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【前編】326 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:06:33 ID:ScSQ3gFk
―――――――
―――――――――
――――
オーディン:炎「 」ピクピク HP:100
召喚士「………切断し…ても…すぐ繋がるなんて…反則でしょう…」 HP:1
ウィップ「言い残すことはある?」
ゾンビ娘「ウィップさん!?ここまでやったならもう…!」
召喚士「…女騎士様に、どうかよろしくお願いいたします。私は一足先に失礼いたします、と」
カード「おい!何も死ぬこと無いだろ!なのに…!」
327 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:07:05 ID:ScSQ3gFk
召喚士「どの道死ぬしか残っていませんよ」
ゾンビ娘「どういう…」
賢者「魔王の下についた人間は、言ってみれば人類の裏切り者ってことだよ」
召喚士「そういうことです。今を生き延びたとしても、その内見つかって殺されますよ。
ただでさえ女騎士様に代わって顔出しが多かったんですから」
328 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:07:49 ID:ScSQ3gFk
召喚士「さ、どうかとどめを。…出来るならカードさん、あなたの手で…」
カード「何で俺が…!」
召喚士「食材に殺されたとなったら、地獄で笑い物になってしまいますよ。
それに、どうせならあなたのような召喚士に殺されたい」
召喚士「だってあなた…―――――――まだ正規契約の召喚をしてないでしょう?」
カード「ぐ………」
召喚士「非正規の略式召喚であそこまでやられた。もはや畏敬の念を覚えるほどに。
あなたと私は、どこか似ている気もしますしね。だからこそどうか…どうか…」
賢者「カード…」
カード「わかってる。俺の全力で送ってやるさ……」◆
――召喚
329 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:08:22 ID:ScSQ3gFk
――――――
―――――
―――――――――――
後のことは…頼みます…
―――――――――
――――
――――――
330 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:09:07 ID:ScSQ3gFk
ゾンビ娘「むぅ……」スタスタ
賢者「この階部屋が多すぎやしないかい?」ガチャッ
ゾンビ娘「むむむぅ……」
カード「行き止まりばっかりだしな」バタン
ウィップ「宝箱が無駄にあるし、いいんじゃない~?」
ゾンビ娘「むむむむむ!」
賢者「何唸ってるの」
331 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:12:56 ID:ScSQ3gFk
ゾンビ娘「いえ、もうお腹がいっぱいでこれ以上食べられなくて…」ケプー
芋の欠片「」
賢者「あれからずっと食べてたのね…」
ゾンビ娘「おいしかった、です!」ヒッヒッフー
ウィップ「それは何よりだよ~」
カード「いつの間にこんな食いしん坊キャラに…」
賢者「はじめからだよ。ん?」ガチャッ
332 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:13:33 ID:ScSQ3gFk
骨っ子 ココハ…
カード「休憩所…か…?」
賢者「それにしては無駄に生活感があるね」
骨っ子 サッキノオニイサンノニオイガスル!
ウィップ「召喚士の部屋だったのかな~」
ゾンビ娘「ちょうどいいです。少し休ませてもらいましょうっ」トテテ
333 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:14:55 ID:ScSQ3gFk
賢者「僕も魔力を回復させ…」
三●カサッ
賢者「敵襲!?」チャキッ
人
( ? )「待って撃たないで!」
賢者「え、何このスライム」
人
(>‐<)「プルプル、ボクはくろいスライムじゃないよ!」
賢者「いや、現に黒いじゃない」
334 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:15:28 ID:ScSQ3gFk
人
(・A・)「あ、間違えた。ボクはわるいスライムじゃないよ!」
賢者「………そうだね」
人
(・∀・)「黒いのはさっきコーヒーを飲んだからだよ!」
賢者「突然出てきて自己紹介されても、マスコットなら骨っ子で間に合ってるよ」
人
(-_-)「ん~僕は忠告をしに来たんだよ」
賢者「忠告?」
人
(´∀`)「まあ、ここじゃあなんだから、隣の部屋にでも行こうよ」
335 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:16:17 ID:ScSQ3gFk
――ガチャッ
賢者「ひぃ…っ!?」
その部屋の壁には、女騎士の絵が一面に貼られていた。
賢者「ここは何!?」ゾワァ…
人
(-∀-)「召喚士のプライベートルームだよ。見かけによらず、とんでもない闇をお持ちで…
普段はこの闇を抱えて、時々この部屋で吐き出していたってことだよ!」
賢者「…きっと今頃、死後に秘蔵のエロ本を公開される男子の気持ちを味わっているかもね」
人
(>Α<)「恥ずか死レベルは自慰を誰かに目撃されたレベルに匹敵するね!」
賢者「うわ…自作の抱き枕まである…」ゾワァ…
人
(・3・)「そろそろ本題に入りたいんだよ…」
336 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:16:50 ID:ScSQ3gFk
賢者「それで、何を言いたいの?」
人
(・∀・)「まあまあ、まずは座ろうよ」
賢者(良かった…クッションは普通だ…)
人
(・Α・)「話というのは、これから先の展開についてなんだよ」
賢者(ん?クッションの下に何か…)ゴソゴソ
人
(・Α・)「すぐそこが魔王のいるラスボスの間なわけだけど」
賢者(鞭!?彼はどこまで登り詰めてるんだ!?カードと同類じゃないか!あ、よく似ているってそういう!?)アタフタ
337 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:17:46 ID:ScSQ3gFk
人
(-o-)「話聞いてる?」
賢者「き、聞いてるよ。それで?」
人
(-_-)「うん。君達、魔王戦も真面目に戦う気ないでしょ?」
賢者「いや、それが僕達の作戦でだね…」
人
(~Α~)「本心は?」
賢者「シリアスやると背中が痒くなるんです(切実)」
338 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:18:21 ID:ScSQ3gFk
賢者「読むのはなんともないんだけどさ、自分がするとむず痒くて」
人
(-∀-)「この物語も、日々のストレスで極限状態の心で書き殴ったものだしね。
はたしてこの先に予定しているシリアス展開に心が耐えられるか…」
賢者「本当にやるの?背中大丈夫?」
人
(・∀・)「気にしないで。ストレスで乾燥肌が悪化しているだけな気もするし、
それにもう決めたんだよ。まだ先は長いけど、ちゃんとシリアス70%で頑張るから安心してほしいんだよ」
339 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:18:52 ID:ScSQ3gFk
賢者「残り30%は?」
人
(・ω<)☆「期待してるよ?」
賢者「ええー僕ら頼みなの?」
人
(・Α・)「そうそう、ここでのことは本編にあんまり関係ないから、『みんなにはないしょだよ』?」
賢者「そのセリフが言いたかっただけでしょ」
人
(>∀<)「あはは!それじゃあもう時間なんだよ。起きるんだよ!バイバイなんだよ!」
賢者「え…?」
――――――――
―――――
340 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:19:23 ID:ScSQ3gFk
賢者「んっ………」ビクッ
カード「お!起きたみたいだな」
ゾンビ娘「おはようございます」
賢者「…………何で僕はゾンビ娘に膝枕されてるの?」
ゾンビ娘「逃がさないようにするためですよ」ニッコリ
賢者「え゛…?」ガシッ
341 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:20:08 ID:ScSQ3gFk
ウィップ「突然『眠い』って言って倒れたの覚えてないの~?」
賢者「そうなの?」
カード「ゾンビ娘を押し倒す形で倒れたことも?」
賢者「えっ…」
ゾンビ娘「そのまま私を抱き枕にして『壁…堅い…』って寝言をこぼしたことも?」ゴゴゴゴゴゴ
――ミシミシ
賢者「おぅふっそこを潰すのはおやめください!」
ゾンビ娘「えへへへへ~」ベキャッ
賢者「」
342 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:20:39 ID:ScSQ3gFk
その後、ケーキを奢るという約束でなんとかなだめ、部屋を出ることにした。
賢者「よ、よし、出発す…」フラフラ
賢者の視界の端に、少しだけ開いた扉が映る。一抹の不安を胸に抱きながら、覗き込ん…
――――ズバメキャアッ
…ドアを歪める勢いで閉めた。
ゾンビ娘「?…中になにか…」テクテク
賢者「―【爆裂弾・三点撃】―」カッ
ゾンビ娘「ミギャッ!?」ズドーン
343 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:21:28 ID:ScSQ3gFk
ゾンビ娘「何するんですか!」†リレイズ発動†
カード「あ~あ、こりゃあ部屋の中全部吹き飛んだな」
。 。
骨っ子 (((( д ;))))
ウィップ「何を見たの~?」
骨っ子 ボクハナニモミテナイヨ ガクガクブルブル
賢者(ユメダケドユメジャナカッタ…)スタスタ
344 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:22:21 ID:ScSQ3gFk
~魔王城 ー最上階ー
賢者「この扉の向こうに魔王がいる。みんな、準備はいい?」
ゾンビ娘「絶対に倒してケーキを食べてやりますよ!そして年一回パーティーをやるのです!」
カード「アハハハハ!そりゃあいい。そん時には俺も腕を振るおうじゃねえか」
骨っ子 タノシミー
ウィップ「ならウチも手料理を…」
全員「「「それはダメ」」」メー
ウィップ「え~」
全員肩の力を抜いて、笑っていた。
人
「人はそれを死亡フラグと呼ぶ」三( ・∀・)ヒュッ
賢者「!?」バッ
賢者「気のせいか……」
――ギギギィ…
345 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:23:19 ID:ScSQ3gFk
~魔王城 ー玉座の間ー
部屋の中に入ると、オルガンの音が腹の底を震わせた。
魔王《随分と遅かったではないか。待ちくたびれたぞ》:毒
カード「背を見せての演奏とは、随分と余裕のようだな」◇◆
オーディン「【グングニル】!!!」ゴッ
魔王《いや何、魔王の登場シーンはこうあるべきと聞いたのでな》:毒 ガシッ
ウィップ「召喚獣の一撃を止めちゃったよ~」
魔王《この程度、造作もない》:毒
ゾンビ娘「顔が紫に変色していなければ絶望してましたね」
賢者「まだ毒が解けてなかったのかい…」
賢者(もっとも、そんな状態でグングニル受けて無傷ってのが一番恐ろしいんだけどね…)
346 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:24:33 ID:ScSQ3gFk
魔王《フン…貴様も毒に侵されてみるか?》
賢者「遠慮させてもらうよ」
魔王《そう言うでない。我が9つの呪文が1つ、その身を持って味わえ》
魔王《食らうがいい、【言いたいことも言えないこんな世の中】を!》
カード「名前長!」
賢者「! ゴフッ」:猛毒
ゾンビ娘「賢者様!」
347 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:25:20 ID:ScSQ3gFk
魔王《フハハハハ!通常のポイズンの三倍の毒性を持つ我の呪いの味はいかがかな?》
賢者「…毒だけじゃなく、解毒の呪文を受け付けない呪いもミックスされてるあたりが最高かな…ゲホッ」:猛毒
魔王《200年前は、魔導師が抗毒の陣を発動したせいで使えなかったが…先手必勝とはよく言ったものよ!》
ゾンビ娘「【キアリー】!【キアリー】!!!」
賢者「本格的に結構やばいねー」:猛毒
魔王《今、楽にしてやろうではないか!フハハハハ!》【メラミ】
灼熱の炎が賢者に襲いかかる▼
348 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:26:11 ID:ScSQ3gFk
――――――――――――
あたり一面に赤色が渦巻いている。
魔王《他愛もない。今のはメラゾーマではない、メラだ!フハハハハ……》
――――ヒュッ
魔王《ほう…我のメラを食らってまだ生きておるか》
カード「やかましい!どこがメラだ!!行け、オーディン:炎!!」
オーディン:炎「【斬鋼剣】」ヒュオッ
魔王《む…それは召喚士の…。ククク、一度見ただけで覚えたか。なかなかのセンスよ。
だが、その蝋燭のような頼りない火で何が出来る?》【アルテマ】
ウィップ「あ゛?メラとか言いつつメラミ使ってたテメェが言えたことじゃねぇぞ?纏いやがれ、魔導鞭チェイン!」ヒュッ
――【アルテマ・ウィップ】
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
349 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:26:51 ID:ScSQ3gFk
カード「やったか!?」
ウィップ「いや~避けられたね~」
――――ピシッ
ウィップ(アルテマはちょっと流しきれなかったかな~?たった一回でヒビはいっちゃった~)
ウィップ「次にまたアルテマ来たら厳しいかな~」
カード「そっか……賢者達は無事かねぇ…」
ウィップ「大丈夫~覚醒した骨っ子が庇ってるよ~」
350 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:27:26 ID:ScSQ3gFk
骨っ子「ゴシュジン」「大丈夫?」
ゾンビ娘「う…うん…何と………か………」
ゾンビ娘は骨っ子を見て絶句した。首の先に三つあるはずの頭が、二つしか無かったから。
ゾンビ娘「骨っ子!頭が………」
骨っ子「マダ2ツアル」「問題ない」
351 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:28:12 ID:ScSQ3gFk
賢者「…みんな生きてるみたいだね…ケフッ」:猛毒
カード「お前が一番重傷だバカ」
ゾンビ娘「とは言え、全員それなりのダメージは負ってますけどね」
賢者「魔王は…?ゴハッ」:猛毒
ウィップ「避けられたけど、衝撃で屋根やら壁やら吹っ飛んだからね~一緒に外に飛んだかもしれない~」
賢者「そっか…みんな集まって」:猛毒
ゾンビ娘「? どうしました?」
【レーゼの風】
あたりに虹色の風が渦巻く▼
骨っ子「タイリョクガ」「徐々に回復してる!」
カード「味方全体にリジェネの効果…」
賢者「動けないのは変わらないけど、毒で死ぬことは無くなったね。コホコホ」:毒
352 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:29:29 ID:ScSQ3gFk
ゾンビ娘「いつの間にこんな強力な呪文を…」
賢者「さっき下の階でゾンビ娘を爆殺した時にレベルアップしちゃって」:毒
ゾンビ娘「仲間倒してLevel upしないでください!」
魔王《無駄に発音いいな、貴様》ヌッ
ゾンビ娘「100年ほど世界中をさまよってましたから。まぁ、言葉を覚えるのは楽しかったですけど……え?」
353 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:30:16 ID:ScSQ3gFk
魔王《フハハハハ!我に感謝せよ。それができたのも刻印の恩恵なのだからな!》ツ ツ ツ…
ゾンビ娘「ひぅ…っ!?」ゾワワ ワ ワ ワッ
賢者「ゾンビ娘から…離れろ!」ー【雷撃弾】ー
魔王《おっとそう熱くなるでない》ヒョイッ
賢者「避けるな!………ゴフッ」ボタボタ
魔王《ククク、だから言ったのだ。激しく動けば、それだけ早く毒が回るぞ?》
賢者「く………っ!!」:猛毒
魔王《自慢の魔力も、これでは使いようがないなぁ……フハハハハ!》
354 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:30:46 ID:ScSQ3gFk
―――――――
???「これまで話したことからも予想がつくと思うけど、魔力っていうのは身体の中を血と一緒に流れているんだ」
???「魔法を使えば、その分流れは速くなるし、血の巡りも比例して速くなる」
…………………?
???「そう、だから魔法を使いすぎると息切れもするっていうわけだよ」
???「でも、魔力の流れが血流に比例するなら、その逆もまた可能。
だからマラソンなんかで体力をつけさえすれば、その分魔力消費も抑えたりできるんだよ」
???「僕も修行中は、相当走らされたなぁ…」シミジミ
???「まあ、毒は誰であろうと危ないってこと。君も気をつけるんだよ」
………!
???「ん!いい返事だ!」
―――――――
――――――
―――――――――
―――――――――――
355 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:31:17 ID:ScSQ3gFk
カード「魔王だったら避けずに全てを正々堂々と受けて、叩き潰すくらいはしてほしいものだ、な!」【水符】
魔王《正々堂々と言うなら、1対1で来てほしいものだかな》ヒョイッ
賢者「それはそうなんだけど、ケホッ…魔王の様式美なんだから、そのくらいこなしてよ」【ストップ】
魔王《ぐ………!?》ギシッ
ゾンビ娘「完全に止められないあたり、流石は魔王ですね」ススス
骨っ子「ボクノウシロニ」「隠れるのやめてよご主人!」
ウィップ「まあ~背中を撫でられて気持ちが悪いのはわかるけどね~」
ゾンビ娘「うぅ~セクハラ だめ絶対!」ー【爆弾矢】ー
356 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:31:50 ID:ScSQ3gFk
魔王《あの程度でセクハラ扱いか……》ギギギ
カード「姿だけならまだ百合に近いから許せる」キリッ
魔王《お主、気持ち悪いな》
カード「あ゛ぁん!?もう一回言ってみろ!」
魔王《気持ち悪いと言ったのだ。それより、我に構ってていいのか?》
オーディン:炎「……!!! 主殿!!上を!」
カード「んぁ?………!!」
357 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:32:49 ID:ScSQ3gFk
暗い色をした空に、赤い光がポツポツと光っている
魔王《【 メ テ オ 】》
ウィップ「な……!?」
魔王《普段なら城を壊さないように、絶対に使わない呪文なのだが…。
もうすでに天井も壁も無くなっておるからな。遠慮なく使わせてもらうぞ》
カード「オー炎!!グングニルだ!」
オー炎「オーエン!?それは何だ主殿!?」
カード「お前の名前長いんだよ!これで十分だろ!」
オーエン「今更なにをいっておるのか…」【グングニル】
炎の槍が夜空に広がる隕石の一角を消滅させる
ゾンビ娘「駄目です!数が多すぎます!」―【爆弾矢】―
そう言うゾンビ娘の矢は、遙か上空にある火の玉には届かず地面に落ちて爆発する。
魔王《これで詰みだ。なに、なかなか楽しませてもらったぞ。冥土の土産に褒めてやろうか?ククク》
358 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:33:32 ID:ScSQ3gFk
黒い空は急速に赤い光で埋め尽くされる。
骨っ子「【イオナズン】!」「【イオナズン】!」
爆発により、隕石はその姿を減らしていく。しかし、それを越すおびただしい数の隕石が降り注ぐ。
賢者「くそ……っこうなったらアポカリプスで…!カフッ」:毒
ゾンビ娘「そんな莫大な魔力を使ったら本当に死にますよ!?」
359 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:34:14 ID:ScSQ3gFk
賢者「ここで命はらなきゃ、勇者の呪文が泣くよ」グググ
賢者「【アポカリ……】」
カード「召喚――【バハムート零式】」
360 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:34:56 ID:ScSQ3gFk
カードの足下に魔力が渦巻き、正式召喚の証である魔法陣が展開していく。
カード「来い!!バハムート零式!!!」
魔法陣から巨大な魔力の塊が放たれれ、鈍い銀色に輝く魔力が上空のメテオの横をかすめるように飛び回る。
そして再びカードの側へと舞い戻り、ようやくその姿が輪郭を持った。
零式「ギャオォォォォォォォォオオ!!!」
零式の叫びに呼応するかのように、目の前に迫っていた隕石が破砕する。
ゾンビ娘「あれはさっき召喚士にとどめを刺した……!」
賢者「僕の決死の覚悟は何だったのか…」:毒
361 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:36:41 ID:ScSQ3gFk
カード「さあ、行くぜ!零式!!!」
魔王《零式…原初の召喚獣…失われていたとばかり思っていたのだかな…》
カード「生まれつき、何故か契約してたんでな」
魔王《ククク、面白い!そうでなくては!》
魔王の足下にどこか不安定でどす黒い印象を与える魔法陣が広がる。
キンググール
魔王《【喰鬼ノ王】―――召喚》
362 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:37:41 ID:ScSQ3gFk
肥大化し、人型を留めていない肉の塊が魔法陣から生み出される。
喰鬼ノ王「コルるルるるるるるるルるる」
カード「王だかなんだか知らねえが、レイズで瞬殺してやらあ!」【蘇符・レイズ】
喰鬼ノ王「ギャるルォおァ!?」バチュッ
しかし喰鬼ノ王はレイズを食らい、なおもその場に君臨し続けている。
賢者「レイズが効かない喰鬼…!?それって…」:毒
ゾンビ娘「……っ」ズキッ
363 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:38:14 ID:ScSQ3gFk
魔王《これが我の研究の成果。喰鬼の紋章とは違うベクトルの理論に基づいた喰鬼だ》
カード「くそっ!オーエン!焼き払え!」バッ
オーエン「オオオ!!」【斬鋼剣】
全てを断つ剣が、喰鬼ノ王の身体を切り裂く………はずだった。
――――ズババババ…ギチッ
364 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:38:46 ID:ScSQ3gFk
オーエン「ぬ……っ!?」ギギギ
切り裂かれず、その身を持って剣を受け止める喰鬼ノ王。
喰鬼ノ王「ウルルぁあルァ!!」ズオッ
ウィップ「何あれ~?まさか……腕?」
オーエン「グォッ………」ガシッ
カード「捕まった……!」
365 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:39:21 ID:ScSQ3gFk
喰鬼ノ王「くるルるルル」ニヤァ
ゾンビ娘「触れられたらいけません!!離れてください!!」ゾクッ
オーエン「…ぬ!?」ビクッ
オーエン「あル…ジど…ノ…」ガクガク
賢者「様子がおかしい…ケホコホ」:毒
――――メキメキッ
カード「! まさか…!」
喰鬼ノ王が触れた所から肉が同化し、オーエンが取り込まれる。
一回り巨大化し、存在感を増した死人の王が落ち窪んだ目でこちらをじっと見ていた。
366 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:39:55 ID:ScSQ3gFk
魔王《ククク、驚いたか?これが喰鬼ノ王の能力。これは…》
賢者「ケホコホ…『細胞融和能力』。触れただけで他の生き物の細胞を取り込み、自分の物にする…そうだね?」
魔王《………ククク、なかなかに切れるようだな(またセリフとられた…)》
喰鬼ノ王「くルるァルォオ!」ズオッ
零式「グルオオオオ!!!」ヒョイッ
喰鬼ノ王の腕を間一髪回避するバハムート。
カード「攻撃受けたらアウト…!だったら、遠距離からならどうだ!」
零式「【メガフレア】」
喰鬼ノ王「クゥるんルァあ!!」ジュオッ
367 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:40:30 ID:ScSQ3gFk
ウィップ「さすがアンデッド族~よく燃えるね~」
賢者「火属性の攻撃を食らってパワーアップするアンデッド系モンスターも別の世界にいるけどね」:毒
骨っ子「何の」「ハナシー?」
賢者「何でもないよ」:毒
喰鬼ノ王「るァあああ!!ルるるァァああああ!!!」ブンッブンッ
368 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:41:07 ID:ScSQ3gFk
カード「ハッ!いくら腕を振り回そうと、上空にいる零式には届かねぇだろ?ここからチマチマ削ってやる!」
零式「グルァァァァァァァアアアアアアア!!!」
――――ズガガガガガガガガガ
喰鬼ノ王「ルっ!あ゙!あ゙あ゙ッ!!グラぁぁァア゙あ゙ア゙ア゙!!!」ボッ バチュッ ジュオッ
カード「とどめだ!!」◆
零式「コォォォォォォオオオオオオオオオ」
――――【メガフレア】
――――【ギガフレア】
――――【テ…………
魔王《武器を持っただけの若造が……調子に乗るなよ》ズズズ
369 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:45:03 ID:ScSQ3gFk
魔王《【エアロガ】》
零式「グオッ!?」ガクンッ
強風で態勢を崩したバハムートの身体が空中で深く沈み、空の支配者は地面へと叩きつけられ苦悶の声を上げる。
さらに、手の届く範囲へと堕ちてきた竜の肉を喰らおうと、屍の王は暴徒のごとく手を伸ばす。
しかし、その願望は自らの腕を丸ごと炭に換えられる結果になっただけにとどまった。
喰鬼ノ王「ぐラぁぁァア゙あ゙ア゙ア゙ルっ!あ゙!あ゙あ゙ッ!!!」ジュゥウ……
悲痛な叫びを上げ肉を欲する王は、本能のままに最も近くにあったニクに手を伸ばした。
喰鬼ノ王「ルっあ゙ あ゙あ゙ッ」ズリュリュッ
「え…………?」
――――ガシッ
370 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:45:35 ID:ScSQ3gFk
喰鬼ノ王「コルルあぁッハっっはッハ!!」ニヤァ
「……………………。」
喰鬼ノ王「あぁッハっっはッハ…………るォ?」
おかしい……少しも満たされない。ニクを侵食するこの腕が、満たされない。何故だ?
魔王《どうした………?何故喰わぬ……》
違う。自分は食べたくて仕方ないのに、この身体が喰うことを拒否している。何故だ?
371 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:46:06 ID:ScSQ3gFk
「どうしたの……?よ~く味わって喰べなさい?」
ウィップ「オリハルコンの腕が喰えるものならなぁ!!」ギロッ
372 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:46:52 ID:ScSQ3gFk
――――ビキビキビキッ
喰鬼ノ王「ルオぉ……!?」
信じられない。すでに熱を失った自分の身体が、さらに熱を奪われている。
この人間の左腕がとんでもない冷気を発して、氷の刃を精製している。そして我の腕を貫いている。
ウィップ「カードが義手に刻んでくれた【属性開放】の魔導式……
……家族が……ウチに授けてくれた守護属性の力の味はいかが~?」
魔王《【氷】の守護属性……勇者の【雷】に次いで希少な属性ではないか……》
賢者「そっか………この銃がはじめ氷属性の弾だったのは、そういうことだったのか…ケホッ」:毒
喰鬼ノ王「コルオぉ……!」ズオッ
ニクを諦めきれない身体が、執念の一撃を繰り出す。が……
――――背後に感じる殺気が王の身体を縫いつけた。
373 :
スラリン(黒) :2014/08/06(水) 13:47:26 ID:ScSQ3gFk
カード「……………………………。」
チリチリとした痛みさえも感じるほどの鋭い眼光に、彼の何倍もある巨体が、そして魔王がたじろぐ。
ゾンビ娘「カード君……?」ゾクッ
魔王(この我が気圧された?そんな馬鹿な……)
魔王《よくは分からぬが我の本能が告げている…!コイツはマズイ……と!!》
カード「…………の……に…………んじゃねぇ……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
魔王《消えろォォオオ!!!》【アルテマ】
カード「俺の女に………手を出すんじゃねぇぇええええ!!!」◆
――――零式【 テ ラ フ レ ア 】
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:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
376 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:19:29 ID:IrVYfKsM
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::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
符と鞭。かつて世界を救った勇者の仲間、魔導師の血縁である俺達は本物の姉弟じゃない。
それどころか、俺にいたっては魔導師の血すら引いていない。
俺は生まれつき最強の召喚獣と契約していた。その未知の力のために、俺は捨てられた。
幼く身体が弱かった俺は遠くまで歩くこともできず、虚ろな眼で霧のかかった湖を見ていた。
そんな俺を拾ってくれたのが、魔導師一族の女の子。俺より3つ上のウィップ姉さんだった。
377 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:20:07 ID:IrVYfKsM
幼ウィップ「どうしてこんなとこにいるの~?ウチらのかぞくしか入っちゃいけないとこなのに~」
幼カード「…………すてられたんだ。おかあさんに」
ウィップ「どうして~?こんなにお人形さんみたいにかわいいじゃない~」
カード「こいつの………せいだよ」ブツッ
親指を歯で切って、血を一滴地面に垂らす。すると、そこから魔方陣が展開され召喚獣の姿だけが現れる。
これで、自らの血に眠る守護獣の姿だけを呼び出すことができる。これこそ、動きもしないただの人形だ。
零式「……………………」
大人たちはみんなこれを見て怖がった。子供達は泣いて逃げた。どうせこの子も………
ウィップ「かっこい~」
カード「……………?こわくないの?」
378 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:20:44 ID:IrVYfKsM
ウィップ「ウチの作った泥団子のほうがこわいよ~」
そう言って彼女はおもむろに地面の土をこね始めた。何度もこねては崩れて、こねては崩れて。
最後に小さな両手で包んでから手を開くと………
泥団子「キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
カード「うわっ!?」
そこには小さなモンスターがいた。その見た目は確かに怖い。
エイリアンが漢江で、貞子から着信アリというようなグロさだ。
それを持っている女の子の満面の笑みが、この視界にシュールさを醸し出している。
ウィップ「ね~?」にひひ
このときは、びっくりするくらいマイペースな子だな、としか思ってなかった。
379 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:21:44 ID:IrVYfKsM
それから時間を空けず、すぐさま俺は魔導師の家に養子として迎えられた。
姉さんは俺が家族になるまで父親と二人暮らしだった。
母親は産後の経過がよくなかったらしく、姉さんを産んですぐに死んでしまったそうだ。
生前の姿を描いた絵を見ると姉さんによく似た顔つきをしている。一度でいいから本人に挨拶をしたかった。
それからの生活は楽しかった。
お義父さんに魔導式の構造や刻み方を教えてもらい、ご飯のたびに姉さんの料理と格闘。
数年後にはマスターした術式を使ってウィップと馬鹿なことをやって父さんに怒られたり。
7年前、ついに姉さんの料理によって親父が大怪我を負う事件が発生。台所は俺の管轄になった。
カード「この頃になるとウィップに対して特別な感情を持つようになった。
少なくとも俺は、この感情が家族の証なんだと信じて疑わなかったし、今でも少なからず思ってる」
結局、それが家族に対して持つことのない感情だと知るのは、今から3年前のことだ。
それは親父が病に倒れ息を引き取ってから半年後に起こった出来事が原因だ。
380 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:22:30 ID:IrVYfKsM
魔導師の一族は、代々勇者が遺した呪文を守るために神殿を作り、その管理を行ってきた。
もちろん俺達も、親父の死とともにこの役目も受け継ぐことになった。
管理とは、どこから湧いているのかわからないモンスターが、
呪文に悪影響を与えないように保護、処理することを意味している。
姉さんとともに神殿内のモンスターを倒し続け、役目がただの作業になった頃。
神殿の奥底から一体のモンスターが這い出てきた。そいつはどこか見覚えがあるオレンジ色をしていた。
381 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:23:05 ID:IrVYfKsM
カード「何だコイツ?見たこともないモンスターだな」
ウィップ「ん~わかんない~。でも殺しちゃえば関係ないよね~」
カード「同感だ」◇
レベルも上がり召喚獣を多数操れるようになった俺と、
鞭による戦闘術を親父から叩き込まれた姉さんにかかれば、赤子の手をひねるように簡単だった。
カード「さあてとどめを……」
謎の怪物「ぐうぅ………強い…強すぎる………」
ウィップ「しゃべれるんかい~」
382 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:23:44 ID:IrVYfKsM
謎の怪物「くそっせめてカードォ!貴様だけでも……!!」グオッ
――――ギシッ
ウィップ「ウチのかわいい弟きゅんに何をするつもりだったのかな~?」【キャッチ】
カード「俺のことを知っていることも気になるな。てめえは何者だ?」
謎の怪物「貴様……覚えていないと申すのか……?俺は貴様を倒すために六年の修行を耐えたというのに…」
383 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:24:19 ID:IrVYfKsM
カード「既視感はすげーあるんだよ。でも思い出せねえ」
ウィップ「ウチも既視感バリバリ~」
謎の怪物「俺は……俺様は………ッ
六年前に貴様が食べずに残したニンジン様だ――――ッ!!!」ドンッ
384 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:24:57 ID:IrVYfKsM
カード「」
ウィップ「弟きゅんウチの手料理残しちゃったことあったの~?」
ニンジン「ええい!元はといえば貴様もだ!俺様をこんな化け物に産み落としやがって!この飯マズ女が!」
ウィップ「あ゙~?」ギロンヌ
ニンジン「何でもございません」
カード「えっと……そのことについては謝る。何かもうわけがわからなすぎて………どうしたらいいんだ?」
ニンジン「俺を食べて(意味深)くれればそれでいい」
カード「(意味深)つけんなコラ」
385 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:25:30 ID:IrVYfKsM
ウィップ「マヨネーズ持って来たよ~」
カード「マヨネーズで野菜スティックかよ。別にいいけど」
ニンジン「何、ケチャップは用意してるぞ。貴様はケチャップ派だっただろう?」
カード「何で知ってんだ」
ニンジン「俺様は何でも知っている。貴様がベッドの下に隠した親父から受け継いだエロ本のジャンルもな。
あ、ウィップさん皮は剥かずにカットしてください」
カード「だからなんで………ハッ!?」ゾクッ
ウィップ「後で私にも見せてね~?」ニッコリ トントントン
カード(ごめん親父………秘蔵の本は今日無くなると思う)
386 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:26:22 ID:IrVYfKsM
ニンジン「さあ!俺様を食らうがいい!!間を取ってオーロラソースでご賞味あれ!」
カード「俺マヨケチャ苦手なんだが……まあいいや。あの時は食ってやれなくて悪かったな」
カード「いただきます」ポリッ
ニンジン(クククッ!食べたな………俺様がたったこれだけで満足すると思うなよ…
後で存分に後悔するがいい……なにせ、俺様は長年の修行の末に………
とある毒の特性を手にいれたんだからなァ!!!)
387 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:27:00 ID:IrVYfKsM
カード「ご馳走様でした」人
ウィップ「お粗末さまでした~」
―――ニンジン お残しは…ゆるしまへんで………へんで……へんで…へんで………
ウィップ「なんか幻聴が聞こえる~」
カード「さすがにここまで強引な『お残しは許しまへんで』は体験したこと無かったわ……」
――――ドクンッ
388 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:27:34 ID:IrVYfKsM
カード「ぐ………っ!?」
ウィップ「弟きゅん~?どうしたの~?」
カード「い、いや………何でもない……帰ろう……」
カード(あのやろう………何か仕込みやがったな………!)
ウィップ「何で苦しそうなの~?怪我でもした~?」
カード「何でもないから気にすんな……」ハァハァ
ウィップ「………?」
カード(次会ったら殺す……!あ…もう死んでたわ)
389 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:28:06 ID:IrVYfKsM
―――――――
~魔法使いの家
ウィップ「それでね~ウチは言ってやったのよ~『おいおい、それはキミのワイフだろう?』ってね~」
カード「へ、へぇ………」
ウィップ「やっぱり変だよ~?いつもなら『何でもかんでもワイフにするんじゃねぇ!』ってつっこむのに~」
カード「そのジョークいつも最後のネタを変えて…るだけじゃねえか」
カード(くそっ…!だんだん身体が動かしにくくなってきた…)
390 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:28:40 ID:IrVYfKsM
カード「ん?」スッ
右手「ぴーす」V
ウィップ「どうしたの~?ピースなんかして~」
カード「い、いや。これは俺の意思じゃ…ハッ!」
カード(まさか……!)
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391 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:29:13 ID:IrVYfKsM
~体内
人参毒「けけけ!ようやく体内に毒が回り始めたようだな。これでカードの身体を好きに動かせるぜ!」
白血球「てめぇ……見ねぇ顔だな」
人参毒「げっ!白血球がやってきやがった!」
白血球「今、俺達の身体で好き勝手してる輩がいるらしい。お前、怪しいから攻撃対象にリストアップされてるぞ」
人参毒「まじか!」
白血球「で、どうなんだ?お前は何者だ?返答次第では……」
白血球達 ズラッ
392 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:30:06 ID:IrVYfKsM
人参毒「俺は乳酸菌だ」シレッ
白血球「なら安心だ。疑って悪かったな」
人参毒「いや、いいってことよ。こっちこそ手を煩わせて悪かったな」
白血球「それが俺達の仕事だ。気にしないさ。おーし!お前ら、撤収!」
何だよ人騒がせな ヘモグロビンちゃんと遊びに行くぜ~ あっ!てめえいつの間に赤血球女子高の…!
人参毒「……大丈夫かコイツの免疫系。そういやコイツ昔は身体弱かったな。だから俺を食って精をつけろと……」
人参毒「まあいい、それも過ぎた事だ。失ったものは二度とかえらない。俺の姿のようにな……
さて、カードの身体を操って………復讐を始めるとしよう」
393 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:31:04 ID:IrVYfKsM
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カード「な…っ!?」グググ◇
ウィップ「氷符なんて取り出してどうしたの~?熱でもあるの~?」
カード「違……っ逃げろ姉さん!!身体が操られて……」
【ブリザラ】
魔力で生み出された氷の柱が、ウィップの腕を掠め部屋中に赤い飛沫が飛ぶ
ウィップ「……っ!??!!?」ブシュッ
394 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:31:36 ID:IrVYfKsM
カード「くそっ!止まれ…!止まってくれ……!!」ヒュンヒュン 三◇ 三◇
ウィップ「あぐっ…!!」ブシュッ シュッ
彼の意思に関係なく動く体は、少しずつ姉の四肢の自由を奪っていく
カード「お願いだ!止まってくれ――――――!!」
その叫びが届くことは無い。自分の意思ではないにせよ、姉を傷つけているのは紛れも無い自らの身体なのだから
395 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:32:14 ID:IrVYfKsM
ウィップが動けなくなったところで、何者かが操る身体が攻撃をやめた
カード「終わった……のか…?なら…姉さんを治療しないと……」フラッ…
血だらけで横たわる姉の傷を、治療薬『ポーション』で泣きながら治療していく。
ウィップ「大丈夫だよ~泣かないで~」
カード「でもっ!俺……!」
ウィップ「大丈夫だから……ね?」スッ
――――ガッ
弟の頭を撫でようと伸ばした左手を、彼の右手が乱暴に掴んだ
396 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:32:54 ID:IrVYfKsM
カード「………!?また…!」グオッ
ウィップ「きゃ……っ」
再び身体の主導権を奪われ、彼は姉の上に覆いかぶさるように伏せることとなった
カード「何を……!?」
彼の手は指をゴキリと鳴らしながらウィップの服に手をかける。カードの頭に連想されたのは、最悪の未来だった。
カード「くそ……ッ!!!やめ――――――――」
―――――――彼は泣きながら自らの手が赤く染めた床の上に、最愛の家族の純潔の血を散らした
397 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:33:52 ID:IrVYfKsM
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俺は泣きながら嫌だ。ごめん。などという言葉を吐きながらも、その快楽に身を任せていた。
腰を打ち付けるその度に、電撃が走ったような快感が身体を支配する。
だが、同時に自分が家族ではなくなっていく感覚が心を満たして、ひどく不快だった。
それもそのはずだ。俺は家族として禁断の行為を行ったのだから……
自分には弟である資格なんて無くなったのだ。あるいは、もとからなかったのかもしれない。
398 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:34:43 ID:IrVYfKsM
それからの俺は、彼女に対して償いきれないその罪に、この命を捧げることを決意した。
自分を襲い傷つけた存在を、彼女がずっと『おとうと』と呼び続けるのならば、俺はひたすら『弟』を演じよう。
けがれてしまったこの存在を、家族として変わらず愛し続けるのならば、俺は『家族』であり続けよう。
彼女の身体に傷がつくことがあるのならば、俺が代わりに傷つこう。傷つけられよう。
それで彼女を守れるなら、それを約束しよう
399 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:35:15 ID:IrVYfKsM
俺はそれを今日まで続け、かつてと変わらない姿でいるよう努めた。
もう俺自身の手で、ウィップを傷つけたくなかった。あれ以来、身体を重ねることは無かった。
代わりに、あの日から俺を鞭でしばくことが始まった。もちろん俺はそれを受け入れた。
普段あの日のことを気にする素振りを見せない姉さんの恨みや怒りをぶつけられている気がして、
身体の痛みと引き換えに心が救われていくような気がしたからだ。
これは俺への罰だ。生きることが俺の罰だ。交わることも触れることも許されない。そう決めた。
だが、俺は今でもウィップを愛しているし、抱きたいと思うことさえある。
そして、自分の物だと支配欲が暴れまわることも………
400 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 09:35:47 ID:IrVYfKsM
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カード「ほんと、死ねばいいのに…………」
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401 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:11:45 ID:IrVYfKsM
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ウィップ「ほんと、消えればいいのに…………」
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402 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:51:17 ID:IrVYfKsM
ウチはあの日、家を飛び出していただけだった。魔導師の一族として一生を捧げるのが怖くなってしまった。
どうして過去の人間が遺したもののために、ウチ等の人生を使われなくてはいけないのか。
幼い心でも、その意味を理解していたのだろう。だからこそ家から逃げ出したのだ。
ただ、幸か不幸か逃げた先で自分より幼い男の子に出会ってしまった。
男の子は女の子のようにかわいらしい顔つきをしていて、お人形さんのようだった。
403 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:52:00 ID:IrVYfKsM
少しだけ言葉を交わすと、男の子は大きな竜をその場に出現させた。そしてその瞬間、ウチは思いついた。
ウィップ(こんなにおおきなモンスターをやどしているなら、魔力はウチより多いかもしれない)
ウィップ(こいつに、押し付けてしまおう……)
母親がいないからか、少し歪んでしまったウチの心は成熟が早かった。
だからこそ、目的に向かってプロセスを組み立てるのは簡単なことだった。
404 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:52:42 ID:IrVYfKsM
この子が捨てられていたのも好都合。無駄に慈悲深い父親は、すぐさま養子にした。
ウチは父親と、息子が、弟ができたことを喜んだ。
家の役目を継ぐのは代々男だけだったため、父親はそれも含めて喜んでいたことだろう。
ウチ?
もちろんウチが喜んだのは本心だ。だって、これでようやく家の呪縛から開放されたのだから。
405 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:53:16 ID:IrVYfKsM
しかし、一緒に暮らしてみると、義弟に様々な感情を持つようになった。
男のくせに料理がうまいことに腹が立つ。
ウチより背が低いのに、足を挫いたとき軽々と背負われたことが悔しい。
この子の前で本性を隠しておっとりした少女を演じて、自分をあざむいていることに苛立ちを覚える。
そしてなにより、本気で自分のことを家族として愛してくれていることに、感謝している。
長い間同じ時を共有すると、本当に情が湧いてきた。
彼と同じように、『愛情』というものを持ってしまったらしい。
406 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:53:50 ID:IrVYfKsM
歪んでしまった心は冷徹な性格を映し出していたが、歪んでいても純粋な心をしていたのだ。
気づけば、ウチの愛情は家族の枠を飛び越えていた。
最初から家族としてみていなかったからだろうか?一人の男性として、情を持ってしまっていた。
いつしか、弟を溺愛する自分を演じなければ、顔もまともに見れないほどに惚れていた。
この日からずっと、カードの笑顔が頭に焼きついて離れなかった。
いたいけな少年を利用しようとした自分に向けられた、屈託の無い笑顔が突き刺さる。
無垢な心を利用した自分がいまさら誰かに愛されたいなど考えるないように、笑顔がチクチクと突き刺さる。
カードはウチを実の姉のように慕っている。なら、それでいい。そのままで十分だった。
あの日までは――――――――
407 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:54:21 ID:IrVYfKsM
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ニンジン「六年前に貴様が食べずに残したニンジン様だ――――ッ!!!」ドンッ
カード「」
ウィップ「弟きゅんウチの手料理残しちゃったことあったの~?」
それはちょっと聞き逃せない。料理が下手な自覚はあるが、さすがにショックだ。
ニンジン「ええい!元はといえば貴様もだ!俺様をこんな化け物に産み落としやがって!この飯マズ女が!」
ウィップ「あ゙~?」ギロンヌ
思わず本性が出てしまったが、今にして思えばこれこそがこの事態を引き起こしていたのは明白だった。
――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
408 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:55:17 ID:IrVYfKsM
カード「ごめん………姉さん……ごめんなさい………」
ウィップ「あ゙……ひぐっ!……あ゙……あ゙っ……」
弟が、いや、弟の身体がウチの純潔を散らし、ひたすら腰を振っている。
相手のことを一切考えていない無遠慮さで身体の中をかき回され、肉を引き裂かれる痛みが走る。
カード「ごめんなさい………ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
自分の意思ではないにせよ、姉を貫いたのだ。カードは壊れたように謝り続けている。
激しく身体を動かしているというのに、彼の身体から落ちてくるのは汗よりも涙のほうが多かった。
ウィップ(どうして泣いているの……?こんな形になってしまったけど、ウチは満たされているよ?)
彼女の思いに反して、弟は拒絶するかのように大粒の涙をこぼしながら姉を抱いている。
弟は家族でいられなくなることを拒み、姉は逆に快く受け入れた。
その違いが、姉弟の関係を歪なものにしてしまった要因であろう。
409 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:56:24 ID:IrVYfKsM
事件の二日後、ウィップはそれを十分に感じ取っていた。
ウィップ「おはよ~」
カード「おはよ。もう朝ごはんできてるぞ」ニコッ
ウィップ「………ありがと~」
何も変哲のない朝の会話にきこえただろう。むしろ、二日でここまで自然に会話ができることのほうが異常だ。
410 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:56:58 ID:IrVYfKsM
ウィップ「カード~」
カード「何だ?姉さん」
ウィップ「無理はしないでね~」
カード「何のことやら………」
だが彼女には、カードの笑顔がかつてのように笑えていないように見えた。
長年同じ時を過ごしたから分かる、苦しいことを我慢している顔だ。
411 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:57:30 ID:IrVYfKsM
それを打ち明けてくれない苛立ちが、彼女に鞭を握らせた。
『弟きゅん』を演じ続ける弟に、憎しみをこめて鞭を振るった。
ウィップ「そして弟を愛し、その分弟きゅんを憎む。狂った関係になってしまったよ~」
結局、ウチはあれ以来カードの『笑顔』を見ていない。
ウィップ「自分をさらけ出せず、挙句の果てに弟にまで同じ道を辿らせてしまったしね~」
ウィップ「本当に馬鹿だと思うよ~」
412 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:58:04 ID:IrVYfKsM
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ウィップ「ほんと、ウチなんて消えればいいのに…………」
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413 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:59:17 ID:IrVYfKsM
414 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 14:59:52 ID:IrVYfKsM
突然視界が真っ白になった
気が狂いそうなほどの白色の中で、唯一竜の背中と四角い札を構える男の背中だけが黒色を背負っていた
その姿もやがて、白色にじわりじわりと侵食されていく。
その白色がバハムート零式の放った焔であることに賢者が気づいたのは、光がおさまってからだった
415 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 15:00:38 ID:IrVYfKsM
賢者「どうなったんだ……?」:毒
あまりに強すぎる光を目の当たりにして、賢者の視界はいまだに真っ白。光が眼に焼きついていた。
零式の攻撃の後その光景をはじめに目撃したのは、刻印の力で回復したゾンビ娘とそもそも目が無い骨っ子だけだった。
ゾンビ娘「賢者様!ウィップさん!見てください!」【ベホマラー】
賢者「………!!」:毒
ウィップ「カード!!」ダッ
喰鬼ノ王はその存在ごと蒸発し、魔力の供給が止まったバハムート零式も一枚の札に戻り、床に落ちている。
そのすぐそばで、カードが体中から血を吹き出しながら立ち尽くしていた。
416 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 15:01:29 ID:IrVYfKsM
賢者「カード!!しっかりし……ゲホッ」:毒
ゾンビ娘「どうしてカード君がこんなことに!?」
賢者「僕が今無理やりアポカリプスを使ったら、同じようになると思うよ……」:毒
賢者「オリハルコンを使ってドーピングしたうえ、自分の限界以上の魔力を放出したせいだ。
魔力が体中を高速で廻って、同時に血液も高速で流れたんだ!全身の血管が破裂してる……!」:毒
ゾンビ娘「賢者様の魔力がチートすぎて今まで回復アイテムを持っていなかったのが痛いですね…!」【ケアル】
ウィップ「駄目だ!カードのデッキも、レイズや回復の魔法どころか、カードが全部尽きてる……!」
テラフレアを放つ直前で激昂し、血液が沸騰したことも大きく関係しただろう。
普通なら持ちこたえることができた身体も、限界を超えてしまった。
カードは……立ったまま死んでいた
417 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 15:02:16 ID:IrVYfKsM
―――――――――――――
???「レイズ等の蘇生呪文の消費MPが莫大なのには、対象の死因になった傷が関係しててね」
???「肉体を離れようとする魂を魔力によって繋ぎとめ、同時に傷の回復を行うからなんだ」
???「そのまま魂を元に戻しても、すぐさま死んじゃうからね。
アンデッド族が蘇生魔法で死ぬのもこれが原因だよ。ゾンビ娘が無事なのは、刻印の回復能力があるからだろうね」
………………?
???「そう。死体に回復魔法は効かない。でも、魂を肉体に少しだけ繋いで仮死状態にすれば可能だよね?」
???「だから蘇生呪文は高度な術なんだよ。僕も使い方を覚えるのが大変だったよ」
………………………?
???「カードはどうなったって?もちろん蘇生を試みたよ」
―――――――――――――
418 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 15:02:51 ID:IrVYfKsM
ゾンビ娘「【レイズ】!」キィン
カードの身体が光り輝き、その傷が徐々に閉じていく。
しかし――――――
――――フシュウ………
ゾンビ娘「………っ!……ハァ!ハァ!」
MPが足りない!▼
ウィップ「そんな……!」
419 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 15:03:25 ID:IrVYfKsM
賢者の無力化によって、回復はすべてゾンビ娘が請け負っていた。それゆえに、現時点で彼女の魔力は0に等しい
魔王《くくく……自らの命と引き換えに、相打ちか………見事だ。カード使いよ》
賢者「魔王……っ!!!」:毒
魔王《さすがにあれほどの攻撃は初めてだったぞ。左腕が吹き飛んでしまった!》
賢者「うれしそうにしてんじゃないよ!ガフッ」:毒
魔王《何度も忠告しておるだろう。あまりはしゃぐと死ぬぞ?》
賢者「うるさい!あなたには関係ない!」
420 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 15:04:49 ID:IrVYfKsM
魔王《くくく、我が構想した喰鬼の理論は全部で3つあってな……》
魔王《ひとつはそこの娘。もうひとつは喰鬼の集合体であるキンググール。そして最後に………》スッ
魔王《魂を物質化し、他の生物の身体に埋め込むというものだ》
賢者「まさかその手に持っているのが……」:毒
魔王《仲間同士で殺しあうのも面白いだろうな》ニタァ…
魔王《さあ、実験をはじめよう……》
421 :
スラリン(黒) :2014/08/07(木) 15:05:50 ID:IrVYfKsM
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賢者(何を迷っている…!?カードを救う方法はあるだろう!?)
賢者(ここまできて、死ぬのが怖いのか……?)
賢者(迷うな……!!僕は勇者の子孫だ!!一度くらい……死んでみせろ!!)
賢者(誰かになさけないと罵られようとも、本当の意味でなさけない男にはなりたくない!!)
賢者(だから……!『生命を司る精霊よ、失われゆく魂に、今一度命を与えたまえ!』!)
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428 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:22:49 ID:vFERjilg
【 ア レ イ ズ 】
魔王《何……!?》
カード「ぐ…ここは……?」†蘇生†
ウィップ「カード…!」ダキッ
カード「うわっ!姉さん!?」
ウィップ「よかったよぉ~うぇぇぇぇ……」ギュゥゥ
カード「ちょっ…苦し…っ」ミシミシ
429 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:23:30 ID:vFERjilg
魔王《まさか本当に呪文を唱えたのか……!》
ゾンビ娘「賢者様………?」
二人の目が骨っ子の下にいるはずの賢者を見やるも、土埃が舞い、その姿が見えない。
骨っ子「賢者様ー」「だいじょうぶー?」
賢者「大丈夫。むしろ清清しいくらいだよ」ニコッ †完全回復†
430 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:24:14 ID:vFERjilg
魔王《何故だ…!何故ぴんぴんしているのだ!?》
ゾンビ娘「あの毒は解毒を受け付けないはずじゃ……?」
賢者「ゾンビ娘、君が風邪を治したときと同じだよ。一度、死んだんだ」
魔王《何だと……!?》
賢者「いったん死ねば、状態異常はすべて無くなる。だから自分から死んだんだ」
431 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:24:49 ID:vFERjilg
賢者「一回でも魔法を使えば、毒が回って死んじゃうことはわかってたからね。
リレイズを自分にかけてから死んでみたんだ♪」
ゾンビ娘「無事でよかったです…」ホッ
賢者「いつもゾンビ娘に唱えて遊んでたけど、自分で体験するのはさすがにちょっと怖かったよ。うん」
ゾンビ娘「だから面白半分で私にかけないでくださいよ!!」
賢者「それはさておき」
ゾンビ娘「さておいていい問題じゃないでしょう!?前にも言いませんでしたっけ!?」ムキー
賢者「あははははははは」
ゾンビ娘「笑うなーーー!!!」ズビシッ
432 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:25:22 ID:vFERjilg
魔王《おのれ…ならばもう一度食らえ!【言いたいことも言えないこんな世の中】!》
ゾンビ娘 ポカ ポカ ポカ ポカ
賢者「痛い痛い」
魔王《効いておらぬ……だと……?》
カード「用意させてもらったぜ、【抗毒の陣】。……あの、そろそろ離してくれない?……あ゙」ミシミシミシ ボキッ
魔王《貴様!魔力が尽きたのではなかったのか…!?》
カード「陣を俺が書いててててて」ミシミシ
ウィップ「ウチが魔力を注いで発動させたの~はじめての共同作業だよ~」ギュゥゥゥゥゥゥ ゴキメキャァ
433 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:25:52 ID:vFERjilg
賢者「そろそろ離してあげなよ。ウィップ」
骨っ子「はやくしないと」「死んじゃうよー」
ゾンビ娘「骨折はあまり死にませんけど、苦しいんですからね」ポコポコ
賢者「君は殴るのをやめなさい」【リレイズ】
カード「俺が何をしたって言うんだ……」ミシミシ
ゾンビ娘「プロポーズですね」
賢者「僕のときみたいに言い逃れはできないよ?」
ウィップ「カード~」スリスリ
434 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:26:24 ID:vFERjilg
魔王《なにやら勝ちが確定したかのような余裕をしておるが…ダメージらしいダメージは、
賢者の放った毒による微々たるものと、左腕が吹き飛ばされただけだぞ?》
ウィップ「普通の人間だったらなかなかの重症だよ~」
賢者「まあ身体は女騎士のものだし、頑丈だろうからね」
ゾンビ娘「でも一応女性ですよ?」
賢者「物理防御と体力がほぼカンストしてる人間にどうやって手加減しろと」【真・ライブラ】じ~
カード「運のよさがカンストしてるやつに言われたくないだろうな……」
435 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:26:59 ID:vFERjilg
賢者「まあダメージなんて、これからいくらでも重ねられるしね」チャキッ
魔王《ほう……ならばその銃で我の身体に傷をつけれるというのか?》
賢者「まあね」【蓄雷弾】ターン
魔王《………………。特にダメージを受けていないが……?》
ゾンビ娘「賢者様、どうして三点撃にしなかったんですか?」
賢者「こっちが本命だから♪」↑
賢者が空を指差す。
ウィップ「上~?」チラッ
436 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:27:44 ID:vFERjilg
カード「雷の玉みたいなのが5つ浮いてるな。うん」
骨っ子「わー」「綺麗ー」
ゾンビ娘「賢者様、あれは何ですか?」
賢者「撃った後、空中に留まって、周囲の魔力を吸収して雷に変換する弾だよ」
なお、時間経過で落ちてくる模様。
カード「……いつ準備した?」
賢者「カードの蘇生と同時に!」
437 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:28:30 ID:vFERjilg
賢者「いつの時代も魔王には雷。これ鉄則。さあ、落ちろ【落雷弾・三点撃】」
球体がはじけ、五つの落雷が魔王を襲う▼
魔王《ふん。女神の雷撃など、あたらなければどうということはない》スッ
魔王は余裕たっぷりに雷を回避しようと身体を動かし
魔王《ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!??》バリリリリリリリリリリ
見事全弾命中した。
438 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:29:18 ID:vFERjilg
魔王《何故だ!?途中で軌道が変わりおった!》プスプス
賢者「さっき食らった弾があるだろう?」にっこり
ゾンビ娘「雷蓄弾でしたっけ?」
ウィップ「建築弾じゃない~?」
カード「畜産弾だった気もする」
賢者「 蓄・雷・弾!だからね!」
439 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:30:34 ID:vFERjilg
魔王《どうやら…その……チコリータ弾は対象に電気を帯びさせ、雷を誘導する特性を与えるようだな》
賢者「 蓄 雷 弾 !」
賢者「ちなみに、雷属性の威力アップもしてくれるよ」
魔王《なんと忌々しい!》
ゾンビ娘「すごいです!」
440 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:31:04 ID:vFERjilg
魔王《だが、この程度では我を倒すことなど出来ぬぞ?》
賢者「あ、そこは大丈夫。最初から倒すつもりじゃないから」アハハハハ
魔王《え?》
ウィップ「え?」
ゾンビ娘「ええ、そうですよ?」
カード「それがどうかしたか?」
441 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:31:41 ID:vFERjilg
魔王《なら貴様は何をしにここまで来たというのだ》
賢者「ピンポンダッシュに失敗した」
ゾンビ娘「どんだけ壮大なイタズラですか!まじめにやってくださいよ!」
賢者「僕らはね…最後の勇者の呪文を解放しに来たんだよ」ヤレヤレ
魔王《それでなぜ我の部屋まで来ておる》
賢者「呪文の場所がそこなんだよ………」スッ
賢者が指差したのは、魔王の玉座だった。
442 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:32:15 ID:vFERjilg
魔王《なんだと…?そんなばかな……あれのどこに……》
賢者「背もたれ。まあこれだけ暴れたってのに玉座だけ無傷だから、何かの力が働いてるのがバレバレだよね」
魔王《あのクソ勇者……わざわざ我を馬鹿にする位置に……》ワナワナ
賢者「ちなみに、冒険の書にはこんなことが書かれてるよ」
冒険の書《魔王さんこんちゃーっすwww自分の玉座(笑)に呪文が隠されたのはどうでしたかwww
ねえねえどんな気持ちwww?ねえねえ今どんな気持ちwwwwwwwww?》
魔王《殺す!!!!》
賢者「もう死んでるよ」
443 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:32:49 ID:vFERjilg
冒険の書《あ、ちなみにwwwとんでもない呪文封印してるんでwww使い方によっては魔王完封できるよwww》
魔王《何!!?》ガタッ
賢者「というわけで開放してきます」ダッシュ
魔王《あ!待てゴルァ!!》【アルテマ】
ウィップ「あ、よいしょ~」【アルテマ・ウィップ】
――――ズガァァァァァァァァン
444 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:33:21 ID:vFERjilg
――――パキィィィン
ウィップ「今度は当たったけど、これで完全に壊れたね~」
魔王《このゴミ共が……!!》【薙ぎ払い】
ウィップ「ぐぅ……っ」
カード「………っげほっ」
骨っ子 キャンッ
魔王《くそ…っ開放させてなるものか……!》
――――ザッ
ゾンビ娘「行かせませんよ!」
魔王《チッ……どけぇ!!》
445 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:33:52 ID:vFERjilg
ゾンビ娘「私はこのパーティーの壁役。通しませんよ!」
<胸も壁だもんねー!!
ゾンビ娘「やかましいです!!さっさと解読しなさい!!」ウガー
魔王《その程度の壁で……》チラッ
《我を止められるとでも?》ハァ…
ゾンビ娘「今どこ見て言いました!?そしてそのため息は!?」
魔王《すぐに貴様を潰すのに、10秒とかからぬぞ!》
ゾンビ娘「それでも、時間は稼げます!!」
446 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:34:32 ID:vFERjilg
魔王《さっさと消えろ!》【エアロガ】
――――ザシュッ
ゾンビ娘「」ドサッ
魔王《10秒どころか、3秒ともたなかったな》ザッザッザ
ゾンビ娘を蹴散らし、歩みを進める魔王。
これまで散々ネタにされ遊び倒されてきたが、本来は世界を滅ぼせる力を持っているのだ
――――ガシッ
その足をつかむ命知らずの愚かな女がいた。
ゾンビ娘「リレイズかけられていたの、忘れてましたか?まあ、死んでもゾンビ化するだけですけどね」
447 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:35:04 ID:vFERjilg
魔王《ならばまた、何度でも殺すまでよ》【メラ】
メラゾーマ級の焔がゾンビ娘を焼き焦がす▼
魔王《今のはメラゾーマではない、メラだ!》
ゾンビ娘「そうですね」†リレイズ†
魔王《!? 何故リレイズが発動している……!?》
ゾンビ娘「はて、なぜでしょうか?私にもさっぱりなんです」ニタニタ
448 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:35:41 ID:vFERjilg
魔王《とりあえずもう一度殺してみよう》【アルテマ】
――――カッ
ゾンビ娘(リレイズ後のHPは1になるので、あまり強い呪文なしでも殺せるんですがね……)†リレイズ†
ゾンビ娘「(魔力の)無駄ですよ」
魔王《本当にどうなっているのだ。我はこんな不死身の奴なんぞ作っておらんぞ》
カード「まあ、俺のしわざだけど」ニュッ
魔王《貴様のせいか》
449 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:36:16 ID:vFERjilg
カード「原理は簡単なことで。リレイズの魔導符を大量に持たせているだけだ」
カード「発動条件はリレイズが発動したとき。リレイズ中の魔力に反応して発動するってわけだ」
ウィップ「符には【順列】の魔導式を組んだから、札に書かれた番号通りに発動するよ~」
魔王《なんという人非道的な方法だろうか……》
ゾンビ娘「たしかに何回も死ぬのは痛いし、苦しいですけどね。でも、これで賢者様を守れるなら……安いものです!」
魔王《まさに『肉の壁』といったところだな》じ~
ゾンビ娘「だからどこを見てるんですか」
450 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:37:07 ID:vFERjilg
魔王《よくこんな方法を思いつき、それに応えられるものだな》
ゾンビ娘「でしょう?」フフン
魔王《だが、それなら殺さず、動けなくしてしまえばいいだけのことだ》
――――ブチ…ッ ブチィ
ゾンビ娘「あぐっ……がっ!~~~~~~~~っ!!」
魔王はゾンビ娘の片足を掴み、そのまま力任せに引き千切った。
魔王《これで追ってこれまい……》ポイッ スタスタ
451 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:37:57 ID:vFERjilg
――――ガシッ
魔王《何……ッ!!?》ガクン
彼女はまたしても、魔王の足を止めた。今度は足ではなく肩を掴んでいる。
少し下に目線を下げれば、床を踏みしめて立つ彼女の細い2本の足が見えた。
魔王《何故だ!ちぎったはずだろう!?》
ゾンビ娘「何故って……自殺して回復しただけですよ?あなたがこんな風に私を作ったんでしょう?」
彼女の手には、オリハルコン製のダガーナイフが握られていた。
カード「攻撃力は最強レベルだからな。どんなに弱い力で刺しても死ねるぜ」
骨っ子 ガンバルトコロガチガウヨ
452 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:40:14 ID:vFERjilg
ゾンビ娘「さあ、私は何度でもよみがえってあなたの前に立ちはだかります。それこそゾンビのように」
魔王《ぬうぅ………》ゾワ
魔王は王に君臨してから初めて、得体の知れない恐怖というものに出会った
しかし、
魔王《この魔王をなめるなよ。すべての敵を、完膚なきまでに叩き潰してこその魔王!》
魔王《死ぬまで殺してやろう……!》チャキッ
魔王は女騎士の持っていた業物のサーベルを握り、ゾンビ娘に突進した
453 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:41:04 ID:vFERjilg
ゾンビ娘(リレイズがあるといっても、残り26枚……!できれば節約……っていうか多くないですか?)
札の用意とリレイズの式を刻んだのがカード。順列の式を考えたのがウィップ。
そして、魔力をこめたのが賢者。これらは3人による合作だった。品質は最高レベルのものだ。
ゾンビ娘「私で遊ぶために作ったっ!ものを流用さえしていなければっ!ですがねっ!」ガキンッキンキン
魔王《なかなか粘るではないか》ヒュヒュヒュッ
ゾンビ娘「けっこうっ必死ですけどねっ!あ……っ!!」ガキンッ
ダガーが上に向かってはじかれ、胴ががら空きの状態になってしまった。
――――ザクッ
ゾンビ娘(――――あと25枚…)
454 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:42:22 ID:vFERjilg
魔王《しぶといな……》
ゾンビ娘(強い…!けどこれなら時間を十分に稼げます……!)
魔王《このままでは間に合わぬ……》
魔王《少々本気を出すか……》
ゾンビ娘「え……」
魔王《【ピオリム】》:素早さ上昇
――――ヒュドッ
残り枚数―――24/30
455 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:43:21 ID:vFERjilg
ゾンビ娘「は、早っ…!あ……!」ザシュッ
魔王《だらしないな!200年前の戦士はこの動きに余裕でついてきたぞ?》【はやぶさ斬り】
――――キキキンッ ザシュッ ガキンッ グチャッ
ゾンビ娘「くあっ……ぐうぅ……後方支援の僧侶職に無理を言わないでください!そもそも私は弓使いです!」
ゾンビ娘(残り22枚……若干不安になってきました)
ナイフを構えつつ札を隠している胸元に手を当て、緊張した顔つきで魔王と対峙する。
456 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:44:45 ID:vFERjilg
魔王《ふむ………貴様、魔導符は残り何枚だ?》
ゾンビ娘「教えるわけがないでしょう!でも、足止めには十分な枚数とだけ言っておきましょう!」
・
魔王《そうか、では聞き直そう。『今、何枚だ?』》
魔王がサーベルを鞘に収めながら言い放つと
――――パララッ
ゾンビ娘「え………」
ゾンビ娘の足元に、模様の消えた札が数枚零れ落ちた。
457 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:45:18 ID:vFERjilg
ゾンビ娘(6、7、8…9枚………!?)
魔王《これで…………10回だ》キンッ
――――ブシュ……ッ
ゾンビ娘「あ………?」
サーベルを完全に鞘に収めた瞬間、また1枚蘇生の札が落ちた。
同時にゾンビ娘の右肩から腹まで、幼児がクレヨンで思いっきり書きなぐったような赤い直線が走った。
魔王《これは技などではない。『疾く斬る』あたりまえの動作の極みだ》
ゾンビ娘(そんな……気づかないうちに10回も斬殺されていたなんて……)ギリッ
魔王《ではもう一度問おう。残りは、何枚だ?》
458 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:45:56 ID:vFERjilg
ゾンビ娘「……………ッ!!」ゾクッ
魔王《だんまりか……》
魔王《ならば、あと30回ほど殺してみようか…?》スッ
魔王が剣の柄を掴み、ゾンビ娘は守りの体勢に入る
魔王《遅い!!》キンッ
ゾンビ娘「くっ……!?」プシッ
後方に跳び、なんとか致命傷を避けるも、腹に浅い傷を負った
459 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:46:26 ID:vFERjilg
ふらつく足で必死に地面に立ち、身体のあちこちに切り傷を増やしながら魔王の攻撃を受け止め続ける。
しかし、お腹から響く鋭い痛みに涙がにじみ、攻撃が見えづらくなる。
魔王《その程度の傷ならば、痛みを無視することもできるだろうに》ヒュン
魔王の剣が首を薙ぐ。首が跳ね飛ばされる前に回復し、また1枚札を消費してしまった。
ゾンビ娘「歴戦の傭兵みたいな無茶言わないでください!私はただの女の子なんですよ!?」
魔王《知ったことか!》【ピオリム】
ゾンビ娘「がっ………!!」ドスッ
もう一段階加速した魔王の刺突がゾンビ娘のわき腹にきまった
460 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:47:04 ID:vFERjilg
――――グリュッ
ゾンビ娘「ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!」
根元まで深々と埋まったままの剣を内臓を掻き回すように捻りながら引き抜くと、断末魔のような絶叫が上がる
痛みで満足に動けなくなったゾンビ娘は、蘇生符を1枚消費し痛みを0に戻した。
ゾンビ娘「うあ゙あ゙ッ………ああッ……!」ガクガク
短時間に何度も殺される痛みを味わい続けた彼女の顔は精神的な疲労で歪み、
脂汗や涙、さらにはヒューヒューと荒い呼吸をする口から零れた唾液でぐちゃぐちゃになっている。
残り枚数―――10/30
461 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:47:35 ID:vFERjilg
右手、左手、右足、左足、そして首の順で切り落とされる。
魔王はだんだんと痛みを与えながら殺すようになってきた。
ゾンビ娘の苦しそうな顔を見て、目的を忘れ魔王本来の惨忍さが顔を覗かせているのだろうか
魔王《くくく、次はどこを攻撃しようかなぁ……》
ゾンビ娘の前に突き出された剣が、駄菓子屋で子供が指をさして『どれにしようかな』、
とお菓子を選ぶような軽さで切っ先をフラフラさせている
462 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:48:07 ID:vFERjilg
魔王《そうだな…膝にしよう……》ザクッ
ゾンビ娘「あ………っ!」ズシャッ
魔王《フハハハ!我の前で片膝をつく気分はどうだ?》クイッ
サーベルの切っ先でゾンビ娘の頤を押し上げ、上を向かせて目線を合わせた
ゾンビ娘「最っ悪の気分です!!」ガキンッヒュッ
魔王《フッ…それはそうだ………!》ヒョイッ
のど元に突きつけられていた刃をはじきながら左手に持ったナイフを突き出すも、ひらりと身をかわされてしまった
463 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:48:42 ID:vFERjilg
魔王《次は……肺だな》ズブッ
ゾンビ娘「………!ゴフッ…!」
魔王《右の肺を潰した。呼吸をするたび苦しいだろうが、刻印のせいでしばらくは死ねないだろう?》
ゾンビ娘「ゴホッコホッ…!ゲェッ!!」ビチャビチャ
魔王《くくく、どうやら自分の吐く血で溺れかけておるようだな……》
ゾンビ娘「……ひゅー…………ひっ…ひゅー………」キッ
ガクガクと震える両手でダガーを掴み、魔王に向けて構え、精一杯睨みつける。
魔王《まだ我に挑むとは……驚嘆に値するが、震えている身体と涙でボロボロの顔で台無しだな………》ハァ…
464 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:49:13 ID:vFERjilg
ゾンビ娘「………ッ!!!」ヒュオッ
血を吹き出しながらナイフを振るうが、軽く受け流され今度は鳩尾に剣を刺された。
ゾンビ娘「あ゙……っ!あ゙あ゙あ゙………!!」
魔王《肝臓…》ザクッ
魔王《子宮……》ズシュッ
魔王《そして、心臓………》
とっくの昔に、蘇生符の枚数は10枚を下回り、8枚になっている。
465 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:49:43 ID:vFERjilg
そこからは意識が朦朧としてはっきりと知覚できなかった。
剣の峰で何度も殴られ、撲殺。
――――7枚
倒れたところを踏まれ、殴られ、全身に骨折。最後には足で首をへし折られた。
――――6枚
肩と床を剣で縫いつけ、動けないところを毒殺。
――――5枚
腹を掻っ切り、口に出すのもはばかられるほど残酷な方法で
――――4枚
――――3枚
―――
淡々と数を減らしていった
466 :
スラリン(黒) :2014/08/11(月) 12:50:33 ID:vFERjilg
そして………これでどれ位の時間を作れただろうか……残りの枚数は、1枚まで減少した
ゾンビ娘「はぁっ……!!はあぁっ………!!!」ガクガクガク
ゾンビ娘は全身が痙攣し、力の入らない両膝をついたまま魔王の足にしがみついている
魔王《離せ!!汚らしい血を我につけるな!!!》ブンッ
ゾンビ娘「ぐぅ…ッ!うぅ……っ!!」ガッゴッ
472 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 21:58:27 ID:v4pnEA0A
魔王はサーベルの柄でゾンビ娘の顔を何度も殴り、足や背中を掻っ切り、様々な所を血で染め上げた。
血を失い、身体の自由が奪われていくゾンビ娘。しかし、その眼はまだ光を失っていなかった
魔王《………それだ…その眼だ……200年前と変わらぬ眼をしている………それが気に食わぬ………!》
ゾンビ娘「痛………っ!」
魔王はゾンビ娘の血で汚れた黒髪を掴み、無理やり立ち上がらせる
魔王《あの時も、圧倒的な死の恐怖や痛みを前にして、貴様はその眼に強い光を宿していた。
何故だ………何がそこまで貴様の瞳を輝かせる……?》
ゾンビ娘「はっ……………はっ…………………。」
473 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 21:58:59 ID:v4pnEA0A
ゾンビ娘「あなたには………何百年経っても……理解できないでしょうね……」グググ…
ゾンビ娘「これは……………」
彼女は魔王の足に刃を突き立てながら叫ぶ
ゾンビ娘「これはッ!『信頼』って言うんですよ!!!」ヒュッ
474 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 21:59:31 ID:v4pnEA0A
魔王《ぐああぁあ!!!》ガクンッ
魔王はこの戦闘で初めて苦悶の声を上げ、膝をついた。
魔王《この虫けらが……ッ!!!》
サーベルを逆手に持ち替え、ゾンビ娘の脳天に振り下ろそうとした
しかし………
475 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:00:05 ID:v4pnEA0A
――――ヒュガッ ギシッ
魔王《!? 貴様ら………!!》
ウィップ「いやはや、SM用の鞭が残っててよかったよ~」ギシッ
カード「こんなんで今までしばかれてたとか考えたくないな」ギリリ
魔王とゾンビ娘の間に、棘の生えた鞭で魔王の腕を絡めているウィップと、
見たことも無い鉄杖でサーベルの切っ先を逸らしているカードが割り込んできた
カード「悪い。ちょっと失神してたわ」
476 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:00:41 ID:v4pnEA0A
ゾンビ娘「その……杖は……?」
カード「骨っ子が城の中を走り回って探してきてくれた。よくわかんねえけど、すげー手に馴染む……」
骨っ子「ヘッヘッヘッ……」グテー
魔王《それは……『魔導師の杖』………!なぜ我が城の中に…!?》
カード「へぇ…これがウィップの………いや、俺達の先祖の杖か……」
ウィップ「道理で~」
カード「力が湧いてくる……!!!」
477 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:01:23 ID:v4pnEA0A
《 ト ラ ン ス 》!!
478 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:01:53 ID:v4pnEA0A
二人の体からまばゆい光が溢れだす!!
魔王《これは……この光は…あの時の……!!》
ザザ…―――ザ…ザザ――――
「女神の神託とか関係ない……
自分勝手な理由からの行動でしかない。
だけど………お前を倒す理由には十分だ!!」
――――…ザザザ………―――――
魔王は玉座を睨み、怒りに震える声で叫んだ
魔王《死してなお我の邪魔をするか!勇者よッ!!!》
479 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:02:32 ID:v4pnEA0A
ウィップ「こっちを向きなよ魔王~」
カード「今の俺達なら、お前を圧倒できる!!」
魔王《やってみろ!!その忌々しい勇者の光ごと消し去ってくれる!!!》【ピオリム】
血が足りなくなり視界が霞むゾンビ娘の目に視認できなくなるほど魔王が加速し、ウィップに向けて突きを……
――――ガシッ
ウィップ「まあ~止められるけどね~」
隻腕の鞭使いは、義手で魔王の剣を受け止めていた
魔王《馬鹿な……!?戦士でも3段階加速した我には対応できなかったのだぞ………!》
480 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:03:25 ID:v4pnEA0A
ウィップ「戦士基準でいつまでも考えていられると思わない方がいいよ~」ヒュッ
魔王《なっ速………ッ!?》
彼女は魔王の目をもってしても、残像を捉えるので精一杯な速さで、魔王の身体を拘束した。
ウィップ「さっきから、尋常じゃないほどよく見えるし、聞こえるんだよね~」
魔王《【身体能力強化】…いや、【感覚超化】といったところか…》
魔王(この鞭……棘が全身に食い込んで身動きが取れぬ……くそっ操り人形にでもなった気分だ)
481 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:04:04 ID:v4pnEA0A
カード「いやいや。ウィップの本領はそれじゃないぜ」【零式解放】
零式「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
魔王《貴様……!魔力が切れたのではなかったのか……!?》ギギギ
カード「ああそうさ。魔力はスッカラカンだ」
魔王《では何故……ッ!召喚を………ッ!!》
カード「別に召喚したわけじゃねえ、解放しただけだ。俺の身体からな」
482 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:04:35 ID:v4pnEA0A
ゾンビ娘「カード君。私にも分かるように説明してください」ザクッ
出血多量でこれ以上戦えないと判断したゾンビ娘は、仕方なく自殺し、戦闘に参加した。
これで残りの枚数は0枚となった
カード「零式は、俺の血の中にその身体ごと封印されている。
普段は魔力を使って魂だけ召喚、という形で無理やり外に出していたんだが、
今回はこのトランスのエネルギーが零式を完全な生命として身体ごと解放させたんだろうな」
魔王《完全な……生命………?》
カード「そう、今のあいつは魔力で動く人形じゃなくなった。命ある生き物だ」
483 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:05:15 ID:v4pnEA0A
カード「この一時だけ、俺という呪縛から解放する。それが俺のトランス効果みたいだな」
零式「グゥゥゥゥウウウウウ………」ノビ~
ゾンビ娘「あ、なんか気持ちよさそうに伸びしてます」
魔王《たしかに零式は脅威だが、召喚獣でないなら殺せるということだ!》【アルテマ】
カード「無駄だって……」
零式「ガァアアアア!!!」【ギガフレア】
二つの光が打ち消しあい、消滅した▼
魔王《反応が早い……!?》
零式「当たり前じゃろう。これでも最強の召喚獣じゃけぇ、こんくらいは朝飯前じゃ」
ゾ・魔「《!!!???》」
484 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:06:03 ID:v4pnEA0A
カード「おま…しゃべんなって言ったろ」
零式「見た目と性格が一致しないけぇ喋るなって、理不尽すぎん?」
ウィップ「たしかに~広島弁を使うバハムートとか、あんまり見たくないよね~」
零式「グルオォォ………」シュン
ウィップ「あ、そうだ~ちょっとこの松明に火をつけてもらっていい~?」
零式「………ペッ」ボッ
ウィップ「ありがと~」
485 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:17:42 ID:v4pnEA0A
ウィップ「さ~て!第2回、ウィップのお料理教室~」
ウィップ「まずはこのニンジンをへし折ります~」ペキッ
ウィップ「そして二つになったニンジンを~火の中に入れて~」
ウィップ「完成~!!」
ニンジン「あれ?ここどこ?」
ジャガ=バター「ギシャァァァァァァァァァァァァ!!!」
魔王《 》
486 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:18:19 ID:v4pnEA0A
カード「ウィップのトランス効果は、過去に作った料理をどんな材料からでも作る【反芻】だ!!」
人間離れした身体能力と感覚は、あくまでそれを行うための副産物のようだ
魔王《貴様ら頭狂ってるんじゃないのか!!?》
ゾンビ娘「よく言われます」ヒュヒュヒュ
魔王《チッ…この人数の相手は初めてだな……!》キキキンッ
近距離ではゾンビ娘、芋、人参の攻撃を三方向から受け、中距離からはいばらの鞭が飛んでくる。
魔王を4人に集中させ、作り出した意識の隙を、炎と氷の刃が切り裂く。
487 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:19:00 ID:v4pnEA0A
魔王《氷の刃……!この攻撃は見覚えがある。カード、貴様か!!》
カード「あり?やっぱ分かった?」
カードは杖を振りかぶり、遠くから魔王を斬りつける様に振り下ろした。
――――バシュッ
すると、鋭い刃となった氷柱が魔王めがけて飛んでいく。
魔王《200年前も魔導師が魔力切れになった時に使った方法だから…な!》キンッ
カード「ご先祖様も魔力切れになったのかよ!!」ブンッ
488 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:19:43 ID:v4pnEA0A
この鉄杖。天空の剣とか、いのちの杖などと同じ系統。
アイテムとして使うことで、魔力を消費せず、魔法のような効果を発揮できる数少ない武器である
スライム2匹と、はぐれメタル1匹だけでDQ5の世界を冒険していた頃、すごくお世話になった記憶がある。
ゾンビ娘「なんの話ですか!!!」バッ
ゾンビ娘が少し後方に跳躍し、爆弾矢を放つ
魔王《ふ………っ!!!》カンッ
魔王は剣の鍔ではじき、カードの放った氷柱に衝突させ爆発した
489 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:21:19 ID:v4pnEA0A
魔王《ぐっ………くっ………》キンッガキンッ
魔王《流石に片腕一本でこの数はきついか………!!》
芋の白金ことジャガ=バターのラッシュと、その隙間を縫って刺してくるゾンビ娘だけで手一杯になっていた
ニンジン「人参は身体にアレがアレして健…アレにいいんだぜ!!!」
魔王《健康くらいはちゃんと言え!!》【はやぶさ斬り】
ニンジン「」バラッ
ニンジンをスティック状に切り裂いたと同時に、背後から膨大な熱量を感じた
490 :
スラリン(黒) :2014/08/13(水) 22:21:49 ID:v4pnEA0A
零式「【テラフレア】」
魔王に一番のダメージを与えている技だ。このまま直に食らうのはまずい
しかし、怒涛の連打を繰り出す芋のせいでまともに動けない。まさに前門の芋、後門のバハムートである
魔王《全く………面倒だ………》
そう言うと同時に、魔王の周囲に魔力が収束し始める。
龍の国でみせた、すべての魔力を攻撃エネルギーへと昇華させる魔王の九つ呪文のうち、最強最大の呪文。
魔王《 【 マ ダ ン テ 】 》
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491 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:37:33 ID:hJdQgyKQ
ウィップ「う……ん……?」
ゾンビ娘「ぐ……うぅ………」ジュゥゥゥゥ
ウィップ「ゾンビ娘ちゃん!?まさかウチをかばって!?」
ゾンビ娘「私は死んでもリレイズしますから」†蘇生†
ウィップ「でも……もう蘇生符は………」
正真正銘、これが最後のリレイズである。
492 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:38:51 ID:hJdQgyKQ
カード「ぐ……ぉ………」
ウィップ「カード!?」
零式「グオオォォォォゥゥゥゥ………」
カード「零式………かばってくれたのか……?」
零式「グゥゥゥ…」シュゥゥゥ……
零式が消えていくと同時に、ウィップとカードの身体の光も消えていった
493 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:39:23 ID:hJdQgyKQ
魔王《有言実行。これで忌々しい勇者の光も消えたな》
ゾンビ娘「く……っ!ですが、あなたは魔力を使い果たしました!これでもう呪文は…」
魔王《それがどうした》
カード「何!?」
魔王《それが何だというのだ?》
ウィップ「何って~」
魔王《貴様らは、単純な肉弾戦でも我に手も足も出ないだろう?》
ゾンビ娘「あ゙………」
494 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:39:56 ID:hJdQgyKQ
魔王《賢者が呪文を解放するまでの時間稼ぎだったな。その解放はまだ終わっていないようだぞ?》チラッ
カード「くそ…っ! 賢者は何をやってる!」
ゾンビ娘「こんなに時間がかかるなんて聞いてませんよ!」
ゾンビ娘「………!!」
彼は玉座の前で足を立てた正座で座っており、首と両手を力なく弛緩させていた。意識があるようには見えない
ゾンビ娘「賢者様!!」
もちろん、反応することは無い。
ウィップ「どうなってるの~?」
495 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:40:35 ID:hJdQgyKQ
カード「骨っ子!賢者のところに行け!」
骨っ子 ワカッタ!! ダッ
魔王《待て!!》
――――ヒュパッ
ウィップ「こっちが待て~だよ~!!」【キャッチ】ギギギ
魔王の右手に、再びいばらが絡まる。
ウィップ「ふふふ~つかまえた~」
魔王《………それはこちらのセリフだ》ダンッ
ウィップ「!!」
496 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:42:03 ID:hJdQgyKQ
魔王は怪我のしていない方の足で床を蹴り、一息にウィップとの距離をつめた。
その右手には、魔力が渦巻いている。
カード「この野郎!!」ブォンッ
ウィップ「くっ………」バッ
それに反応したカードは、高速で氷柱を飛ばし……ウィップは鞭を手放し、回避に移る。
しかし……
魔王《【アルテマ】》
――――カッ
氷柱は魔王の放った魔法によって蒸発し、ウィップは至近距離で直撃を受けた
497 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:42:38 ID:hJdQgyKQ
吹き飛ばされたウィップは床を何度も転がり、そのまま動かなくなった。
カード「ウィップ!」
弟が姉に駆け寄り、そのまま抱き上げて魔王と距離をとる
カード「おい!しっかりしろ!」
何度も揺さぶるが反応は返ってこない。呼吸を確認するとまだ生きている。気を失っただけのようだ
ホッと息をつくと ガシャン という音が姉の左腕からした。
オリハルコンの義手がズタズタに砕けているのが見えた。ところどころ融解している部分もある
498 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:43:17 ID:hJdQgyKQ
魔王《とっさに左手でアルテマを覆ったか………この魔力量ではこれが限界か……》
ゾンビ娘「どうして魔法を……! 魔力を使い果たしたのでは………!?」
魔王《魔力が無いなら、創ればいいではないか》
魔王《命を削り、削った体力を素に魔力を創りだす秘術……これこそが【コンバート】だ》
ゾンビ娘「命を削る……!?」
魔王《左様。少々削りすぎたが、かつての我10人分の魔力は手に入った》
499 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:43:47 ID:hJdQgyKQ
魔王《さて、あの動けない賢者の首でも刈りに行こうか……》ザッ
ゾンビ娘「 ! だめですっ!」ダッ
魔王の言葉を受け、ゾンビ娘は駆け出した。
魔王《だから遅いと言っておるだろう?》ヒュンッ
しかし回り込まれてしまった▼
500 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:45:07 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「な………っ!?」バッ
彼女は後ろを振り向く軸にするために、踏み出した右足を地面に足を下ろした。
――――ガクンッ
ゾンビ娘「………ッ!?」ヨロッ
しかし、階段がもう一段あると思ったら、実際は無かったときのように彼女は前のめりにこけた。
床が消えてしまったのかと思ったが、右足から上る強烈な痛みがその考えを吹き飛ばした。
ゾンビ娘「~~~~ッ!!」
右足の膝から下を、切断されていた。
501 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:45:44 ID:hJdQgyKQ
カード「てめぇ!!」ヒュンッ
これまでで一番の速度で氷の剣を飛ばすが、氷柱は残像を掠めただけにとどまる。
それどころか、次の瞬間にはカードの目の前に素手で氷剣を掴んだ魔王の顔が現れた。
魔王《トランスの境地に至っていない貴様らなど、恐れるに値せぬわ》
――――ドシュ
カード「ぐああ……!!!」
片膝をつきウィップを抱いていたカードの腿を氷柱で突き刺し、ふくらはぎを貫通させて床に縫い付けた
氷柱から手を離し、魔王は賢者のところに歩いていく
魔王「そこでじっと見ているがいい………」
502 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:46:27 ID:hJdQgyKQ
――――――――――――――――――――――――
痛い。痛い。痛い。痛い。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。イタイ。イタイ。イタイ。イタイ。
賢者様に近づいていく魔王を、私は止めることができずにいる。
右足から発せられるその信号に、私は顔を歪め、息を荒らげて喘ぐことしかできない。
立ち上がる事も出来ず、地面を這って魔王を追うが、間はどんどん離れていく。
それどころか、床に擦れる断面の縁から焼け付くような痛みが伝わり、脳を焦がす。
ゾンビ娘「はぁっ……!!はあぁっ………!!!」ズ…ズズ……
この身体になってから、散々こんな痛みを味わってきたが、慣れることは一切無かった。
右手でダガーを握り締め、進み続ける
503 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:47:10 ID:hJdQgyKQ
自殺すれば、私はゾンビの身体になってこの痛みも消える。
もっと言うならば、身体能力も格段に上がり、少しでも魔王の進撃を止められるでしょう。
ほとんどの攻撃が一撃必殺の魔王相手に、私は戦えるでしょうか……
次に死ねば、本当に死んでしまう。冷たくなった身体が、さらに死んだらどうなってしまうのか。
魂が肉体を離れるんじゃなく、その存在ごと消えてしまうのでしょうか。
黄泉帰りの方法がなくなった今、それだけが気になります。
504 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:47:48 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「死ぬのは……っ!怖いです………!」ギュゥゥ
でも……賢者様が死んじゃうって考えたら……
今まで受けたどの傷よりも、どんな痛みよりも、胸が張り裂けそうで苦しいです……!
ゾンビ娘「賢者様が聞いたら…っ 無い胸がどうやって張り裂けるほど膨らむのかって…言いそうですね……ハハハ」
505 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:49:50 ID:hJdQgyKQ
この痛みは、ずいぶん昔に感じた……私が、ゾンビになった瞬間に味わった痛みです
あの時死んだのは、私自身。
仲間と、人間と一線を引いたのを、あの瞬間に嫌になるくらい実感しました。
仲間と、勇者様と会えなくなるのがひどく怖かったし、胸を掻き毟りたくなるほど苦しかった。
身体と一緒に、顔も思い出せないくらい記憶が腐りきったというのに、寂しさと悲しさは覚えていたみたいです。
私はもう、あの痛みを抱えたくない。賢者様を失って、また数百年彷徨うくらいなら………
506 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:50:23 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「死ぬことなんて……っ!お米一粒分も怖くないです!!」
――――彼女は泣きながら吼え、何度もそうしてきたように、渾身の力を込めた右手で左胸を叩いた
507 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:50:55 ID:hJdQgyKQ
―――――――――――――――――――――――――――――
骨っ子 ケンジャサマオキテ!オキテヨ!!
賢者「………………………。」
骨っ子「ウ~……ワン!ワンッ!!」
魔王《どけ。クソ犬が》ゲシッ
骨っ子「キャンッ!?」ガチャン
魔王《本当に生きておるのか………?どれ……》スッ
508 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:51:50 ID:hJdQgyKQ
――――ガブッ
脈をとろうと手を伸ばした魔王の腕に飛びつき、噛み付く犬がいた。
魔王《ぬう………っ!?》ブシュッ
骨っ子 ケンジャサマニ……サワルナ………!!
その犬はいくら振り回されようとも、噛み付いた腕を離そうとはしなかった。
魔王《その汚い口を離せ……!》
――――ゴシャッ
骨っ子「キャ……ッ」
しかし、床に叩き付けられた瞬間に牙が砕け、骨っ子は床を滑りながら離れていく。
509 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:52:24 ID:hJdQgyKQ
その一撃で意識を失った骨っ子は、その速度のまま城の外に放り出された。
数秒の後、城の外、それも一番下の階層からカシャンという乾いた音が小さく聞こえた………
魔王《………我に楯突くからそうなるのだ…………》
階下を覗き込んで確認した後、魔王は玉座に向き直り、その背もたれをまじまじと見つめた。
510 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:52:58 ID:hJdQgyKQ
魔王《勇者め………我の背を預ける所に封印したのは……あの時背後を取られた腹いせか?》
賢者「………………………。」
魔王《何があったかは知らんが……最後の呪文とやらが原因なのであろうな》チラッ
硬い大理石でできた玉座の背もたれには、ただの模様にしか見えない傷がいくつかある
魔王《これが文字なのか……?石を彫って書いたとはいえ汚すぎるだろう…全く読めぬ………》
511 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:53:31 ID:hJdQgyKQ
魔王《………【エアロガ】》
――――ヒュゴッ
魔王《無傷……か………。あれだけの魔法の中、無傷でいるなら当然か》
魔王《となると、賢者よ。呪文の解放を阻止するには貴様を殺すほか無い様だ》
賢者「………………………。」
魔王《くくく、何も反応は無しか………》
魔王《このまま首をへし折るだけで………全てかたがつく……》スッ
512 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:54:22 ID:hJdQgyKQ
魔王は女騎士の細い指をゴキリと鳴らしながら手を広げ、賢者の白い首に触れる。
魔王《どうせ聞こえておらぬだろうが、これだけは言っておく。
貴様の仲間達はかつての勇者一行にも負けず劣らず、強かったぞ………》
見た目ほどダメージは無いが、傷だらけになった自身の身体を見る。
龍の炎で吹き飛ばされた左手や、足に残った刺し傷、いばらが食い込んだ皮膚の痕に、噛み傷………
そして雷撃による全身の火傷………
513 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:54:56 ID:hJdQgyKQ
魔王《我をここまで追い詰めたことを誇りに思うがいい………》
ゆっくりと指に力を込め、賢者の首がミシリという音を上げ始める。
魔王《さらばだ……》
ゾンビ娘「賢者様から……離れろぉぉおおお!!!」
――――ヒュドッ
514 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:55:29 ID:hJdQgyKQ
魔王《ぐふ……ぅっ!?》ドサッ
ゾンビ娘「このうなじは私のものです!!」フンス!
突然の横からの衝撃に、魔王は尻餅をついた。
ゾンビ娘が左足を軸にして右足を中段に伸ばしていることから、蹴り飛ばされたと推測する
だが、不意を突かれたとはいえゾンビ化しただけの少女に
この魔王たる我が尻餅をつかされるなど、ありえるのだろうか?
魔王《………! それは……!?》
魔王が驚き、目を見開いたのは、少女の薄い胸にオリハルコンの刃が突き刺さったままだったからだ。
515 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:56:00 ID:hJdQgyKQ
魔王《なぜ刺したままなのだ………!?》
ゾンビ娘「これがこの武器の、もう1つの使い方だからですよ!!!」ヒュッ
瞬間、少女の姿が霞むほど加速し、魔王の顔面に拳を叩き込んだ。
この速さ、3段階加速した魔王に匹敵する速さにまで達している。
魔王《ぐぉ……ぁっ! ………この威力……ゾンビの筋力をも超えている……?》
ゾンビ娘「貰ってからしばらくは、この力の必要性がわかりませんでしたけどね……!」
ゾンビ娘「今、この時のためにあったんです……!!!」ダッ
516 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:56:30 ID:hJdQgyKQ
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半月前
ゾンビ娘「はぁ………」
賢者「どうしたの?ため息なんてついて。まだウィップを置いて行ったことを気にしてるのかい?」
ゾンビ娘「いえ、そのことはもういいんです………カード君の言い分も十分理解しましたし……」
賢者「じゃあ何か?」
517 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:57:07 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「このダガーのせいですよ!!」
カード「【オリハルコン製 六拾四式小剣】のどこが気に入らないんだ?」
ゾンビ娘「無駄に中二なネーミングもそうですけど!その性能が…
……ていうかこの64って私のアンダーバストじゃないですか!どこから知ったんですか!」
賢者「バストもたいして変わらないじゃない………」
ゾンビ娘「そぉい!!」ゴスッ
賢者「☆■▲◎◆@*!?」
カード「き、金的……!?」ゾクッ
骨っ子 イタソー
518 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:57:49 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「次は……」コーホー
カード「ま、待ってくれ!64ってのは俺の作った魔道具ナンバーってだけで……!」アタフタ
ゾンビ娘「ただの偶然だと……?」
カード「そういうことだ!だから……な?」
ゾンビ娘「まぁいいでしょう……」
カード「助かった……」ホッ
ゾンビ娘「とでも言うと思ったか!!」ゴスッ
カード「☆■▲◎◆@*!?」
519 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:58:20 ID:hJdQgyKQ
賢者「それで……まじめな話、何が気に入らないんだい……?」ヒューヒュー
ゾンビ娘「攻撃力ですよ。いままで使ってたダガーは初期装備もいいとこですよ?
それが突然最強クラスの武器になってるんですから!攻撃力何倍されてると思ってるんですか!?」
賢者「別にいいんじゃ……」
ゾンビ娘「よくないですよ!今まで絶妙な力加減で自殺して無痛だったのに、これになってからすごく痛いんですよ!」
カード「自殺しなけりゃ……」ガクガク
ゾンビ娘「シャラップ!定期的にゾンビ化しないと、スレタイ詐欺になるでしょう!」
骨っ子 エェー
520 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:58:53 ID:hJdQgyKQ
カード「その分新しい能力も追加したからそれでチャラにしてくれよ」
ゾンビ娘「新しい能力?刀身に刻まれてるこの模様がそうですか?」
カード「おうよ。お前、普通自殺した後すぐにナイフを抜くよな?」
ゾンビ娘「そりゃまあ、ゾンビ状態は弓矢よりダガーを武器にした方が強いですから」
カード「そこでだ………心臓にダガーを刺したままにしてみな」
賢者「死んじゃうじゃないか」
カード「刺した瞬間多少のダメージは食らうが、血中の魔力で【延命】の魔術式が発動するからすぐには死なないさ」
521 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 13:59:32 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「刺したらどうなるんですか?」
カード「【延命】と同時に【加速】の魔術式も起動して、血流が半端ない速度になる。
その結果、ステータスを異常なくらい上昇させることが可能になるんだ」
ゾンビ娘「身体能力……強化……」
カード「だが、その性質上、毎秒1~2ずつHPが減っていく。
一応安全装置として、HPが1になったら止まるようにしたが、ゾンビ状態ではあんまり使わない方がいい」
カード「どうしても戦闘から逃げたいって時だけにしな」
522 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:00:05 ID:hJdQgyKQ
カード「使った後は、刻印に干渉したせいでたぶん血が欲しくなるだろうしな!」ハハハ
ゾンビ娘「そういえば、最近血を貰ってませんでしたね……」ユラ……
賢者「え゙………」
骨っ子 ケンジャサマニゲテー
ゾンビ娘「逃がしません!」
ちょっやめっ……! ギャ――――――!!!
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523 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:00:47 ID:hJdQgyKQ
魔王《そんな力がそのダガーに……?》
ゾンビ娘「ええ。【人為トランス】とでも呼びましょうか……
血中魔力の多い心臓に刺さないと発動しないのが痛いですがね………」
ゾンビ娘「しかもこの性質上時間も無いので………」
またゾンビ娘の姿が霞んだ。
ゾンビ娘「短期決戦を強いられるんです!」ゴッ
魔王《ぐぅ………っ》パシッ
524 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:01:31 ID:hJdQgyKQ
魔王は拳を足のみで受け止め、右手をサーベルの柄に添えながら言った。
魔王《短期決戦がお望みなら、すぐさま終わらせてやろう………》スラッ
【はやぶさ斬り】
上げていた右足を床におろし、強く踏み込みながら居合い抜きの要領で抜刀。
魔王の背中側を除く、三方向全てに斬撃を放つ。
しかし、少女は少し前にしたように後ろに跳躍し回避していた。今度は完全に間合いの外まで逃げている
魔王は舌打ちし、ゾンビ娘を追った。
525 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:02:13 ID:hJdQgyKQ
魔王《ふっ……!》ヒュッ
下から上へ斜めに斬り上げる。回避され、拳を右のわき腹に叩き込まれる。
ボキリという音が身体の内側から響いたが、気にせず剣を逆手に持ち替え追撃。
少女は地を蹴り、賢者のいる方向に逃げた。
魔王《賢者を守りながら戦うつもりか!……愚かな!》ダッ
ゾンビ娘が玉座の前15メートルの位置で急停止する。振り返ると同時に追いついた魔王は、刺突を繰り出した。
ゾンビ娘「無駄ですよ!」ヒョイッ
魔王《小癪な……!》
魔王らしい発言を繰り返してはいるが、魔王の顔は楽しそうな笑みを浮かべている。
526 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:03:00 ID:hJdQgyKQ
魔王《思う存分物理攻撃だけで戦えるとは、なんと愉快なことか!》
ゾンビ娘「わけの分からないことを言うんじゃないです!」ヒュオッ
魔王《これは我の本心だ!グオッ…!》ドムッ
強力な魔法を主体に戦う魔王は、近接戦闘を行う機会が極端に少ない。
それは魔力量が膨大であるために、魔力切れになる前に戦闘が終わってしまうからである。
200年前の勇者との戦闘では魔力切れにはなったものの、肉弾戦においては話にならなかった。
『本気を出せる』ただそれだけのことが、魔王が唯一願った事なのだ。
魔王《この状態を名づけるならば、第二形態といったところであろうか……な…っ!》ヒュオンッ
527 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:04:03 ID:hJdQgyKQ
魔王の猛攻は続き、ゾンビ娘は次第に後退しつつあった。
ゾンビ娘(やっぱり近接戦闘は慣れません……)
長年弓兵としての立ち回りを意識してきたせいか、その動きにはぎこちなさが残る。
ゾンビ娘(これを、経験の差……って言うんですかね………)
ゾンビ娘「でも……やるしかないんですけどねっ!!」ヒョイッ
――――ガッ
ゾンビ娘「え………」グラッ
彼女は、床にできた段差に足を引っ掛け、意識をそちらに移してしまった。
528 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:04:37 ID:hJdQgyKQ
魔王《捉えた…っ!》
実力が伯仲している場合、一瞬の油断が命取りになる。
――――ザシュッ
ゾンビ娘「あ………?」
彼女は踏みとどまろうとしたが、足がうまく動かなかった。足の痛みが、その理由を告げている
ゾンビ娘(両足の腱を……やられました……!!)
529 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:06:10 ID:hJdQgyKQ
魔王《くくく、ここら辺の床は先の戦闘でボロボロになっているからな。簡単に誘導できてうれしいぞ》
ゾンビ娘「くそっ……!!」ブンッ
魔王《おっと!フハハハ、人為トランス状態では石を投げるだけでも相当な威力になるようだな》ヒョイ
ゾンビ娘「そうですね!」ヒュヒュヒュンッ
魔王《かわすことは容易いが、少々目障りだ。潰しておこう》
魔王は投石をかわしながら、剣を握る腕に力を込める――――
――――【クライムハザード】
530 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:06:42 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「かは………っ」
ゾンビ娘の胸からダガーが抜け落ち、身体を満たしていた力が急速に失われていった。
魔王《HPが1になれば停止する……貴様はそう言ったな》
ゾンビ娘「くっ……なぜ手加減を……!」
魔王《くくく、貴様の絶望する顔が見たくなってな。痛みに苦しむ顔を見て、我の血は滾った。
絶望の表情ならば、いったいどれほど甘美な興奮を与えてくれるのか………》
魔王《考えるだけでゾクゾクじないか?》
ゾンビ娘「やっぱり魔族はド変態しかいないんじゃないですか!?」
531 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:07:29 ID:hJdQgyKQ
魔王《安心するがいい。賢者の後に貴様も送ってやる。もちろん魔導師の二人もな》ザッ
ゾンビ娘「待てぇ!」ズ……
また這って追おうとするが、間に合わないことは分かりきっている。
だからこそ彼女は、逆転の手立てが無いか必死に考えた。腐った脳を限界まで酷使し考えた。
ゾンビ娘(投石……はトランスの力無しでは避けられて終いですし、
弓矢はさっきの斬撃で弦がブッツンしてます………)
ゾンビ娘(もう本当に何も手が………!)
532 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:08:02 ID:hJdQgyKQ
――――ボスッ
ゾンビ娘「ふぎゅっ!?」
ゾンビ娘の頭に、何かが乗せられた。
カード「諦めてんじゃ……ねぇよ………!」
ゾンビ娘「カード…君……?」
つららを無理やり引っこ抜き、杖に体重を預けながら歩いてきたのだろうか。
カードの右足のズボンは血で真っ赤に染まり、床に太い線が引かれている。
カード「絶対にまだ……手があるはずなんだ………!!」
少女の頭に乗せられていたのは、荷物を入れていた袋。詰め込みすぎてかなりの重さになっている
533 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:08:36 ID:hJdQgyKQ
カード「おらっ!」グイッ
袋をひっくり返し、中身を床にぶちまける。
しかし、中身はビン、銃、砂、お面、今まで集めた各地のお土産と、この城で手に入れたガラクタばかりだ
カード「何か……!」ガサガサ
ゾンビ娘「お願い!」ガチャガチャ
534 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:09:12 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「あ…………」
ゾンビ娘の瞳に、ガラクタの中に埋もれていた緑色が飛び込んだ。
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――――「困った時に開くアル」
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ゾンビ娘「カエルの……ポーチ………!!」
535 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:10:00 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘がポーチを引っ張り出すと、デフォルメされた可愛らしいカエルがゲコリと鳴いて、勝手に口を開いた
カード「これは……?」
ゾンビ娘「青い…飴玉……」
飴玉を視認したとき、二人に中華店主の声が聞こえた。
それは、瀕死の二人が聞いた幻聴かもしれないが、幻聴ははっきりと告げた。
『食べることは生きることアル。食への探究心が、ときに絶体絶命のピンチを救うアルよ!』
ゾンビ娘「……っ!」ガリッ
536 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:10:33 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「人間、おいしいものを食べてるときが一番生きてるって実感しますよね……」
ラムネの味がする飴玉を噛み砕きながら、彼女はこの旅で口にしてきた味を思い出していた
――― 200年ぶりに食べたシチューとクッキー
――― 大好物のイチゴをふんだんに使ったケーキ
――― 炒められた冷やし中華
――― 旅の間私達の胃袋を支えたカード君の料理
――― ウィップさんの召喚した芋の白金
ゾンビ娘「どれもおいしかったです……」ガリボリ
できるなら、もう一度食べたいものばかり。でも一番欲しいのは―――――――
ゾンビ娘「賢者様の血です!!!」
537 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:11:14 ID:hJdQgyKQ
――――ゴクンッ
飴玉を飲み込んだ瞬間、身体の中から力が湧いてくる。
身体の中だけでは抑え切れないエネルギーを、少女は大好物に近づく邪魔者に向けて解き放った
ゾンビ娘「 【 リミットグローブ 】 !!!」
魔王は、膨大な魔力の奔流に巻き込まれた
538 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 14:12:40 ID:hJdQgyKQ
―――――――――――――――――――
???「リミットグローブ。これはHPが1になっているときにのみ真価を発揮する呪文なんだ」
???「9999という固定ダメージを敵に与える強力な呪文だよ」
???「魔王みたいに防御力がイカれてる相手なんかには一番有効な技だと思うよ」
…………………。
???「え?中華店主が話に出てきた時点でやりそうな気はしてた?ナンノコトカナー」
………………!
???「そんなことよりさっさと続きを話せって?まぁまぁ、僕も疲れたし、今日はこの辺で」ノシ
―――――――――――――――――――
539 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/16(土) 15:28:38 ID:hJdQgyKQ
――――バキバキバキバキバキバキバキバキバキ
魔王《ぐぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!?》
魔王(何だこれは!!?身体がッ!潰れるッ!?破裂するッ!?)
球体状の形を持った魔力の中で、魔王は形容し難い衝撃と痛みの嵐の中にいた
魔王(重力すらも分からない!我は今落ちているのか!飛んでいるのか!?)
重力でさえ捻じ曲げてしまう程の魔力の密度の中で、上下左右全ての方向を見失ってしまった。
体感する威力自体は、零式のテラフレアよりも遥かに劣ることは分かる。
だがこの魔法は、方向感覚を狂わせるせいで、精神的にそれを超えたような錯覚に陥る。
コンバートによって体力を著しく減らしてしまった体力は数値にすれば8000を下回っている。
魔王(このままでは………!!)
540 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/16(土) 15:29:10 ID:hJdQgyKQ
魔王の痛覚が麻痺し始めた頃
魔王(我の身体が………崩れて………!!)
魔王の魂を収めていた女騎士の体が、ゆっくりと魔力の波に溶けていく……
このままでは身体ごと消滅してしまうだろう。その結末に抗おうと右手を動かすも、その感覚が無い。
魔王(右手が……無い………)
目を開き、それだけを視認すると、二つの碧い目は同じように魔力の中に溶けていった。
魔王(見えなかっただけで、すでに両脚も消えているのだろう……)
何も見えなくなった視界の中で、魔王の意識も次第に溶けていった。
541 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/16(土) 15:29:42 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「ケホケホっ!……やったのですか……?」
――――グチャァ…
ゾンビ娘「ひっ!?」ビクッ
カード「こいつは……」
魔王《ああ゙ア゙ぁァァああああ゙………》
カード「身体が……グズグズに……!?」
ゾンビ娘「まるで……ゾンビ………!」
542 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/16(土) 15:30:15 ID:hJdQgyKQ
魔王《アあ゙ああ゙あ゙ァァァ………?》ズル…グチャ…
正気があるようには見えない。よく分からない体液を滴らせながら私達に近づいてくる。
あるはずの無い『左腕』に、折れてボロボロになったサーベルを握りながら………ゆったりと………
ゾンビ娘「そんな………」
カード「絶望してる暇なんかねぇぞ!早く離れねぇと……!ぐあ…ッ」グ…
彼は足に力を込めるが、傷のせいで言うことを聞かない。それは足の腱を切られた私も同じだ
543 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:30:52 ID:hJdQgyKQ
魔王《…………………ああ゙》ズチュ…
いつの間にか二人の目の前まで迫っていた魔王が、左腕をガクガクと揺らしながら振り上げた。
床に落ちた体液から、気絶しそうなほどの腐臭が発している。
カード「くそっ!!」ヒュ…
ゾンビ娘「! 駄目です!!」
――――ドンッ
氷の杖を振り回そうとしていたカードを、ゾンビ娘は突き飛ばした。
544 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:31:25 ID:hJdQgyKQ
ゾンビの筋力で突き飛ばされたカードは、2メートルほど離れた場所に転がった。
カード「痛……ッ!」
ゾンビ娘(ごめんなさいカード君!こんなにボロボロの見た目でも、この魔王の一撃は……!)
魔王《あア゙ぁアア!!!》ヒュオッ
必殺の一撃が、彼女の強張った身体に振り下ろされた――――――
ゾンビ娘「………っっ!!」
――――グチャッ
545 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:44:54 ID:hJdQgyKQ
――――ビチャチャッ
ゾンビ娘「……!?」
突然、目を強く瞑り身構えていた彼女の顔に、どこかべたつく液体が降りかかった。
ゾンビ娘「ぷはっ!………?これは……なんかネバネバします……」ヌルッ
「ひゃひゃひゃ!それだけ聞くと顔射されたみてえに聞こえるな!なかなかエロい顔してるぜぇ?」
ゾンビ娘「その声は……!」
女騎士「よお!おひさ~」
自ら腹に剣を刺した魔王の姿があった
546 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:45:25 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「どうして……!」
女騎士「まずはあたしの体液を拭けよ。なんかもう…いい感じに顔にかかってっから……」
ゾンビ娘「あ、はい」フキフキ
カード「お前……女騎士だったな………消えたはずじゃ…」
女騎士「このあたしが消えるかよ!まあ結構きつかったけどよ……
魔王の意識が弱くなってな。ようやく主導権乗っ取って出てこられたんだ」
ゾンビ娘「うぷ…口に入りました……苦……」ウエー
カード「ぶふ……っ!!」
女騎士「お前……狙ってやってない?」
547 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:46:06 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「失礼しました。それで………刺さってますけど、いいんですか?」
女騎士「ん。まあな。さっきの呪文で痛覚が爆発したし、もう何も感じねえさ」
カード「何はともあれ、お前がゾンビ娘を助けてくれたんだよな……?」
ゾンビ娘「えっと、本当にありがとうございました」ペコリ
女騎士「痒いからやめてくれ。……元を辿れば、あたしが魔王の罠にはまったせいだ。頭を下げるのはこっちの方だ」
548 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:46:39 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「その体は……?」
女騎士「魔王が無意識のうちにやったみたいだな。喰鬼の腕と脚を部分的に召喚してる。ああ、あと眼球もか」
カード「部分召喚?脚や手から流れてる体液は分かるけどよ、腹からもその白く濁った体液が出るのは何故だ?」
女騎士「ん~そうだな……胴体と頭は自前なんだが、魔王と長いこと一体化してたせいでそんな感じになったんだと思う」
ゾンビ娘「じゃあなんで粘つくんですか」
女騎士「魔族の血っぽいだろ?」
549 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:47:10 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「血に飢えてる私も、これは飲みたくないですね……きな粉の時みたいにのどに絡みそうですし」
女騎士「お前さっきちょっとだけ舐めたじゃんかよ」
ゾンビ娘「やっぱり賢者様の血が一番さらさらでおいしいです」
カード「まず血を飲み物にしてるのもそうだが、きな粉を飲み物として飲んだことがあるのか………」
女騎士《なかなかいけるぞ?きな粉ジュース》
カード「そんな馬鹿な……え?」
女騎士「やっべぇ………もう意識取り戻しやがっ……まだ生き残っておったとは驚きだ》魔王
550 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:47:44 ID:hJdQgyKQ
女騎士「はっ!このあたしがお前なんかに消されるかよ」
魔王《そうは言っても、もうすでに身体の支配権が奪われつつあるぞ?》ギギギ
女騎士「もともとあたしの腕じゃないからな……!」
魔王《くくく、このグールの身体を召喚しておいて正解だったようだな》
女騎士「ひゃはは!あたしはこんな腐った四肢なんざご免だがな!」
ゾンビ娘「これ端からみると、一人芝居にしか見えないんですが」
カード「しーっ!それ言っちゃあかんやつ!」
551 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:48:16 ID:hJdQgyKQ
魔王《ほれ、一人芝居とか言われてしまっておるぞ?はやく我に身体を空け渡さんか》
女騎士「ぐあぁぁぁ!!?」
魔王《やれやれ………手を煩わせおって》
ゾンビ娘「女騎士さん!」
魔王《ふむ……思えば、貴様の絶望が見たいなどと言わず、さっさと殺しておけばよかったな……》ズリュ…
魔王《【アルテ……っ…させねぇ!!」女騎士
魔法を放とうとした右腕を左腕が掴み上げ、空に向かせた。
552 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:48:47 ID:hJdQgyKQ
――――カッ
魔王《ゴキブリのようにしぶとい奴め……!邪魔をするな!》
女騎士「ぐ……っがぁ!…………嫌だね。これはあたしの身体だ!!」ズボッ
彼女は、自らの腹部からサーベルを引き抜き、心臓に突き刺した。
魔王《ぐぉおお!?心臓を……!?だが、これしきのことで我は………》
――――キィィィィィィィィン
魔王《………?》
女騎士「気づいたか?さっきから魔力が増えてることに」
553 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:49:38 ID:hJdQgyKQ
魔王《貴様……まさか………!!》
女騎士「そのまさかさ…!」
【 コ ン バ ー ト 】!!!
魔王《ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!》
カード「これは一体……」
554 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:50:08 ID:hJdQgyKQ
女騎士「コンバートは命を削る術!命とは魂!詰まる話が!」
魔王《我もろとも消し去るつもりか……!》
女騎士「ご明察!ちょいと地獄まで……付き合ってもらうぜ………!!」
魔王《がぁぁぁぁああああああ!!貴様…!正気か!?》
女騎士「正気さ。こんな姿になっちまったんじゃ、どの道長くないだろうからな。捨て身にもなるさ」グジュ…
魔王《………!》
555 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:50:43 ID:hJdQgyKQ
女騎士「それに……あたしは今まで、誰かに利用され続けてきた……」
女騎士「貴族に王子、ついでに親もか……あたしを利用するだけ利用して、アイツを…アイツ等を奪った」
魔王《そ、それは我も知っている……!》
女騎士「そりゃそうさ。魔王の呪文とは、この頃からの付き合いだからなぁ?」
女騎士「だが、あたしの心の中までは知らねぇだろ……」
女騎士「あたしはな………もう二度と……
誰かに利用されたくねぇんだよ!!!」
556 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:51:18 ID:hJdQgyKQ
ゾンビ娘「………!?」
女騎士「あたしが利用されたがために!アイツ等は死んだ!」
女騎士「てめえみたいな奴のくだらねえ陰謀のせいで……誰かが傷つくのは!もうご免なんだよ!!!」
女騎士「これはあたしの身体だ!!あたしだけの身体だ!!!」
女騎士「誰にも自由にされない!あたしだけの身体だ!!!」
女騎士「だからとっとと……………
くたばりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!」
557 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:51:49 ID:hJdQgyKQ
――――パァン………
濡羽色に染まった空に、何かが破裂する音がこだました。
女騎士「あぁ…まあいいや…後は………まかせたぜ…… …」ドサッ
カード「何が……起こったんだ………?」
その答えは、人一倍命に敏感なゾンビ娘だけが知っている
ゾンビ娘「はは、ははは……」
ゾンビ娘「生成した魔力量が多すぎて………魂が……その重さに潰されました……」
558 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:52:22 ID:hJdQgyKQ
カード「………っっ!!」
カード「でも!魔王はこれで……!」
ゾンビ娘「いいえ……」
ゾンビ娘「まだ………」
魔王《おのれ……最後の最期に……!!!》ズオッ
カード「なっ!?」
559 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:54:58 ID:hJdQgyKQ
魔王《こうなったら……ッ貴様の身体に我の魔力を注ぎこんで、新しい器にしてくれる!》ガシッ
ゾンビ娘「あっ……!」
――――ガッ ゴッ ガンッガンッガンッ
魔王はゾンビ娘の髪の毛をちぎれるほど掴み、何度も顔面を床に叩きつけた
ゾンビ娘「う…………ぁ……………」
彼女の顔は、鼻血を吹き出し、青い顔が紫色に変色するほど激しく叩きつけられた
560 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:55:30 ID:hJdQgyKQ
カード「このっ!ゾンビ娘を離しやがれ!!!」ビュンッ
カードは杖を振り、氷の剣をいくつも投げつけた
魔王《ふん……》グイッ
カード「 ! 」
――――ドスドスドス
ゾンビ娘「うぁ゙……ぁ………!!」
魔王はゾンビ娘を盾にして、氷の刃から身を守った
561 :
スラリン(黒) :2014/08/16(土) 15:56:50 ID:hJdQgyKQ
魔王《これだけやっても、まだHPが1から下がっていないとは、なかなかおもしろいな……》
カード「てめぇえ!!!」
魔王《くくく、いい顔だ。憎悪。憤怒。どれも我に向けられるためにある感情だ。心地よい………》
魔王《さあ、この素晴らしい感情の中で、今ここに新しい魔王を誕生させよう……》ズズズ…
ゾンビ娘の首を掴んで持ち上げ、右手に魔力を集中させる。
ゾンビ娘(賢…者様……………)ツゥ…
彼女の目から、一筋の涙が零れ落ちた………
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564 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:14:24 ID:OkUNnOLY
「…後は………まかせたぜ……賢者…」
「うん……」
夜空を切り裂き、神鳴りの龍角が魔王を撃ち抜く▼
―【雷角ノ神弾・発動限界】―
賢者「まかされた」
565 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:19:47 ID:OkUNnOLY
――――リィィィィィィィン
鈴を鳴らしたような神々しい音が響き渡る
魔王《がは……っ》ズシャッ
魔王《この光は…この雷は……!》
カード「ったく……いいとこ持っていきやがって……」
ゾンビ娘「……賢……者…様……?」ケホ…
賢者「ごめん。遅くなった」【真・ホイミ】
566 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:25:32 ID:OkUNnOLY
全員の体力が全回復!▼
魔王《貴様!》グオッ
賢者「―【雷縛弾】―」
魔王《ぐ……っ!?》ジャララ
魔王の身体に、光の鎖が絡みついた
賢者「これでも僕は怒ってるんだよ?」
魔王《う、動けぬ……!?》ギシギシ
賢者「女神の雷で編んだ鎖だからね。しばらくは無理だよ。そこでじっと見てなよ」
567 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:32:33 ID:OkUNnOLY
賢者「あ、ゾンビ娘ちょっとこっち来て」
ゾンビ娘「?」トテトテ
――――ビリィ!!
賢者はゾンビ娘の服の背中部分を引き裂いた。青色の背中が見える
ゾンビ娘「!!?!??!!?」///
ゾンビ娘「な、何をするんですか―――!!!///」バッ
賢者「捕獲」ガシッ
568 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:33:50 ID:OkUNnOLY
賢者「よいしょっと」グイッ
そのままゾンビ娘の首根っこを掴み、猫を捕定するように床に押さえつけた。
ゾンビ娘「むぎゅっ!?」
賢者「【レイズ】かけて一丁上がり」フゥ…
ゾンビ娘「絶対今 一仕事終えたみたいな顔してるでしょう!?何するんですか!」†蘇生†
カード「相変わらず仲間でも容赦ねぇ……」
カード(あと1つ言うと、賢者が絶対しちゃいけないような黒い笑みを浮かべてるし……)
569 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:34:24 ID:OkUNnOLY
賢者「……………。」ツツツ…
ゾンビ娘「ひぅ……!?///」ゾゾゾクッ
ゾンビ娘の白い背中に、賢者のやわらかい指先をかすらせるように這わせる
ゾンビ娘「ちょっちょっと、賢者さまっ!?あっ…こんなところでナニを……ひゃんっ!///」
ゾンビ娘「私は別に構いませんけど…ぁっこんな所で…/// ハッ――」カァァ
ゾンビ娘「そうじゃなくて!!!何か言ってくださいよ賢者様!!!」///
カード「何度も言うけど、見た目だけなら百合なんだよな……」<●><●>じ~
魔王《同感だ……》<●><●>じ~
570 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:35:15 ID:OkUNnOLY
ゾンビ娘「意見の一致を見せてんじゃないですよ!!!この変態共!!!」
カード「それを言うなら、お前の上で背中を撫でている奴が一番の変態だと思うんだが」
魔王《我がやった時とは反応がえらい違いだ……》ギシギシ
カード「なんと奥さん!あの二人、同じベッドで夜を明かしたことがあるそうよ」コソコソ
魔王《おやまぁ…そうだったの? これだから最近の若い子は!》コソコソ
ゾンビ娘「誤解を生む言い方しないでください!!!血を貰っただけですよ!!!あぅっ!///」ビクッ
571 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:35:51 ID:OkUNnOLY
賢者「ん。見つけた」
ゾンビ娘「え……?」ゼェハァ
賢者「痛いかもしれないけど、我慢してね」スッ
ゾンビ娘「え!?///ちょっと!?私まだ心の準備が…!!///」
賢者「いくよ……」
ゾンビ娘「~~~~っっ///」
賢者「【真・ホイミ】」コォッ
572 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:36:21 ID:OkUNnOLY
ゾンビ娘「…………はれ?」
ゾンビ娘「ただの回復呪文……?」
賢者「ん~?どうしたんだい?ナニと勘違いしたんだい?」ケタケタ
ゾンビ娘「あぅ………///」プシュー
カード「なんだよ~」
魔王《……! まさか!!》
573 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:36:52 ID:OkUNnOLY
賢者「そろそろ来るから気をつけて」
ゾンビ娘「え…?」
――――ジュゥゥゥゥゥゥゥ
ゾンビ娘「うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
突然、彼女の背中に刻印が現れ、赤く燃えるように光っている
ゾンビ娘「ああぁあぁあっぁ!!!あ゙あ゙あ゙っ!!?ああああああああああああああああああ!!!」
ゾンビ娘(何ですか……!?これ…っ背中が……あの時みたいに焼かれ…て………!!)
574 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:37:23 ID:OkUNnOLY
賢者「もう少しだけがんばって」ポォォォ
ゾンビ娘「あぐ……っは……む、りぃ………ッ」ジュゥゥゥゥ
カード「背中に一点集中でホイミ?何で……あっ……!」
魔王《背中の刻印を…消そうというのか!!》
賢者「そういうこと。だからもう少しだけ頑張って、メイリ」
ゾンビ娘「ぅぅぅぅ…!メ…イリって呼ぶなぁ……!!」
575 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:37:57 ID:OkUNnOLY
ゾンビ娘の身体をゾンビ化させていた刻印の魔方陣には、【再生】と【死人】を意味する二つの式が刻まれている
そのどちらも、焼印で背中に刻み込んだ魔方陣を彼女の発する魔力で起動させている。
焼印はつまるところ火傷であるため、回復呪文で消すことが理論上可能である。
しかし【再生】の式は、この焼印がある状態を健全と認識させる式を混ぜ込んであるため、
回復をかけても刻印が消えないようになっている。
賢者「だから【死人】と、【再生】の認識部分だけをホイミで消してるんだよ」
魔王《だが、【再生】の式の再生力はどの回復呪文の回復量を上回る!消せるわけが無い!》
賢者「昔勇者が使わなかった?魔力さえあれば際限なく再生できる呪文を。
それが真・ホイミ。加えて僕のこの無尽蔵の魔力」
賢者「これなら………刻印の力を凌駕できる……!」キリッ
576 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:38:28 ID:OkUNnOLY
ゾンビ娘「キリッ…じゃないですよ………ッ私の皮膚がグズグズになるじゃないですか……っ!」
賢者「グズグズになった細胞は、【再生】の式にまかせてるよ」
賢者「それじゃあ、一気に行くよ……」
――――ゴォォォォォ!!!
ゾンビ娘「~~~~~~っっ!!!」
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577 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:40:56 ID:OkUNnOLY
~少し前
賢者「というわけで開放してきます」ダッシュ
魔王《あ!待てゴルァ!!》【アルテマ】
ウィップ「あ、よいしょ~」【アルテマ・ウィップ】
――――ズガァァァァァァァァン
賢者「おお怖っ!!」タッタッタッ
578 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:41:28 ID:OkUNnOLY
~玉座
賢者「さて、どう見てもこれだよね」
冒険の書《その通りっすwww》
賢者「見たところ全部大理石で出来てるけど………お尻痛くならないのかなこれ…」
冒険の書《実際に座ってみたらwww三十分で痛くなったwww僧侶の胸みたいに綺麗な平らwww》
賢者「胸も壁だもんねー」
<やかましいです!!さっさと解読しなさい!!
579 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:43:01 ID:OkUNnOLY
賢者「怒られちゃった…さ、解放しようか………」ソ…
――――リィィィィィィィン
光り始めた玉座の傷に触れると、賢者の触れた文字が鎖に具現し、鈴の音と共に首に絡みついた
賢者「ちょっ待っ!聞いてないよ!?………あ…っ」グイッ
鎖が文字に戻ると、賢者の身体が弛緩し、そのまま膝から崩れ落ちて動かなくなった
ゾンビ娘「ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!」
音が小さくなっていく賢者の耳に、ゾンビ娘の悲鳴だけがしっかりと張り付いた………
580 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:43:41 ID:OkUNnOLY
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
賢者「…………………………」スゥ
目を開くとそこは、何も無い真っ白な空間だけが広がっていた。
そしてフードの付いた黒いローブを着る男が一人、空間の白さを際立たせるように立っている
~壱の狭間
黒い男「久しぶりだな………」
賢者「………だね。真・ホイミ以来かな? 案内人」
581 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:44:19 ID:OkUNnOLY
案内人「案内人ねぇ……ははっ間違いじゃないな」
賢者「初めに会った時に、呪文を集める道を指し示してくれたのがキミだったからね」
案内人「最初の助言だけでここまで来れたのはお前だけだぞ」
賢者「この旅に出たのも、僕が最初の一人じゃん」
案内人「まあ少しくらい誇張してもいいじゃねぇか」
賢者「うん。その見栄っ張りなところのおかげで、僕は旅に出ることに決めたからね。だから正解だよ」
582 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:44:51 ID:OkUNnOLY
案内人「そりゃあありがたい。ついでに今回も俺の思い通りになってくれれば嬉しいんだけどな」
賢者「………………思い通りの結果に導くのが案内人でしょ?」
案内人「実際は道を示すだけしかできないけどな。進むかどうかはお前次第。期待してもいいか?」
賢者「魅力的な道を案内してくれるならね」
案内人「いいだろう。だが俺は責任を一切取りませんよ、お客様」
案内人「たとえその道が、破滅に伸びていようとも………………」
583 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:46:43 ID:OkUNnOLY
賢者「……経験者が言うと重みが違うね」
案内人「この先を知ってるのか?」
賢者「想像の域を出ないけど、ある程度は。というか、その為に記憶と魔力を与えたんだろ?」
賢者「 勇者様 」
勇者「まあ……な」
584 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:47:26 ID:OkUNnOLY
賢者「最初にキミの記憶が入ってきたときは、気にも止めなかったよ」
勇者「魔王討伐後の旅の記憶だからな。どっちかって言うと、初めてここに来た時の方が印象に残ってるんじゃないか?」
賢者「突然白色しかない空間に連れて来られたらそりゃあね。
キミの第一声が『よく来たな。俺の血族の娘よ』だったことにもビビったけど」
勇者「あれはしょうがない。女にしか見えないお前が悪い」
賢者「そんなこと言われ……っ!?」ミシリ…
賢者の首に指の形をした模様が浮き上がり、少し首にめり込んだ
585 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:48:04 ID:OkUNnOLY
賢者「かは………っ ハァ…ッ!ハァ……ッ!」
賢者「今のは一体……っ?」
勇者「お前の身体が攻撃を受けたんだろうな。ここには意識しか来れない。身体は向こうにあるままなんだ」
賢者「一瞬で離れたあたり、なんとかしてくれたんだろうね………」
賢者「でもたぶん時間が無い。今回僕を呼んだ理由を教えて」
586 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:48:34 ID:OkUNnOLY
勇者「僧侶を人間に戻す方法を教える為だ」
賢者「ゾンビ娘を娘にする方法……?」
勇者「ややこしいからゾンビ娘で統一しとけ」
勇者「知ってると思うが、俺が魔王討伐の後に旅に出た理由は僧侶を助けるためだ」
賢者「死んだと思ってたんじゃないの?」
勇者「初めは俺もそう思ってた」
587 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:49:42 ID:OkUNnOLY
勇者「だが、裏ボスでもいないかと思って、後日魔王城を探索してたら魔王の研究室を見つけた」
賢者「意外なきっかけで発見してた!」
勇者「そこには、ゾンビ娘についての実験結果が書かれていて、ゾンビとして今も生きていることを知った」
勇者「このゾンビ娘の背中に刻まれているらしい魔方陣と一緒にな」
勇者「魔導師にこの陣を見せたら、どこを潰せば人間に戻るかをあっさりと解いてくれたよ」
勇者「それがこの部分だ」
勇者は空中に陣を浮かび上がらせ、該当の部分に色を付けた。
賢者「便利だね」
勇者「俺の空間だからな」
588 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:50:18 ID:OkUNnOLY
勇者「ゾンビ娘を人間化する方法は簡単。この部分だけに集中して真・ホイミをかけるだけだ」
賢者「どうやってその部分だけを見つければいい?あの刻印は暗闇の中でしか出てこない」
記憶が正しければ、あの部屋はメラミやフレアのせいで明るくなっているはずだ
勇者「それは……あれだよ………触診で。刻印から微量の魔力が出てるから、直に触れば分かるはずだ」
賢者「変態のレッテルを貼られそうな方法なんだけど………」
勇者「大いなる偉業には、大いなる犠牲が付き物だ」キリッ
賢者「………時間も無さそうだし、甘んじて受け入れることにするよ…………」
589 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:50:53 ID:OkUNnOLY
勇者「そうそう、刻印の再生力との戦いになって魔力を相当消費すると思うから気をつけろよ」
賢者「………どのくらい?」
勇者「おそらく魔王40体分」
賢者「」
勇者「がんばれ。あとこれは呪文解放のボーナスだ。魔力と記憶。いくらかマシになるだろ」
勇者の両手から光る玉を渡される。
賢者「うん………がんばるよ………」
590 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:51:55 ID:OkUNnOLY
――――ザァァァァァァァァ
白い空間がはらはらと崩れ始めた。ようやく戻れるらしい。賢者は光る玉を抱えたまま勇者に問う
賢者「あ、そういえば。どうしてキミは自分でゾンビ娘を助けずに、わざわざ僕に彼女を探させたんだい?」
勇者「それもその記憶を見ればわかる。俺が女神に喧嘩を売った理由もな」
賢者(それ本当だったんだ………)
勇者「…………賢者」
賢者「何だい?」
勇者「…………後はまかせたぜ!」ニッ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
591 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:52:44 ID:OkUNnOLY
~魔王城 ―玉座―
賢者「《時の流れは遡れない。抗う危険も代償も、何も知らぬ純心だったからこそ、私は突き進めた》」
賢者「《待ち受ける現実を知らずに……【 】…………》」
賢者「あの馬鹿………………」
勇者の顔を思い浮かべながら、銃を持つ手に力を込めた
目の前では、女騎士の魂が消えていく…
「「…後は………まかせたぜ……賢者…」」
賢者「うん……」
592 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:54:17 ID:OkUNnOLY
彼はありったけの魔力と覚悟を込めて引き金を引いた
―【雷角ノ神弾・発動限界】―
閃光が魔王を貫き、絶望を映し出す夜空を照らした。
銃口から魔力の残滓が漂う暁の空の下、朝日が彼らの影を伸ばし、ゾンビ娘の涙を輝かせた
賢者「まかされた……!」
593 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:55:14 ID:OkUNnOLY
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賢者「ふぅ…っ!」
カード「……どうなったんだ………?」
賢者の下には、ぐったりしたゾンビ娘がうつ伏せで倒れている。その背中の刻印は………
「……ぅ……ん………」ピクッ
賢者「気分はどうだい?ゾンビ娘………いや、メイリ♪」
ゾンビ娘「………重いので私のおしりからどいてください」
ゾンビ娘のゾンビ化の呪いが解けた!▼
594 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:56:49 ID:OkUNnOLY
カード「いや、名前そのままかよ」
賢者「一応今の名前だからね。このままで通すよ」
ゾンビ娘「だからどいてくださいよ!!重いんですってば!!」ジタバタ
賢者「小さいから安定感は無いけど、やわらかいからなかなか座り心地いいんだよね」ツンツンムニムニ
ゾンビ娘「……………」つダガー チャキッ
賢者「大丈夫かい?立てる?」ヒュバッ
ゾンビ娘「…ハァ……」
595 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 13:59:11 ID:OkUNnOLY
ゾンビ娘「レイズでいじれなくなったら、今度はセクハラですか……」
賢者「ゾンビ娘にとってはセクハラなんだ~?」
ゾンビ娘「………別に賢者様なら……ゴニョゴニョ」
カード「はいはい、ご馳走様」
――――パキィィィン
魔王《……………。》ゴゴゴゴゴゴ……
596 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:00:20 ID:OkUNnOLY
自力で鎖を解いた魔王に、銃口を向けながら問いかける
賢者「まだ何か?」チャッ
魔王《……あの魔方陣は解読ができないように古代文字を使って組み立て、二つの式を複雑に絡み合わせた……》
魔王《どうやって【死人】と認識の魔術式だけを見つけた………?》ゴォォォォ
魔王の右手には、魔力が渦巻いている
賢者「教えてもらったんだよ」クッ
賢者はトリガーに指をかけ、力を込める……
魔王《誰にだ……》ズオォォォォ
賢者「かつてキミを倒した者に」
597 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:00:52 ID:OkUNnOLY
魔王《【アルテマ】!!》
賢者「―【雷角ノ神弾】―!!」
――――ジジ…ッリィン
賢者の放った銃弾は凶球を打ち抜き、魔王の掲げた右腕を貫いた
魔王《ぐぅぅ……!》
賢者「まあ余裕で打ち抜けるけどね」フッ
598 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:01:23 ID:OkUNnOLY
魔王《この威力は一体………!?》
賢者「ライデインとアポカリプス。2つの呪文を1つの弾丸にまとめただけだよ」
魔王《女神の雷と勇者の破壊呪文………通りで魂まで響く一撃だった訳だ》
賢者「キミは女神の雷でしか魂を滅せないって勇者から聞いたからね………」
賢者「今度はバックアップも残せないくらい、存在ごと消し去ってあげるよ」ニコォ…
599 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:01:57 ID:OkUNnOLY
カード「あかん。どっちが魔王か分からないような顔してる!」
ゾンビ娘「絶対賢者様が魔王です……ってそんなこと言ってる場合じゃありません!」
ゾンビ娘「賢者様!今加勢しま……っ!?」ガクン
カード「ゾンビ娘!?」
ゾンビ娘「あれ……?力が入りません………」グググ…
賢者「【再生】の式がほとんどの血中魔力を吸っちゃったからね。しばらくは貧血気味だと思うよ」
600 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:03:29 ID:OkUNnOLY
ゾンビ娘「そんな……」
カード「なら俺が……!」
賢者「魔力すっからかんなんだからじっとしときなよ」
ゾンビ娘「でも……っ!」
賢者「もうコイツのHPはほとんど残ってないから大丈夫。勇者と女騎士からも頼まれたし……それに…」
賢者「主人公なのに置き物なんて言われてたら悔しいもん!」
ゾンビ娘「それが本音ですか」
601 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:05:09 ID:OkUNnOLY
賢者「というわけで、ここからは僕一人が相手だよ♪」チャキッ
声色は明るいままだが、賢者の顔にはドス黒い影が張り付いたままである
魔王《……あの娘を解呪したせいで貴様も魔力をほとんど失っておるだろう
いくら貴様の銃弾が強大であろうとも、残り少ない弾数でどうにかできるのか?
それに貴様の身体能力は圧倒的に低い。それでもやるというのか?》
賢者「まあ、試してみなよ…………僕は一発も食らわないからさ」
魔王《ほざくな……!!》【エアロガ】【はやぶさ斬り】
刀身が半分になったサーベルで、賢者に攻撃をしかける。
万が一逃げられないよう、全方位に風の刃を配置しながら………
602 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:05:40 ID:OkUNnOLY
――――トゥルンッ
MISS!ダメージを与えられない!▼
魔王《避けた……だと……?》
賢者「食らわないっていったじゃん?」
魔王《………っ!!》【アルテマ】
賢者に魔力を放ち、広範囲に爆発させる。あの身体能力なら、逃げることは出来ないはずだ……
賢者「当たらないってば……」ヒョイッ
魔王《!?もはやどうやって避けているのだ!?》
603 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:06:51 ID:OkUNnOLY
賢者「回避中の無敵判定を利用しております」
魔王《もう人間やめろ!貴様!!》
賢者「まあまあ。意識不明の状態から復活した主人公は無敵ってことだよ」
魔王《言い返せないのは何故だろうか……!》
賢者「それにね………僕は怒ってるって言っただろう……?」ギロ…
魔王《………っ》ゾクッ
604 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:07:27 ID:OkUNnOLY
ゾンビ娘「………ガチギレしてる顔ですよね……あれ」
カード「ああ…一昨日お前が『さあ、答(ry』を蒸し返したときになった顔だな……」
ゾンビ娘「あの時は地獄でしたね………」
カード「誰であろうと無差別で攻撃対象にしたからな」
ゾンビ娘「今にして思えば魔王に殺された時よりも、あの時の賢者様のねちっこい拷問の方が苦しかったですね」
カード「参戦しなくて正解だわ………加勢したら巻き添えを食らってたかも……」
ゾンビ娘「あの仕打ちを一人で受ける魔王がかわいそうになってきました」
605 :
スラリン(黒) :2014/08/18(月) 14:08:31 ID:OkUNnOLY
賢者「―【静電弾・三点撃】―」バンッ
ゾンビ娘「に゙ゃっ!!?」バチッ
ゾンビ娘「なんで!?」
賢者「ゾンビ娘を泣かしていいのは僕だけだ………!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
魔王《ぬぅぅ……!?》ゾワァァ…
カード「怒ってるのはそこなのか!?」
607 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:43:10 ID:JjE7CSQQ
――――チュンチュン
いつのまにか太陽は完全に姿を現し、空の闇を祓っていた
賢者「ふ……っ!」ダッ
賢者は駆け出し、二回続けて撃った
魔王《向かってくるか……!》ボォッ
魔王《【メラ】!!!》
並外れた身体能力を持った魔王には、不意打ちでしか当たらないのだろうか。
魔王は前進しながら雷撃をかわし、火炎を横薙ぎに広げながら放った。
608 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:44:10 ID:JjE7CSQQ
賢者「やると思った……!」ズザザザ
魔王《何……っ!?》
賢者はスライディングでこれをかわし、魔王の懐へと潜り込む。
至近距離で打ち出した銃弾を、魔王は賢者ごと飛び越え、ギリギリで回避することに成功する
賢者「白のリボン付き……あの大雑把な性格の女騎士にしてはなかなか………」
魔王《何を見ておる!》バッ
賢者「一応女の身体なんだから慎みを持ちな……よっ!!」ズガンッ
魔王がノリで下半身を押さえた隙に飛び起き、身体を反転させながら撃ち出した
609 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:44:40 ID:JjE7CSQQ
ゾンビ娘「………………チッ」
カード「こっちも何故かキレたんだけど!?どこにいてもとばっちり食らいそう!俺もう帰りたい!!」
賢者「ふ……っ」ズガガンッ
刀を抜刀するように銃を水平に振りながら二発撃ち出す。片方はカードの前髪を掠めた
カード「俺……何かしましたっけ……?」チリチリ
610 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:45:12 ID:JjE7CSQQ
しかし、もう一方の銃弾は大きくそれ、魔王のはるか頭上を通過した
魔王《くくく、どこを狙っておる!!!》ダッ
賢者「結構頑張ってるつもりなんだけどねっ!!」
魔王《我に毒を与えたあの腕前はどこに行った!!》【アルテマ】【アルテマ】
賢者「……!」
連続で放った熱エネルギーの塊が、時間差で炸裂した!
――――ガカッ
611 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:45:46 ID:JjE7CSQQ
魔王《時間差で発動させれば、貴様の無敵時間も……!!》
――――リィィィィィィン
賢者「その呪文なら打ち抜けるってこと忘れてない?」
銃口から揺らめく煙を吹き消しながら、賢者は続ける
賢者「まあここでもし食らってたら、また新しいネタにされちゃうだろうからね……」チラッ
ゾンビ娘「ギクッ」
カード「あれだけやられといてまだからかうつもりだったのか……」
612 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:46:19 ID:JjE7CSQQ
賢者「んー。避けれるのはいいけど、こっちの攻撃が当たらないのはちょっと面倒だな……」
賢者「あ、そうそう。これは龍の国で知った言葉なんだけどね……」
賢者「『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる♪』」ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
魔王の視界を黄色い弾幕が埋め尽くした
613 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:46:51 ID:JjE7CSQQ
魔王《くっ……【ピオリム】!》:素早さ上昇
――――ヒュバババババ
呪文で素早さを上げ、弾丸の間を縫うようにして賢者に近づく。
そして弾幕が一番薄い左側に回り、渾身の力で賢者を斬りつける
魔王《【クライムハザード】》ゴッ
しかし、賢者は剣の軌跡の上にはいない。
横薙ぎに放つ斬撃をしゃがんで回避し、銃を魔王の腹部に押し付けている
賢者「チェックメイト」ゴリッ
614 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:47:25 ID:JjE7CSQQ
魔王《き、貴様……!貴様の身体能力では、避けることはおろか視認することすら出来ないはずだ!!》
何回も余裕で回避を続けてきたことが、信じられないというような顔をしている
いや、どちらかというと賢者は攻撃を繰り出す前から回避行動を取っていた。それが意味するところとは……
魔王《未来予知……!》
賢者「う~ん……若干違うけど、完封できるってあたり似たようなものかな……」
賢者「どの道勇者の呪文だし」カチンッ
賢者は引き金を引いた。
615 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:47:58 ID:JjE7CSQQ
賢者「―【蓄雷弾・発動限界】―」バチンッ
魔王《ぐ……っ!こ、これは………!》
まずい……!この状態で雷角ノ神弾を撃たれたら……!!
魔王はすぐさま距離を取った
賢者「ふふん♪」クルクル
賢者は追撃をせず、銃をクルクルと回して遊んでいる。その笑顔は相変わらずどす黒い。
616 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:48:31 ID:JjE7CSQQ
魔王《貴様……なぜ追撃をしない…?》ジリ…
賢者「だって………」クルクル…
賢者「もう詰んでるし」パシッ
賢者が銃を構えた瞬間、魔王は互いの影がそれぞれの真下に移動していることに気がついた
魔王《………!!》バッ
617 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:49:09 ID:JjE7CSQQ
見上げた空は、光で埋め尽くされていた。
魔王《落……雷弾………!!》
その数は以前の5を超え、30ほど
賢者「言ったでしょ?チェックメイトだって」
魔王《いつの間に……!》
賢者「キミが避けた弾全部が落雷弾だよ」
魔王《な……っ!?》
賢者「撃った弾の音が、ズガンだったことに気がついた?」
618 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:49:44 ID:JjE7CSQQ
ゾンビ娘「そう言えば神弾の音は鈴っぽいリィィンでしたね」
カード「遠くから見てた俺達はよくわかったけどな」
魔王《ま、待て!!》
賢者「ん~?」:チャージ中
魔王《もう二度と魔王として君臨しないことを誓おう!》
賢者「それは命乞いってことかい?」:80%
魔王《ぐぬ……ああそうだ!!》
619 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:50:30 ID:JjE7CSQQ
賢者「どうせ大魔王とか竜王とか肩書きを変えてやって来そうだから却下♪」:96%
魔王《ぬぅぅ!?》ギクゥッ
魔王《ならば世界の半分を貴様にやろう!それでどうだ!?》
賢者「別にいらない♪」:120%
賢者「ゾンビ娘に手を上げた時点で、お前は終わってたんだよ」
賢者は魔王の頭上へと銃弾を放った
620 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:51:13 ID:JjE7CSQQ
――――リィィィィン……リィィィィィン……リィィィィィィィィィィィン
雷角ノ神弾が雷の球体にぶつかり、鈴の音が伝播していく
やがて全ての落雷が共鳴を始めた
賢者「落ちろ………」
賢者「―【 雷 神 弾 】―!!!」
621 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:51:49 ID:JjE7CSQQ
数十の落雷が一振りの剣となり、硝子が爆ぜるような甲高い音と共に魔王城を貫いた
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622 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:52:26 ID:JjE7CSQQ
ゾンビ娘「………ん……ぁ…」
閃光で白くなっていた視界に、色が付き始めた
ゾンビ娘「賢者……様……?」
床に開いた大きな穴の前で立っていたのは、賢者ただ一人
カード「やった……のか……?」
賢者「うん………終わったよ」
623 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:53:04 ID:JjE7CSQQ
ゾンビ娘「本当に……?」
その問いに、賢者はやさしく微笑んで答える
賢者「本当に」ニコッ
カード「本当の本当に?」
賢者「そんなに言うなら自分の目で確かめなよ」ツーン
カード「あれ!?俺には冷たい!」
624 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:53:37 ID:JjE7CSQQ
落雷で開けた大きな穴は全ての階層を貫き、岩盤まで抉っていた
賢者の魔力の残滓が最下層を照らし、闇に隠れるもの全てを暴いているが、そこに魔王の姿は無い
カード「本当に……やったんだな………」
賢者「うん………」
ゾンビ娘「賢者様―――!!!」ダキッ
賢者「うわっ!?」フラッ
カード「あ!おい!!」
ゾンビ娘が背中から抱きついたせいで体勢を崩した賢者は、そのまま二人仲良く穴に落ちた
625 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:54:15 ID:JjE7CSQQ
カード「馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」バッ
賢者「く………っ!」ガシッ
咄嗟に伸ばしたカードの腕を掴み、なんとか落ちなかった
ゾンビ娘「やりましたね賢者様……!」ギュゥゥゥ
賢者「下を見なよ食いしん坊のカニバ娘………」
ゾンビ娘「え………?」チラッ
ゾンビ娘「はわわわわわわわわわ……」ガクブル
626 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:54:47 ID:JjE7CSQQ
ゾンビ娘「絶対に離さないでくださいね!?賢者様!!」
賢者「…………」プルプル……
カード「おいどうした………?」
賢者「ごめん……」
賢者「もう魔力ほとんど無くて……力が入らない……」ズルッ
カードの手から、賢者の手が滑り落ちた
627 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:55:19 ID:JjE7CSQQ
ゾンビ娘「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
カード「賢者――――!!!」
賢者「マジで……?せっかく魔王倒したのにこんなんで死ぬの?」
ゾンビ娘「結構冷静ですねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
賢者「元はといえば君のせいだからね!!?」
言い合いをしている間にも、4F、3Fと階を落としていく
賢者「絶対あの世でいじめまくるからね!?」
ゾンビ娘「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
628 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:55:51 ID:JjE7CSQQ
――――ウワアアアアアアアアアアアア
「 お手 」
「わうっ!!」
――――カチャン
ゾンビ娘「むぎゅっ!?」
賢者「うわっ!?」
二人は突然出てきた大きな手にキャッチされた
629 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:56:31 ID:JjE7CSQQ
賢者「いててて……ん?」
その手の持ち主は……
骨っ子「アブナカッタネ!」「賢者様!」「ごしゅじん!」
ゾンビ娘「骨っ子!?」
ウィップ「ギリギリセ~フってやつだね~」
賢者「ウィップ!」
630 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:57:03 ID:JjE7CSQQ
ゾンビ娘「無事だったんだね!よかったぁ~」ダキッ
骨っ子 キュ~ン
賢者「いつの間に一階に……僕が目を覚ました時はまだ気絶してたよね……」
ウィップ「いや~賢者が魔王と戦ってた時に起きたんだけどね~
何か処刑用BGMが聞こえた気がしたから~骨っ子を助けに行ったんだ~」
賢者「それは幻聴だよ……頭から血を出しすぎたみたいだね……」
ウィップ「ありぃ~?」ダラダラ
631 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:57:38 ID:JjE7CSQQ
<お~い!賢者~!!何があったー!無事かー?
賢者「うん!みんな無事だよ!!カードも降りてきなよー!!」
<えー?何だっ…… ガラッ てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?
え」
え
え
lll え
カード「ぇえ
ウィップ「そりゃ~」【キャッチ】
カード「ぐえっ」
632 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/19(火) 15:58:17 ID:JjE7CSQQ
カード「ちょ…っ!?ウィップいつの間に!?ていうかいばらの鞭はあだだだだだだだだ!!!」ギシギシ
賢者「とりあえずみんな無事……」
――――ゴゴゴゴゴゴ……
突然城が震え始めた。
ゾンビ娘「な、なんですかこれ!?」
カード「あ~中心の地盤を抉ったからな……そりゃ崩れるわ……」
ウィップ「てことは~」
骨っ子 ツマリー?
賢者「 脱 出 開 始 !!!」ダッ
633 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:28:43 ID:WbjN006U
骨っ子「みんな!」「ボクノ」「背中に乗って!!」
賢者「骨っ子!頼んだよ!」
骨っ子「「まかせとけ!!」」ダダッダダッダダッ
<ギャオオオオオオオオオオオ!!!
ゾンビ娘「 ! 後続から魔物の残党が来ます!」
カード「おらぁ!!」ブンッ
ウィップ「おら~」ヒュッ
634 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:29:23 ID:WbjN006U
後ろから追ってくるモンスターを氷柱や鞭で退けつつ出口を目指す
そこかしこに落下してくる天井の破片を避けながら、骨っ子は最速を保って走った
召喚士の亡骸を通り過ぎ、迷路のように入り組んだ廊下を抜け、ドラゴンや骨の残骸が残る庭園までやってきた。
ウィップ「見えた~」
カード「あの橋を渡れば……!!」
骨っ子「わうううう!!!」ダダダダダ
――――ビキッ
635 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:29:57 ID:WbjN006U
橋に踏み込んだ瞬間橋に亀裂が入り、崩れ始めた
骨っ子「わう!?」ガクンッ
ゾンビ娘「あ………」
賢者「ゾンビ娘!!」バッ
咄嗟に骨っ子が崩れていく橋の破片を蹴って、飛び越えようとしたためにゾンビ娘が振り落とされてしまった
助けようとして手を伸ばした賢者も振り落とされた。
636 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:30:31 ID:WbjN006U
カード「賢者!!」
賢者「そのまま行って!!」
賢者は空中でゾンビ娘を抱きかかえながら叫んだ。
ゾンビ娘「くぅ…っ」
賢者「ぐっ……!」ゴッ
二人は橋の手前に落下し、抱き合ったまま転がった。
637 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:31:06 ID:WbjN006U
ゾンビ娘「う…ぁ………」フラ…
賢者「大丈夫かい?」
ゾンビ娘「はい……っでも……!」
橋を渡りきったカードたちは、対岸でこちらを助けようと慌てている
ゾンビ娘「ごめんなさい……!私が落ちたばっかりに……!」
賢者「言っても仕方ないよ。どうにかして渡らないと……」ツ…
638 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:31:36 ID:WbjN006U
ゾンビ娘「賢者様!血が……」ソ…
賢者「ん?ああ…さっき頭打っちゃったからかな……心配いらないよ」
ゾンビ娘(でも…こんなにべったりと血が……)
反射的に賢者の頬に添えた彼女の右手は、血でべったりと汚れている
ゾンビ娘(はやく血を止めないと……!)
――――ゴゴゴゴゴゴ
639 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:32:15 ID:WbjN006U
そうこうしている内に城が本格的に崩れ始めた。
――――ガラッ
ゾンビ娘「 ! 」
二人の頭上に、巨大な最上階の破片が降ってきている。
ゾンビ娘「このままじゃ二人とも………!」
彼女は助かる方法を考え、そして導き出した。
ゾンビ娘(このダガーで人為トランスして、賢者様を抱えて向こう岸に跳ぶ……!)ギリッ
それは自己犠牲の上に成り立つ方法だった。
640 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:32:50 ID:WbjN006U
ゾンビ娘(さっきの人為トランスのせいで私の魔力はほぼ0です……
トランスできても、おそらく一瞬しか維持できない………!)
ゾンビ娘(そして、魔力を使い切って……死ぬ………)
彼女はこの一瞬で覚悟を決め、ダガーを握り締めた
ゾンビ娘「賢者様……大好きですよ……」ヒュッ
641 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:33:31 ID:WbjN006U
――――ガシュ……ッ!!
賢者「へぇ……そうなんだ……」
ゾンビ娘「え……」
賢者はダガーの刀身を掴んで止め、
ゾンビ娘「賢者様!!離してくださ……んむ!?」
うるさい口を、唇で塞いだ
642 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:34:30 ID:WbjN006U
ゾンビ娘「はっ なっ何を……!!///」
賢者「【レイズ】」
ゾンビ娘には効果が無いようだ……▼
ゾンビ娘「何で……」
賢者「…………またね」グイッ
ゾンビ娘「え………!?」グンッ
賢者はゾンビ娘を谷に投げた
643 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:35:06 ID:WbjN006U
谷の半ばほどまで飛ばされたゾンビ娘をウィップの鞭が絡め取る
ゾンビ娘「賢者様……!!」
いばらが刺さった痛みなど無視して、彼女は大好きな人の名を叫んだ
対岸にいるその人は、笑顔で手を振っている
ゾンビ娘「賢……」
彼女の目の前で、賢者は巨大な瓦礫に押しつぶされた
ゾンビ娘「賢者様――――――――!!!」
その慟哭は、崩落する魔王城の断末魔にかき消され、誰にも届くことは無かった……
644 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:35:43 ID:WbjN006U
ゾンビ娘「あああっ!!」
カード「待て!城が完全に崩れた時の衝撃を舐めるな!いいから離れるぞ!!」
ゾンビ娘「でも…っ!賢者様が………!!」
カード「もう無理だ!!早く逃げるぞ!!」ギリッ
ゾンビ娘「嫌です!!あの人が死ぬはずが……!」
ウィップ「ふ…っ!」トン…
ゾンビ娘「あ………」ドサッ
ウィップ「さ、行こう。翼持ちのモンスターがたくさん出てきてる」
カード「ああ……」
彼女は骨っ子に乗せられ、無理やり魔王城を後にすることになった
カード「賢者………ッ」ダッ
645 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:36:18 ID:WbjN006U
――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
すべてが静まった満月の静寂に、ガラガラと何かが崩れる音がする
賢者「ぅ……あ………」カラ…
瓦礫の中から、賢者が這い出てきた
賢者「はぁ……なかなかしぶといね…僕も……」
646 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:42:52 ID:WbjN006U
賢者「運よく瓦礫を避けて、運よく瓦礫の隙間に入り込み、運よく潰されずに生きてる………」
賢者「運のよさ999ってどんなステータスだよ……」
すべてが無くなった城跡に、答える者はいない
賢者「この世界に、勇者の血は……もう必要ないだろう?」
賢者「勇者、キミも本当はそれを望んでいるだろう?まだ何か……僕に背負わせるのか…?」
――――ギャォォォォォォォォォォ
音を立てるのもはばかられるほどの静寂を、容赦なく破壊する竜の咆哮。
カラカラパキパキと瓦礫を踏み潰し、賢者の後ろ側から近づいてくる足音。
賢者「…………僕も大概だけど、キミもしぶといね」
賢者「魔王」
満月を覆い隠すほど巨大な黒竜が、そこにはいた
647 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:43:29 ID:WbjN006U
グルルルルルルルルル……
賢者「魂ごと消し去ったはずなのにな~」
魔王は黒い竜の姿をしているが、どこか不安定にゆらめき、若干満月の光を透過しているようにも見える
グルルルルルルルゥァア
賢者「そっか……魔力だけの存在か………しし神様的なあれかと思ったよ」
ルオォォォォォォォォォォ!!!
賢者「そんなに女神が憎いの……」
648 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:44:56 ID:WbjN006U
賢者「まだ魔王が暴れてるってことを、世界中の誰も知らないだろうね。まさに臥竜ってやつだ」
グルァア!!!
賢者「キミは放っておいてもそのうち魔力を使い切って消えるだろう……
それでも、国の一つや二つは滅ぼせる力を残しているみたいだけど」
――――ゴトンッ
賢者「僕が生きていたわけはそういうことか………」
――――ガチャチャッ
賢者「今度こそキミを……その憎悪ごと消し去ってあげる」
賢者は銃のシリンダーを捨て、予備のシリンダーと交換した
649 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:46:23 ID:WbjN006U
グルァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
黒竜は輪郭の曖昧な口を裂きながら突進するも、賢者は照準を合わせたまま動かない。
銃を構えた左腕全てを口に中に突っ込ませるほど引き付け、引き金を引いた。
ギャァァァァァァァァァァァァ
ゴプッという音と共に竜の背中が打ち抜かれ、闇色の魔力を吹き出した。黒竜は痛みに悶え、のけぞるように後退する。
賢者「魔力なのに痛みはあるのかい?女神の雷が持つ退魔の力がそうさせるのかな」
ギャオォォォォォォォォォォ!!!
黒竜は怒りの咆哮によって、それに答えた
650 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:49:34 ID:WbjN006U
賢者(僕の魔力はもうスッカラカンだ。残った攻撃手段は、予備弾倉に込めておいた雷角ノ神弾12発分)
賢者(残りの弾数は………この弾倉に5発と、もう一つの弾倉に6…)
賢者「実際心もとない……。頼みの綱は勇者の最後の呪文だけど、あれはあんまり使いたくない……」
これは互いに限りある力を消費しながらの戦いだ。相手を弱めれば弱めるほど、自らも『死』に近づく。
先の戦いで死を経験した彼は、その恐怖で足を震わせている。
こんなとき、戦場に赴く兵なら煙草の煙と一緒に家族の顔を浮かべながら覚悟を決めるのだろうか。
そんなことを考えながら、彼は臆病な足を叩いて激励する。
さあ―――
賢者「さっさと倒して、ゾンビみたいな顔で呆けている彼女をレイズしに行こう!」
651 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:50:07 ID:WbjN006U
グォォォォォォォォ!!
重量の違いすぎる化け物の突進を食らえば、馬車に轢かれた子猫のような無残な死体が転がることだろう。
しかし、賢者は逆に駆け寄り、メラをかわしたようにその足元に滑り込んで、土手腹に打ち込んだ。
黒竜は痛みを無視し、足元を通り過ぎた賢者に太く長い尻尾を叩きつける。賢者はこれも横に転がって回避。
グオァ…?
だが、ここでひとつ不可解なことがある。
賢者は呪文解放後、魔王の攻撃を全て回避または相殺していた。それも、攻撃の予備動作に入る前に。
652 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:51:17 ID:WbjN006U
賢者「気になるかい?攻撃がことごとくかわされる理由が」
魔王が未来予知と予想し、賢者は勇者の呪文だと言ったこの現象。
賢者「勇者の遺した最期の呪文。いや、呪文って言うとおかしいかな。魔力を使わず、僕が死んだら勝手に発動するし」
賢者「この呪文は……」
――――ガシュッ
賢者が言い切る前に、黒竜は彼を飲み込んだ。つもりでいた。
653 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:51:54 ID:WbjN006U
賢者「最後まで言わせてよ」
賢者は何故か黒竜の眉間に足を乗せ、偉そうに魔王を見下ろしていた。
魔王はその巨体を転がし、賢者を振り落とそうとするも、彼はまたもや先に飛び降りている。
賢者「この世は選択肢、分岐点の連続で成り立っている。時間という川が枝のように分かれていると考えるのがいいかな」
賢者「この呪文は自分が選んだ最期の分岐点に戻り、自分が進んだ流れを止め、別のルートに進む。未来を変える呪文だ」
賢者「勇者はこれを、【リセット】と呼んでいた」
654 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:52:26 ID:WbjN006U
賢者「勇者はこれを、【リセット】と呼んでいた」
賢者「僕が望まない方法で死ぬと、自動で死んだ要因の分岐点まで戻される」
賢者「生き返れるとはいっても、一度は死ぬ。それが怖いんだ。それに、未来を変える代償も払わなきゃいけない」
賢者「代償は消えた未来の時間の分、自らの魂の寿命を減らすことだ」チャキッ
――――リリリィィィィィィィン
賢者は起き上がろうとしていた黒竜に連続で撃ち込み、脚、尾、片目を吹き飛ばす。
魔力の塊であるためにすぐに形だけは修復されるが、少しずつ魔力を失い、身体は小さくなってきている。
賢者「ここで、魔王と勇者の戦いを終わらせよう」
655 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:53:34 ID:WbjN006U
魔物すら逃げ去り、魂ある生き物は賢者だけになったこの地に響くのは、
冷たい叫びと鈴の福音、そして役目を終えた城を破壊する乾いた音だけだった……
賢者「はぁ……はぁ……っ!」
どれ位の時が経っただろうか。どれほどの代償を払っただろうか。
数え切れない死の分岐を越え、彼は立ち尽くす。ふと振り返れば朝日がのぞいている。
黒竜はつい先ほど霧散して、賢者の光り輝く魔力の残滓と共に辺りに黒白の霧を作り出し、
彼の右手に握られた銃は、残り一発を残して熱気を放っていた。
656 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:54:04 ID:WbjN006U
賢者「ははは……朝日二回目……」
朝日が目に沁みて、涙が景色を滲ませた。
――――ブチッ
滲んだ視界の左側に、黒い何かが映り込んだ。
痛みに顔をしかめた為に涙が零れ、視界が少しクリアになる。
その視界に映ったものは、賢者の左腕を食いちぎった黒竜の首だった。
657 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:54:46 ID:WbjN006U
黒竜は今度こそ霧散し、黒い霧すら残さず消え去った………
賢者「しし神じゃなくて山犬のほうなのね……」
いつもの軽口も、どこか力ない印象を受ける。
賢者「………この傷じゃああんまり長くは持たないかな……ははは」
食いちぎられた左肩の傷口からボタボタと血を垂れ流しにしながら、賢者は笑う
賢者「まあいっか……僕もう眠いし………」フラッ
658 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:56:10 ID:WbjN006U
――――チリィン
どこからか澄んだ音がする。鈴というよりはむしろ、風鈴のような音。
賢者「…………?」
音の出所を探し、賢者は辺りを見回した。そして見つけた……
賢者「玉座…………」
何かを伝えるように、玉座の傷から音が鳴る。
賢者「そっか……ここで僕の役目も終わりか………」
659 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:56:45 ID:WbjN006U
賢者は玉座に腰掛け、オレンジ色の空を仰いだ。
賢者「本当に硬い……ゾンビ娘のお尻の方が座りやすいな………」
玉座が赤に染まっていき、反対に賢者の意識は白くなり始めている。
賢者「ははっ……玉座に座って最期を迎えるってのも、悪くないね…」ゴリ…
銃口をこめかみに押し付け、彼は笑う
660 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 16:57:19 ID:WbjN006U
震える指で撃鉄を引き、弾倉を回転させる。
冷たく、感覚がなくなってきた指で引き金に力を込める。どのくらい押し込んだかさえ分からない。
ただ、カチカチと銃口が震えていることは分かった。
永遠にも思える時間の中で、彼は東をじっと見ていた。その方向に、みんながいる気がして…
――――リィィィィィン……
賢者の意識は女神の福音と共に消えた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――
661 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/20(水) 19:14:55 ID:zsFfT3qo
うわぁぁぁああああ(゚Д゚)
662 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:08:56 ID:WbjN006U
――――――――――――――――――――――――――――
~時計塔の街 ―時計塔展望台―
少年「それで、その後はどうなったの?」
???「うん。魔王を倒したってことは瞬く間に広まってね。世界中でお祭り騒ぎさ」
少年「違うよ!そっちじゃなくて、その……人間になったゾンビのお姉ちゃんはどうなったの?」
???「………ええっとね……彼女はしばらくの間、放心状態だったんだ」
???「何も話さず、何も食べないで、ずっと西を見つめ続けたんだ。1年間ずっと」
663 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:09:38 ID:WbjN006U
少年「一年間!?」
???「そう。彼女は人間になったけど、【再生】だけになってパワーアップした刻印のせいで、死ななかったんだ」
???「それどころか……歳も取らなかった」
少年「そ、それで…?」ゴクリ…
???「城跡からは、賢者の遺体は発見されなかった」
???「だからだろうかね?彼女が賢者を探し始めたのは」
664 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:10:24 ID:WbjN006U
???「彼女は1年後に、突然旅を始めたんだよ。これまでの旅を辿ってね」
???「ずっとずっと歩いて、3年後に彼女はこの街にやってきた。
そして、シチューのあの店に行ったんだ」
少年「それってもしかして……」
???「うん。キミのひいおじいさんのお店だよ」
???「彼女は店主達となんてことはない普通の会話をして、ご飯をご馳走になったんだ。
あ、でも、旅の間に赤ん坊が生まれてたみたいでね。かわいい女の子だったって」
???「そして彼女は、また歩いて旅を続けたんだ。森を越え、朱実の街へ。砂漠を越え、港街へ。
ここまでの道のりでまた1年。なにせ、ゾンビですらない女の子の足だし、路銀も稼がないといけないからね」
665 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:11:25 ID:WbjN006U
???「ある日、風の噂でカードとウィップが国を建てたことを知ったんだ」
少年「え?それって……」
???「正確には乗っ取ったってところなんだけどね。
どうやら故郷の国の王子がとんでもないチンカス野郎だったらしくて、国民がキレたんだって」
少年「その時にリーダーとして国民を率いたのが、その二人だったんだね」
???「そうだよ。よく知ってるね」
少年「自分の国のことくらい知ってるよ!」
???「その結果、彼らはようやく家族になって、国の為に尽くしているらしい」
666 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:11:57 ID:WbjN006U
少年「ゾンビの子はどうしたの?二人に会いに行ったの?そういえばわんちゃんは?」
???「ううん、行かなかった。相棒の骨っ子は、二人が預かってくれて大事に育ててくれているよ」
???「彼女は二人に会いに行くことよりも、賢者の面影を探して旅をすることを優先したんだ」
少年「どうして?」
???「さあ?彼女自身に聞いてみないと分からないよ」クスクス
667 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:12:57 ID:WbjN006U
???「そしてゾンビ娘は、港町に住むおじいさんから小さな手漕ぎボートを譲り受け、いざ大海原へ」
少年「手漕ぎボートで……?」
???「手漕ぎボートで」コクン
???「案の定時化は酷いわ揺れが半端無くて酔うわ、おまけにオールを失くして大変な目に……」
少年「馬鹿じゃないの?」
???「僕もそう思う」
668 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:13:42 ID:WbjN006U
???「彼女は賢者と旅したときと同じ航路で進んで、生まれ故郷の龍の国へ」
???「ちょうどお祭りをしていてね。今度は賢者を祀ってたんだってさ。設定は僧侶の子孫らしいよ」クスクス
???「形抜きの出店もあったからチャレンジしてみたけど、彼女には難しかったみたい。
林檎の形抜きを何度もやっても、何故かバハムートの形にしかならなかったらしい」
???「形抜屋のおじさんは、どこか寂しそうな顔をしていたよ………」
669 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:14:15 ID:WbjN006U
???「魔王の作ったクレーターは湖になって、カップル達の憩いの場になっていていた反吐が出るね☆」
???「女将さんの旅館は盛況で、お二人も元気にしていたよ。ウィップがおつかいから帰って来ないのを心配してたけど」
少年「まだおつかい終わってなかったんだ……」
???「魔王の首は消し炭どころか、消し去ったもんね」
少年「でもそのカレーを食べてみたかった」
???「僕も
670 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:14:56 ID:WbjN006U
???「………そして、数々の賢者との思い出の地を巡り、彼女は魔王城跡地にたどり着いた」
???「魔王城は瓦礫一つ残さず消え去っていて、代わりにリコリスの花が一面に咲き誇っていた」
???「『悲しい思い出』、『遠い思い出』………リコリスの花言葉だよ」
???「過去に何事も無かったかのような平和な花畑を見て、彼女は初めて涙を零したんだ。
――ゾンビ娘「私を泣かせていいのは……賢者様だけでしたね………」
ただそれだけをつぶやいて、彼女はその場を後にした」
671 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:15:32 ID:WbjN006U
???「それからの彼女は、亡霊のように世界中を彷徨い、賢者の面影を探し続け……」
???「気がつけば、既に人生が一度終わるほどの時間が流れていた」
???「彼女がゾンビになったあの日から、ちょうど280年」
???「彼女はまだ彷徨い続けているかもしれない。僕のように語り歩く吟遊詩人としてどこかの街にいるのかも……」
???「もしかしたら、物知りな僕でも聞いたことが無い、彼のストーリーも………」
672 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:16:03 ID:WbjN006U
???「はい。これでゾンビの女の子のお話はお終いだよ」スクッ
少年「え~ハッピーエンドじゃないの~?」
???「こんなお話もあるから、ハッピーエンドがもっと幸せになるんだよ」パンパン
少年「ふ~ん……」スクッ
???「あ、ちゃんとお尻の砂を落としなよ?」
少年「うん」パンパン
673 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:16:38 ID:WbjN006U
???「今は僕がいるからいいけど、小さい子は柵をくぐれちゃうから危ないってことで、
本当はキミ一人でここに来るのは駄目なんだよ?」ギシッ
少年「それを言うなら、大人だって柵に腰をかけるのは駄目なんだよ?」
???「あはは、まあいいじゃない。これ結構楽なんだ」
少年「むぅ………」
???「………実はね、話してなかったことが、もうちょっとあるんだ」
674 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:17:19 ID:WbjN006U
少年「?」
???「彼女は魔王を倒した一人として、世界的な有名人だったんだけど、
その旅を口伝書にしようとカード、ウィップ、骨っ子、そしてゾンビ娘から話を聞いた吟遊詩人がいたんだ」
???「彼は決まって賢者との思い出を中心に話を聞いたんだけど、彼女は初めに何て答えたと思う?」
少年「んーん。分かんない」
???「彼女は………私は、こう答えたんです…………」フラッ
少年「旅人のおねえちゃん!?」
ゴーン‐―‐―――――ゴーン‐―‐―――――
ゾンビ娘「レイズされました。死にたいです。ってね………」
ゴーン‐―‐―――――ゴーン‐―‐―――――
675 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:17:54 ID:WbjN006U
鐘が鳴り響く時計塔から落ちながら、私は目を閉じました。
ふと香ったリコリスの香りは、きっとお花屋さんからするのでしょう……
リコリスの花言葉は『悲しい思い出』、『遠い思い出』、そして……『再会』………
もう一度あなたに会えるのなら、またいつか………
ゾンビ娘「レイズでもかけて……くださいね………」
賢者様……
676 :
◆9UkOGtZTdE :2014/08/20(水) 22:18:26 ID:WbjN006U
これにて、私の永い永い人生という演目はお終いです。
アンコールはまたの機会に――――――
ゾンビ娘「レイ〇されました。死にたいです」
終幕
681 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/20(水) 23:43:48 ID:8Ya5q2ao
乙乙
ラストまで楽しく読めた。続編も期待
682 :
以下、名無しが深夜にお送りします :2014/08/21(木) 01:33:14 ID:uGuUmZ46
読み終わった乙
転載元
ゾンビ娘「レイ〇されました。死にたいです」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1406960105/ 大樹 連司
小学館 (2011-06-17)
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