昔から慣れてるんだ。今回はそれがちょっと大きくなっただけだ……」
男「死んでたまるか。絶対に禍根を消してみせる!」
座敷「……いいでしょう」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:27:03.82 ID:lieVN8s70
男「……それで、質問があるんだけど」
座敷「はい、なんでしょう」
男「善行って、具体的には何をすれば」
座敷「知りません。自分で考えてください」
男「殺生な……」
座敷「禍根は人間の正の感情には弱いんです。
貴方が毎日善行を積み、すっきりとした感情を持って寝床につけば、禍根は着実に小さくなっていきます」
男「な、なるほど……」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:31:57.64 ID:lieVN8s70
男「じゃあ、後一つ」
座敷「はい」
男「君はこれからどうするんだ?」
座敷「勿論この部屋に宿らせてもらいますが、何か?」
男「……えっと、つまり、今までどおり俺が君を認知しない形で……?」
座敷「座敷わらしは一度実体化してしまったら、役割を終えるまで元には戻れません」
男「は? それって」
座敷「ええ」
座敷「貴方が禍根を消し去るまで……私はこの姿のまま、生活させていただきます」ニッコリ
男「」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:36:50.53 ID:lieVN8s70
座敷「大丈夫ですよ。寝る時は押入れを使わせていただきますし、着物もこのままで構いません。家事も一通り出来るつもりです」
座敷「案外居てくれた方が助かるんじゃないですか?」クスクス
男「家事が出来るのは凄いな……って、いやいや、着物のままは流石にまずいって」
座敷「そうでしょうか?」
男「ああ……お隣さんとかにも説明しにくいだろう」
座敷「そうですか……気に入っていたんですが」ショボン
男「あ、明日にでも買い物に行こうか?」
座敷「大学は」
男「うぐ」
座敷「……サボろうなんて、考えていませんよね?」ニコニコ
男「はいぃ……」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:43:12.94 ID:lieVN8s70
座敷「明日は一限からでしたよね」
男「はい」
座敷「では、六時半頃に起こします。簡単な朝食も作っておきますので、ご心配なく」
男「は、はあ」
座敷「では、また明日。おやすみなさい」ガラララ
男「おやすみ……」
男「……」ボフッ
男(まさかこんな事になるなんて……)
男(やっぱり自業自得なのか。困ったなあ……)
男(……でも、座敷ちゃん可愛かったな。あんな辛辣な台詞を吐いてた割には、家事全般を受け持ってくれるとか……)
男(結構、世話焼きなんだろうか)
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:50:32.72 ID:lieVN8s70
ゾゾゾゾゾ
男(……こいつとは寝る度眼をあわせなきゃならんのか……)
座敷“結界を少し緩めました。連絡が出来るようになりましたが、禍根からの嫌がらせも少しだけグレードアップします。ご了承ください”
男“微修正のきく、中々都合のいい結界なんだな……”
座敷“私たちは人間の想像の産物ですし、元からご都合設定の塊のような物です”
男“それを目の前本人に言われてもなあ”
男(想像の産物、か……)
男(消えろって願ったら、消えたりして)ギュッ
ゾゾゾゾゾゾ
男「……訳無い、か」フワァア
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/05(月) 23:56:11.54 ID:lieVN8s70
――翌朝
座敷「――男さん。起きてください。朝ですよ」ユサユサ
男「んぅ……誰……誰っ!?」バッ
座敷「座敷わらしです。それから相棒の」
ゾゾゾゾゾゾ
座敷「禍根です」
男「……思い出した」
座敷「それはなにより」ニッコリ
男「こいつ……外の人間にも見えちゃったりするのか?」
座敷「いえ、禍根に限っては例外で……そもそもこれは実体化してませんから」
男「ふぅん……よく分からないな……ふぁあ」
座敷「少しずつ理解していってもらえれば、大丈夫ですよ」スタスタ
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:01:37.31 ID:dTD8lsa80
男「いただきます」
座敷「どうぞ召し上がれ」
男「……」モグモグ
座敷「……どうでしょう」
男「……お袋の味」ジーン
座敷「ふふふ。料理には少し自信がありまして……」
男「こ、こんな物を無料で食べさせてもらえるなんて……ここが天国か……」モグモグ
座敷「何暢気な事を言ってるんですか。善行をしっかり積んできてくださいね」
男「そ、そうだったな……」
座敷「ほら、あまりゆっくりしてる時間はありませんよ。電車」
男「え……けどまだ一時間も……」
座敷「……」ジィ
男「……はい」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:05:33.16 ID:dTD8lsa80
――駅
ビュオオオオオ…
男「ふぅ……着いた」
男「電車が来るまで後一分……なんつータイミングだよ」
男「今日はフルで出るとなると、帰るのは大分遅くなっちゃうな」
男「買い物は明日だな……座敷ちゃん、外に出ないでくれるといいんだけど……」ウズウズ
男「はあ、それにしても今日は風が強――」
「危ない!!」
男「――痛っ!?」ガンッ!!
男「いったたたた……な、なんだ一体……か、傘?」
男性「すみません、お怪我はありませんか?」アセアセ
男「あ、はい……大丈夫です……」ヒリヒリ
男(……禍根、なのか?)
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:11:12.62 ID:dTD8lsa80
――電車内
男(流石、この時間帯はあんまり混んでないな……)
男(もう少し行ったら混み始めるだろうけど、これなら座れるか)ストン
男(禍根には最大の注意を……そして善行を探さないと……)キョロキョロ
JK1(なにあの人キョロキョロしてる……気持ち悪)ヒソヒソ
JK2(嫌だよね……目が血走ってる感じだし……)ヒソヒソ
男(……なんだか悪寒が)ブルッ
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:16:30.55 ID:dTD8lsa80
――数十分後
男(混んできたな……満席状態、か)
男(降りる駅までもう暫くあるが……)
婆さん「……」ヨボヨボ
男(……ようしっ!)グッ
男「お、御婆さん
婆さん「はいな?」
男「ぼ、僕立ちますんで、この席、どうぞ」ドキドキ
婆さん「あら、優しいのねえ。ありがとう」ニコニコ
男「い、いえお気になさらず……」ドキドキ
男(……や、やった)
男(緊張したが……不思議と悪い感じはしないな)
男(この調子でやっていけばいいんだな、座敷ちゃん……)
41 :
ありがとう頑張る :2011/09/06(火) 00:23:03.94 ID:dTD8lsa80
ギュウギュウ
男(き、気のせいかさっきまでと混雑具合が桁違いのような……)
ギュウウウウ!
男「……っ!」
男(いた、痛いっ! なにこれ! こんなの今まで無かったのに!)アセアセ
グリッ
男「――っ!?」
男(あ、足が踏まれてぇぇぇっ……!?)
男(禍根、禍根なのか! あれの影響なのか……っ!)
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:29:21.01 ID:dTD8lsa80
――大学
男「ひ、酷い目に遭った……」フラフラ
男「今のところ災い3、善行1、か……割に、合わない仕事だなぁ……」フラフラ
友「あ、男。おはよう」
男「おお、友……久しぶり」
友「久しぶりって、昨日会ったばかりじゃないか」
男「そうだっけ? ちょっと色々あったんだよ」
友「ふうん。まあその顔を見るとよく分かるよ。どうせ賭け事で失敗でもしたんだろう」
男「うーん……この場合はツケを払わせられてる感じ、かねぇ」
友「大変そうだね」
男「うむ……」
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:34:43.11 ID:dTD8lsa80
男「そうだ。肩揉みして欲しくは無いか」
友「なんだい急に」
男「いやー、お前テニスサークルで色々頑張ってるだろ。
疲れが溜まってるんじゃないかと思ってね」
友「疲れたところは自分でマッサージしているから大丈夫だし……いきなりどうしたんだ? 君がそんな事言うなんて」
男「うるせーこちとら善行つまなきゃいけないんだ! さっさと揉ませろ!」ギュッ
友「ひゃあっ!? ぜ、善行? なんの事だい?」ビクッ
男「お前には関係ないよ……お客さん気持ちいいですかー」モミモミ
友「はあ、全く……その調子でお願いするよ……」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:40:09.49 ID:dTD8lsa80
男「……ところでどうだ、テニスサークルは」モミモミ
友「んー、悪くないよ」
男「へえ」
友「私はあんまり上手じゃないけどね、それでも楽しくやっていけてる。
サークルメンバーの腕も、私と大体同じレベルみたいだし」
男「……そうかー。楽しそうだな」
友「うん。私は概ね満足しているよ」
男(……サークルか……入ろうと思ったことすらなかったな)
男(すっきりした気持ちで寝床に入ると言っていたか……善行じゃなくても、すっきりした気持ちだけでも、効果はあるんだろうか)
男(帰ったら聞いてみよう)モミモミ
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:46:58.84 ID:dTD8lsa80
――自宅
男「た、ただいま……」ガチャ
ゾゾゾゾゾ
男「あー、お前のせいで今日は色々酷い目にあったぞ……」
男「いや、それより座敷ちゃんは何処だ……ん?」
“そろそろ帰ってくる時間だと思うので、メモを残しておきます。
明日の食材が無かったようなので、買い物に行っています。
貯金箱からお金をちょっと拝借させていただきました。ご了承ください。
座敷”
男「わざわざ書置きなんて……ええ子や……」ジーン
男「買い物、か……ならすぐ戻ってくるかな……」
男「……」
男「買い物!?」
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:52:38.40 ID:dTD8lsa80
男「ままままずいまずいあんないたいけな女の子が着物姿でいたらあやしあやしあやしまれ」
ドサドサドサッ!!
男「……冷静になったわ」ポイ
座敷「ただいま戻りましたー……あ、男さん」ガチャリ
男「座敷ちゃん!? ……って」
座敷「また本が落ちてきたんですか」スタスタ
男「ああ、うん……それより、その格好」
座敷「これですか? ……男さんの借りちゃいました」
男「そ、そっか……着物のまま行ったのかと思ってた……」フゥ
座敷「ええ、さすがに私もあの格好のまま外を出歩くのはどうかと思いましたので」
座敷「今後は、部屋の中限定で身に付けたいと思います」ニコリ
男「……それもそれでどうかと思うけれど」
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 00:57:53.49 ID:dTD8lsa80
――
座敷「お夕飯できましたよー」
男「おおー、美味しそうだー」
座敷「ええ、男さんの大好きなカレーです。よく食べていらしたものね」
男「分かってらっしゃる……って、今までずっと此処に居たんだっけ」
座敷「はい。男さんの好みについては、大体把握しているつもりです」
男「流石だな……」
座敷「褒めても禍根は消えませんよ?」
男「いや分かってるよ。ああ、その件について、一つ質問がある」
座敷「はあ、なんでしょう」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:03:46.82 ID:dTD8lsa80
座敷「――つまり善行だけでなく、色んな活動による精神的充足で禍根をやっつけていこうと」
男「そんな感じだ。大丈夫なのかな?」
座敷「ええ、勿論。そもそも善行自体、男さんの精神的充足のきっかけに過ぎないので」
男「そうなんだ」
座敷「分かっているとは思いますが、現実逃避による不安や後悔からの脱出を図っても、禍根は決して無くなりません。
自分はこうした、何々が出来たと言う満足感を得られて、初めて禍根に傷をつけられるのです」
男「ふむ……難しいな、やっぱり」
座敷「これが普通なんですよ。男さんが今まで逃げ過ぎていただけです」
男「肝に銘じます……」シュン
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:06:41.76 ID:YgpVTWBt0
④
❹
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:08:32.96 ID:dTD8lsa80
座敷「……と言うか、その、さーくる? でしたっけ。
大体、体を動かした本を読んだり……そういう事をする物だとは理解できたんですが」
男「うん」
座敷「男さん、何かやりたい事とかあるんですか?」
男「それを聞くな……」ガクッ
座敷「……やっぱり」
男「君なら分かるだろう、今まで俺がどのような生活を送ってきたか!」
座敷「ぐうたらぐうたら。一日中ゲームをしている時もありましたねえ」ジトー
男「言い返す言葉も無い」
座敷「ゲームサークルとか合ったりするんじゃ無いですか?」
男「それは入ったら負けじゃないかな?」キリッ
座敷「変な所でプライドが高い……」ハァ
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:12:09.84 ID:dTD8lsa80
男「ごちそうさま」
座敷「お粗末様です。食器はどうぞお台所に」
男「ああいや、これくらい自分でやるさ」スタスタ
座敷「あら、そうですか?」
男「これも善行、かな……任せっぱなしも悪いし。座敷ちゃんの食べた分も洗っておくよ」
座敷「ふむ……ちょっともやもやしますが、その意気です」フンス
男「風呂洗うのは……昨日やったし明日でいいか。沸かしておいてくれるか?」ジャー
座敷「はぁいっ」ピッピッ
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:16:44.39 ID:dTD8lsa80
男「終わり、っと」キュッキュッ
座敷「お疲れ様です」カキカキ
男「いやいや。何書いてるんだ?」
座敷「はい書けました……これっ」
男「なに……“善行チェックリスト”?」
座敷「今まで行ってきた善行を書いて、それを振りかえる事によって気分を改める!
そんな画期的アイテムです!」
男「……どうでもいいけど、普通に横文字使えるんだな」
座敷「妖怪をなめちゃいけませんよ」フンス
男「そうだな……ありがとう、使わせてもらうよ」
座敷「はい!」ニコニコ
男(この脇に描かれたやたら可愛げのある黒いもこもこは……突っ込まない方が良さそうだな……)
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:21:48.00 ID:dTD8lsa80
――
座敷「お風呂、空きましたよ」ガラガラ
男「おーう……」ジー
座敷「……どうかしました?」キョトン
男「いや、やっぱり着物似合うな」
座敷「そうですか? 確かに私も、これが一番なじんでいますが……」
男「でも服は買わないとな、俺の服着せるのも悪いし」
座敷「そうですねぇ……私は別に構いませんが……」
男「いやいや、やっぱり女の子なんだし……お洒落とか、あんま気を使わなそうだけど」
座敷「し、失礼ですね。これでも十六の立派な女です!」
男「化粧って分かるか?」
座敷「なんですかそれ」キョトン
男「……風呂行ってくるわ」
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:26:18.40 ID:dTD8lsa80
――浴室
男「ふぅー……一日の疲れが癒えていく……」ザバァ
男「今日は……一体何を善行と呼ぶべきか難しいが、色々できたし満足だ」
男「……それにしても、まだ、初日だよな……」
男「馴染みすぎだよなあ……座敷ちゃん……」
男「どのくらい前から此処にいたんだろう……今度聞いてみるか」
男「……うー。百数えて、上があちちちっ!」ジャバジャバ
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:29:29.17 ID:dTD8lsa80
男「たーらーいー」ガララ
座敷「っ!」ササッ
男「ん? 何してるんだ、座敷ちゃん」
座敷「あ、いえ……テレビを、見てました」
男「そっか……こう言うのも、やっぱり前から見てたのか?」ストン
座敷「はい、そうですね……男さんからは見えないだけで、大分自由に活動できました。
実体を持たないので、物に触れる事は出来ませんでしたけど」
男「そう考えると不思議な物だな」
座敷「座敷わらし、これでも妖怪ですから」
男「そっかあ……」
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:32:55.71 ID:dTD8lsa80
座敷「えっと……明日はお休み、ですね」
男「うん。一日ぐうたらできるぞ」
座敷「……」ジッ
男「じょ、冗談だからそんな怖い顔しないでくれ……まずは買い物、だな」
座敷「はい。善行を積む事も忘れないでくださいね。迷子がいたら積極的に声をかけたり、とか」
男「それより禍根の嫌がらせが怖いよ俺は……」
座敷「禍根ですか……今日は何かありましたか?」
男「いやそれが朝っぱらから色々と――」
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:35:53.38 ID:dTD8lsa80
――
座敷「ふぁあ……」
男「眠いか」
座敷「ええ……すみません、そろそろ横になりますね……」トコトコ
男「それじゃ、俺も寝るかな……」
座敷「分かりました。また明日、朝食が出来次第起こしますね」
男「ああ……なんかすまないな、毎日」
座敷「気にしないでください……私だって、男さんの事、精一杯支えてあげたいんですから……」ニコッ
男「そ、そっ……か」ドキ
座敷「おやすみなさい」ガララ
男「お、おやすみ」
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 01:40:00.16 ID:dTD8lsa80
男「……」ボフッ
男「……~~~~ッ!!」ジタバタ
男(な、なんだあの笑みはっ! 反則だ! あんなの友だってした事ないぞ!?
女の子はあんな表情も出来るのか! すげえ!)
男(ああくそ畜生なんなんだなんで俺はこんなどきどきしているんだ! 相手は座敷わらしだぞ! しっかりしろ俺!)
男(おい……分かるか禍根! この訳分からん感情が!
俺はどうすればいい! 応えろ! 応えてみろ禍根!)
ドサドサドサッ!
男「……顔面直撃は酷いと思うぞ」ポイ
座敷「……くぅ……くぅ……」スヤスヤ
――――
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 13:49:37.82 ID:dTD8lsa80
座敷「男さん、朝です。おきてください」ユサユサ
男「おう? おう……おはよう」
座敷「おはようございます。朝ごはん、出来ていますよ」
男「ああ……分かった、今から行く」
座敷「はい」スタスタ
男「……やーっぱ朝はまだ慣れないな……」
ゾゾゾゾゾゾ
男「お前も朝から元気だなあ……今日は出かけるんだし、控えめで頼むぞ」
座敷「男さーん?」
男「あいよぉー」
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 13:52:37.24 ID:e+FwuaYX0
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:00:49.59 ID:dTD8lsa80
男「いただきます」
座敷「どうぞ召し上がれ」
男「……もぐもぐ。うん、美味い」
座敷「それは良かった……」ニコニコ
男「そういや、こういう料理とかって、何処で学んでいるんだ?」
座敷「見様見真似です」
男「え」
座敷「テレビでやっていたり、男さんのを見てたり……家事に関しては、大体そんな感じですね」
男「流石妖怪……いや、神の子か……」モグモグ
座敷「褒めても何も出ませんよ」ズズズ
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:05:25.43 ID:dTD8lsa80
男「まだ七時かー……」
座敷「今まで、休みの日の午前中はずっと寝ていましたしねぇ」ジトッ
男「うっ……で、でもこうして更正の道を着実に歩んでいるじゃないか」
座敷「どーでしょ。私が居なくなったらまた元通りなんじゃないですか?」
男「し、失礼な……」
座敷「……ふふふ。ま、その性格もこれから治していけばいいですし。
今日はお出かけですから、リラックスしていきましょう」
男「うむ……」ズズズ
男(心なしか楽しそうだ)
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:09:32.24 ID:dTD8lsa80
男「ごちそうさま」スタスタ
座敷「お粗末様……また、洗うんですか?」
男「こう言う仕事の分担は必要じゃないか? 全部任せっきりなのも悪いし」ジャー
座敷「そう、ですか……」
男(複雑そうな顔をしている……やっぱり世話焼きなのか)
男「洗い物、したかったのか?」
座敷「あ、いえ……男さんがそうやって自主的に動いてくれるのは嬉しいです」
男「なんだか貶された気がするな」
座敷「戒めとして受け取ってください」フンス
男「はいはい」フキフキ
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:14:44.68 ID:dTD8lsa80
座敷「では、お任せしました。着替えてきますね」スタスタ
男「ああ、うん」
男(男物の服を着るのになんら抵抗無いのがすげぇ)
座敷「あ」ピタ
男「ん?」
座敷「……着替え、覗いちゃだめですよ」
男「阿呆か……早く着替えてきてくれ」
座敷「ふふ……」スタスタ
男「全く……」
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:20:01.65 ID:dTD8lsa80
男「覗く訳無いだろう、常識的に考えて」フキフキ
男「……」
男「……まあ、確かに」
男(座敷ちゃんの可愛らしさは、世の中巡ってみても中々出会えないレヴェルだろう)
男(年頃の女の子らしく、出るとこは出て、きゅっとするところはきゅっとしていて……)
男(素晴らしい。いやもうずっと眺めていたくなるくらい素晴らしい)
男(だが、しかしだ)
男(昨夜の微笑みに脳をやられかけたとしてもだ)
男(……俺は紳士的に行動せねばならない。禍根は今もこっちを睨んでいるのだ)
男(だから静まれ、愚息)
182 :
エロは申し訳程度に入るかも :2011/09/06(火) 14:26:07.10 ID:dTD8lsa80
男「座敷ちゃん? もういいか?」トントン
座敷「あ……はい。大丈夫です」ガラララ
男「……素材が良いと何を着ても似合うな」
座敷「そんなしみじみ言われても、対応に困ります」
男「ボーイッシュ担当は友のつもりだったが……これはこれで」
座敷「何の話です」
男「なんでもない……よし、じゃあ着替えるわ」
座敷「あ、はい」スタスタ
男「……あの、座敷ちゃん?」
座敷「はい?」
男「なんで部屋の中に戻るの?」
座敷「え、着替え終わるまでテレビでも見ようかと……」
男「俺着替えるんだけど!?」
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:32:40.94 ID:dTD8lsa80
座敷「それは知ってますけど……見られたく無いんですか?」
男「あ、当たり前だろ、俺だって年頃の女の子の前でストリップショーなんてしたくないぞ」
座敷「ただパジャマを着替えるだけじゃないですか……それに」
座敷「実体化される前から、私はこの部屋に居たんですよ?」
男「」
座敷「今更恥ずかしがるのも……」クスクス
男「い、いや駄目だ駄目だ、実際に存在を認識しているとしてないじゃ話が違う!」
座敷「むう、仕方ありませんね……」スタスタ
男「仕方無さすぎなんだよー……」
男(……変な所で常識に疎いんだな)
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:38:32.92 ID:dTD8lsa80
男(なんとか出て行ってもらえたな)
男「着替えるか……」ガサゴソ
男「うう、基本黒い服しか無い……唯一あった色柄のも、座敷ちゃんが着てしまった」
男「まあいいか……これと、ズボンはこれ、で……」
男「……うぇ、靴下に穴開いてる」
男「……これも」
男「……これもっ!?」
男「また禍根か……なんつー地味な嫌がらせを……」ハァ
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:45:03.90 ID:dTD8lsa80
――
男「よし、行くかー」
座敷「あら、サンダルですか?」
男「靴下に全部穴が開いててな」
座敷「それはまた」クスクス
男「座敷ちゃんは……草履、だと」
座敷「変でしょうか?」
男「い、いや……それで良いと思う」
座敷「靴は、ちょっと足がしめつけられてる感じが……昨日男さんの履いて出かけようとしたんですが」
男「もう突っ込まないぞー……」
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:51:45.97 ID:dTD8lsa80
――デパート
男「毎度おなじみジャスコです」
座敷「華やかな所ですねー」
男「んー、ずっと部屋の中に居たんじゃ、そう見えるかもな……」
座敷「ふふ、楽しいです。お洋服は何処で買えるんですか?」
男「おう、こっちだ。迷子にならないように、しっかり着いて来てくれよ」
座敷「こ、子どもじゃないんですから、大丈夫ですよ!」
男「まあ確かにスタイルはとても――」
ガシャガシャッ!
店員「お客様!? 大丈夫ですかー!?」
座敷「男さんが、積み上げられてた野菜の下敷きに……」
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 14:57:24.79 ID:dTD8lsa80
男「……酷い目に遭った」ヒリヒリ
座敷「時間取られてしまいましたねー」
男「くそ禍根め、座敷ちゃんのボディーガードのつもりかよ……」
座敷「元はといえば貴方の責任なんですから、甘んじて受け入れてください」フンス
男「まあ、それもそうか……着いた」
座敷「わあ……テレビで見てから、一度来てみたかったんです!」
男「そうかそうか。お金はあるから、好きなだけ選ぶといいよ」
座敷「本当ですか!? ありがとうございます!」ニッコリ
男「いやいや、その顔が見れただけで十分……」
男(化粧の事は知らなくても、やっぱり女の子、かー)
男(友だって自分の買い物には時間かけるしなあ……)
197 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:03:09.42 ID:dTD8lsa80
座敷「男さん、こっち、こっち!」グイグイ
男「ああ、ああ、そんな慌てなくても服は逃げていかないぞー」
座敷「でも向こうから来てくれることもありませんよ!」
男「そりゃそうだが……どっかで聞いたことある風な台詞だな」
座敷「これっ! どうですか?」バッ
男「ふむ、ワンピースか」
男(座敷ちゃんが着たら、もはや絶滅危惧種となった黒髪清楚ワンピース美少女じゃないか。素晴らしいな)
男(まあ清楚と言うには少し辛辣な言葉が多いような気もするが……)
座敷「……今失礼な事考えてませんでした?」
男「すみません、買ってきます」
座敷「え? あ、いやちょっと待ってください」アセアセ
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:09:40.08 ID:dTD8lsa80
男「わざわざ試着かー」
座敷「ここは服屋さんですよ? このくらい常識です」
男「座敷わらしに常識を説かれてしまった」
座敷「よいしょっと……開けますよー」
男「ばっちこい」
ガラララ
男「……」
座敷「ど……どう、でしょう」
男「Yes,with plesure」
座敷「はい?」
男「いや、なんでもない。素晴らしい。非の付け所が無い。流石座敷ちゃんは世界一の座敷わらしだ」
座敷「あ、いや、そ、そんな褒められても……何も、出ませんよ……」テレテレ
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:14:49.31 ID:dTD8lsa80
店員「おかいあげありがとうございましたー」
座敷「……」ニコニコ
男「良い買い物をした」スッキリ
座敷「これも一つの善行ですね」
男「え? そうなのかな」
座敷「ええ、私は今、男さんに洋服を買ってもらって嬉しいと思っています。立派な善行です」
男「ああ……それなら、そうかもな」
座敷「……でも」
男「え?」
座敷「善行は確かに素晴らしいのですが……今回に限っては、これが当然だとは、思ってはいけませんよ」
男「……どういう事?」
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:21:20.24 ID:dTD8lsa80
座敷「……私は一介の座敷わらしです。居候なんです。施しを受ける立場では、ありませんから」
男「……そんな事言わないでくれよ」
座敷「で、でも」
男「でももけれども無い。嬉しいと思ったんなら、遠慮する事は無いだろ?」
男「こんな事、俺が言うのもおかしいかもしれないけど……もう何年も一緒にやってきた、家族みたいなものなんだし」
座敷「……っ」
男「……座敷ちゃん?」
座敷「……そう、ですね。ありがとうございます。昼食は、どうしましょうか」
男「え? ああ、うん、どうしようか……」
男(……少し、気取りすぎたのだろうか)
男(一瞬だけ……座敷ちゃんは、悲しそうな顔をしていた)
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:30:07.89 ID:dTD8lsa80
――フードコート
座敷「これが、ファーストフード……こんなにも美味しい食べ物だったなんて」パクパクモグモグ
男「食べ過ぎると太るぞー」
座敷「むぐっ……お、お少しどうぞ」スッ
男「……ありがとう」モグモグ
座敷「しかし、凄いですね、人間は。こんな食文化をも生み出してしまうなんて」
男「無駄に妄想を実現する行動力はあるからなあ」
座敷「男さんはその十分の一もありませんけどね」
男「お、俺だって夢の実現に向けて日々努力をだな」
座敷「ほーう……どんな夢なんですか?」ニヤニヤ
男「そ、それは言えない約束だな」
男(……座敷ちゃんとの甘い生活を夢見ているとか言ったら、多分引かれるだろうな……)
男「うあっ、この野菜生のままじゃないか……」ガクリ
座敷「それが普通でしょう……」
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:36:34.01 ID:dTD8lsa80
男「なんとか全部食えた……」ゲッソリ
座敷「だ、大丈夫ですか?」
男「うん、問題ない……さて座敷ちゃん」
座敷「あ、はい。なんでしょう」
男「遊びに行こうか」
座敷「へ?」
男「折角デパートまで来たんだ。色々遊んでいかないと損だと思わないか」
座敷「で、でも……いいんですか」
男「こう見えても金はあるんだ。
それに、座敷ちゃんの歓迎みたいな事も今まで出来て無かったし」
座敷「か、歓迎なんて、そんな」
男「問答無用だ、行くぞ!」グイッ
座敷「あっ、ちょ、男さんっ!?」
211 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:44:11.38 ID:dTD8lsa80
――ゲームセンター
座敷「わっ、なっ、なにこれ、すごいっ……!」ガクンガクン
男「大丈夫、落ち着いて」グイッ
座敷「あ、やぁっ、そんな、早くしたら、と、飛んじゃ……!」
男「ほら、しっかりつかまって」
座敷「は、はいっ……あっ、お、おとこ、男さんっ……!」
男「もうちょい、もうちょいだ」
座敷「あ、あっ……や、あっ! あ……お、終わり? 終わりですか?」
男「うむ。初めてにしては上出来じゃないか」
座敷「そ、それは……男さんのサポートがありましたし……」
座敷「あ、あの……もう一回しちゃ、駄目ですか……?」
男「……おう、座敷ちゃんの気が済むまで、何回でもやっていいよ」
座敷「あ、ありがとうございます……」テレテレ
男(……レースゲーム、好きなんだ)
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:46:39.63 ID:dmOJ7yZX0
座敷わらしかわえええ
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:52:01.66 ID:dTD8lsa80
座敷「きゃああ!? なにこれ! 鵺!? 狐!? 天狗ですか!?」
男「いや、ゾンビだからな。その妖怪達がこんなクリーチャーになってたら幻滅物だぞ」
座敷「ひ、人を怖がらす事に関して彼らは一流ですから……うわあ、打ったらなんか出たぁ……」
男(エロい……)
ザクシュ
男「あ」
座敷「お、男さん!? 大丈夫ですか?」
男「あーくそ、油断してた……待ってろ、今コンティニュー……」
座敷「は、早くっ! 早くしてくださいっ! 一人でやるのは怖いんですから!」
男「……よし、観戦しよう」
座敷「ちょ、ちょっと!? 男さん!? ひ、一人にしないでくださいよぉぉ!」アセアセ
男(可愛いなあ……)シミジミ
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:59:01.64 ID:dTD8lsa80
男「……出来心だったんです」ドゲザ
座敷「……」ツーン
男「そんないじけないでください、好きな物買いますので……」ヘコヘコ
座敷「……ふん。いじけてなんかいません。でもさっきので確実に私の禍根が成長しましたよ」
男(妖怪にも禍根は出来るのか……)
男「もうしません……あ、そうだ、アイス食べなくないですか?」
座敷「……」ピク
男「この前テレビでやってたじゃないですか。三段重ねのコーンアイスの店。
あの店舗、このデパートにもあるんですよ」
座敷「……」ピクピク
男「今はデパートの中ですから涼しいですが、外は三十度の真夏日です。
どうでしょう、今の内にアイスで体力を回復するのもいい手だと思いませんか?」
座敷「……~~っ」ピクピクピク
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 15:59:09.04 ID:r2PcvzdeP
座敷わらしスレか
かんなぎ家(ナギ様じゃなくGA文庫のラノベ)もオススメって程じゃないが挙げとくか
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 16:07:15.04 ID:dTD8lsa80
座敷「……今回はアイスに免じて許してあげます」ペロペロ
男「有難き幸せ」
座敷「今度やったら、その時は結界を無くしてしまいますからね?」ペロペロ
男「しゃ、洒落にならない……」
座敷「洒落じゃありません」
座敷「あの時……怖かったんですから」
男「そうか……ごめん」
座敷「……それに」
男「ん」
座敷「……一人で楽しむのは、嫌なんです」
男「……」
座敷「貴方から施しを受けるのは、嫌だとは言いませんよ?
服を買ってもらった時は、本当に嬉しかったですし」
座敷「でも、嫌なんです……多くを与えられるのは、いつかその代償を払わなければならない」
男「……禍根、か」
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 16:16:03.83 ID:dTD8lsa80
座敷「……そうですね。現に貴方は今、与えられた現実逃避の時間の代償を、命を賭けて支払っています」
座敷「それは私だって、同じ」
座敷「貴方から与えられた多くの喜びの代わりを……払う必要がある」
男「そ、それならもう、前貸しがいくらでも……」
座敷「勿論、貴方に対しての支払いは、貴方のサポートに務める事で賄われています」
座敷「……でも。払うべき対象は、貴方だけじゃないんです。この時間に対しても、いつか返さなきゃいけないんです……」
男「……よく、分からない」
座敷「……そうですよね。すみません、全部こちらの都合ですから」
男「……」
座敷「……ただ、一つだけ覚えておいてください」スッ
男「え……」
座敷「楽しむ時は、一緒に。自分は一歩引くことを考えず、どうか、一緒に楽しんでください」
男「……分かった」
座敷「……約束ですよ」ニコリ
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 16:24:23.62 ID:dTD8lsa80
――帰り道
男「もう、夕方かあ……」テクテク
座敷「なんだかんだで、一日中居てしまいましたね……」スタスタ
男「はあ……明日はまた大学、か……」
座敷「そうですよ。もっとしゃきっとしましょう。善行を積むのは、まだまだこれからが本番なんですから」
男「らじゃー」
座敷「その意気です」ニコリ
男「……うん。座敷ちゃん」
座敷「はい?」
男「今日は楽しかったよ」
座敷「え……っと? 私も楽しかったですけど……」
男「楽しかったのは君だけじゃない。俺も十分楽しかった」
男「一方的に俺が座敷ちゃんに楽しみを与えてる訳じゃ、無いんだ」
座敷「……」
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 16:29:01.33 ID:dTD8lsa80
男「座敷ちゃんに言われなくても、俺は座敷ちゃんと一緒に楽しんでるつもりだよ。
一方的な奉仕活動は、まあ、苦手でね」
男「なるべくなら、一緒に居る誰かと楽しもうとする奴なんだよ、俺」
座敷「……」
男「だから……まあ、そのなんだ」
男「君さえ、良ければ……また、遊びに来たい。あ、勿論、善行を積むのもしっかり――」
ギュッ
男「……座敷ちゃん?」
座敷「……また、来ましょうね」
男「あ、ああ……」
座敷「……こほん。失礼しました」スッ
男「お、お気になさらず」
座敷「……」
男「……」
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 16:34:38.12 ID:dTD8lsa80
男(なんだろう、凄い気まずい……)
男(いきなり抱きつかれたのはびっくりしたな……座敷ちゃんも、顔赤くしてるし……)
男(こ、ここは男らしく、気の利いた一言でも――)コホン
男 座敷「あの」
男「……」
座敷「……」
男「……ぷ、っはは」
座敷「ふ、ふ……なんで、笑うんですか?」クスクス
男「い、いや……座敷ちゃんだって、笑ってるだろ……」
座敷「ふふ……そんな事、ありませんよ」
座敷「……ね、男さん。私から言っていいですか?」
男「ああ、いいよ」
座敷「ありがとうございます」ニコニコ
座敷「……私ですね。ずっと、前から貴方の事が――」
ドォォオオオオォン――……
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 16:40:38.42 ID:dTD8lsa80
男「なっ……なんだ?」
座敷「……凄い、音がしましたね」
男「……ざ、座敷ちゃん、あれ!」
座敷「――!」
男「マンションの、部屋が……ぐしゃぐしゃになってる……のか?」
座敷「……」スンスン
男「座敷ちゃん? どうし……」
座敷「――男さん。すみませんが、先に帰っていてください!」ダッ
男「なっ……座敷ちゃん!?」
座敷「後で、説明しますから――!」タタタタッ
男「は、速っ……!?」
男「あー……くそっ。先に、帰ってろったって……」
男「放っておける訳、無いだろ……!」ダッ!
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 16:47:03.06 ID:dTD8lsa80
男「はっ……はっ……!」
男(ああ……一体何がどうなっているんだ?)
男(さっき座敷ちゃんが言いかけた言葉も気になるし……座敷ちゃんが走って行った理由も分からない)
男(座敷ちゃん、見た目以上に野次馬根性旺盛だったのか?
そりゃ、基本見てきたものがテレビの中で完結してたら、分からなくも無いけれど……)
男(……)
座敷“禍根が降ってきたら、どうなるか”
座敷“貴方は死にます”
男(――まさか)
男(まさか、あの部屋で――!?)
236 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 16:56:01.06 ID:dTD8lsa80
――某マンション
男「……つい、た」ハァハァ
男「もう、結構時間は経ってる……警察とか着ててもおかしくないだろうに……?」
男「……急がないと」
男「座敷ちゃん……」
――
男「う、お……外の壁までぐしゃぐしゃに……なんで、こんな」
男「全部、禍根の仕業なのか……あいつのもたらす災いは、こんな規模なのか……!?」
男「……この部屋、だ……!」
男「……座敷ちゃんっ!」ガチャッ!
241 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 17:14:28.53 ID:dTD8lsa80
男(リビングと思しき部屋の中は、酷い有様だった)
男(壁も、ドアも、家具も、全てがひしゃげて、ぐちゃぐちゃになっていた)
男(その部屋の真ん中で)
男(座敷ちゃんと――彼女に良く似た顔つきの女の子が。
抱きあうようにして、座っていた)
少女「ひぐ……ぐすっ……あぁ、あぁぁあっ……!」
座敷「……貴女も、失敗してしまったんですね……ん、大丈夫……貴女は最善を尽くしました。頑張ったんですよね……」
少女「わたし……わたしがぁっ、余計なこと、するからっ……最初から、この部屋から出していれば、こんな事にはならなかったのに……!」
座敷「……そう言わないでください……今回は、失敗してしまっただけです。
貴女は一度、世界に帰って……そこで再び、生を受けるんです」
少女「だめ、駄目だよ……私はどうせ、繰り返しちゃうよ……また、私のせいで、殺しちゃうよ……!」
座敷「……諦めないで。お終いだと思っちゃ駄目。まだ、何処かに……貴女を求めている人は、いるの。だから……」
座敷「……今は、泣いてください。一生懸命、思い出してください」
座敷「貴女を必要としてくれた人が居た事を」
少女「あぁ――あああああああっ!!」ギュッ
座敷「……」ギュッ
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 17:21:17.29 ID:dTD8lsa80
少女「……ありがと、お姉ちゃん」
座敷「どういたしまして。頑張ってね」
少女「……うん。今度こそ……私、ちゃんと……ちゃんと、助けるよ」
座敷「……その意気です」ニッコリ
少女「……」ニッコリ
男(――女の子は、最後に笑って、消えた)
男(霧がさっと、晴れるかのように……その場から、消え去ってしまった)
座敷「……男さん」
男「……座敷、ちゃん」
座敷「……驚き、ですか?」
男「……そりゃ、ね……」
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 17:28:33.55 ID:dTD8lsa80
座敷「……これが、座敷わらしの一つの結末です」
男「結末……」
座敷「禍根を抑え切れなかった場合。
部屋の持ち主は禍根に肉体を食われ、その部屋の座敷わらしは……多くの悲しみと、次回への希望を持って、もう一度生まれ変わる」
男「……ハードな業界、なんだな」
座敷「……全く、ですよ」
座敷「……男さん」
男「……うん」
座敷「絶対に――死なないで、くださいね」
男「……約束、する」
男(こちらを見た座敷ちゃんの顔は)
男(ついさっき見た――悲しい表情を、浮かべていた)
274 :
板チョコ美味い :2011/09/06(火) 17:50:59.41 ID:dTD8lsa80
――大学
男「うぃよぉー……」
友「……元気ないね」
男「うーん……色々あってなー……」
友「この前も同じような事を言っていたような気がするけど……善行を積む、だったかな。上手く行ってないのかい?」
男「いや、そっちはちょこちょこ頑張ってる。お年寄りに席譲ったり、ボランティア活動に参加してみたりとか」
友「今までの君とは大違いだね……それでも、何か引っかかる事があるのか」
男「……うむ」
友「……相談相手なら、今目の前にいるつもりだけどね」
男「いや、人に相談するような事じゃないさ……ほら、肩もませろ」
友「そうかい? 君がそう言うなら、深く問い詰めたりはしない」
男「……ありがとな」モミモミ
友「長い付き合いだからね、気にしなくていいよ」
278 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 18:00:28.21 ID:dTD8lsa80
男(あれから……座敷ちゃんの様子が、少しだけおかしい)
男(普段はいつものように振舞っているけど、夜眠る前になると、あの悲しい眼をするようになった)
男(それを口に出して問い詰める訳にもいかず……しかしこのもやもやを溜め込むと禍根が喜んでしまう訳で……)
友「……男、本当に大丈夫かい?」
男「む……」
友「人に相談するような事じゃないと君は言ったが……溜め込みすぎるのも良くない。
抱えている問題を解決する前に、倒れてしまうかもしれないよ」
男「……」
友「君が言ってくれれば、いつでも相談に乗るよ。
私は……これでも、結構、君の事を気にかけているんだよ」
男「……顔赤いぞ」ヌッ
友「なっ!? な、何見てるんだ! 黙って肩を揉んでいてくれよ!」アセアセ
男「それじゃ相談できないじゃねぇかよー」ニヤニヤ
友「く……この、人が折角勇気を出したと言うのに君は全く……」ブツブツ
男(……ありがとう、友)
279 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 18:02:54.99 ID:6+jzqmjB0
友可愛い
280 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 18:08:32.77 ID:dTD8lsa80
男(相談……か)
男(確かに、必要かもしれないな……)
男(今日帰ったら、話しあってみよう)
男(座敷ちゃんのあんな顔を見るのは……もう、御免だ)
友「……で、結局私にはなんも話してくれないのかい?」
男「拗ねてるんですか奥さん」
友「拗ねてない! 奥さんでもない!」
男「はー、しかしまあお前もそろそろいい年だろ。彼氏の一人くらい作ってもおかしくない筈だけどな。
サークルにも入ってる訳だし」
友「……君は、やはり馬鹿なんだな」
男「ななななななんだと!?」
友「……なんでもない、馬鹿」プイ
282 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 18:13:27.75 ID:dTD8lsa80
――電車
男「どうぞ、座ってください」
婆さん「おや、ありがとう」
男「いえいえ」ニコニコ
男(しっかしまあ日常的に出来るようになったもんだ)
男(やっぱり命かかってると、色んな事が出来るもんだなあ……)
男(……命がけ、か)
男(座敷ちゃんも……同じような物なんだろうか)
289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 18:45:05.47 ID:dTD8lsa80
男(命をかけて、部屋の居住者を助けて)
男(もし失敗してしまったら、全て失って……また、誰かの家に宿って……)
男(本当、ハードな業界だ……)
男「責任は全部、人間にあるって言うのに……」
男(……楽させてやろう)
男(早く、禍根を消して……彼女の不安を消してあげよう)
男「……ふう」
335 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 21:47:47.89 ID:dTD8lsa80
――
座敷「……」ズズズ
座敷「……涼しい秋の夕方は、お茶を飲むに限ります」ズズズ
座敷「男さん、ちゃんと大学に行っているでしょうか」
ゾゾゾゾゾ
座敷「少しずつ禍根は小さくなっていますし、今のところは順調ですが……」
“余計な事するから”
“最初から、この部屋から出していれば、こんな事にはならなかったのに”
座敷「……っ」ブンブン
座敷「なんだかんだで、私もまだまだのようです……」ハァ
座敷「駄目だ駄目だ。ちょっと気分転換に……」
座敷「……そうだ。この前男さんに買ってもらった服、まだどれも着てませんでしたね……」
338 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 21:52:35.23 ID:dTD8lsa80
――アパート前
男「ふぅ……」
隣「あ、男くん」
男「ああ、隣さん。こんにちは」
隣「こんにちは。大学の帰り?」
男「そんな所です」
隣「そ。中の子が寂しそうにしてたよ」
男「……入ったんですか」
隣「昼食を一緒に食べさせてもらいました。いぇい」
男「……まあ、いいですけど」
隣「別に取って食ったりしてないから大丈夫だよ?」
男「何の話してんですか……」
339 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 21:58:38.46 ID:dTD8lsa80
隣「それにしても可愛いねえ、あの子」
男「そうですね、何処に出しても恥じない自慢の姪ですよ」ハハハ
隣「もうしたの?」
男「あ?」ピキリ
隣「そんな笑顔のまま硬直しないでよ。怖いし」
男「……あのですね。姪ですよ。そんな事したら、親になんて言われるか」
隣「でも同棲だぜぇ」
男「同居と言ってください」
隣「一つ屋根の下でも可」
男「明らさまな作為を感じる!」
隣「なんであれ、あんな可愛い子と二人っきりだよ。据え膳食わぬはなんとやら、と言うでしょ」
男「勘弁してくださいよ……」
341 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 22:05:16.52 ID:dTD8lsa80
隣「まあ何をしようが君の自由だ。聞こえてきたら耳は塞いであげるよ」
男「確かに壁薄いですしね……いやしませんけど」
隣「ほう?」
男「しませんけどね」
隣「はーいはい、予防線はそのくらいにして、早く行ってあげな。寂しそうにしてたんだから」
男「あ……いや、それ、本当ですか?」
隣「何が?」
男「寂しそうに……って」
隣「ほうほう? そう言う事は気になっちゃうお年頃なんだね」ニヤニヤ
男「いや、そうじゃなくて……」
隣「本当だよ。話してる時も、時折、すっと、ね。寂しそうに眼を伏せてた」
男「……」
344 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 22:11:41.40 ID:dTD8lsa80
隣「色々複雑な家庭環境――なんでしょ」
男「……はい」
隣「ん。君が預かってるって事はさ……頼れるのは君だけなんだ。
しっかり見守ってあげなさい。相談は必ず親身になって聞くこと。じゃないと、嫌われても知らないよ?」
男「さっきまでしたのしたの聞いてた人とは思えない発言ですね」
隣「耳年増のアドバイスでした。ひひ、女の子はデリケートなのさ!
私は帰って妹スレでも見るとする! じゃね!」ガチャン
男「……はぁ」
男「……なんとやらなんとやら。ありがたいお言葉ですね……」
男「……相談、か」
345 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 22:14:52.21 ID:Pnilf/XD0
なんだお前らか
348 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 22:19:11.66 ID:dTD8lsa80
男「ただいまー」ガチャ
シーン
男「……ん、居ないのか……?」
男「寂しそうにしてる、って言っていたのにな……」スタスタ
ゾゾゾゾゾゾ
男「ああ、今日はこっちに来てるのねお前」
男「んー、部屋の中、かな……?」
男「……座敷ちゃーん?」ガラララ
座敷「~♪」ヌギヌギ
男「な」
座敷「え」クルッ
――下着姿の座敷ちゃんがそこにいた。
362 :
保守ありがたたた :2011/09/06(火) 22:56:50.06 ID:dTD8lsa80
座敷「あ、え、え……!?」カァアアッ
男「出直してくる」ピシャンッ
座敷「あ……は、はい」
男「……」スタスタ
ゾゾゾゾゾゾ
男「頭に一発頼む」
ドサッ!
男「……うむ、冷静になった」ポイ
366 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:03:01.70 ID:dTD8lsa80
男「やっちまった……」ズーン
男(なんだろうこの寂寥感。今なら賢者タイムも裸足で逃げ出す顔になってる気がする)
男(隣さんとあの話をした、その直後にこれだ……堪えない訳が無い)
男「oh...AHWOOOO」ガクガク
座敷「お、男さん……」ガララ
男「ざ、座敷ちゃんッ!?」ビクッ
座敷「そ、そんなに驚かなくても……」
男「あ、うん……ごめん」
座敷「……」ストン
男(……なんでワンピース着てるんだろ)
367 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:08:21.01 ID:dTD8lsa80
座敷「……似合ってますか?」
男「え……そりゃ勿論。か、可愛いと思うけど」ドギマギ
座敷「ふふ……ありがとうございます」
男「う、うむ……」
座敷「……変な所を、見られてしまいました」
男「え!? い、いや! 俺も、もう一声かけてから扉を開くべきだった」
座敷「いえ……私も結構夢中になってて、多分声かけられても気づかなかったと思います……」
男「そ、そっか……」
男(む、夢中……だと……)クラクラ
369 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:14:20.78 ID:dTD8lsa80
男(くそっ! 黒髪清楚で淫乱美少女! なんてことだよ! くそっ!)
座敷(男さんも結構着替えに夢中になったりとか……するのでしょうか)
座敷「お、男さんも……ああいう事、するんですか?」
男「へっ!?」
座敷「え、えっと……?」
男「え……その……最近はそりゃ、してないけど……実体化する前までは、毎日普通にやってた、よな……?」
座敷「あ……そうでしたっけ……?」
男(なんつー事を聞くんだこの女の子はあああああ)
座敷(そんなよく着替えてたかな……?)
371 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:18:29.95 ID:dTD8lsa80
――ごほん。
男「とにかく、だ。これからはあんなアクシデントが無いように、お互い取り決めをしよう」
座敷「は、はあ、そう、ですね……」
男「俺はなるべく大きな声で居ることをアピールする」
座敷「はい」
男「それで……申し訳ないけど、座敷ちゃんはなるべく押入れの中でしてもらいたい」
座敷「えっ……」
男「え? い、嫌だった?」
男(ま、まさか俺のベッドとか言うんじゃあ……!?)ドキドキ
座敷「だ、だって、押入れの中じゃ、狭くて着替えられませんよ?」
男「え」
座敷「え?」
376 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:23:58.53 ID:dTD8lsa80
男「その……えっと。さっき座敷ちゃんがやってたのは」
座敷「お着替え、ですけど……?」
男「オキガエ?」
座敷「は、はい」
男「その……寂しくて、なにを、ごにょごにょとかじゃ……」
座敷「……?」
男「……」
男「禍根、後数発頼む」
ドサドサドサッ!
座敷「男さーんっ!?」
377 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:25:10.27 ID:gBdrLRTk0
薄々思ってたけど禍根ていいやつなんじゃw
379 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:31:35.17 ID:dTD8lsa80
座敷「な、何やってるんですか!? 自分から災い招いてどうするんですか!」
男「いいんだ、いいんだ座敷ちゃん! どうせ童貞脳だよ俺が悪いんだよ!」
座敷「ど、どうてっ……何訳分からない事言ってるんですか!」カァアッ
男「くそ、くそーっ!」
座敷「……本当に、もう」キュッ
男「……座敷ちゃん?」
座敷「……男さんの手、暖かいですね」
座敷「ずっと、握っていたくなります」ニコリ
男「そ、そう……」
座敷「……ん。落ち着きましたか?」
男「……なんとか」
384 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:38:14.19 ID:dTD8lsa80
座敷「相変わらず変な人……寂しかったのは、確かに、その通りですけど……」
男「う……ごめん」
座敷「いえ。私がしっかりすれば、いい話ですから」
男「しっかり……か」
座敷「はい……私がしっかりしてないと、男さんならすぐ死にかねませんしね」
男「……座敷ちゃんはまだ、十六じゃないか」
座敷「私の生きた時代では、十分大人としてみなされる年です」
男「でも……」
座敷「いいんです。私は大丈夫ですから。さ、そろそろ夕食の準備を――」
男「……っ」ガシッ
座敷「……」
386 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:45:31.71 ID:dTD8lsa80
座敷「……どうしたんですか? 腕を、放してください」
男「駄目だ」
座敷「……どうしてですか」
男「友人が言ってたんだ。
“溜め込みすぎるのも良くない。
抱えている問題を解決する前に、倒れてしまうかもしれないよ”って」
座敷「いいご友人ですね」
男「ああ。小中高大、ずっと同じの腐れ縁さ。お互いの事は顔見ればよく分かる……家族みたいなもんだ」
座敷「……」
男「……座敷ちゃんも、そうだよ。ずっと同じ部屋に住んできた、俺の家族だ」
座敷「……っ」
391 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/06(火) 23:51:25.07 ID:dTD8lsa80
男「大丈夫って、言ったけど。やっぱり無理してるんじゃないか?
残念ながら、座敷ちゃんの顔を見ても、何を考えているかは分からないんだけどさ……」
座敷「男さん」
男「あ、うん」
座敷「……今日、一緒に寝てもいいですか?」
男「え……」
座敷「寂しいんです。お願いします」
男「お……おう、分かった! 添い寝だな! 勿論やってやるとも!」
座敷「……その時にまた、お話しますから」
男「……ああ。分かった」
座敷「……夕飯、作りますね」
男「……」
395 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 00:00:42.61 ID:WakaGVlk0
座敷「……」トントントン
男(……もう少し気の利いた言葉を言えないものかね)
男(お着替えと自慰行為を間違える俺だ、仕方ない気はするが)
ゾゾゾゾゾゾ
男(今夜がやまだ)
男(最近なんか仲良くなってる気がするけど……頼むから、今夜は邪魔しないでくれよ)
ゾゾゾゾゾ
男(……こんな事言うのもおかしいよなあ)
399 :
IDかわったった :2011/09/07(水) 00:06:51.03 ID:jnV/GDzM0
――夜
男「……そろそろ、寝るか」
座敷「はい、そうですね……」
男「えっと……俺が、壁際で」
座敷「あら。逆でも構いませんよ?」
男「そ、それはどう言う」
座敷「なんでもありません……」ギシッ
男「……ふぅ、はぁ」ドキドキ
座敷「緊張してるんですか」
男「どどど童貞じゃねーし」
座敷「聞いてませんよ」
401 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 00:12:24.56 ID:jnV/GDzM0
男「電気、は」
座敷「……消してください」
男「……いざ」パチンッ
座敷「……」
男「ふぅ……」モゾモゾ
座敷「……男さんの匂いがします」
男「い、嫌じゃな、いっかぁ?」
座敷「そんな事ありませんよ……」
男「そぉ、っか」
座敷「そろそろ落ち着いてください……」
男「だ、大丈夫だ……」ハァハァ
404 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 00:16:43.26 ID:jnV/GDzM0
ゾゾゾゾゾゾ
座敷「……禍根も、小さくなってきましたね」
男「え? そ、そうか?」
座敷「はい、着実に。これまでは天井全体を覆う規模でしたが、今はもう四分の三程度になりました」
男「そ、そう言われてみれば、そう見えなくも、ないな……」
座敷「男さんの日々の頑張りのおかげです」
男「お……俺だけの力じゃ、無いよっ」
座敷「分かっています」
男「あ、ですよね」
座敷「……分かっている、つもりです」
男「……」
405 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 00:24:30.93 ID:jnV/GDzM0
座敷「私はちゃんと、男さんの為の家事をこなしている。男さんのサポートが出来ている」
座敷「……そう思わないと、責任感に押しつぶされてしまいますから」
男「責任感、って」
座敷「……文字通りですよ。座敷わらしとして、きちんと男さんの禍根消失の為の活動を見届ける者としての」
男「そんなの……重荷になってるだけじゃ、無いのか?」
座敷「重荷にしてるんですよ。こうでもして自らを律しないと、私はまた甘えてしまう」
男「甘え……?」
座敷「与えられるだけの立場に、です」
408 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 00:33:21.72 ID:jnV/GDzM0
座敷「私は昔……ある方の家に宿っていたんです」
座敷「その人は男さんと同じように、優しくて、気が利いて……それでいて、ちょっぴり自分に甘い人でした」
男「う、うむ……」
座敷「その人も、夜になると不安になったり、精神が安定しなくなる時がありました。
長い時間をかけて、ゆっくりと禍根は溜まっていきました」
座敷「そして、私が実体化したのは――その家に宿ってから、四年目を迎えてすぐでした」
男「……」
座敷「そこからの流れは、男さんの時となんら変わりありません。自分の人生への後悔。無謀とも言える決意。
長い事座敷わらしをやっていましたが、禍根消滅のお手伝いをするのは、実際それが初めての事でした」
座敷「彼との生活が、始まりました」
413 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 00:40:28.41 ID:jnV/GDzM0
座敷「彼は私に色々な物を与えてくれました。お部屋やベッド。女の子らしい家具。
それでいて家事も自分でこなし、日々しっかり善行を積んでいきました」
男「な、なんだそりゃ」
座敷「私はその頃……全く家事が出来ませんでした。
テレビも見なかったので世の中の事も知らないまま。精々お皿を洗ったり、お掃除をするくらいでした」
男「……想像できないな」
座敷「ええ、本当に。何故しなかったのでしょうね。何故出来なかったのでしょうね。答えは、簡単です」
座敷「私は、甘えていたんです」
男「……」
420 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 00:49:26.43 ID:jnV/GDzM0
座敷「どうしてそんなにこなせるのか、聞いたことがあります。
仮にも禍根が限界近くまで膨れてしまった人です。今までとは別人のようでした」
座敷「私の質問に……その人は笑って、即答しました」
座敷「私の存在が、支えになってくれているって」
男「……」
座敷「座敷わらしでありながら、家の危機を管理する者でありながら、私は甘えていたんです。
私が彼を精神的に支えている、そんな仮初めの信頼を、私は勝手に夢想していたんです」
座敷「……だから、失敗した」
座敷「本当に彼が、崩れ落ちそうになった時……私は」
男「……座敷ちゃん」
座敷「私は――何も、出来なかった……」
423 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 00:59:18.49 ID:jnV/GDzM0
座敷「おかしな話、ですよね」
座敷「家の人が、支えるべき人が、死にそうになっている時、私は」
座敷「私は、部屋の隅で、震える事しか出来なかったんですよ……」
座敷「ほんとに、馬鹿です。愚かです。座敷わらし、失格です」
男「……」ギュッ
座敷「……あっと言う間でした。
気付いたらその人は、後悔と絶望を受け一気に膨らんだ禍根に食われ、死んでしまっていました」
座敷「私はやがて自分の体が溶けていくまで……終始、震えている事しか出来ませんでした」
座敷「何も出来ませんでした」
座敷「――以上が、私が以前体験した……座敷わらしの、結末です」
男「……」
424 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 01:03:42.83 ID:1x6ffpdmO
(´;ω;`)ざしきちゃん…
427 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 01:10:09.25 ID:jnV/GDzM0
座敷「……それ以来、私は強くなろう、本当に家主を支えられるようになろうって、決めて」
男「……家事とか、覚えたのか」
座敷「……はい。他にも、いろいろ世の中を学ぶようにしたり……ちょっと前に見様見真似と言ってしまいましたが……すみません、あれは嘘です」
男「……別にいいよ。それより、ありがとう」
座敷「え……何がですか?」
男「話をしてくれて」
座敷「……」
男「ごめんな。何も出来ない男で。俺はその人みたいに、家事も出来ないし、善行だってちょこちょことしか積ませられない」
座敷「そ、そんな事……」
男「事実だよ。全部、座敷ちゃんが話してくれたことと同じだ」
男「でも……その人と同じなのが、一つだけある」
座敷「え……?」
男「座敷ちゃんは……間違いなく、俺の支えになってくれてるよ。
もし何もしなくても、そこにいるだけで、しっかりしようと思えるんだ」
男「座敷ちゃんは決して……座敷わらし失格なんかじゃ、ない」
座敷「……男、さん」
433 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 01:20:14.78 ID:jnV/GDzM0
男「……きっとその人も、君のことを恨んじゃいないさ」
男「俺と同じように、君の事が好きだったんだろうな」
座敷「えっ……」
男「俺はその人みたく万能イケメンじゃあないけど……でも、頑張るから。
さっさと禍根を消して、座敷ちゃんの心配も全部無くしてみせるから」
男「だから……その、なんだ。えっと……」
座敷「……」ドキドキ
男「……こ、これからもよろしくお願いします」
座敷「……ふふ」
男「な、なんで笑うんだ!?」
座敷「だって……これからもよろしくお願いします、って……」クスクス
男「ち、畜生……どうせ童貞だよ、短小だよぉ……」グスグス
座敷「……ほんとに、もう」
435 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 01:24:10.09 ID:jnV/GDzM0
座敷「男さん」
男「だ、誰が童貞だって?」
座敷「言ってませんよ……眼をつむって、こっち見てください」
男「え……はい」スッ
座敷「……ん」チュッ
男「――……っ!?」
座敷「私からも。これからもよろしくお願いします、ね?」ニコッ
男「な、な、なっ――!?」
438 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 01:31:35.98 ID:jnV/GDzM0
男「ざざざざ座敷ちゃんっ。い、いま、今唇に触れたのってええええ」
座敷「指の先ですよ」
男「――え。あ、そうなの?」
座敷「そうですよ……勘違い、しちゃいました?」ニヤ
男「ち……ちくしょおおおおおお……こんなのって、こんなのってえええええ……」
座敷「ほら……明日も早いんですから、もう寝ますよっ」ギュッ
男「うああああああああん……」
座敷(腕をぎゅってしたのに気付いて無い……もう、本当にこの人は……)
座敷(口付けの感覚も、知らないんですね……まあ私も初めてでしたけど)
座敷(はぁ……男さん)
座敷(私……貴方の家に宿れて、本当に良かった)
座敷(大好き、です……)ギュウウ
579 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 16:30:33.85 ID:jnV/GDzM0
男(シルバーウィークを目前に控えたその日、大学の学部で飲み会があった)
男「うぃー……ぷはぁ! 美味い!」ドンッ
友「いい飲みっぷりだね」
男「普段は余り飲む機会ないからな、こういう時に楽しんでおかないと損だぜ」グビグビ
友「しかしいいのかい?」
男「なにがだ?」
友「わざわざ私と一緒にいるなんて。いつもと変わらないじゃないか」
男「ばっかお前、話しやすい奴と飲むのが一番楽しいに決まってるじゃねえか」
友「……。ふふん。そっかそっか」
男「どうした、顔赤いぞ?」
友「酔いが回ってきたのさ……酒じゃないけど、ね」
男「はぁ?」
582 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 16:36:15.75 ID:jnV/GDzM0
友「ところで、普段はあまり機会が無いと言ったかい」
男「ああ……ちょっとな」
友「……例の問題絡みかい」
男「あー……関係あるような無いような、それ以上に倫理的な問題が」
友「倫理的? 君が?」
男「……なにその俺が猿であるかのような」
友「だって君は童貞じゃないか」
男「どどっどどっど童貞ちゃうわ! お、お前は、関係ないだろ! そんな事!」
友「そうかな?」
男「……ん?」
友「……私、彼氏は居ないよ?」
男「……え、と」
友「……」チビチビ
584 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 16:42:06.70 ID:jnV/GDzM0
男「う~、トイレトイレ……」
男「はぁ……涼しい。酔いが醒めてくな」
男「ったく……友の奴、一体どういうつもりだ?
あんな事言う奴じゃないんだけどな……」
男「やっぱ、酔ってたんかね。それにしては冷静だった気もするけど」
男「戻ったら聞いてみよう。うん――」
ゾゾゾゾゾ
男「――ん?」
男「あれ……気のせいか。今――」
男「……俺も酔ってんだな」ゴシゴシ
585 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 16:46:33.67 ID:jnV/GDzM0
男「戻ったぞー」ガララ
友「んぇー……?」
男「おま……何潰れてんだ」
友「へへ、つぶれてないよぉ……それより、男が三人もいるよ……やったぁ……」ニヘラヘラ
男「やったぁってなんだよ。おい! お前そんなんで家に帰れるのか?」
友「だいじょーぶだよー……いえーい……」
男「……駄目だこいつ」
「おい、男! 折角なんだし家に泊めてやれよ!」
男「はぁ!?」
「おおっ! とうとうあの男が友ちゃんをお持ち帰りかぁ!」
「あの男が童貞卒業がぁ……長かったなぁ……」
男「どどぅど、ど、童貞じゃねぇ! 黙ってろ、おのれらっ!」
587 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 16:53:19.51 ID:jnV/GDzM0
――帰り道
友「すぅ……すぅ……」
男「はぁ……酔いつぶれるなんてお前らしくないぞ、ほんと」
男「……もしかして、酒弱かったりするのか?」
友「んぁ……」ギュッ
男「へあ」
男(女の子の体って何でこんな柔らかいの。何でこんな良い匂いすんの。やばい。訳分からん。スーハースーハー)
男「ふぅ……座敷ちゃんにどう説明するかな。いや、こいつに座敷ちゃんを説明する事の方が……」
友「……かぷっ」
男「ひぁっ!? おい馬鹿、何やってんだ!」
友「きゅーけつきー……」カミカミ
男「らぁぁぁ甘噛みしちゃだめえええええ」ゾクゾク
男(……なんなんだ、こいつ)
588 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 16:53:50.23 ID:K5VAatq00
なんなんだこいつ
589 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 16:56:35.58 ID:lBzQ+UEC0
やばいこれは悶える
590 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 16:59:54.99 ID:jnV/GDzM0
男「ただいまー」
座敷「あ、お帰りなさい。男さん」
男「あ、起きてたのか? もう十一時なんだが……」
座敷「いえ、えっと、まあ……ちょっと」
男「ちょっと?」
座敷「その……一人で寝るのは、怖くて」カァア
男「そ、そうなのか……でも実体化する前は、普通に一日帰ってこない日も多かった気がするけど……」
座敷「それは、そ、そうですけど……もう、ばか」プイ
男「え、あ、ごめん、なさい?」
座敷「……こほん。別に構いません。ところで、そちらの方は一体?」
男「ああ、そうだった。こいつは――」
591 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:04:59.90 ID:jnV/GDzM0
友「ん……むにゃ……」
座敷「……なるほど。以前話された、家族のような方、でしたか」
男「うん。あ、けどその話はこいつにしないでくれよ。恥ずかしいし」
座敷「ええ、分かっています……」
座敷「……女の方、だったんですね……」
男「ん?」
座敷「いえ、なんでも」
男「そっか。……ふぁあ、今日は疲れた。さっさと寝ようか」
座敷「そうですね……では」
男「……一緒に寝る訳じゃないのね」
座敷「ふふ……そりゃ、そうですよ。眠る場所もありませんし、それに……誤解されてしまうかもしれませんよ?」
男「……それもそうだな」
座敷「ん……おやすみなさい」
男「ああ、おやすみ」
592 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:09:44.96 ID:jnV/GDzM0
男(誤解、か……)
男(……いかんいかん。相手は十六なんだぞ。犯罪じゃないか)
男(せめて後四年待ってから……って、そういう事でも無いだろ!)ゴロゴロ
――
座敷(……誤解されたほうがいい、なんて)
座敷(そう言ってもらえたら、どんなに嬉しかったでしょうか……)
座敷(まあ、仕方ありませんね……男さんですし……)
座敷(……どう迫られるのが、好きなんでしょうか……?)
座敷(……何、考えてるんだろ。早く寝て、明日に備えないと……)ゴロゴロ
596 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:15:50.32 ID:jnV/GDzM0
チュンチュン
友「う……あ、頭痛い……」ムクリ
友「ここは……何処だろ……?」
友「……昨日、飲み会があって……酔いつぶれた私は、確か……男に背負われて……」
友「なら……ここは、男の家、なのかな……」
友「……ふふ。服は着ている。流石に間違いは起きなかったみたいだ……」クス
友「よい、しょ……」ギシ
ガラララ
座敷「あ……」ピタ
友「え……?」
597 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:20:16.98 ID:jnV/GDzM0
座敷「……」
友(……綺麗な子だ)
座敷「おはよう、ございます……」ペコリ
友「あ、ああ……どうも……」
座敷「私、暫く男さんの家に預けられる事になった、座敷と言います……」ドキドキ
友「えっ……男の、家に?」
座敷「はい……えっと、男さんの、姪で……」
友「そう……なんだ。分かった。それで、男は……」
グガー グガー
座敷「……あんな感じです」
友「……男らしいな」ハァ
599 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:23:51.64 ID:Xogp6zChi
修羅場くるー?
604 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:30:30.79 ID:jnV/GDzM0
――
座敷「はい、ホットココアです……」コト
友「ありがとう……凄いな座敷ちゃんは。家事は全部こなしているのかい?」
座敷「あ、いえ……男さんも、手伝ってくれてます」
友「ふぅん……大変じゃないかい、こいつ、変な奴だし」ツンツン
座敷「確かに、結構面倒くさがり屋で……自分に甘くて……」
友(……中々言うね)
座敷「でも。ちょっとした所で、優しいんです。気遣いができると言うか……そういうのは、友さんの方が知ってると思いますけど」
友「……ん。こいつ、私の事話したのかい?」
座敷「少しだけですが……」
友「そっか……」
座敷「……」
友「……」
座敷 友「「えっと」」
607 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:36:37.13 ID:w5DLp/Yc0
★壁殴り代行始めました★
ムカついたけど壁を殴る筋肉が無い、壁を殴りたいけど殴る壁が無い、そんなときに!
壁殴りで鍛えたスタッフたちが一生懸命あなたの代わりに壁を殴ってくれます!
モチロン壁を用意する必要もありません!スタッフがあなたの家の近くの家の壁を無差別に殴りまくります!
1時間\1200~ 24時間営業 年中無休!
∧_∧
(´・ω・`) _、_,,_,,,
/´`''" '"´``Y'""``'j ヽ
{ ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l 壁殴り代行では同時にスタッフも募集しています
'、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ 筋肉に自身のあるそこのアナタ!一緒にお仕事してみませんか?
ヽ、, ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/ 壁を殴るだけの簡単なお仕事です!
`''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'
,ノ ヾ ,, ''";l
609 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:38:37.89 ID:FTQoGu1f0
禍根さんやっちまってください
610 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:39:50.45 ID:jnV/GDzM0
座敷「……そちらから、どうぞ」
友「いやいや、ここは譲ってあげるよ」
座敷「私は若輩者ですし」
友「私だって年に知識が追いついて無いから、精神年齢的には同じなんじゃないかな」
座敷「そんな話が出来る時点で十分」
友「ふむ、埒が明かないね。物は試しだ、同時に言ってみようか」
座敷「え……聞こえないかもしれませんよ」
友「どうだろう……個人的な考えでは、私たちがお互い聞きたいことは、同じだと思うんだ」
座敷「……そうかも、しれませんね」
友「……ん。それじゃ、いっせーのせで」
座敷「……」コクン
友「いっせーのーせ」
「「貴女(君)は男さんの(男の)事が好きなんじゃないですか(かな)?」」
614 :
チョコレート食ってくる :2011/09/07(水) 17:46:16.71 ID:jnV/GDzM0
座敷「……初対面同士で、聞くことじゃないですよね」クスリ
友「ふふ……その通りだ」
座敷「……負けませんよ」
友「それはこっちの台詞だよ……もう何年も男と一緒に居るんだからね」フンス
座敷「ふーん……でも私は、男さんに好きって言ってもらえましたけどねー……?」ニヤリ
友「む……そ、そんな嘘が、通用するとでも」
座敷「ふふふ。どうでしょう。嘘だと思うのは自由ですけど……?」ニヤニヤ
友「……ふん。冷静になって考えてみるといいよ」
座敷「なにをですか?」
友「この男は、童貞だ」
座敷「――っ!」
618 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:49:26.97 ID:lBzQ+UEC0
禍根ー!早く来てくれー!
619 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:57:05.57 ID:XaAR4EAU0
禍根タンハアハア
620 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 17:58:48.82 ID:jnV/GDzM0
友「こいつは煩悩の塊のような男だ。好き、だなんてそんなストレートな言葉……言える訳が無い」
座敷「そ、それは確かに一理あるんですが……あ、あの時確かに」
友「どうだろう、家族としての好きだったんじゃないかな……?」
座敷「む……し、しかし、真意がどうであれ、好きって言ってもらったのは事実です。
と、友さんより一歩先を行ってます!」
友「私はこいつのナニを触ったことあるよ」
座敷「なあぁあっ――!?」カァアッ
友「一緒にお風呂に入った事もある。当然私の裸も、見られている。そういう関係さ」
座敷「なっ、なっ……ど、どうせ小さい頃の経験じゃないんですかっ!?」
友「ばれたか」
座敷「分かりますよそのくらい!」
621 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:00:42.68 ID:f90S1JvC0
夢のハーレムへの第一歩じゃまいか
624 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:03:45.29 ID:blai2juk0
禍根さんへの期待がはんぱない
627 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:08:09.21 ID:jnV/GDzM0
座敷「はぁ……こうなったら、男さんに直接聞きましょう」
友「ほう……いいだろう。寝込みを襲う作戦かな?」
座敷「そ、そんなはしたない真似はしませんっ。どちらの方が好きか聞くんですっ!」
友「初心だねぇ……」クスクス
座敷「……男さん、男さん。起きてください!」ユサユサ
男「ん……座敷ちゃん……?」
友「おはよう、男」
男「おー友かー? ……酔いは、大丈夫か?」
友「おかげさまでね。まだ頭がちょっと痛いけど、助かったよ。ありがとう」
男「あー、気にするなよ。お前には世話になってるしさ」
友「ふふ、私だって……」
座敷「……むうう」ムスー
633 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:16:33.05 ID:jnV/GDzM0
座敷「男さん!」
男「おう? どうした」
座敷「き、聞きたいことが……あるんです」
男「ああ、なんだ?」
座敷「え、えと……その。私と、友さん……の」
男「う、うん」
座敷「ど……どっちの方が! 好きですか!?」
男「す、好き? それって……」
座敷「……」ジィッ
友「……」
男「……そりゃ、お前ら。二人とも好きに決まってるだろ?」キリッ
座敷「……童貞」
友「……童貞」
ドサドサドサドサドサッ!!
男「うわ、ちょ、本棚ごと――」
643 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:25:35.11 ID:jnV/GDzM0
男「……死ぬかと思った」
座敷「当然の結果です」フンス
友「このタイミングで本棚が倒れるとはね」クスクス
座敷「この人の煩悩がいけないんです」
友「なるほど」
男「あれ、なんで? 今の質問ってルート分岐の選択肢じゃなかったの?
こうすればグッドエンドに到達できたんじゃないの?」
友「ゲームのやりすぎだよ、男」ハァ
座敷「……チャンスさえあればそのうち禍根にも求愛しそうですね」
男「いやあいつは俺自身だろ!? しかも消さなきゃいけない訳だろ? そんなのに求愛してどうすん――」
グシャァッ
座敷「……ベッドが壊れましたね」
友(禍根ってなんだろ……)
653 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:34:10.81 ID:jnV/GDzM0
男「くっそ……靴下のみじゃ飽き足らず、今度はベッドに手を出したか……」
座敷「自業自得です」
友「……なあ、男。その禍根とやらは一体なんなんだい?」
男「あ。えっと……な、なんて説明すればいいやら……」チラッ
座敷「男さんの後悔と不安の塊みたいなものです」
男「あ、座敷ちゃん……」
友「へえ? 訳が分からないけど」
座敷「訳が分からなくてもいいですよ……友さんには、関係ありませんから」ニコリ
友「……ほう。言うね、座敷ちゃん」ニヤリ
男(なんだこの空気の悪さは……)
658 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:44:36.68 ID:jnV/GDzM0
男(――数十分後)
男(友の巧みな交渉の結果……俺たちの事情は、ほぼ全てが彼女の手の元に開示される事になってしまった)
友「座敷わらし、か……どうにも信じられないね」
座敷「信じなくても構いませんよ」プイッ
友「いいや……男が、そう言うなら。私は信じるよ」
男「お、おお……そうか」
座敷「……ふんっ。それなら友さん、これからよろしくお願いしますね?」
友「ふふ、分かってるよ。私も、男には死んで欲しくない……なるべく力を貸そう」
男「……すまないな」
友「気にしないでくれ。私だって、君の世話になってるんだ」
男「……そっか」
座敷「……」イライラ
660 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:52:29.00 ID:jnV/GDzM0
男「――あぁ、そういえば。大学に出しに行かなきゃならん物があった」
友「大学に? 今からかい?」
男「ああ、今日中って言われてるんだ……よし、ちょっと行ってくる」
座敷「今からだと……午前中には戻って来れますね」
男「おう、すぐ戻ってくるよ。昼食の準備を頼む、座敷ちゃん」
座敷「はいっ」
友「ふむ……それじゃ、私も昼食まで邪魔させてもらってていいかな?」
男「おう、俺はいいけど……座敷ちゃんの方は」
座敷「……別に、構いませんけど」
友「ありがとう。それじゃ、私もここにいるよ」ニコリ
661 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 18:57:50.25 ID:jnV/GDzM0
男「行ってきます!」ガチャンッ
座敷「道中お気をつけてー……」
友「いってらっしゃい」フリフリ
友「……さて、と」フゥ
座敷「……てっきり男さんについて行く物だと思いましたが」
友「まさか。そこまでしたら、逆に迷惑になるよ」
座敷「……そう、ですかね」
友「……それに」
座敷「え?」
友「暫く……休戦しようか」
663 :
飯くってきますわ :2011/09/07(水) 19:04:40.12 ID:jnV/GDzM0
座敷「……随分早い、休戦ですね」
友「事情を知ったからね。やむなしさ。
男の命がかかってるのに、私たちがこんな事で争っているのは、なんだか場違いな気がしないかい?」
座敷「……場違い、ですか」
友「……勿論、座敷ちゃんの考えてる事も分かるよ。
あいつはあれでいて、やっぱりいい奴だからさ……一緒にいて好きになるのも、仕方ないとは思う」
座敷「……」
友「でも、ここは少し我慢して……あいつの抱えてる問題が終わったら。その時また、決着を――」
座敷「それじゃ、遅いんです」
友「……え?」
座敷「全部、遅いんです。意味無いんです。男さんも、友さんも、知らないと、思いますけど……」
友「……座敷ちゃん?」
座敷「……禍根を、全部消し去ったら。私は――」
座敷「私は、消えてしまうんですよ」
679 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 19:38:04.89 ID:jnV/GDzM0
友「消えるって、それは……存在が消滅するって事かい?」
座敷「……いいえ。実体化する前に、戻るんです。私はまた、人からは確認できない妖怪として……この家を守り続けるんです。
まあ、勿論禍根を消すことに、成功したらですけれど……」
友「な、なんだ……それなら、まだ」
座敷「……まだ、いいって言うんですか。何がいいんですか?」
友「座敷ちゃん……」
座敷「一緒の家の中にいるのに、何も伝えられない! 好きな人に、何も言ってもらえない!
そんな状況の、何がいいって言うんですかっ……?」
友「……」
座敷「……ごめんなさい。我侭ですよね。
座敷わらしだから……いつか必ず来る結末だから、認めなきゃいけない」
座敷「本当は……好きになんかなるべきじゃ、無かったのに。
私はやっぱり、まだまだで――」
友「……ちょっと、待ちなよ」
682 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 19:49:13.24 ID:jnV/GDzM0
友「今日ちょこちょこととお話させてもらって、貴女は大分容赦無く物を言う子だと思ったけど……肝要な所に限って、口に出せずにいるようだね」
座敷「……」
友「好きになるべきじゃなかったって、本気で言ってるのかい」
座敷「……それは」
友「応えなくていいよ。本当はそんな事、思っていないんだろう? 男の事が大好きなんだろう?
出来る事なら禍根を消滅させずに、このままの状況を維持したいと思ってるんじゃないのかな?」
友「でもそんな事は出来ない。自分は座敷わらしだ。規則には従わなきゃいけない。
だから好きになるべきなんかじゃなかったなんて言って――一番分かりやすい理由で、自分を納得させようとしているんだ」
座敷「……っ」
685 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 19:58:41.01 ID:jnV/GDzM0
友「……違うかな?」
座敷「……その、通りです
座敷「私は……男さんの事が、大好きです」
友「……うん」
座敷「でも……怖くて。苦しくて。失敗しても、成功しても、どちらも幸せになれないなんて、信じたくなくて……」
座敷「だから……否定しようとした。最初から無かった事にすれば、傷付かずに、済むから」
友「……」
座敷「私は……間違っていたんですか? もっと私が賢ければ、他の方法があったのでしょうか?
私は――どうすればよかったんですか?」
友「……」
友「やれやれ」
友「君はまだ、男の事を全然分かっちゃいないな」
688 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 20:07:50.68 ID:jnV/GDzM0
座敷「……なんで、男さん」
友「あのだね、座敷ちゃん。繰り返すようだけど、あいつは童貞だ」
座敷「……そうですね」
友「女心の欠片も分かっちゃいない」
座敷「……はい」
友「でも、純情で、単純で、そして――馬鹿だ」
友「それが男の良い所なんだ。私が惚れた理由もそれだ」
座敷「……それが、今の話と、なんの関係が――」
友「いいかい、座敷ちゃん。あいつは、馬鹿なんだよ」
友「君が見えなくなった所で。そこに君がいると、分かっているなら――」
友「そんな障害を、あいつが気にする訳無いだろう」
693 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 20:18:10.98 ID:jnV/GDzM0
座敷「そ、そんな、無茶な……」
友「無茶だねえ。でも、男だから。馬鹿だし。
きっと君が見えてなくても、見えてる風に喋りかけてくると思うよ」
座敷「……なんで、そこまで」
友「――家族」
座敷「え……」
友「家族、って。君の事をそう思ってるんだろうね、男は。
なにかとそういう表現を好むから……私に対しても、言って欲しかった所だけれど」
友「眼が見えなくなってもさ――大事な家族がそこにいると分かってるんだ。
話しかけない訳ないじゃないか?」
座敷「……」ポロポロ
友「……まあ、多少のレスポンスは欲しいと思うかもしれないけどね。
ほら、確か座敷わらしは物音を立てたりして、存在を主張できるんじゃなかったっけかな? 出来るんだったら、是非してあげるべきだね」
座敷「……はいっ……」ポロポロ
友「……やれやれ。説得のつもりが、敵に塩を送る羽目になっちゃったな……」ポリポリ
友「まあ……頑張って。溜め込みすぎも、良くないからね」
座敷「……っ」コクンッ
696 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 20:26:02.41 ID:jnV/GDzM0
――
男「ふー、ただいまー!」ガチャリ
座敷「……おかえりなさい、男さん」
男「うん……あれ、友は何処に?」
座敷「用事があるといって、先に帰られました」
男「なんだ、そうだったのか……ちょっと残念だな。まあ二人で食べようか」
座敷「ええ……」
座敷「……あの、男さん」
男「うん?」
699 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 20:31:14.78 ID:jnV/GDzM0
――
友“後するべきは……全てが終わった後自分が見えなくなることを、しっかり男に伝える事”
友“男は思い込みが激しいからね、見えなくなっただけで存在が消えた訳じゃないことを伝えないと、勘違いしちゃうかもしれない”
座敷“……はい”
友“そんな所かな……ふふ、参ったね。大きく差が出来ちゃったかもしれないな”
座敷“す、姿が見えなくなっても……負けませんからねっ”
友“ううむ……姿が見えないなら、男が風呂入ってるときも……”
座敷“そっ、そんな事する訳――!”
702 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 20:33:04.13 ID:jnV/GDzM0
――
座敷(友さん……ありがとうございました)
座敷(貴女は、大きく差が出来たといっていましたけど……そんな事は、ありません)
座敷(私はまだまだ、男さんのことを分かっていないようですから)
座敷(むしろ、差があったのは私の方かもしれませんね……)
座敷(……たとえ見えなくても。直接触れる事が出来なくても)
座敷(気持ちを伝える方法は、まだ残されている――)
703 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 20:33:42.30 ID:jnV/GDzM0
座敷「――少し、お話してもいいですか?」
711 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 20:57:11.99 ID:jnV/GDzM0
男「……ふぅ」テクテク
隣「はろ」
男「はろ」
隣「した?」
男「頑張ってます」
隣「ほほう」
男「耳はふさいでてくれましたか?」
隣「――え、本当にやったの? マジで?」
男「さてどうでしょう」テクテク
隣「ちょいちょい青年、そこは詳しく聞く必要が――」
ガチャンッ!
男「……ふう」
713 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:03:32.70 ID:jnV/GDzM0
男(座敷ちゃんと同居を始めてから、数ヶ月が経った)
男「ただいまー……」
ゾー
男「おう、今日も軽そうだなお前」
男(禍根は今までと見違えるほど小さくなり、嫌がらせの量も日に日に減少してきている)
男「後一週間も無いよな……きっと」
ゴトッ
男「おうふ……軽い感慨を覚えた俺が馬鹿だった、この野郎」
男(――減少しているだけで、その陰湿さはあまり変わっていない)
714 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:08:59.93 ID:jnV/GDzM0
男「座敷ちゃーん……部屋か」スタスタ
男「あー……っと。声は大きく、だな……」
男「……」スゥーッ
男「座敷ちゃあああああああんっ!!」
座敷「ひゃああああああああっ!?」ガタガタッ!
男「……」
男(扉の向こうで凄い叫び声が聞こえた)
716 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:14:56.53 ID:jnV/GDzM0
座敷「あへ……ひあ……」ピクピク
男「……あー、座敷ちゃん。大丈夫か?」
座敷「――男さんっ! か、加減と言う物を知らないんですか!?」ウルウル
男「いやぁ、取り決めは取り決めだし……」
座敷「わ、わざとですよね? 今私が練習してる事を知ってて……!」
男「こう言う息抜きも必要かと」
座敷「もっと穏やかなのがいいです……」ハァ
720 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:19:39.21 ID:jnV/GDzM0
男「それで、今日はどんな感じだ?」
座敷「あ……えっと、こんな感じ、です」
“ア カ サ タ ナ ハ マ ヤ ラ ワ”
男「ふむ……結構出来るようになったんだな」
座敷「はい……ようやく、ここまではなんとか……」ハタハタ
男「……お疲れのようだな」
座敷「ええ……まだまだ、練習が足りません……」
男「……しかしまあ、凄いな。念動力で紙に字を書くとか」
座敷「やっぱり、物音より文字を使えた方が、意思疎通も簡単ですし……。
まあ、長文を使えるようになるには、まだまだ時間がかかりそうですけど」
男「構わないさ。ゆっくり身に付けていけばいいから」
座敷「……はいっ」
722 :
念動力→神通力に訂正 :2011/09/07(水) 21:24:55.89 ID:jnV/GDzM0
男「よっし、今日の夕食は俺が作ろう!」
座敷「あ、いいんですか……?」
男「よいよい、たまには俺の絶品料理を振舞ってやろう」
座敷「ふふ……ではお言葉に……うーん……」
男「……甘えても、構わないよ」
座敷「……分かりました」コクンッ
座敷「……ふふ。ね、男さん。なんだか私たち、夫婦みたいですね」
男「おー? そりゃ俺たちはずっと前から家族だからなー!」ジュージュー
座敷「い、いやそうじゃなくて……それは確かに嬉しいですけど、何と言うか、変わりませんね男さんは……」
ゾー
座敷「……ねー」
男「あちちちっ!?」
724 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:30:54.18 ID:jnV/GDzM0
――
男「よーし出来たぞ。男のロマン、焼きそばだ」コトッ
座敷「随分早くできたと思ったら……」ジトー
男「見た目で判断しちゃいけません。これでも真心こめて作りました!」
座敷「……そうですよね。いただきます!」
男「どうぞ召し上がれー」
座敷「ぱくっ……」
男「……」ドキドキ
座敷「……美味しいです」ニッコリ
男「WRYYYYYY」
726 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:39:29.88 ID:jnV/GDzM0
男「ふっふふ……これから調理係はローテにしてもいいかもしれないなあ」
座敷「駄目です」キッパリ
男「……理由を聞かせてもらってもいいでしょうか」
座敷「お料理は私の仕事です。今日は特別ですけど、明日からは私がまた行わせていただきます」
男「うう……その、やっぱり美味しくない……?」
座敷「そ、そうじゃなくて……これ以上、私が仕事を失っちゃうと……」
男「うん」
座敷「後、残された仕事が……その……」モジモジ
男「うん?」
座敷「――っ! なんでもありませんっ! とにかく、明日からは元通りですからね!」
男「むむ……座敷ちゃんがそう言うなら、仕方ないな」
728 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:43:50.58 ID:Q15Tpj1H0
電車なのにニヤニヤが止まらない
おれきめー
729 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:45:47.72 ID:jnV/GDzM0
男「それにしても……」モグモグ
座敷「はい、なんでしょう」
男「禍根も、大分小さくなってきたな」
座敷「そうですね……この分なら、男さんが100%希望で睡眠を取れば、後二日くらいで」
男「なんか聞き覚えがある風な。いや、後二日って」
座敷「案外早かったですねえ。男さんの頑張りの成果です」ニコニコ
男「だから、俺だけじゃないって。座敷ちゃんにも、友にもお世話になった」
座敷「そうでしたね……友さんが大量の求人広告を持ってきた時は、何かと思いましたが」
男「善行、サークルと来てバイトだからな……まあ、順当な巡りだったかも知れないが」
座敷「結局サークルは入ってませんよね」
男「結果オーライですよ」
732 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:51:23.50 ID:jnV/GDzM0
――夜
男「ベッドが壊れてしまったので」
男「押入れから布団を出し、床にしいて眠っています」
男「……必然的に、座敷ちゃんと一緒になりますが、ベッドが壊れてしまったので、仕方が無いことなのです」
男「……そうなのです」
座敷「……男さん? どうしたんですか?」モゾモゾ
男「……なんでもない。今入る」モゾモゾ
735 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 21:58:16.53 ID:jnV/GDzM0
男「ふ、ふー……」
座敷「……なんだか、こうして眠るのが普通になってしまいましたね」
男「……ぁ、おぉ」
座敷「最初は緊張してましたけど……もう、慣れてしまいました」
男「そ、そだぬぁ」ドキドキ
座敷「男さん……」ハァ
男「ど、童貞ちゃうねん……」ハァハァ
座敷「だから聞いていませんって」
738 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 22:01:56.40 ID:Q15Tpj1H0
考えてみたら普通にしててもキモいんだからなんの問題もなかった
わらしちゃんペロペロ
739 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 22:03:14.25 ID:DbqPReHS0
バスの中だけどパンツ脱いでもいいの?
740 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 22:04:17.97 ID:jnV/GDzM0
男「ふー……ふー……」
座敷(ここで体を寄せたら……どんな反応をするんでしょう)
座敷(試してみたいけど、大変な事になりそうだから出来ません……)
座敷(だから、せめて……)キュッ
男「ざ、ざしきちゃ……!?」
座敷「ふふ……男さんの手のひら、汗ばんでますね」
男「あっ、ごめ……」
座敷「いえ……このまま」ギュッ
男「……」
座敷「……繋がせて、ください」
男「……分かった」
747 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 22:10:57.64 ID:jnV/GDzM0
男(座敷ちゃんの手の平やばい。マジすべすべ。やばい。超クール。冷凍窒素触ってる気分だ)
座敷「……そろそろ、落ち着きましたか?」
男「あ、ああ……なんとか」
座敷「そうですか……」スッ
男「ざ、ざざざざ、ざ……」
座敷「男、さん……落ち着いてください」
男「で、でもでもでも体が、密着してててえて」
ゴトンッ
男「……冷静になったわ」
座敷(禍根に助けてもらうってどういう状況ですか……)
758 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 22:35:16.60 ID:jnV/GDzM0
座敷「……男、さん」
男「……う、ん」
座敷「……んっ」チュッ
男「っ……」
座敷「……これで二度目、ですね」
男「あれ……前のは、違ったんじゃ……」
座敷「……あれは嘘、です」
男「……結構、嘘つきだよな」
座敷「嘘は、嫌いですか……?」
男「……いや。言いたい事を、ちゃんと言ってくれれば……いいよ」
座敷「……」ギュッ
764 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 22:42:50.31 ID:jnV/GDzM0
男「……えっと、座敷ちゃん……」
座敷「はい……」
男「その……本当に俺で、いいのかな? 俺は、まあ、童貞だから……多分、気持ちよくは」
座敷「……言いたい事を……ちゃんと言えば、いいんですよね……?」
男「え……あ、うん……」
座敷「……男さん。大好きです」
男「……」
座敷「貴方になら……私は、処女を捧げる事も、厭いません」
男「……」
座敷「お願いです、男さん……私を、抱いてくださいませんか」
男「」
座敷「……男さん?」
男「ごめん鼻血」
座敷「ちょっ――」
768 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 22:51:33.24 ID:jnV/GDzM0
男「……ちんっ」フキフキ
座敷「……落ち着きましたか?」
男「うん……すまない」ストン
座敷「いえ……男さんらしいといえば、男さんらしいです」
男「……座敷ちゃん」
座敷「……はい」
男「……俺は、頼りない男だ。
でも、座敷ちゃんが、そう言ってくれるなら……俺は精一杯、君の希望に応えようと思う」
座敷「……一番、答えて欲しい事に……まだ、答えてませんよ」
男「え……?」
座敷「大好きと言った……その、返事が」
男「……」
男「……愛してる。座敷ちゃん」ギュッ
777 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 22:58:52.19 ID:jnV/GDzM0
――
男「は、ぁ……はぁ」ゴロンッ
座敷「ん……男、さん」
男「はぁ……どうした?」
座敷「風邪ひくと、いけませんから……布団を」
男「ああ……ありがと」
座敷「……気持ちよかったですか?」
男「……多分五十回近くは似たような事を言ったんじゃないかな」
座敷「そう、ですか……」クス
座敷「私も、今、幸せです……」ギュウッ
男「……うん」
789 :
まだちょっと続くので、エロに割いちゃうとぐだぐだに… :2011/09/07(水) 23:04:04.82 ID:jnV/GDzM0
男「……なあ、座敷ちゃん」
座敷「はい……」
男「明日、どっか出かけようか」
座敷「……いいんですか?」
男「うん。どこかに行って、いっぱい楽しんで……それで、禍根を消そう」
座敷「……分かり、ました」
男「なんだかんだでいい付き合いできたと思うけどな、あいつとも……うあ足吊ったぁぁ」
座敷「……あの、男さん。ずっと前から私、行きたかった所があるんです」
男「ひぐっ、ひぐぅっ……おう、何処だ? 何処にでもつれてってやる!」
座敷「……海を、見てみたいんです」
男「くっ……よし、分かった。行こう」
座敷「ありがとうございます……」クス
797 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:08:56.07 ID:kPXQ+uDi0
禍根「まだだ!まだ終わらんよ!」
798 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:09:45.19 ID:jnV/GDzM0
――翌朝
男「……ん」パチ
男「朝、か……」
座敷「すぅ……すぅ……」
男「座敷ちゃん……」ナデナデ
座敷「ん……すぅ……」
男「……致してしまったんだよな」
男「こんな綺麗な子と……」ムラムラ
男「……いや、いや。俺は猿か。発情期か。折角卒業したんだからもう少し節度を持ってだね……」ブツブツブツブツ
ピピピピピピ…
男「……ん?」
801 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:13:07.73 ID:jnV/GDzM0
男「……もしもし」
友「おはよう。今、時間いいかい」
男「……おう、座敷ちゃんなら、寝てるから」
友「そっか。……したのかい?」
男「っ……な、何の話、だね」
友「誤魔化しても無駄だよ。まあその分だと、無事卒業したようだね」
男「そ、卒業って」
友「昨日、座敷ちゃんから、話を聞いたんだ」
男「……」
友「今日の夜まで……だ、そうだね」
男「……ああ」
804 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:19:36.25 ID:jnV/GDzM0
友「男さんにアタックかけてもいいですかと、そんな事を聞かれたよ。全く嫌味っぽいね」
友「決して消える訳じゃないが……しかし、状況が状況だ。私はうんと言うしか無かったよ」
男「そう、か……」
友「実質負けたようなものだな、これは……」
男「……負けた、って?」
友「……お前の事を好いている女がもう一人いた、と言えばいいかな?」
男「……友」
友「あー、今の君の表情がありありと脳裏に浮かぶよ。そんな顔しちゃ駄目だ。私なら、問題ない」
友「ただ……お願いだ。今までと同じように、私と……」
男「当たり前だ」
友「……」
男「えっと……その。お前は、俺の家族みたいなもんなんだ。
口をきかなくなったりなんて、絶対にしない」
友「ふふ……はあ。ちゃんと座敷ちゃんを、幸せにしてあげるんだよ。男」
男「……ああ」
友「……ありがとね」ピッ
809 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:25:03.90 ID:jnV/GDzM0
――
男「出発だー!」
座敷「はいっ!」
男「うむ、いい返事だ! 今日も絶好のお出かけ日和!」
座敷「海へは、どうやって向かうのですか?」
男「電車に乗る。きっと一時間くらいで着く筈だ」
座敷「おお……電車……」
男「電車に乗るのも初めてか?」
座敷「はい……お買い物のとき、線路の上を走ってるのを見たことはありますが」
男「……今日は初めてだらけだな」
座敷「……」ジト
男「ごほん。行くか」
813 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:30:39.04 ID:jnV/GDzM0
――電車内
座敷「わ、わっ……すごい、動いてる……」ワクワク
男「ざ、座敷ちゃん……喜ぶのはいいけど、シートの上に膝載りするのは……周りの眼が……」
座敷「あっ! この前行ったデパートですよ! 凄い!」キャッキャッ
男「ううーむ……仕方ないな……」
――
男「乗継ぎだ、少女ちゃん」
座敷「ノリツギ、とは……?」
男「あの電車のままだと、ぐるぐる同じ所を廻っていつまでたっても海には着けないんだ。
だからこうして、海まで行ける電車に乗り換えなきゃいけない」
座敷「はぁー……」
819 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:34:37.16 ID:jnV/GDzM0
――海の駅
男「よーし、着いたぞ!」
座敷「海……海……かあ」ワクワク
男「いこっか」
座敷「はいっ!」
――
男「そういや、座敷ちゃん」
座敷「はい、なんでしょう?」
男「どうして海に来ようと?」
座敷「えっと……テレビで見て、綺麗だと思って……それから」
男「それから」
座敷「水着、と言うんでしたっけ……あれ、可愛いなって……」
男「……ほう」
824 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:37:38.10 ID:jnV/GDzM0
――海
座敷「海、だぁああ……!」
男「うむ、今日も綺麗だ」
座敷「わあっ……!」テクテク
男「走っちゃ駄目だぞ、転んだら危ないから」
座敷「は、はいっ……」トコトコ
ザァァアアアァ…
座敷「……」ジッ
男「……座敷ちゃん」
座敷「……いい、音」
男「……」
828 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:42:21.54 ID:jnV/GDzM0
座敷「全ての生命は……海から生まれたと、言いますよね」
男「うむ」
座敷「今、此処に来て……なんだか、納得しました。とても柔らかくて、大きな……母親のような、音がします……」
男「……座敷ちゃん」
座敷「……来れて、良かった」
座敷「……ありがとうございます、男さん」ニッコリ
男「……ああ、どういたしまして」ニコニコ
――
男「ところで座敷ちゃん、どうだい水着を着てみる気は」
座敷「今の時期じゃ、売っていないんじゃ……?」
男「……それも、そうだな」
830 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:46:38.47 ID:jnV/GDzM0
ザァァァアア・・・
座敷「……ずっと、こうして……波の音を、聞いていたいです」
男「座敷ちゃんの気が済むまで、居ていいよ」
座敷「ありがとうございます……でも、夕方には帰って、お夕飯の準備を、始めなくちゃなりません」
男「こんな日くらい、いいんじゃないかな……」
座敷「……いいえ。こんな日、じゃない。普通の日です」
男「……」
座敷「明日も、明後日も……ずっと。私は、あの部屋に居ます」
座敷「たとえ見えなくなっても、貴方と一緒に生きていますから」
男「……そうだったな」
832 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:49:52.31 ID:jnV/GDzM0
――
座敷「……そろそろ」
男「……もういいのか?」
座敷「はい。行きましょう」
男「……ん」キュッ
座敷「……男、さん」
男「こういう時に……繋がっておかないとな」
座敷「……はい」ニッコリ
842 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/07(水) 23:54:23.74 ID:jnV/GDzM0
――電車内
ガタンゴトン ガタンガタン
座敷「すぅ……すぅ……」
男(……たとえ、姿が見えなくても)
男(日常は続く。生活は続く。俺も、座敷ちゃんも、友も――みんな、生きている)
男(変わらないんだ)
男(奇跡なんか、起きても、起きなくても――結局、変わらないんだ)
男(……そう、思おう)
男(座敷ちゃん)ギュッ
848 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:00:23.54 ID:ZAyrb2VC0
――帰り道
男(……この道を座敷ちゃんと歩くのは、二度目だな)
男(今、座敷ちゃんは眠っているけれど)
男(色々、変わったな……ここにくるまで、色々あった)
男(俺も座敷ちゃんも……はは、明日友にからかわれるんだろうなあ)
男「……なあ、座敷ちゃん」
男「こんな事言うのは、ちょっとおかしいかもしれないんだけどさ……」
男「……ありがとな。君のおかげで、俺はどうにかなってるんだ」
男「感謝しても、しきれないよ……」テクテク
座敷「……」
851 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:04:59.38 ID:ZAyrb2VC0
――家
男「た、だいまー」ガチャリ
座敷「ん……家……?」
男「おう、おはよう。家ついたよ」
座敷「ふぁ……そっか……」スルスル
男「よっし。ぼけぼけだし、顔洗ってきたらどうかな」
座敷「はい……」スタスタ
ゾ
男「わー。お前も小さくなったなあ、この、この」ツンツン
ドサッ
男「おっと! へへ、もうその攻撃には慣れ――」
ベシッ
男「……宙浮くのかよ、それ」ヒリヒリ
854 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:08:38.23 ID:ZAyrb2VC0
座敷「よおっし。最後の夕飯は気合いれて作りますよっ!」
男「最後じゃないじゃなかったっけ?」ニヤニヤ
座敷「むむ……最後に作る、です。はい。明日から頑張ってくださいね、男さん」
男「……ずっと焼きそばでいいかな」
座敷「……レシピでも書置きしておきましょうか」
男「……よろしく先生」
座敷「はぁ……」
855 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:11:42.00 ID:ZAyrb2VC0
――
座敷「お待たせしました……」コト
男「うおお……」ジュルリ
座敷「ふふ……よだれ、垂れてますよ」フキフキ
男「あ、ありがとう。うーん、これはすげぇや……」
座敷「腕によりをかけて作りました。ご堪能ください」
男「……いただきますっ」ゴクッ
座敷「ふふ……」
858 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:15:22.20 ID:ZAyrb2VC0
――
座敷「お風呂、あがりましたよー」ガララ
男「おう、おかえり」
座敷「ん……何読んでるんですか?」
男「“彼女と行く熱海温泉旅行”」
座敷「……今更過ぎやしませんか」
男「座敷ちゃん、見えなくなったら外に出ることは」
座敷「んー、無理じゃないですかね」
男「むう、そうか……」
男「あー! 折角だから一緒に風呂入ればよかった!」
座敷「雰囲気ぶち壊しですよ」
861 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:18:05.75 ID:ZAyrb2VC0
――
男「よし座敷ちゃん、ゲームをしよう」
座敷「唐突ですね……かまいませんが」
男「じゃんけんだ」
座敷「はぁ」
男「負けたほうが服を一枚脱ぐ」
座敷「服って……今パジャマじゃないですか!?」
男「名づけて一瞬即発野球拳」
座敷「せ、センス……」
男「よーし行くぞ! じゃーんけーん――」
座敷「ああもう……」
864 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:20:59.59 ID:ZAyrb2VC0
「うわ、負け――」
「ちょ、反則――」
「かてばよかろうなのだ――」
「あ、ちょ、ぬがしちゃ――」
ゴトッ
「いっ、このやろ――」
「あ、もう――」
「ん――」
――――――――――――
――――――
――
865 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:21:47.94 ID:ZAyrb2VC0
――――――深夜
868 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:24:32.63 ID:ZAyrb2VC0
男「……電気、消すよ」
座敷「はい……」
男「……」パチン
座敷「……なんだか、あっという間の、一日でした」
男「……そうだな」
座敷「ふふ……楽しい時間とは……本当に。早く過ぎるものですね」
男「全くだ……」
872 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:30:00.10 ID:ZAyrb2VC0
座敷「……昨日、友さんに、電話したんです」
男「……アタックしてもいいですか?」
座敷「う……聞いてたん、ですか」
男「聞かされたよ。色々と」
座敷「そ、そうですか……まあ、そうですよね」
男「……友は、座敷ちゃんの事を、うらんで無いと思うよ」
座敷「……そうでしょうか」
男「あいつは……さっぱり、してるからさ。無理だと知ったら諦める。まあちょっと泣き虫な所はあるけれど」
座敷「……素敵な方、ですね」
男「……今、自分と比べた?」
座敷「……」
男「……うん、駄目だよそう言うのは。いい事一つも無いし」
座敷「……そうですね」
875 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:32:26.75 ID:ZAyrb2VC0
座敷「いつかまた……友さんを、部屋によんでくれませんか?」
座敷「もう一度、話が……してみたいんです」
男「……うん。いいよ」
座敷「……ありがとうございます」ギュッ
男「……いよいよ、だな」
座敷「……そうですね」
男「怖い?」
座敷「……いいえ。男さんが居てくれたら、それで十分です」
男「そっか……」
878 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:37:03.36 ID:ZAyrb2VC0
男「……俺は、怖いかもしれないな」
座敷「……怖い」
男「うん。見えない、ってさ。やっぱりそれだけで違うと思うんだ」
座敷「……そうかも、しれません」
男「でもさ」
座敷「……」
男「俺はここにいる」
座敷「……はい」
男「君もここにいる」
座敷「……はい」
男「二人とも、生きている」
座敷「……はい!」
男「はは……それさえ分かれば、十分だ。俺は、大丈夫」
男「一緒に、行きよう」
座敷「……はいっ……」ギュッ
883 :
生きようだよ馬鹿ぁぁん :2011/09/08(木) 00:42:10.51 ID:ZAyrb2VC0
座敷「……男、さん」
男「んー?」
座敷「愛してます」
男「……うん。俺も、愛してる」
座敷「私も、男さんと一緒に……生きたいです」
男「……そっか」ギュッ
座敷「……もっと、強く抱きしめてください」
男「……」ギュッ
座敷「……男、さん……」ギュッ
男「座敷ちゃん……」
座敷「……」コツン
男「……」コツン
座敷「……おやすみなさい」
男「ああ……おやすみ」
――
887 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:45:54.66 ID:ZAyrb2VC0
――翌朝
男「……」パチッ
男「……寒、い」ムクリ
男「……」
男(――体を、起こして)
男(部屋を、見回して)
男(見違えるくらい綺麗になった天井と)
男(布団の中の、空白を感じて)
男(――俺は座敷ちゃんが、見えなくなったことを認めた)
892 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:49:43.87 ID:ZAyrb2VC0
男「はー……この部屋、こんな広かった、かな」
男(布団を体に巻きつけて、部屋をぐるりと、何度も、見回す)
男「……一人と、二人の差は、でかい」
男(頭をかきながら、そんな事を呟く)
男「……居ると分かってても」
男(居ると分かってても)
男「この、空気の違いは」
男(この、温かみの違いは)
男「精神的に、くるものがあるなあ……」
897 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:52:24.33 ID:ZAyrb2VC0
男「……」
男「……ん」
男(かさこそと、音がした)
男(重い頭を、動かして……辺りを、見回してみる)
男(……見つけた)
男(ちゃぶ台においた、紙とペンが……一人でに、動いていた)
901 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:53:57.26 ID:ZAyrb2VC0
“
オ
ト
コ
サ
ン
”
904 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:57:13.00 ID:ZAyrb2VC0
男「……っ!」ガバッ
男(思わず、飛び起きて、ちゃぶ台にしがみついた)
男(ペンの先が、困ったように紙の上を泳ぐのを見て、俺は苦笑する)
男(ああ、いるんだ)
男(今此処に、座敷ちゃんが――)
男「座敷、ちゃん……」
男(ペンの動きが、一度、止まって)
男(次の用紙に――移った)
905 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 00:58:33.46 ID:ZAyrb2VC0
“
ア
リ
ガ
ト
ウ
”
912 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:02:29.20 ID:ZAyrb2VC0
男「――……っ」
男(――自然と、涙が出た)
男(色々な感情が胸の内でまざりあって、結局俺はどんな顔をすればいいか、分からなくなってしまった)
男「座敷、ちゃん……っ」
男「なに、言ってんだよ……俺の台詞だよ……ありがとう、なんて……」ポロポロ
男「ひぐっ……お、俺が、君に、ぐすっ、どん、だ、け……感謝してると、思ってるんだよ……!」ポロポロ
男「座敷ちゃん……座敷ちゃん……っあ、ああああっ……!」
918 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:07:10.72 ID:ZAyrb2VC0
――
男「……」
男(――いつのまにか、涙が、止まっていた)
男(俺はちゃぶ台の前に、腰を下ろし……眼を瞑っていた)
男(ペンも、動いていない)
男「……まあ、まずは、さ」
男(それでも……そこにいるかどうかも分からないのに、言葉は口から出た)
男「これからもよろしくお願いしますって……書けるように、ならないとな」
男(冗談交じりに、そう言ってみる)
男(その瞬間、ペンが動いて――)
男(再び、彼女らしい、突拍子もない言葉を描いた)
919 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:08:14.16 ID:ZAyrb2VC0
“
ア
イ
シ
テ
イ
マ
ス
”
おしまい。
920 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:08:37.45 ID:2SnfCmrK0
乙乙乙!!!!!!!!!
921 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:08:45.19 ID:gvYn5xrv0
乙!よかった!
925 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:09:05.19 ID:+/PdUphE0
最終兵器彼女みたいだ
乙
926 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:09:08.18 ID:avpzWqxB0
禍根ちゃんでねえええええええ
でも乙!
933 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:09:46.38 ID:6hyG4BWO0
おっつぅう
禍根さん復活ならず
934 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:09:55.08 ID:SmGCjDkW0
ちょっと寂しい終わり方だったな
乙
943 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:10:56.33 ID:36BmsbMy0
こういうのやめろよな
おっさんは涙もろいんだよ
乙
956 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:12:16.55 ID:H7l6T43c0
その後がちょっと気になる
乙
957 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:12:37.37 ID:ZAyrb2VC0
お粗末さまでした。禍根はヒロインじゃNEEEEEEEE
まさかここまで禍根が人気になるとは思わんて……なんだかラストがすべったみたいじゃないっすか……
もっとスレに余裕があったらまだなんか書いていたかもしれませんが、この話はここでおしまいにしておきます。
たくさんの支援と保守、ありがとうございました。またそのうち妹スレでも書こうと思います。
966 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:14:32.98 ID:BPJQfeD70
乙~
968 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:15:11.96 ID:FP3m1sut0
969 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/09/08(木) 01:16:05.90 ID:R9yAns5A0
冬木 冬樹
ソフトバンククリエイティブ
売り上げランキング: 271208
- 関連記事
-
この調子だと禍根ちゃんも男に惚れてたな・・・
めっちゃちっちゃくなって部屋の隅から見てるかもしれない・・・