2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:41:38.47 ID:Kdf+Itko0
放課後の文芸部室。彼が僕を見ていた。じっと、疑惑のこもった目で見つめられていた。
いつもであれば僕はそれを受け止めて微笑んでみせただろうけれど、しかしいつもではないのでそれも適わない。
目を逸らしたまま、およそ三分が経過した頃にようやく彼が口を開いた。
「えーっと、だな」
歯切れの悪い彼というのも、珍しい。とは言え、その理由には検討が付きますので僕は何も言えない。
まるで、審判を待つ罪人のような気分でした……が、果たして僕が何をやったというのでしょうか?
完全に冤罪です。
「なあ、古泉」
「……はい、なんでしょうか?」
「こういう場合、俺はどこからツッコめば良いんだろうな?」
血の気の引いた顔で彼がボヤく。その気持ちも痛いほど理解出来ますよ。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:49:51.18 ID:Kdf+Itko0
「発想を転換してみてはいかがでしょうか?」
「転換?」
「ええ、そうです。例えば、貴方と僕の状況が逆ならば、貴方は果たして僕に何を望むでしょうか、と」
彼が人差し指を額にするすると持っていく。その表情はまるで難事件の推理を始めた名探偵のように険しい。
「……スルー、だろうな」
「ですよねえ」
十一月。登下校の道のりにマフラーを巻いている北高生が目立つようになってきた昨今。しかしながら、決して僕が寒いと感じないのは絶えず腰の辺りが暖めているからで間違いありません。
「なるほど。納得した。なら、質問の内容と対象を変更してやる」
「助かります」
肩の荷が下りたと、そう感じるのは錯覚でしかないのでしょう。状況が何も変わっていない以上、問題は何も解決していない以上。
彼は怪訝な視線を僕の斜め後方へと送り、そしてまた一つ深い溜息を生産した。
「長門。いや、俺の目に何らかの宇宙的なウイルス辺りが侵入した結果だと、信じたいんだが」
「貴方の視覚情報にそのような介在要因は現在存在していない」
いえ、今のは確認ではなく皮肉だと思います、長門さん。
……現実逃避、でしょうか?
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